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景品の換金行為と「三店方式」について

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

市街化調整区域における地区計画の

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(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

答申第585号

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2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

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定款  変更

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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企 画 課 企 画 部 満 了 2 55 総 務 部 企 画 室 設 置 認 可 学 部 佐 賀 大 学 附 属 図 書 館 医 学 分 館 設 置 申 請 書 企 画 室 企 画 調 査 係 2004/4/1 30 年 2005/4/1 2035/3/31 ファイル 事 務 室 企 画 部 企 画

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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公表表紙

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

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4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

18 国立高等専門学校機構

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4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

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しかし 主 に 欧 州 の 一 部 の 回 答 者 は 受 託 責 任 について 資 源 配 分 の 意 思 決 定 の 有 用 性 とは 独 立 の 財 務 報 告 の 目 的 とすべきであると 回 答 した 本 ED に 対 する ASBJ のコメント レターにおける 意 見 経 営 者 の 受

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Transcription:

[ 議 長 総 括 ] 太 平 洋 戦 争 と 枢 軸 国 の 戦 略 ドイツを 中 心 に 加 賀 谷 貞 司 戦 争 史 研 究 国 際 フォーラム は 防 衛 研 究 所 において 平 成 14 年 度 から 二 国 間 あるい は 多 国 間 の 比 較 研 究 を 狙 いとして 毎 年 開 催 し 今 年 度 第 9 回 目 を 迎 えることとなりまし た 平 成 19 年 度 からは 太 平 洋 戦 争 をメインテーマとして 太 平 洋 戦 争 の 新 視 点 (19 年 度 ) 太 平 洋 戦 争 - 連 合 国 の 対 日 戦 略 (20 年 度 ) 太 平 洋 戦 争 とその 戦 略 (21 年 度 )というように 太 平 洋 戦 争 を 従 来 の 作 戦 戦 闘 のレベルではなく 国 家 戦 略 ある いは 戦 争 指 導 レベルを 焦 点 として 実 施 してきたところです そして 本 年 度 は 太 平 洋 戦 争 と 枢 軸 国 の 戦 略 -ドイツを 中 心 に- とテーマを 設 定 いたしました その 趣 旨 につきましては 太 平 洋 戦 争 が 従 来 米 国 や 英 国 そして 中 国 といった 連 合 国 側 の 議 論 が 多 く 日 本 ではあまり 取 り 上 げられることのなかったドイツとイタリア さらにはソ 連 の 戦 略 について 考 える 良 い 機 会 になればと 思 います また 本 テーマについては 日 独 の 同 盟 という 政 治 レベルでの 研 究 会 等 が 多 く 実 施 されたことがあると 思 いますが 戦 争 指 導 レベルにおいて 議 論 されることはなかった のではないでしょうか そして ドイツを 中 心 としましたのは 第 2 次 世 界 大 戦 のまさに 中 心 国 であり 欧 州 戦 場 の 主 役 としてのドイツが 太 平 洋 戦 争 に 先 んじて 欧 州 戦 争 を 戦 い 日 本 は その ドイツの 影 響 を 大 いに 受 けながら 太 平 洋 戦 争 に 突 入 していった 事 実 があります このように 第 2 次 世 界 大 戦 や 三 国 同 盟 の 日 本 に 及 ぼした 様 々な 影 響 が 具 体 的 には 何 であったのか そして 日 本 はどのような 選 択 をしていったのかについて 明 らかになる のではないかと 期 待 しております 本 日 は 三 国 同 盟 のもう 一 方 の 当 事 国 であるイタリアの 研 究 者 さらには まぼろしの 四 カ 国 同 盟 の 相 手 国 であるロシア 人 研 究 者 を 含 む 国 外 から4 名 (クレフェルト 博 士 は 不 参 加 ) 国 内 から 防 衛 研 究 所 戦 史 部 研 究 者 を 含 む7 名 の 計 11 名 の 研 究 者 がそれぞれ の 立 場 から 枢 軸 国 とソ 連 が 第 2 次 世 界 大 戦 をいかに 戦 おうとし そして 戦 ったのかにつ いて 考 察 を 深 めてまいりたいと 思 います 本 フォーラムの 概 要 は 次 のとおりです 3

