特 別 寄 稿 経 済 の 特 徴 と 発 展 の 方 向 性 日 本 銀 行 仙 台 支 店 前 支 店 長 橋 本 要 人 営 業 課 本 郷 保 範 山 崎 智 広
経 済 の 特 徴 と 発 展 の 方 向 性 日 本 経 済 は 生 産 所 得 支 出 の 好 循 環 が 働 くもとで 緩 やかに 拡 大 して おり 昨 年 11 月 には いざなぎ 景 気 を 超 え 戦 後 最 長 の 景 気 回 復 局 面 となっ ている こうした 中 経 済 の 現 状 をみると 的 な 景 気 回 復 のプロ セスの 中 で 企 業 部 門 を 中 心 に 緩 やかな 回 復 を 続 けているものの に 比 べ 出 遅 れ 感 は 否 めない 状 況 となっている このような 地 域 格 差 は 地 域 が 抱 え る 構 造 調 整 圧 力 が 色 濃 く 出 ていることによるものではないかと 考 えられる そこで 本 稿 では 経 済 の 特 徴 を 整 理 した 上 で 今 後 県 経 済 が 中 期 的 に 進 むべき 構 造 調 整 の 方 向 性 や 取 り 組 むべき 課 題 等 について 述 べてみた い 1. 経 済 の 特 徴 の 産 業 構 造 をみると ( 図 1) と 比 べ 第 二 次 産 業 の 割 合 が 低 い 一 方 農 業 水 産 業 を 中 心 とする 第 一 次 産 業 や 卸 小 売 業 運 輸 通 信 業 を 中 心 とする 第 三 次 産 業 の 割 合 が 高 いことが 特 徴 である また 仙 台 市 を 中 心 に 県 外 企 業 ( 県 外 に 本 店 を 有 する 出 先 事 業 所 等 )の 割 合 (26.1%< 事 業 所 企 業 統 計 調 査 2001 年 >)が 高 く(47 都 道 府 県 中 第 1 位 ) 支 店 経 済 の 色 彩 が 強 いことも 大 きな 特 徴 の ひとつとなっている もっとも 地 域 別 にみると 県 内 一 様 ではない( 図 2) すなわ ち 仙 台 市 は の 名 目 GD 図 1 の 産 業 構 造 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1.9 1.6 26.9 20.6 77.5 71.6 第 一 次 産 業 第 二 次 産 業 第 三 次 産 業 ( 注 1) の 数 値 は 年 度 の 数 値 は 暦 年 ( 以 下 同 様 ) ( 注 2) 四 捨 五 入 のため 合 計 は 必 ずしも 100%にならない 232 ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 (04 年 )
Pのおよそ 半 分 (49.6%)を 占 める 県 の 中 核 都 市 であり 同 市 は 第 三 次 産 業 特 に 卸 小 売 業 やサービス 業 の 割 合 が 高 く 商 業 都 市 としての 色 彩 が 強 い 一 方 仙 台 市 を 除 くその 他 地 域 に 目 を 向 けると 仙 南 地 域 や 大 崎 地 域 など 製 造 業 が 盛 んな 地 域 も 一 部 にはみられるものの 的 にも 有 名 な 水 産 業 の 都 市 ( 気 仙 沼 市 石 巻 市 )を 配 して いるほか 登 米 地 域 や 栗 原 地 域 などでは 農 業 が 盛 んなこともあ り 総 じてみると 第 一 次 産 業 の 割 合 が 高 いことが 大 きな 特 徴 と なっている( 第 一 次 産 業 の 県 内 総 生 産 額 のうち 96.3%をその 他 地 域 が 占 めている) 2. 