総 合 保 健 科 学 第 31 巻 2015 症 とは,A) 入 眠 困 難, 睡 眠 維 持 困 難, 早 朝 覚 醒, 回 復 感 欠 如 などの 夜 間 の 睡 眠 困 難 があり,B) 適 切 なタイミングと 適 切 な 環 境 下 で 起 こり,C) 夜 間 の 睡 眠 困 難 により,



Similar documents
Microsoft PowerPoint _GP向けGL_final

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

各論_1章〜7章.indd

Microsoft Word - 目次.doc

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

診療行為コード

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

第 3 節 結 果 1. 調 査 票 の 回 収 324 か 所 から 回 答 を 得 た ( 回 収 率 29.5%) 一 般 診 療 所 総 数 回 答 数 回 収 率 (%) 大 津 湖 南 甲 賀 東 近 江

Microsoft Word - nagekomi栃木県特定医療費(指定難病)支給認定申請手続きのご案内 - コピー

伊勢崎市職員職場復帰支援制度

 

5) 在 宅 医 療 提 供 体 制 の 検 討 退 院 に 関 わる 業 種 ごとに 部 会 を 立 ち 上 げ 在 宅 医 療 に 必 要 なことについて 検 討 していく またそれを 拠 点 整 備 事 業 委 員 会 が 統 括 し さらにそれを 拠 点 整 備 事 業 協 議 会 が 監

Microsoft Word - 10 H21田中睡眠と経過

( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

●幼児教育振興法案

市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

地域支援心理研究センター 紀要 第10号

< F2D874491E682528FCD2091E DF C A2E>

(Microsoft Word _10\214\216\222\262\215\270\203\212\203\212\201[\203X_\215\305\217I\215e.doc)

毎 月 の 給 与 等 ( )を 一 定 の 等 級 区 分 にあてはめた 標 準 月 額 の 上 限 が 現 行 の47 等 級 から50 等 級 に 改 正 されます ( 別 紙 健 康 保 険 料 額 表 参 照 ) なお 法 改 正 に 伴 い 標 準 月 額 が 改 定 される 方 につい

< F2D F97CC8EFB8F BE8DD78F9192CA926D>

2 積 極 的 な 接 種 勧 奨 の 差 し 控 え 国 は 平 成 25 年 4 月 から 定 期 接 種 化 したが ワクチン 接 種 との 関 連 を 否 定 できない 持 続 的 な 痛 みなどの 症 状 が 接 種 後 に 見 られたことから 平 成 25 年 6 月 定 期 接 種 と

第 2 部 各 論 1 糖 尿 病 に 関 する 柏 市 の 現 状 及 び 健 康 課 題 糖 尿 病 に 関 する 柏 市 の 現 状 から, 柏 市 の 健 康 課 題 を 抽 出 します 柏 市 の 現 状 データ 疾 病 の 指 摘 状 況 再 掲 図 4 成 人 の 疾 病 の 指 摘

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

<4D F736F F D20836E E819592E88C5E B F944E82548C8E89FC90B3816A5F6A D28F57>

スライド 1

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

●労働基準法等の一部を改正する法律案

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Microsoft PowerPoint - 390

m07 北見工業大学 様式①

(Microsoft Word - \213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235\214\366\225\\\201iH \)\201iHP\227p\201j.doc)

そ の 他 類 ( 番 号 を 記 載 ) 施 設 名 事 所 名 所 在 事 開 始 年 月 日 事 規 模 ( 定 員 ) 公 益 事 広 島 市 城 山 北 城 南 域 包 括 支 援 センター 広 島 市 安 佐 南 区 川 内 B0 平 成 8 年 4 月 日 必 要 な 者

05_現状把握指標一覧(H28.1.1時点)【 確定版】

介護保険制度改正にかかる事業所説明会

独立行政法人国立病院機構呉医療センター医療機器安全管理規程

資料2-2 定時制課程・通信制課程高等学校の現状

接 支 払 制 度 を 活 用 するか 意 思 を 確 認 する 確 認 に 当 たっては 次 の 各 号 に 掲 げる 事 項 について 書 面 により 世 帯 主 の 合 意 を 得 て 代 理 契 約 を 締 結 するものとする (1) 医 療 機 関 等 が 本 市 に 対 し 世 帯 主

Microsoft Word - 配付資料

別 紙

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

認 し 通 常 の 立 入 検 査 に 際 しても 許 可 内 容 が 遵 守 されていることを 確 認 するこ と 2 学 校 薬 剤 師 業 務 の 兼 任 学 校 薬 剤 師 の 業 務 を 兼 任 する 場 合 の 取 扱 いは 次 のとおりとする (1) 許 可 要 件 1 薬 局 等 の