最 初 に 三 宅 正 樹 名 誉 教 授 による 基 調 講 演 は 日 独 伊 三 国 同 盟 とユーラシア 大 陸 ブ ロック 構 想 と 題 して 行 なわれた 講 演 の 中 で 三 宅 教 授 は 独 ソ 不 可 侵 条 約 調 印 から 独 ソ 戦 開 始 までの 日 本 外 交 混 乱 の 要 因 は ドイツ 内 に 二 つの 外 交 路 線 すなわちヒトラー の 親 英 反 ソ 路 線 とリッベントロップの 反 英 親 ソ 路 線 が 同 時 に 存 在 していたことにあると 指 摘 された 独 ソ 不 可 侵 条 約 の 調 印 はリッベントロップ 路 線 の 成 果 であり 独 ソ 開 戦 は ヒトラー 路 線 の 結 果 であった リッベントロップ 路 線 が 頂 点 を 迎 えるのは 1939 年 9 月 に 独 ソ 間 に 友 好 条 約 が 調 印 された 時 であり 1940 年 11 月 のベルリン 会 談 は リッベン トロップ 路 線 で 開 催 された 独 ソ 関 係 改 善 の 最 後 の 機 会 であった しかし スターリンの 回 答 にあった 日 ソ 独 伊 四 国 連 合 加 盟 へのソ 連 側 の 条 件 は 到 底 ヒトラーの 受 け 入 れると ころとならず 対 ソ 作 戦 (バルバロッサ 作 戦 )の 開 始 が 決 定 された 日 ソ 独 伊 のユーラ シア 大 陸 ブロック 構 想 に 執 着 したリッベントロップも 独 裁 者 ヒトラーの 対 ソ 戦 開 始 決 定 の 前 には 無 力 であり そして この 間 のドイツ 外 交 の 二 重 性 と 二 つの 路 線 の 転 換 を 看 破 できなかった 松 岡 外 相 は 1941 年 4 月 モスクワで 日 ソ 中 立 条 約 を 調 印 することにな る ヒトラーの 親 英 反 ソ 路 線 とリッベントロップの 反 英 親 ソ 路 線 に 翻 弄 された 日 本 外 交 の 軌 跡 が 三 宅 教 授 の 講 演 によって 明 らかにされた 引 き 続 き 第 1 セッションでは ドイツの 戦 争 と 日 本 に 焦 点 を 当 てた 2 名 の 研 究 者 の 発 表 とそれに 対 するコメントがなされた 最 初 に ゲルハルト ヒルシュヘルト 教 授 が ヒトラーの 戦 争 目 的 と 題 して 発 表 し た ヒルシュヘルト 教 授 の 発 表 は ヨーロッパ 全 土 特 に 東 方 における 過 激 な 植 民 政 策 へとドイツの 政 治 指 導 者 が 邁 進 する 過 程 と ドイツの 戦 争 目 的 にとって 必 要 かつ 根 本 的 な 部 分 であった 新 秩 序 概 念 の 結 果 について 考 察 したものであった その 中 で ドイ ツの 戦 争 目 的 を 屈 辱 的 な 第 一 次 世 界 大 戦 の 結 果 の 回 復 すなわちヴェルサイユ 体 制 の 打 破 という 短 期 的 な 目 標 と ヨーロッパの 征 服 特 に 東 方 におけるヒトラー 自 身 の 過 激 な 意 図 とは 区 別 すべきであるとの 指 摘 がなされた そして 前 者 すなわちヴェルサイユ 条 約 を 破 棄 し 中 央 ヨーロッパに ドイツ 帝 国 を 再 建 するという 計 画 に 関 しては 手 段 をめぐって 対 立 はあったものの ドイツの 政 治 エリートは 一 致 していた 一 方 東 方 における 生 存 圏 に 対 するヒトラーの 野 望 は 誇 大 妄 想 的 な 帝 国 主 義 的 計 画 と 幼 稚 か つ 残 忍 な 人 種 主 義 によって 彩 られていたが 明 確 な 構 想 も その 具 体 化 に 必 要 な 人 材 も 欠 けていた さらに ヒトラーの 態 度 も 曖 昧 無 関 心 かつ 優 柔 不 断 であり 将 来 のヨ ーロッパに 関 する 政 治 的 な 構 想 も 統 一 的 な 統 治 組 織 もなかったため 新 秩 序 に 関 する 完 全 かつ 包 括 的 な 公 的 プログラムも 策 定 されなかった その 結 果 いくつもの 案 が 乱 立 したが いずれも 目 新 しいものでも 秩 序 立 ったもので もなく 未 熟 な 形 の 植 民 地 主 義 の 原 則 に 過 ぎず ドイツの 占 領 地 に 対 する 経 済 政 策 は 4

