B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン ( 第 2 版 簡 易 版 ) 2014 年 6 月 日 本 肝 臓 学 会 肝 炎 診 療 ガイドライン 作 成 委 員 会 編
はじめに 日 本 肝 臓 学 会 では 2013 年 4 月 に B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン( 第 1 版 ) を 公 表 し 2013 年 8 月 にはこれを 改 訂 した 第 1.2 版 を 学 会 ホームページ 上 で 公 表 いたしました このガイドラ インは B 型 肝 炎 治 療 に 関 わるエビデンスをほぼ 網 羅 しており リファレンスとしてきわめて 有 用 ではありますが その 反 面 全 体 がかなり 長 大 であり 内 容 を 把 握 しにくいという 声 を いただいておりました そこで B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン( 第 2 版 ) の 中 から 現 在 の 日 常 臨 床 において 特 に 重 要 と 思 われる 記 載 及 び 図 表 を 抜 粋 した B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン ( 第 1.2 版 簡 易 版 ) を 作 成 し 2014 年 4 月 にモバイル 端 末 上 で 使 用 できる 肝 炎 治 療 ガイ ドラインのアプリとして 作 成 配 布 いたしました 2014 年 6 月 テノホビルの 発 売 に 伴 いガイドラインを 改 訂 し B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン( 第 2 版 ) を 作 成 公 表 いたしましたので 簡 易 版 も 改 訂 し モバイル 版 のアプリと 合 わせて 学 会 ホームページ 上 で 公 開 いたします 本 文 同 様 第 2 版 における 改 訂 点 は 青 字 で 記 載 しまし た 本 簡 易 版 およびアプリが 日 常 臨 床 の 場 において ガイドライン 本 文 ともども 肝 炎 診 療 に 携 わる 医 師 医 療 従 事 者 にますます 活 用 されることを 望 みます 一 般 社 団 法 人 日 本 肝 臓 学 会 理 事 長 小 池 和 彦 肝 炎 診 療 ガイドライン 作 成 委 員 会 委 員 長 滝 川 一 1
1.HBV 持 続 感 染 者 の 自 然 経 過 HBV 持 続 感 染 者 の 病 態 は 宿 主 の 免 疫 応 答 と HBV DNA の 増 殖 の 状 態 により 主 に 下 記 の 4 期 に 分 類 される HBV 持 続 感 染 者 の 治 療 に 当 たってはこのような 自 然 経 過 をよく 理 解 しておくことが 必 要 である 1 免 疫 寛 容 期 immune tolerance phase 乳 幼 児 期 における 感 染 後 長 期 間 持 続 HBe 抗 原 陽 性 かつ HBV DNA 増 殖 が 活 発 であるが ALT 値 は 正 常 で 肝 炎 の 活 動 性 がほとんどない 状 態 ( 無 症 候 性 キャリア) 2 免 疫 応 答 期 immune clearance phase 成 人 に 達 すると HBV に 対 する 免 疫 応 答 が 活 発 となる HBe 抗 原 の 消 失 HBe 抗 体 の 出 現 (HBe 抗 原 セロコンバージョン)に 伴 って HBV DNA の 増 殖 が 抑 制 されると 肝 炎 は 鎮 静 化 する しか し 肝 炎 が 持 続 して HBe 抗 原 陽 性 の 状 態 が 長 期 間 続 くと 肝 病 変 が 進 展 する(HBe 抗 原 陽 性 肝 炎 ) 3 低 増 殖 期 low replicative phase (inactive phase) HBe 抗 原 セロコンバージョンが 起 こると 多 くの 場 合 肝 炎 は 鎮 静 化 する( 非 活 動 性 キャリア) しかし 10~20%の 症 例 では HBe 抗 原 陰 性 の 状 態 で HBV が 再 増 殖 し 肝 炎 が 再 燃 する(HBe 抗 原 陰 性 肝 炎 ) 4 寛 解 期 remission phase HBe 抗 原 セロコンバージョンを 経 て 一 部 の 症 例 では HBs 抗 原 が 消 失 し HBs 抗 体 が 出 現 して 臨 床 的 寛 解 に 至 る 2
成 人 に 達 してからの 感 染 では 感 染 後 早 期 に 免 疫 応 答 が 起 こり 急 性 肝 炎 後 にウイルスが 排 除 さ れ 肝 炎 が 鎮 静 化 するのが 一 般 的 であるが HBV ゲノタイプ A の 増 加 により 近 年 は 成 人 期 の 感 染 で も 慢 性 肝 炎 に 移 行 する 症 例 が 増 えている 2. 治 療 目 標 HBV 持 続 感 染 者 に 対 する 抗 ウイルス 療 法 の 治 療 目 標 は 肝 炎 の 活 動 性 と 肝 線 維 化 進 展 の 抑 制 による 慢 性 肝 不 全 の 回 避 ならびに 肝 細 胞 癌 発 生 の 抑 止 およびそれによる 生 命 予 後 ならびに QOL の 改 善 である この 治 療 目 標 を 達 成 するために 最 も 有 用 な surrogate marker は HBs 抗 原 であり 抗 ウイルス 療 法 の 長 期 目 標 は HBs 抗 原 消 失 である 長 期 目 標 HBs 抗 原 消 失 短 期 目 標 慢 性 肝 炎 肝 硬 変 ALT 持 続 正 常 *1 持 続 正 常 *1 HBe 抗 原 陰 性 *2 陰 性 *2 HBV DNA *3 on-treatment ( 核 酸 アナログ 継 続 治 療 例 ) 陰 性 陰 性 off-treatment (IFN 終 了 例 / 核 酸 アナログ 中 止 例 ) *4 4 log copies/ml 未 満 - *5 *1. 