医 療 情 報 利 活 用 における 匿 名 化 技 術 ガイド 2015/05/30 Ver1.0 JIRA 医 用 画 像 システム 部 会 新 IMIT-WG SWG3 1.はじめに 医 療 の 進 歩 のためには 医 療 情 報 の 利 活 用 は 不 可 欠 である 現 在 の 医 療 水 準 が 達 成 されて いるのは 過 去 の 医 療 情 報 の 蓄 積 と 分 析 すなわち 利 活 用 が 行 われてきた 成 果 である も し 医 療 情 報 の 利 活 用 が 制 限 されるようなことがあれば それは 今 後 の 医 療 の 進 歩 を 妨 げる ものであり 社 会 的 利 益 の 喪 失 を 意 味 する 他 方 患 者 のプライバシーを 守 ることは 医 師 に 課 せられた 守 秘 義 務 に 代 表 されるよう に 医 療 情 報 管 理 の 必 須 要 件 である 誰 しも 自 身 の 不 利 益 になる 情 報 の 公 開 は 望 まないし 場 合 によってはその 患 者 の 家 族 にまで 影 響 が 及 ぶ 可 能 性 がある したがって 医 療 情 報 管 理 には 高 度 な 安 全 性 が 要 求 される これら 利 活 用 と 安 全 管 理 を 両 立 させる 対 策 として 情 報 の 匿 名 化 がある 医 療 情 報 の みならずパーソナルデータを 含 むビッグデータの 利 活 用 の 推 進 の 上 で 匿 名 化 の 重 要 性 が 高 まっている 本 書 では 医 療 情 報 の 匿 名 化 に 関 しての 社 会 的 背 景 や 技 術 的 内 容 について 解 説 する 2. 目 的 と 適 用 範 囲 本 書 は JIRA 会 員 企 業 に 対 し 医 療 情 報 の 利 活 用 における 匿 名 化 についての 社 会 的 な 要 求 と 技 術 的 な 内 容 について 解 説 するものである JIRA 会 員 企 業 向 けということで 医 療 情 報 の 内 DICOM 画 像 データ 読 影 レポートを 対 象 としている JIRA 会 員 企 業 が 製 造 販 売 している 機 器 から 出 力 される 画 像 データやレポートデータを 医 療 機 関 が 第 三 者 へ 提 供 を 行 う 際 に 医 療 機 関 から 製 造 企 業 に 対 して 情 報 の 匿 名 化 の 技 術 的 対 応 要 求 があるとい う 前 提 で それに 対 応 するための 情 報 提 供 を 目 的 としている JIRA 会 員 企 業 になじみの 深 い 利 活 用 ユースケース 例 には 臨 床 画 像 レポートの 症 例 データベースへの 提 供 臨 床 画 像 レポートの 学 会 での 発 表 臨 床 画 像 レポートの 教 育 への 利 用 が 考 えられる 利 活 用 にあたって 匿 名 化 したデータを 提 供 する 時 のリスク 分 析 は 情 報 提 供 者 ( 医 療 機 関 )が 用 途 提 供 先 組 織 利 用 形 態 で 判 断 することであるが 医 療 情 報 システム 事 業 者 として 関 与 する 場 合 には 本 書 4 章 5 章 の 資 料 等 により 理 解 を 進 めておくことを 推 奨 する さらに JIRA 会 員 企 業 が 医 療 機 器 システム 機 能 のテストデータとして 診 療 情 報 の 提 供 を 受 ける 場 合 は JIRA 会 員 企 業 側 が 当 事 者 になることから 手 法 や 制 度 的 体 制 につ 1
いての 理 解 が 必 須 である すなわち 内 閣 府 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 推 進 戦 略 本 部 (IT 総 合 戦 略 本 部 )で 平 成 25 年 12 月 20 日 に 決 定 された パーソナルデータの 利 活 用 に 関 する 制 度 見 直 し 方 針 の 内 容 に 従 うこととなる このケースは 民 間 事 業 者 による 事 業 用 途 であるが 市 場 への 機 能 提 供 によって 最 終 的 には 社 会 的 利 益 = 公 益 が 発 生 することを 提 供 側 に 理 解 してもらうことが 望 まれる 3. 