予防トレーニングの実際 2 5 筋力強化 大見頼一 スポーツ傷害予防チームリーダー 日本鋼管病院リハビリテーシ で股関節の使い方に違いがみられる ョン科理学療法士 保健医療学修士 という研究報告がなされていま これまでの解説を踏まえ 今回は 筋力強化 トレーニングをどのように行 Deckerらによれば Drop landingで うかについて 写真を使いながら説明していく 男子と比べて女子は接地時の股関節 屈曲が少なく 股関節のエネルギー 股関節の使い方を学ぶ 向上で今までの復習になります 吸 収 も 少 な い と 報 告 し て い ま 前回はジャンプトレーニングにつ が ACL受傷メカニズムの特徴とし Lephartらは 片脚着地動作で男性 いて解説したので 今回は筋力強化 ては 股関節がほとんど動いていな より女性は股関節内旋が大きいとし について取り上げま予防トレー いこと 受傷時の股関節の肢位は27 ており Zazulakらは 片脚着地動 ニングにおける筋力強化の大きな目 28 内旋位であったことが挙げら 作で表面筋電図による大殿筋筋活動 的は 股関節外旋 外転筋 ハムス れまそうすると予防戦略として が男性より女性のほうが低かったと トリングスの筋力向上と体幹支持性 は 股関節を曲げる 股関節内旋 報告していまこのように男性と 位をとらない と 女性では 着地動作で股関節の使い いうことになりま 方が違うと考えられ 予防には 股 また着地動作 関節の使い方を学ぶこと が 1 つの に関しては 男女 ポイントだと私たちは考えていま A 正常前捻 A 過度の前捻 上の図は正常な前捻で 下の図は過度の前捻 前捻が大きい場合は 適合をよくするために股 関節内旋しやすい 図 1 大腿骨前捻角 36 Training Journal February 2013 腹臥位膝関節90度で触診にて大転子が最外側に達したときの 股関節内旋角度 図 2 前捻角の測定
膝 の 傷 害 予 防 トレーニング 臨 床 でも 学 生 の 女 子 選 手 で 片 脚 ス クワットやジャンプ 動 作 時 に 股 関 節 が 内 旋 し 膝 外 反 がみられる 症 例 を 診 ることがよくありま 股 関 節 周 囲 筋 を 強 化 し 動 作 時 に 鏡 でのフィ ードバックなどを 行 っても アライ メントが 修 正 される 選 手 といくらト レーニングしてもなかなか 修 正 でき ない 選 手 がいま 股 関 節 の 肢 位 に 影 響 を 与 える 解 剖 学 的 因 子 として 大 腿 骨 前 捻 角 ( 図 1 )があり 修 正 さ れない 選 手 はこの 前 捻 角 の 増 大 によ って 股 関 節 内 旋 位 をとってしまうこ とが 考 えられま そこで 私 たちは 大 腿 骨 前 捻 角 と 片 脚 着 地 動 作 での 膝 外 反 との 関 連 を 明 らかにするために 片 脚 着 地 動 作 の 二 次 元 解 析 と 前 捻 角 の 測 定 を 行 い ました 対 象 は 大 学 女 子 選 手 20 名 で 前 捻 角 はcraig testに 準 じて 腹 臥 位 で 触 診 にて 大 転 子 が 最 外 側 に 達 した ときの 股 関 節 内 旋 角 度 としました ( 図 2 ) 30cm 台 からの 片 脚 着 地 動 作 を 正 面 からハイスピードデジタル カメラ(120Hz)で 撮 影 を 行 い 膝 外 反 角 度 について 二 次 元 解 析 しまし た( 図 3 ) その 結 果 前 捻 角 と 接 地 時 膝 外 反 角 度 前 捻 角 と50msec 後 の 膝 外 反 角 度 に 正 の 相 関 ( r = 0.50)がみら れました( 図 4 ) 前 捻 角 の 個 体 差 が 着 地 時 膝 外 反 に 影 響 を 与 えること が 示 唆 され 股 関 節 内 旋 位 をとりや すい 女 子 選 手 は 股 関 節 外 旋 筋 を 強 化 することが 重 要 とも 考 えられまし た ただし 前 捻 角 の 測 定 はX 線 や CTを 使 用 したわけではないので 今 後 はこの 前 捻 角 の 測 定 方 法 の 信 頼 性 を 増 すことを 考 えなくてはいけま せん このように 筋 力 強 化 という 観 点 で 30cm 120Hz 図 3 片 脚 着 地 動 作 の 二 次 元 解 析 50ms 30 25 20 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40-5 は 内 旋 位 をとらない ためには 外 旋 作 用 のある 筋 を 強 化 する 必 要 が あり 股 関 節 外 旋 に 作 用 する 筋 とし ては 外 旋 六 筋 大 殿 筋 中 殿 筋 後 部 線 維 が 挙 げられままた 着 地 時 に 股 関 節 を 曲 げる には 股 関 節 伸 展 筋 が 遠 心 性 収 縮 するので 大 殿 筋 やハムストリングスが 強 化 