健 康 文 化 非 電 離 放 射 線 の 防 護 指 針 と 安 全 について 宇 田 達 彦 非 電 離 放 射 線 は 原 子 分 子 の 電 離 を 起 こさない 電 磁 波 に 分 類 される これは 低 周 波 から 高 周 波 まで 広 帯 域 に 亘 り 静 磁 場 と 光 まで 広 く 扱 うこともある 電 磁 波 は 電 界 と 磁 界 を 交 互 に 発 生 させながら 伝 播 し 導 体 に 電 流 を 生 じる こう した 作 用 は 生 体 組 織 にも 生 じ 過 度 な 曝 露 は 刺 激 や 熱 作 用 を 引 き 起 こす 非 電 離 放 射 線 の 生 体 への 影 響 は 細 胞 遺 伝 子 の 損 傷 という 観 点 からは 起 こり 難 い 従 って 電 離 放 射 線 のような 曝 露 の 蓄 積 性 は 無 いと 考 えられている ところが 送 電 線 沿 いでの 小 児 白 血 病 携 帯 電 話 使 用 による 脳 腫 瘍 電 気 工 員 で 乳 がんな どとの 関 連 性 が 疑 われた 小 児 白 血 病 では 疫 学 的 な 調 査 で 有 意 差 が 見 られたと の 報 告 もあり リスクを 否 定 できないとしている 発 がんとの 関 連 で 多 くの 生 物 学 的 研 究 がなされ 現 状 では 有 意 な 関 連 性 は 認 められないが 継 続 的 な 調 査 が 必 要 とされている 他 に 電 磁 過 敏 症 による 不 定 愁 訴 の 例 がある このように 電 磁 界 の 健 康 影 響 が 社 会 的 な 関 心 事 となる 背 景 には 電 気 を 使 う 文 明 社 会 にな ってから 歴 史 的 にそれほど 時 間 が 経 っていないことや 近 年 の 急 激 な 普 及 など が 考 えられる 例 えば Maxwell によって 電 磁 波 の 存 在 が 予 測 され Hertz の 火 花 放 電 で 実 験 的 に 確 かめられたのは 150 年 ほど 前 である 名 古 屋 で 初 めて 電 灯 が 付 いたのが 明 治 22 年 というから 私 たちが 身 近 で 電 気 と 接 してから 100 年 程 度 しか 経 っていない その 後 電 気 は 光 源 のみならずエネルギー 源 として 社 会 に 浸 透 し 今 やIT 情 報 教 育 医 療 交 通 電 子 金 融 取 引 など いつでも どこでも 意 識 すること 無 く 使 っている 世 界 規 模 のコンピューター ネットワー ク 社 会 ユビキタス 社 会 を 形 成 するに 至 っている これは 社 会 システムの 大 幅 な 変 質 をもたらし 電 子 機 器 トラブル 情 報 操 作 犯 罪 など 社 会 にもたらす 負 の 影 響 も 見 られる 以 下 では 電 磁 環 境 の 健 康 影 響 に 鑑 み 国 際 的 に 検 討 されて いる 防 護 指 針 と 安 全 に 関 わる 話 題 を 述 べる なお 筆 者 は 将 来 のエネルギー 源 として 期 待 される 高 温 プラズマ 磁 場 閉 じ 込 め 方 式 による 核 融 合 開 発 実 験 施 設 に おいて 時 間 的 統 計 的 に 変 動 する 電 磁 環 境 の 安 全 管 理 の 立 場 から 調 査 を 行 っ てきた 7,8) 1
電 磁 波 の 防 護 指 針 非 電 離 放 射 線 としての 電 磁 波 は 図 1に 示 すように 周 波 数 で 表 すと G(10 9 )Hz から T(10 12 )Hz まで 及 ぶ さらに 周 波 数 が 高 くなると 光 の 領 域 となり Hz よりは m 単 位 の 波 長 で 表 すことが 多 い 電 離 放 射 線 はエネルギー 単 位 である ev で 表 し そ れらの 関 係 は ほぼ 1eV=1.24 m=242thz となる 健 康 影 響 を 考 えた 場 合 非 電 離 放 射 線 も 過 度 な 曝 露 は 避 けるべ きである 非 電 離 放 射 線 防 護 の 国 際 的 な 検 討 は WHO (World