経 済 の 現 状 現 在 経 済 は 的 な 景 気 回 復 過 程 の 中 で 緩 やかな 回 復 を 続 けている しかしなが ら 実 質 GDPの 推 移 をみると ( 図 3) より 伸 び 悩 んでい る 状 況 が 続 いており 一 人 当 た り 県 民 所 得 の 水 準 をみても( 図 4) に 比 べ1 割 方 低 くなっ ている これは 今 回 の 景 気 回 復 の 牽 引 役 でもあり 生 産 性 の 伸 びが 高 図 2 の 産 業 構 造 マップ 仙 台 市 仙 南 地 域 大 崎 地 域 栗 原 地 域 仙 台 地 域 北 部 仙 台 地 域 南 部 仙 台 地 域 東 部 登 米 地 域 石 巻 地 域 農 業 気 仙 沼 本 吉 地 域 水 産 業 製 造 業 建 設 業 第 三 次 産 業 その 他 ( 注 ) 円 グラフの 面 積 は 市 町 村 内 総 生 産 ( 産 業 )の 大 きさを 表 す 図 3 実 質 GDP の 推 移 ( 資 料 ) 市 町 村 民 経 済 計 算 (03 年 度 ) (00 年 度 =100) 105 104 103 102 101 100 99 98 97 96 00 01 02 03 04 ( 年 度 年 ) 233 ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 内 閣 府 国 民 経 済 計 算
い 製 造 業 の 割 合 が 低 い( 図 5) といった 産 業 構 造 上 の 問 題 のほ か 人 口 も より 速 いペース で 増 加 幅 が 縮 小 し 2005 年 には 減 少 に 転 じていること( 図 6) などにより 潜 在 成 長 力 の 低 下 に 直 面 しているため と 考 えら れる こうした 点 を 踏 まえると 宮 城 県 経 済 として ただ 単 に 的 な 景 気 回 復 の 波 及 を 待 つ 受 け 身 的 な 姿 勢 では 今 後 も と の 格 差 が 一 段 と 拡 大 していくこ とが 懸 念 される 図 5 名 目 GDP に 占 める 製 造 業 の 割 合 図 4 1 人 当 たり 所 得 の 比 較 ( 千 円 ) 3,000 2,826 2,800 2,600 2,530 2,400 2,200 2,000 ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) 図 6 の 人 口 増 減 率 (%) 25 20 21.2 (%) 7.0 6.0 5.0 15 15.5 4.0 3.0 10 2.0 1.0 5 0.0 0-1.0 1980 85 90 95 2000 05 ( 年 ) ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) ( 注 ) 調 査 回 (5 年 )ごとの 増 減 率 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 (04 年 ) 総 務 省 国 勢 調 査 3. 経 済 の 発 展 の 方 向 性 格 差 拡 大 が 懸 念 される 状 況 の 中 で 経 済 が 産 業 構 造 の 変 革 に 取 り 組 み 人 口 減 少 に 直 面 する 中 にあっても 生 産 性 の 向 上 などによって 潜 在 成 長 率 を 引 き 上 げて 将 来 に 向 けて 更 なる 発 展 を 遂 げていく 経 済 産 業 政 策 が 求 め られている このためには 県 内 各 地 域 はもとより 東 北 他 県 との 連 携 も 強 く 234
意 識 し 仙 台 市 とその 他 地 域 それぞれの 特 色 を 生 かしながら 以 下 のような 方 向 性 で 課 題 に 取 り 組 んでいくことが 有 効 であると 考 えられる (1) 商 都 としての 機 能 高 度 化 が 期 待 される 仙 台 前 段 でみてきた 通 り 仙 台 市 図 7 仙 台 東 北 他 都 市 間 の 高 速 バス 乗 車 者 数 の 推 移 は 第 三 次 産 業 の 割 合 が 高 く 百 ( 万 人 ) 貨 店 や 海 外 の 高 級 ブランドショ ップ 営 業 