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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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佐渡市都市計画区域の見直し

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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定款  変更

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

PowerPoint プレゼンテーション

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

18 国立高等専門学校機構

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

Taro-条文.jtd

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や


表紙

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●電力自由化推進法案

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便


は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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第4回税制調査会 総4-1

Ⅰ 平成14年度の状況

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

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不 利 益 処 分 に 係 る 法 令 名 漁 港 漁 場 整 備 法 第 39 条 の2 第 1 項 工 作 物 建 造 許 可 等 の 取 消 無 許 可 行 為 の 中 止 復 旧 命 令 等 法 令 の 定 め 第 39 条 の2 第 1 項 漁 港 管 理 者 は 次 の 各 号 のいずれ

01.活性化計画(上大久保)

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

大 阪 福 岡 鹿 児 島 前 頁 からの 続 き 35

press

Ⅱ 点 検 項 目. 費 用 対 効 果 分 析 の 算 定 基 礎 となった 要 因 の 変 化 直 前 の 評 価 今 回 の 評 価 総 費 用 ( ) 総 便 益 ( ),8,7,99,7,8,,0,9 別 紙 費 用 対 効 果 分 析 集 計 表 の とおり 費 用 便 益 費 (B/C

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

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第 40 回 中 央 近 代 化 基 金 補 完 融 資 推 薦 申 込 み 公 募 要 綱 1 公 募 推 薦 総 枠 30 億 円 一 般 物 流 効 率 化 促 進 中 小 企 業 高 度 化 資 金 貸 付 対 象 事 業 の 合 計 枠 2 公 募 期 間 平 成 28 年 6 月 20

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

波佐見町の給与・定員管理等について

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

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公表表紙

平成21年9月29日

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有


6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

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弁護士報酬規定(抜粋)

1 平 成 27 年 度 土 地 評 価 の 概 要 について 1 固 定 資 産 税 の 評 価 替 えとは 地 価 等 の 変 動 に 伴 う 固 定 資 産 の 資 産 価 値 の 変 動 に 応 じ その 価 格 を 適 正 で 均 衡 のとれたものに 見 直 す 制 度 である 3 年 ご

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2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

スライド 1

「節電に対する生活者の行動・意識

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税金読本(8-5)特定口座と確定申告

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Microsoft Word - 目次.doc

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

答申第585号

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個人住民税徴収対策会議

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

16 日本学生支援機構

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

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●幼児教育振興法案

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Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

Ⅰ 平成14年度の状況

別紙3

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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

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(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

Transcription:

Ⅰ 調 査 課 題 名 沖 合 漁 場 整 備 における 水 産 資 源 の 培 養 及 び 増 養 殖 機 能 に 関 する 調 査 のうち 水 産 基 盤 整 備 におけるカツオ マグロ 等 の 増 殖 可 能 性 調 査 Ⅱ 調 査 実 施 機 関 及 び 担 当 者 財 団 法 人 漁 港 漁 場 漁 村 技 術 研 究 所 漁 場 と 海 業 研 究 室 伊 藤 靖 漁 場 と 海 業 研 究 室 三 浦 浩 Ⅲ 調 査 の 実 施 年 度 平 成 19 年 度 ~ 平 成 21 年 度 Ⅳ 緒 言 本 調 査 の 目 的 は 我 が 国 の 沖 合 漁 業 における 重 要 魚 種 であるカツオ マグロ 類 等 の 高 度 回 遊 性 魚 類 について 直 轄 漁 場 整 備 事 業 を 実 施 する 場 合 の 技 術 的 な 課 題 を 抽 出 し 想 定 される 増 殖 手 法 について 検 討 することである 具 体 的 には 1) 生 物 学 的 知 見 の 収 集 整 理 2) 高 度 回 遊 性 魚 類 の 漁 場 造 成 および 増 殖 効 果 を 目 的 に 整 備 された 魚 礁 などについての 知 見 を 収 集 整 理 し これをふまえ 増 殖 施 設 等 における 増 殖 手 法 の 改 善 に 資 する 基 礎 資 料 として 取 りまとめる Ⅴ 調 査 方 法 1 生 態 的 な 既 存 知 見 の 収 集 整 理 既 存 の 文 献 を 利 用 して カツオ マグロ 類 の 生 態 特 性 (1 分 布 域 2 成 熟 産 卵 3 成 長 4 食 性 5 生 活 回 遊 など)について 20 年 度 報 告 書 の 内 容 を 補 足 した 2 浮 魚 礁 周 辺 におけるカツオ マグロ 類 の 行 動 特 性 に 関 する 知 見 の 収 集 整 理 浮 魚 礁 を 利 用 した 漁 業 は カツオやマグロ 類 等 が 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 習 性 を 利 用 した 漁 法 である 従 って これら 魚 類 の 浮 魚 礁 周 辺 での 行 動 様 式 を 把 握 することは 漁 獲 効 率 の 向 上 につながるだけでなく 滞 留 期 間 や 餌 料 生 物 分 布 から 増 殖 効 果 の 推 定 に 加 え 施 設 の 設 置 においても 貴 重 な 資 料 となる そこで 既 存 資 料 および 関 係 機 関 へのヒアリン グ 調 査 によって カツオ マグロ 類 の 浮 魚 礁 への 滞 留 期 間 日 周 行 動 摂 餌 行 動 等 に 関 する 知 見 を 収 集 整 理 した 3 浮 魚 礁 を 利 用 する 漁 業 の 事 例 調 査 平 成 19 年 度 調 査 における 沖 縄 県 八 重 山 漁 協 の 曳 縄 漁 業 平 成 20 年 度 調 査 における 宮 崎 県 日 南 市 漁 協 および 外 浦 漁 協 のカツオ 一 本 釣 漁 業 高 知 県 土 佐 清 水 支 所 の 曳 縄 漁 業 佐 賀 支 所 のカツオ 一 本 釣 漁 業 に 加 え 鹿 児 島 県 枕 崎 漁 協 の 曳 縄 漁 業 を 営 む 漁 業 者 へのヒ アリング 調 査 を 実 施 し 浮 魚 礁 の 利 用 状 況 やその 利 用 上 の 課 題 について 把 握 するととも に 漁 業 活 動 を 通 じて 確 認 されるカツオ マグロ 類 の 浮 魚 礁 への 蝟 集 状 況 や 行 動 特 性 に ついての 新 たな 見 解 を 整 理 した 1