加 賀 谷 太 平 洋 戦 争 と 枢 軸 国 の 戦 略 収 奪 と 没 収 の 2 語 に 集 約 できる すなわち ドイツの 東 方 における 占 領 政 策 は 本 質 的 には 統 治 機 構 の 空 白 に 乗 じてハインリッヒ ヒムラーの 機 関 をはじめ 無 数 の 新 たな 組 織 が 誕 生 競 合 する 中 各 々 過 激 さを 増 していき 最 終 的 には 無 制 限 の 野 蛮 さ 無 秩 序 と 向 こう 見 ずさによって 利 用 し 得 る 経 済 的 人 的 資 源 の 最 大 限 の 収 奪 搾 取 に 終 わったと ヒルシュヘルト 教 授 は 結 論 づけた 次 に 田 嶋 信 雄 教 授 による 日 本 から 見 たドイツの 戦 争 と 題 する 発 表 がなされた 田 嶋 教 授 は 1943 年 初 頭 のスターリングラードでのドイツ 軍 の 敗 北 以 降 日 本 の 政 府 や 軍 部 がドイツの 軍 事 力 や 国 内 統 合 力 などの 総 合 国 力 をいかに 評 価 し 政 策 決 定 を 行 って いったかを 分 析 独 ソ 戦 の 本 質 を 理 解 し 得 なかったという 日 本 の 対 独 認 識 の 問 題 点 を 指 摘 した そして 日 本 が 提 示 した イタリアなきユーラシア 大 陸 ブロック 構 想 は 独 ソ 戦 をイデオロギー 的 人 種 的 絶 滅 戦 争 と 位 置 づけて 戦 うヒトラーには まったく 考 慮 の 余 地 がなかったものであり 他 方 日 本 は 独 ソ 戦 が 絶 滅 戦 争 という 世 界 観 戦 争 であることを 理 解 できなかったがために 戦 争 中 終 始 一 貫 して ドイツ 側 の 冷 淡 な 対 応 にもかかわらず 独 ソ 和 平 を 模 索 したと 指 摘 した さらに 発 表 では ソ 連 は 早 期 に 参 戦 しないであろうという 日 本 側 のスターリンに 対 する 幻 想 と ソ 連 の 参 戦 によりそれが 裏 切 られ 終 戦 を 迎 える 過 程 が 描 写 された この 2 名 の 発 表 に 対 して 庄 司 潤 一 郎 上 席 研 究 官 から 次 のようなコメントがなされ た 最 初 にヒルシュヘルト 教 授 に 対 して ドイツと 日 本 は 現 状 打 破 という 点 で 共 通 する 面 があったが ドイツにあった 人 種 イデオロギー 的 側 面 は 日 本 にはなく したがっ て 人 種 イデオロギーの 生 き 残 りをかけた 絶 滅 戦 争 たる 独 ソ 戦 の 本 質 を 日 本 は 理 解 で きなかったとするコメントがなされた また 日 本 の 指 導 者 は 多 くのアジアの 民 族 主 義 者 を 支 持 しようと 意 図 したが 一 方 ドイツには アジア 人 のアジア といった 日 本 のス ローガンに 該 当 する 思 想 はなかったことに 言 及 して 昭 和 10 年 代 の 日 本 におけるナチス 批 判 の 一 つは ナチスの 民 族 主 義 の 狭 隘 さを 指 摘 し その 問 題 点 を 超 越 克 服 した 日 本 の 理 念 との 相 違 を 主 張 するものであったことが 述 べられた また 田 嶋 教 授 に 対 しては 日 本 の 対 独 認 識 には 過 信 と 不 信 といった 相 反 する 側 面 が 存 在 したとのコメントがなされた 過 信 については 開 戦 前 に 決 定 された 戦 争 終 結 の 指 針 である 対 米 英 蘭 蒋 戦 争 終 末 促 進 ニ 関 スル 腹 案 において 先 ずはヨー ロッパにおけるドイツの 勝 利 が 大 前 提 とされ 他 力 に 依 存 していたため ドイツの 勝 利 を 信 じざるを 得 なかったという 事 情 が 背 景 にあったとした 一 方 対 独 不 信 に 関 し ては 独 ソ 不 可 侵 条 約 独 ソ 戦 といった 外 交 上 の 苦 い 体 験 のほか 人 種 的 要 因 も 背 景 と して 太 平 洋 戦 争 開 戦 前 から 存 在 していたことが 述 べられた こういった 対 独 不 信 の 中 1943 年 9 月 参 謀 本 部 作 戦 指 導 課 は 戦 争 間 極 力 対 ソ 戦 争 惹 起 ヲ 回 避 ス 之 カ 為 已 ムヲ 得 サルニ 至 ラハ 独 伊 トノ 提 携 ヲ 犠 牲 トセサルヘカラサルコトヲ 予 期 ス と 対 ソ 戦 5