Microsoft Word - 02第3期計画(元データ).doc

Microsoft Word - 福祉医療費給付要綱

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

< F2D819B92CA926D E9693E A2E6A7464>

社会資源について 

<4D F736F F F696E74202D208CE38AFA8D8297EE8ED288E397C390A CC8A AE98EBA8DEC90AC816A2E707074>

HIV感染防止マニュアル(出力用).indd

Microsoft PowerPoint  22日修正最終確定.ppt

< FC90B E835A838B976C8EAE81698E7392AC91BA94C5816A81698F4390B394C5816A2E786C73>

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

国立大学法人東京医科歯科大学職員の労働時間、休暇等に関する規則(案)

公 営 企 業 職 員 の 状 況 1 水 道 事 業 1 職 員 給 与 費 の 状 況 ア 決 算 区 分 総 費 用 純 利 益 職 員 給 与 費 総 費 用 に 占 める ( 参 考 ) 職 員 給 与 費 比 率 22 年 度 の 総 費 用 に 占 A B B/A める 職 員 給 与


島根大学における学生等の授業料その他の費用に関する規則

3 薬 局 サービス 等 (1) 健 康 サポート 薬 局 である 旨 の 表 示 健 康 サポート 薬 局 である 旨 を 表 示 している 場 合 健 康 サポート 薬 局 とは かかりつけ 薬 剤 師 薬 局 としての 基 本 的 な 機 能 に 加 えて 積 極 的 な 健 康 サポート 機

2 1.ヒアリング 対 象 (1) 対 象 範 囲 分 類 年 金 医 療 保 険 雇 用 保 険 税 備 考 厚 生 年 金 の 資 格 喪 失 国 民 年 金 の 加 入 老 齢 給 付 裁 定 請 求 など 健 康 保 険 の 資 格 喪 失 国 民 健 康 保 険 の 加 入 健 康 保 険

臨 床 研 究 事 案 に 関 する 主 な 報 道 概 要 ディオバン 事 案 白 血 病 治 療 薬 タシグナ 事 案 (SIGN 試 験 ) ノバルティス 社 の 高 血 圧 症 治 療 薬 ディオバンに 係 る 臨 床 研 究 において データ 操 作 等 があり 研 究 結 果 の 信 頼

平 成 27 年 度 大 学 生 の 食 生 活 等 生 活 習 慣 調 査 結 果 1 目 的 平 成 25 年 3 月 に 策 定 された 健 康 日 本 21あいち 新 計 画 の 栄 養 食 生 活 分 野 の 目 標 項 目 では 2~6 歳 代 の 肥 満 者 の 割 合 と2~3 歳

18 国立高等専門学校機構

障害福祉制度あらまし目次

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

目 次 休 暇 関 係 Q1 妊 娠 中 健 康 診 査 を 受 けるための 休 暇 が 取 れるのですか? Q2 出 産 予 定 日 の 何 日 前 から 休 暇 が 取 れるのですか? Q3 出 産 後 何 日 まで 休 暇 が 取 れるのですか? Q4 妻 が 出 産 するのですが 休 暇 が

sho05-13/ky808254107800001138

(3) 福 祉 施 設 から 一 般 就 労 への 移 行 本 市 の 福 祉 施 設 利 用 者 の 中 で 平 成 24 年 度 に 一 般 就 労 により 退 所 した 人 は 3 人 です ここでいう 福 祉 施 設 とは 生 活 介 護 事 業 自 立 訓 練 事 業 ( 生 活 訓 練

全設健発第     号

(5 ) 当 該 指 定 居 宅 介 護 事 業 所 の 新 規 に 採 用 し た 全 て の 居 宅 介 護 従 業 者 に 対 し 熟 練 し た 居 宅 介 護 従 業 者 の 同 行 に よ る 研 修 を 実 施 し て い る こ と (6 ) 当 該 指 定 居 宅 介 護 事 業

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

( 運 用 制 限 ) 第 5 条 労 働 基 準 局 は 本 システムの 維 持 補 修 の 必 要 があるとき 天 災 地 変 その 他 の 事 由 によりシステムに 障 害 又 は 遅 延 の 生 じたとき その 他 理 由 の 如 何 を 問 わず その 裁 量 により システム 利 用 者

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

Microsoft Word - (課×県・指定)【頭紙】「精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について」等の一部改正について.rtf

Microsoft Word - A6001A.doc

アルコール健康障害対策基本法の施行について(通知)

