青 森 県 総 合 学 校 教 育 センター 研 究 紀 要 [2009.3] F9-01 教 育 相 談 保 護 者 からのクレームに 関 する 研 究 - 小 学 校 中 学 校 県 立 学 校 におけるクレーム 内 容 の 比 較 を 通 して- 教 育 相 談 課 研 究 員 船 水 泰 秀 要 旨 学 校 現 場 に 寄 せられる 保 護 者 からのクレームについて, 内 容 や 対 応 策 を 調 査 検 討 した クレー ム 内 容 尺 度 を 因 子 分 析 した 結 果,9 因 子 が 抽 出 された また, 二 要 因 分 散 分 析 をした 結 果,クレ ーム 内 容 尺 度 では, 中 学 校 の 男 性 教 師 で, 経 験 年 数 11~20 年 の 中 堅 教 師 が 最 もクレームの 認 知 傾 向 が 高 く,クレーム 対 応 尺 度 においても 校 種, 性 別, 経 験 年 数 による 差 異 が 認 められた キーワード:クレーム 内 容 クレーム 対 応 因 子 分 析 二 要 因 分 散 分 析 Ⅰ 主 題 設 定 の 理 由 数 年 前 から, 学 校 に 対 する 保 護 者 から 寄 せられるクレームが 社 会 問 題 化 している 特 に, 学 校 や 教 師 に 無 理 難 題 を 突 きつける モンスターペアレント の 存 在 は, 教 師 のストレスを 増 加 させるだけでなく,うつ 病 や 自 殺 など 最 悪 の 状 況 に 教 師 を 追 い 詰 める 要 因 にもなっている これに 対 し 文 部 科 学 省 (2007)は, 悪 質 なクレームを 外 部 の 専 門 家 に 任 せる 外 部 委 託 を 一 部 教 育 委 員 会 で 試 験 的 に 導 入 する 方 針 を 明 らかにしている また, 政 府 の 教 育 再 生 会 議 (2007)も 第 2 次 報 告 の 中 で, 精 神 科 医 や 警 察 官 OBなどが, 学 校 と 保 護 者 の 意 思 疎 通 を 手 助 けする 学 校 問 題 解 決 支 援 チーム を 各 教 育 委 員 会 に 設 置 するよう 提 言 している 一 方, 読 売 新 聞 (2007)の 調 査 によると, 全 国 67の 主 要 都 市 の 教 育 委 員 会 のうち40の 教 育 委 員 会 が 理 不 尽 な 要 求 や 抗 議 を 行 う 親 の 実 例 を 把 握 し,18の 教 育 委 員 会 がクレームに 対 応 するための 専 門 職 員 の 配 置 や 教 員 研 修 を 実 施 していることが 分 かった また, 陸 奥 新 報 (2007)には, 本 県 における 保 護 者 からの 理 不 尽 なクレー ムについての 記 事 が 掲 載 されている そこで,アンケート 調 査 を 通 して 本 県 における 保 護 者 からのクレームの 実 態 を 把 握 し, 教 師 個 人 の 属 性 ( 校 種, 性 別, 経 験 年 数 )との 関 連 について 検 討 したい また,その 対 応 策 についての 特 徴 を 明 らかにするとと もに,これからの 保 護 者 対 応 の 方 向 性 を 探 ることを 目 的 とし, 本 研 究 の 主 題 を 設 定 した Ⅱ 研 究 目 標 学 校 現 場 に 寄 せられているクレームの 内 容 や,その 対 応 策 についての 実 態 を 把 握 するとともに,これから の 保 護 者 対 応 の 方 向 性 を 探 る Ⅲ 研 究 仮 説 保 護 者 からのクレーム 内 容 を 調 査 分 析 することで,クレームの 傾 向 が 把 握 され,これからの 保 護 者 対 応 の 方 向 性 が 明 らかになるであろう Ⅳ 研 究 の 実 際 とその 考 察 1 クレームの 定 義 クレーム(claim)の 原 義 は 権 利 としての 要 求 や 請 求, 主 張 ( 新 ク ローハ ル 英 和 辞 典 )である 日 本 で 使 用 する クレーム は 和 製 英 語 であり, 意 味 は 商 取 引 で 違 約 があった 場 合 の 損 害 賠 償 請 求, 苦 情, 異 議 ( 大 辞 泉 )とされ, 若 干 意 味 合 いが 異 なる 金 子 (2007)は 保 護 者 からの 声 を 賞 賛 共 感, 相 談 要 望, ク
レーム と 三 つに 区 分 し,クレームを 要 求, 苦 情, 無 理 難 題 を 言 うこと と 定 義 している 学 校 現 場 で 用 いられる クレーム は, 金 子 (2007)が 定 義 したように 苦 情, 無 理 難 題 を 含 むものと 考 え, 本 研 究 でも クレームを 保 護 者 からの 苦 情, 要 求, 無 理 難 題 と 定 義 する また, 調 査 の 際 は 対 象 者 にその 旨 を 伝 え, 保 護 者 からの 賞 賛 共 感 や 前 向 きな 相 談 要 望 はあらかじめ 除 くよう, 留 意 点 として 調 査 用 紙 に 記 載 した なお, 保 護 者 からの 様 々な 声 をクレームととらえるかどうかは 教 師 側 の 主 観 によるところが 大 きく, 今 回 の 調 査 研 究 も 教 師 側 の 視 点 で 行 っていることに 留 意 しなければならないと 考 える 2 調 査 方 法 (1) 調 査 対 象 者 表 1 調 査 対 象 者 の 構 成 青 森 県 総 合 学 校 教 育 センターで 開 設 している 講 座 で, 教 育 相 談 課 が 担 当 した7 講 座 ( 学 年 主 任 研 修 講 座, 教 育 相 談 初 級 講 座, 生 徒 指 導 主 任 主 事 研 修 講 座, こどもの 育 ちを 支 える 教 育 研 修 講 座, 教 育 相 談 中 級 講 座, 教 育 相 談 長 期 講 座, 不 登 校 対 策 講 座 )を 受 講 した 教 師 345 名 を 対 象 に, 無 記 名 式 の 質 問 用 紙 法 で 調 査 を 実 施 した そのうちの327 名 から 回 答 を 得 た ( 回 収 率 = 94.8%) 