Health Organization) 世 界 保 健 機 関 で 健 康 影 響 についての 情 報 の 収 集 や 国 際 基 準 の 設 定 を, ICNIRP (International Commission on Non- Ionizing Radiation Protection) 国 際 非 電 離 放 射 線 防 護 委 員 会 で 健 康 影 響 に 関 する 指 導 と 助 言 及 び 規 制 指 針 の 作 成 を 1-3), IEEE (The Institute of Electrical and Electronics Engineers)の ICES(International Committee on Electromagnetic Safety)では 電 磁 安 全 に 関 する 工 業 規 格 の 策 定 が 行 われている 下 表 に ICNIRP と ICES の 設 立 経 緯 を 示 す なお 国 内 では 総 務 省 が 電 波 管 理 や 電 波 防 護 指 針 策 定 を 4) 厚 生 労 働 省 が 医 療 用 器 具 (MRI)や 労 働 環 境 を 経 済 産 業 省 が 電 気 工 業, 電 力 ( 送 電 線 ) の 規 制 検 討 を 行 っている 例 えば 1960 年 代 の 500kV 送 電 線 に 伴 う 静 電 誘 導 が 生 体 に 及 ぼす 影 響 の 研 究 通 産 省 の 架 空 電 線 路 の 基 準 電 力 設 備 に 関 する 技 術 基 準 を 定 める 省 令 などがある f::hz 1(0) 10 2 10 4 10 6 10 8 10 10 10 12 10 14 静 磁 場 送 電 線 AM FM L::m 携 帯 電 話 1 電 子 レンジ 10-2 非 電 離 放 射 線 周 波 数 f 波 長 l エネルギーEの 関 係 1eV=1.24mm=242THz 10-4 10-6 10-8 10-10 10-12 IR 可 視 光 UV 軟 X 線 E:eV 1 10 2 10 4 10 6 10 8 X 線 g 線 電 離 放 射 線 図 1 電 磁 波 の 周 波 数 波 長 およびエネルギーの 関 係 国 際 機 関 における 検 討 の 経 緯 と 実 状 周 波 数 帯 域 0~300 GHz を 対 象 とした 安 全 指 針 が 1998 年 に ICNIRP から 公 表 さ れた その 後 検 討 が 進 み 2009 年 には 静 磁 場 に 対 する 指 針 を 2010 年 には 1 Hz ~100 khz の 低 周 波 に 対 する 新 たな 指 針 が 公 表 された 以 下 に ICNIRP の 防 護 指 針 に 基 づいて 静 磁 場 および 時 間 的 に 変 動 する 電 磁 界 の 概 要 を 述 べる 2
表 1ICNIRP と ICES の 活 動 経 緯 ICNIRP 1973 国 際 放 射 線 防 護 学 会 IRPA 会 議 で 非 電 離 セッション 会 議 開 催 1977 IRPA 会 議 で INIRC (International Non-Ionizing Radiation Committee) を 設 立 1992 IRPA から 独 立 1996 4つの 常 設 委 員 会 ( 疫 学 生 物 学 物 理 工 学 光 放 射 )で 活 動 開 始 ICES 1960 米 国 で 放 射 線 安 全 規 格 策 定 プロジェクト 承 認 2001 ICES の 名 称 2005 新 SCC39 (Standards Coordinating Committee) 改 称 TC34 製 品 規 格 TC95 安 全 規 格 5つの 小 委 員 会 技 術 手 順 測 定 器 計 算, 用 語 単 位, 安 全 レベル:0-3kHz 安 全 レベル:3kHz-300GHz, 電 気 爆 発 装 置 審 議 静 磁 場 について 静 磁 場 の 生 体 影 響 に 関 わる 多 くの 研 究 があって 例 えば 地 磁 気 (30-50 T, T: テスラ)レベルの 弱 い 