情 報 報 告 ウィーン ALL ENERGY 2016(その 3) 2016 年 5 月 4 日 から5 日 にかけ 欧 州 の 再 生 可 能 エネルギー 市 場 に 関 する 会 議 ALL ENERGY 2016が 英 国 Glasgowで 開 催 された 主 催 者 はReed Exhibitions 社 ( 英 国 )であ る 今 回 は 英 国 の 洋 上 風 力 発 電 の 展 望 に 関 する 講 演 と 英 国 のバイオマスプラント 計 画 に 関 する 講 演 を 報 告 する 1. 2020 年 以 降 の 英 国 洋 上 風 力 発 電 のロードマップ Benj Sykes 氏 DONG Energy 社 (デンマーク) 1.1 DONG Energy 社 について DONG Energy 社 はデンマーク 最 大 の 総 合 エネルギー 企 業 である 同 社 は 風 力 発 電 バイ オエネルギー 及 び 火 力 発 電 分 散 型 発 電 石 油 ガスといった 広 範 な 分 野 を 取 り 扱 ってい るが その 中 でも 風 力 発 電 は 世 界 でも 主 導 的 な 立 場 にある 投 下 資 本 の 内 訳 は 風 力 発 電 が 75% バイオエネルギー 及 び 火 力 発 電 が3% 分 散 型 発 電 が13% 石 油 ガスが9%である 収 益 は 年 間 約 95 億 ユーロ 従 業 員 数 は6,700 人 である 1.2 現 在 の 洋 上 風 力 発 電 業 界 英 国 は 現 在 世 界 の 洋 上 風 力 発 電 業 界 を 牽 引 している その 理 由 として5GWを 超 える 洋 上 風 力 発 電 容 量 を 有 していることが 挙 げられる 5GWの 容 量 の 内 3.7GWはここ5 年 間 で 導 入 されたものであり 300 万 世 帯 に 電 力 を 供 給 している 2015 年 では 洋 上 風 力 発 電 の 年 間 負 荷 率 は41%であった また 13,000 人 の 労 働 者 が 洋 上 風 力 部 門 で 雇 用 されている( 間 接 的 な 雇 用 を 含 む) さらに 1,400 基 のタービンが 同 部 門 で 稼 働 している 負 荷 率 (Load Factor) 一 定 期 間 で 生 成 された 最 大 電 力 に 占 める 平 均 電 力 の 比 率 1.3 洋 上 風 力 発 電 のコスト 洋 上 風 力 発 電 施 設 のライフサイクルコストは2011 年 から2014 年 までの4 年 間 で11% 減 少 している 政 府 及 び 風 力 発 電 業 界 は2020 年 までに 発 電 コストを100ポンド/MWhまで 減 少 させることを 目 指 している 2015 年 2 月 に 行 われた 差 金 決 済 取 引 (CfD)の 競 売 では 発 電 コス トが120ポンド/MWhを 下 回 る 価 格 での 契 約 が 行 われている また コスト 削 減 により 発 電 設 備 の 大 規 模 化 が 可 能 となっている 図 1-1に 示 すように 洋 上 風 力 タービンの 大 きさはコスト 削 減 により15 年 間 で4 倍 になっている 差 金 決 済 取 引 (Contract for Difference) 差 金 決 済 取 引 とは 証 拠 金 ( 保 証 金 )を 業 者 に 預 託 し 原 資 産 となる 国 内 外 の 通 貨 株 価 や 金 価 格 等 金 融 商 品 の 価 格 や 指 数 を 参 照 し 現 物 の 受 渡 しを 行 わずに 売 りと 買 いの 差 額 の 授 受 により 決 済 を 行 う 取 引 こと 37
( 年 ) ( 製 造 者 ) ( 出 力 ) ( 高 さ) ( 直 径 ) 出 典 :ALL ENERGY 2016 Benj Sykes 氏 講 演 資 料 DONG Energy 社 図 1-1 風 力 発 電 タービンの 大 きさの 変 遷 1.4 英 国 の 洋 上 風 力 発 電 業 界 の 動 向 (1) 供 給 網 と 雇 用 英 国 の 洋 上 風 力 発 電 業 界 は2020 年 までに 業 界 内 で35,000 人 の 雇 用 を 創 出 し 70 億 ポンド の 経 済 効 果 をもたらす 可 能 性 を 有 している 業 界 団 体 と 政 府 は 風 力 発 電 施 設 の 建 設 用 地 と して 英 国 の 東 海 岸 の 開 発 を 検 討 している 業 界 は 英 国 の 電 力 需 要 の50%を 満 たすことを 目 的 としており この 目 的 に 政 府 も 合 意 している 出 典 :ALL ENERGY 2016 Benj Sykes 氏 講 演 資 料 DONG Energy 社 図 1-2 英 国 東 海 岸 の 電 力 供 給 網 とそこでの 雇 用 の 創 出 38
