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自転車等の利用と駐輪対策に関する総合計画 中間見直し

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第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 症 例 1 交 通 事 故 により 左 上 腕 骨 大 結 節 骨 折 と 左 肩 関 節 腱 板 断 裂 を 受 傷 した 競 輪 選 手 の 一 症 例 12 8 1. 症 例 紹 介 34 X 9 5 12 12 X 11 1 8 2. 初 期 評 価 80 140

2 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 表 1 理 学 療 法 初 期 中 間 評 価 ROM 140 155 155 MMT 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 5 5 5 図 1 問 題 点 の 要 約 155 80 4 1 3. 初 期 評 価 時 の 問 題 点 1

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 3 図 2 前 鋸 筋 の 筋 力 強 化 練 習 背 臥 位 にて 開 始 肢 位 を 肩 関 節 屈 曲 90 位, 肘 関 節 伸 展 位, 前 腕 回 内 回 外 中 間 位 とし, この 状 態 から 上 肢 を 上 方 に 突 き 上 げるようにし 自 重 にて 肩 甲 骨 の 外 転 運 動 をおこなった. 4. 理 学 療 法 4 5 1 40 80 90 2 1) 3 5. 中 間 評 価 11

4 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 3 回 旋 筋 腱 板 の 筋 力 強 化 練 習 端 座 位 にて 開 始 肢 位 を 肩 関 節 屈 曲 伸 展 中 間 位, 肘 関 節 屈 曲 位 とし, 手 関 節 を 掌 屈 させて 手 指 で 肩 関 節 の 前 面 に 触 れるようにした 状 態 から, 上 腕 の 近 位 部 にセラバンドで 抵 抗 をかけた 状 態 で, 肩 関 節 の 屈 曲 運 動 をおこなった. 図 4 中 間 評 価 の 姿 勢 観 察 ベッド 上 での 両 肘 支 持 をとらせ,ハンドルを 握 る 様 子 を 再 現 させたところ, 体 幹 の 左 側 屈 と, 左 肩 甲 帯 の 下 制 が 出 現 し,また 著 明 な 翼 状 肩 甲 を 呈 していた. 100 4 155 4

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 5 図 5 中 間 評 価 の 問 題 点 の 要 約 5 1 6. 中 間 評 価 の 問 題 点 5 7. 理 学 療 法 6 7 8 1 kg 90 9 10 90 位 90 位 11 0 90 90 12

6 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 6 僧 帽 筋 下 部 線 維 の 筋 力 強 化 練 習 腹 臥 位 にて 肩 関 節 屈 曲 位, 肘 関 節 伸 展 位 とし, 徒 手 での 抵 抗 による 肩 甲 骨 の 下 制 内 転 運 動 をおこなった. 図 7 肩 関 節 外 旋 筋 群 の 筋 力 強 化 練 習 座 位 にて 肩 関 節 軽 度 屈 曲 位, 肘 関 節 屈 曲 位 とし, 肘 支 持 の 状 態 で, 肩 関 節 外 旋 方 向 に 抵 抗 が 加 わ るようにセラバンドを 手 掌 で 把 持 し, 肩 関 節 内 旋 位 からの 外 旋 運 動 をおこなった. 90 位 8. 結 果 6 175

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 7 図 8 肩 甲 骨 内 転 筋 群 の 筋 力 強 化 練 習 座 位 にて 両 手 でセラバンドを 把 持 し, 肩 関 節 屈 曲 位, 肘 関 節 軽 度 屈 曲 位, 前 腕 回 内 位 の 状 態 から 肩 関 節 伸 展, 肘 関 節 屈 曲, 前 腕 回 外 をさせることで, 肩 甲 骨 の 内 転 運 動 をおこなった. 図 9 肩 関 節 屈 曲 筋 群 外 転 筋 群 の 筋 力 強 化 練 習 座 位 にて1 kgのダンベルを 把 持 し, 上 肢 を 体 側 に 下 垂 させている 状 態 から, 前 腕 回 内 回 外 中 間 位, 肘 関 節 伸 展 位 のままでの 肩 関 節 屈 曲 外 転 運 動 を 各 90 までおこなう. 図 10 前 鋸 筋 の 等 尺 性 収 縮 練 習 として 腕 立 て 伏 せ 肢 位 の 維 持