回 避 のための 施 策 として 独 ソ 和 平 ではなく ドイツの 敗 北 を 見 通 して ドイツとの 関 係 断 絶 をも 想 定 していたことが 指 摘 され ソ 連 に 対 する 幻 想 と 言 っていいほどの 楽 観 的 な 見 方 とは 対 照 的 に 日 本 の 対 独 認 識 は 矛 盾 に 満 ちていたとするコメントがなされ た その 後 庄 司 上 席 研 究 官 から 2 名 の 発 表 者 に 対 して 質 問 がなされた 最 初 にヒルシュ ヘルト 教 授 に 対 して ヒトラーの 対 日 政 策 において 現 実 的 な 戦 略 上 の 考 慮 と 人 種 主 義 イデオロギーの いずれが 勝 っていたかという 質 問 がなされた これに 対 してヒルシュ ヘルト 教 授 は ヒトラーは 人 種 差 別 主 義 者 ではあったが 現 実 主 義 者 でもあり 両 者 の 間 で 揺 れ 動 きながら 政 策 決 定 が 行 なわれていたと 述 べた 次 に 田 嶋 教 授 に 対 しては ド イツに 対 する 日 本 の 過 剰 な 信 頼 はなぜ 生 まれたのかという 質 問 がなされた これに 対 し て 田 嶋 教 授 は 日 本 陸 軍 は 健 軍 当 初 からドイツに 鍛 えられ メッケルの 遺 産 が 脈 々と 受 け 継 がれたことから 親 独 の 思 いが 強 いとされた しかし 20 世 紀 の 中 国 とドイツ 日 本 とドイツの 関 係 を 比 較 すると ドイツは 圧 倒 的 に 中 国 との 関 係 が 深 いということが 指 摘 された 第 2 セッションでは 日 独 伊 三 国 軍 事 同 盟 とソ 連 の 対 応 に 焦 点 を 当 てて 4 名 の 研 究 者 の 発 表 とそれに 対 する 2 名 のコメントがなされた 最 初 にヨースト デュルファー 教 授 が ドイツと 三 国 軍 事 同 盟 と 題 して 発 表 した デュルファー 教 授 の 発 表 は 日 独 防 共 協 定 の 成 立 から 第 二 次 世 界 大 戦 の 終 盤 までの 時 期 を 対 象 に ドイツを 中 心 に 日 本 イタリア ソ 連 中 国 英 国 フランスとの 関 係 や 世 界 各 地 で 展 開 する 戦 争 の 推 移 を 織 り 交 ぜながら 三 国 同 盟 について 外 交 と 軍 事 戦 略 の 観 点 から 広 範 かつ 網 羅 的 に 論 じたものであった この 中 で 日 独 間 においては 限 定 的 ながら 経 済 面 での 協 力 や 文 化 面 での 影 響 が 見 られたものの 三 国 同 盟 は 軍 事 面 にお いてはいかなる 共 通 の 計 画 も 戦 略 の 共 有 ももたらさなかったとした そして 日 本 とド イツはそれぞれの 戦 争 計 画 を 事 前 に 教 えることもせず 別 々に 戦 争 を 遂 行 したとし 三 国 同 盟 の 特 色 は cooperation ではなく separation であったと 結 論 づけた 次 にニコラ ラバンカ 教 授 による 発 表 が 三 国 同 盟 に 対 するイタリアの 戦 略 における イデオロギー 政 策 及 び 軍 備 と 題 して 行 なわれた ラバンカ 教 授 の 発 表 は イタリア 軍 最 高 司 令 部 の 戦 争 日 誌 をもとに イタリアの 戦 略 やイタリアと 日 本 の 関 係 といった 観 点 から 三 国 同 盟 の 軍 事 的 側 面 を 検 討 したものであった その 中 で イタリアでは 特 に 海 軍 が 英 国 海 軍 との 対 抗 上 あるいは 補 給 等 の 面 で 日 本 に 期 待 したが イタリアに 対 する 軍 事 面 での 日 本 の 寄 与 は 間 接 的 なものに 過 ぎず 最 高 司 令 部 では 戦 略 的 資 源 ( 例 えば ゴム)の 供 給 先 としての 期 待 はあったもの 日 本 は 重 要 視 されなかったとした また 枢 軸 国 と 連 合 国 を 比 較 した 場 合 三 国 同 盟 の 軍 事 面 での 機 能 における 相 違 は 大 きく 三 国 6

