(3) 取 組 1 東 京 都 による 対 策 と 現 況 東 京 都 下 水 道 局 では 平 成 25~27 年 度 までに 皇 居 外 苑 濠 への 雨 天 時 の 下 水 道 からの 越 流 を 50mm/ 時 以 上 の 豪 雨 時 を 除 き 防 止 する 措 置 を 行 う 予 定 である 2 環 境 省 による 水 質 改 善 計 画 に 基 づく 取 組 環 境 省 では 下 水 道 越 流 防 止 を 踏 まえた 取 り 組 みについて 学 識 者 の 意 見 を 聴 き 検 討 を 行 い 平 成 22 年 3 月 に 皇 居 外 苑 濠 水 質 改 善 計 画 を 作 成 した 本 計 画 では 濠 の 水 質 改 善 対 策 が 下 水 道 越 流 防 止 後 も 水 質 の 改 善 水 量 の 確 保 両 面 において 必 要 であることから 以 下 のような 様 々な 対 策 を 掲 げて いる ⅰ) 濠 水 浄 化 施 設 の 改 善 水 質 改 善 の 中 心 的 施 策 として 処 理 水 量 の 回 復 浄 化 効 率 の 向 上 運 転 コ スト 改 善 を 課 題 として 対 策 を 進 めている 平 成 21 年 度 からは 濾 材 の 交 換 等 の 当 面 の 浄 化 機 能 既 存 浄 化 施 設 の 補 修 を 行 うとともに 新 たしい 濠 水 浄 化 施 設 の 検 討 を 開 始 した 新 濠 水 浄 化 施 設 は 既 存 浄 化 施 設 の 隣 接 地 に 整 備 する 予 定 で 現 在 設 計 作 業 中 で 平 成 24 年 度 末 竣 工 予 定 となっている 新 施 設 は 浄 化 水 量 を 最 大 20,000 m 3 / 日 と 増 加 するとともに 既 存 浄 化 方 式 より 浄 化 能 力 の 優 れた 高 速 凝 集 沈 殿 方 式 を 採 用 する 予 定 である 新 濠 水 浄 化 施 設 に 関 する 基 本 的 事 項 項 目 新 濠 水 浄 化 施 設 既 存 浄 化 施 設 位 置 日 比 谷 濠 端 ( 管 理 区 域 内 ) 日 比 谷 濠 端 ( 管 理 区 域 内 ) 浄 化 水 量 最 大 20,000 m 3 / 日 最 大 14,000 m 3 / 日 (H21 実 績 ) 浄 化 対 象 SS,T-P SS 除 去 率 流 入 水 に 対 して SS 67% (H21) SS,T-P ともに 70% 以 上 浄 化 方 式 高 速 凝 集 沈 殿 方 式 上 向 流 凝 集 濾 過 方 式 皇 居 外 苑 新 濠 水 浄 化 施 設 基 本 計 画 より 1
ⅱ) 濠 水 の 円 滑 な 循 環 の 確 保 濠 水 の 水 質 改 善 には 濠 水 が 滞 留 せず 雨 水 や 処 理 水 が 円 滑 に 循 環 するこ とが 重 要 であり このため 次 の 対 策 を 進 めている 浄 化 施 設 の 処 理 水 の 千 鳥 ヶ 淵 側 への 放 流 量 の 増 加 のための 送 水 ポンプの 改 修 (H22~23) 円 滑 な 通 水 確 保 のための 水 門 改 修 適 切 な 水 門 操 作 マニュアルの 作 成 ⅲ) 合 流 式 下 水 道 の 部 分 分 流 化 北 の 丸 地 区 において 合 流 式 下 水 道 の 部 分 分 流 化 を 東 京 都 等 と 連 携 し 実 施 ( 環 境 省 施 工 分 については H23 年 度 前 半 で 竣 工 予 定 ) ⅳ)その 他 千 鳥 が 淵 戦 没 者 墓 苑 等 で 雨 水 を 活 用 した 補 給 水 導 入 可 能 性 の 調 査 検 討 発 生 したアオコの 回 収 なお 牛 ヶ 淵 において 濠 の 干 しあげをこれまで 2 回 実 施 しており 一 時 的 な 水 質 改 善 効 果 を 得 ているが 千 鳥 ヶ 淵 からの 濠 水 により 効 果 が 継 続 しないこと 生 物 への 影 響 が 不 明 なことから 今 後 の 実 施 には 検 討 が 必 要 である また 中 長 期 的 な 対 策 として 浚 渫 覆 砂 等 の 底 泥 対 策 の 検 討 外 部 か らの 導 水 の 検 討 水 生 植 物 の 適 切 な 管 理 による 水 質 確 保 の 検 討 を 進 める 予 定 である 3 対 策 による 水 質 の 改 善 予 測 水 質 改 善 計 画 の 検 討 においては 対 策 の 