所 等 のオフィスが 集 積 しており 東 北 の 他 の 都 市 に 比 べても 商 業 都 市 としての 機 能 600 500 400 300 200 175 222 251 295 350 434 478 が 格 段 に 充 実 している その 結 100 果 東 北 他 県 から 買 い 物 等 を 目 的 に 仙 台 市 を 訪 れる 人 の 数 は 高 速 交 通 網 の 発 達 もあって 近 年 0 99 00 01 02 03 04 05 ( 年 度 ) ( 資 料 ) 東 北 運 輸 局 増 加 傾 向 にあり( 図 7) 域 外 需 図 8 仙 台 市 福 岡 市 の 人 口 1,000 人 当 たりの 事 業 所 数 要 の 獲 得 につながっている しかしながら 産 業 構 造 や 人 口 構 成 が 類 似 し 地 域 において 中 核 的 な 機 能 を 果 たしている 福 ( 事 業 所 数 ) 60 51 50 42 40 30 仙 台 市 福 岡 市 系 列 3 岡 市 と 比 較 すると 1 人 口 当 り 事 業 所 数 にみられる 企 業 集 積 度 の 割 り 負 け 感 ( 図 8)や 2 商 20 10 0 16 14 8 4 4 6 2 2 全 産 業 建 設 業 製 造 業 卸 売 小 売 業 飲 食 宿 泊 業 施 設 や 交 通 インフラ 面 での 劣 位 性 等 商 業 都 市 としての 魅 力 成 熟 度 が 相 対 的 に 低 い 現 状 がみ ( 注 )04 年 における 推 計 人 口 を 用 いて 作 成 ( 資 料 ) 総 務 省 事 業 所 企 業 統 計 調 査 (04 年 ) 仙 台 市 福 岡 市 推 計 人 口 てとれる( 図 表 9) 235
図 表 9 仙 台 市 と 福 岡 市 の 各 種 統 計 の 比 較 商 業 娯 楽 交 通 企 業 仙 台 市 福 岡 市 仙 台 福 岡 備 考 百 貨 店 ( 店 ) 3 4 1 06 年 店 舗 面 積 (m2) 77,460 154,079 76,619 10 月 末 主 要 海 外 ブランドショップ( 店 ) 12 14 2 06 年 5 月 末 旅 館 業 ( 旅 館 業 ホテル 営 業 等 ( 軒 ) 266 330 64 05 年 度 末 民 放 テレビ 局 ( 局 ) 4 5 1 06 年 11 月 末 映 画 館 ( 個 所 ) 10 49 39 04 年 末 演 劇 演 芸 場 ( 個 所 ) 8 16 8 ボウリング 場 ( 個 所 ) 6 9 3 テニス 場 ( 含 むテニス 練 習 場 ) 10 22 12 深 夜 酒 類 提 供 飲 食 店 ( 店 ) 2,634 5,858 3,224 主 要 祭 り 仙 台 七 夕 まつり 博 多 どんたく 港 まつり 集 客 数 ( 万 人 / 日 ) 71(06 年 8 月 ) 110(06 年 5 月 ) 39 06 年 地 下 鉄 営 業 距 離 (km) 14.8 29.8 15.0 04 年 度 末 都 市 間 長 距 離 バス 便 ( 便 ) 734 1,439 705 06 年 6 月 駐 車 場 ( 個 所 500m2 以 上 ) 208 319 111 04 年 度 末 収 納 可 能 台 数 ( 台 ) 31,789 57,922 26,133 証 券 取 引 所 福 岡 証 券 取 引 所 06 年 11 月 末 上 場 企 業 ( 社 ) 19 52 33 東 北 九 州 地 域 での 集 積 率 (%) 29.2 43.0 13.8 ( 資 料 ) 日 本 百 貨 店 協 会 厚 生 労 働 省 保 健 衛 生 行 政 業 務 報 告 ( 衛 生 行 政 報 告 例 )の 概 況 経 済 産 業 省 特 定 サービス 産 業 実 態 調 査 横 浜 市 大 都 市 比 較 統 計 年 表 警 察 庁 JTB 時 刻 表 都 道 府 県 別 上 場 企 業 一 