各 校 種 別 の 年 代 と 性 別 の 構 成 は, 表 1の 通 りである (2) 調 査 時 期 2008 年 6 月 ~8 月 (3) 調 査 材 料 学 校 現 場 にどのようなクレームが 寄 せられているか,また,クレームにどのように 対 応 してきたかを 明 らかにする,という 視 点 でクレーム 内 容 尺 度 クレーム 対 応 尺 度 を 以 下 の 手 順 で 作 成 した 1 先 行 研 究 や 文 献 を 手 がかりとした 項 目 収 集 2 課 内 指 導 主 事 及 び 所 内 研 究 員 を 対 象 とした, 自 由 記 述 調 査 による 項 目 収 集 3 課 内 の 研 究 員 を 対 象 とした 予 備 調 査 の 実 施 4 クレーム 内 容 尺 度 クレーム 対 応 尺 度 に 採 用 する 項 目 の 決 定 ア クレーム 内 容 尺 度 クレーム 内 容 尺 度 は, 児 童 生 徒 の 学 校 生 活 や 教 師 にかかわる 内 容, 保 護 者 にかかわる 内 容 など 多 面 的 に 選 定 し, 全 部 で84 項 目 を 採 用 した そして, 全 くない あまりない 時 々ある よくある の4 件 法 で 回 答 を 求 めた イ クレーム 対 応 尺 度 対 応 策 を, 校 内 体 制 やマニュアルづくり, 教 育 活 動 への 支 障 などの 面 から 考 え,10 項 目 について 全 くあてはまらない ほとんどあてはまらない ややあてはまる よくあてはまる の4 件 法 で 回 答 を 求 めた 表 2 クレーム 内 容 尺 度 各 項 目 の 平 均 値, 標 準 偏 差 3 結 果 と 考 察 (1) クレーム 内 容 尺 度 の 因 子 分 析 クレーム 内 容 尺 度 の 各 項 目 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 表 2に 示 した 調 査 において 賞 賛 共 感 や 前 向 きな 相 談 要 望 をあらかじめ 除 くとしたことで 全 体 的 に 平 均 値 が 低 くなっているが,クレームに 焦 点 が 絞 られたものと 考 える その 後,クレーム 内 容 尺 度 84 項 目 について, 最 小 二 乗 法 プロマックス 法 ( 斜 交 回 転 )による 因 子 分 析 を 行 い, 固 有 値 の 変 動 状 況 を 考 慮 しながら, 固 有 値 1 以 上 を 基 準 として 三 つ 以 上 の 項 目 で 構 成 される 因 子 を 採 用 した その 結 果, 解 釈 可 能 な9 因 子 を 抽 出 し,それを 表 3に 示 し た なお, 因 子 分 析 は 斜 交 回 転 を 行 ったので, 因 子 間 相 関 を 表 4に 示 した また,クレーム 内 容 尺 度 の 下 位 尺 度 項 目 の 選 定 に 当 たっては, 原 則 として 因 子 負 荷 量 が.400 未 満 や, 複 数 の 因 子 に 同 程 度 の 負 荷 量 を 示 す37 項 目 を 除 外 した 次 に, 選 択 された47 項 目
について 下 位 尺 度 ごとに 内 的 整 合 性 による 信 頼 性 の 表 3 クレーム 内 容 尺 度 項 目 の 因 子 分 析 結 果 検 討 を 行 い,クローンバックのα 係 数 を 表 5に 示 し た その 結 果,.708から.931が 示 され, 各 因 子 の 内 的 整 合 性 は 概 ね 支 持 されたと 考 えられる 因 子 1に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 部 活 動 の 作 戦 進 め 方, 部 活 動 のメンバー 選 考, 部 活 動 の 練 習 内 容 など, 部 活 動 にかかわる 項 目 が 中 心 であった そこ で 部 活 動 因 子 と 命 名 した 因 子 2に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 短 学 活 の 内 容 や 学 級 内 の 掲 示 物 など 学 級 経 営 にかかわる 項 目 や, テスト 問 題, 時 間 割 など 授 業 にかかわる 項 目 が 中 心 であった そこで, 授 業 学 級 経 営 因 子 と 命 名 した 因 子 3に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 行 事 の 精 選, 行 事 のメンバー 決 め, 保 護 者 の 応 援 態 度 など, 行 事 にかかわる 項 目 が 中 心 であった そこで, 行 事 因 子 と 命 名 した 因 子 4 に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 服 装 指 導, 髪 に 対 する 指 導, 携 帯 電 話 の 指 導 など, 児 童 生 徒 の 生 活 指 導 に 関 する 項 目 が 中 心 であった そこで, 生 活 指 導 因 子 と 命 名 した 因 子 5に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 児 童 生 徒 の 送 り 迎 え や 保 護 者 の 私 生 活 など 保 護 者 自 身 にかかわるもの, 学 校 の 教 育 方 針 や 学 校 の 施 設 設 備 など 学 校 経 営 全 体 に 関 する 項 目 が 中 心 であ った そこで, 学 校 経 営 保 護 者 因 子 と 命 名 した 因 子 6に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 志 望 校 の 情 報, 調 査 書 の 内 容, 受 験 など, 進 路 指 導 や 受 験 に 関 する 項 目 が 中 心 であった そこで, 進 路 因 子 と 命 名 し た 因 子 7に 負 荷 の 高 い 項 目 は, PTA 活 動 の 内 容, PTA 役 員 へのひいき, 保 護 者 のPTA 参 加 など,PTA 