大 規 模 空 間 に 設 置 された 耐 震 吊 り 天 井 の 耐 震 余 裕 度 検 証 実 験 結 果 速 報 1.はじめに 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 で 発 生 した 吊 り 天 井 の 脱 落 被 害 を 受 け 関 係 各 機 関 では 各 種 法 規 の 整 備 や 既 存 施 設 の 早 急 な 点 検 対 策 の 推 進 などの 対 応 が 進 められています 例 えば 平 成 25 年 7 月 には 建 築 基 準 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 する 政 令 が 同 年 8 月 5 日 には 天 井 脱 落 対 策 に 係 る 一 連 の 技 術 基 準 告 示 が 公 布 され 平 成 26 年 4 月 より 施 行 される 予 定 となっています しかし これらの 新 しい 基 準 に 基 づいて 設 計 された 天 井 が 技 術 基 準 における 設 計 想 定 を 超 えるレベルの 地 震 にさらされた 場 合 に どこまでの 揺 れに 耐 え どう 損 傷 し 脱 落 するのかについては 天 井 の みを 取 り 出 した 実 験 ( 要 素 実 験 )などにより 関 係 各 所 やメーカーでも 検 証 が 進 められていると ころです しかしながら 天 井 の 要 素 実 験 では 過 去 の 脱 落 被 害 の 再 現 も 難 しいことから 実 大 の 建 物 を 用 いた 加 振 実 験 によりその 性 能 を 検 証 し 被 害 メカニズムを 探 ることが 重 要 です そこで 防 災 科 学 技 術 研 究 所 では 学 校 体 育 館 を 模 擬 した 大 規 模 空 間 を 有 する 実 大 モデル( 試 験 体 )をE-ディフェンスの 震 動 台 に 載 せ 加 振 することにより 大 規 模 空 間 での 被 害 を 引 き 起 こ す 柱 梁 等 の 構 造 部 材 の 地 震 時 挙 動 と これによる 天 井 などの 非 構 造 部 材 の 応 答 特 性 および 天 井 がどう 壊 れ 脱 落 するのか その 脱 落 被 害 メカニズムの 解 明 に 取 り 組 んでいます 2. 実 験 概 要 本 プロジェクトでは 試 験 体 の 天 井 の 組 み 合 わせを 変 えた 実 験 を 実 施 しました( 表 1) 本 実 験 で 使 用 する 建 物 試 験 体 は 小 中 学 校 で 使 用 される 体 育 館 を 模 擬 した 実 大 試 験 体 です 平 成 26 年 1 月 の 実 験 では この 試 験 体 の 内 部 に 耐 震 対 策 のない 吊 り 天 井 ( 未 対 策 天 井 )を 施 工 して 加 振 実 験 を 実 施 し 吊 り 天 井 の 脱 落 被 害 の 再 現 を 行 いました この 結 果 については 平 成 26 年 2 月 21 日 プレ ス 発 表 資 料 (http://www.bosai.go.jp/press/2013/pdf/20140221_01.pdf)をご 参 照 ください 平 成 26 年 2 月 は 試 験 体 の 内 部 に 平 成 26 年 4 月 施 行 予 定 の 技 術 基 準 に 基 づいて 設 計 された 吊 り 天 井 を 2 種 類 施 工 し 加 振 実 験 を 行 いました 1つは 一 般 の 流 通 量 が 多 い JIS 規 格 材 を 主 たる 部 材 とした 吊 り 天 井 (1.1G 耐 震 天 井 )で もう 1 つは JIS 規 格 材 よりも 高 強 度 な 部 材 で 構 成 された 吊 り 天 井 (2.2G 耐 震 天 井 )です この 2 種 類 の 耐 震 天 井 は 斜 め 部 材 (ブレース)により 天 井 の 揺 れ を 抑 制 し 天 井 の 周 囲 にクリアランス( 隙 間 )を 設 けることにより 設 計 時 に 検 討 が 困 難 な 壁 によ る 拘 束 の 影 響 を 無 くしました さらに 各 天 井 材 をビスなどで 相 互 に 緊 結 させることで 天 井 全 体 の 剛 性 を 高 め 天 井 材 の 損 傷 落 下 を 防 止 する 構 造 となっています それぞれの 天 井 の 細 かい 仕 様 の 違 いについては 表 2 および 