覧 仙 台 市 が 福 岡 市 を 模 倣 する 必 図 10 実 質 GDP 成 長 率 の 比 較 要 はないが 両 市 のここ 十 数 年 の 経 済 発 展 を 比 較 した 場 合 ( 図 10) 参 考 となるべき 事 象 は 多 い 例 えば 企 業 の 集 積 度 をみた 場 合 福 岡 市 には 北 九 州 地 域 と いう 鉄 鋼 や 輸 送 機 械 等 製 造 業 の 一 大 拠 点 を 後 背 に 有 しており (90 年 度 =100) 115 1990 年 度 110 2003 年 度 107.8 105 100 100.0 100.0 95 112.2 これらの 営 業 事 務 部 門 の 福 岡 市 への 集 積 が 情 報 発 信 商 都 形 90 仙 台 市 福 岡 市 成 の 大 きな 要 因 となっている ( 資 料 ) 仙 台 市 福 岡 市 市 民 経 済 計 算 一 方 仙 台 市 周 辺 にも 仙 南 大 崎 など 製 造 業 が 盛 んな 地 域 はあるが 北 九 州 地 域 と 比 較 すると 格 段 に 規 模 が 小 さい もっとも 隣 県 にまで 目 を 向 ける と 岩 手 県 北 上 市 周 辺 では 自 動 車 産 業 を 中 心 に 産 業 振 興 に 行 政 が 力 を 入 れて おり 東 北 における 一 大 産 業 集 積 地 として 発 展 しつつある また 山 形 県 米 236
沢 市 は 情 報 通 信 機 器 では でも 有 数 の 工 業 地 域 となっている 現 在 では 仙 台 サイバーフォレスト 構 想 やMEMS( 微 小 電 気 機 械 システム)パークコンソーシアムなど 産 学 官 協 働 で 新 産 業 の 創 造 育 成 などに 注 力 しており 新 規 産 業 の 誘 致 育 成 に 期 待 が 持 たれている ただ こうした 取 り 組 みを 県 単 独 で 推 進 していくには 相 応 の 時 間 を 要 するのも 事 実 であることから 例 えば 仙 台 市 を 中 心 とした 広 域 経 済 圏 ( グレーター 仙 台 圏 )といった 広 い 視 野 に 立 って 周 辺 の 製 造 業 の 拠 点 を 仙 台 市 の 商 業 機 能 が 取 り 込 んでいくという 視 点 も 必 要 ではないかと 考 えられる こうした 中 で 昨 年 自 動 車 関 連 産 業 の 集 積 を 目 的 に 岩 手 宮 城 山 形 3 県 による と うほく 自 動 車 産 業 集 積 連 携 会 議 が 発 足 したが 地 域 連 携 による 産 業 育 成 に 向 けた 取 り 組 みとして 今 後 のさらなる 進 展 が 期 待 される (2) 東 北 のゲートウェイとしての 地 位 の 確 立 仙 台 市 は 東 北 の 交 通 の 要 衝 として 鉄 道 道 路 など 陸 上 の 交 通 網 が 充 実 し ているほか 東 京 からの 近 接 性 では 地 方 都 市 の 中 でも 群 を 抜 いており( 図 表 11) 交 通 の 利 便 性 は 仙 台 市 の 特 徴 といえる このため 仙 台 空 港 仙 台 港 など ヒト モノの 交 流 において 東 北 のゲートウェイとしての 役 割 を 充 実 強 化 していくことは 商 都 としての 機 能 も 高 めることになろう 図 表 11 東 京 からのアクセスの 優 位 性 仙 台 福 岡 交 通 手 段 所 要 時 間 1 日 当 たり 定 員 の 運 行 本 数 車 両 機 体 名 運 賃 約 100 分 32 本 1,152 名 はやて こまち 21,180 円 1,152 名 やまびこ(16 両 ) 48 本 新 幹 線 約 120 分 814 名 やまびこ(10 両 ) 35 本 1,634 名 Maxやまびこ(16 両 ) 約 130 分 817 名 Maxやまびこ(8 両 ) 20,160 円 