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

子 育 てをサポート サポートする 休 暇 等 制 度 1 出 産 前 後 の 休 暇 休 暇 等 名 称 妊 娠 出 産 後 通 院 休 暇 ( 特 別 休 暇 ) 妊 娠 中 の 職 員 及 び 出 産 後 1 年 以 内 の 職 員 が 保 健 指 導 又 は 健 康 審 査 を 受 ける 場

類 ( 番 号 を 記 載 ) 施 設 名 事 所 名 所 在 事 開 始 年 月 日 事 規 模 ( 定 員 ) 公 益 事 必 要 な 者 に 対 し 相 談 情 報 提 供 助 言 行 政 や 福 祉 保 健 医 療 サービス 事 者 等 との 連 絡 調 整 を 行 う 等 の 事 必 要

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321


学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

調査結果の概要

Taro-正社員と期間雇用社員との労

01.活性化計画(上大久保)

月 収 額 算 出 のながれ 給 与 所 得 者 の 場 合 年 金 所 得 者 の 場 合 その 他 の 所 得 者 の 場 合 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 所 得 を 確 かめ

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

39_1

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

Transcription:

総 合 保 健 科 学 : 広 島 大 学 保 健 管 理 センター 研 究 論 文 集 Vol. 31, 2015, 7-12 原 著 大 学 生 を 対 象 とした 睡 眠 調 査 について 三 宅 典 恵 1), 岡 本 百 合 1), 神 人 蘭 1) 2), 永 澤 一 恵 矢 式 寿 子 1), 内 野 悌 司 1), 磯 部 典 子 1) 1), 高 田 純 小 島 奈 々 恵 1), 二 本 松 美 里 1) 1), 吉 原 正 治 日 本 では 約 5 人 に1 人 が 入 眠 困 難, 中 途 覚 醒, 早 朝 覚 醒 などの 睡 眠 の 問 題 を 抱 えていることが 報 告 さ れている 大 学 生 においても 生 活 が 深 夜 型 化 しており, 睡 眠 の 問 題 を 主 訴 にメンタルヘルス 相 談 を 希 望 する 学 生 が 増 加 している われわれは, 本 学 の 教 養 科 目 を 受 講 した 大 学 生 を 対 象 に, 睡 眠 に 関 するアン ケート 調 査 を 実 施 した 多 くの 学 生 が, 睡 眠 時 間 の 不 足 や 日 中 の 眠 気, 睡 眠 の 質 への 不 満 を 感 じていた 不 眠 障 害 はうつ 病 の 発 症 や 不 登 校 への 関 与 も 報 告 されており, 身 体 面 や 精 神 面 への 影 響 は 大 きい 大 学 生 活 への 適 応 が 困 難 となる 事 例 もあるため, 大 学 メンタルヘルスにおいても, 学 生 に 対 して 不 眠 障 害 に 関 する 知 識 や 情 報 の 提 供, 早 期 の 支 援 が 必 要 であると 思 われる キーワード: 不 眠 障 害, 大 学 生,メンタルヘルス Insomnia disorder in university students Yoshie MIYAKE 1), Yuri OKAMOTO 1), Ran JINNIN 1), Ichie NAGASAWA 2) Hisako YASHIKI 1), Teiji UCHINO 1), Noriko ISOBE 1), Jun TAKATA 1) Nanae KOJIMA 1), Misato NIHONMATSU 1), Masaharu YOSHIHARA 1) It is reported that twenty percent of Japanese people suffer from sleeping problems such as difficulty getting to sleep, arousal during sleep, and early-morning awakening. This is also thought to be true with university students who tend to have life styles that last through the night. The number of university students who come for mental health consultations about their sleeping problems are increasing. A questionnaire about sleep was conducted to university students in a class. Many students felt that they did not have enough sleep, felt sleepy during the day, and was unsatisfied with the quality of their sleep. Insomnia disorder is said to be related to depression and school refusal, and its physical and mental effects are significant resulting in, for example, difficulty adapting to campus life. On campus, it would be important to provide the students with appropriate information about insomnia disorders, and to offer early support. Key words: Insomnia disorder, university students, mental health Ⅰ.はじめに 生 活 習 慣 の 多 様 化 や 労 働 環 境 の 変 化 などに 伴 い, 不 眠 障 害 の 増 加 が 注 目 されている 一 般 人 口 を 対 象 とした 疫 学 調 査 から, 日 本 においておよそ 5 人 に1 人 は 入 眠 困 難, 中 途 覚 醒, 早 朝 覚 醒 など の 睡 眠 の 問 題 を 抱 えていることが 報 告 されてい る 1) 睡 眠 障 害 国 際 分 類 第 2 版 2) によると, 不 眠 1) 広 島 大 学 保 健 管 理 センター 2) 広 島 大 学 大 学 院 精 神 神 経 医 科 学 著 者 連 絡 先 : 739-8514 広 島 県 東 広 島 市 鏡 山 1-7-1 1)Health Service Center, Hiroshima University 2)Department of Psychiatry and Neurosciences, Hiroshima University 広 島 大 学 保 健 管 理 センター 7