平 成 26 年 2 月 21 日 プレス 発 表 資 料 をご 参 照 ください 入 力 地 震 動 は 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において 震 源 から 約 170km の 距 離 にある 宮 城 県 仙 台 市 宮 城 野 区 にて 強 震 観 測 網 (K-NET)で 観 測 された 地 震 動 (K-NET 仙 台 波 )と 1995 年 兵 庫 県 南 部 地 震 において 神 戸 海 洋 気 象 台 で 観 測 された 地 震 動 (JMA 神 戸 波 )を 用 いました ( 表 3) 1
表 1 実 験 計 画 実 験 時 期 主 体 構 造 天 井 平 成 26 年 1 月 27 日 28 日 平 成 26 年 2 月 27 日 28 日 純 鉄 骨 造 柱 : 鉄 骨 造 屋 根 : 鉄 骨 山 形 架 構 H13 年 よりも 前 に 設 計 施 工 された 耐 震 対 策 されていない 天 井 大 規 模 空 間 での 地 震 被 害 の 発 生 を 引 き 起 こす 構 造 体 と 非 構 造 体 の 応 答 特 性 と 天 井 の 脱 落 被 害 のメカニズムの 解 明 H26.4 に 施 行 される 基 準 に 準 拠 した 耐 震 対 策 天 井 新 しい 基 準 で 設 計 された 大 規 模 空 間 に おける 天 井 の 安 全 性 および 耐 震 余 裕 度 の 検 証 項 目 表 2 天 井 の 仕 様 仕 様 未 対 策 天 井 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 加 振 実 験 日 H26.1.27~28 H26.2.27~28 試 験 体 の 考 え 方 耐 震 基 準 設 計 想 定 の 地 震 力 地 震 に 対 する 対 策 のない 天 井 ( 過 去 の 脱 落 被 害 再 現 のため 既 存 の 天 井 を 模 擬 ) なし 地 震 による 揺 れ が 設 計 想 定 外 JIS 規 格 材 を 主 たる 部 材 とした 耐 震 天 井 ( 耐 震 設 計 の 妥 当 性 と 耐 震 余 裕 度 の 検 証 ) H26.4 施 行 予 定 の 新 耐 震 基 準 (2 階 建 て 建 物 の 1 階 部 分 に 相 当 する 地 震 力 を 想 定 ) 天 井 に 作 用 する 慣 性 力 が 1.1G (K-NET 仙 台 波 25% 相 当 ) JIS 規 格 材 よりも 高 強 度 な 部 材 で 構 成 した 耐 震 天 井 ( 耐 震 余 裕 度 の 検 証 ) H26.4 施 行 予 定 の 新 耐 震 基 準 ( 基 準 で 想 定 されて いる 最 大 地 震 力 ) 天 井 に 作 用 する 慣 性 力 が 2.2G (K-NET 仙 台 波 50% 相 当 ) 表 3 入 力 地 震 動 加 振 波 入 力 レベル 備 考 K-NET 仙 台 波 25%( 震 度 5 強 ) 1.1G 耐 震 天 井 の 設 計 レベル 50%( 震 度 6 弱 ) 2.2G 耐 震 天 井 の 設 計 レベル 80%( 震 度 6 強 ) 100%( 震 度 6 強 ) 海 溝 型 地 震 による 長 時 間 の 揺 れ に 対 する 耐 震 天 井 の 耐 震 性 検 証 JMA 神 戸 波 100%( 震 度 6 強 ) 直 下 型 地 震 による 揺 れに 対 する 耐 震 天 井 の 耐 震 性 検 証 150%( 震 度 7) 天 井 の 破 壊 メカニズム 解 明 のた めの 加 振 2
3. 実 験 結 果 実 験 による 天 井 損 傷 の 進 展 をまとめると 以 下 のようになります ( 表 4) 表 4 天 井 の 被 害 状 況 のまとめ 加 振 ケース K-NET 仙 台 波 25% [ 震 度 5 強 ] K-NET 仙 台 波 50% [ 震 度 6 弱 ] K-NET 仙 台 波 80% K-NET 仙 台 波 100% JMA 神 戸 波 100% JMA 神 戸 波 150% [ 震 度 7] 損 傷 状 況 未 対 策 天 井 ( 参 考 比 較 ) 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 骨 組 みを 接 合 する 金 物 の 滑 り 等 の 軽 微 な 損 傷 