実 施 による 水 質 改 善 効 果 について 予 測 を 行 っている 千 鳥 ヶ 淵 については 3 箇 所 について 予 測 を 行 っている その 結 果 によれば 下 水 道 越 流 防 止 により ある 程 度 改 善 は 見 込 めるものの 現 在 アオコによる 支 障 が 生 じていない 程 度 の 水 質 に 改 善 するためには さらな る 対 策 が 必 要 としている 下 水 道 越 流 防 止 に 加 え 浄 化 施 設 の 改 善 等 による 処 理 水 量 の 回 復 処 理 効 率 の 改 善 処 理 水 の 千 鳥 ヶ 淵 側 への 重 点 放 流 などの 対 策 を 行 った 場 合 現 在 の 桜 田 濠 を 上 回 る 水 質 改 善 を 予 想 している ( 次 表 参 照 ) 2
対 策 による 効 果 予 測 ( 年 間 平 均 値 ) T-N (mg/l) T-P (mg/l) COD (mg/l) 現 況 (H20) 2.12~2.23 0.103~0.136 14.0~16.2 下 水 道 越 流 防 止 1.93~2.13 0.057~0.073 10.0~13.1 越 流 防 止 1.00~1.31 0.023~0.038 2.9~4.3 + 放 流 量 見 直 し + 浄 化 施 設 改 善 桜 田 濠 (H17~21) 0.88~1.02 0.027~0.032 4.4~5.5 霞 ヶ 浦 ( 西 浦 )H20 1.4 0.10 8.4 琵 琶 湖 ( 南 湖 )H20 0.26 0.013 3.5 4 千 鳥 ヶ 淵 における 対 策 の 可 能 性 について 水 質 改 善 計 画 では 当 面 の 対 策 として 濠 水 浄 化 施 設 の 改 修 濠 水 の 円 滑 な 循 環 の 確 保 下 水 道 の 部 分 分 流 化 を 挙 げているが これらは 外 苑 濠 全 体 を 対 象 とした 対 策 であり 特 定 の 濠 を 対 象 とした 対 策 は 特 に 示 していない しかし 中 長 期 的 には 水 質 改 善 の 状 況 を 見 ながら 必 要 があれば 底 泥 対 策 雨 水 等 の 活 用 による 水 源 の 検 討 水 生 植 物 の 適 切 な 管 理 による 水 質 の 維 持 など を 行 っていくとしている これらについては いずれも 千 鳥 ヶ 淵 での 実 施 が 考 えられるものである ⅰ) 底 泥 対 策 千 鳥 ヶ 淵 には 長 年 の 土 砂 や 落 葉 等 の 流 入 下 水 からの 雨 天 時 越 流 水 の 流 入 により 底 泥 が 厚 く 堆 積 しており 場 所 によっては3~5m 以 上 にもなってい ると 考 えられる 底 泥 からは 夏 期 など 水 底 の 溶 存 酸 素 が 低 下 すると 栄 養 塩 が 溶 出 し 水 質 に 悪 影 響 を 与 える 可 能 性 がある また 生 物 の 生 息 環 境 の 面 からも 対 策 が 必 要 となる 可 能 性 がある 浚 渫 覆 砂 底 泥 対 策 には 底 泥 を 取 り 去 る 浚 渫 底 泥 を 砂 などで 覆 う 覆 砂 などの 手 法 があ る このうち 浚 渫 については これまでも 外 苑 濠 で 実 施 例 があり 千 鳥 ヶ 淵 においてもH17 年 度 に 濠 岸 中 央 部 の 約 18.000 m2について 約 11,000 m 3 の 浚 渫 を 実 施 している ( 次 頁 図 参 照 )しかし 底 泥 を 全 面 的 除 去 するもの ではなかったこともあり その 後 目 立 った 水 質 改 善 は 見 られていない 3
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浚 渫 により 水 質 改 善 を 図 るためには 全 面 的 な 浚 渫 や 覆 砂 が 必 要 となるが 堤 岸 部 での 石 垣 の 破 損 のおそれがあるとともに 多 額 の 費 用 を 要 する( 覆 砂 30 億 円 浚 渫 はそれ 以 上 との 試 算 有 り)ため 費 用 対 効 果 の 面 から 慎 重 な 検 討 が 必 要 になると 考 えられる 濠 の 干 し 上 げ 水 位 低 下 一 方 一 時 的 に 濠 から 水 を 抜 き 底 泥 を 空 気 に 晒 す 干 し 上 げ や 一 時 的 に 水 位 を 低 下 させ 部 分 的 に 底 