新 幹 線 約 310 分 52 本 1,323 名 のぞみ 44,640 円 航 空 機 約 130 分 86 本 569 名 B747-400 64,800 円 ( 注 )06 年 4 月 中 の 運 行 ダイヤをもとに 作 成 所 要 時 間 のうち 航 空 機 は 東 京 駅 ~ 羽 田 空 港 福 岡 空 港 ~ 博 多 駅 の 鉄 道 移 動 時 間 を 含 む ( 資 料 ) 時 刻 表 仙 台 空 港 HP 福 岡 空 港 HP モノの 移 動 物 流 に 関 しては 陸 路 空 路 もさることながら 低 コスト 大 量 輸 送 としての 海 路 は 欠 かすことができないインフラである 特 に 港 湾 に 関 しては 県 の 財 政 が 厳 しい 中 にあっても 今 後 重 点 的 に 取 り 組 むべきイン フラであろう この 点 07 年 度 予 算 でも 仙 台 港 でのクレーン 増 設 や 周 辺 高 速 道 路 ICの 整 備 のため 予 算 が 拡 充 されているが 港 湾 は 陸 上 交 通 網 が 寸 237
断 される 災 害 時 における 物 流 網 としても 極 めて 有 用 であり 将 来 の 地 震 発 生 が 心 配 される ではその 点 からも 港 湾 整 備 の 必 要 性 が 指 摘 できる 一 方 ヒトの 交 流 として この 交 通 の 利 便 性 を 生 かすべき 場 としては 観 光 がある ( 仙 台 市 )は 東 北 における 交 通 の 要 衝 であり 近 隣 他 県 との 往 来 が 容 易 であるため 東 北 の 豊 かな 観 光 資 源 を 背 景 に 仙 台 市 を 起 点 に 観 光 客 の 多 様 なニーズに 応 じた 各 種 観 光 ルートを 設 定 すること が 可 能 である のみならず 東 北 他 県 にまで 視 野 を 広 げれば 伝 統 芸 能 神 社 仏 閣 自 然 遺 産 山 海 グルメ 温 泉 ( 湯 治 ) トレッキング スキ ー ゴルフ 等 観 光 資 源 は 無 尽 蔵 である こうした 中 は 仙 台 市 を 中 心 に 域 外 から 東 北 各 地 を 訪 れる 観 光 客 にとっての 拠 点 (ゲートウェイ)と 位 置 付 け みやぎ 観 光 戦 略 プラン を 策 定 して 観 光 推 進 策 を 展 開 している 観 光 振 興 は 地 域 活 性 化 の 有 効 策 と して 各 地 でも 取 り 組 みが 強 化 されており 観 光 客 誘 致 競 争 は 今 後 益 々 激 しくなっていくことが 予 想 される こうした 地 域 間 競 争 に 打 ち 勝 つためには 観 光 のみならず が 東 北 のリーダー コーディネーターとなり 広 域 連 携 で 取 り 組 んでいくことが 重 要 である 08 年 に を 中 心 に 実 施 される 仙 台 宮 城 デスティネーションキャンペーン においても この 点 を 意 識 して 東 北 他 県 と 連 携 することが 今 後 の 観 光 ひいては 東 北 観 光 の 発 展 につながると 考 えられる (3) 食 を 中 心 とした 産 業 連 携 の 確 立 は 沿 岸 部 や 北 部 を 中 心 に 第 一 次 産 業 の 割 合 が 高 いうえ 食 品 製 造 業 の 割 合 も 高 いが 残 念 ながら 近 年 第 一 次 産 業 食 品 製 造 業 の 割 合 は 低 下 傾 向 を 辿 っている( 図 12 13) 現 在 食 を 取 り 巻 く 環 境 は わが 国 食 料 自 給 率 が 40% を 下 回 りつつあるほか BS E 鳥 インフルエンザ ノロ 図 12 名 目 GDP に 占 める 第 一 次 産 業 の 割 合 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 238 238 (%) 96 97 98 99 00 01 02 03 04 ( 年 度 年 ) ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 (04 年 )