損 傷 なし 損 傷 なし (1 回 目 ) 骨 組 みを 接 合 する 金 物 が 外 れ 天 井 が 大 きくたわむ 天 井 面 は 脱 落 寸 前 損 傷 なし 損 傷 なし (2 回 目 ) たわんだ 天 井 面 が 大 きく 振 動 し 脱 落 一 部 の 揺 れ 止 めが 折 れ 曲 がる 揺 れ 止 めがさらに 大 きく 折 れ 曲 がり 元 に 戻 らなくなる 柱 と 激 しく 衝 突 し 天 井 ボー ドが 落 下 さらに 激 しく 衝 突 し 天 井 ボー ドが 多 数 落 下 損 傷 なし 揺 れ 止 めを 取 り 付 ける 金 具 のずれ 揺 れ 止 めを 取 り 付 ける 金 具 が 一 部 破 断 揺 れ 止 めが 折 れ 曲 がり 取 り 付 けている 金 具 が 破 断 骨 組 みも 大 きく 変 形 天 井 ボードも 多 数 落 下 平 成 26 年 1 月 に 実 施 された 未 対 策 天 井 の 脱 落 被 害 再 現 実 験 において 天 井 脱 落 の 生 じた K-NET 仙 台 波 50%( 震 度 6 弱 )の 実 験 では 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 ともに 損 傷 はありませんでした さらに 入 力 レベルを 大 きくしていき K-NET 仙 台 波 80%および 100%(いずれも 震 度 6 強 相 当 ) の 実 験 では 天 井 面 が 大 きく 振 動 し 一 般 に 流 通 する JIS 規 格 材 を 使 用 した 1.1G 耐 震 天 井 では 天 井 面 の 揺 れを 抑 えるための 斜 め 部 材 (ブレース)が 地 震 によって 天 井 面 に 生 じる 力 の 大 きさ に 耐 えられなくなり 曲 がり 始 めました しかし 未 対 策 天 井 のように 天 井 面 が 大 きくたわむなど の 危 険 な 状 態 に 至 ることはありませんでした( 図 1) また より 高 強 度 な 部 材 を 用 いた 2.2G 耐 震 天 井 では 目 視 で 確 認 できる 被 害 はありませんでした( 図 2) 図 1 折 れ 曲 がったブレース(1.1G 耐 震 天 井 ) ( 左 :K-NET 仙 台 波 80% 後 右 :K-NET 仙 台 波 100% 後 ) 3
図 2 損 傷 のない 2.2G 耐 震 天 井 (K-NET 仙 台 波 100% 後 ) これらの 実 験 により 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 あるいは 同 様 の 地 震 においても H26 年 4 月 施 行 予 定 の 耐 震 基 準 を 満 たした 天 井 では 脱 落 に 至 る 被 害 が 起 きないであろうことが 確 認 されました また 直 下 型 地 震 の 揺 れに 対 する 耐 震 天 井 の 耐 震 性 能 を 検 証 するために 兵 庫 県 南 部 地 震 の 際 に 神 戸 海 洋 気 象 台 ( 兵 庫 県 神 戸 市 )での 観 測 記 録 (JMA 神 戸 波 震 度 6 強 )による 実 験 を 続 けて 実 施 しました 1.1G 耐 震 天 井 では ブレースの 変 形 がすでに 起 こっていたため ブレースの 天 井 面 の 揺 れを 抑 える 機 能 が 低 下 しており 天 井 面 が 大 きく 揺 さぶられ 周 囲 の 柱 などに 天 井 面 が 衝 突 し 天 井 ボードなどが 衝 撃 により 脱 落 しました( 図 3) 2.2G 耐 震 天 井 では ブレースの 取 り 付 け 部 が 痛 んでおり 数 点 はずれたことが 確 認 されました 図 3 JMA 神 戸 波 100%( 震 度 6 強 ) 加 振 後 の 被 害 状 況 さらに 2.2G 耐 震 天 井 がどう 壊 れ 脱 落 していくかを 確 認 するため 兵 庫 県 南 部 地 震 の 記 録 を 1.5 倍 にまで 増 幅 させた 揺 れ( 震 度 7 相 当 )で 検 証 を 続 けました この 結 果 2.2G 耐 震 天 井 も 大 きく 揺 さぶられ 天 井 面 を 構 成 する 骨 組 みが 変 形 し 天 井 ボードが 大 きく 脱 落 しました( 図 4) 実 験 により 計 測 された 天 井 面 の 加 速 度 をまとめると 表 4 のようになります これらの 実 験 に より 耐 震 天 井 は 設 計 想 定 の 2 倍 以 上 の 地 震 の 揺 れにも 耐 えられるだけの 余 裕 度 を 持 っているこ とが 明 らかに 出 来 ました 4