加 賀 谷 太 平 洋 戦 争 と 枢 軸 国 の 戦 略 同 盟 は イタリアにとって 政 治 的 なものに 過 ぎなかったと 結 論 づけた 相 澤 淳 第 2 戦 史 研 究 室 長 は 日 本 陸 海 軍 と 三 国 同 盟 の 戦 略 と 題 して 発 表 した 相 澤 室 長 の 発 表 は 防 共 協 定 強 化 交 渉 から 三 国 同 盟 締 結 にいたる 日 本 陸 海 軍 とくに 海 軍 の 姿 勢 と その 変 化 を 中 心 に 論 じたものであった この 中 で 日 本 海 軍 は 伝 統 的 に 英 米 協 調 南 進 論 の 立 場 であり 海 軍 が 1938 年 夏 から 翌 年 8 月 23 日 に 独 ソ 不 可 侵 条 約 が 締 結 されるまで 見 られた 日 独 伊 防 共 協 定 を 強 化 して 同 盟 とする 動 きに 反 対 した 理 由 は そ れが 日 本 陸 軍 の 志 向 する 北 進 論 的 であると 考 えたからであったと 指 摘 した そして そ の 後 海 軍 が 1940 年 9 月 27 日 の 日 独 伊 三 国 条 約 に 賛 成 したのは それがソ 連 を 含 めた 日 独 伊 ソの 四 国 協 定 を 構 想 していたからであったと 結 論 づけた 最 後 に ワシーリー モロジャコフ 教 授 による ソ 連 と 三 国 軍 事 同 盟 と 題 する 発 表 がなされた モロジャコフ 教 授 の 発 表 は 主 としてソ 連 の 観 点 から ソ 連 と 日 独 伊 三 国 との 政 治 的 軍 事 的 パートナーシップや 三 国 同 盟 にソ 連 が 加 わったユーラシア 大 陸 ブ ロックとしての 日 独 伊 ソの 四 国 同 盟 が 可 能 であったかという 問 題 をテーマにしたもので あった この 中 で 日 独 伊 ソ 間 の 政 治 的 協 力 パートナーシップあるいは 四 国 同 盟 さえ も 可 能 性 としてはあり 得 たし ある 程 度 は 実 現 されたとした 特 に 四 国 間 の 政 治 的 協 力 あるいは 四 国 同 盟 の 可 能 性 は ノモンハン 事 件 直 後 にあったのであるが 四 国 同 盟 構 想 を 破 綻 させたのはヒトラーであると 指 摘 した すなわち リッベントロップの 四 国 同 盟 条 約 の 草 案 に 対 するスターリンの 追 加 の 条 件 にヒトラーが 反 対 したことで 独 ソ 戦 が 決 定 的 となり 四 国 同 盟 の 可 能 性 も 消 滅 したと 結 論 づけた この 4 名 の 発 表 に 対 して 立 川 京 一 第 1 戦 史 研 究 室 主 任 研 究 官 と 和 田 朋 幸 第 1 戦 史 研 究 室 所 員 から それぞれコメントがなされた 最 初 に 立 川 主 任 研 究 官 は 1940 年 9 月 27 日 の 日 独 伊 三 国 条 約 は とりわけ 米 国 の 参 戦 を 防 止 することを 目 的 とする 外 交 手 段 であ り 実 際 に 戦 争 をするためのものではなかったとした またソ 連 を 含 めた 四 国 協 商 とする 構 想 も 米 国 を 抑 制 するための 手 段 として 考 えられたものであったが ドイツの バルバロッサ 作 戦 と 日 本 の 真 珠 湾 攻 撃 という 日 独 の 自 らの 軍 事 行 動 によって 日 独 伊 三 国 条 約 は 所 期 の 目 的 を 達 成 することができず 条 約 として 失 敗 に 終 わった しかし 日 米 開 戦 後 も 日 独 伊 三 国 の 同 盟 は 継 続 され 1941 年 12 月 11 日 には 日 独 伊 共 同 行 動 ( 単 独 不 講 和 其 の 他 ) 協 定 が 年 明 けの 1 月 18 日 には 日 独 伊 軍 事 協 定 が 成 立 するなど 同 盟 が 強 化 されたことを 指 摘 した 次 に 和 田 所 員 のコメントは 連 合 国 特 に 米 国 と 英 国 の 同 盟 関 係 と 比 較 した 三 国 同 盟 の 特 色 が 述 べられた すなわち 第 一 の 特 色 として 米 国 と 英 国 は 1941 年 12 月 から 1942 年 1 月 にかけてワシントンで 開 かれたアルカディア 会 談 において 欧 州 を 最 優 先 する 戦 略 を 確 認 したが 枢 軸 国 側 は 1942 年 1 月 日 独 伊 軍 事 協 定 を 締 結 し 東 経 70 度 の 線 で 作 戦 地 域 を 区 分 し 欧 州 正 面 はドイツとイタリアの 作 戦 担 任 地 域 とし 太 平 洋 正 面 は 日 7