医 療 情 報 の 匿 名 化 について 3.1 個 人 情 報 の 匿 名 化 とは 医 療 情 報 の 匿 名 化 に 関 して 現 行 の 主 なガイドラインは 以 下 の 2 点 が 存 在 する 医 療 介 護 関 係 事 業 者 における 個 人 情 報 の 適 切 な 取 扱 いのためのガイドライン [1] 医 療 情 報 システムの 安 全 管 理 に 関 するガイドライン [2] 医 療 介 護 関 係 事 業 者 における 個 人 情 報 の 適 切 な 取 扱 いのためのガイドライン にて 下 記 定 義 が 記 載 されている 個 人 情 報 : 個 人 情 報 とは 生 存 する 個 人 に 関 する 情 報 であって 当 該 情 報 に 含 まれ る 氏 名 生 年 月 日 その 他 の 記 述 等 により 特 定 の 個 人 を 識 別 することができ るもの( 他 の 情 報 と 容 易 に 照 合 することができ それにより 特 定 の 個 人 を 識 別 することができることとなるものを 含 む )をいう 個 人 情 報 の 匿 名 化 : 当 該 個 人 情 報 から 当 該 情 報 に 含 まれる 氏 名 生 年 月 日 住 所 等 個 人 を 識 別 する 情 報 を 取 り 除 くことで 特 定 の 個 人 を 識 別 できないようにす ることをいう 医 療 情 報 システムの 安 全 管 理 に 関 するガイドライン にて 匿 名 情 報 の 取 り 扱 いに 関 し て 規 定 が 記 載 されている 3.2 国 内 の 動 向 現 在 多 分 野 でのパーソナルデータ 利 活 用 にあたってのルール 明 確 化 環 境 整 備 の 検 討 が 内 閣 官 房 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 推 進 戦 略 本 部 (IT 総 合 戦 略 本 部 )の パーソ ナルデータに 関 する 検 討 会 [3]を 中 心 に 進 められている 医 療 情 報 ( 診 療 記 録 検 査 記 録 ( 画 像 画 像 診 断 レポート) など)の 臨 床 研 究 疫 学 的 利 用 医 学 教 育 医 療 行 政 用 途 等 での 利 活 用 の 有 用 性 については 異 論 の 無 いところで あるが 有 用 であることを 重 視 するあまり 不 十 分 な 匿 名 化 処 理 のままで 開 示 さらには 公 開 することは 個 人 のプライバシー 侵 害 にもなり 得 る 一 方 現 行 での 匿 名 化 指 針 について も 曖 昧 で 不 十 分 との 指 摘 があり 上 記 検 討 会 での 対 象 になっている パーソナルデータに 関 する 検 討 会 における 検 討 内 容 を 紹 介 する 健 康 情 報 パーソナルデータ 利 活 用 の 問 題 点 ( 山 本 委 員 ): 第 2 回 資 料 1-3 2
医 療 は 過 去 の 診 療 情 報 の 蓄 積 の 上 に 成 り 立 っているため 利 活 用 は 必 須 である 完 全 な 匿 名 化 ( 例 HIPAA のプライバシールール)では 疫 学 的 な 利 活 用 に 支 障 があ る 第 三 者 提 供 時 には 匿 名 化 の 程 度 を 判 断 する 必 要 がある 医 療 機 関 の 設 立 者 によって 適 用 法 令 が 異 なり 情 報 連 携 に 支 障 がある 利 活 用 できないことの 対 策 がなされていない 個 人 情 報 の 定 義 があいまいで 匿 名 化 が 定 義 できない などの 現 状 での 問 題 点 が 挙 げられている 医 療 等 分 野 におけるパーソナルデータの 利 活 用 の 類 型 及 び 考 察 ( 松 本 構 成 員 ): 第 2 回 技 術 検 討 ワーキンググループ 資 料 4 現 状 の 利 用 例 と 利 活 用 にあたっての 医 療 情 報 の 特 性 が 述 べられている 上 記 の 認 識 を 踏 まえて 平 成 25 年 12 月 20 日 に 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 推 進 戦 略 本 部 (IT 総 合 戦 略 本 部 )において パーソナルデータ 利 活 用 の 制 度 見 直 し 方 針 