ウィルスなど 安 全 安 心 に 対 す る 関 心 が 高 まり 食 の 安 全 保 障 が 喫 緊 の 課 題 である 加 えて 国 の 農 業 政 策 が 生 産 性 向 上 に 向 けて 大 きく 転 換 され る さらには 近 隣 諸 国 が 食 糧 輸 入 国 に 転 じる 一 方 所 得 向 上 に 伴 う 嗜 好 品 需 要 の 高 まり などの 変 化 に 晒 されている こうした 環 境 変 化 の 下 で 宮 城 県 をはじめとする 東 北 地 方 は 歴 史 的 にも 首 都 圏 に 対 す 図 13 名 目 GDP に 占 める 食 品 製 造 業 の 割 合 (%) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 96 97 98 99 00 01 02 03 04 ( 年 度 年 ) ( 資 料 ) 県 民 経 済 計 算 (04 年 度 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 (04 年 ) る 食 料 供 給 基 地 としての 役 割 を 担 ってきた 経 緯 を 有 しており 当 地 の 特 色 ある 産 業 として 振 興 を 進 めてい くことは 他 地 域 の 追 随 を 許 さない 比 較 優 位 性 を 有 していると 思 われる 宮 城 県 の 07 年 度 予 算 の 中 にも 実 践 経 営 塾 を 通 じたアグリビジネス 経 営 体 の 育 成 を 目 的 とした 新 世 代 アグリビジネス 総 合 推 進 費 が 新 設 されているが 農 政 転 換 期 にある 今 の 農 業 にとって 生 産 性 の 高 い 農 業 を 営 むには 不 可 欠 な 取 り 組 みと 言 えるのではないだろうか こうした 中 例 えば 農 業 に 目 を 向 けると 米 仙 台 牛 いちごなどの 生 産 が 盛 んであるほか 水 産 業 では 好 漁 場 の 三 陸 沖 に 近 いため サンマ ホヤ カキ 銀 鮭 等 の 漁 獲 量 が 多 く 県 別 漁 獲 量 は 第 2 位 となっている もっ とも こうした 食 材 ( 資 源 )について の 産 品 としての 情 報 発 信 はこ れまで 不 足 していた 従 って 笹 かまといえば 仙 台 と 言 われるような 地 域 ブランドを 積 極 的 に 育 成 し これを 広 く 情 報 発 信 していく 必 要 があると 思 われる その 際 ただ 単 一 の 素 材 として 発 信 するだけではなく 食 品 製 造 業 ( 第 二 次 産 業 )や 飲 食 店 宿 泊 業 ( 第 三 次 産 業 )と 連 携 し 価 値 連 鎖 を 構 築 発 信 していくことが 重 要 であると 考 えられる 素 材 の 加 工 調 理 素 材 と 素 材 との 組 み 合 わせ 食 し 方 など 素 材 に 付 加 価 値 を 付 け オリジナリ ティ 差 別 化 を 強 調 していくことは 有 効 な 手 段 と 考 えられる 例 えば 地 元 のカリスマシェフが 地 元 の 食 材 を 用 い 地 元 の 食 品 加 工 業 者 とタイアップし て 製 品 を 開 発 し 発 信 をするといった 取 り 組 みや 季 節 や 景 観 等 T 239