本 の 作 戦 担 任 地 域 とするなど どちらかの 正 面 を 重 視 するという 戦 略 を 採 用 しなかった ことが 指 摘 された 第 二 の 特 色 としては 米 国 と 英 国 は 欧 州 正 面 でも 太 平 洋 正 面 でも 互 いに 協 力 して 作 戦 を 実 施 したが 枢 軸 国 側 は 三 国 が 協 力 して 作 戦 を 実 施 した 戦 域 は なく 唯 一 共 通 の 戦 域 として 考 えられたソ 連 とインド 洋 周 辺 においても 三 国 が 協 力 し て 戦 うことはなかった 事 実 が 指 摘 された また 立 川 主 任 研 究 官 と 和 田 所 員 から 4 名 の 発 表 者 に 対 して 次 のような 質 問 がなされ た 最 初 に なぜ 日 独 伊 三 国 条 約 は 政 治 協 定 にとどまらず 軍 事 同 盟 となったのかとい う 質 問 がなされた これに 対 してデュルファー 教 授 は 三 国 同 盟 の 狙 いは アメリカの 参 戦 を 抑 止 することであったが 同 盟 締 結 により 却 ってアメリカの 警 戒 心 を 高 めてしま った 結 局 三 国 同 盟 は あくまでも 政 治 同 盟 であって 同 盟 としては 失 敗 であったと 評 価 した 次 に 日 独 伊 三 国 の 同 盟 は 日 米 開 戦 後 もなぜ 継 続 し なぜ 強 化 されたのかという 質 問 がなされた これに 対 して 相 澤 室 長 は 同 盟 締 結 後 日 独 伊 三 国 は 単 独 不 講 和 協 定 を 結 ぶことになるが このこと 自 体 が 同 盟 の 弱 さを 表 していると 指 摘 三 国 同 盟 は 対 米 参 戦 を 抑 止 するという 極 めて 政 治 的 意 味 合 いが 強 いものであったと 述 べた さらには 仮 にソ 連 を 含 めた 四 国 協 商 が 成 立 したとして 米 国 を 抑 制 する 効 果 は あったかという 質 問 がなされた これに 対 しモロジャコフ 教 授 は 日 独 伊 と 英 米 の 戦 い であれば どちらが 勝 利 するかは 予 測 できない しかし 日 独 伊 ソに 対 して 英 米 が 戦 った 場 合 は 英 米 は 勝 てないだろう したがって 三 国 同 盟 が 四 国 協 商 になれば 米 国 は 参 戦 しなかったかもしれないと 述 べた 最 後 に なぜ 三 国 同 盟 におけるイタリアの 立 場 は 従 属 的 なものになったのかという 質 問 がなされた これに 対 してラバンカ 教 授 は イタリアは 経 済 的 にも 軍 事 的 にも 劣 勢 で あって 他 国 と 対 等 となるのは 不 可 能 であったと 述 べた またイタリアの 戦 略 の 中 心 は 地 中 海 にあったことから ドイツや 日 本 の 政 策 に 同 調 できなかったと 述 べた 最 後 に 戸 部 良 一 教 授 による 総 括 講 演 が 20 世 紀 における 日 本 の 同 盟 政 策 と 題 して 行 なわれた 戸 部 教 授 の 講 演 は 日 本 の 同 盟 政 策 とくに 日 英 同 盟 日 満 同 盟 日 独 伊 三 国 同 盟 日 米 同 盟 の4つの 同 盟 を 同 盟 の 締 結 維 持 運 営 廃 棄 という 3 つの ポイントに 焦 点 を 絞 って 考 察 したものであった 最 初 に 同 盟 の 締 結 では 日 英 同 盟 日 満 同 盟 日 米 同 盟 は 実 際 の 脅 威 に 対 抗 したバ ランシングによって 締 結 されたが 日 独 伊 同 盟 は 将 来 の 脅 威 に 対 抗 するバランシングに よって 締 結 されたことが 明 らかにされた バランシングという 点 では 4 つの 同 盟 に 共 通 性 があったが 他 の 3 つの 同 盟 がロシア(ソ 連 )を 脅 威 としていたのに 対 して 三 国 同 盟 はアメリカを 脅 威 とし むしろ 日 独 伊 ソ 四 国 連 合 構 想 に 見 られるように ソ 連 を 同 盟 8