活 動 に 関 する 項 目 が 中 心 であった そ こで, PTA 因 子 と 命 名 した 因 子 8に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 問 題 行 動 時 の 聞 き 取 り や 生 活 指 導 の 徹 底, いじめ いたずら 暴 力 被 害 への 対 応 な ど, 教 師 の 指 導 方 法 や 対 応 に 関 する 項 目 が 中 心 であ った そこで, 教 師 因 子 と 命 名 した 因 子 9に 負 荷 の 高 い 項 目 は, 勉 強 の 教 え 方, テストの 点 数, 宿 題 や 家 庭 表 4 クレーム 内 容 尺 度 の 因 子 間 相 関 学 習 など, 学 習 に 関 する 項 目 が 中 心 であった そこで, 学 習 指 導 因 子 と 命 名 した (2) クレーム 内 容 の 校 種 別, 性 別 間 の 比 較 クレーム 内 容 の 校 種 別, 性 別 差 異 を 検 討 するため,クレーム 内 容 尺 度 の 各 下 位 尺 度 得 点 を 従 属 変 数 として, 校 種 ( 小 学 校, 中 学 校, 県 立 学 校 ), 性 別 ( 男 性, 女 性 )を 独 立 変 数 とする 二 要 因 分 散 分 析 を 実 施 した 下 位 尺 度 ごとの 平 均 と 標 準 偏 差 は 表 6の 通 りである ま た, 各 下 位 尺 度 の 多 重 比 較 は Tamhane 法 によって 行 った なお, 欠 表 5 各 因 子 名 とクローンバックのα 係 数 損 値 があるデータはリストからはずした 部 活 動 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,316)= 20.200,p<.01, 中 > 小 > 県 立,F(1,316)=14.411,p<.01, 男 > 女 ) 授 業 学 級 経 営 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,312)=8.383,p <.01, 中 > 小 県 立 ) 行 事 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった (F(2,315)=16.217,p<.01, 小 中 > 県 立 ) 生 活 指 導 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,314)=46.110,p<.01, 中 > 県 立 >
小,F(1,314)=4.944,p<.05, 男 > 女 ) 学 校 経 営 表 6 クレーム 内 容 尺 度 各 下 位 尺 度 の 校 種 別 性 別 の 平 均 と 標 準 偏 差 保 護 者 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であっ た(F(2,315)=12.961,p<.01, 中 > 小 県 立 ) 進 路 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であっ た(F(2,313)=68.489,p<.01, 中 > 県 立 > 小,F(1, 313)=5.961,p<.05, 男 > 女 ) PTA 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 交 互 作 用 が 有 意 であった(F(2, 314)=3.139,p<.05, 図 1) そこで, 水 準 ごとに 単 純 主 効 果 を 分 析 した 結 果, 校 種 の 要 因 では 中 学 校 と 県 立 学 校 に 有 意 差 が 見 られ(F(1,314)= 7.186,p<.01,F(1,314)=4.476,p<.05),どちらも 男 性 が 女 性 よりクレームを 強 く 感 じていること が 示 された また, 性 別 の 要 因 では 男 性 女 性 両 方 に 有 意 差 が 見 られ(F(2,314)=7.852,p<.01, F(2,314)=3.952,p<.05), 男 性 では 中 学 校 が 小 学 校 と 県 立 学 校 より, 女 性 では 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 よりクレームを 強 く 感 じている ことが 示 された 教 師 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 交 互 作 用 が 有 意 であった(F(2,316)=5.817,p <.01, 図 2) そこで, 水 準 ごとに 単 純 主 効 果 を 分 析 した 結 果, 校 種 の 要 因 では 中 学 校 と 県 立 学 校 に 有 意 差 が 見 られ(F(1,316)=11.688,p< 図 1 校 種 と 性 別 のPTA 尺 度 得 点 図 2 校 種 と 性 別 の 教 師 尺 度 得 点.01,F(1,316)=6.689,p<.05)どちらも 男 性 が 女 性 よりクレームを 強 く 感 じていることが 示 された また, 性 別 の 要 因 では 男 性 女 性 両 方 に 有 意 差 が 見 られ(F(2,316)=14.213,p<.01,F(2,316)=5.241,p<.01), 男 性 では 中 学 校 が 小 学 校 と 県 立 学 校 より, 女 性 では 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 よりクレームを 強 く 感 じている ことが 示 された 学 習 指 導 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,318)=13.713,p<.01, 小 中 > 県 立,F(1,318)=11.115,p<.01, 男 > 女 ) (3) クレーム 内 容 の 校 種 別, 経 験 年 数 別 間 の 比 較 クレーム 内 容 の 校 