が 出 さ れている パーソナルデータ 利 活 用 の 制 度 見 直 し 方 針 において 匿 名 化 された 情 報 を 本 人 同 意 なしに 第 三 者 提 供 するための 法 的 整 備 ( 個 人 情 報 保 護 法 の 改 訂 )に 向 けた 提 言 が 示 されて いる すなわち 第 三 者 提 供 における 本 人 同 意 原 則 の 例 外 条 件 の 追 加 を 提 示 している 例 えば 個 人 が 特 定 される 可 能 性 を 低 減 した 個 人 データの 扱 いが 個 人 再 特 定 される 危 険 に 対 して 提 供 先 組 織 が 他 のデータと 突 合 して 再 特 定 しないこと 再 提 供 先 にも 求 めることを 公 表 している 場 合 (いわゆる FTC 三 原 則 ) 等 である 3.3 匿 名 化 技 術 匿 名 化 技 術 について パーソナルデータに 関 する 検 討 会 技 術 検 討 ワーキンググルー プ 資 料 の 記 載 を 紹 介 する 匿 名 化 技 術 の 現 状 について( 高 橋 構 成 員 ): 第 1 回 技 術 検 討 ワーキンググループ 資 料 2-3 個 人 識 別 できない 匿 名 データは 作 成 できるか( 高 橋 構 成 員 ): 第 2 回 技 術 検 討 ワー キンググループ 資 料 1 技 術 検 討 ワーキンググループ 報 告 書 : 第 5 回 資 料 2-1 この 中 では 用 語 匿 名 化 を 個 人 識 別 と 特 定 化 に 区 分 している どのような 技 術 的 手 法 をとっても 一 般 的 意 味 での 完 全 な 匿 名 化 はあり 得 ないこと 匿 名 化 の 程 度 に 関 して 匿 名 化 には 幾 つかのレベルがあること が 記 載 されている 3
匿 名 化 レベル 内 容 を 下 記 1 2 3 と 図 4.1 で 紹 介 する 個 人 情 報 とされる 範 囲 の 境 界 は 2 のレベル 中 にあるとされるが 明 確 な 規 定 は 難 しい とされている 1. 連 結 可 能 匿 名 データ 氏 名 等 を 削 除 するが 元 の 情 報 と 照 合 することで 個 人 と 連 結 可 能 なもの( 仮 名 化 と 呼 ばれる) 2. いわゆる 匿 名 データ 氏 名 等 を 削 除 し 元 の 情 報 と 対 応 できないようにしたもの( 無 名 化 と 呼 ばれる) 3. 高 度 な 匿 名 データ 高 度 な 匿 名 処 理 により 特 定 の 個 人 の 識 別 が 困 難 になるようにしたもの 図 3.1 匿 名 化 のレベル ( 匿 名 化 技 術 の 現 状 について 第 1 回 技 術 検 討 ワーキンググループ 資 料 2-3 p6 より 引 用 ) 3 としての 高 度 な 匿 名 化 処 理 の 代 表 例 として k- 匿 名 化 がある ここでの k とは 特 定 個 人 のデータを k 個 未 満 に 絞 り 込 めないかどうかを 示 す 匿 名 性 の 指 標 であり k を 大 き くすると 個 人 特 定 リスクは 減 るが 大 きくしすぎると 情 報 量 が 落 ち 実 用 上 使 えないデー タになってしまうとの 問 題 が 存 在 する k- 匿 名 化 に 関 しては 4.2 で 説 明 する 3.4 海 外 の 事 例 3.4.1 米 国 HIPAA が 規 定 した 匿 名 化 ルール( 二 つの 方 法 が 選 択 可 :1) 規 定 された 18 属 性 を 削 除 2) 統 計 分 析 の 専 門 家 により 個 人 が 特 定 されるリスクを 評 価 し 十 分 低 いことを 判 断 した 分 析 の 経 過 および 結 果 を 文 書 化 )に 従 い 利 活 用 が 数 多 く 実 施 されている [4] 3.4.2 英 国 4