泥 を 空 気 に 晒 すことで 底 泥 中 の 有 機 物 の 分 解 を 促 すことが 考 えられる 干 し 上 げは 牛 ヶ 淵 で 実 施 事 例 があり( 写 真 参 照 ) 水 位 低 下 については 他 の 湖 沼 で 実 施 事 例 がある 写 真 牛 ヶ 淵 の 干 し 上 げの 事 例 ( 平 成 21 年 ) しかし 過 去 に 実 施 した 牛 ヶ 淵 の 干 しあげによる 水 質 改 善 効 果 は 上 流 の 千 鳥 ヶ 淵 からの 濠 水 の 流 入 により 相 殺 されてしまい 充 分 な 実 証 はされてい ない 濠 の 干 上 げや 一 時 的 な 水 位 低 下 は 一 定 期 間 毎 に 定 期 的 に 実 施 する 必 要 が あるが 浚 渫 や 覆 砂 よりも 簡 便 であり 現 実 的 な 対 策 として 検 討 対 象 となる と 考 えられる ただし 干 上 げは 水 生 生 物 に 大 きな 影 響 を 与 えることから その 運 用 にあ たては 時 期 方 法 など 検 討 が 必 要 である ( 牛 ヶ 淵 の 干 上 げについては ツ ツイトモなどの 水 生 生 物 の 再 生 が 見 られたが 濠 の 生 態 系 全 体 への 影 響 につ いては 充 分 に 実 証 されていない) 5
ⅱ) 雨 水 等 の 活 用 について 現 在 外 苑 濠 は 水 源 を 専 ら 雨 水 に 頼 る 状 況 であり これまで 行 われた 検 討 からも 導 水 可 能 な 水 源 は 存 在 しない このため 今 後 雨 水 等 の 導 水 やそれ らの 一 時 貯 留 などの 対 応 が 重 要 と 考 えられる 千 鳥 ヶ 淵 周 辺 は 濠 の 上 流 部 であり また 桜 田 濠 とともに 外 苑 濠 の 中 で は 広 い 集 水 域 を 持 っていることから 水 量 確 保 の 観 点 から 重 要 な 地 域 と 考 え られる ( 次 頁 図 参 照 ) H21 年 度 には 千 鳥 ヶ 淵 戦 没 者 墓 苑 において 雨 水 活 用 について 検 討 を 行 っている しかし 同 墓 苑 の 雨 水 下 水 分 流 化 だけでは 水 量 が 少 なく 効 果 は 限 定 的 であると 予 想 された このようなことから 雨 水 活 用 には 千 鳥 ヶ 淵 周 辺 の 北 の 丸 千 鳥 ヶ 淵 戦 没 者 墓 苑 などの 国 有 地 のみならず 他 の 主 体 の 協 力 を 得 ることが 重 要 と 考 え られる また 雨 水 をそのまま 濠 に 流 すのではなく 貯 留 槽 などに 一 定 期 間 保 持 した のちに 流 す 方 が 効 果 的 であり こういった 観 点 からの 検 討 も 重 要 と 考 えられ る 6
図 皇 居 外 苑 濠 の 集 水 域 及 び 地 下 水 涵 養 域 の 状 況 皇 居 外 苑 濠 管 理 方 針 検 討 会 水 質 改 善 分 科 会 資 料 より(H20) ⅲ) 水 生 生 物 の 適 切 な 管 理 による 水 質 の 維 持 水 生 植 物 は 水 中 底 泥 の 栄 養 塩 を 吸 収 するとともに 他 の 水 生 生 物 に 生 息 場 所 を 提 供 し 生 物 による 有 機 物 分 解 を 促 進 するなどの 水 質 改 善 効 果 があ ると 考 えられる 7
しかし 水 生 植 物 による 栄 養 塩 の 吸 収 量 は 物 理 化 学 的 な 浄 化 より 一 般 に 少 ないことや 定 期 的 に 植 物 体 を 濠 外 に 持 ち 出 す 必 要 があることに 留 意 する 必 要 がある また ハス ヒシの 繁 茂 は むしろ 水 質 に 悪 影 響 を 与 える 可 能 性 がある さらに コイや 大 型 の 草 食 魚 アメリカザリガニなど 捕 食 圧 の 強 い 種 は 水 生 植 物 に 大 きな 影 響 を 与 えるとの 指 摘 がある このようなことから 水 生 生 物 については 将 来 水 質 が 改 善 された 状 況 で 水 質 を 維 持 しながら 豊 かな 自 然 環 境 を 再 生 していくための 管 理 手 法 の 一 つとして 検 討 するべきと 考 える このためには 水 質 に 大 きな 影 響 を 与 え ると 考 えられる 生 物 について 取 り 扱 いや 駆 除 方 法 について 検 討 を 行 う 必 要 がある 