総 合 保 健 科 学 第 31 巻 2015 症 とは,A) 入 眠 困 難, 睡 眠 維 持 困 難, 早 朝 覚 醒, 回 復 感 欠 如 などの 夜 間 の 睡 眠 困 難 があり,B) 適 切 なタイミングと 適 切 な 環 境 下 で 起 こり,C) 夜 間 の 睡 眠 困 難 により, 疲 労, 不 調 感, 注 意 集 中 力 低 下, 気 分 変 調 などの 日 中 の 問 題 が 起 きている 場 合 とされる 1) すなわち, 適 切 な 時 間 帯 に 床 で 過 ごす 状 態 が 確 保 されているにもかかわらず, 夜 間 睡 眠 の 質 的 低 下 があり,これにより 日 中 に 生 活 の 質 の 低 下 がみられる 状 態 である 3) 米 国 精 神 医 学 会 による 精 神 疾 患 の 診 断 統 計 マニュアル (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition; DSM-5) 4) では, 不 眠 障 害 (Insomnia disorder)と 呼 ばれるようになった 一 般 労 働 者 の20-40%が 不 眠 であるとも 言 われ ており 5), 社 会 全 体 への 不 眠 障 害 の 影 響 は 大 き い 日 中 の 眠 気 から 集 中 力 が 欠 け, 社 会 生 活 の 効 率 が 悪 くなり, 時 に 重 大 な 事 故 につながる 症 例 も みられる また, 不 眠 障 害 がうつ 病 の 発 症 要 因 と いう 報 告 や 不 登 校 の 合 併 例 も 少 なくない 6,7) 三 池 らは, 不 登 校 は 慢 性 的 睡 眠 欠 乏 の 持 続 によって 引 き 起 こされる 中 枢 神 経 機 能 の 病 的 疲 労 状 態 である とも 述 べている 8) 大 学 生 においても 生 活 が 深 夜 型 化 しており, 睡 眠 の 問 題 を 主 訴 にメンタルヘル ス 相 談 を 希 望 する 学 生 が 増 加 している しかしな がら, 不 眠 障 害 を 抱 えながらも 相 談 に 至 らない 症 例 は 多 いと 思 われる 不 眠 障 害 に 対 する 今 後 の 支 援 のあり 方 について 検 討 するためには, 大 学 生 の 睡 眠 状 態 や 不 眠 障 害 に 対 する 理 解 について 明 らか にすることが 重 要 である 今 回, 大 学 生 を 対 象 に 睡 眠 に 関 するアンケート 調 査 を 行 ったので, 報 告 する Ⅱ. 対 象 と 方 法 本 学 の 教 養 科 目 を 受 講 した 大 学 生 を 対 象 に, 調 査 の 主 旨 を 説 明 し, 同 意 を 得 た 上 で, 自 記 式 質 問 紙 を 用 いたアンケート 調 査 を 実 施 した 大 学 生 の 睡 眠 状 態 について 調 査 するため, 不 眠 障 害 の 評 価 尺 度 であるアテネ 不 眠 尺 度 (Athens Insomnia Scale) 9) を 用 いた 質 問 紙 では, あなたが 過 去 1ヶ 月 間 に 少 なくとも 週 3 回 以 上 経 験 したものを 選 択 して 下 さい の 問 いに 対 して, 睡 眠 に 関 する8 項 目 の 質 問 に 対 して 回 答 を 選 択 する 各 項 目 0-3 点 で 評 価 を 行 い, 総 得 点 により 不 眠 の 度 合 いを 判 定 する 0-3 点 は 問 題 なし,4-5 点 は 少 し 不 眠 の 疑 いあり,6-9 点 は 不 眠 症 の 疑 いがあり, 10 点 以 上 は 専 門 家 への 相 談 を 勧 めると 評 価 され る アンケートの 内 容 は,アテネ 不 眠 尺 度, 現 在 の 睡 眠 状 態 に 関 する 質 問, 不 眠 障 害 に 対 する 理 解 と 対 応 に 関 する 質 問,などから 構 成 されている 回 答 者 は448 人 ( 男 性 267 人, 女 性 181 人 )であり, 平 均 年 齢 は18.8±1.0 歳 であった Ⅲ. 結 果 1.アテネ 不 眠 尺 度 を 用 いた 質 問 について 8 項 目 の 総 得 点 の 平 均 は,4.8±3.2 点 であった 総 得 点 は,0-3 点 が179 人 (40.0%),4-5 点 が109 人 (24.3%), 6-9 点 が125 人 (27.9%), 10 点 以 上 は35 人 (7.8%)であった 結 果 の 一 部 を 表 1に 示 す 項 目 別 では, 寝 つきはどうでし たか という 質 問 に 対 して, いつも 寝 つきはよい と 回 答 した 学 生 は60.7%であり, 残 りの 約 4 割 の 学 生 が 入 眠 の 困 難 さを 認 めていた 夜 間, 睡 眠 途 中 に 目 が 覚 めることはありましたか という 質 問 に 対 して, 問 題 になるほどではなかった と 回 答 した 学 生 は80.8%であり, 約 2 割 の 学 生 が 中 途 覚 醒 を 認 めていた 希 望 する 起 床 時 間 より 早 く 目 覚 め,それ 以 上 眠 れないことはありましたか という 質 問 に 対 して, そのようなことはなかっ た と 回 答 した 学 生 は79.4%であり, 約 2 割 の 学 生 が 早 朝 覚 醒 を 認 めていた あなたの 総 睡 眠 時 間 はどうでしたか という 質 問 に 対 して, 十 分 である と 回 答 した 学 生 は35.9%であり, 多 くの 学 生 は 睡 眠 時 間 が 足 りないと 回 答 した あなた の 全 体 的 な 睡 眠 の 質 はどうでしたか という 質 問 に 対 して, 満 足 している と 回 答 した 学 生 は 37.7%であり, 多 くの 学 生 が 睡 眠 の 質 に 不 満 を 感 じていた 日 中 の 気 分 や 活 動 については, いつ も 通 り と 回 答 した 学 生 が 約 65%であった 日 中 の 眠 気 はどうでしたか という 質 問 に 対 して, 全 くない と 回 答 した 学 生 は8%であり,ほと んどの 学 生 が 日 中 の 眠 気 を 感 じていた 8