種 別, 経 験 年 表 7 クレーム 内 容 尺 度 各 下 位 尺 度 の 校 種 別 経 験 年 数 別 の 平 均 と 標 準 偏 差 数 別 差 異 を 検 討 するため,クレー ム 内 容 尺 度 の 各 下 位 尺 度 得 点 を 従 属 変 数 として, 校 種 ( 小 学 校, 中 学 校, 県 立 学 校 ), 経 験 年 数 (10 年 以 下,11~20 年,21 年 以 上 )を 独 立 変 数 とする 二 要 因 分 散 分 析 を 実 施 した 下 位 尺 度 ごとの 平 均 と 標 準 偏 差 は 表 7の 通 りである ま た, 多 重 比 較 は Tamhane 法 によ って 行 った なお, 欠 損 値 がある データはリストからはずした 部 活 動 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,309)=9.494,p<.01, 中 > 小 > 県 立 ) 授 業 学 級 経 営 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,309)=3.361,p<.05, 中 > 小 県 立 ) 行 事 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,309)=15.657,p<.01, 小 中 > 県 立 ) 生 活 指 導 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,309)=22.940,p<.01, 中 > 県 立 > 小,F(2,309)=5.923,p<.01,11~20 年 >10 年 以 下 21 年 以 上 ) 学 校 経 営 保 護 者 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,308)=7.342,p<.01, 中 > 小 県 立 ) 進 路 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,306)=36.088,p<.01, 中 > 県 立 > 小 ) P TA 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,307)=4.003,p<.05, 中 > 小 県 立 ) 教 師 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,309)=5.564,p<.01, 中 > 小 県 立,F(2,309)=3.355,p<.05,11~ 20 年 >10 年 以 下 ) 学 習 指 導 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,311)=13.129,p<.01, 小 中 > 県 立 )
< 考 察 > クレーム 内 容 尺 度 47 項 目 の 分 析 結 果, 各 項 目 の 平 均 値 が 全 体 的 に 低 い 傾 向 が 見 られた このことから, 本 県 の 場 合, 学 校 現 場 に 寄 せられているクレームの 認 知 はそれほど 高 くないと 考 えられる これは, 金 子 (2007)の 調 査 研 究 において,クレームの 割 合 が 保 護 者 から 寄 せられる 声 全 体 の1~2 割 と 示 されているこ とや, 東 京 都 教 育 委 員 会 (2008)の 調 査 で, 学 校 だけで 解 決 困 難 なクレームは,1 校 園 につき 年 間 1~2 件 の 割 合 とした 結 果 と 類 似 している その 背 景 として, 保 護 者 からの 声 の 大 部 分 が 賞 賛 共 感 や 前 向 きな 相 談 要 望 に 当 たり,クレームに 該 当 する 苦 情 要 求 無 理 難 題 は 一 部 に 過 ぎないという 学 校 教 師 側 のとらえ 方 があると 考 える 次 に,クレーム 内 容 尺 度 の 因 子 分 析 の 結 果 では, 部 活 動 や 授 業 学 級 経 営, 行 事, 教 師 な ど 学 校 生 活 にかかわる 内 容 が 幅 広 く 抽 出 された これは,クレームの 内 容 が 多 種 多 様 であることを 示 して いる 背 景 として, 保 護 者 の 考 え 方 や 価 値 観 の 多 様 化 (ベネッセ 教 育 研 究 開 発 センター,2007)や 学 校 を サービス 業 的 にとらえた 消 費 者 意 識 の 向 上 ( 佐 々 木,2008)などがあげられよう 京 都 府 総 合 教 育 センタ ー(2007)の 調 査 においても, 教 職 員 の 言 動 や 教 科 等 の 指 導, いじめ 不 登 校 への 対 応 など, 内 容 は 様 様 であった また, 分 散 分 析 の 結 果 では, 校 種, 性 別, 経 験 年 数 間 の 差 異 が 明 らかになった 部 活 動, 行 事, 学 習 指 導 では 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 より 高 い 傾 向 を 示 し た 部 活 動 や 行 事 は, 保 護 者 にとって 子 どもの 活 動 を 見 ることのできる 貴 重 な 機 会 であり, 特 に, 小 学 校 や 中 学 校 は 応 援 や 送 迎 などかかわる 場 面 も 多 い 熱 心 になるほど 意 見 や 要 望 がふくらみ,クレームにもつながり 図 3 クレーム 内 容 尺 度 の 校 種 別 平 均 やすいと 考 える また, 部 活 動 で 女 性 より 男 性 の 傾 向 が 高 いのは, 部 活 動 の 顧 問 や 指 導 者 になる 機 会 が 多 いことが 影 響 していると 考 える 学 習 指 導 は 義 務 教 育 期 である 小 学 校, 中 学 校 の 学 習 内 容 や 教 師 の 指 導 方 法,テストの 点 数 や 成 績 に 対 して 保 護 者 の 関 心 が 高 いことを 反 映 していると 考 えられる 生 