こ と ひ ら ぐ う 琴 平 町 には 金 刀 比 羅 宮 にまつわる 歴 史 や 伝 統 文 化, 象 頭 山 や 金 倉 川 などの 豊 か な 自 然,こんぴら 参 りに 由 来 するまちの 賑 わいや 多 様 な 人 々とのふれあい, 金 毘 羅 歌 舞 伎 に 代 表 されるまちおこしなど 豊 かな 教 材 を 有 する しかし,これまで 子 どもたちの 多 くは 自 分 たちが 暮 らすまちのよさにふれたりそれを 支 える 地 域 の 人 とふれ 合 ったりする 機 会 がほとんどなかった そのため, 故 郷 琴 平 への 誇 りや 愛 着 も 高 くはなく,まちの 一 員 としての 意 識 や 公 共 物 や 文 化 財, 自 然 などを 大 切 に する 意 識 なども 低 かった こうした 地 域 (ひと もの こと) 離 れは, 現 代 社 会 に 生 きる 子 どもたちの 現 状 に 広 く 通 ずるものであると 考 える こうした 地 域 や 子 どもたちの 実 態 を 受 け, 一 昨 年 度 より 琴 平 小 学 校 榎 井 小 学 校 象 郷 小 学 校 琴 平 中 学 校 は 文 部 科 学 省 の 研 究 開 発 学 校 の 指 定 を 受 け, 新 設 教 科 まちづくり 科 の 創 造 に 向 けて 実 践 研 究 に 取 り 組 んでいる 目 標 まちづくり 科 では, 郷 土 に 対 する 理 解 と 愛 情 を 深 め, 社 会 に 働 きかける 意 欲 と 態 度 を 育 成 することをねらいとしている 段 階 小 学 校 中 学 校 をまちづくりの 基 礎 となる 体 験 をする 基 礎 確 立 期, 参 画 しよう とする 態 度 を 育 てる 自 己 発 見 期, 主 体 的 に 参 画 する 自 律 期 という3つの 段 階 に 分 けて 目 標 を 設 定 している 領 域 とそのねらい まちづくり 科 の 内 容 は,まちを 構 成 する 多 様 な 人 と 出 会 い,そのかかわり 方 や みんなにとって 幸 せなまちを 構 想 する 人 と 人 とのふれあい, 産 業 や 観 光, 祭 な どによるまちおこしを 調 べ,まちの 活 性 化 に 取 り 組 む 交 流 とにぎわい, 琴 平 と いうまちの 個 性 を 浮 き 彫 りにし,それらを 守 る 方 法 に 取 り 組 む 伝 統 文 化 自 然 という3つの 領 域 から 構 成 されている
まちづくり 科 に 関 係 する 時 数 の 増 減 ( 平 成 23 年 度 ) 目 標 や 領 域 のねらいから 考 えると, 以 下 のような 教 科 内 容 の 一 部 がまちづくり 科 に 含 まれることになると 考 えた < 国 語 科 > 人 と 人 とのコミュニケーションに 関 係 する 単 元 話 す 聞 く, 書 く 領 域 の 言 語 活 動 を 行 う 単 元 ( 全 学 年 ) < 社 会 科 > 公 共 性 や 伝 統 文 化, 地 域 の 産 業 に 関 係 する 単 元 地 域 の 公 共 施 設, 地 域 の 産 業, 地 域 の 安 全 を 守 る 仕 事 (3 年 ) 地 域 の 健 康 を 守 る 仕 事, 地 域 の 発 展 に 尽 くした 人 々, 地 域 の 伝 統 工 業 (4 年 ) 国 内 生 産 につながる 地 域 の 特 産 物, 地 域 の 環 境 や 森 林 を 守 る 活 動 (5 年 ) 地 域 の 歴 史 文 化 遺 産 を 活 用 できる 単 元, 政 治 単 元 (6 年 ) < 生 活 科 > 地 域 の 自 然 や 人 々の 生 活 に 関 係 する 単 元 学 校 のまわりの 散 歩, 昔 の 遊 び, 家 の 仕 事 (1 年 ) 季 節 の 自 然 とふれ 合 う 活 動 (1 年 ) 町 探 検 シリーズ (2 年 ) 生 き 物 を 育 てよう(2 年 ) < 図 工 科 > 絵 などの 表 現, 鑑 賞 に 関 係 する 単 元 < 家 庭 科 > 伝 統 文 化 に 関 係 する 単 元