加 賀 谷 太 平 洋 戦 争 と 枢 軸 国 の 戦 略 体 制 の 中 に 包 摂 しようとした 点 で 三 国 同 盟 締 結 は 日 本 の 同 盟 政 策 上 異 質 の 存 在 であ ったことが 指 摘 された 次 に 同 盟 の 維 持 運 営 では 日 英 同 盟 や 日 米 同 盟 は 当 初 の 同 盟 締 結 時 にはなかった か あるいは 意 識 されなかった 必 要 性 や 利 益 が 同 盟 国 間 に 築 かれるとともに 独 特 の 人 的 ネットワークが 育 てられ そのネットワークが 同 盟 の 当 初 の 締 結 目 的 が 希 薄 になって も 同 盟 を 支 えたとされた ところが 日 独 伊 三 国 同 盟 の 場 合 には そうした 人 的 ネット ワークは 構 築 されなかった その 理 由 としては 同 盟 関 係 成 熟 のための 時 間 がなかった ことに 加 え 同 盟 相 手 国 たるドイツに そうした 意 図 がなかったことが 指 摘 された 最 後 に 同 盟 の 廃 棄 については その 多 くで 同 盟 相 手 国 ないし 政 府 が 消 滅 しているこ とを 指 摘 しつつも 日 英 同 盟 については 日 本 が 望 んで 廃 棄 したわけではなかったとした また 日 独 伊 三 国 同 盟 については 日 本 が 廃 棄 の 可 能 性 を 真 剣 に 検 討 した 形 跡 はなく ド イツの 敗 北 ヒトラー 政 権 の 消 滅 により 日 本 は 初 めて 連 合 国 との 和 平 のために 行 動 を 起 こした 点 が 指 摘 されると 共 に 日 本 人 の 同 盟 に 対 する 極 めてあるいは 過 度 に 律 儀 であったという 日 本 の 同 盟 観 の 特 徴 が 明 らかにされた 本 フォーラムの 成 果 は 今 後 防 衛 研 究 所 戦 史 部 の 中 期 的 テーマである 戦 争 指 導 レ ベルでの 太 平 洋 戦 争 を 研 究 するにあたり 従 来 の 日 本 側 の 視 点 あるいは 日 本 と 戦 った 米 英 蘭 蒋 等 との 関 係 を 主 体 とする 研 究 から 一 歩 踏 み 出 し 太 平 洋 戦 争 の 全 体 像 をより 広 い 視 点 で 把 握 するための 重 要 な 第 一 歩 となりました そして 本 日 は 平 素 なかなか 聞 くこ とができない 諸 外 国 の 研 究 者 とりわけドイツやイタリアという 枢 軸 国 側 そしてロシ アからの 様 々な 視 点 での 発 表 により 若 干 なりとも 太 平 洋 戦 争 の 全 体 像 の 復 元 に 寄 与 したのではないかと 思 います 防 衛 研 究 所 戦 史 部 は 引 き 続 き 太 平 洋 戦 争 について 国 内 外 からの 新 たな 史 資 料 の 発 掘 や 研 究 者 間 の 意 見 交 換 により 努 めて 客 観 的 な 分 析 により 歴 史 を 立 体 的 に 解 明 したい と 考 えています 9