EHR を 利 活 用 するための 仕 組 みとして SUS(Secondary Uses Service)が 構 築 されて いる また 医 療 情 報 の 利 活 用 に 向 けたガイドライン 整 備 も 進 んでおり 医 療 分 野 におけ る 情 報 保 護 と 公 開 の 両 立 を 図 るため NHS が 2013 年 2 月 に Anonymization Standard for Publishing Health and Social Care Data というガイドラインを 策 定 し 匿 名 化 のルール が 明 確 化 されている [4] 3 章 の 参 考 資 料 [1] 厚 生 労 働 省 医 療 介 護 関 係 事 業 者 における 個 人 情 報 の 適 切 な 取 扱 いのためのガイドラ イン http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/ [2] 厚 生 労 働 省 医 療 情 報 システムの 安 全 管 理 に 関 するガイドライン 4.2 版 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000026088.html [3] 内 閣 官 房 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 推 進 戦 略 本 部 パーソナルデータに 関 する 検 討 会 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/index.html [4]NTT データ 経 営 研 究 所 医 療 情 報 に 関 する 海 外 調 査 報 告 書 http://www.keieiken.co.jp/medit/pdf/240423/0-report_2.pdf 4 JIRA に 関 係 する 医 療 情 報 の 匿 名 化 について 4.1 DICOM における 匿 名 化 DICOM 規 格 [1][2]における 匿 名 化 については DICOM 規 格 書 15 巻 の セキュリティと システム 管 理 のプロファイル(Security and System Management Profiles) の 付 属 書 E 属 性 の 秘 匿 プロファイル(Attribute Confidentiality Profiles) に 規 定 されている こ の 付 属 書 では 暗 号 化 による 秘 匿 や 匿 名 化 された 情 報 を 元 に 戻 すことも 規 定 されている が ここでは 主 に 匿 名 化 に 関 して 説 明 する DICOM データは 図 4.1 のように 患 者 や 検 査 に 関 する 属 性 情 報 の 値 (Value)が タ グ(Tag) 値 の 形 式 (Value Representation 以 下 VR)とデータの 長 さ(Value Length) が 付 帯 したデータ 要 素 (Data Element)として 記 録 されている タグの 値 (グループ 値 エ レメント 値 )は 情 報 の 項 目 ごとに 決 められており 例 えば 患 者 の ID は(0010,0020) 検 査 日 付 は(0008,0020)である 項 目 ごとのタグ 値 は DICOM 規 格 書 6 巻 の データ 辞 書 (Data Dictionary) に 規 定 されている Data Set Data Elem. Data Elem. Data Elem. Data Elem. Tag VR Value Length Value Field 5
図 4.1 DICOM データ 構 造 DICOM データ 内 の 患 者 に 関 する 識 別 情 報 を 匿 名 化 するということは 単 純 にその 識 別 情 報 のタグのデータ 要 素 を 取 り 除 けば 良 いわけではない DICOM 規 格 は タグごとにタイプ や 値 の 形 式 を 決 めており 単 に 削 除 すると DICOM 規 格 違 反 のデータになってしまい そ の 後 の 処 理 に 使 えないデータになってしまうので 注 意 が 必 要 である タイプ(Type)に 関 しては タイプ 1(Type 1)は 長 さがゼロでなく 何 らかの 値 が 入 って いること タイプ 2(Type 2)は 値 が 不 明 ならば 長 さゼロで 値 なしにすること 等 と 決 めら れている したがって 匿 名 化 する 際 は Type1 のデータ 要 素 には 長 さがゼロでないダミ ー 値 をセットする 必 要 がある また 値 の 形 式 (VR)に 関 しては 例 えば 検 査 日 付 (0008,0020)は VR