大 学 生 を 対 象 とした 睡 眠 調 査 について 表 1 アテネ 不 眠 尺 度 を 用 いた 質 問 紙 結 果 総 得 点 0-3 点 40.0% 4-5 点 24.3% 6-9 点 27.9% 10 点 以 上 7.8% A 寝 つきはどうでしたか いつも 寝 つきはよい 60.7% いつもより 少 し 時 間 がかかった 28.3% いつもよりかなり 時 間 がかかった 8.0% いつもより 非 常 に 時 間 がかかったか, 全 く 眠 れなかった 8.0% B 夜 間, 睡 眠 途 中 に 目 が 覚 めることはありましたか 問 題 になるほどではなかった 80.8% 少 し 困 ることがあった 15.2% かなり 困 っている 3.8% 深 刻 な 状 態 か, 全 く 眠 れなかった 0.2% C 希 望 する 起 床 時 間 より 早 く 目 覚 め,それ 以 上 眠 れないことはありましたか そのようなことはなかった 79.4% 少 し 早 かった 16.3% かなり 早 かった 3.6% 非 常 に 早 かったか, 全 く 眠 れなかった 0.7% D あなたの 総 睡 眠 時 間 はどうでしたか 十 分 である 35.9% 少 し 足 りない 46.5% かなり 足 りない 16.3% 全 く 足 りないか, 全 く 眠 れなかった 1.3% E あなたの 全 体 的 な 睡 眠 の 質 はどうでしたか 満 足 している 37.8% 少 し 不 満 49.8% かなり 不 満 11.2% 非 常 に 不 満 か, 全 く 眠 れなかった 1.3% F 日 中 の 気 分 はどうでしたか いつも 通 り 65.2% 少 しめいった 30.6% かなりめいった 3.1% 非 常 にめいった 1.1% G 日 中 の 活 動 について( 身 体 的 および 精 神 的 )はどうでしたか いつも 通 り 64.3% 少 し 低 下 31.5% かなり 低 下 3.8% 非 常 に 低 下 0.4% H 日 中 の 眠 気 はありましたか 少 しある 53.6% かなりある 30.8% 激 しい 1.3% 全 くない 8.0% 9