2 その 他 千 鳥 ヶ 淵 の 再 生 については ここまで 挙 げてきた 自 然 環 境 景 観 利 用 環 境 教 育 水 質 以 外 にも いくつか 考 慮 すべき 事 項 があり それらを 以 下 に 示 す これらは 千 鳥 ヶ 淵 単 独 ではなく 濠 全 体 や 皇 居 全 体 の 有 する 機 能 の 一 部 とし て 考 えられるものもある 今 後 これらの 観 点 で 現 状 を 評 価 し 機 能 の 維 持 改 善 を 図 ることが 重 要 と 考 える (1) 都 市 環 境 に 対 する 効 果 千 鳥 ヶ 淵 は 皇 居 と 一 体 となった 大 規 模 な 水 面 緑 地 を 形 成 しているが このよう な 都 市 内 の 大 規 模 な 水 面 緑 地 は 都 市 の 環 境 を 改 善 する 機 能 があるとされてお り 千 鳥 ヶ 淵 については 以 下 のものが 考 えられる 1 クールアイランド 都 市 内 の 気 象 緩 和 2 光 環 境 ( 夜 の 暗 さ 生 物 環 境 ) 3 音 環 境 ( 静 穏 性 ) (2) 防 災 機 能 千 鳥 ヶ 淵 や 周 辺 の 緑 地 について 震 災 等 発 生 時 の 避 難 場 所 としての 機 能 や 火 災 の 遮 蔽 隔 離 機 能 なども 期 待 される また 雨 天 時 の 遊 水 池 としての 機 能 も ある 程 度 存 在 すると 考 えられる 8
資 料 3-2 千 鳥 ヶ 淵 の 水 質 その 他 に 関 する 論 点 について 1 水 質 基 本 認 識 皇 居 外 苑 濠 の 水 質 は 以 前 水 源 としていた 玉 川 上 水 からの 供 給 が 途 絶 え 下 水 からの 雨 天 時 の 越 流 落 葉 等 の 流 入 堆 積 により 水 質 が 悪 化 千 鳥 ヶ 淵 の 現 在 水 質 は 皇 居 外 苑 濠 の 中 で 最 も 悪 く 夏 から 秋 にかけてアオコ の 大 量 発 生 が 見 られる 状 況 水 質 に 影 響 を 与 えている 都 下 水 道 の 雨 天 時 越 流 はH25 以 降 に 停 止 の 見 込 み 水 質 改 善 には 並 行 した 取 組 が 必 要 であり 環 境 省 では 皇 居 外 苑 濠 水 質 改 善 計 画 を 作 成 これに 基 づき 新 浄 化 施 設 を 整 備 等 の 取 組 これらにより 外 苑 濠 で 水 質 改 善 の 見 込 み 底 泥 対 策 について 千 鳥 ヶ 淵 には 底 泥 が 厚 く 堆 積 しており 将 来 的 に 対 応 が 必 要 となる 可 能 性 現 時 点 では 底 泥 対 策 は 必 須 とはされていないが 水 質 改 善 に 加 え 生 物 の 生 息 環 境 の 面 からも 対 策 の 可 能 性 底 泥 対 策 は 浚 渫 覆 砂 などの 手 法 があるが 多 額 の 費 用 を 要 するため より 簡 便 な 手 法 として 濠 の 干 し 上 げや 一 時 的 な 水 位 低 下 による 底 泥 の 露 出 も 検 討 の 対 象 生 物 との 関 係 での 配 慮 が 必 要 雨 水 等 の 活 用 について 現 在 外 苑 濠 は 水 源 を 専 ら 雨 水 に 頼 る 状 況 このため 雨 水 等 の 導 水 やそれ らの 一 時 貯 留 などの 対 応 が 重 要 千 鳥 ヶ 淵 周 辺 は 北 の 丸 千 鳥 ヶ 淵 戦 没 者 墓 苑 などの 国 有 地 もあるが 効 果 的 な 雨 水 活 用 には 他 の 主 体 の 協 力 を 得 るこ とが 重 要 水 生 生 物 の 適 切 な 管 理 について 将 来 的 に 基 礎 的 な 水 質 の 状 況 が 改 善 された 状 況 で 水 生 生 物 の 適 切 な 管 理 に より 水 質 維 持 と 良 好 な 生 物 環 境 の 再 生 を 図 ることが 重 要 このために 水 質 に 影 響 のある 生 物 ( 水 生 植 物 コイなど)の 取 り 扱 いを 検 討 する 必 要 資 料 4-1 2 その 他 の 論 点 について クールアイランドとしての 機 能 光 環 境 ( 特 定 の 生 物 にとって 夜 の 暗 さが 必 要 ) 音 環 境 ( 都 心 にあっての 静 けさ)など 皇 居 一 帯 の 緑 地 の 持 つ 機 能 の 一 翼 を 担 っており それらの 維 持 改 善 が 重 要 9