が DA(Date) と 定 義 されており 8 文 字 固 定 の 文 字 列 で 使 える 文 字 は 数 字 のみである したがって 検 査 日 を 匿 名 化 したいということで "20140101"と 入 っている 値 を "XXXXXXXX"といった 数 字 以 外 の 値 に 置 き 換 えると DICOM 規 格 違 反 となってしまう その 他 に DICOM データの 匿 名 化 には 以 下 の 点 に 注 意 が 必 要 である 1) 匿 名 化 の 際 どのデータ 要 素 を 処 理 するかは 匿 名 化 したデータの 利 用 目 的 に 関 連 す るため ケースごとに 匿 名 化 処 理 者 の 責 任 で 判 断 しなければならない DICOM 規 格 書 15 巻 付 属 書 E では 基 本 アプリケーションレベル 秘 匿 プロファイルとして 教 育 用 ファイル 作 成 等 の 目 的 のために 処 理 するデータ 要 素 のリスト 例 が 提 示 されている 2) 処 理 対 象 のタグ 値 のデータ 要 素 は シーケンスにアイテムとして 含 まれている 場 合 が ある そのデータ 要 素 に 対 しても 同 じ 処 理 が 必 要 である 3) 処 理 時 にセットされるダミー 値 の 内 容 は 規 定 しないが それが 患 者 を 識 別 不 能 な 値 で あることは ダミー 値 を 生 成 する 匿 名 化 ソフトウェアか それを 入 力 する 操 作 者 の 責 任 である 4) 画 像 データに 識 別 情 報 が 埋 め 込 まれている 場 合 があるため 処 理 者 は 埋 め 込 まれてい ないことを 確 認 すること なお 埋 め 込 まれたものを 削 除 することは 規 格 の 適 用 外 で ある 5) 収 集 コメント(0018,4000)のように 現 在 はリタイアされているデータ 要 素 にも 対 応 が 必 要 である 6)メディアに 保 存 されている 場 合 に 付 加 されるメタ 情 報 についても 同 様 な 匿 名 化 の 処 置 が 必 要 である 7) 装 置 ベンダが 独 自 に 定 義 したプライベート 属 性 については その 中 に 識 別 情 報 が 含 ま れるかどうかは 不 明 のため 原 則 削 除 すべきである 8)オーバレイデータ(60xx,3000)に 識 別 情 報 がビットマップデータとして 含 まれている 6
可 能 性 があるため 原 則 削 除 すべきである DICOM 規 格 書 15 巻 付 属 書 E では 匿 名 化 を 行 う 際 にどのように 処 理 するかを 以 下 の 6 つのアクションコードで 示 し 匿 名 化 対 象 のデータ 要 素 ごとに 表 に 示 している D - ゼロでない 長 さのダミーの 値 に 置 換 する 値 の 形 式 は VR と 一 致 させる Z - 長 さをゼロにして 値 をセットしない あるいは ゼロでない 長 さのダミーの 値 と 置 換 する 値 の 形 式 は VR と 一 致 させる X - データ 要 素 を 削 除 する K - 保 持 する (シーケンスでない 要 素 は 変 更 なし シーケンス 要 素 は 消 去 する) C - 消 去 する 識 別 情 報 を 含 まない 値 に 置 き 換 える 値 は VR と 一 致 させる U - インスタンスとして 一 貫 性 のある UID に 置 き 換 える ここでの 一 貫 性 とは 例 え ば 同 じ 検 査 のデータの 場 合 Study Instance UID が 同 じに 保 つことである 利 活 用 目 的 によっては 一 貫 性 が 必 須 のケースがあるため 注 意 が 必 要 である DICOM 規 格 書 15 巻 付 属 書 E の 表 E.1-1 から 主 な 属 性 データ 要 素 の 処 理 方 法 を 以 下 に 抜 粋 した 他 のデータ 要 素 については DICOM 規 格 書 を 参 照 のこと 属 性 タグ 値 リタイア 処 理 方 法 患 者 の ID (0010,0020) Z 患 者 の 名 前 (0010,0010) Z 患 者 の 生 年 月 日 (0010,0030) Z 患 者 の 年 齢 (0010,1010) X 