30 U/l 以 下 を 正 常 とする *2. HBe 抗 原 陽 性 例 では HBe 抗 原 の 陰 性 化 HBe 抗 原 陰 性 例 では HBe 抗 原 陰 性 の 持 続 *3. 高 感 度 PCR(リアルタイム PCR) 法 を 用 いて 測 定 する *4. 抗 ウイルス 療 法 終 了 後 24~48 週 経 過 した 時 点 で 判 定 する *5. 肝 硬 変 では 核 酸 アナログが 第 一 選 択 であり 核 酸 アナログの 中 止 は 推 奨 されない HBs 抗 原 消 失 に 至 るまでの 抗 ウイルス 療 法 の 短 期 目 標 は 1)ALT 持 続 正 常 化 (30 U/l 以 下 ) 2)HBe 抗 原 陰 性 かつ HBe 抗 体 陽 性 (HBe 抗 原 陽 性 例 では HBe 抗 原 セロコンバージョン HBe 抗 原 陰 性 例 では HBe 抗 体 陽 性 状 態 の 持 続 ) 3)HBV DNA 増 殖 抑 制 の 3 項 目 である 3
HBV DNA 量 の 目 標 は 治 療 薬 剤 により 異 なり また 慢 性 肝 炎 と 肝 硬 変 で 異 なる 1) 核 酸 アナログ 治 療 中 (on-treatment)の 目 標 は 慢 性 肝 炎 肝 硬 変 にかかわらず 高 感 度 のリアルタイム PCR 法 での HBV DNA 陰 性 である また 慢 性 肝 炎 例 において 何 らかの 理 由 により 核 酸 アナログ 投 与 を 中 止 した 場 合 (off-treatment)には 治 療 中 止 後 HBV DNA 4.0 log copies/ml 未 満 を 維 持 することが 治 療 を 再 開 せず 経 過 観 察 を 継 続 する 上 での 指 標 となる 線 維 化 進 行 例 や 肝 硬 変 例 では 核 酸 アナログの 中 止 は 推 奨 されない 2)IFN 治 療 では 治 療 終 了 後 の HBe 抗 原 セロコンバージョンや HBs 抗 原 量 の 低 下 消 失 が 期 待 できることから 治 療 中 の HBV DNA 量 低 下 という 目 標 を 設 定 せず 一 定 期 間 (24~48 週 ) の 治 療 を 完 遂 することが 望 ましい 核 酸 アナログ 中 止 後 と 同 様 治 療 終 了 後 24~48 週 で HBV DNA 4.0 log copies/ml 未 満 を 維 持 することが 経 過 観 察 していく 上 での 指 標 となる 3. 治 療 薬 の 選 択 Peg-IFN と 核 酸 アナログはその 特 性 が 大 きく 異 なる 治 療 薬 であり その 優 劣 を 単 純 に 比 較 す ることはできない Peg-IFN は 期 間 を 限 定 して 投 与 することで 持 続 的 効 果 をめざす 治 療 である 治 療 反 応 例 では 投 与 終 了 後 も 何 ら 薬 剤 を 追 加 投 与 することなく drug free で 治 療 効 果 が 持 続 するという 利 点 があり さらに 海 外 からは 長 期 経 過 で HBs 抗 原 が 高 率 に 陰 性 化 すると 報 告 されている し かし Peg-IFN による 治 療 効 果 が 得 られる 症 例 は HBe 抗 原 陽 性 の 場 合 20~30% HBe 抗 原 陰 性 では 20~40%にとどまる 加 えて 週 1 回 の 通 院 が 必 要 であり 様 々な 副 作 用 もみられる ま た 現 段 階 において 本 邦 では Peg-IFN の 肝 硬 変 に 対 する 保 険 適 用 はない 核 酸 アナログ 製 剤 は 強 力 な HBV DNA 増 殖 抑 制 作 用 を 有 し ほとんどの 症 例 で 抗 ウイルス 作 用 を 発 揮 し 肝 炎 を 鎮 静 化 させる 現 在 第 一 選 択 薬 となっているエンテカビルやテノホビルは 耐 性 変 異 出 現 率 が 極 めて 低 い 経 口 薬 であるため 治 療 が 簡 便 であり 短 期 的 には 副 作 用 がほ とんどないことも 利 点 である しかし 投 与 中 止 による 再 燃 率 が 高 いため 長 期 継 続 投 与 が 必 要 であり さらに 長 期 投 与 において 薬 剤 耐 性 変 異 株 が 出 現 する 可 能 性 さらに 安 全 性 の 問 題 を 残 している また IFN 治 療 と 比 較 して HBs 抗 原 量 の 低 下 が 少 ないことも 指 摘 されている B 型 肝 炎 症 例 の 治 療 に 当 たっては B 型 肝 炎 の 自 然 経 過 及 び Peg-IFN と 核 酸 アナログ 製 剤 の 薬 剤 特 性 をよく 理 解 し 個 々の 症 例 の 病 態 に 応 じた 方 針 を 決 定 する 必 要 がある <Peg-IFN と 核 酸 アナログ 製 剤 : 薬 剤 特 性 > Peg-IFN エンテカビル テノホビル 作 用 機 序 抗 ウイルス 蛋 白 の 誘 導 免 疫 賦 活 作 用 直 接 的 ウイルス 複 製 阻 害 投 与 経 路 皮 下 注 射 経 口 投 与 治 療 期 間 期 間 限 定 (24~48 週 間 ) 原 則 として 長 期 継 続 投 与 薬 剤 耐 性 なし まれ *1 4