活 指 導, 進 路 では, 中 学 校 と 県 立 学 校 が 小 学 校 より 高 い 結 果 となった 中 学 校 や 県 立 学 校 の 生 徒 は 思 春 期 に 当 たり, 友 人 関 係 や 学 習 成 績 進 路, 教 師 との 関 係 など 様 々な 場 面 で 悩 んだり, 衝 突 したりする また, 服 装 頭 髪 携 帯 電 話 など 生 活 指 導 にかかわる 様 々な 要 因 が 存 在 している 教 師 側 の 指 導 内 容 や 指 導 機 会 も 増 えるため,それらをめぐるクレームが 多 くなると 考 えられる また, 保 護 者 自 身 が 思 春 期 を 迎 えた 子 どもの 養 育 接 し 方 に 苦 労 しており,そのことがクレームに 結 び 付 いているとも 考 えられる 金 子 (2007)の 調 査 によれば, 小 学 校, 中 学 校, 高 等 学 校 に 共 通 して 生 徒 指 導 に 関 する 内 容 が 最 も 多 いとし ている 本 研 究 とは 調 査 方 法 が 異 なるため 一 概 には 言 えないが, 中 学 校 や 県 立 学 校 については 本 県 も 同 様 の 傾 向 が 見 られると 判 断 できる 小 学 校 については 本 県 の 場 合, 生 活 指 導 より 学 習 指 導 部 活 動 でのクレーム 認 知 傾 向 が 高 く, 生 活 指 導 にかかわる 問 題 が 比 較 的 少 ないことが 推 察 される 進 路 につ いては, 中 学 校 における 高 校 受 検, 高 等 学 校 における 大 学 受 験 や 就 職 活 動 など, 人 生 設 計 にかかわる 重 要 な 項 目 になっていることが 影 響 していると 考 える また,どちらも 女 性 より 男 性 に 高 い 傾 向 が 見 られるが, これは 男 性 が 生 徒 指 導 主 事 や 進 路 指 導 主 事 を 担 当 することが 多 く, 生 徒 や 保 護 者 とかかわる 場 面 が 多 いこ とを 反 映 していると 考 える さらに, 経 験 年 数 の 要 因 で11~20 年 の 中 堅 教 師 に 傾 向 が 高 いことも,そのこ とを 裏 付 けていると 考 える 授 業 学 級 経 営, 学 校 経 営 保 護 者, PTA, 教 師 では 中 学 校 が 小 学 校 と 県 立 学 校 より 高 い 傾 向 を 示 した 生 活 指 導 と 同 様 に, 中 学 校 では 様 々なトラブルや 問 題 が 起 こりやすく, 教 師 の 指 導 機 会 も 多 い また, 一 方 では 保 護 者 も 子 育 ての 経 験 年 数 が 多 くなり, 教 育 に 関 す る 様 々な 情 報 や 知 識 を 身 に 付 けてくる その 結 果, 学 校 や 教 師 に 対 して 様 々な 意 見 要 望 をもつようにな り,その 一 部 がクレームとなって 出 現 していると 推 察 する PTA と 教 師 で 女 性 より 男 性 が 高 い 傾 向 を 示 しているのは,PTAの 活 動 が 母 親 中 心 で 男 性 教 師 とは 視 点 や 考 え 方 が 若 干 異 なること, 男 性 教 師 の 指 導 が 父 性 的 で 厳 しさが 前 面 に 出 やすいことなどを 反 映 していると 考 える (4) クレーム 対 応 の 校 種 別, 性 別 間 の 比 較 クレーム 対 応 尺 度 の 各 項 目 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 表 8に 示 した クレーム 対 応 の 校 種 別, 性 別 差 異 を 検 討 するため,クレーム 対 応 尺 度 の 各 下 位 尺 度 得 点 を 従 属 変 数 として, 校 種 ( 小 学 校, 中 学 校, 県 立 学 校 ), 性 別 ( 男 性, 女 性 )を 独 立 変 数 とする 二 要 因 分 散 分 析 を 実 施 した 下 位 尺 度 ごとの 平 均 と 標 準 偏 差 は 表 9 の 通 りである また, 多 重 比 較 は 教 育 活 動 への 支 障 だけ 等 分 散 性 が 仮 定 されたため Bonferroni 法 で 行
い,その 他 は Tamhane 法 で 行 った なお, 欠 損 値 があるデータ 表 8 クレーム 対 応 尺 度 各 項 目 の 平 均 値, 標 準 偏 差 はリストからはずした 管 理 職 への 報 告 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F (2,308)=15.123,p<.01, 小 中 > 県 立 ) 関 係 機 関 との 連 携 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,307)=16.567,p <.01, 中 > 小 県 立,F(1,307)=3.960,p<.05, 男 > 女 ) 組 織 チ ーム 対 応 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であっ 表 9 クレーム 対 応 尺 度 各 下 位 尺 度 の 校 種 別 性 別 の 平 均 と 標 準 偏 差 た(F(2,308)=9.229,p<.01, 中 > 小 > 県 立 ) ク レーム 内 容 の 記 録 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,308)=8.664,p<.01, 小 中 > 県 立 ) 訴 訟 に 備 えた 保 険 尺 度 及 び マニュア ルの 作 成 尺 度 は, 校 種, 性 別 の 主 効 果 及 び 交 互 作 用 いずれも 有 意 でなかった 校 内 研 修 での 取 り 扱 い 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であっ た(F(2,308)=3.571,p<.05, 中 > 県 立 ) 勤 務 時 間 内 での 処 