患 者 の 性 別 (0010,0040) Z 検 査 日 付 (0008,0020) Z 受 付 番 号 (0008,0050) Z 検 査 ID (0020,0010) Z 検 査 内 容 (0008,1030) X 患 者 コメント (0010,4000) X 検 査 コメント (0032,4000) X 収 集 コメント (0018,4000) Y X オーバーレイデータ (60xx,3000) X 施 設 名 (0008,0080) X/Z/D(Type3/Type2/Type1) 装 置 名 前 (0008,1010) X/Z/D(Type3/Type2/Type1) 操 作 者 名 (0008,1070) X/Z/D(Type3/Type2/Type1) 検 査 インスタンス UID (0020,000D) U SOP インスタンス UID (0008,0018) U 7
プライベート 属 性 グループ 番 号 が 奇 数 表 4.1 主 な 属 性 データ 要 素 の 処 理 例 X なお 匿 名 化 を 実 施 した 場 合 患 者 識 別 削 除 (0012,0062)を 値 "YES"で 追 加 し 匿 名 化 方 法 コードシーケンス(0012,0064)に DICOM 規 格 書 16 巻 の CID7050 で 定 義 されてい る 匿 名 化 方 法 のコードをセットするか 匿 名 化 方 法 (0012,0063)に 匿 名 化 の 手 法 について 記 述 すること ただし 必 須 ではない DICOM 規 格 は 頻 繁 に 改 定 が 行 われており 最 新 の 規 格 書 を 参 照 すること 4.1 の 参 考 資 料 [1]NEMA The DICOM Standard http://medical.nema.org/standard.html [2] JIRA DICOM の 世 界 http://www.jira-net.or.jp/dicom/index.html 4.2 k- 匿 名 化 米 国 HIPAA では 個 人 の 同 定 が 不 可 能 なデータとは 個 人 を 同 定 せず かつ 個 人 を 同 定 するのに 用 いることができる 情 報 であると 思 うような 合 理 的 根 拠 が 全 くない データとし て 定 義 されるが[1] この 要 件 を 満 たすためには 公 開 されたデータが 単 独 あるいは 他 の 公 開 情 報 との 組 み 合 わせに 対 しても 個 人 の 同 定 のリスクが 小 さいことが 要 求 される 例 えば 次 のような 例 が 考 えられる[3] 下 の 図 では 医 療 データが 氏 名 と 住 所 を 削 除 され た 状 態 で 公 開 されている しかし 氏 名 および 住 所 が 公 開 されている 選 挙 人 リストを 利 用 することで 誕 生 日 性 別 ZIP コード( 郵 便 番 号 )から 個 人 を 特 定 することができ したが って 個 人 の 医 療 データを 特 定 することが 可 能 となる 図 4.2-1 L. Sweeney, Guaranteeing anonymity when sharing medical data,the Datafly system 8
こういった 組 み 合 わせによる 同 定 可 能 を 防 ぐための 技 術 が k- 匿 名 化 (k-anonymity)で あり 公 開 情 報 から 非 公 開 情 報 の 推 論 を 制 御 するためのプライバシー 保 護 手 法 の1つであ る k- 匿 名 化 は 上 述 のようなデータテーブルから 特 定 のレコードが 同 定 されることを 防 ぐた めに 同 じ 保 護 属 性 ( 上 記 の 例 では 削 除 した 氏 名 および 住 所 にあたる 情 報 が 相 当 )の 組 み 合 わせをもつレコードが 少 なくとも k 個 存 在 すること(k- 匿 名 性 )を 保 証 するために レコードの 削 除 修 正 方 法 を 提 供 する 技 術 である 例 えば 図 4.2-2 は k- 匿 名 性 を 保 持 した テーブルの 例 である[2] 図 4.2-2 ではそれぞれ t3,t5,t7 の 生 年, t4,t6 の 性 別 データの 一 部 あ るいは 全 体 を 