副 作 用 頻 度 高 頻 度 かつ 多 彩 少 ない 催 奇 形 性 発 癌 なし 催 奇 形 性 および 長 期 投 与 での 発 癌 の 可 能 性 が 否 定 できない 妊 娠 中 の 投 与 原 則 として 不 可 *2 危 険 性 は 否 定 できない *3 非 代 償 性 肝 硬 変 への 投 与 禁 忌 可 能 *4 治 療 反 応 例 の 頻 度 HBe 抗 原 陽 性 の 20~30% HBe 抗 原 陰 性 の 20~40% 非 常 に 高 率 ( 予 測 困 難 ) 治 療 中 止 後 の 効 果 持 続 セロコンバージョン 例 では 高 率 低 率 *1 エンテカビルでは 3 年 で 約 1%に 耐 性 変 異 が 出 現 テノホビルでは 6 年 間 投 与 で 耐 性 変 異 の 出 現 は 認 めなかったと 報 告 されている *2 ヨーロッパ 肝 臓 学 会 (EASL) 6) アジア 太 平 洋 肝 臓 学 会 (APASL) 7) の B 型 慢 性 肝 炎 に 対 するガイドラ インでは 妊 娠 中 の 女 性 に 対 する Peg-IFN の 投 与 は 禁 忌 とされている *3 FDA 薬 剤 胎 児 危 険 度 分 類 基 準 において エンテカビルは 危 険 性 を 否 定 することができないとされるカ テゴリーC であるが テノホビルはヒトにおける 胎 児 への 危 険 性 の 証 拠 はないとされるカテゴリーB とされ ている *4 非 代 償 性 肝 硬 変 に 対 する 核 酸 アナログ 投 与 による 乳 酸 アシドーシスの 報 告 があるため 注 意 深 い 経 過 観 察 が 必 要 である 4. 治 療 対 象 B 型 慢 性 肝 炎 の 治 療 対 象 を 選 択 する 上 で 最 も 重 要 な 基 準 は 以 下 の 3 項 目 である 1 組 織 学 的 進 展 度 2ALT 値 3HBV DNA 量 HBs 抗 原 量 を 治 療 対 象 選 択 基 準 に 含 めるか 否 かは 今 後 の 検 討 課 題 である <HBV 持 続 感 染 者 における 治 療 対 象 > ALT HBV DNA 量 慢 性 肝 炎 *1*2*3 31 U/l 4.0 log copies/ml 肝 硬 変 - 陽 性 慢 性 肝 炎 の 治 療 対 象 は HBe 抗 原 の 陽 性 陰 性 にかかわらず ALT 31 U/l 以 上 かつ HBV DNA 4 log copies/ml 以 上 である 5
HBe 抗 原 陽 性 の 無 症 候 性 キャリア および HBe 抗 原 陰 性 の 非 活 動 性 キャリアは 治 療 適 応 がな い HBe 抗 原 陽 性 慢 性 肝 炎 の ALT 上 昇 時 には 線 維 化 進 展 例 でなく 劇 症 化 の 可 能 性 がないと 判 断 されれば 1 年 間 程 度 治 療 を 待 機 することも 選 択 肢 である HBe 抗 原 陰 性 の 非 活 動 性 キャリアは 1 年 以 上 の 観 察 期 間 のうち 3 回 以 上 の 血 液 検 査 において HBe 抗 原 陰 性 ALT 値 30 U/l 以 下 HBV DNA 4 log copies/ml 未 満 の 3 条 件 すべてを 満 たす 症 例 と 定 義 される 治 療 対 象 とならない 場 合 でも ALT が 軽 度 あるいは 間 欠 的 に 上 昇 する 症 例 40 歳 以 上 で HBV DNA 量 が 多 い 症 例 血 小 板 数 15 万 未 満 の 症 例 肝 細 胞 癌 の 家 族 歴 のある 症 例 画 像 所 見 で 線 維 化 進 展 が 疑 われる 症 例 は 発 癌 リスクが 高 いため オプション 検 査 として 肝 生 検 あるいは 非 侵 襲 的 方 法 による 肝 線 維 化 評 価 を 施 行 することが 望 ましい 非 活 動 性 キャリアの 定 義 を 満 たす 症 例 でも HBV DNA が 陽 性 であり かつ 線 維 化 が 進 展 し 発 癌 リスクが 高 いと 判 断 される 症 例 は 治 療 対 象 となる 経 過 観 察 を 基 本 とする 症 例 でも 発 癌 リスクの 高 い 症 例 では 定 期 的 な 画 像 検 査 による 肝 細 胞 癌 のサーべイランスが 必 要 である 慢 性 肝 炎 からの HBs 抗 原 消 失 例 でも 肝 細 胞 癌 発 癌 のリスクがあることを 認 識 するべきである 肝 硬 変 では HBV DNA が 陽 性 であれば HBe 抗 原 ALT 値 HBV DNA 量 に 関 わらず 治 療 対 象 とす る 5.HBV マーカーの 臨 床 的 意 義 ゲノタイプ 地 域 特 異 性 日 本 における 臨 床 的 特 徴 A B C 欧 米 型 (A2/Ae) アジア 型 アフリカ 型 (A1/Aa) アジア 型 (Ba) 日 本 型 (B1/Bj) 東 南 アジア(Cs) 東 アジア(Ce) 本 邦 において 若 年 者 間 での 水 平 感 染 に 関 与 急 性 肝 炎 後 キャリア 化 しやすい 日 本 型 Bjはほとんどが 無 症 候 性 キャリアとしてそ の 一 生 を 終 え 肝 細 胞 癌 の 発 症 頻 度 は 非 常 に 低 い プレコアに 変 異 の 入 った 変 異 株 に 感 染 すると 劇 症 肝 炎 の 要 因 となりうる 肝 細 胞 癌 の 発 症 リスクが 高 く 従 来 型 IFN 治 療 に 対 して 治 療 抵 抗 性 である 臨 床 において HBV DNA を 定 量 する 際 にはリアルタイム PCR 法 を 使 用 することが 望 ましい 6
B 型 慢 性 肝 炎 の 抗 ウイルス 治 療 では HBV DNA 量 だけではなく HBs 抗 原 も 定 期 的 に 測 定 し 治 療 の 長 期 目 標 は HBs 抗 原 の 消 失 におくべきである HB コア 関 連 抗 原 は 肝 組 織 中 の cccdna 量 と 相 関 しており 核 酸 アナログ 治 療 中 の 再 燃 の 予 測 や 治 療 中 止 時 期 の 決 定 の 血 清 マーカーとして 有 用 である 7