のポイ ントになりまもちろん 体 幹 の 支 持 性 も 大 切 になりますので スタビ r 0.5 p<0.05 図 4 大 腿 骨 前 捻 角 と 片 脚 着 地 時 の 膝 関 節 外 反 角 度 (50msec 後 )の 関 連 前 捻 角 が 大 きいほど 膝 外 反 角 度 が 大 きいという 結 果 が 得 られた リゼーションエクササイズも 行 いま 1 つ 注 意 していただきたいのは これから 紹 介 させていただく 種 目 は 股 関 節 や 体 幹 のプログラムが 中 心 で すが ベーシックなスクワットやラ ンジなどを 行 っていないわけではな いということで 私 たちのサポー トしているチームは 私 たちが 介 入 する 前 から ストレングス&コンデ Training Journal February 2013 37
表 1 予防トレーニング 筋力強化 レベル 1 レベル 2 股関節外旋 側臥位で外旋 継続 継続 股関節外転 片脚外転 膝上ミニバンド 片脚外転 足首ミニバンド サイドステップ ミニバンド ゆっくり倒れる ゆっくり倒れて 元に戻る ダンベルを胸に持って行う 保持 挙上側の股外転 挙上側の股外転 ミニバンド 床で保持 ベンチ台で保持 ディスク上で保持 ロシアンハムストリング サイドブリッジ 片脚ブリッジ レベル 3 れず ドローインして骨盤が後方回 旋しないようにして 30 程度外旋 を行う 殿筋の奥のほうが重だるく きつくなってきたら 外旋筋が収縮 している 骨盤後方回旋させて代償する場合 が多いので 骨盤の固定をチェッ クする 2 ロシアンハムストリングス 図 5 ハムストリングスの遠心性収縮ト レーニングなので 肉ばなれのリス クのある種目でよって選手には その注意を十分に行うようにしま 具体的には 違和感やピキッと 図 5 くる感じがするならば その場で中 止するよう指導していままた ィショニングコーチ 以下SC の 脚ブリッジの 5 つに分けて それを レベル 1 では戻らずに あまり頑張 方がいらっしゃって バーベル ダ レベル 1 3 の 3 段階で作成して りすぎずスーッと前方に倒れるよう ンベルを用いたスクワットやランジ います 表 1 フロントブリッジ に指導していまこのレベル 1 を などの基礎的な種目は行っていまし については各チームのスタビリゼー 行っている期間にハムストリングス た 私たちも介入当初は シングル ションエクササイズに取り入れられ の遠心性収縮を学習できると肉ばな レッグスクワットやフォワードラン ている場合が多いので 今回は割愛 れになりにくいで今まで指導し ジなどを指導して とくにアライメ しまそれでは各種目について た中で 肉ばなれになった選手は 1 ントを意識させて行っていました 以下で解説していきま 人もいません 1 股関節外旋 図 5 たちの介入はSCのプログラム レベル 1 3 まで同じ運動を行 膝立ち位で立ち パートナーは脚 の中で片脚スクワットやランジなど いま筋力に応じて レベルアッ を押さえる ドローインして 殿部 のベーシックな種目を実施している プする段階で ミニバンドの強度を を後方に引かず 股関節屈曲位にな 場合はアライメントの確認のみを行 アップさせま らないように 頭部 体幹 大腿 しかし このような種目はSCのプ ログラムと重なってしまうので 私 っていま 部が一直線になるようにする 実際のプログラムデザインとして レベル 1 では戻らずにスーッと前 は 股関節外旋 股関節外転 ハム 側臥位で膝上にミニバンドを巻 方に倒れる レベル 2 では動く範囲 ストリングス サイドブリッジ 片 き 膝屈曲90 とする 両足部が離 は傾いた姿勢を 2 秒程度維持できる 38 Training Journal February 2013
角度とし そこから膝立ち位に戻る レベル 3 では胸に 3 5 kgのダン ベルを持って レベル 2 と同じロシ アンハムストリングスを行いま お尻が引けて股関節屈曲位になら ず 過度の腰椎前弯がでないよう にする とくにレベル 1 の場合は きつい 角度で頑張りすぎずに前にスーと 倒れてしまうようにする ハムス トリングスの遠心性収縮のトレー ニングなので 無理に行って肉ば なれにならないように選手には十 分に注意を与える 3 股関節外転 図 6 レベル 1 2 片脚外転 図 6 立脚側の股関節外転筋の強化を目 的に行いま外転のMMTが 4 以上 外転側の脚はつま先を正面に向 であることが前提で外転が抵抗 け 股関節内外旋中間位 やや伸 運動でできない場合は 側臥位での 展位になるようにする 外転を行いまただ 側臥位での を目的に行いま スタートポジションは側臥位を取 外転がいくら強くなっても 片脚ス レベル 3 サイドステップ ミニバ り 肘を肩甲骨の真下に位置させ床 クワットなどのClosed kinetic chain ンド 側の膝を90 に屈曲する この状態 で外転筋が働かないと意味がないと