削 除 し ( 一 般 化 された)テーブル RT を 作 成 している このテーブル RT は いずれのデータもすべての 項 目 が 一 致 するレコードを 自 分 も 含 めて 最 低 2 個 以 上 はもって おり したがってこのテーブルは 2- 匿 名 性 を 満 たしている k- 匿 名 化 のアルゴリズムはすでに 既 存 手 法 の 改 良 版 を 含 めいくつか 存 在 しているが[4] k- 匿 名 化 アルゴリズムは 処 理 時 間 や 過 度 のデータの 変 更 の 回 避 低 減 などの 観 点 から 改 善 が 継 続 されている 状 況 である 図 4.2-2 村 本 俊 祐, 上 土 井 陽 子, 若 林 真 一,k 匿 名 性 を 利 用 したデータ 一 般 化 によるプライバシー 保 護 4.2 の 参 考 資 料 [1] J.ヴィイダヤ, C.W.クリフトン, Y.M.ズー 著, 嶋 田 茂, 清 水 將 吾 訳, プライバシー 保 護 デ ータマイニング, 丸 善 出 版 株 式 会 社, 2011 [2] 村 本 俊 祐, 上 土 井 陽 子, 若 林 真 一,k 匿 名 性 を 利 用 したデータ 一 般 化 によるプライバシ ー 保 護,DEWS2007, A7 10,2007 [3] L. Sweeney, Guaranteeing anonymity when sharing medical data,the Datafly system, Journal of the. American Medical Informatics Association, pp.1-5,. 1997 [4] k- 匿 名 化 手 法 の 効 率 向 上 に 関 する 一 提 案. 渡 邉 奈 津 美, 土 井 洋, 趙 晋 輝 ; 全 国 大 会 講 演 論 文 集 2013(1), 519-521, 2013. 9
5.まとめ JIRA 会 員 が 関 係 する 医 療 情 報 の 利 活 用 に 関 しての 現 状 と 技 術 的 対 応 について 解 説 を 行 っ た 本 書 の 内 容 については 今 後 とも 充 実 させていく 方 針 である 匿 名 化 についての 社 会 的 状 況 は まだまだ 制 度 的 に 過 渡 的 である だからこそ 匿 名 化 につ いての 正 しい 知 識 が 重 要 である なお 利 活 用 匿 名 化 に 関 する 内 容 については 最 新 のものを 参 照 願 いたい 6. 参 照 法 規 規 格 ガイドライン 1) 日 本 経 済 再 生 本 部 (2013.6.14):2016 以 降 に 医 療 情 報 の 番 号 制 度 の 導 入 2) 厚 生 労 働 省 (2012 年 度 ): 社 会 保 障 分 野 サブワーキンググループ 及 び 医 療 機 関 等 におけ る 個 人 情 報 保 護 のあり 方 に 関 する 検 討 会 報 告 書 3) 英 国 (NHS)でのリスク 分 析 ルール Anonymization Standard for Publishing Health and Social Care Data 4) FTC 三 要 件 http://www.ftc.gov/reports/protecting-consumer-privacy-era-rapid-change-recommendat ions-businesses-policymakers 略 語 一 覧 ( 記 載 順 ) JIRA Japan Medical Imaging and Radiological Systems Industries Association ( 一 般 社 団 法 人 日 本 画 像 医 療 システム 工 業 会 ) DICOM Digital Imaging and Communication in Medicine HIPAA Health Insurance Portability and Accountability Act FTC Federal Trade Commission EHR Electronic Health Record NHS National Health Service NEMA National Electrical Manufacturers Association 10