6. 治 療 薬 (1)-IFN (1) 従 来 型 IFN HBe 抗 原 陽 性 の B 型 慢 性 肝 炎 に 対 する IFN 治 療 では 無 治 療 と 比 較 し HBe 抗 原 の 陰 性 化 率 HBe 抗 原 セロコンバージョン 率 HBV DNA 陰 性 化 率 ALT 正 常 化 率 が 有 意 に 高 い (2)Peg-IFNα-2a: 国 内 臨 床 試 験 の 結 果 HBe 抗 原 陽 性 慢 性 肝 炎 に 対 する Peg-IFNα-2a 国 内 臨 床 試 験 成 績 投 与 終 了 後 24 週 時 点 での 複 合 評 価 (HBe 抗 原 セロコンバージョンかつ HBV DNA 5.0 logcopies/ml 未 満 かつ ALT 40 U/L 以 下 )の 達 成 率 を 示 す HBe 抗 原 陰 性 慢 性 肝 炎 に 対 する Peg-IFNα-2a 国 内 臨 床 試 験 成 績 投 与 終 了 後 24 週 時 点 でのウイルス 学 的 治 療 効 果 (HBV DNA 5.0 logcopies/ml 未 満 )および 生 化 学 的 治 療 効 果 (ALT 40 U/L 以 下 )の 達 成 率 を 示 す (3) 核 酸 アナログ 製 剤 を 同 時 併 用 すべきか IFN と 核 酸 アナログ 製 剤 の 同 時 併 用 投 与 による 治 療 効 果 の 向 上 についての 十 分 なエビデン スはない 8
(4) 治 療 効 果 を 規 定 する 因 子 <HBe 陽 性 慢 性 肝 炎 例 に 対 する Peg-IFN 治 療 効 果 関 連 因 子 の 報 告 > 報 告 者 Liaw Lau Buster Jansen Sonneveld 林 投 与 方 法 α-2a 90/180 α-2a 180± LAM *1 100 α-2a 180 α-2b 100 α-2b 100± LAM *1 100 α-2a/α-2b ±LAM *1 100 α-2a 90/180 投 与 期 間 24/48 週 48 週 α-2a:48 週 α-2b:52 週 52 週 32~104 週 24/48 週 年 齢 NS 高 齢 NS 高 齢 若 齢 *2 性 NS 女 性 NS NS 女 性 *2 ALT 高 値 *2 NS 高 値 高 値 NS NS HBV DNA 量 低 値 低 値 低 値 低 値 低 値 NS ゲノタイプ NS NS A (vs D) A (vs D) A (vs D) NS: 有 意 差 なし *1 LAM:ラミブジン *2 統 計 学 的 有 意 差 のない 傾 向 <HBe 陰 性 慢 性 肝 炎 例 に 対 する Peg-IFN 治 療 効 果 関 連 因 子 の 報 告 > 報 告 者 Bonino Rijckborst Moucari Marcellin 林 投 与 方 法 α-2a 180 ±LAM *1 100 α-2a 180± RBV *2 1000/1200 α-2a 180 α-2a 180± LAM *1 100 α-2a 90/180 投 与 期 間 48 週 48 週 48 週 48 週 24/48 週 年 齢 若 齢 NS NS NS NS 性 女 性 NS NS NS NS ALT 高 値 NS 高 値 高 値 NS HBV DNA 量 低 値 NS NS NS NS ゲノタイプ B, C (vs D) NS NS NS NS: 有 意 差 なし *1 LAM:ラミブジン *2 RBV:リバビリン 従 来 型 IFN では HBV ゲノタイプ 年 齢 線 維 化 などが 治 療 効 果 を 規 定 する 因 子 であると 報 告 されてきた しかし 従 来 型 IFN に 比 べて 治 療 効 果 の 高 い Peg-IFN では HBV ゲノタイプ A では 効 果 が 高 いものの HBV ゲノタイプ B/C 年 齢 線 維 化 は 治 療 効 果 とは 関 連 しない 現 時 点 では HBe 抗 原 陽 性 例 陰 性 例 のいずれにおいても Peg-IFN 治 療 前 に 治 療 反 応 例 を 予 測 する 方 法 は 確 立 されていない Peg-IFNα 治 療 中 の 12 週 および 24 週 時 点 における HBs 抗 原 量 の 低 下 量 や 低 下 率 は 治 療 効 果 を 予 測 する 上 で 有 用 である ただし IFN 治 療 と HBs 抗 原 量 に 関 する 本 邦 からのデータは 未 だ 得 られていない 9
7. 治 療 薬 (2)- 核 酸 アナログ 製 剤 (1) 製 剤 の 選 択 ラミブジン 長 期 投 与 では 高 率 に 耐 性 ウイルスが 出 現 する このため 現 在 は 核 酸 アナログ 製 剤 の 第 一 選 択 薬 ではない アデホビル 単 独 長 期 投 与 の 効 果 は 中 等 度 である しかし 長 期 投 与 によって 耐 性 ウイルスが 出 現 する 可 能 性 がある エンテカビル テノホビルの 核 酸 アナログ 製 剤 未 使 用 例 に 対 する 成 績 は 良 好 であり 耐 性 ウイルスの 出 現 率 も 低 いため 現 在 核 酸 アナログ 製 剤 を 使 用 する 場 合 の 第 一 選 択 薬 である <テノホビル 国 内 第 3 相 試 験 の 成 績 ( 核 酸 アナログ 未 治 療 例 )> テノホビル (n=109) エンテカビル (n=56) 治 療 開 始 時 HBV DNA (mean±sd) 7.00±1.45 7.19±1.31 ALT (mean [min-max]) 90.4 [17-540] 76.7 [27-556] HBe 抗 原 陽 性 (n, %) 51 (47%) 28 (50%) 治 療 開 始 後 48 週 時 平 均 HBV DNA 減 少 率 (logcopy/ml) -4.86-4.85 HBe 抗 原 陽 性 例 における HBV DNA 陰 性 化 (n,%) 29/51 (57%) 10/28 (36%) HBe 抗 原 陰 性 例 における HBV DNA 陰 性 化 (n,%) 55/58 (95%) 27/28 (96)% ALT 正 常 化 (n,%) 62 (75%) 35 (85%) HBe 