天 井 全 景 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 天 井 骨 組 みの 変 形 天 井 ボードの 脱 落 柱 への 衝 突 図 4 神 戸 波 150%[ 震 度 7] 加 振 後 状 況 表 4 天 井 面 の 加 速 度 加 振 ケース *1 *2 天 井 面 加 速 度 ( 梁 間 方 向 )の 最 大 値 *3 未 対 策 天 井 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 K-NET 仙 台 波 25% [ 震 度 5 強 ] 0.81 G 0.63 G 0.77 G K-NET 仙 台 波 50% 4.21 G [ 震 度 6 弱 ] (5.54 G) *4 1.50 G 1.55 G K-NET 仙 台 波 80% 2.18 G 2.05 G K-NET 仙 台 波 100% 2.52 G 2.51 G JMA 神 戸 波 100% 4.77 G 2.40 G JMA 神 戸 波 150% [ 震 度 7] 4.45 G 4.90 G *1 加 速 度 とは 速 度 の 時 間 当 たり 変 化 率 を 表 し この 数 値 が 大 きいほど 揺 れが 大 きいことを 示 す 天 井 面 に 作 用 した 地 震 力 と 同 じ 意 味 を 持 ち 加 速 度 1G は 自 身 の 重 量 に 相 当 する 力 に 等 しい 地 震 力 が 作 用 したことを 表 す *2 屋 根 の 大 梁 がかかる 方 向 のこと 今 回 の 試 験 体 では 建 物 の 短 手 方 向 *3 2 月 21 日 プレス 発 表 資 料 の 値 とは 若 干 異 なるが 未 対 策 天 井 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 点 の 3 つの 天 井 で 比 較 で きるよう 結 果 の 整 理 方 法 を 統 一 したためである 以 前 の 結 果 とほぼ 同 じ 傾 向 を 示 しており 結 論 に 相 違 はない *4 2 回 目 加 振 の 結 果 ただし 加 振 途 中 に 天 井 の 損 傷 によりセンサが 断 線 したため 計 測 できた 途 中 までの 最 大 値 5
4.まとめ 耐 震 対 策 の 不 足 した 未 対 策 天 井 による 実 験 および 平 成 26 年 4 月 施 行 の 技 術 基 準 に 基 づいて 設 計 された 耐 震 天 井 による 実 験 によって 現 時 点 において 明 らかになった 点 をまとめると 以 下 のよ うになります 耐 震 対 策 の 不 足 した 未 対 策 天 井 は 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 観 測 記 録 の 揺 れを 50%にまで 縮 小 した 地 震 動 ( 震 度 6 弱 相 当 )でも 脱 落 の 恐 れがあることが 明 らかになりました 脱 落 に 至 る 過 程 を 詳 細 に 把 握 できたことから 天 井 脱 落 被 害 メカニズムの 解 明 に 大 いに 役 立 つ 物 と 考 え られます 本 震 で 脱 落 しかかった 状 態 の 天 井 は 本 震 後 の 大 きな 余 震 により 大 きく 脱 落 することがあ ることが 確 認 されました このことから 地 震 後 の 安 全 点 検 は 重 要 であるといえます デー タの 詳 細 分 析 により 安 全 点 検 のために 必 要 な 知 見 の 収 集 も 期 待 されます 脱 落 した 天 井 をワイヤ/ネットで 受 け 止 めるフェイルセーフ 機 能 は 有 効 でした ただし 既 存 の 施 設 にどう 取 り 付 けるかについては 課 題 があり さらなる 技 術 開 発 が 必 要 と 考 えられま す 平 成 26 年 4 月 施 行 の 技 術 基 準 に 基 づいて 設 計 された 耐 震 天 井 は 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 観 測 記 