総 合 保 健 科 学 第 31 巻 2015 2. 睡 眠 状 態 に 関 する 質 問 に 対 して 入 眠 までに 要 する 時 間 について, 15 分 未 満 が51.6%, 15-29 分 が27.2%であり, 約 8 割 の 学 生 は 入 眠 までに 要 する 時 間 は30 分 未 満 であっ た しかし, 30-59 分 が14.7%, 60 分 以 上 が6.5%であり, 入 眠 までに 長 時 間 を 要 する 学 生 も 少 なくなかった 睡 眠 時 間 の 平 均 は, 平 日 は6 時 間 6 分, 休 日 は7 時 間 47 分 であった 今 まで 不 眠 などの 不 眠 障 害 の 症 状 に 悩 んだ 経 験 がありま すか という 質 問 に 対 して, ある と 回 答 した 学 生 は45 人 (10%)であった このうち, 医 療 機 関 を 受 診 した 経 験 があると 回 答 した 学 生 は1 人 で あった 3. 不 眠 障 害 の 理 解 に 関 する 質 問 に 対 して 不 眠 障 害 で 悩 んでいることは 周 囲 に 言 いづら いですか,という 質 問 には, そう 思 う が41 人 (9.1%), ややそう 思 う が80 人 (17.9%), あ まりそう 思 わない が153 人 (34.2%), そう 思 わない が174 人 (38.8%)であった 不 眠 で 医 療 機 関 を 受 診 する 必 要 はないと 思 いますか,と いう 質 問 には, そう 思 う が63 人 (14.1%), や やそう 思 う が83 人 (18.5%), あまりそう 思 わ ない が166 人 (37.0%), そう 思 わない が136 人 (30.4%)であった 不 眠 障 害 はうつ 病 など のこころの 病 気 の 一 症 状 としてあらわれることが 多 いと 思 いますか,という 質 問 には, そう 思 う が202 人 (45.1%), や や そ う 思 う が191 人 (42.6%), あまりそう 思 わない が35 人 (7.8%), そう 思 わない が20 人 (4.5%)であった 不 眠 障 害 の 治 療 薬 を 飲 むことにネガティブなイメー ジがありますか,という 質 問 には, そう 思 う が135 人 (30.1%), や や そ う 思 う が146 人 (32.6%), あまりそう 思 わない が99 人 (22.1%), そう 思 わない が68 人 (15.2%)であった 不 眠 障 害 の 症 状 に 悩 んだらどうしますか,と いう 質 問 には, 生 活 習 慣 を 改 善 する が274 人 (61.2%), 睡 眠 の 環 境 を 整 える が256 人 (57.1%), 気 分 転 換 などのストレスの 軽 減 をする が229 人 (51.1%), 誰 かに 相 談 する が143 人 (31.9%), 放 っておいてもいつか 自 然 に 治 る が136 人 (30.4%), 病 院 を 受 診 する が101 人 (22.5%), 保 健 管 理 センターに 相 談 する が62 人 (13.8%), よ くわからない が10 人 (2.2%)であった( 重 複 回 答 あり) Ⅳ. 考 察 大 学 生 448 人 を 対 象 に 睡 眠 に 関 するアンケート 調 査 を 行 った 本 調 査 で 用 いたアテネ 不 眠 尺 度 は, 世 界 保 健 機 関 (WHO)が 中 心 となって 設 立 した 睡 眠 と 健 康 に 関 する 世 界 プロジェクト が 作 成 した 世 界 共 通 の 不 眠 症 判 定 法 に 基 づいたチェック リストである アテネ 不 眠 尺 度 による 質 問 では, 入 眠 困 難 を 認 めている 学 生 が 約 4 割, 中 途 覚 醒 を 認 めている 学 生 が 約 2 割, 早 朝 覚 醒 を 認 めている 学 生 が 約 2 割 であった また, 睡 眠 時 間 の 平 均 は 平 日 6 時 間 6 分, 休 日 7 時 間 47 分 であり, 約 6 割 の 学 生 が 睡 眠 時 間 の 不 足 や 睡 眠 の 質 への 不 満 を 感 じており, 多 くの 学 生 が 日 中 の 眠 気 を 感 じてい た また,アテネ 不 眠 尺 度 の 総 得 点 が10 点 以 上 の, 不 眠 症 の 疑 いが 強 く 相 談 が 必 要 と 判 定 される 学 生 が7.8%であり, 不 眠 障 害 を 抱 える 学 生 は 少 なく ないと 思 われる 不 眠 障 害 があると, 日 中 の 眠 気 から QOL の 低 下 につながり, 学 生 生 活 への 影 響 は 大 きい しかし, 今 までに 不 眠 障 害 の 症 状 に 悩 んだ 経 験 があると 回 答 した 学 生 のうち, 医 療 機 関 を 受 診 した 経 験 がある 学 生 は1 人 であった 多 く の 学 生 が, 不 眠 障 害 で 悩 んでいることは 周 囲 に 言 いづらいという 考 えではなく, 不 眠 障 害 は 精 神 疾 患 の 一 症 状 としてあらわれることも 理 解 してい た しかし, 不 眠 障 害 の 症 状 に 悩 んだ 場 合 も, 約 3 割 の 学 生 は 放 っておいてもいつか 自 然 に 治 る と 回 答 し, 病 院 を 受 診 する, 保 健 管 理 センター に 相 談 する と 回 答 した 学 生 よりも 多 かった ま た, 不 眠 障 害 の 治 療 のために 医 療 機 関 の 受 診 の 必 要 はないと 考 えている 学 生 や 治 療 薬 を 飲 むことに ネガティブなイメージを 抱 いている 学 生 も 多 くみ られた また,アテネ 不 眠 尺 度 の 総 得 点 が10 点 以 上 の 高 得 点 群 では, 不 眠 で 医 療 機 関 を 受 診 する 必 要 はない という 質 問 に 対 し, 約 半 数 の 学 生 が そう 思 う ややそう 思 う と 回 答 しており, 不 眠 障 害 の 症 状 や 治 療 についての 正 しい 理 解 を 促 し 10