磁 場 で 魚 類 鳥 類 などの 生 体 内 に 存 在 する 強 磁 性 物 質 が 作 用 する 回 遊 や 帰 巣 行 動 がいわれているが 割 り 切 れないことも 多 いようである 5) 中 程 度 の 磁 場 では 静 脈 血 流 中 の 脱 酸 素 化 赤 血 球 の 常 磁 性 物 質 として 牽 引 作 用 がある 1 T 以 上 の 強 い 磁 場 では 反 磁 性 物 質 の 赤 血 球 など 非 球 形 細 胞 の 配 向 が 知 られている 心 臓 や 脳 の 極 弱 い 磁 場 は 超 伝 導 量 子 干 渉 素 子 SQUID による 計 測 で 検 知 できる 一 方 8 T 程 の 高 磁 場 では 反 磁 性 物 質 である 水 に 凹 みができる モーゼ 効 果 が 見 られる 近 年 の 超 伝 導 技 術 の 進 展 により 20 T を 超 える 磁 場 強 度 の 核 磁 気 共 鳴 装 置 MRI があり 高 磁 場 下 での 研 究 が 進 んでいる 高 磁 場 下 で の 研 究 が 進 めば 生 体 影 響 も 更 に 明 確 になるであろう 2009 年 改 訂 の 静 磁 場 に 対 する 指 針 レベルを 旧 指 針 値 と 併 せて 表 2 に 示 す この 値 は 心 臓 ペースメーカ ー 使 用 者 等 には 適 用 されず 0.5mT を 超 える 恐 れのある 区 域 では 立 ち 入 り 規 制 す べきであろう 人 体 への 直 接 的 作 用 ではないが 磁 気 カード 計 算 機 ディスクな どは 1mT から 障 害 を 受 け る 恐 れがあり 磁 束 密 度 が 3 mt を 超 える 場 合 は 飛 翔 体 に 対 する 注 意 が 必 要 で 従 事 者 1 日 就 労 時 間 平 均 値 全 身 曝 露 の 上 限 値 手 足 曝 露 の 上 限 値 ある ただし この 指 針 値 は 磁 場 勾 配 や 繰 り 返 しパルス 磁 場 環 境 には 適 用 され 3 旧 基 準 200 mt 2 T 5 T ICNIRP(2009) --- 頭 部 胴 体 2 T 8 T 公 衆 1 日 平 均 値 40 mt 全 ての 部 位 の 上 限 400 mt
Magnetic field strength (A/m) 体 内 電 磁 界 強 度 の 閾 値 健 康 文 化 48 号 ない 神 経 刺 激 を 受 ける 磁 場 勾 配 に 対 する 上 限 値 はパルス 磁 場 によって 誘 起 さ れる 電 界 ピーク 値 と 磁 束 密 度 変 化 について 30V/m または 400T/s とする 報 告 があ る 時 間 的 に 変 動 する 電 磁 界 について 時 間 的 に 変 化 する 電 磁 場 に 対 する 生 体 作 用 は 図 2に 示 すように 10-100KHz より 低 い 周 波 数 では 体 内 誘 導 電 界 による 刺 激 作 用 が さら に 高 い 周 波 数 では 熱 作 用 が 支 配 的 となる うち 刺 激 作 用 の 閾 値 は 周 波 数 に 依 存 するが 熱 作 用 10 6 10 5 10 4 10 3 100 10 1 0.1 刺 激 作 用 が 支 配 的 体 内 誘 導 電 界 10-100 khz 10 MHz 4 熱 作 用 が 支 配 的 周 波 数 刺 激 作 用 の 閾 値 熱 作 用 の 閾 値 SAR 図 2 電 磁 界 の 生 体 作 用 閾 値 一 般 公 衆 職 業 人 Specific Absorption Rate SAR=J 2 /2sr=sE 2 /2r s: 人 体 組 織 の 導 電 率 (S/m) r: 人 体 組 織 の 密 度 (kg/m 3 ) E: 体 内 に 誘 導 された 電 界 (V/m) J: 誘 起 電 流 密 度 (A/m 2 ) の 閾 値 は 周 波 数 に 依 存 せず 一 定 である 周 波 数 10MHz 以 下 の 低 周 波 電 磁 界 の 生 体 作 用 に 基 づく 指 針 値 は 低 周 波 電 磁 界 では 神 