理 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 交 互 作 用 が 有 意 であった(F(2,307)=4.266,p<.05, 図 4) そこで, 水 準 ごとに 単 純 主 効 果 を 分 析 した 結 果, 校 種 の 要 因 では 県 立 学 校 で 有 意 差 が 見 られ(F(1, 307)=11.119,p<.01), 女 性 が 男 性 に 比 べ 勤 務 時 間 内 でクレームを 処 理 して いる 傾 向 が 高 いことが 示 された また, 性 別 の 要 因 では 女 性 に 有 意 差 が 見 られ(F(2,307)=7.306,p<.01), 県 立 学 校 の 女 性 が 小 学 校 と 中 学 校 の 女 性 に 比 べ 勤 務 時 間 内 にクレームを 処 理 している 傾 向 が 高 いことが 示 され た 教 育 活 動 への 支 障 尺 度 は, 校 種 と 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であった(F (2,308)=12.827,p<.01, 小 中 > 県 立,F(1,308)=6.777,p<.05, 男 > 女 ) 精 神 的 な 負 担 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,308)=11.559,p <.01, 小 中 > 県 立 ) 図 4 校 種 と 性 別 の 勤 務 時 間 内 での 処 理 尺 度 得 点 (5) クレーム 対 応 の 校 種 別, 経 験 年 数 別 間 の 比 較 クレーム 対 応 の 校 種 別, 経 験 年 表 10 クレーム 対 応 尺 度 各 下 位 尺 度 の 校 種 別 経 験 年 数 別 の 平 均 と 標 準 偏 差 数 別 差 異 を 検 討 するため,クレー ム 対 応 尺 度 の 各 下 位 尺 度 得 点 を 従 属 変 数 として, 校 種 ( 小 学 校, 中 学 校, 県 立 学 校 ), 経 験 年 数 (10 年 以 下,11~20 年,21 年 以 上 )を 独 立 変 数 とする 二 要 因 分 散 分 析 を 実 施 した 下 位 尺 度 ごとの 平 均 と 標 準 偏 差 は 表 10の 通 りである ま た, 多 重 比 較 は 精 神 的 な 負 担 だけ 等 分 散 性 が 仮 定 されたため Bonferroni 法 で 行 い,その 他 は Tamhane 法 で 行 った なお, 欠 損 値 があるデータはリストからはずした 管 理 職 への 報 告 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 交 互 作 用 が 有 意 であっ た(F(2,301)=3.732,p<.01, 図 5) そこで, 水 準 ごとに 単 純 主 効 果 を 分 析 した 結 果, 校 種 の 要 因 では 県 立 学 校 で 有 意 差 が 見 られ(F(2,301)=7.120,p <.01), 経 験 年 数 11~20 年 の 教 師 が10 年 以 下 の 教 師 に 比 べ, 管 理 職 への 報 告 を 実 践 している 傾 向 が 示 された また, 経 験 年 数 の 要 因 では 経 験 年 数 10 年 以 下 と21 年 以 上 に 有 意 差 が 見 られ(F(2,301)=18.696,p<.01,F(2,301)= 4.415,p<.05), 経 験 年 数 10 年 以 下 では 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 より,21 図 5 校 種 と 経 験 年 数 の 管 理 職 への 報 告 得 点 年 以 上 では 小 学 校 が 県 立 学 校 より 管 理 職 への 報 告 を 実 践 している 傾 向 が 示 された 関 係 機 関 との 連 携 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,301)=10.399,p<.01, 中 > 小 県 立,F(2,301)=3.410,p
<.05,11~20 年 >10 年 以 下 ) 組 織 チーム 対 応 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,301)=7.379,p<.01, 中 > 小 > 県 立,F(2,301) =3.068,p<.05,11~20 年 >21 年 以 上 ) クレーム 内 容 の 記 録 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,301)=8.453,p<.01, 小 中 > 県 立 ) 訴 訟 に 備 えた 保 険 尺 度 と マニュアルの 作 成 尺 度 では, 校 種, 経 験 年 数 の 主 効 果 及 び 交 互 作 用 いずれも 有 意 でなかった 校 内 研 修 での 取 り 扱 い 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,301)=3.417,p<.05, 小 中 > 県 立 ) 勤 務 時 間 内 での 処 理 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 だったが 図 6 校 種 と 経 験 年 数 の 教 育 活 動 への 支 障 尺 度 得 点 (F(2,300)=3.709,p<.05), 多 重 比 較 で 有 意 差 は 見 られなかった 教 育 活 動 への 支 障 尺 度 は, 校 種 と 経 験 年 数 の 交 互 作 用 が 有 意 であった(F(2,301)=2.785,p<.05, 図 6) そこで, 水 準 ごとに 単 純 主 効 果 を 分 析 した 結 果, 校 種 の 要 因 では 有 意 差 が 見 られなかった 経 験 年 数 の 要 因 では 経 験 年 数 10 年 以 下 と11~20 