大 学 生 を 対 象 とした 睡 眠 調 査 について ていく 必 要 があると 思 われる 過 去 の 調 査 によると, 日 本 人 の 睡 眠 時 間 は 全 体 の 平 均 睡 眠 時 間 が7 時 間 22 分 であった 10) 厚 生 労 働 省 が 実 施 した 平 成 23 年 国 民 栄 養 健 康 調 査 によ ると,20 代 の 睡 眠 時 間 は6 時 間 以 上 7 時 間 未 満 が 男 性 39.3%, 女 性 36.7%と 最 も 多 い 結 果 であった 本 調 査 の 結 果 と 比 較 すると, 大 学 生 の 平 日 の 睡 眠 時 間 が 不 足 していることがわかる 日 本 人 の 平 均 睡 眠 時 間 はこの50 年 間 で 約 50 分 短 くなり, 特 に 若 年 層 の 睡 眠 時 間 の 短 縮 が 著 しいといわれている 11) インターネットやスマートフォン,ゲームの 普 及 の 影 響 もあり, 若 者 の 生 活 の 深 夜 型 化 は 深 刻 な 問 題 である また, 大 学 生 においては, 講 義 の 他 に, 夜 間 のアルバイトやサークル 活 動, 研 究 室 での 活 動 など 多 くの 活 動 に 追 われ, 睡 眠 が 不 足 するケー スも 多 い ゲームなどとは 異 なり, 学 生 生 活 にお いてプラスに 考 えられることが 多 い 活 動 であって も, 不 眠 障 害 につながる 恐 れがあり, 生 活 リズム への 十 分 な 配 慮 が 必 要 である また, 昼 夜 逆 転 の 生 活 が 続 くと 活 動 量 が 減 ったうえに, 光 を 浴 びる ことが 少 なくなり, 体 内 時 計 に 狂 いが 生 じて,さ らに 睡 眠 が 障 害 されることになり, 薬 物 療 法 を 実 施 しても 改 善 がみられない 例 も 多 い 6) 不 眠 障 害 と 精 神 面 は 大 きく 関 与 しており, 最 近 では 先 行 す る 不 眠 がうつ 病 の 発 症 につながることも 報 告 され ている 12) ストレスを 受 けると, 一 過 性 に 不 眠 を 認 めることもあるが,この 際 の 対 処 が 適 切 でない と 慢 性 化 して 不 眠 障 害 に 発 展 する 3) 寝 つけない で 苦 しい 思 いを 経 験 すると, 眠 りに 対 するこだわ りが 強 くなり, 寝 床 に 就 くと 寝 つけるかどうかが 一 番 の 気 がかり 関 心 になり,さらに 寝 つけなく なる 13) 不 眠 を 恐 れる 気 持 ちが 強 いために 入 眠 時 の 情 動 的 興 奮 が 増 強 され, 入 眠 を 妨 げることとな る 入 眠 障 害 に 対 する 認 知 行 動 療 法 である 刺 激 制 御 療 法 では, 眠 たくなるまで 寝 床 に 就 かないこと や, 寝 つけない 場 合 には 寝 床 を 離 れることで, 寝 つけない 恐 怖 を 断 ち 切 るように 指 導 を 行 う 14) こ のように, 不 眠 障 害 の 治 療 においては, 睡 眠 導 入 剤 による 薬 物 療 法 のみならず, 睡 眠 衛 生 のための 患 者 への 指 導 や 精 神 療 法 なども 有 効 であり, 早 期 の 適 切 な 対 処 が 必 要 である 不 眠 障 害 の 身 体 面, 精 神 面 に 及 ぼす 影 響 は 大 き く, 学 生 の 適 切 な 睡 眠 に 対 する 取 り 組 みが 重 要 と なってきている 保 健 管 理 センターでは, 学 生 に 対 して 不 眠 障 害 に 関 する 知 識 や 情 報 の 提 供, 早 期 の 治 療 導 入 を 呼 びかけていくことが 必 要 であると 思 われる Ⅴ. 結 語 大 学 生 の 睡 眠 の 現 状 を 調 査 するため, 教 養 科 目 の 講 義 を 受 講 した 学 生 に 対 して,アンケート 調 査 を 行 った 今 回 の 調 査 により, 多 くの 学 生 が, 睡 眠 時 間 の 不 足 や 日 中 の 眠 気, 睡 眠 の 質 への 不 満 を 感 じていた 不 眠 障 害 は 身 体 面 や 精 神 面 への 影 響 は 大 きく,QOL の 低 下 から 大 学 生 活 への 適 応 が 困 難 となる 事 例 もあるため, 大 学 メンタルヘルス においても, 学 生 に 対 して 睡 眠 に 関 する 知 識 や 情 報 の 提 供, 早 期 の 支 援 や 治 療 導 入 のあり 方 を 検 討 していくことが 課 題 であると 思 われた 文 献 1)Kim K, Uchiyama M, Okawa M, et al: An epidemiological study of insomnia among the Japanese general population. Sleep Med 8: 723-732, 2007. 2) 日 本 睡 眠 学 会 診 断 分 類 委 員 会 訳 : 睡 眠 障 害 国 際 分 類 第 2 版 診 断 とコードの 手 引 き. 医 学 書 院, 東 京,2010. 3) 内 山 真, 鈴 木 正 泰 : 不 眠 障 害. 臨 床 精 神 医 学 43:971-978,2014. 4)American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical Manual of Mental Disorders, 5 th edition. Arlington, VA, APA, Washington DC, 2013. 5) 土 井 由 利 子 : 日 本 人 の 眠 りの 特 徴 - 疫 学 研 究 からわかったこと.こころの 科 学 119:21-25, 2005. 6) 菅 重 博, 武 田 彰 久, 佐 々 木 圭 吾 他 : 生 活 習 慣 と 睡 眠. 心 身 医 学 51:783-789,2011. 7) 増 田 彰 則 : 不 登 校 と 睡 眠 障 害 について. 心 身 医 学 51:815-820,2011. 8) 三 池 輝 久, 友 田 明 美 : 登 校 拒 否 と 慢 性 疲 労 症 11