カリキュラムの 作 成 修 正 目 標 や 領 域 のねらい, 発 達 段 階 にともなう 地 域 に 対 する 参 画 態 度 などを 基 に3 小 学 校 に 共 通 する 全 体 カリキュラムを 作 成 した これはそれを 基 に 本 校 に 有 する 教 材 を 見 つめながら 作 った 琴 平 小 学 校 版 カリキュラムである 本 年 度 は 生 活 科 の 学 習 内 容 とのさび 分 けを 低 学 年 で 行 ったり 参 画 態 度 を 培 うべく 単 元 に 必 要 な 時 間 数 を 見 つめ 直 したりするなどの 修 正 を 加 えている
単 元 モデル 私 たちは 当 初, 地 域 教 材 を 用 いた 総 合 的 な 学 習 や 社 会 科 などの 単 元 展 開 を 基 に 試 行 錯 誤 しながらまちづくり 科 の 単 元 をつくってきた 実 践 を 経 る 中 で, 地 域 (ひ と もの こと)に 対 する 愛 着 や 共 感 を 高 め, 参 加 提 案 に 取 り 組 む 単 元 の 流 れ を 考 えると, 上 図 のようになるのではないかと 考 えた 課 題 を 見 出 す 対 象 との 出 会 い の 段 階 ひと もの ことにかかわりながら 対 象 のよさや 支 える 人 の 働 き,そして 自 分 とのつながりを 理 解 していく 対 象 の 背 景 を 探 る 段 階 この2つの 段 階 でまちに 対 する 愛 着 や 人 に 対 する 共 感 を 深 める そして 問 題 点 を 見 つけ, 解 決 に 取 り 組 む 対 象 に 働 きかける 段 階 この 段 階 で まちづくりに 参 加 提 案 する 態 度 を 培 いたい 現 在 はこうした 単 元 モデルに 基 づいて 単 元 構 成 を 考 えている
モデルとなる 人 との 出 会 い まちが 数 々の 問 題 を 乗 り 越 え, 発 展 してきたのは,よりよき 未 来 をめざしてま ちに 暮 らす 人 々が 工 夫 や 努 力 を 積 み 重 ねてきたからである 郷 土 をよりよくして いこうとまちづくりに 参 画 する 態 度 を 育 成 するためには,そうした 子 どもたち の 将 来 のモデルとなるよりよき 社 会 人 と 出 会 う 場 が 必 要 だと 考 える こうした 人 の 工 夫 や 努 力 を 教 材 とし, まちにどのようなよい 影 響 を 与 えたのか, まちをよ くすることにどのような 役 割 を 果 たしたのか, どのような 願 いから 工 夫 や 努 力 を 始 めたのか を 追 究 させたい そうすることで, 子 どもたちはまちをよりよく しようと 願 う 人 の 工 夫 や 努 力 がまちの 発 展 につながっていることを 理 解 すること ができる このようなまちを 愛 する 人 の 存 在 が 子 どもたちのまちへの 愛 着 へ,ま ちをよくしようとする 行 為 と 心 が 人 への 共 感 へ,そして 次 なる 自 らの 取 り 組 み( 参 加 提 案 )へのエネルギーにつながっていくと 考 える
関 心 意 欲 を 高 める 手 立 て 子 どもたちが 関 心 意 欲 を 高 め, 追 究 にかきたてられるようになるのは, 対 象 に 対 する 疑 問 や 驚 き, 憧 れなどの 思 いを 抱 いた 時 である 単 元 の 導 入 では, 子 ど もたちが 対 象 にそのような 思 いを 抱 くことができるよう, 次 のように 支 援 したい 期 待 感 を 高 める 聞 き 取 り 調 査 商 店 街 やこんぴら 歌 舞 伎 など, 地 域 にあり 地 域 で 行 われていても, 子 どもた ちの 一 部 或 いはほとんど 全 員 が 経 験 したことがないようなことも 多 い そうし た 場 合 には, 経 験 したことがある 家 族 や 地 域 の 人, 観 光 客 などに 対 象 のよさを 聞 き 取 り 調 査 することで 対 象 に 対 する 期 待 感 を 高 めることができる 憧 れを 引 き 出 す 体 験 活 動 商 店 街 で 作 られる 和 菓 子 の 試 食 や 金 丸 座 の 見 学 などの 体 験 活 動 を 行 うことに より, 対 象 に 対 する 憧 れを 抱 かせることができる しかし,それには 比 較 する 対 象 を 設 定 するなど, 対 象 のよさが 際 だつような 場 の 設 定 や 事 前 の 調 べが 必 要 である 知 的 好 奇 心 を 刺 激 する 資 料 や 視 点 の 提 示 崩 壊 寸 前 の 金 丸 座 の 写 真 など 対 象 に 対 する 経 験 やイメージとズレを 生 じる 資 料 を 提 示 することで, 子 どもたちは 驚 きや 疑 問 を 覚 え, 追 究 意 欲 を 高 めること ができると 考 える また, 昔 の 部 分 だけが 空 白 となった 年 表 など 不 完 全 資 料 を 提 示 したり 琴 平 を 世 界 遺 産 にすることができるだろうか? と 夢 のある 視 点 を 提 示 したりすることで 子 どもたちの 知 的 好 奇 心 を 刺 激 し, 対 象 を 追 究 する 意 欲 を 喚 起 することができると 考 える