から骨盤を床面より挙上して 反対 思いまよって 側臥位の外転が パワーポジションを取り 膝の上 側下肢は伸展位とする レベル 1 で 抵抗運動で十分にできる場合は 片 にミニバンドを巻いて ゆっくり半 は軽度外転位で20 30秒保持する 脚外転を行っていきま 歩ずつサイドステップを行う 股外 レベル 2 では遊脚側の下肢は床面に 転 外旋筋を収縮させながら 片脚 対し平行の位置から20 30 程度 での支持期に支持脚の股内旋 膝外 外転運動を行う レベル 3 大腿遠位 片脚スクワット姿勢で立ち レベ 反しないようにする にミニバンドを巻いて同じように外 ル1では膝上に レベル 2 では足首 転運動を行う にミニバンドを巻く 外転する側の 脚は つま先を正面に向け 30 程 体幹が左右に側屈しながら進む場 度まで外転する 合があるので 頭部 体幹が動か ないようにする 股関節から動か 外転する側の膝を曲げ伸ばしする すことを意識させる 半歩ずつ細かく進むようにする のではなく 股関節から動かすよ うする 支持側に体幹側屈しないようにす る 床側の腹斜筋 股関節外転筋が十 分に収縮しているか確認する お尻が引けて 股関節屈曲位とな らず 過度の腰椎前弯が起きない ようにする 4 サイドブリッジ 図 7 支持脚のつま先を床に押し付ける 支持側の体幹側面と中殿筋の連動 場合があるので toe-outしないよ した固定と 遊脚側の外転筋の強化 うにする Training Journal February 2013 39
ームでは このような種目で筋力強 化を行って SCのプログラムを組 み合わせて さらに前回紹介したジ ャンプ着地などの動きのトレーニン グの中で殿筋 ハムストリングスを 使えるようになると予防トレーニン グがうまくいっている実感がありま 前々号掲載後に あるトレーナー の方から予防トレーニングの内容に ついての問い合わせのメールがあり ました 筆者としては リアクショ ンがあるのは嬉しいことですので 読んでいただいて感想 ご意見あれ ばぜひ教えてください 次回はバラ BOX ンストレーニングについて取り上げ ま 図 7 参考文献 かせる場合があるので つま先を 5 片脚ブリッジ 図 7 正面に向ける 1 Decker MJ et al:gender differences in lower extremity kinematics, kinetics and energy absorption during landing. Clin 体幹後面の固定と 大殿筋 ハム 過度の腰椎前弯が起きないように ストリングスの強化を目的に行いま し 肩 骨盤 膝が一直線になる 2 Lephart SM et al: Gender differences in ようにする strength and lower extremity kinematics 最後に予防トレーニングにおける Biomech. 18:662-669. 2003 during landing. Clin Orthop. 401:162-169. 2005. 筋力強化を行って 現場で感じるこ 片側の膝関節を90 屈曲位 余裕 とについて述べたいと思いま男 hip muscle activity during single-leg landing. がある場合は膝の屈曲を浅くする 子と比較して 女子選手は体幹が弱 J Orthop Sports Phys Ther. 35:292-299. とし 足関節は背屈位をとる もう く 大腿四頭筋優位であるため 殿 一方の下肢は伸展させておく 両腕 筋やハムストリングスをうまく使え は胸の前で組み 踵で床またはbox ない選手をよくみかけまこのよ を押すようにしてハムストリングス うな選手たちは スクワットやラン を収縮させてから ドローインして ジを行ってもどうしても大腿四頭筋 股関節を伸展させ 骨盤帯を床面よ 優位でエクササイズを行ってしまい り挙上させ 5 秒間保持する レベ ま選手に聞くと ハムストリン ル 2 では 30 40cm程度のベンチ グスや殿筋を使う感覚がわからな 台や椅子を利用して その上で片脚 い と言いま ブリッジを行う レベル 3 では床面 まずは今回紹介した股関節外旋 でバランスディスクを使用して片脚 外転 ロシアンハムストリングス ブリッジを行う サイドブリッジ 片脚ブリッジなど の基礎的な種目で 殿筋やハムスト リングスの筋力強化と その筋に収 踵で床を押すときに toe-outして 縮が入る感覚を学ぶ 必要があると 外側ハムストリングスを過度に働 思いま私たちが介入しているチ 40 Training Journal December 2012 3 Zazulak BT et al:gender comparison of 2005. 4 金子雅志ほか 大腿骨前捻角が片脚着 地時の膝外反角度に与える影響 日本臨床 スポーツ医学会誌. 20 151. 2012. メモ 大見頼一連絡先 yoriohmi1118@yahoo.co.jp