抗 原 陰 性 化 (n,%) 9 (18%) 3(11%) HBe セロコンバージョン (n,%) 4 (9%) 2 (7%) ラミブジン 投 与 によって HBV DNA 量 が 陰 性 化 している 症 例 では エンテカビルに 切 り 替 え ることが 推 奨 される アデホビル テノホビルの 長 期 投 与 では 腎 機 能 障 害 低 リン 血 症 (Fanconi 症 候 群 を 含 む)の 出 現 に 注 意 する テノホビルは 胎 児 への 安 全 性 が 比 較 的 高 い (2) 核 酸 アナログ 耐 性 ウイルスへの 対 応 ラミブジン 耐 性 ウイルスに 対 する 治 療 にはアデホビルとラミブジンの 併 用 が 推 奨 される ラミブジン 耐 性 ウイルスに 対 するエンテカビル 治 療 では エンテカビルにも 耐 性 を 持 った ウイルスが 出 現 する 可 能 性 がある 10
ラミブジンとアデホビルの 両 剤 への 耐 性 ウイルス またはエンテカビル 耐 性 ウイルスに 対 する 治 療 として ラミブジン テノホビル 併 用 またはエンテカビル テノホビル 併 用 が 推 奨 される <テノホビル 国 内 第 3 相 試 験 の 成 績 ( 核 酸 アナログ 治 療 抵 抗 例 )> 症 例 数 (n) 34 テノホビル 治 療 開 始 時 HBV DNA 量 5.57±1.74 ALT (mean [min-max]) 74.6 [11-1100] ALT 基 準 値 上 限 以 上 15 (44%) HBe 抗 原 陽 性 (n, %) 28 (82%) 慢 性 肝 炎 (n,%) 34 (100%) 耐 性 変 異 (n=29) ラミブジン 耐 性 *1 アデホビル 耐 性 *2 エンテカビル 耐 性 *3 28 (97%) 4 (14%) 22 (76%) テノホビル 治 療 開 始 48 週 時 HBV DNA 陰 性 化 (n,%) 21 (62%) ALT 正 常 化 (n,%) 8 (53%) HBe 抗 原 陰 性 化 (n,%) 0 HBe セロコンバージョン (n,%) 0 *1 rtm204v/i±rtl180m *2 rta181t/v and/or rtln236t *3 rtt184i/l/f/m and/or rts202i/g and/or rtm250v/l (3) 核 酸 アナログ 治 療 中 止 の 必 要 条 件 患 者 背 景 における 必 要 条 件 核 酸 アナログ 薬 中 止 後 には 肝 炎 再 燃 が 高 頻 度 にみられ 時 に 重 症 化 する 危 険 性 があるこ とを 主 治 医 患 者 共 に 十 分 理 解 している 中 止 後 の 経 過 観 察 が 可 能 であり 再 燃 しても 適 切 な 対 処 が 可 能 である 肝 線 維 化 が 軽 度 で 肝 予 備 能 が 良 好 であり 肝 炎 が 再 燃 した 場 合 でも 重 症 化 しにくい 症 例 である 核 酸 アナログ 治 療 における 必 要 条 件 核 酸 アナログ 薬 投 与 開 始 後 2 年 以 上 経 過 11
中 止 時 血 中 HBV DNA(リアルタイム PCR 法 )が 検 出 感 度 以 下 中 止 時 血 中 HBe 抗 原 が 陰 性 < 核 酸 アナログ 中 止 後 の 再 燃 リスク> 中 止 時 HBs 抗 原 量 (IU/ml) スコア 中 止 時 HB コア 関 連 抗 原 量 (U/ml) スコア 1.9 log (80) 未 満 0 3.0 log 未 満 0 1.9 log (80) 以 上 2.9 log (800) 未 満 1 3.0 log 以 上 4.0 log 未 満 1 2.9 log (800) IU/ml 以 上 2 4.0 log 以 上 2 再 燃 リスク 総 スコア 予 測 成 功 率 評 価 低 リスク 群 0 80~90% 中 止 を 考 慮 しても 良 い 群 ただし 低 リスク 群 でも 肝 炎 再 燃 症 例 が 存 在 す るため 再 燃 に 対 する 注 意 は 必 須 である 中 リスク 群 1~2 約 50% 状 況 によって 中 止 を 考 慮 しても 良 い 群 この 群 では 中 止 の 条 件 や 方 法 を 今 後 さらに 検 討 する 必 要 がある 高 リスク 群 3~4 10~20% 治 療 の 継 続 が 推 奨 される 群 ただし 35 歳 未 満 では 中 止 成 功 率 が 比 較 的 高 く 30~40%である (4)sequential 療 法 sequential 療 法 は 核 酸 アナログによる 治 療 効 果 の 増 強 を 目 的 とするのではなく 核 酸 ア ナログ 製 剤 を 安 全 に 中 止 する 方 法 の 一 つとして 位 置 づけられている 現 時 点 において sequential 療 法 を 推 奨 する 明 確 な 基 準 はないが 少 なくとも HBe 抗 原 が 陰 性 化 した 症 例 ま たは 陰 性 例 かつ HBV DNA が 持 続 陰 性 の 症 例 に 対 して HBs 抗 原 陰 性 化 を 目 指 して 行 われ ることが 望 ましい 核 酸 アナログ 中 止 あるいは sequential 療 法 終 了 後 ALT 80 U/l 以 上 または HBV DNA 5.8 log copies/ml 以 上 の 上 昇 を 認 めた 場 合 には, 最 終 的 に 非 活 動 性 キャリアに 移 行 する 可 能 性 は 低 く 再 治 療 を 考 慮 すべきである 12