4 浮 魚 礁 の 効 果 の 把 握 浮 魚 礁 の 効 果 については 漁 業 の 生 産 活 動 に 関 する 効 果 と 漁 業 資 源 に 関 する 効 果 が 考 えられる 既 存 資 料 と 上 記 ヒアリング 調 査 の 結 果 から それぞれの 効 果 について 整 理 し た 5 浮 魚 礁 の 効 率 的 な 設 置 浮 魚 礁 は その 設 置 海 域 の 条 件 によって 魚 類 の 蝟 集 効 果 に 違 いがあることが 確 認 さ れている 魚 類 の 蝟 集 あるいは 漁 業 活 動 においてより 効 率 的 な 設 置 方 法 について 既 存 資 料 とヒアリング 調 査 結 果 より 設 置 位 置 設 置 水 深 設 置 間 隔 の 3 つの 条 件 からの 見 解 を 整 理 した Ⅵ 調 査 結 果 1 マグロ 類 の 生 態 的 知 見 の 整 理 と 浮 魚 礁 周 辺 における 行 動 特 性 1-1 マグロ 類 の 生 態 的 知 見 の 整 理 マグロ 類 はスズキ 目 サバ 亜 科 サバ 科 に 属 する 大 型 魚 で 肉 質 が 優 れており 経 済 的 価 値 が 極 めて 高 い 魚 種 の 一 つである 分 類 学 的 には クロマグロ メバチ キハダ ビン ナガ ミナミマグロ コシナガ タイセイヨウマグロの 7 種 に 分 類 され このうち ク ロマグロ メバチ キハダ ビンナガの 4 種 が 日 本 の 近 海 を 回 遊 する 以 下 に これら 4 種 について 現 在 把 握 されている 生 態 的 な 知 見 を 示 す (1) クロマグロ 1 分 布 これまで 太 平 洋 のクロマグロは 大 西 洋 に 分 布 するクロマグロの 地 理 的 亜 種 とされて きたが 近 年 の 研 究 からこれらを 別 の 種 として 扱 うことが 主 流 となっている 太 平 洋 ク ロマグロは 主 に 北 緯 20~40 度 の 温 帯 域 に 分 布 するが 一 部 熱 帯 域 や 南 半 球 でもその 分 布 が 確 認 されている 図 1 クロマグロ( 太 平 洋 )の 分 布 域 と 産 卵 域 資 料 :( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 2

2 成 熟 産 卵 成 熟 年 齢 は 従 来 5 歳 頃 と 考 えられていたが 近 年 の 組 織 学 的 観 察 から 3 歳 頃 には 8 割 程 度 が 成 熟 していることが 明 らかとなった 1) クロマグロの 主 な 産 卵 場 は 北 緯 30 以 南 伊 豆 諸 島 以 西 からフィリピン 近 海 に 至 る 範 囲 にほぼ 限 定 されている 2) 一 方 仔 魚 の 出 現 や 生 殖 腺 の 発 達 状 況 から 日 本 海 や 三 陸 沖 等 日 本 沿 岸 域 における 産 卵 の 可 能 性 も 報 告 されている 3) 産 卵 期 は 日 本 の 南 方 海 域 で 6~7 月 であるが 北 上 に 従 い 遅 くなり 日 本 沿 岸 域 ではこ れより 2 ヵ 月 前 後 遅 れる 4) 3 成 長 クロマグロは 初 期 の 成 長 こそキハダに 劣 るものの 寿 命 が 長 くかつ 高 齢 期 において も 高 い 成 長 度 を 維 持 することから 体 長 が 4m を 上 回 るものもある クロマグロの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 は 図 2 に 示 すとおりである 満 1 歳 で 体 長 ( 尾 叉 長 )は 50~60cm 2 歳 で 80~90cm にまで 成 長 する その 後 も 成 長 を 続 け 10 年 で 200cm 位 に 達 すると 考 え られているが 200cm 以 上 の 大 型 魚 については 年 齢 が 明 らかでない 近 年 耳 石 による 年 齢 査 定 の 調 査 が 進 められているが クロマグロの 寿 命 は 20 歳 以 上 と 推 定 されている 350 300 体 長 (cm) 体 重 (kg) 体 長 (cm) 体 重 (kg) 250 200 150 100 50-1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 体 長 (cm) 0.0 52.0 78.0 102.0 124.0 143.0 160.0 176.0 190.0 203.0 215.0 225.0 234.0 243.0 251.0 257.0 体 重 (kg) 0.0 2.8 9.9 19.0 33.0 52.0 73.0 97.0 123.0 149.0 176.0 203.0 229.0 255.0 280.0 304.0 1 田 中 (2006)の 研 究 による 図 2 クロマグロの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 資 料 : 平 成 19 年 度 国 際 漁 業 資 源 の 現 況 4 食 性 仔 稚 魚 は 日 中 にかいあし 類 や 枝 角 類 をよく 摂 餌 し 幼 魚 はカタクチイワシやスルメイ カを 摂 餌 している 成 魚 の 胃 袋 からは イカ 類 の 他 トビウオ 類 キントキダイ 類 カ ツオなど 魚 類 が 多 く 見 られる ただし 特 定 の 魚 種 を 選 択 的 に 捕 食 するのでなく その 海 域 に 多 い 生 物 を 機 会 的 に 捕 食 していると 考 えられている 5) 3