8 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 11 肩 関 節 の 水 平 外 転 筋 群 および 肩 甲 骨 内 転 筋 群 の 筋 力 強 化 練 習 腹 臥 位 にて,ベッドに 胸 部 が 接 触 しないようにクッションを 設 置 し, 肩 関 節 外 転 90 位, 肘 関 節 屈 曲 90 位, 前 腕 回 内 位 からの 肩 関 節 の 水 平 外 転 運 動 および 肩 甲 骨 の 内 転 運 動. 図 12 腹 筋 群 の 強 化 背 臥 位 にて 両 股 関 節, 膝 関 節 屈 曲 90 とし, 両 手 掌 を 頭 部 の 後 方 で 組 んだ 状 態 での 体 幹 の 屈 曲 位 保 持 と, この 状 態 での 股 関 節 と 膝 関 節 の 屈 曲 伸 展 運 動. 表 2 理 学 療 法 最 終 評 価 ROM 180 180 MMT 5 5 5 5 5 5 5 180 5 2

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 9 9. 考 察 2) 3) 10.まとめ 文 献 1) 4: 6 9, 2004. 2) 14: 20 23, 2006. 3) 26: 355 362, 2005.

10 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 肩 関 節 のおけがをされ 競 技 復 帰 を 目 指 されている 競 輪 選 手 の 皆 さまへのメッセージ 今 回 の 患 者 さまは 交 通 事 故 により 肩 関 節 の 外 傷 を 受 傷 されましたが 交 通 事 故 以 外 でも 競 輪 選 手 が 競 技 中 に 受 傷 する 外 傷 部 位 で 最 も 多 いのも 肩 関 節 です 競 輪 では 競 技 復 帰 や 競 技 能 力 の 向 上 を 目 的 に 下 肢 の 筋 力 強 化 を 重 点 的 におこなうことが 多 いようですが 競 技 特 性 を 考 えると 筋 力 強 化 は 下 肢 だけ ではなく 肩 関 節 や 肩 甲 帯 周 囲 についてもおこなうことがハンドルをにぎる 際 の 固 定 性 の 向 上 と 体 幹 の 安 定 性 の 向 上 をもたらし 下 肢 の 筋 力 発 揮 がおこないやすくなるなどの 効 果 につながります この ため 肩 関 節 の 外 傷 後 の 競 技 復 帰 だけではなく 競 輪 の 競 技 能 力 を 向 上 させるためにも 肩 関 節 や 肩 甲 帯 周 囲 筋 の 筋 力 強 化 をおこなうことが 重 要 であると 考 えます 今 回 の 症 例 報 告 で 提 示 した 筋 力 強 化 方 法 は 肩 関 節 に 外 傷 をお 持 ちの 方 だけでなく 競 技 力 を 向 上 させたい 方 にとっても 一 人 でおこなえる 肩 関 節 周 囲 の 固 定 性 を 向 上 させる 筋 力 強 化 方 法 として 役 立 つと 思 います

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 11 症 例 2 運 動 肢 位 を 考 慮 した 運 動 療 法 にて 良 好 な 結 果 が 得 られた 広 範 囲 腱 板 断 裂 の 一 症 例 1) 1. 症 例 紹 介 77 2. 現 病 歴 5 S 90 2 ADL 3. 理 学 療 法 評 価 ( 図 1 2) 170 30 170 30 40 20 50 0 T8 20 2 2 2 4. 肩 関 節 疾 患 治 療 成 績 判 定 基 準 1 5/30

12 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 1 初 期 評 価 時 の 肩 関 節 屈 曲 運 動 初 期 評 価 時 において 肩 関 節 屈 曲 30 であった. 肘 関 節 屈 曲 位 で あり, 運 動 時 痛 を 訴 えていた. 屈 曲 動 作 は 緩 慢 であり,とく に 下 降 時 において 強 い 疼 痛 を 認 め, 動 作 が 途 中 で 数 回 停 止 した. 図 2 肘 関 節 伸 展 可 動 域 上 腕 二 頭 筋 の 筋 緊 張 は 高 く, 肘 関 節 伸 展 は- 20 であり, 関 節 拘 縮 を 認 めた. 2 1/10 2/10 8/30 3 X 5/5 4 10/15 31/100 5. 動 作 筋 電 図 評 価 1200 MYOSYSTEM1200 1000 Hz Blue Sensor M Myoresearch XP 10 500 Hz