年 に 有 意 差 が 見 られ(F(2,301)=8.621,p<.01,F(2,301)=5.654,p<.01), 経 験 年 数 10 年 以 下 では 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 より,11~20 年 では 中 学 校 が 小 学 校 と 県 立 学 校 より 教 育 活 動 への 支 障 を 感 じている 傾 向 が 示 され た 精 神 的 な 負 担 尺 度 は, 校 種 の 主 効 果 が 有 意 であった(F(2,301)=12.492,p<.01, 小 中 > 県 立 ) < 考 察 > クレーム 対 応 下 位 尺 度 の 平 均 値 は 全 体 的 に 高 く, 特 に 管 理 職 への 報 告, 組 織 チーム 対 応, クレ ーム 内 容 の 記 録 などの 項 目 が 高 かった このことから, 学 校 現 場 においてクレーム 対 応 の 基 本 的 な 留 意 点 は 押 さえられていると 理 解 できる 一 方, 訴 訟 に 備 えた 保 険 は 平 均 値 が 低 かった これは, 現 在 の ところ 必 要 性 が 高 くないと 教 師 側 が 判 断 しているものと 考 えられる 分 散 分 析 の 結 果 では, 校 種, 性 別, 経 験 年 数 間 の 差 異 が 明 らかになった 管 理 職 への 報 告, 関 係 機 関 との 連 携, 組 織 チーム 対 応, クレーム 内 容 の 記 録, 校 内 研 修 での 取 り 扱 い, 教 育 活 動 への 支 障, 精 神 的 な 負 担 など 多 くの 項 目 で, 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 より 高 い 傾 向 を 示 した これは, 県 立 学 校 より 保 護 者 対 応 の 機 会 が 多 いことを 反 映 していると 考 えられる 特 に, 中 学 校 は 関 係 機 関 との 連 携 や 組 織 チーム 対 応, クレーム 内 容 の 記 録 で 高 い 傾 向 が 見 られ, 学 校 だけでは 解 決 が 難 しいよ うなクレームの 存 在 がうかがえる また,クレーム 内 容 の 分 析 結 果 から 明 らかなように, 小 学 校 と 中 学 校 は 児 童 生 徒 の 成 長 発 達 に 応 じた 多 種 多 様 なクレームに 対 応 しなければならず, 教 師 の 精 神 的 な 負 担 も 増 える 福 澤 (2007)の 教 師 ストレスの 背 景 要 因 に 関 す る 研 究 でも, 日 ごろ 教 師 がストレスを 感 じる 要 因 と して, 保 護 者 からの 抗 議 不 満 を 含 めた 保 護 者 対 応 を 指 摘 している また, 管 理 職 への 報 告 では 県 立 学 校 の 経 験 年 数 10 年 以 下 の 教 師 が 極 端 に 低 い 傾 向 であっ た これは 県 立 学 校 において, 経 験 年 数 10 年 以 下 の 教 師 が 直 接 管 理 職 へ 報 告 する 場 合 は 少 なく, 学 年 主 任 や 生 徒 指 導 主 事 などへ 報 告 する 場 合 が 多 いからだと 考 え る 勤 務 時 間 内 の 処 理 については, 県 立 学 校 の 女 性 教 師 で 勤 務 時 間 内 にクレームを 処 理 できたとする 傾 向 が 図 7 クレーム 対 応 尺 度 の 校 種 別 平 均 高 かった これは,クレーム 自 体 が 少 ないことや, 職 員 数 が 多 く 生 徒 指 導 主 事 や 学 年 主 任 など,クレーム の 窓 口 になりやすい 分 掌 に 就 くことが 少 ないことなどが 考 えられる 教 育 活 動 への 支 障 は 性 別 の 要 因 で 女 性 より 男 性 が 高 い 傾 向 を 示 し, 特 に, 中 学 校 の 男 性 教 師 が 高 い 傾 向 を 示 した 中 学 校 は 男 性 教 師 の 割 合 が 高 く, 生 活 指 導 などで 生 徒 保 護 者 と 接 する 機 会 が 多 いことに 加 え, 校 内 分 掌 や 部 活 動 指 導 など 様 々 な 業 務 を 担 当 しており, 授 業 準 備 や 教 材 研 究 など 本 来 中 心 となるべき 教 育 活 動 に 影 響 が 及 んでいるものと 推 察 する 一 方, 経 験 年 数 の 要 因 では 経 験 年 数 10 年 以 下 で 小 学 校 と 中 学 校 が 県 立 学 校 より 教 育 活 動 への 支 障 を 感 じており, 日 々の 煩 雑 さや 経 験 年 数 の 少 なさが 時 間 的 精 神 的 なゆとりのなさに 結 び 付 いていると 考 える 訴 訟 に 備 えた 保 険 と マニュアルの 作 成 は, 校 種, 性 別, 経 験 年 数,いずれの 差 異 も 見 ら れなかった 各 校 種 とも 平 均 点 は 低 く,クレームへの 事 前 準 備 という 観 点 では 改 善 の 余 地 があると 考 える Ⅴ 研 究 のまとめ 第 一 に, 本 県 において 保 護 者 からのクレームは,それほど 認 知 されていないことである 保 護 者 からの 様 様 な 声 をクレームととらえるか, 前 向 きな 相 談 要 望 ととらえるかは 教 師 側 の 主 観 によるところも 大 きいわ