録 ( 震 度 6 強 相 当 )による 実 験 でも 脱 落 することはなく 設 計 想 定 の 2 倍 以 上 の 余 裕 度 を 持 っていることが 明 らかになりました 耐 震 天 井 に 対 して 設 計 想 定 を 大 きく 超 える 地 震 動 を 加 えることにより 耐 震 天 井 がどう 壊 れるかを 示 すデータを 取 得 できました データの 詳 細 分 析 により 耐 震 天 井 の 合 理 的 な 設 計 手 法 設 計 施 工 における 課 題 などを 洗 い 出 し より 安 全 な 耐 震 天 井 の 開 発 につなげ さら なる 被 害 低 減 技 術 開 発 をすすめていけるものと 考 えています 6
参 考 資 料 :2 月 21 日 プレス 発 表 資 料 ( 抜 粋 ) 大 規 模 空 間 に 設 置 された 吊 り 天 井 の 脱 落 被 害 再 現 実 験 結 果 速 報 1.はじめに 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 では 2,000 件 以 上 の 吊 り 天 井 の 脱 落 被 害 が 報 告 されており こ れらによる 人 的 被 害 も 発 生 しました これらの 被 害 の 中 でも 特 に 災 害 発 生 時 に 避 難 所 防 災 拠 点 としての 活 用 が 想 定 されている 体 育 館 等 の 施 設 では 天 井 などの 脱 落 被 害 により その 機 能 を 失 われた 事 例 が 多 数 有 り 問 題 となっています これらの 問 題 に 対 し 関 係 各 機 関 では 各 種 法 規 の 整 備 や 既 存 施 設 の 早 急 な 点 検 対 策 の 推 進 などの 対 応 が 進 められていますが 天 井 がどう 壊 れ どのように 脱 落 するのかを 含 む 被 害 メカニ ズムは 未 だ 明 らかにされていないのが 現 状 です そこで 防 災 科 学 技 術 研 究 所 では 学 校 体 育 館 を 模 擬 した 大 規 模 空 間 を 有 する 実 大 モデル( 試 験 体 )をE-ディフェンスの 震 動 台 に 載 せ 加 振 することにより 大 規 模 空 間 での 被 害 を 引 き 起 こす 柱 梁 等 の 構 造 部 材 の 地 震 時 挙 動 と これによる 天 井 などの 非 構 造 部 材 の 応 答 特 性 および 天 井 がどう 壊 れ 脱 落 するのか その 脱 落 被 害 メカニズムの 解 明 を 目 的 とした 振 動 実 験 を 実 施 しました 2. 実 験 概 要 本 プロジェクトでは 試 験 体 の 天 井 の 組 み 合 わせを 変 えた 実 験 を 計 画 しています( 表 1) 本 実 験 で 使 用 する 建 物 試 験 体 の 詳 細 については 別 添 の 平 成 26 年 1 月 7 日 プレス 発 表 資 料 および 1 月 28 日 公 開 実 験 当 日 資 料 を 実 験 に 使 用 する 天 井 の 詳 細 な 仕 様 については P.6 の 参 考 資 料 をそ れぞれご 参 照 ください 平 成 26 年 1 月 に 実 施 した 実 験 は 耐 震 対 策 のされていない 吊 り 天 井 の 脱 落 被 害 の 再 現 を 行 い そのメカニズム 解 明 を 行 うことを 目 的 とした 実 験 です 入 力 地 震 動 は 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において 震 源 から 約 170km の 距 離 にある 宮 城 県 仙 台 市 宮 城 野 区 にて 強 震 観 測 網 (K-NET)で 観 測 された 地 震 動 K-NET 仙 台 波 を 用 いました 平 成 26 年 1 月 に 実 施 した 実 験 で は K-NET 仙 台 波 の 加 速 度 記 録 を 25%に 縮 小 することにより 揺 れの 大 きさを 震 度 5 強 相 当 に 調 整 して 1 回 加 振 しました その 後 加 速 度 記 録 を 50%に 縮 小 することにより 震 度 6 弱 相 当 にした 揺 れを 2 回 加 振 し 脱 落 被 害 の 再 現 を 行 いました 表 1 実 験 計 画 実 験 時 期 主 体 構 造 天 井 平 成 26 年 1 月 27 日 28 日 ( 実 