8. 慢 性 肝 炎 肝 硬 変 に 対 する 抗 ウイルス 療 法 の 基 本 方 針 *1 HBe 抗 原 セロコンバージョン 率 や HBV DNA 陰 性 化 率 が 必 ずしも 高 くはないこと 個 々の 症 例 における 治 療 前 の 効 果 予 測 が 困 難 であること 予 想 される 副 反 応 などを 十 分 に 説 明 すること *2 長 期 継 続 投 与 が 必 要 なこと 耐 性 変 異 のリスクがあることを 十 分 に 説 明 すること 挙 児 希 望 がある 場 合 には 妊 娠 中 の 投 与 のリスクについて 説 明 すること *3 ALT 正 常 化 HBV DNA 量 低 下 (HBs 抗 原 量 低 下 ) さらに HBe 抗 原 陽 性 例 では HBe 抗 原 陰 性 化 を 参 考 とし 治 療 終 了 後 24~48 週 時 点 で 判 定 する *4 ETV 中 止 後 再 燃 時 の 再 治 療 基 準 :HBV DNA 5.8 log copies/ml 以 上 または ALT 80 IU/l 以 上 Peg-IFN と 核 酸 アナログは 特 性 が 大 きく 異 なる 治 療 薬 であり その 優 劣 を 単 純 に 比 較 するこ とはできない 両 薬 剤 の 特 性 個 々の 症 例 の 病 態 を 総 合 的 に 判 断 し 治 療 薬 を 選 択 する 慢 性 肝 炎 に 対 する 初 回 治 療 では HBe 抗 原 陽 性 陰 性 や HBV ゲノタイプにかかわらず 原 則 として Peg-IFN 単 独 治 療 を 第 一 に 検 討 する HBe 抗 原 陰 性 の 慢 性 肝 炎 は HBe 抗 原 陽 性 例 と 比 較 し 高 齢 で 線 維 化 進 展 例 が 多 いため より 進 んだ 病 期 と 認 識 すべきである Peg-IFN 治 療 による HBV DNA の 持 続 陰 性 化 の 達 成 率 は 全 体 と しては 高 くないが 治 療 反 応 例 では 高 率 に drug free や HBs 抗 原 陰 性 化 が 期 待 できるため HBe 抗 原 陰 性 の 慢 性 肝 炎 においても 治 療 薬 としては Peg-IFN を 第 一 に 検 討 する 肝 線 維 化 が 進 展 し 肝 硬 変 に 至 っている 可 能 性 が 高 い 症 例 Peg-IFN 効 果 不 良 例 Peg-IFN 不 適 応 例 では 長 期 寛 解 維 持 を 目 的 とした 核 酸 アナログ(エンテカビル テノホビル)が 第 一 選 択 薬 である 黄 疸 を 伴 う 急 性 増 悪 を 来 した 症 例 ではラミブジンが 推 奨 される 慢 性 肝 炎 に 対 する 再 治 療 では 従 来 型 IFN Peg-IFN による 前 回 治 療 に 対 する 再 燃 例 に 対 して は Peg-IFN 治 療 による 再 治 療 を 考 慮 する 前 回 治 療 において 効 果 がみられなかった IFN 不 応 13
例 核 酸 アナログ 治 療 を 中 止 したものの 再 燃 した 症 例 では 核 酸 アナログによる 再 治 療 を 考 慮 する 肝 硬 変 では 代 償 性 非 代 償 性 に 関 わらず 初 回 治 療 より 核 酸 アナログが 第 一 選 択 薬 となる 治 療 中 止 後 の 再 燃 は 肝 不 全 を 誘 発 するリスクがあるため 生 涯 にわたる 治 療 継 続 を 基 本 とす る エンテカビルの 長 期 継 続 治 療 は 肝 硬 変 においても 肝 線 維 化 を 改 善 し 発 癌 を 抑 止 する 本 邦 では B 型 代 償 性 肝 硬 変 に 対 する IFN 治 療 の 効 果 と 安 全 性 に 関 する 十 分 なエビデンスはな い B 型 非 代 償 性 肝 硬 変 に 対 する IFN 治 療 は 禁 忌 である 非 代 償 性 肝 硬 変 ではエンテカビル 投 与 による 乳 酸 アシドーシスの 報 告 がある < 治 療 効 果 による 核 酸 アナログの 選 択 > 14
9.その 他 の 病 態 への 対 応 (1) 急 性 肝 炎 B 型 急 性 肝 炎 は 自 然 治 癒 傾 向 の 強 い 疾 患 である ステロイドやグリチルリチン 製 剤 の 投 与 は 慎 むべきである 急 性 肝 炎 重 症 型 ではプロトロンビン 時 間 が 40% 以 下 になる 前 を 目 安 としてラミブジンを 投 与 することが 推 奨 される ラミブジンは HBs 抗 原 が 陰 性 化 したら 中 止 する 現 在 本 邦 における B 型 急 性 肝 炎 の 症 例 の 半 数 以 上 が HBV ゲノタイプ A の 症 例 である ラミブジンの 投 与 前 には HIV 感 染 症 の 合 併 の 有 無 を 確 認 し HIV 感 染 症 の 治 療 を 単 剤 で 行 うことのないように 留 意 する 必 要 がある (2) 劇 症 肝 炎 - 診 断 病 態 わが 国 における 劇 症 肝 炎 の 約 40%は HBV が 原 因 である B 型 劇 症 肝 炎 の 成 因 は 急 性 感 染 ( 急 性 肝 炎 )からの 劇 症 化 と キャリアからの 急 性 増 悪 に 大 別 される 新 たに 策 定 された 急 性 肝 不 全 の 成 因 分 類 では キャリアからの 急 性 増 悪 は 1 無 症 候 性 キャリアからの 急 性 増 悪 ( 誘 因 なし) 2 非 活 動 性 キャリアからの 再 活 性 化 3 既 往 感 染 の 再 活 性 化 (de novo 肝 炎 )の3つに 分 類 される 急 性 感 染 からの 劇 症 化 とキャリアからの 急 性 増 悪 はその 病 態 予 後 が 異 なる キャリアか らの 急 性 増 悪 の 方 が 予 後 不 良 である 劇 症 肝 炎 では HBs 抗 原 HBs 抗 体 IgM-HBc 抗 体 HBc 抗 体 HBV DNA 量 を 測 定 し 成 因 の 鑑 別 診 断 を 行 う HBV ゲノタイプ プレコア 変 異 コアプロモーター 変 異 も 測 定 するの が 望 ましい (3) 劇 症 肝 炎 - 治 療 方 針 B 型 劇 症 肝 炎 では 急 性 感 染 またはキャリアからの 発 症 に 関 わらず 可 