経 や 組 織 に 変 化 をおよぼす 刺 激 作 用 が 高 周 波 電 磁 界 では 熱 的 な 作 用 に 根 拠 がおかれている そして 低 周 波 電 磁 界 では 組 織 に 誘 導 される 電 流 密 度 (ma/m 2 )を 高 周 波 電 磁 界 では 熱 的 な 作 用 と し て 比 吸 収 率 (SAR) を 曝 露 指 標 に 用 いている 基 本 制 限 レ ベ ル ( 閾 値 )は 人 体 に 感 じるレベ ルの 刺 激 作 用 と 生 命 維 持 に 必 要 な エ ネ ル ギ ー (W/kg) であ る 基 礎 代 謝 量 か ら 決 め 0.01 0.1 10 10 3 10 5 10 7 10 9 10 11 Frequency (Hz) 図 3 電 磁 波 の 周 波 数 と 磁 界 強 度 指 針 レベル ICNIRP1998
る 熱 作 用 からなる 管 理 環 境 レベルは 上 記 基 本 制 限 値 の 1/10 とし 一 般 環 境 レベル は 管 理 環 境 レベルの 1/5 と 規 定 している なお 実 用 的 な 曝 露 量 評 価 レベルとして 参 考 レベルを 定 めていて こ れが 基 本 制 限 レベルを 超 えることはない 表 3 極 低 周 波 電 磁 環 境 に 対 するICNIRP2010 参 考 レベル(rms) 5 周 波 数 (khz) 電 界 V/m 職 業 人 0.025-0.3 500/f 公 衆 0.050-0.4 250/f ( ) 内 はICNIRP1998 指 針 で 周 波 数 0.025-0.8 khz 磁 界 A/m 800 (20/f) 160 (4/f) μt 1000 (25/f) 図 3に ICNIRP1998 指 針 に 基 づく 従 事 者 と 公 衆 に 対 する 磁 界 強 度 参 考 レベルを 示 す 電 界 強 度 についても 同 様 に 周 波 数 に 依 存 した 指 針 値 が 出 されている 電 磁 界 に 対 する 新 指 針 ICNIRP2010 では 1Hz-100kHz の 低 周 波 領 域 について 改 定 さ れている 社 会 的 関 心 の 高 い 極 低 周 波 の 新 参 考 レベルを 1998 年 版 と 併 せて 表 3 に 示 す 商 用 電 源 で 扱 われる 極 低 周 波 領 域 の 磁 界 強 度 は 1998 年 の 指 針 では 周 波 数 に 反 比 例 していたが 新 指 針 では 50Hz も 60Hz も 同 じ 値 で この 周 波 数 帯 域 では 旧 基 準 より 高 く 緩 和 されている 新 基 準 では 基 本 制 限 レベルを 与 える 上 で 根 拠 とした 現 象 の 変 更 を 行 い 電 界 曝 露 が 与 える 可 能 性 のある 生 物 学 的 作 用 表 面 電 荷 作 用 による 知 覚 から 受 ける 不 快 感 としたが 健 康 に 有 害 な 影 響 を 指 す ものではない 磁 気 閃 光 ( 視 野 周 辺 部 に 点 滅 する 微 弱 な 光 )を 重 要 視 し 中 枢 神 経 系 (Central Nervous System) 組 織 ( 含 む 網 膜 )に 及 ぼす 作 用 や 頭 部 および 胴 体 の 全 組 織 の 末 梢 神 経 系 (Peripheral Nervous System)への 刺 激 を 適 用 するよ うに 変 わっている 高 周 波 については 発 熱 作 用 が 支 配 的 であることは 先 に 述 べた 通 りである 一 般 的 に 基 礎 代 謝 量 は 体 重 とは 逆 比 例 の 関 係 が 調 べられており 人 間 では 1-3 W/kg とされている 6) 非 電 離 放 射 線 には 電 離 放 射 線 被 ばくのような 晩 発 影 響 は ないとの 前 提 で 曝 露 による 人 体 影 響 の 閾 値 は 全 身 平 均 SAR で 評 価 機 関 により 1-8 W/kg と 見 積 もられているので 安 全 側 にとって 0.4 W/kg が 電 波 安 全 基 準 