施 済 み) 平 成 26 年 2 月 27 日 28 日 ( 実 施 予 定 ) 純 鉄 骨 造 柱 : 鉄 骨 造 屋 根 : 鉄 骨 山 形 架 構 H13 年 よりも 前 に 設 計 施 工 された 耐 震 対 策 されていない 天 井 大 規 模 空 間 での 地 震 被 害 の 発 生 を 引 き 起 こす 構 造 体 と 非 構 造 体 の 応 答 特 性 と 天 井 の 脱 落 被 害 のメカニズムの 解 明 H26.4 に 施 行 される 基 準 に 準 拠 した 耐 震 対 策 天 井 新 しい 基 準 で 設 計 された 大 規 模 空 間 に おける 天 井 の 安 全 性 および 耐 震 余 裕 度 の 検 証 7
本 実 験 では すでに 建 物 へ 設 置 されている 地 震 に 対 する 対 策 のない 特 定 天 井 ( 高 さ 6m 以 上 平 面 積 200m 2 以 上 )に 対 し 耐 震 補 強 以 外 の 地 震 対 策 の 選 択 肢 として 適 用 してもよいと 建 築 基 準 法 施 行 令 に 定 められている 天 井 の 脱 落 を 防 止 する 措 置 を 想 定 し ワイヤとネットで 脱 落 した 天 井 を 受 け 止 めることが 出 来 るフェイルセーフ 機 能 を 設 置 しています( 図 1) フェイルセーフ 機 能 は 脱 落 した 天 井 を 確 実 に 受 け 止 めることが 期 待 されますが これが 機 能 するかについての 研 究 はまだ 不 十 分 で 有 り 今 回 の 実 験 でその 有 効 性 を 検 証 しました 今 回 の 実 験 では 脱 落 した 天 井 面 全 体 の 重 量 は 800mm 間 隔 で 設 置 したワイヤで 受 け 止 め 破 損 した 細 かい 金 物 類 は 30mm 間 隔 の 比 較 的 細 かいネットで 受 け 止 める 構 造 としています 図 1 フェイルセーフ 機 能 3. 実 験 結 果 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 (K-NET 仙 台 波 )の 加 振 による 再 現 実 験 により 今 回 の 天 井 は 表 2 にあ るような 被 害 を 受 けました 震 度 6 弱 の 1 回 目 の 揺 れ(50% 加 振 )により 天 井 を 支 える 接 合 金 物 がはずれ 天 井 面 が 大 きくたわみました 天 井 は 大 破 した 状 態 であり いつ 脱 落 してもおかし くない 状 態 まで 損 傷 いたしました 続 いて 余 震 を 想 定 した 震 度 6 弱 の 2 回 目 の 揺 れ(50% 加 振 )が 加 わることにより 大 きくたわ んだ 天 井 が 揺 れによって 大 きく 振 動 し 耐 えられなくなった 天 井 面 が 脱 落 しました 中 央 の 天 井 が 脱 落 し 始 めたことにより 全 体 の 1/5 程 度 にあたる 天 井 面 が 軽 量 鉄 骨 下 地 に 引 っ 張 られるよ うに 次 々と 脱 落 し 大 きな 被 害 を 及 ぼしました ( 図 2 図 3) この 振 動 実 験 により これまで 明 確 に 把 握 されていなかった 天 井 部 材 を 接 合 する 金 物 が 外 れ 脱 落 していく 大 規 模 吊 り 天 井 の 天 井 裏 の 動 きと 天 井 脱 落 の 様 子 を 世 界 で 初 めてカメラに 収 める ことが 出 来 ました この 映 像 は 天 井 がなぜ どのようにして 脱 落 していくか そのメカニズム 解 明 のための 重 要 なデータとなります また 本 実 験 で 導 入 したフェイルセーフ 機 能 は 脱 落 した 天 井 面 および 破 損 した 金 物 を 下 にま 8