5 回 遊 太 平 洋 クロマグロの 回 遊 経 路 は 次 のとおりである 日 本 の 南 方 ~フィリピン 沖 あるいは 日 本 海 で 生 まれた 太 平 洋 クロマグロは 夏 季 に 日 本 沿 岸 を 北 上 し 冬 季 に 南 下 する 2~3 歳 魚 は 北 太 平 洋 を 主 な 分 布 域 とし 春 季 に 黒 潮 続 流 域 を 西 に 進 み 夏 季 に 三 陸 沖 を 北 上 秋 季 には 親 潮 前 線 に 沿 って 東 進 し 冬 季 に 日 付 変 更 線 付 近 の 黒 潮 続 流 域 に 向 かって 南 下 するといった 時 計 回 りの 回 遊 をすることがア ーカイバルタグ 調 査 により 明 らかとなった 6) しかし 日 付 変 更 線 付 近 まで 移 動 しない ものや 半 年 ~ 数 年 間 沿 岸 域 に 滞 在 し 続 けるものなど 回 遊 パターンには 個 体 差 も 確 認 されている また 太 平 洋 を 横 断 して 太 平 洋 東 部 に 渡 り 北 米 西 海 岸 に 数 年 間 滞 在 した 後 産 卵 のため 再 び 太 平 洋 を 渡 って 太 平 洋 西 部 に 回 帰 するものもいる (2) メバチ 1 分 布 メバチは 地 中 海 を 除 く 温 熱 帯 域 に 広 く 分 布 する 太 平 洋 では 北 緯 45 ~ 南 緯 40 に 至 る 全 域 に 分 布 するが 東 部 太 平 洋 の 方 が 分 布 密 度 が 高 い また メバチは マグロ 類 の 中 で 最 も 生 息 深 度 が 深 いことが 知 られている 7) 図 3 メバチの 分 布 域 と 産 卵 域 資 料 :( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 2 成 熟 産 卵 メバチは 満 3 歳 頃 から 一 部 のものが 成 熟 し 満 5 歳 で 全 てが 成 熟 する 成 熟 期 の 体 長 は 100~140cm である 稚 魚 の 分 布 から メバチの 産 卵 は 熱 帯 亜 熱 帯 域 の 水 温 24 以 上 の 海 域 でほぼ 周 年 行 われていると 考 えられている ただし 場 所 によって 産 卵 時 期 のピークが 異 なり 中 西 部 太 平 洋 では 赤 道 の 北 側 で 4~5 月 南 側 で 2~3 月 東 部 太 平 洋 では 赤 道 の 北 側 で 4~10 月 南 側 で 1~6 月 が 盛 期 である 産 卵 は 夜 間 ~ 深 夜 にかけて 行 われ 産 卵 期 に はほぼ 毎 日 産 卵 する 4

3 成 長 メバチの 年 齢 と 体 長 については 幾 つもの 研 究 報 告 があり 研 究 者 間 で 合 意 されたもの はない 須 田 久 米 の 成 長 モデルによると 満 1 歳 で 41.0cm 2 歳 で 73.4cm 3 歳 で 99.8cm と 成 長 が 早 く 10 歳 で 187.7cm に 達 する 近 年 研 究 が 進 められている 耳 石 を 用 いた 研 究 によると 成 長 率 には 大 きな 差 は 見 られないが 1 歳 児 の 体 長 は 約 60cm と 推 定 され こ れまでの 研 究 結 果 とほぼ 半 年 のずれがある 8) 寿 命 に 関 しては これまで 8~10 歳 と 考 えられていたが オーストラリアのサンゴ 海 で 15 歳 のメスと 12 歳 の 雄 が 捕 獲 されており 15 年 以 上 と 推 定 される 250 200 体 長 (cm) 体 重 (kg) 体 長 (cm) 体 重 (kg) 150 100 50-1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 体 長 (cm) 0.0 41.0 73.4 99.8 121.3 138.7 152.9 164.5 173.9 181.5 187.7 192.8 196.9 200.2 203.0 205.2 体 重 (kg) 0.0 1.8 9.5 23.2 40.8 60.2 79.9 98.7 116.0 131.4 144.8 156.5 166.4 174.6 181.8 187.6 1 年 齢 時 体 長 はSuda and Kume(1967)の 研 究 による 2 体 重 はNakamura and Uchiyama(1966)の 体 長 体 重 関 係 式 W(kg)=3.661 10-5 L(cm)2.90182 を 用 いている 図 4 メバチの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 資 料 : 平 成 19 年 度 国 際 漁 業 資 源 の 現 況 4 食 性 メバチの 餌 生 物 は 他 のマグロ 類 と 本 質 的 に 変 わらず 魚 類 甲 殻 類 イカ 類 が 主 体 で ある 餌 に 対 する 特 別 な 選 択 性 はないが 生 息 域 がやや 深 層 であるため ハダカエソや ミズウオ 等 中 深 海 性 の 魚 類 が 多 い また 昼 間 より 夜 間 に 積 極 的 に 索 餌 すると 考 えられ ている 5 回 遊 太 平 洋 東 部 の 赤 道 付 近 で 孵 化 した 仔 魚 は 北 太 平 洋 もしくは 南 太 平 洋 で 生 育 し 成 熟 すると 再 び 太 平 洋 東 部 の 赤 道 付 近 に 移 動 すると 考 えられている また 日 本 近 海 では 小 型 のメバチが 春 季 に 漁 獲 されることから 日 本 列 島 沿 いに 北 上 し その 後 東 方 海 域 に 移 動 し 北 太 平 洋 海 域 に 加 わる 魚 群 もあると 考 えられる しかし 標 識 放 流 の 結 果 からは 他 のまぐろ 類 ほど 明 瞭 な 回 遊 の 方 向 性 は 認 められていない なお 日 本 近 海 を 回 遊 する メバチは 流 木 に 付 く 木 付 き 群 が 多 く 瀬 付 き 群 は 小 笠 原 と 西 南 海 区 に サメ 付 き 群 は 5