の 指 針 値 に 採 用 されている 低 周 波 数 磁 界 の 長 期 的 な 健 康 影 響 については 科 学 的 に 証 拠 が 不 十 分 なため 指 針 の 根 拠 として 採 用 していない 低 周 波 数 電 磁 界 に よるがん 等 へのリスクについては 主 な 国 際 機 関 によって 次 のように 評 価 され ている [1] IARC( 国 際 がん 研 究 機 関 ) 商 用 周 波 数 の 磁 界 による 小 児 白 血 病 の 疫 学 研 究 の 評 価 では リスクが 2 倍 ほ ど 増 加 しているが 動 物 実 験 から 居 住 環 境 レベルで 生 物 学 的 な 影 響 はない 総 合 的 評 価 から 商 用 周 波 数 磁 界 は グループ2B 発 ガンの 疑 いがある(Possibly 200 (5/f)
carcinogenic to human)に 分 類 される 商 用 周 波 数 電 界 は 小 児 白 血 病 との 間 に 疫 学 研 究 では 関 連 性 が 見 られる 限 定 的 な 証 拠 が 見 られ 動 物 実 験 結 果 では 十 分 な 証 拠 ではないが グループ3 ヒトに 対 する 発 がん 性 について 分 類 できない [2] WHO( 世 界 保 健 機 関 ) 商 用 周 波 数 50/60Hz から 100kHz までの 磁 界 曝 露 を 含 む 急 性 影 響 については 健 康 に 対 して 悪 影 響 を 生 じうる 生 物 学 的 影 響 が 認 められる それ 故 に ばく 露 限 度 が 必 要 だが ガイドラインを 守 ることで 適 切 な 防 護 が 図 れるとしている 慢 性 影 響 について 低 強 度 (0.3~0.4μT 以 上 )の 商 用 周 波 数 磁 界 への 曝 露 が 健 康 リスクを 生 じることを 示 唆 する 科 学 的 根 拠 は 小 児 白 血 病 のリスク 上 昇 につ いての 疫 学 研 究 に 基 づいている ただし 実 験 的 証 拠 やメカニズムに 関 する 証 拠 は 支 持 するものでない 故 に 因 果 関 係 があると 考 えられる 程 の 強 い 証 拠 は ないが 関 心 を 残 すほどには 強 いとし 曝 露 ガイドラインレベルを 下 げること は 推 奨 されない 電 磁 環 境 の 測 定 例 筆 者 は 磁 場 閉 じ 込 め 核 融 合 実 験 施 設 の 特 異 な 電 磁 環 境 を 監 視 測 定 し そこで の 課 題 を 安 全 管 理 の 視 点 から 検 討 してきた すなわち 磁 場 核 融 合 実 験 施 設 で は 大 型 の 超 伝 導 磁 場 発 生 装 置 によるプラズマ 閉 じ 込 めと プラズマ 加 熱 のため に 水 素 イオンおよび 電 子 共 鳴 周 波 数 の 電 磁 波 を 用 いている この 様 な 高 温 プラ ズマ 加 熱 実 験 に 際 してバースト 的 な 電 磁 環 境 が 生 じるため そうした 統 計 的 に 変 動 する 電 磁 環 境 の 計 測 監 視 手 法 および 従 事 者 の 安 全 管 理 対 策 について 検 討 し た これに 関 する 詳 細 は 学 術 誌 に 特 集 として2 回 発 行 されているので 参 考 にし て 頂 きたい 7,8) こうした 施 設 では 併 せて 低 周 波 数 電 磁 界 も 存 在 するが これに 関 連 して 通 常 時 の 人 体 曝 露 レベルを 知 るため 協 力 者 に 携 帯 型 磁 界 モニター (EMDEX-II)を 1 日 携 帯 してもらって 調 査 した 例 を 紹 介 する このとき 電 源 装 置 近 くで 職 務 したときを 除 き 職 場 を 含 み 一 般 生 活 環 境 で 規 制 レベルを 超 える 例 は 見 られていない 日 常 生 活 では 通 勤 で 交 通 機 関 を 利 用 した 時 家 庭 電 化 製 品 を 使 用 した 場 合 にレベルの 上 昇 が 見 られた 特 異 な 例 として 家 庭 で 電 気 カ ーペットの 上 にモニターを 置 いた 場 合 に 比 較 的 高 い 磁 界 を 示 した これらは 単 に 傾 向 を 述 べたに 過 ぎないので 周 波 数 や 測 定 位 置 などを 系 統 的 に 評 価 して 防 護 基 準 と 比 較 する 必 要 がある おわりに 現 代 社 会 において 電 気 と 無 縁 ではあり 得 ず 様 々な 電 子 機 器 に 囲 われて 生 活 6