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 13 2 3 3 0 2 cm 2 3 cm 2 3 cm 2 3 cm 1/2 4 cm 25 2 cm 1/2 7 6. 結 果 1) 座 位 における 肩 関 節 屈 曲 時 の 動 作 筋 電 図 波 形 ( 図 3) 20 2) 側 臥 位 における 肩 関 節 屈 曲 時 の 動 作 筋 電 図 波 形 ( 図 4) 3) 腹 臥 位 における 肩 関 節 屈 曲 時 の 動 作 筋 電 図 波 形 ( 図 5)

14 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 3 座 位 での 肩 関 節 屈 曲 時 の 肩 関 節 周 囲 筋 の 動 作 筋 電 図 波 形 肩 関 節 屈 曲 角 度 増 加 に 伴 い 三 角 筋 の 筋 活 動 は 漸 増 するのが 確 認 できた. 棘 下 筋 の 筋 活 動 は 軽 度 の 増 加 を 認 めたが, 広 背 筋 の 筋 活 動 は 認 められなかった. 動 作 は 緩 やかであり,インピンジメントによる 疼 痛 が 生 じ,スムーズな 速 度 でお こなえなかった.1 回 の 動 作 に20 秒 近 く 要 した. 図 4 側 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 時 の 肩 関 節 周 囲 筋 の 動 作 筋 電 図 波 形 動 作 をとおして 三 角 筋 は 全 線 維 比 較 的 高 い 筋 活 動 を 呈 したが,ほぼ 一 定 していた. 棘 下 筋 は 軽 度 増 加 傾 向 を 認 めたが, 広 背 筋 の 筋 活 動 は 認 められなかった. 動 作 は 緩 やかであり, 途 中 何 度 か 疼 痛 のため 動 作 が 停 止 もしくは 下 降 ( 水 平 内 転 ) することがあり, 急 激 なインピンジメントによる 疼 痛 を 防 ぐために 理 学 療 法 士 が 上 肢 の 下 方 に 手 を 添 えながら 実 施 した.

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 15 図 5 腹 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 時 の 肩 関 節 周 囲 筋 の 動 作 筋 電 図 波 形 開 始 肢 位 で 三 角 筋 後 部 線 維, 上 腕 三 頭 筋 の 筋 活 動 は 高 く, 角 度 増 加 に 伴 い 筋 活 動 は 漸 減 した. 座 位 と 側 臥 位 では 筋 活 動 を 認 めなかった 広 背 筋 は 腹 臥 位 で 明 らかに 筋 活 動 を 認 めた. 動 作 は 緩 やかであったが,インピンジメントによる 疼 痛 はなく, 比 較 的 スムーズにおこなうことができた. 7. 考 察 30 ADL 0 30 60 90 120 60 90 60 ADL

16 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ ADL 1) 30 90 8. 運 動 療 法 120 0 90 90 120 6 0 90 0 90 90 120 100 90 120 0 120 90 7 8 2 90

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 17 a) 肩 関 節 屈 曲 0 b) 肩 関 節 屈 曲 90 c) 肩 関 節 屈 曲 120 図 6 腹 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 腹 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 運 動 と 保 持 を 示 す.a)は 肩 関 節 屈 曲 0,b)は 肩 関 節 屈 曲 90,c)は 肩 関 節 屈 曲 120 の 保 持 である. 屈 曲 0 から90 の 運 動 範 囲 から 開 始 し, 可 能 になったら 90 から120 の 運 動 範 囲 に 拡 大 した. a) 広 背 筋 b) 棘 下 筋 図 7 広 背 筋 と 棘 下 筋 のダイレクトストレッチング a)は 広 背 筋 のダイレクトストレッチングである. 肩 甲 骨 下 角 から 腋 窩 後 壁 にかけて 筋 線 維 に 垂 直 方 向 に 動 かしながら 広 背 筋 の 筋 線 維 を 緩 めていく.b)は 棘 下 筋 のダイレクトストレッチングである. 指 先 を 棘 下 窩 に 沿 わせて, 筋 線 維 に 垂 直 方 向 に 動 かしながら 棘 下 筋 の 筋 線 維 を 緩 めていく.