けだが, 現 状 としてクレームととらえている 割 合 は 高 くない 金 子 (2007)の 調 査 においても, 学 校 に 寄 せら れる 保 護 者 からの 声 のうち,クレームは1~2 割 としており 類 似 の 傾 向 を 示 している ただし, 実 際 に 一 部 の 理 不 尽 なクレームが 学 校 を 混 乱 させ, 教 師 にとって 多 大 な 負 担 になっている 場 合 もあると 思 われる その 印 象 や 話 題 性 が 強 く, 教 師 側 が 保 護 者 からのクレームに 対 して 過 剰 な 反 応 や 抵 抗 感 を 持 ってしまう 可 能 性 が あるが, 事 前 に 傾 向 を 把 握 し 冷 静 に 対 処 することで, 解 決 していける 事 例 が 大 部 分 であると 考 える 第 二 に,クレームの 内 容 を 比 較 した 結 果, 主 に 校 種 間 で 差 異 が 見 られたことである 全 体 として 中 学 校 で クレーム 認 知 が 高 い 傾 向 にあり, 中 でも 部 活 動 や 生 活 指 導, 進 路 などで 目 立 つ また, 小 学 校 で は 学 習 指 導 や 部 活 動, 行 事, 県 立 学 校 では 生 活 指 導 の 項 目 が 目 立 っている このことから, 各 校 において,これらの 項 目 の 指 導 方 針 や 指 導 計 画 を 見 直 したり, 保 護 者 や 地 域 住 民 に 説 明 する 機 会 を 設 け るなどして, 日 常 的 に 学 校 に 対 する 意 見 要 望 を 把 握 しておくことが 大 切 である これは,クレームの 事 前 予 防 という 観 点 からも 重 要 であると 考 える また, 性 別 では 男 性 教 師, 経 験 年 数 では11~20 年 の 中 堅 教 師 に 高 い 傾 向 が 見 られた 男 性 教 師 は 父 性 的 指 導 に 頼 らず, 指 導 の 幅 を 広 げる 必 要 があると 思 われる また, 中 堅 教 師 は 何 かと 役 割 が 多 く, 特 に 生 徒 指 導 担 当 などクレームの 窓 口 になる 教 師 は 資 質 の 向 上 が 求 められる と 考 える ただ,クレームはいつ 誰 にくるか 分 からないわけで, 管 理 職 や 生 徒 指 導 担 当 など, 一 部 の 教 師 だ けがクレーム 対 応 のスキルを 身 に 付 けるのではなく, 一 人 一 人 が 意 識 を 高 め, 対 応 に 役 立 つ 教 育 相 談 の 知 識 やスキルを 身 に 付 けることが 重 要 だと 考 える 第 三 に, 現 在 行 われているクレーム 対 応 について 比 較 した 結 果,やはり 主 として 校 種 間 で 差 異 が 見 られた ことである 県 立 学 校 に 比 べ 小 学 校 や 中 学 校 で 様 々な 対 応 を 実 践 していることが 示 されたが,これはクレー ム 傾 向 の 高 さや 内 容 の 複 雑 さを 反 映 していると 考 える また, 管 理 職 への 報 告 や 組 織 チーム 対 応 といった 基 本 的 な 対 応 は,どの 校 種 でもとられているものと 判 断 できる 第 四 に, 対 応 策 の 中 で 訴 訟 に 備 えた 保 険 や マニュアルの 作 成 は, 進 展 していない 状 況 が 示 された 本 県 において 訴 訟 にまで 発 展 するクレームはごく 稀 であり,すぐに 保 険 に 加 入 する 必 要 はないだろうが, 大 都 市 圏 では 珍 しくないようである 今 後 の 状 況 次 第 で 増 えていく 可 能 性 があろう また, 学 校 現 場 に 寄 せら れるクレームは 多 種 多 様 なため, 全 てを 網 羅 するマニュアルの 作 成 は 困 難 であろう しかし, 各 校 種 のクレ ーム 傾 向 を 踏 まえ, 対 応 の 流 れや 留 意 点 をまとめておく 必 要 はあるだろう 特 に, 実 際 のクレーム 対 応 で 重 要 なのは 初 期 対 応 といわれている クレームを 拡 大 化 複 雑 化 させないためにも, 校 内 研 修 などで 初 期 対 応 の 流 れを 確 認 共 通 理 解 することも, 今 後 ますます 必 要 と 考 える Ⅵ 本 研 究 における 課 題 本 研 究 は, 保 護 者 からのクレームの 内 容 や 対 応 策 について, 校 種, 性 別, 経 験 年 数 の 違 いを 中 心 に 分 析 を 行 った 因 子 分 析 によりクレーム 内 容 として 九 つの 因 子 が 抽 出 されたが, 実 際 学 校 現 場 に 寄 せられるクレー ムは 多 種 多 様 であり, 今 回 の 分 類 に 含 まれなかったものもあると 考 える また, 調 査 対 象 が 講 座 受 講 者 に 限 られていたので, 調 査 対 象 を 広 げた 全 県 的 な 調 査 や, 保 護 者 を 対 象 とした 研 究 分 析 も 必 要 であると 考 える さらに,クレームの 困 難 度 といった 質 的 分 析 やクレームを 受 ける 教 師 の 役 職 との 関 連 についての 分 析 も 必 要 となる < 引 用 文 献 > 金 子 真 人 2007 学 校 における 保 護 者 対 応 に 関 する 調 査 研 究,p.1,3,4, 群 馬 県 総 合 教 育 センター 福 沢 恵 利 子 2007 教 師 ストレスの 背 景 要 因 に 関 する 研 究,p.7, 青 森 県 総 合 学 校 教 育 センター < 参 考 文 献 > 岩 手 県 教 育 委 員 会 2006 苦 情 対 応 マニュアル( 学 校 版 ) 大 阪 府 教 育 センター 2008 保 護 者 とのかかわりハンドブック 京 都 府 教 育 委 員 会 2007 信 頼 ある 学 校 を 創 る 学 校 に 対 する 苦 情 への 対 応 佐 々 木 光 郎 2008 苦 情 を 訴 える 親 の 真 意 月 刊 生 徒 指 導 7 月 号 学 事 出 版 東 京 都 教 育 委 員 会 2008 公 立 学 校 における 学 校 問 題 検 討 委 員 会 における 実 態 調 査 ベネッセ 教 育 研 究 開 発 センター 2007 保 護 者 の 多 様 化 の 要 因 は? VIEW21( 高 校 版 )6 月 号 ベネッセ 陸 奥 新 報 WWW-NEWS 2007.11.30 理 不 尽 なクレーム, 困 った 保 護 者 県 内 にも 読 売 新 聞 YOMIURI ONLINE 2007.6.18 親 の 理 不 尽 な 要 求, 抗 議 に 学 校 苦 慮 読 売 調 査