している 強 度 の 差 はあれ 広 範 囲 な 周 波 数 帯 域 の 電 磁 界 に 曝 されている ここ では 言 及 していないが 送 電 線 のみならず 工 業 商 業 施 設 では 大 小 様 々な 電 力 設 備 を 有 する また そこから 発 生 する 電 磁 界 の 強 度 頻 度 形 態 も 統 計 的 に 変 動 することが 考 えられる 発 生 源 を 特 定 しやすい 事 業 所 などでは 電 磁 環 境 を 念 頭 に 置 いた 防 護 規 制 や 安 全 管 理 を 行 うことが 可 能 であろう しかし 一 般 公 衆 は 通 常 そうしたことを 意 識 しないし 情 報 にも 疎 い 唐 突 に 生 活 の 中 でも 電 磁 場 発 生 源 があり 健 康 影 響 があるかも 知 れないと 言 われたら 戸 惑 うばかりで あるのも 想 像 に 難 くない 通 常 の 社 会 生 活 の 中 では 発 生 者 または 製 品 を 提 供 す る 事 業 者 が 防 護 基 準 値 以 下 であることを 調 査 し 公 衆 の 不 安 感 を 除 くことが 求 められるであろう 一 方 新 しい 技 術 開 発 がなされた 場 合 その 技 術 に 内 在 する 不 確 定 さが 引 き 起 こす 異 常 事 象 がないこと 将 来 に 向 けても 健 康 影 響 が 全 くな いことを 証 明 することは 容 易 でないと 思 われる 利 害 関 係 者 が 共 にリスク 社 会 を 生 きていること リスクを 上 回 る 便 益 ならびに 公 平 性 に 対 する 共 通 認 識 を 持 つことが 大 切 なのではないだろうか 参 考 文 献 [1] ICNIRP Guidelines, Guidelines for limiting exposure to time varying electric, magnetic, and electromagnetic fields (up to 300GHz), Health Physics 74, 494 (1998) [2] ICNIRP Guidelines, Guidelines on limits of exposure to static magnetic fields, Health Physics 96, 504 (2009) [3] ICNIRP Guidelines, Guidelines for limiting exposure to time varying electric, magnetic and electromagnetic fields (1Hz to 100kHz), Health Physics 99, 818 (2010) [4] 電 気 通 信 技 術 審 議 会 答 申 第 38 号, 電 波 利 用 における 人 体 の 防 護 指 針 ( 総 務 省,1990) [5] 志 賀 健 : 磁 場 の 生 体 への 影 響 その 後 (てらぺいあ, 2004) [6] 藤 原 修 : 電 磁 波 のバイオエフェクト, 電 子 情 報 通 信 学 会 誌, 75, 519 (1992) [7] 小 特 集 : 電 場 磁 場 の 問 題 と 磁 場 核 融 合 実 験 施 設,プラズマ 核 融 合 学 会 誌, 75, 17 (1999) [8] 小 特 集 : 磁 場 閉 じ 込 め 核 融 合 施 設 における 電 磁 環 境 と 安 全 指 針,プラズマ 核 融 合 学 会 誌, 88, 418 (2012) ( 核 融 合 科 学 研 究 所 及 び 総 合 研 究 大 学 院 大 学 名 誉 教 授 ) 7