18 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 8 腹 臥 位 での 肩 関 節 水 平 外 転 保 持 腹 臥 位 にて 肩 関 節 屈 曲 90 位 にする.その 状 態 から 水 平 外 転 方 向 に 運 動 させ, 保 持 させる. 主 に 棘 下 筋 の 筋 力 強 化 を 図 ることが 可 能 で ある. 初 期 評 価 時 には 腹 臥 位 での 水 平 外 転 方 向 の 運 動 は 困 難 であった. a) 肩 関 節 屈 曲 b) 肩 関 節 外 転 図 9 運 動 療 法 4 週 間 後 の 上 肢 挙 上 肩 関 節 屈 曲 140, 外 転 140 自 動 運 動 にて 可 能.

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 19 1 4 4 140 10 30 140 9 140 文 献 1) 37: 649 655, 2009.

20 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 手 術 が 困 難 となった 腱 板 断 裂 の 患 者 さまならびにご 家 族 の 皆 さまへのメッセージ 腱 板 断 裂 の 治 療 は 一 般 的 に 手 術 が 適 応 されますが 内 科 疾 患 がある 場 合 や 断 裂 してからの 経 過 が 長 い 場 合 など 手 術 の 適 応 とならないことがあります そのような 場 合 保 存 療 法 の 一 つである 運 動 療 法 が 選 択 される 場 合 があります 上 肢 挙 上 するにあたり 腱 板 は 上 腕 骨 頭 を 求 心 位 にする 役 割 があるため 腱 板 断 裂 を 呈 することにより 上 肢 を 挙 上 することが 困 難 になり 日 常 生 活 や 職 業 に 支 障 をきたしてし まいます 腱 板 断 裂 に 対 する 運 動 療 法 の 目 的 は 肩 関 節 の 拘 縮 をきたさないようにすることが 大 切 です 御 自 身 でセルフエクササイズをおこなう 場 合 は 両 手 を 組 んで 健 側 上 肢 で 誘 導 しながらゆっくりと 挙 上 す ることを 推 奨 します 仰 臥 位 でおこなうと 容 易 におこなうことができます( 図 10) また 代 償 動 作 も 少 なく 異 常 動 作 になりにくい 利 点 があります また 座 位 でおこなうと 重 力 に 抗 することになります( 図 11) よってある 程 度 の 患 側 の 筋 力 強 化 を 図 ることが 可 能 でありますが 無 理 をすると 代 償 動 作 を 伴 い やすいので 注 意 しなければなりません 代 償 動 作 には 肩 甲 帯 の 挙 上 が 含 まれます 鏡 などを 見 ながら 図 10 仰 臥 位 での 両 手 を 組 んだ 上 肢 挙 上 図 11 座 位 での 両 手 を 組 んだ 上 肢 挙 上

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 21 左 右 の 肩 の 高 さに 配 慮 してください つぎに 上 肢 挙 上 の 運 動 機 能 改 善 を 目 的 としたセルフエクササイズについて 説 明 します 先 述 したよ うに 腱 板 は 上 腕 骨 頭 を 求 心 位 にする 役 割 があることから 腱 板 断 裂 によって 上 肢 を 挙 上 することが 困 難 になります しかし 腱 板 には 棘 上 筋 棘 下 筋 小 円 筋 肩 甲 下 筋 の4つがあり そのすべてが 断 裂 す ることは 少 なく 通 常 上 方 に 位 置 する 棘 上 筋 を 中 心 に 断 裂 し 下 方 の 腱 板 またはその 一 部 が 残 存 して いることが 多 いのです 腱 板 以 外 にも 上 腕 骨 に 停 止 する 筋 に 広 背 筋 もあり これらを 効 率 よく 使 える ようにすることで 上 肢 の 運 動 機 能 の 改 善 が 期 待 されます 患 側 を 上 側 にした 側 臥 位 とします その 状 態 から 肩 関 節 を 屈 曲 させ さまざまな 角 度 で 保 持 させます( 図 12) 座 位 で 肩 関 節 屈 曲 ができなかった としても 姿 勢 を 変 化 させることで 屈 曲 運 動 や 保 持 ができる 可 能 性 があります もしできない 場 合 は さまざまな 屈 曲 角 度 で 上 肢 をベッド 下 におろし その 状 態 から 上 方 に 持 ち 上 げます それも 困 難 であれ ばご 家 族 様 には 少 し 運 動 を 補 助 していただき 自 動 介 助 運 動 でおこなっていただきます( 図 13) できる ようになったら 介 助 を 減 らしていき 御 自 身 の 筋 力 だけでおこなえるまで 練 習 します さまざまな 角 度 で 空 間 保 持 する 能 力 を 身 につければその 運 動 機 能 が 座 位 でも 発 揮 できる 準 備 ができたことになります 今 回 紹 介 させていただいた 症 例 は 側 臥 位 で 困 難 であった 例 ですが 腹 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 は 可 能 であ りました 腹 臥 位 での 肩 関 節 屈 曲 が 可 能 になれば 側 臥 位 さらに 座 位 へと 移 行 し 日 常 生 活 の 支 障 が 軽 減 いたしました 座 位 で 無 理 しておこなうよりも 姿 勢 を 変 えて 運 動 してみてください 図 12 側 臥 位 での 肩 関 節 を 屈 曲 保 持 ( 自 動 運 動 ) 図 13 側 臥 位 での 肩 関 節 を 屈 曲 保 持 ( 自 動 介 助 運 動 )