東 北 海 区 にみられる (3) キハダ 1 分 布 キハダは メバチ 同 様 熱 帯 域 から 温 帯 域 にかけて 広 く 分 布 するが 適 水 温 が 低 いため メバチの 分 布 に 比 べて 南 北 方 向 にやや 狭 く 赤 道 を 中 心 に 南 北 25 の 範 囲 を 回 遊 する また 鉛 直 分 布 はメバチよりやや 浅 く 主 に 表 海 水 層 を 遊 泳 する 図 5 キハダの 分 布 域 と 産 卵 域 資 料 :( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 2 成 熟 産 卵 メバチは 生 後 満 3 年 頃 から 一 部 のものが 成 熟 し 満 5 年 で 全 てが 成 熟 する 太 平 洋 での 産 卵 場 は 30 N~35 S の 水 温 24~25 にわたる 海 域 で 行 われる 産 卵 期 は 海 域 によって 長 短 があり 水 温 が 高 く 餌 が 豊 富 な 海 域 では 産 卵 期 間 が 長 いと 推 定 され ている フィリピン 近 海 から 日 本 南 部 海 域 では 4~8 月 産 卵 の 北 限 にあたる 日 本 近 海 で は 6~7 月 と 推 定 される また 産 卵 は 夜 間 に 行 われ 産 卵 期 にはほぼ 毎 日 産 卵 すること が 判 明 している 3 成 長 キハダの 年 齢 と 成 長 の 関 係 については 藪 田 らほか 幾 つかの 報 告 がある 藪 田 らによる と 満 1 歳 で 53.4cm 2 歳 で 91.8cm 3 歳 で 119.4cm と 初 期 の 成 長 が 極 めて 早 い しか し 寿 命 は クロマグロやメバチに 比 べて 短 く 7~10 年 程 度 と 推 定 される 雄 は 雌 より 大 型 になると 考 えられ 体 長 が 120cm を 超 えると 雄 の 割 合 が 徐 々に 高 くな り 150cm 以 上 の 個 体 の 大 部 分 は 雄 である この 性 比 の 偏 りは 成 熟 に 伴 う 自 然 死 亡 率 の 差 によるとの 考 えが 主 流 である 6

250 200 体 長 (cm) 体 重 (kg) 体 長 (cm) 体 重 (kg) 150 100 50-1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 11 歳 12 歳 13 歳 14 歳 15 歳 体 長 (cm) 0.0 53.4 91.8 119.4 139.2 153.5 163.8 171.1 176.4 180.3 183.0 185.0 186.4 187.4 188.1 188.7 体 重 (kg) 0.0 2.9 14.9 33.3 53.1 71.6 87.2 99.6 109.3 116.9 122.3 126.4 129.3 131.4 133.0 134.2 1 年 齢 時 体 長 は 藪 田 ら(1960)の 研 究 による 2 体 重 はNakamura and Uchiyama(1966)による 体 長 体 重 関 係 より 推 定 図 6 キハダの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 資 料 : 平 成 19 年 度 国 際 漁 業 資 源 の 現 況 4 食 性 キハダの 主 な 餌 生 物 は 表 中 層 の 魚 類 甲 殻 類 イカ 類 でこれらを 無 作 為 に 摂 餌 してい る 餌 の 種 類 は 成 長 段 階 によって 異 なり 小 型 魚 ではイカ 類 を 最 も 多 く 食 べ 大 型 魚 に なると 魚 類 を 多 食 する 5 回 遊 日 本 近 海 の 島 や 礁 のまわりに 生 息 するキハダは 余 り 移 動 しない 薩 南 海 区 や 台 湾 沖 で はカツオやツムブリ シイラなどと 共 に 流 木 に 付 く またイルカ 類 に 付 くことも 多 い 回 遊 については 詳 しいことは 明 らかにされていないが 西 部 太 平 洋 の 若 齢 魚 は 成 長 する につれ 東 方 の 中 部 太 平 洋 に 移 動 するといわれている (4) ビンナガ 1 分 布 太 平 洋 のビンナガは 50 N~45 S まで 広 く 分 布 するが 赤 道 海 域 には 分 布 が 少 ない なお 北 太 平 洋 と 南 太 平 洋 では 系 群 が 異 なるとの 見 解 が 強 い 北 太 平 洋 のビンナガは 高 緯 度 域 において 渡 洋 回 遊 することが 標 識 放 流 調 査 によって 実 証 されている 7

図 7 ビンナガの 分 布 域 と 産 卵 域 資 料 :( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 2 成 熟 産 卵 ビンナガの 成 熟 年 齢 は 5 歳 以 上 と 考 えられている 性 比 は 海 域 や 年 により 変 化 するが 西 部 太 平 洋 においては 産 卵 期 には 7 割 が 雄 である また キハダ 同 様 体 長 が 大 きくな るに 伴 い 雄 の 割 合 が 高 くなる 仔 魚 の 分 布 から 判 断 して 北 太 平 洋 のビンナガは 周 年 産 卵 していると 推 定 される 3 成 長 ビンナガの 成 長 は 他 のマグロ 類 に 比 べて 遅 い 日 本 近 海 のビンナガは 満 1 歳 で 36cm 2 歳 で 51cm 3 歳 で 65cm に 成 長 する その 後 も 年 間 成 長 量 は 大 きくは 減 少 せず 10 歳 で 118cm となる 寿 命 は 16 歳 以 上 と 推 定 される 140 120 体 長 (cm) 体 重 (kg) 体 長 (cm) 体 重 (kg) 100 80 60 40 20-1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 8