言 語 活 動 を 充 実 させる 手 立 て まちづくり 科 では,まちで 暮 らしたりまちを 訪 れたりした 多 様 な 人 々と 単 元 を 通 して 繰 り 返 し 交 流 したり 聞 き 取 り 調 査 をしたりする また,こうした 相 手 に 対 して 手 紙 を 書 いたり 自 分 たちの 考 えを 発 表 したりする 活 動 も 多 い これは 言 語 活 動 という 視 点 から 見 れば, 国 語 で 学 んだ 話 す 聞 く 力 書 く 力 を 実 の 場 で 生 かしていることに 他 ならない こうした 話 す 聞 く 活 動 や 書 く 活 動 に 際 しては, 各 学 年 の 国 語 の 目 標 や 指 導 内 容 に 即 して 事 前 に 学 び 方 について 話 し 合 い たい そして, 共 通 理 解 したことを 評 価 の 視 点 として 活 動 の 際 や 事 後 に 自 分 の 学 び 方 を 見 つめ 直 す 場 を 位 置 付 けたい 多 様 な 人 々と 交 流 したり 共 に 活 動 したりする 場 では, 話 す 聞 く 力 よりも 相 手 にかかわったり 受 容 したりするコミュニケーションのとり 方 に 力 点 が 置 かれる こともある また, 図 表 やグラフなどを 適 切 に 選 択 活 用 し, 相 手 に 分 かりやす く 説 明 する 情 報 活 用 の 仕 方 に 重 点 が 置 かれるときもある そうした 場 合 にも 前 述 の 話 す 聞 く 力 と 同 様, 事 前 の 学 び 方 の 共 通 理 解 と 活 動 の 際 や 事 後 の 評 価 を 単 元 にきちんと 位 置 付 けたい
参 画 態 度 を 高 める 手 立 て 参 画 態 度 を 高 めるためにはまちや 地 域 の 人 に 対 する 愛 着 や 共 感 を 深 めた 後, 以 下 のような 順 で 活 動 を 位 置 付 けることが 必 要 だと 考 える < 地 域 の 現 状 を 見 つめ 直 す 場 の 設 定 > 課 題 解 決 に 向 けて 子 どもたちが 行 動 を 起 こすためには, 地 域 の 抱 える 問 題 点 やその 影 響 の 大 きさを 子 ども 自 身 が 考 え, 理 解 しなければならない そのため に 人 通 りの 少 ない 商 店 街 や 誰 にも 注 目 されず 壊 れている 燈 籠 など, 地 域 の 現 状 を 観 察 させる 場 を 位 置 付 ける その 際, 事 前 に 長 い 経 験 に 裏 打 ちされた 店 の 人 がいる 商 店 街 のすごさや 昔 の こんぴら 参 りの 隆 盛 など 対 比 できる 学 習 を 展 開 しておくことで, 現 状 とのズレ を 子 どもたちに 印 象 づけるようにしたい こうしたズレが 子 どもたちの 改 善 に 向 けたエネルギーになると 考 える < 解 決 策 を 話 し 合 う 場 の 設 定 > 解 決 策 を 話 し 合 う 際 には 子 どもたちの 発 達 段 階 に 留 意 しなければならない 子 どもたち 自 身 の 手 でできることには 限 界 がある 神 事 場 の 掃 除 をしている 高 齢 者 の 方 やガイドウォークをしている 三 水 会 の 方 というように 活 動 のモデルとなり, 一 緒 に 行 動 できる 方 と 活 動 を 組 織 すること も 大 切 だと 考 える 活 動 や 思 考 の 幅 が 広 がる 高 学 年 では, 多 様 に 解 決 策 を 考 えた 後, 自 分 たちで できることと 町 にお 願 いすること, 地 域 の 方 とともに 取 り 組 むことを 検 討 しな ければならない その 際, 必 ず 自 分 たちでできることに 取 り 組 むようにしたい 他 に 依 頼 するばかりで 自 ら 行 動 しなくてもよいという 考 え 方 は, 権 利 だけ 主 張 して 義 務 を 行 わないという 態 度 につながり, 将 来 のよりよい 社 会 人 として 望 ま しくないからである