22 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 症 例 3 遠 隔 部 鍼 治 療 により 肩 関 節 可 動 域 制 限 が 改 善 した 一 症 例 温 溜 と 外 関 を 用 いて 1) 75 120 1. 症 例 紹 介 56 X 3 M 2 30 X 2 X 2 1 2 75 90 Neumann 2)

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 23 図 1 安 静 座 位 姿 勢 ( 初 期 評 価 時 ) 安 静 座 位 姿 勢 では, 左 側 の 鎖 骨 挙 上, 肩 甲 骨 挙 上 軽 度 外 転 前 傾 位, 上 腕 骨 頭 は 上 方 変 位 を 呈 していた. 図 2 左 肩 関 節 屈 曲 運 動 ( 初 期 評 価 時 ) 左 肩 関 節 屈 曲 運 動 は 屈 曲 初 期 に 上 腕 骨 の 前 上 方 変 位 を 認 めた.こ のとき, 肩 甲 骨 の 上 方 回 旋 は 右 側 と 比 べ 乏 しい 状 態 であった. 触 診 では 左 三 角 筋 前 部 線 維 の 筋 緊 張 亢 進, 棘 上 筋 の 筋 緊 張 低 下, 左 胸 鎖 関 節 周 囲 から 左 側 の 僧 帽 筋 上 部 線 維, 大 胸 筋 鎖 骨 部 の 皮 膚 短 縮 を 認 めた. 関 節 可 動 域 は 左 肩 関 節 自 動 屈 曲 75, 他 動 90 であった. 図 3 左 胸 鎖 関 節 周 囲 の 皮 膚 短 縮 本 症 例 の 皮 膚 短 縮 は 放 射 線 治 療 後 の 晩 期 障 害 として 出 現 したと 考 えられた. 皮 膚 短 縮 に 対 して 集 毛 鍼 を 用 いて 改 善 を 試 みたが, 効 果 をみることはできなかった. 3 6 6 3) 3) 1) 6

24 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 健 常 者 のモデル 本 症 例 のモデル 図 4 健 常 者 と 本 症 例 の 棘 上 筋 の 起 始 停 止 距 離 の 比 較 三 角 筋 前 部 線 維 の 筋 活 動 が 優 位 な 屈 曲 動 作 を 繰 り 返 すことで 安 静 時 の 上 腕 骨 頭 が 上 方 変 位 を 呈 した.そのため 棘 上 筋 の 起 始, 停 止 の 距 離 が 近 くなり, 棘 上 筋 が 弛 緩 位 とな るため 屈 曲 動 作 時 の 棘 上 筋 の 筋 活 動 低 下 を 招 いたという 可 能 性 が 考 えられた. 2. 再 評 価 45 60 4) 5) 4 3. 治 療 の 経 過 6)