及 的 すみやかに 核 酸 アナログによる 抗 ウイルス 療 法 を 開 始 する 成 因 に 対 する 治 療 のみならず 肝 庇 護 療 法 人 工 肝 補 助 全 身 管 理 および 合 併 症 予 防 の 集 学 的 治 療 を 実 施 する また B 型 劇 症 肝 炎 における 内 科 的 治 療 の 予 後 は 不 良 であることか ら すみやかに 肝 移 植 の 適 応 を 考 慮 する 必 要 がある 劇 症 化 が 予 知 される 急 性 肝 炎 ではプロトロンビン 時 間 が 40% 以 下 になる 前 キャリアの 急 性 増 悪 例 ではプロトロンビン 時 間 が 60% 以 下 になる 前 を 目 安 として すみやかに 核 酸 アナ ログを 投 与 する IFN は 核 酸 アナログとの 併 用 で 投 与 することも 可 能 である ただし 投 与 中 は 肝 機 能 障 害 の 増 悪 や 血 球 減 少 に 十 分 な 注 意 が 必 要 である 15
10.HBV 再 活 性 化 HBV 感 染 患 者 において 免 疫 抑 制 化 学 療 法 により HBV が 再 増 殖 することを HBV 再 活 性 化 と 称 する HBV 再 活 性 化 は キャリアからの 再 活 性 化 と 既 往 感 染 者 (HBs 抗 原 陰 性 かつ HBc 抗 体 また は HBs 抗 体 陽 性 )からの 再 活 性 化 に 分 類 される 既 往 感 染 者 からの 再 活 性 化 による 肝 炎 は de novo B 型 肝 炎 と 称 される HBV 再 活 性 化 による 肝 炎 は 重 症 化 しやすいだけでなく 肝 炎 の 発 症 により 原 疾 患 の 治 療 を 困 難 にさせるため 発 症 そのものを 阻 止 することが 最 も 重 要 である (1) 再 活 性 化 のリスク HBV 再 活 性 化 のリスクは 主 にウイルスの 感 染 状 態 と 免 疫 抑 制 の 程 度 に 規 定 される ウイルスの 感 染 状 態 では 慢 性 活 動 性 肝 炎 非 活 動 性 キャリア 既 往 感 染 者 に 分 類 される HBV 再 活 性 化 のリスクはこの 順 に 高 い リツキシマブを 含 むような 強 力 な 免 疫 抑 制 化 学 療 法 を 行 う 際 は 非 活 動 性 キャリアを 含 めた HBs 抗 原 陽 性 例 および 既 往 感 染 者 からの 再 活 性 化 にも 十 分 注 意 する 必 要 がある 通 常 の 免 疫 抑 制 化 学 療 法 を 行 う 際 は 主 に 非 活 動 性 キャリアを 含 めた HBs 抗 原 陽 性 例 か らの 再 活 性 化 が 問 題 となるが HBV DNA が 2.1 log copies/ml 未 満 であった 既 往 感 染 者 に 対 するステロイド 単 剤 投 与 や 固 形 癌 に 対 する 通 常 の 化 学 療 法 でも HBV 再 活 性 化 が 生 じたと 報 告 されており 既 往 感 染 者 でも 注 意 が 必 要 である < 免 疫 抑 制 化 学 療 法 により 発 症 する B 型 肝 炎 対 策 ガイドライン> ( 注 釈 は 省 略 ) HBs 抗 体 単 独 陽 性 (HBs 抗 原 陰 性 かつ HBc 抗 体 陰 性 ) 例 においても HBV 再 活 性 化 は 報 告 さ れており ワクチン 接 種 歴 が 明 らかである 場 合 を 除 き ガイドラインに 従 った 対 応 が 望 ましい 16
ウイルス 量 が 多 い HBs 抗 原 陽 性 例 においては 核 酸 アナログ 予 防 投 与 中 であっても 劇 症 肝 炎 による 死 亡 例 が 報 告 されており 免 疫 抑 制 化 学 療 法 を 開 始 する 前 にウイルス 量 を 低 下 させて おくことが 望 ましい (2) 基 本 的 な 再 活 性 化 対 策 HBV 再 活 性 化 のリスクを 有 する 免 疫 抑 制 化 学 療 法 を 行 う 全 ての 患 者 に 治 療 前 に HBV 感 染 をスクリーニングする HBV 感 染 のスクリーニングは HBs 抗 原 検 査 HBc 抗 体 および HBs 抗 体 検 査 HBV DNA 定 量 検 査 を 感 度 の 高 い 測 定 法 で 系 統 的 に 実 施 する HBs 抗 原 陽 性 の 非 活 動 性 キャリア および 治 療 開 始 前 のスクリーニング 検 査 において HBV DNA が 2.1 log copies/ml 以 上 の 既 往 感 染 者 に 再 活 性 化 の 可 能 性 のある 免 疫 抑 制 化 学 療 法 を 行 う 際 は 速 やかに 核 酸 アナログの 投 与 を 開 始 する 治 療 開 始 前 のスクリーニング 検 査 において HBV DNA が 2.1 log copies/ml 未 満 の 既 往 感 染 者 に 対 しては 治 療 中 および 治 療 終 了 後 に HBV DNA のモニタリングを 行 い HBV DNA が 2.1 log copies/ml 以 上 となった 時 点 で 核 酸 アナログの 投 与 を 開 始 する 2.1 log copies/ml 未 満 かつ 増 幅 反 応 シグナル 陽 性 も 検 出 感 度 以 下 とともに 2.1 log copies/ml 未 満 として 一 括 して 扱 う 核 酸 アナログはエンテカビルを 推 奨 する 核 酸 アナログの 中 止 基 準 は HBs 抗 原 陽 性 例 に 対 する 投 与 では 核 酸 アナログの 投 与 終 了 基 準 に 準 ずる 既 往 感 染 者 に 対 する 投 与 では 免 疫 抑 制 化 学 療 法 終 了 後 も 少 なくとも 12 か 月 間 は 投 与 を 継 続 し この 継 続 期 間 中 に ALT の 正 常 化 と HBV DNA の 持 続 陰 性 化 