0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 体 長 (cm) 0.0 36.0 51.0 65.0 76.0 86.0 94.0 101.0 108.0 113.0 118.0 体 重 (kg) 0.0 1.6 3.8 6.9 10.2 13.8 17.2 20.6 24.3 27.2 30.2 1 年 齢 と 体 長 の 関 係 は 須 田 (1966)の 研 究 結 果 による 2 体 重 はWatanabeら(2006)の 体 長 体 重 関 係 式 W(kg)=2.20 10-4 L(cm)2.48 を 用 いている 図 8 ビンナガの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 資 料 : 平 成 19 年 度 国 際 漁 業 資 源 の 現 況 4 食 性 メバチやキハダ 同 様 ビンナガも 魚 類 や 甲 殻 類 頭 足 類 を 無 選 択 に 摂 餌 している 東 北 近 海 のビンナガは 魚 類 ではカタクチイワシを 多 く 食 べている 摂 餌 は 夕 方 と 夜 間 に 行 われるようである 5 回 遊 北 太 平 洋 のビンナガは 東 西 に 大 きく 回 遊 する 満 2 歳 までは 北 米 沿 岸 を 回 遊 し 秋 季 以 降 西 方 沖 合 に 移 動 その 後 再 び 北 米 沿 岸 に 戻 る しかし 西 方 に 移 動 した 魚 群 の 一 部 は 北 西 太 平 洋 に 入 る 年 齢 と 共 に 北 米 から 日 本 海 側 に 移 動 する 魚 群 が 増 加 し 6 歳 魚 では 全 てが 日 本 側 に 移 動 する その 後 産 卵 のため 亜 熱 帯 海 域 に 南 下 する なお 日 本 の 東 北 海 区 のビンナガの 回 遊 群 はほとんどが 鳥 付 き 群 であり 流 木 やサメ クジラにつくものは 少 ない 9

1-2 浮 魚 礁 周 辺 におけるマグロ 類 の 行 動 特 性 (1) 滞 留 期 間 これまでの 調 査 結 果 より キハダやメバチはカツオに 比 べてパヤオへの 滞 在 期 間 が 長 く 移 動 性 が 低 いと 考 えられる 滞 留 期 間 は 概 ね 1~ 数 週 間 であるが 長 いもので 5 ヶ 月 程 度 滞 留 したという 報 告 もある また 観 測 点 の 流 速 と 滞 在 期 間 には 負 の 相 関 が 認 め られている 流 速 の 速 い 状 況 においては 滞 留 のためのエネルギー 消 費 を 回 避 するため 滞 留 期 間 が 短 くなることの 指 摘 がある 図 9 浮 魚 礁 周 辺 へのマグロ 類 の 滞 留 状 況 資 料 : 太 田 格 氏 提 供 (2) 日 周 行 動 ( 水 平 移 動 ) パヤオに 蝟 集 するキハダやメバチは 長 時 間 1つのパヤオに 滞 在 するのではなく 1 ~ 数 日 の 周 期 でパヤオから 離 れたり 別 のパヤオに 移 動 したりすることが 確 認 されてい る また 夕 方 から 日 没 頃 にかけて 一 定 時 間 パヤオから 離 れる 行 動 が 頻 繁 に 観 測 されて いる 9)10) 図 10 標 識 魚 (キハダ)の 音 波 受 信 状 況 資 料 :パヤオ 周 辺 でのマグロ 類 の 遊 泳 行 動 Ⅳ ( 鉛 直 移 動 ) キハダ メバチは 両 種 共 に 昼 間 は 水 深 300-500m 以 深 の 深 層 にまで 分 布 し 夜 間 浅 層 を 遊 泳 することが 確 認 されている マグロ 類 の 潜 水 深 度 の 制 限 は 絶 対 温 度 でなく 表 層 からの 相 対 的 な 温 度 変 化 (8 )によることが 報 告 されている 11)12) 10

図 11 浮 魚 礁 周 辺 でのキハダの 遊 泳 水 深 の 時 系 列 データ 資 料 :パヤオ 周 辺 でのマグロ 類 の 遊 泳 行 動 Ⅱ(2002) (3) 摂 餌 行 動 浮 魚 礁 周 辺 で 漁 獲 されるキハダに 空 胃 個 体 が 多 いことやカツオの 肥 満 度 が 低 いことが 報 告 されており 浮 魚 礁 周 辺 は 過 酷 な 餌 料 環 境 であることが 予 想 される そのため マ グロ 類 の 日 周 的 に 行 なわれる 一 定 時 間 以 上 の 浮 魚 礁 からの 離 れる 行 動 は 索 餌 行 動 に 伴 う 移 動 との 見 解 が 主 流 である また 昼 間 の 深 層 への 潜 行 行 動 についても DSL( 深 海 散 乱 層 ) の 分 布 と 一 致 していることから 深 層 での 摂 餌 行 動 の 可 能 性 が 示 唆 される なお こ うした 短 時 間 の 鉛 直 移 動 は 体 温 がある 程 度 低 下 した 時 起 こっていることから 低 水 温 層 への 適 応 のための 体 温 調 整 行 動 との 見 解 もある 12)13) DSL とは 主 に 外 洋 域 の 中 深 層 からで 魚 群 探 知 機 に 顕 れる 層 状 の 映 像 である これは 1~10cm 程 度 の 魚 類 頭 足 類 甲 殻 類 等 マイクロネクトンの 群 集 が 魚 探 に 反 応 したもので マグロ 類 の 重 要 な 餌 であるとされる 図 12 浮 魚 礁 周 辺 でのキハダの 昼 間 の 鉛 直 移 動 資 料 :パヤオ 周 辺 でのマグロ 類 の 遊 泳 行 動 Ⅱ(2002) (4) 離 脱 行 動 浮 魚 礁 に 蝟 集 するキハダが 1~ 数 日 のスケールで 浮 魚 礁 から 離 れたり 別 の 浮 魚 礁 に 移 動 したりすることが 確 認 されている (5) 移 出 時 期 浮 魚 礁 からの 移 出 時 期 については 個 々の 移 出 と 非 生 物 的 環 境 要 因 ( 潮 流 水 温 台 風 など)との 関 係 は 認 められず また 同 時 期 に 複 数 個 体 が 移 出 する 状 況 も 確 認 できなかった ことから 物 理 的 環 境 要 因 よりも 個 体 の 内 的 要 因 による 影 響 が 強 いと 考 えられている 14) 11