で 落 下 させることなくきちんと 受 け 止 めました( 図 4) このフェイルセーフ 機 能 により 少 な くとも 人 的 被 害 は 抑 えられたと 考 えられ 未 対 策 天 井 の 脱 落 対 策 に 対 する 応 急 措 置 としては 十 分 な 性 能 があることが 確 認 できました 表 2 実 験 による 天 井 の 損 傷 まとめ 入 力 地 震 天 井 面 の 揺 れの 強 さ ( 加 速 度 計 測 定 値 ) 天 井 の 応 答 ( 動 き)と 損 傷 K-NET 仙 台 波 25% ( 震 度 5 強 ) 0.93G 接 合 金 物 がずれる 等 軽 微 な 損 傷 のみ K-NET 仙 台 波 50% ( 震 度 6 弱 ) 5.80G 接 合 金 物 が 外 れ 天 井 面 が 大 きくたわむ 脱 落 寸 前 であり 天 井 は 大 破 した K-NET 仙 台 波 50% ( 震 度 6 弱 ) 7.15G たわんだ 天 井 面 が 大 きく 揺 すられ 激 し い 音 とともに 天 井 面 が 脱 落 した 脱 落 し た 天 井 は 全 体 の1/5 程 度 であった Gは 加 速 度 の 単 位 1Gで 自 分 自 身 の 重 さと 同 じ 地 震 力 を 受 けたことに 相 当 する 金 物 の 外 れ 天 井 面 の 脱 落 の 影 響 により 天 井 全 体 が 大 きく 揺 れたため 50% 加 振 では 加 速 度 の 値 が 大 きくなっている 震 度 6 弱 1 回 目 図 2 実 験 中 の 天 井 裏 の 様 子 震 度 6 弱 2 回 目 図 3 実 験 後 の 状 況 ( 左 : 天 井 裏 より 右 : 外 れた 金 具 ) 図 4 有 効 に 機 能 したフェイルセーフ 機 能 9
4. 今 後 のスケジュール 今 回 の 実 験 により 得 られたデータを 詳 細 に 分 析 し 建 物 の 揺 れと 天 井 の 動 きの 相 関 関 係 を 明 ら かにするとともに 天 井 が 地 震 による 激 しい 揺 れでどう 脱 落 に 至 るのか そのメカニズムを 解 明 し 報 告 書 でまとめる 予 定 です また 平 成 26 年 2 月 27 日 28 日 には 平 成 26 年 4 月 より 施 行 予 定 の 新 基 準 に 準 拠 した 耐 震 天 井 の 実 験 を 計 画 しています(P.6 参 考 資 料 ) この 新 しい 基 準 は 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 に 設 置 された 建 築 構 造 基 準 検 討 委 員 会 における 技 術 的 検 討 に 基 づき 取 りまとめられた 建 築 物 にお ける 天 井 脱 落 対 策 試 案 をベースとして パブリックコメントにより 寄 せられた 意 見 やその 後 の 調 査 研 究 による 追 加 の 技 術 的 検 討 も 踏 まえて 平 成 25 年 7 月 12 日 に 公 布 された 建 築 基 準 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 する 政 令 ( 平 成 25 年 政 令 第 217 号 )および 建 築 基 準 法 施 行 規 則 および 建 築 基 準 法 に 基 づく 指 定 資 格 検 定 機 関 等 に 関 する 省 令 の 一 部 を 改 正 する 省 令 ( 平 成 25 年 国 土 交 通 省 令 第 61 号 )と 同 年 8 月 5 日 に 公 布 された 天 井 脱 落 対 策 に 係 る 一 連 の 技 術 基 準 告 示 によるもので 6m 超 の 高 さにある 水 平 投 影 面 積 200m 2 超 単 位 面 積 質 量 2kg/m 2 超 の 吊 り 天 井 で 人 が 日 常 利 用 する 場 所 に 設 置 されているもの を 脱 落 によって 重 大 な 危 害 を 生 ずる 恐 れがある 天 井 ( 特 定 天 井 と 略 称 される)と 定 義 して 適 切 な 脱 落 対 策 を 取 ることを 求 めています この 基 準 に 基 づいて 2 月 に 実 施 を 予 定 している 実 験 の 天 井 では 各 部 材 を 接 合 する 金 物 をよ り 強 固 な 物 に 入 れ 替 えるとともに 揺 れを 抑 える 斜 め 部 材 (ブレース)を 多 数 配 置 して 天 井 全 体 の 強 度 を 大 きく 向 上 させ 地 震 による 脱 落 被 害 に 対 する 対 策 を 施 したものです( 図 5) また 天 井 周 囲 には 壁 や 柱 との 間 に 隙 間 (クリアランス)を 設 け 揺 れにより 天 井 が 周 囲 の 壁 等 に 衝 突 することがないように 設 計 されています 吊 り 天 井 に 対 する 耐 震 対 策 として 有 効 であると 考 えら れているこれらのブレースやクリアランスが 天 井 の 応 