ⅲ 解 決 策 の 実 行 本 校 では 地 域 への 参 画 として 以 下 のような 取 り 組 みを 行 っている 神 事 場 などの 清 掃 五 街 道 のガイドウォーク 地 域 の 緑 を 増 やす 活 動 商 店 街 のキャラクターづくり 木 戸 芸 者 などこんぴら 歌 舞 伎 の 手 伝 い 等 ⅳ 取 り 組 みの 評 価 の 場 の 設 定 解 決 策 に 取 り 組 んだ 後,その 成 果 と 課 題 を 見 つめ 直 すことも 大 切 である 成 果 を 分 析 することで 子 どもたちは 地 域 に 貢 献 できた 喜 びを 感 じ, 自 分 に 対 する 自 信 を 深 めることができる そして, 次 なる 地 域 の 問 題 に 出 合 ったとき, 前 向 きに 行 動 する 意 欲 をもつことができると 考 える また, 課 題 を 見 出 すことで 子 どもたちは 問 題 解 決 の 困 難 さを 感 じ,それらに 継 続 的 に 取 り 組 むことの 必 要 性 やそれらに 取 り 組 み 続 けている 地 域 の 人 たちへ の 畏 敬 の 念 を 高 めることができると 考 える このように 自 分 たちの 取 り 組 みを 評 価 する 際 には, 共 に 取 り 組 んだ 方 や 専 門 家 の 方 にも 参 加 していただき 評 価 していただくことが 成 果 や 課 題 を 実 感 する 上 で 望 ましい
地 域 のひと もの ことに 対 する 経 験 や 関 心 を 広 げる 手 立 て 琴 平 には 豊 かなひと もの ことがあるにもかかわらず, 子 どもたちはそれら に 接 した 経 験 が 思 いの 外 少 ない そこで,そうした 経 験 やそれらに 対 する 関 心 を 広 げ るため, 次 のように 活 動 を 組 織 したり 行 事 を 工 夫 したりして, 子 どもたちが 地 域 に 暮 らす 多 様 な 人 々と 交 流 したり 自 主 的 に 地 域 の 人 もの ことへアンテナを 張 り 巡 らし たりすることができるようにした < 地 域 を 探 検!オリエンテーリング> 琴 平 のよさを 楽 しく 広 く 学 ぶ 機 会 を 作 ろうと, 昨 年 11 月 10 日 に 異 学 年 のチー ムに 分 かれて 山 下 を 舞 台 にオリエンテーリングを 行 った 出 題 や 引 率 などで 琴 平 高 校 の 方 にご 協 力 いただいた 琴 平 山 から 榎 井 に 至 る 広 い 地 域 を 巡 った 子 ど もたちは, 呑 象 楼 や 春 日 神 社 といった 他 校 区 の 文 化 財 を 見 たり 大 久 保 諶 之 丞 や 長 谷 川 佐 太 郎 などの 業 績 にふれたりして, 楽 しく 見 聞 を 広 めていった < 地 域 の 婦 人 会 によるこんぴら 船 々の 指 導 > 本 校 では 運 動 会 のフィナーレに 毎 年 こんぴら 船 々を 踊 っている 一 昨 年 度 か ら 婦 人 会 の 方 の 協 力 を 得 て 子 どもたちに 正 しく 美 しい 踊 り 方 を 指 導 いただいて いる 掌 を 上 に 向 けてお 供 えするように とか 帆 がたなびくように 腕 を 振 って というように 由 来 にまつわる 指 導 をいただくなどして, 子 どもたちの 踊 りもとても 上 手 になった < 琴 平 高 校 伝 統 芸 能 クラブによる 正 調 こんぴら 船 々の 実 演 > 昨 年 度, 運 動 会 のこんぴら 船 々の 総 踊 りのはじめに 琴 平 高 校 伝 統 芸 能 クラブ の 皆 さんに 正 調 こんぴら 船 々を 実 演 していただいた 三 味 線 や 締 太 鼓 の 演 奏, 朗 々とした 歌 声, 着 物 姿 で 踊 る 集 団 美 中 には 本 校 の 卒 業 生 もおり, 子 どもた ちは 目 を 輝 かせて 踊 りを 見 ていた 地 域 の 踊 りの 伝 統 を 肌 で 感 じるひとときと なった