2 カツオの 生 態 的 知 見 の 整 理 と 浮 魚 礁 周 辺 における 行 動 特 性 2-1 カツオの 生 物 学 的 知 見 の 整 理 (1) カツオ 1 分 布 カツオは1 種 のみでスズキ 目 サバ 科 カツオ 属 を 形 成 し 3 大 洋 全 ての 熱 帯 ~ 温 帯 水 域 ( 表 層 水 温 15 以 上 の 海 域 )に 広 く 分 布 している これら3 大 洋 の 系 群 は 別 系 群 と 考 えら れている 太 平 洋 における 分 布 域 は 西 側 では 45 N~40 S と 範 囲 が 広 いが 東 側 では 40 N~30 S とやや 狭 くなる 一 般 に 大 型 魚 ほど 南 北 方 向 の 分 布 域 は 狭 く 若 年 魚 ほど 広 くなるといわれる 日 本 近 海 は 分 布 の 縁 辺 域 にあたり 主 に 体 長 30cm 台 後 半 以 上 のも のが 北 海 道 以 南 の 太 平 洋 側 各 地 及 び 九 州 の 西 岸 に 来 遊 する カツオの 主 たる 産 卵 場 は 表 面 水 温 24 以 上 の 赤 道 を 挟 んだ 熱 帯 水 域 であるが 季 節 に よっては 伊 豆 諸 島 付 近 の 温 帯 水 域 でも 産 卵 が 行 われる 17) 図 13 カツオの 分 布 域 と 産 卵 域 資 料 :( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 2 成 熟 産 卵 カツオは 45cm 程 度 から 成 熟 するとされ 日 本 近 海 から 南 下 したものは 産 卵 に 関 与 する と 考 えられている 18) 産 卵 期 は 熱 帯 水 域 では 周 年 亜 熱 帯 水 域 では 春 から 初 秋 が 中 心 となる 日 本 近 海 で は 沖 縄 周 辺 更 には 伊 豆 諸 島 から 35 N 付 近 で 仔 魚 が 確 認 されており この 辺 りでも 産 卵 が 行 われていると 考 えられている 3 成 長 カツオの 成 長 については 耳 石 の 観 察 により 近 年 その 成 長 が 明 らかにされつつある カ ツオは 初 期 の 成 長 が 早 く 全 長 2.6mm 程 度 でふ 化 した 幼 魚 は1ヵ 月 に 40mm 以 上 成 長 する 生 後 満 1 歳 で 25.9cm 2 歳 で 48.8cm 3 歳 で 61.4cm に 達 すると 推 定 される はえ 縄 漁 業 等 で 80cm を 超 える 大 型 魚 が 漁 獲 されることがあり 最 大 100cm にも 達 するとされる 12

80 70 60 体 長 (cm) 体 重 (kg) 50 40 30 20 10 0 0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 0 歳 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 8 歳 9 歳 10 歳 体 長 (cm) 0.0 25.9 48.8 61.4 68.3 72.0 74.1 Yao,M.1981.Growth of Skipjack Tuna in the Western Pacific Ocean. 東 北 海 区 水 産 研 究 所 研 究 報 告,(43):71-82. 図 14 カツオの 年 齢 と 体 長 体 重 との 関 係 資 料 : 平 成 19 年 度 国 際 漁 業 資 源 の 現 況 4 食 性 稚 魚 期 の 主 要 な 餌 生 物 は 魚 類 仔 魚 であるが マグロ 類 と 比 べて 魚 食 性 は 弱 く 甲 殻 類 や 頭 足 類 も 捕 食 する 成 長 に 従 って 捕 食 する 魚 類 甲 殻 類 頭 足 類 のサイズは 大 型 化 す るが 餌 の 選 択 性 は 弱 く 海 域 の 餌 環 境 と 遊 泳 能 力 口 の 大 きさ 等 が 餌 生 物 を 規 定 して いると 考 えられている また カツオは 典 型 的 な 視 覚 捕 食 者 であり 仔 魚 成 魚 ともに 摂 餌 活 動 を 行 うのは 夜 明 け~ 日 没 までといわれる 5 回 遊 日 本 近 海 を 回 遊 するカツオは 幾 つかのルートで 夏 ~ 秋 に 常 磐 三 陸 の 沖 合 に 現 れる この 海 域 は 黒 潮 と 親 潮 が 交 錯 する 混 合 水 域 と 呼 ばれ カツオの 餌 が 豊 富 に 存 在 すること が 知 られている 最 も 回 遊 量 が 多 いのは 伊 豆 諸 島 沿 い 伊 豆 諸 島 東 沖 (145 E)を 北 上 す るルートで 7~8 月 に 常 磐 三 陸 沖 に 達 する 2つめは 黒 潮 沿 いに 北 上 するルート 4~5 月 に 沖 縄 諸 島 奄 美 諸 島 から 鹿 児 島 県 に 近 づき 四 国 沖 紀 伊 半 島 沖 を 経 由 し 5~6 月 に 遠 州 灘 伊 豆 諸 島 周 辺 に 達 する その 後 常 磐 三 陸 沖 に 北 上 する 魚 群 もあ る また 一 部 の 魚 群 は 黒 潮 から 分 岐 する 対 馬 暖 流 沿 いに 九 州 西 岸 五 島 付 近 に 達 する 3つめは 小 笠 原 諸 島 から 伊 豆 諸 島 を 北 上 するルートである このルートで 房 総 沖 にた どり 着 いた 魚 群 は その 後 紀 伊 半 島 沖 に 西 進 する 魚 群 と 常 磐 三 陸 沖 に 北 上 する 魚 群 に 分 かれる 三 陸 沖 に 北 上 した 魚 群 は9 月 頃 には 南 下 する 13