スコットランドでの 風 力 発 電 供 給 門 の 動 きを 以 下 に 示 す 2016 年 4 月 CS Wind 社 はWind Towers Scotland 社 を 買 収 し スコットランドの Kintyre 半 島 にある 風 力 発 電 施 設 に1,400 万 ポンドの 投 資 を 行 う 計 画 をしており 約 70 人 の 労 働 者 が 新 しく 雇 用 される 予 定 である 2016 年 4 月 Inverlussa Marine Services 社 はDONG Energy 社 のRace Bankプロジェ クトに 対 し 海 洋 支 援 サービスを 行 う 数 百 万 ポンドの 契 約 を 締 結 した 2016 年 3 月 Balfour Beatty 社 はStatoil 社 からスコットランド 沖 に 設 置 される30MW のHywind 洋 上 風 力 発 電 施 設 向 けの 電 気 システムインターフェースを 納 入 する550 万 ポ ンド 相 当 の 契 約 を 獲 得 した CS Wind 社 : 世 界 的 な 風 力 発 電 タワーメーカ( 韓 国 ) Wind Towers Scotland 社 :スコットランドの 風 力 発 電 タワーメーカ( 英 国 ) Inverlussa Marine Services 社 : 英 国 及 び 欧 州 全 域 を 主 要 取 引 先 とする スコットランド 有 数 の 作 業 船 メーカ( 英 国 ) :DONG Energy 社 :デンマーク 最 大 の 総 合 エネルギー 企 業 Race Bankプロジェクト 2013 年 12 月 にDONG Energy 社 が 受 注 した 最 大 容 量 580MWの 洋 上 風 力 発 電 所 建 設 プロジェクト 英 国 ノーフォーク 州 沖 の 北 海 に 建 設 されている (3) 洋 上 風 力 発 電 産 業 協 議 会 洋 上 風 力 発 電 産 業 協 議 会 ( 以 下 OWIC)は 世 界 有 数 の 発 電 規 模 を 誇 る 英 国 の 風 力 発 電 部 門 の 発 展 を 推 進 するため 2013 年 5 月 に 設 立 された 英 国 政 府 と 業 界 によるフォーラムであ る OIWCは 洋 上 風 力 発 電 戦 略 の 実 施 を 監 督 する 責 任 があり 英 国 の 洋 上 風 力 発 電 計 画 委 員 会 を 後 援 している 同 協 議 会 は 現 在 以 下 を 推 進 するため 業 界 の 適 切 な 条 件 を 作 成 することに 重 点 を 置 いて いる 大 規 模 化 継 続 的 なコスト 削 減 継 続 的 な 供 給 網 の 開 発 能 力 開 発 洋 上 風 力 発 電 計 画 委 員 会 (Offshore Wind Programme Board) 英 国 の 電 力 ミックスの 中 での 洋 上 風 力 発 電 が 競 争 力 を 持 ち 発 展 するよう 業 界 政 府 及 びステークホル ダが 一 体 となり 組 織 された 委 員 会 である 洋 上 風 力 発 電 のコスト 削 減 タスクフォースから 得 られた 勧 告 に 基 づき 活 動 を 行 っている 1.5 電 力 ミックスにおける 洋 上 風 力 発 電 英 国 は 独 自 に 洋 上 風 力 発 電 により 再 生 可 能 エネルギーを 生 産 している 2020 年 までに 英 国 は 年 間 の 電 力 需 要 の8~10%を 洋 上 風 力 発 電 により 賄 おうとしている さらに 2030 年 までには 電 力 需 要 の35%まで 賄 おうとしている 現 在 従 来 型 発 電 の 代 わりに 風 力 発 電 を 用 いることで 