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 25 図 5 肩 関 節 近 位 抵 抗 での 棘 上 筋 トレーニング 棘 上 筋 の 筋 活 動 促 通 目 的 に 肩 関 節 近 位 抵 抗 にて 棘 上 筋 トレーニングをお こなった.しかし, 代 償 動 作 として 肩 甲 帯 が 挙 上 し, 触 診 で 三 角 筋 中 部 線 維 の 筋 緊 張 亢 進 がみられ 棘 上 筋 の 筋 活 動 を 促 通 することはできなかった. 5 7) 1) 4. 表 面 筋 電 図 の 測 定 方 法 および 結 果 8) 6 5. 鍼 治 療 内 容 と 結 果

26 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 図 6 本 症 例 と 健 常 者 の 鍼 治 療 前 の 表 面 筋 電 図 波 形 の 比 較 本 症 例 の 鍼 治 療 前 の 波 形 では, 健 常 者 の 波 形 と 比 較 して 肩 関 節 屈 曲 初 期 に 三 角 筋 前 部 線 維 の 筋 活 動 亢 進 と 棘 上 筋 の 筋 活 動 低 下 が 認 められた. 図 7 本 症 例 の 治 療 に 用 いた 経 穴 循 経 取 穴 理 論 に 基 づいて 経 穴 を 選 択 した. 左 温 溜 は 左 三 角 筋 前 部 線 維 を 通 る 手 陽 明 大 腸 経 上 の 経 穴 で, 左 三 角 筋 前 部 線 維 の 筋 緊 張 抑 制 目 的 に 選 択 した.また, 左 外 関 は 筋 の 活 動 性 が 低 下 している 左 棘 上 筋 を 通 る 手 少 陽 三 焦 経 上 の 経 穴 で, 左 棘 上 筋 の 筋 活 動 促 通 を 目 的 に 選 択 した. 39 mm 20 7 7)

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 27 鍼 治 療 前 鍼 治 療 後 鍼 治 療 前 ( 後 面 ) 鍼 治 療 後 ( 後 面 ) 図 8 左 肩 関 節 屈 曲 運 動 ( 最 終 評 価 時 ) 鍼 治 療 10 回 後, 左 肩 関 節 屈 曲 運 動 初 期 の 上 腕 骨 頭 の 前 上 方 変 位 は 軽 減 され, 肩 関 節 屈 曲 可 動 域 は 120 と 改 善 された. 図 9 本 症 例 と 健 常 者 の 鍼 治 療 後 の 表 面 筋 電 図 波 形 の 比 較 本 症 例 の 鍼 治 療 10 回 後 の 波 形 では, 健 常 者 の 波 形 と 同 様 に 肩 関 節 屈 曲 初 期 の 棘 上 筋 の 筋 活 動 が 認 められた.また, 鍼 治 療 前 にみられた 肩 関 節 屈 曲 初 期 の 三 角 筋 前 部 線 維 の 筋 活 動 亢 進 と 棘 上 筋 の 筋 活 動 低 下 は 改 善 傾 向 を 示 した. 5 mm 1) 5 10 2 10 10 75 120 8 10 9

28 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 6. 考 察 1) C 9) C 10) C 7.まとめ 文 献 1) 53: 20 27, 2000. 2) Neumann DA p 126 2002. 3) p 15 1999.

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 29 4) 33: 51 52, 2003. 5) 2 pp 15-16 2008. 6) 3: 1 7, 2003. 7) pp 48 49 2004. 8) 6: 109 115, 2006. 9) pp 395 408 2000. 10) 5: 11 21, 2005.