総 合 保 健 科 学 第 31 巻 2015 候 群 (CFS). 臨 床 科 学 29:709 716,1993. 9)Soldatos CR, Dikeos DG, Paparriqopoulos TJ: Athens Insomnia Scale validation of an instrument based on ICD-10 criteria. J Psychosom Res 48: 555-560, 2000. 10)NHK 放 送 文 化 研 究 所 ( 編 ):データブック 国 民 生 活 時 間 調 査 2005.NHK 出 版,2006. 11) 福 田 一 彦 : 教 育 と 睡 眠 問 題. 高 橋 清 久 ( 編 者 代 表 ): 睡 眠 学 - 眠 りの 科 学 医 歯 薬 学 社 会 学.じほう:169-184,2003. 12)Ford DE, Kamerow DB: Epidemiologic study of sleep disturbances and psychiatric disorders. An opportunity for prevention? JAMA 262: 1479-1484, 1989. 13) 内 山 真 : 不 眠 が 主 訴 の 場 合, 睡 眠 障 害 の 鑑 別 診 断. 睡 眠 障 害 の 診 断 治 療 ガイドライン 研 究 会, 内 山 真 編 : 睡 眠 障 害 の 対 応 と 治 療 ガイドラ イン 第 2 版,じほう:67-75,2012. 14) 山 田 尚 登 : 認 知 行 動 療 法, 睡 眠 障 害 の 診 断 治 療 ガイドライン 研 究 会, 内 山 真 編 : 睡 眠 障 害 の 対 応 と 治 療 ガイドライン 第 2 版,じほう: 137-144,2012. 12