答 にどう 影 響 を 及 ぼすのかを 評 価 します さらに 耐 震 天 井 が 設 計 で 想 定 している 以 上 の 揺 れを 受 けた 場 合 に どこまでの 揺 れに 耐 え ど う 壊 れるかを 明 らかにし 耐 震 天 井 の 耐 震 余 裕 度 の 検 証 を 行 う 予 定 です 2 月 27 日 28 日 の 実 験 については 別 途 お 問 い 合 わせください 図 5 天 井 試 験 体 の 模 型 ( 上 : 未 対 策 天 井 左 :JIS 規 格 材 を 中 心 とした 主 たる 部 材 とした 耐 震 天 井 (1.1G 耐 震 天 井 ) 右 :JIS 規 格 材 より 高 強 度 の 部 材 で 構 成 した 耐 震 天 井 (2.2G 耐 震 天 井 )) 10
天 井 の 仕 様 参 考 資 料 1 項 目 仕 様 未 対 策 天 井 1.1G 耐 震 天 井 2.2G 耐 震 天 井 加 振 実 験 日 H26.1.27~28 H26.2.27~28 試 験 体 の 考 え 方 耐 震 基 準 設 計 地 震 力 地 震 に 対 する 対 策 のない 天 井 ( 過 去 の 脱 落 被 害 再 現 のため 既 存 の 天 井 を 模 擬 ) なし 地 震 による 揺 れ が 設 計 想 定 外 JIS 規 格 材 を 主 たる 部 材 とした 耐 震 天 井 ( 耐 震 設 計 の 妥 当 性 と 耐 震 余 裕 度 の 検 証 ) H26.4 施 行 予 定 の 新 耐 震 基 準 (2 階 建 て 建 物 の 1 階 部 分 に 相 当 する 地 震 力 を 想 定 ) 天 井 に 作 用 する 慣 性 力 が 1.1G (K-NET 仙 台 波 25% 相 当 ) 吊 りボルト 3/8'' 吊 りボルト(3 分 ) 吊 り 長 さ 1500mm JIS 規 格 材 よりも 高 強 度 な 部 材 で 構 成 した 耐 震 天 井 ( 耐 震 余 裕 度 の 検 証 ) H26.4 施 行 予 定 の 新 耐 震 基 準 ( 基 準 で 想 定 されて いる 最 大 地 震 力 ) 天 井 に 作 用 する 慣 性 力 が 2.2G (K-NET 仙 台 波 50% 相 当 ) 吊 り 間 隔 1147 1000mm 860 1000mm 860 1000mm 野 縁 受 け ハンガー シングル 野 縁 ダブル 野 縁 シングル クリップ ダブル クリップ ブレース 野 縁 受 け 19 型 (38 12 1.2)@1000mm JIS ハンガー 加 工 品 ( 勾 配 天 井 用 JIS 規 格 同 等 品 ) シングル 野 縁 19 型 (25 19 0.5)@364mm ダブル 野 縁 19 型 (50 19 0.5)@1820mm シングル 野 縁 19 型 用 クリップ ダブル 野 縁 19 型 用 クリップ なし 野 縁 受 け 19 型 (38 12 1.2)@1000mm ビス 付 耐 震 フリーハン ガー( 野 縁 受 け 19 型 用 ) シングル 野 縁 19 型 (25 19 0.5)@303mm ダブル 野 縁 19 型 (50 19 0.5)@910mm 耐 風 圧 クリップ S ブレース 近 傍 のみ ビス 付 き 耐 震 クリップ S 耐 風 圧 クリップ W ブレース 近 傍 のみ ビス 付 き 耐 震 クリップ W [-40 20 1.6 4 本 @27 組 =108 本 クリアランス なし 60mm 以 上 天 井 仕 上 げ 材 石 こうボード 9.5mm + 岩 綿 吸 音 板 9mm [-40 20 1.6 @1000mm ビス 付 耐 風 圧 フリー ハンガー ([-40 用 ) ダブル 野 縁 25 型 (50 25 0.8)@303mm 耐 風 圧 Wクリップ ([-40 用 ) ブレース 近 傍 のみ 補 強 ピース+ビス 固 定 C-50 25 10 1.6 4 本 @30 組 =120 本 天 井 質 量 13.1kg/m 2 13.8kg/m 2 16.0kg/m 2 耐 震 天 井 に 使 用 する 金 具 の 一 部 に 耐 風 圧 設 計 が 必 要 な 天 井 ( 大 きな 風 荷 重 が 作 用 する 天 井 ) 用 の 金 具 を 使 用 していますが これらの 金 具 は 別 途 試 験 により 耐 震 天 井 に 使 用 できることを 確 認 し ています 11