14,618,819tの 二 酸 化 炭 素 排 出 量 の 削 減 に 貢 献 している 1.6 今 後 の 展 望 現 在 低 炭 素 発 電 に 移 行 していく 必 要 があり EUは2035 年 までに 従 来 の 化 石 発 電 により 生 産 される 電 力 量 の80%を 再 生 可 能 エネルギー 等 のクリーンエネルギーに 置 き 換 える 必 要 がある また 洋 上 風 力 発 電 のコスト 削 減 は 順 調 に 進 んでいるものの 新 しい 技 術 や 供 給 網 を 開 発 することでさらに 推 進 していく 必 要 がある 英 国 の 供 給 網 はこの3 年 間 で 著 しく 進 歩 し ているものの 更 なる 発 展 が 望 まれている ( 参 考 資 料 ) DONG Energy 社 Benj Sykes 氏 講 演 資 料 DONG Energy 社 ホームページ(http://www.dongenergy.com/en) 39
2. バイオマス 利 用 の 効 率 と 投 資 回 収 を 最 大 化 させる 方 法 Tom Milne 氏 Black&Veatch 社 ( 英 国 ) 2.1 Black&Veatch 社 について Black&Veatch 社 は1915 年 に 設 立 された バイオマスを 含 むエネルギー 水 通 信 経 営 コンサルティングといった 多 様 な 市 場 に 参 入 している 英 国 の 大 手 エンジニアリング 企 業 で ある その 他 コンサルティング 業 務 や 建 設 分 野 にも 進 出 している 世 界 で110 以 上 の 事 業 所 を 有 し 従 業 員 は1 万 人 以 上 2014 年 度 の 年 間 収 益 は20 億 ポンドである 世 界 各 国 で7,000 を 超 えるプロジェクト 実 績 を 有 している (a) エネルギー (b) 水 (c) 通 信 図 2-1 Black&Veatch 社 の 事 業 範 囲 2.2 Black&Veatch 社 が 提 供 するバイオマスプラントサービス 図 2-2にバイオマスプラントの 計 画 から 運 営 に 至 るまでの 過 程 でBlack&Veatch 社 が 提 供 するサービスを 示 す 実 現 可 能 性 調 査 ライセンス 取 得 暫 定 スケジュ ールの 決 定 システム 分 析 主 要 機 器 選 定 計 画 スケジ ュールの 決 定 詳 細 コスト 決 定 土 壌 試 験 詳 細 設 計 建 設 建 設 管 理 プロジェク ト 完 了 最 適 化 停 電 管 理 計 画 市 場 評 価 プラント 形 状 の 研 究 許 認 可 取 得 支 援 暫 定 のコ スト 推 定 モンテカル ロ 分 析 システム 決 定 変 更 図 面 作 成 商 業 契 約 戦 略 の 策 定 プロジェ クト 計 画 調 達 プラント 起 動 運 転 訓 練 性 能 確 認 調 整 メンテナン ス 停 電 サー ビス 廃 炉 処 理 実 現 可 能 性 調 査 初 期 設 計 各 システムの 決 定 設 計 プロジェクト 実 施 運 営 図 2-2 Black&Veatch 社 が 提 供 するサービス 40
2.3 再 生 可 能 熱 インセンティブ(RHI) 英 国 は2011 年 から 産 業 界 や 事 業 所 公 共 施 設 住 宅 等 で 使 用 される 再 生 可 能 熱 に 対 しイ ンセンティブを 支 給 する 再 生 可 能 熱 インセンティブ( 以 下 RHI)を 設 定 している 2016 年 4 月 政 府 は 全 てのバイオマスボイラに 対 し 新 しく2.03~2.90ペンス/kWhの 買 取 価 格 設 定 を 提 案 した これはより 大 規 模 なバイオマスプロジェクトの 導 入 を 奨 励 する 意 図 がある しかしこの 買 取 価 格 が 適 用 されるには 指 定 された 階 層 ( 発 電 量 による 区 分 )と 負 荷 率 を 満 たす 必 要 がある 階 層 2では1.80~2.03ペンス/kWhの 買 取 価 格 が 設 定 されている また 全 ての 熱 電 併 給 システム(CHP)については 現 在 の 買 取 価 格 水 準 (4.17ペンス/kWh) を 維 持 すると 提 案 されている しかし この 買 取 価 格 