がみられる 場 合 は 投 与 終 了 を 検 討 する 核 酸 アナログ 投 与 終 了 後 も 少 なくとも 12 か 月 間 は HBV DNA モニタリングを 含 めた 経 過 観 察 を 行 う 経 過 観 察 中 に HBV DNA が 2.1 log copies/ml 以 上 になった 時 点 で 直 ちに 投 与 を 再 開 する (3) 各 疾 患 における 注 意 造 血 幹 細 胞 移 植 およびリツキシマブ ステロイド フルダラビンを 用 いる 化 学 療 法 では 治 療 中 および 治 療 終 了 後 少 なくとも 12 か 月 の 間 HBV DNA を 月 1 回 モニタリングする リツキシマブ 以 外 の 血 液 悪 性 疾 患 に 対 する 化 学 療 法 および 固 形 癌 に 対 する 通 常 の 化 学 療 法 においては 1~3 か 月 ごとの HBV DNA のモニタリングを 目 安 とし 治 療 内 容 を 考 慮 して 間 隔 および 期 間 を 検 討 する リウマチ 性 疾 患 膠 原 病 に 対 する 免 疫 抑 制 療 法 では 治 療 開 始 後 および 治 療 内 容 の 変 更 後 少 なくとも 6 か 月 間 は 月 1 回 の HBV DNA のモニタリングが 望 ましい 6 か 月 以 降 は 治 療 内 容 を 考 慮 して 間 隔 および 期 間 を 検 討 する 化 学 療 法 免 疫 抑 制 療 法 中 に HBV 再 活 性 化 がみられた 場 合 には 免 疫 抑 制 作 用 のある 抗 腫 瘍 薬 や 免 疫 抑 制 薬 は 直 ちに 中 止 せず 対 応 を 肝 臓 専 門 医 と 相 談 するのが 望 ましい 17
11.HIV 重 複 感 染 ゲノタイプ A が 増 加 している 今 日 B 型 急 性 肝 炎 のみならず B 型 慢 性 肝 炎 の 患 者 でも HIV 感 染 症 を 合 併 している 可 能 性 がある HIV 感 染 症 の 治 療 (antiretroviral therapy: ART)は 3 種 類 以 上 の 抗 HIV 薬 を 用 いて 行 う 薬 剤 耐 性 HBV の 誘 導 を 防 止 するため 2 種 類 の 核 酸 系 逆 転 写 酵 素 阻 害 薬 には 抗 HBV 作 用 のあ るものが 選 択 されることが 多 い CD4 数 ( 正 常 は 800~1200/μL)が 大 きく 低 下 している 症 例 に ART を 導 入 した 場 合 細 胞 性 免 疫 の 回 復 による 肝 炎 の 増 悪 が 起 こることがある( 免 疫 再 構 築 症 候 群 ) ART を 行 う 際 には 抗 HIV 薬 による 薬 剤 性 肝 障 害 に 注 意 する 肝 線 維 化 の 進 展 した 症 例 ほど 高 頻 度 に 出 現 するため 特 に 肝 硬 変 の 症 例 に 対 して ART を 行 う 際 には 注 意 が 必 要 である テノホビル アデホビルは 長 期 にわたって 使 用 した 場 合 の 腎 障 害 が 問 題 になる 抗 HBV 薬 を 含 んだ ART を 導 入 する 前 に 抗 HBV 作 用 のある 薬 の 投 与 歴 がないかどうかを 確 認 する 抗 HBV 薬 を 含 んだ ART を 導 入 する 前 に 肝 予 備 能 を 評 価 する 肝 予 備 能 力 の 乏 しい 症 例 に ART を 行 う 場 合 には 免 疫 構 築 症 候 群 によって 肝 炎 が 増 悪 する 可 能 性 を 念 頭 に 置 く 薬 剤 耐 性 HIV の 出 現 を 避 けるため 抗 HIV 療 法 を 併 用 していない HIV/HBV 重 複 感 染 患 者 には エンテカビルの 投 与 を 避 けることが 望 ましい < 抗 HBV 作 用 のある 抗 HIV 薬 > * 一 般 名 商 品 名 略 号 用 法 用 量 備 考 ラミブジン エピビル 3TC 300mg/ 分 1 または 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 用 量 はゼフィックスと 異 なる 300mg/ 分 2 エムトリシタビン エムトリバ FTC 200mg/ 分 1 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 フマル 酸 テノホビルジソプロキ ビリアード TDF 300mg/ 分 1 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 シル エムトリシタビン+フマル 酸 テ ツルバダ TDF+FTC 1 錠 / 分 1 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 ノホビルジソプロキシル ジドブジン+ラミブジン コンビビル AZT+3TC 2 錠 / 分 2 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 Hb 7.5 g/dl 未 満 では 禁 忌 イブプロフェンとの 併 用 が 禁 忌 アバカビル+ラミブジン エプジコム ABC+3TC 1 錠 / 分 1 腎 不 全 では 減 量 が 必 要 重 度 の 肝 障 害 に 対 しては 禁 忌 エルビテグラビル+コビシスタ スタリビルド EVG+COBI 1 錠 / 分 1 配 合 錠 ット+エムトリシタビン+フマ +TDF+FTC 腎 機 能 異 常 例 への 投 与 には 注 意 ル 酸 テノホビルジソプロキシル が 必 要 * これら4 剤 はいずれも 核 酸 系 逆 転 写 酵 素 阻 害 薬 (NRTI)である この 他 に 抗 HIV 薬 には 非 核 酸 系 逆 転 写 酵 素 阻 害 薬 (NNRTI) プロテアーゼ 阻 害 薬 (PI) インテグラーゼ 阻 害 薬 CCR-5 阻 害 薬 のグループがある 18