30 第 1 章 運 動 器 疾 患 に 関 する 理 学 療 法 ケーススタディ 五 十 肩 や 肩 関 節 周 囲 炎 などで 腕 が 挙 がらなくなった 肩 の 痛 みでお 困 りの 患 者 さまへのメッセージ 今 回 は 頸 部 リンパ 節 への 放 射 線 治 療 の 後 遺 症 で 腕 が 挙 がらなくなったという 特 異 的 な 場 合 の 鍼 治 療 を 報 告 しました 実 際 におこなった 鍼 治 療 は 腕 が 挙 がらなくなった 原 因 である 三 角 筋 や 棘 上 筋 に 直 接 刺 激 したのではなく 三 角 筋 や 棘 上 筋 への 関 与 が 考 えられた 経 絡 のツボに 刺 激 をしました( 図 10) 経 絡 とは 東 洋 医 学 において 人 間 の 体 には 六 臓 六 腑 があり その1つ1つに12のエネルギーの 道 があると いわれております そのエネルギーの 道 が 経 絡 と 考 えられています また ツボは 経 絡 上 に 多 数 存 在 し ツボを 刺 激 することで 全 身 の 色 々な 場 所 に 効 果 を 及 ぼすことが 可 能 といわれています ツボの1つ1つ を 駅 だとすれば 経 絡 は 駅 を 縦 横 に 結 ぶ 線 路 のようなものです 実 際 の 治 療 では 動 作 分 析 から 問 題 となる 筋 肉 を 明 確 にして その 筋 肉 を 対 象 に 治 療 をおこないます 今 回 の 場 合 問 題 となっている 筋 肉 上 に 位 置 するツボを 選 択 することもできましたが 当 該 筋 肉 を 通 る 経 絡 上 からツボを 選 択 する 遠 隔 部 鍼 治 療 が 有 効 となりました 実 際 の 鍼 治 療 では 問 題 となる 筋 肉 が 肩 の 上 にある 僧 帽 筋 上 部 線 維 という 筋 であれば 手 少 陽 三 焦 経 上 のツボ 肩 の 後 ろにある 棘 下 筋 大 円 筋 小 円 筋 という 筋 であれば 手 太 陽 小 腸 経 上 のツボ 肩 の 前 にある 三 角 筋 や 上 腕 二 頭 筋 という 筋 であれば 手 太 陰 肺 経 上 あるいは 手 陽 明 大 腸 経 上 のツボを 選 択 することになります 今 回 は 腕 が 挙 がらなくなった 場 合 にご 自 身 でできるツボ 刺 激 方 法 を 紹 介 致 します 刺 激 方 法 は 腕 が 挙 がらなくなった 側 の 指 の 先 を 圧 迫 します( 図 11) 圧 迫 する 指 の 先 には 腕 を 通 る 経 絡 のツボがあります 圧 迫 する 場 所 は 肩 の 上 にある 僧 帽 筋 上 部 線 維 という 筋 であれば 薬 指 肩 の 後 ろにある 棘 下 筋 大 円 筋 図 10 今 回 の 治 療 に 用 いたツボ 温 溜 (おんる)は 三 角 筋 前 部 線 維 を 通 る 手 陽 明 大 腸 経 上 のツボで, 外 関 (がいかん)は 棘 上 筋 を 通 る 手 少 陽 三 焦 経 上 のツボです.

第 1 節 肩 関 節 における 運 動 器 疾 患 に 対 する 理 学 療 法 31 小 円 筋 という 筋 であれば 小 指 肩 の 前 にある 三 角 筋 や 上 腕 二 頭 筋 という 筋 であれば 親 指 と 人 差 し 指 の 先 を 圧 迫 します( 図 12) 圧 迫 する 力 はご 自 身 が 気 持 ちいいと 感 じる 程 度 の 強 さです 強 い 痛 みがでな いように 気 をつけます 圧 迫 する 時 間 は20 秒 程 で 充 分 です 圧 迫 することで 経 絡 上 にある 筋 肉 の 痛 み や 凝 り 感 を 緩 和 する 効 果 が 期 待 できますので1 度 試 してみてください 図 11 自 宅 でできるツボ 刺 激 ポイント 圧 迫 する 場 所 は, 肩 の 上 にある 僧 帽 筋 上 部 線 維 という 筋 であれば 薬 指, 肩 の 後 ろに ある 棘 下 筋, 大 円 筋, 小 円 筋 という 筋 であれば 小 指, 肩 の 前 にある 三 角 筋 や 上 腕 二 頭 筋 という 筋 であれば 親 指 と 人 差 し 指 の 先 を 圧 迫 します. 図 12 実 際 の 刺 激 方 法 圧 迫 している 場 所 は, 肩 の 前 にある 三 角 筋 という 筋 に 問 題 がある 場 合 で 人 差 し 指 の 先 を 圧 迫 しています. 圧 迫 する 時 間 は 20 秒 程 で,ご 自 身 が 気 持 ちいいと 感 じる 程 度 の 強 さでおこないます. 強 い 痛 みがでないように 気 をつけましょう.