図 15 日 本 近 海 におけるカツオの 回 遊 ルート 14

2-2 浮 魚 礁 周 辺 におけるカツオの 行 動 特 性 浮 魚 礁 周 辺 に 滞 留 するカツオの 遊 泳 行 動 については ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 が 平 成 17 年 6 月 21 日 から 9 月 9 日 に 中 部 熱 帯 太 平 洋 において 人 工 筏 (FAD) を 使 用 して 実 施 された 調 査 において 明 らかにされている 同 調 査 で 使 用 された FAD(アルコ ス 社 製 SC-40)は 8 基 であり 同 年 5 月 25~6 月 5 日 にかけて 調 査 用 に 放 流 されたもので ある なお FAD は 浮 魚 礁 のようにロープ 等 で 海 底 のアンカーに 固 定 されてはおらず 漂 流 している また 調 査 魚 は 人 工 浮 魚 礁 周 辺 で 釣 り 曳 縄 操 業 にて 釣 獲 された 魚 が 用 いられている 図 16 調 査 の 航 路 図 (2005.6.21-9.9) 資 料 : 水 産 庁 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 平 成 17 年 度 照 洋 丸 第 1 次 調 査 航 海 報 告 書 (1) 滞 留 期 間 人 工 浮 魚 礁 へのカツオの 滞 留 期 間 はキハダやメバチに 比 べて 短 く 特 にキハダは 放 流 された 18 個 体 の 半 数 に 7 日 間 以 上 の 滞 留 が 確 認 されたが カツオは 最 長 で 6 日 間 余 り 放 流 された 14 個 体 のうち 3 日 以 上 滞 留 したものは 4 個 体 のみであった これら 4 個 体 の 体 長 は 38.6~64.0cm と 広 範 囲 にわたり 個 体 サイズと 滞 留 期 間 の 関 係 性 は 認 められない なお 同 追 跡 調 査 ではいったん 浮 魚 礁 から 離 れたカツオが 約 1 日 後 5 マイル 離 れた 後 に 浮 魚 礁 に 戻 る 状 況 が 確 認 されている 15

FAD8 :5 N 177 E 図 17 カツオ キハダ メバチの 浮 魚 礁 への 滞 留 期 間 の 比 較 (2005.8.10-25) 資 料 : 水 産 庁 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 平 成 17 年 度 照 洋 丸 第 1 次 調 査 航 海 報 告 書 16

(2) 遊 泳 水 深 ピンガー 装 着 による4 日 間 の 追 跡 調 査 から 人 工 浮 魚 礁 周 辺 にいる 間 は 概 ね 100m 以 浅 を 遊 泳 するが 人 工 浮 魚 礁 から 離 れると 遊 泳 水 深 は 100~150mとやや 深 くなっている ことが 確 認 された また 人 工 浮 魚 礁 周 辺 を 遊 泳 する 間 は 夜 間 は 昼 間 に 比 べて 浅 い 層 (50m 以 浅 )にいる 頻 度 が 高 い 傾 向 も 認 められている また 松 本 ら(2006) 19) による 個 体 識 別 可 能 な 超 音 波 発 信 機 を 用 いた 中 部 太 平 洋 熱 帯 域 での 人 工 浮 魚 礁 周 辺 に 形 成 されたカツオ キハダおよびメバチの 遊 泳 行 動 の 調 査 からも カツオがキハダやメバチに 比 べて 浅 い 水 深 を 遊 泳 する 様 子 が 観 察 されている FAD8 :5 N 177 E 図 18 浮 魚 礁 周 辺 海 域 でのカツオの 遊 泳 水 深 (2005.8.7-10) 資 料 : 水 産 庁 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 平 成 17 年 度 照 洋 丸 第 1 次 調 査 航 海 報 告 書 図 19 メモリータグによる 常 磐 沖 におけるカツオの 遊 泳 行 動 資 料 : 小 倉 未 基 (2002) 遠 洋 No.110 17

(3) 昼 夜 別 遊 泳 水 深 分 布 ピンガー 装 着 による 6 個 体 の 追 跡 調 査 から 昼 間 は 50~70mを 中 心 に 概 ね 100m 以 浅 に 滞 在 する 傾 向 が 確 認 されている 一 方 夜 間 は 水 深 範 囲 は 昼 間 とほぼ 同 様 であるが 平 均 的 な 遊 泳 水 深 は 個 体 差 はあるものの 昼 間 より 浅 く 100mを 超 える 水 深 への 分 布 割 合 は 非 常 に 低 い 結 果 が 示 されている こうした 昼 夜 による 遊 泳 水 深 の 違 いについては 松 本 ら(2006) 19) による 中 部 太 平 洋 熱 帯 域 の 人 工 浮 魚 礁 周 辺 でのカツオの 遊 泳 行 動 の 調 査 更 には 小 倉 (2002) 17) による 常 磐 三 陸 沖 でのカツオのメモリータグ 放 流 調 査 でも 確 認 されている FAD8 :5 N 177 E 図 20 浮 魚 礁 周 辺 海 域 でのカツオの 昼 夜 別 遊 泳 水 深 分 布 (2005.8.7~) 資 料 : 水 産 庁 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 遠 洋 水 産 研 究 所 平 成 17 年 度 照 洋 丸 第 1 次 調 査 航 海 報 告 書 18