(time) P(place) O(opportunity)とも コラボレイト した 食 し 方 を 提 案 することなどが 考 えられる こうした 産 業 の 連 携 により 提 供 される 食 は 観 光 客 にとっても 魅 力 的 で あり 観 光 振 興 にも 大 きく 寄 与 するものと 考 えられる この 点 も の 07 年 度 予 算 でも 県 内 農 林 水 産 物 のマッチング 調 査 や 商 談 会 への 出 展 を 目 的 とした 食 品 製 造 業 振 興 プロジェクト 推 進 費 が 新 設 されており 食 材 と 食 品 製 造 業 のマッチング 等 を 通 じた 連 携 の 推 進 ひいては 飲 食 店 宿 泊 業 ( 第 三 次 産 業 )にまで 及 ぶようになればより 強 力 な 連 携 となろう 4.むすび 本 稿 では が 取 り 組 むべき 課 題 として 1 商 都 としての 機 能 高 度 化 が 期 待 される 仙 台 2 東 北 のゲートウェイとしての 地 位 の 確 立 3 食 を 中 心 とした 産 業 連 携 の 確 立 といった 3 点 から 考 察 してきたが これらを 推 進 していくうえで 共 通 のキーワードは イノベーション と 連 携 であ る イノベーション とは これまでのモノ 仕 組 みなどに 対 して 全 く 新 しい 技 術 や 考 え 方 を 取 り 入 れて 新 たな 価 値 を 生 み 出 し 社 会 的 に 大 きな 変 化 を 起 こすこと ( 内 閣 府 )と 定 義 されている 今 後 グローバル 化 の 中 で 東 アジアを 中 心 とする 厳 しい 価 格 競 争 の 追 い 上 げに 打 ち 勝 っていくために は イノベーション への 取 り 組 みが 不 可 欠 であり また その 有 無 によっ て 今 まで 以 上 に 地 域 や 企 業 などの 間 で 格 差 が 拡 大 していく 可 能 性 が 高 いと 考 えられる それだけに 経 済 の 発 展 を 進 めていくに 当 たっても 地 域 特 性 を 見 定 めたこれまでにない イノベイティブ な 政 策 経 営 が 不 可 欠 である... この イノベーション は 異 分 野 の 知 識 知 恵 等 を 組 み 合 わせることに よって 生 まれることが 多 いため 産 業 の 集 積 教 育 機 関 等 の 知 的 集 約 を 高 め るべく 地 域 社 会 全 体 ( 産 学 官 に 加 え 金 融 機 関 )として 連 携 を 図 っ ていくことが 必 要 である 商 都 機 能 の 高 度 化 や 観 光 振 興 策 でも 触 れたとおり の 周 囲 には 製 造 業 の 集 積 が 進 んでいる 岩 手 山 形 福 島 農 業 が 盛 んな 青 森 秋 田 など にはない 特 性 を 有 している 地 域 が 多 い そうし た 周 辺 地 域 をも 含 めた 広 域 連 携 も 意 識 しながら 継 続 的 に イノベーシ ョン を 実 現 していくことが 経 済 の 発 展 に 資 するのではないかと 考 え 240
られる 現 状 の 地 域 経 済 は 戦 後 経 済 モデルの 大 きな 転 換 期 に 直 面 している 一 方 で 厳 しい 財 政 運 営 を 迫 られており ここ 数 年 をどのように 舵 取 りしていくか 知 恵 の 出 しどころであり 将 来 の 展 望 を 大 きく 左 右 する 重 大 な 局 面 にあるとの 認 識 が 重 要 である そうした 認 識 の 下 で 仙 台 宮 城 デスティネーションキャンペーン に おいて 仙 台 商 工 会 議 所 が デスティネーションキャンペーンへの 地 域 商 工 業 者 の 対 応 に 関 する 提 言 の 作 成 をはじめ 積 極 的 に 活 動 を 展 開 推 進 してい る 姿 にみられるように 各 経 済 主 体 が 行 政 に 対 して 要 望 するばかりではなく それぞれの 立 場 で 何 ができるのか 方 向 性 が 示 されたグランドデザインに 沿 って 行 動 し 貢 献 していくことが 望 まれよう 本 寄 稿 文 の 内 容 や 意 見 は 執 筆 者 個 人 に 属 し 日 本 銀 行 の 公 式 見 解 を 示 すもの ではありません 241