は 年 間 の 負 荷 率 が35%に 相 当 する 設 備 に 適 用 され これを 超 える 負 荷 率 については1.80~2.03 ペンス/kWhが 設 定 されている 表 2.1 再 生 可 能 熱 インセンティブの 変 更 点 対 象 技 術 階 層 1 負 荷 率 35%(ペンス/kWh) 階 層 2> 負 荷 率 35%(ペンス/kWh) 全 てのバイオマスボイラ 2.03~2.90 1.80~2.03 全 てのCHPシステム 4.17 1.80~2.03 2.4 バイオマスプラント 計 画 時 の 留 意 点 (1) 熱 需 要 への 対 応 バイオマスボイラは 石 油 やガスボイラと 異 なり それらと 同 じように 使 用 することはで きない バイオマスボイラは 一 貫 した 負 荷 での 運 転 が 望 ましく 以 下 の 要 素 には 配 慮 すべ きである 最 少 負 荷 需 要 の 急 激 な 変 化 (2) 蓄 熱 設 備 通 常 多 くのバイオマスボイラは 資 本 やスペースの 問 題 により 蓄 熱 設 備 は 設 置 されてい ない しかし 外 部 の 影 響 を 受 けやすいプラントは 緩 衝 容 器 の 役 目 を 果 たす 蓄 熱 設 備 を 設 置 することで 起 動 時 及 びシャットダウン 時 に 有 効 に 活 用 することができる また 蓄 熱 設 備 については 図 2-3に 示 すように 出 入 の 流 れを 区 切 った 設 計 により 熱 水 の 逆 流 を 防 ぐ ことができる その 際 以 下 の 点 に 留 意 することが 重 要 である 配 管 入 口 及 び 出 口 を 分 ける ミキシングバルブ( 温 度 調 整 弁 )の 設 置 図 2-3 蓄 熱 設 備 の 設 計 の 概 念 図 41
(3) 補 助 ボイラ バイオマスプラントに 設 置 される 補 助 ボイラはバックアップ( 冗 長 運 転 )を 目 的 に 設 置 さ れる また 多 くのピーク 電 力 需 要 が 発 生 した 場 合 に 補 助 的 に 使 用 される 補 助 ボイラを バイオマス 発 電 システムに 組 み 込 む 場 合 以 下 に 留 意 する 必 要 がある 並 列 に 配 置 しない 流 動 温 度 の 維 持 バイオマス 燃 焼 の 制 御 冗 長 運 転 バックアップ 運 転 とも 呼 び 主 電 源 が 故 障 した 場 合 でもシステムを 停 止 させないよう 予 備 の 電 源 を 接 続 する 方 法 (4) 熱 分 配 システム 熱 分 配 システムは 複 数 の 需 要 地 点 に 熱 を 供 給 するために 用 いられる 熱 ネットワーク 中 で 熱 損 失 を 防 ぐ 方 法 として 以 下 が 挙 げられるため 留 意 が 必 要 となる 絶 縁 分 岐 バイパスの 設 置 温 度 制 御 圧 力 変 化 量 により 制 御 される 可 変 速 ポンプの 設 置 熱 流 量 計 の 設 置 (5) 燃 料 の 取 扱 い バイオマスプラントの 運 用 において 適 切 な 燃 料 の 受 入 や 取 扱 い 輸 送 は 重 要 である 石 油 と 比 較 した 場 合 必 要 となる 容 積 は 木 質 ペレットの 場 合 3.4 倍 木 質 チップの 場 合 10.2 倍 となる 従 い これらの 必 要 容 積 を 考 慮 した 計 画 が 重 要 である 2.9 結 論 バイオマスプラントではRHIにより 奨 励 金 を 得 ることができるが システムによっては 十 分 な 奨 励 金 を 得 ることができなくなる 可 能 性 もある 従 い 設 置 したシステムの 効 率 を 向 上 させることがより 重 要 となる 特 に 熱 効 率 を 向 上 させる 上 で 以 下 の 点 には 注 意 するべ きである 熱 需 要 に 対 応 した 運 転 ボイラ 及 び 蓄 熱 設 備 のサイズの 最 適 化 補 助 ボイラの 設 置 熱 分 配 システムの 設 計 また 燃 料 の 取 扱 いシステムは 燃 料 の 要 件 に 応 じた 設 計 が 重 要 である ( 参 考 資 料 ) Black&Veatch 社 Tom Milne 氏 講 演 資 料 Black&Veatch 社 ホームページ(http://bv.com/) 42