図 21 カツオの 遊 泳 深 度 の 昼 夜 別 頻 度 分 布 3 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 魚 種 体 長 3-1 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 魚 種 西 海 区 水 産 研 究 所 では 石 垣 島 沖 合 の 大 型 浮 魚 礁 において 平 成 9 10 年 に 計 10 回 の 潜 水 調 査 を 実 施 し 大 型 浮 魚 礁 周 辺 の 魚 類 の 分 布 状 況 を 調 査 している 大 型 浮 魚 礁 周 辺 で 確 認 された 魚 種 は 20 種 であり これらの 分 布 様 式 は 下 表 に 示 すとおりであった キハダ カツオについては 大 型 浮 魚 礁 近 傍 ~ 周 辺 域 の 水 深 30m 付 近 に 分 布 しており また 同 時 に 実 施 された 釣 獲 調 査 からは 大 型 浮 魚 礁 から 150m の 範 囲 までその 分 布 が 広 がっているこ とが 確 認 されている また 仔 稚 魚 については 大 型 浮 魚 礁 周 辺 域 で 28 分 類 95 個 体 が 採 取 された キハダに ついては 全 長 4.9mm の 仔 魚 が 採 取 されており 浮 魚 礁 の 近 傍 で 産 卵 している 可 能 性 が 示 唆 された 15)16) Ⅰ 大 型 浮 魚 礁 近 傍 a 浮 体 ~ 人 工 海 底 b 浮 体 ~ 連 結 部 オヤヒ ッチャ ツハ メウオ ソウシハキ イシタ イ テンシ クイサク ミナミイスス ミ ノトイスス ミ ヒレナカ カンハ チ ウスハ ハキ クロヒラアシ c 連 結 部 ~ 水 深 30m メシ ロサ メ 科 フ リモト キ 7.6m 16.2m Ⅰ- a Ⅰ- b Ⅱ- a Ⅱ- b a 表 層 シイラ カマスサワラ Ⅱ 大 型 浮 魚 礁 近 傍 ~ 周 辺 b 表 層 ~ 連 結 部 クサヤモロ ツムフ リ アミモンカ ラ 30m Ⅰ- c Ⅱ- c c 表 層 から 水 深 30m キハタ カツオ クロカシ キ 図 22 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 魚 種 19

図 23 浮 魚 礁 周 辺 における 魚 類 の 分 布 資 料 : 西 海 区 水 産 研 究 所 石 垣 支 所 大 水 深 域 での 大 型 浮 魚 礁 集 群 機 構 の 解 明 と 効 率 的 利 用 法 の 研 究 3-2 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 魚 種 の 体 長 石 垣 島 沖 合 の 大 型 浮 魚 礁 に 蝟 集 する 魚 種 の 体 長 範 囲 は 表 1 のとおりであった 同 調 査 報 告 書 によると 97 年 10/9~98 年 5/22 の 4 回 の 調 査 で 確 認 されたイシダイは 1 尾 のみ で 同 一 個 体 としている したがって このイシダイは 浮 魚 礁 周 辺 に 約 7 ヶ 月 間 滞 留 し この 間 18cm から 25cm に 成 長 していることになる 表 1 浮 魚 礁 周 辺 における 魚 類 の 体 長 (cm) 調 査 年 月 日 1997 年 1998 年 魚 種 5/8 7/17 7/28 8/14 10/9 11/20 4/28 5/22 6/24 7/28 8/28 9/18 オヤビッチャ 10 12 10-12 8-13 8-13 12-13 10-13 4-10 6-13 5-12 5-12 5-10 ツバメウオ 25 25 25 10-20 20-25 25 30 15 20 30 ソウシハギ 40 30 40 イシダイ 18 20 25 25 テンジクイサキ 20-25 20-25 15-30 15-30 12-20 20 15-25 15-20 12-25 10-25 20-25 10-20 ミナミイスズミ 20-25 20-25 15-30 15-30 12-20 20 15-25 15-20 12-25 10-25 20-25 10-20 ノトイスズミ 20 20 20 15 ヒレナガカンパチ 20 20 25 25 20 25 ウスバハギ 20-30 30 30 20-25 25-30 25 クロヒラアジ 20 25 25 25 メジロザメ 科 120 ブリモドキ 40 25 25 シイラ 40 60-70 40-60 カマスサワラ 90 90 アミモンガラ 30 30 30-40 20-30 20-30 30-40 25-40 30 30-40 18-25 30-40 クサヤモロ 30-40 30 30 30-40 30 30 30-40 30-40 30-40 30 ツムブリ 30-50 30-50 20-70 20-60 20-50 25-40 30-40 30-40 30-60 15-30 20-60 25-50 キハダ 40-50 40-70 50-60 70 60-70 50-60 50-60 50-60 50-70 カツオ 40-50 40 30-40 50-60 クロカジキ 250 資 料 : 西 海 区 水 産 研 究 所 石 垣 支 所 大 水 深 域 での 大 型 浮 魚 礁 集 群 機 構 の 解 明 と 効 率 的 利 用 法 の 研 究 20

4 魚 類 の 感 覚 器 と 魚 礁 への 蝟 集 行 動 について キハダやカツオの 遊 泳 範 囲 については 目 視 観 察 や 試 験 操 業 バイオテレメトリーに よって 研 究 が 進 められているが 研 究 者 によっても 意 見 が 分 かれており 統 一 的 な 見 解 は 示 されていない 例 えば 超 音 波 発 信 器 を 用 いて 浮 魚 礁 周 辺 でのカツオの 遊 泳 行 動 を 調 査 した 矢 野 (2005) 25) は 浮 魚 礁 から 約 19~3,234mの 範 囲 をカツオが 遊 泳 し 400m 前 後 の 距 離 を 泳 いでいることが 最 も 多 かったと 報 告 している また Holland(1990) 26) は ハワイ 諸 島 のオアフ 島 近 海 に 設 置 された 浮 魚 礁 でバイオテレメトリーを 用 いた 研 究 によ り マグロ 類 は 日 中 浮 魚 礁 に 滞 留 し 夜 間 は 2.5~5km 離 れた 沿 岸 のドロップオフ 地 形 付 近 に 移 動 するといった 日 周 移 動 をすることを 明 らかにし 浮 魚 礁 が 魚 の 行 動 に 影 響 を 及 ぼす 範 囲 を 9~18km と 推 定 している このように 浮 魚 礁 がマグロ 類 やカツオに 及 ぼす 距 離 には 研 究 者 により 異 なった 見 解 が 示 されるものの 陸 上 に 比 べて 視 程 が 小 さい 海 中 に 存 在 する 浮 魚 礁 をかなり 遠 い 距 離 で 感 知 していると 考 えられる 一 般 に 魚 類 が 魚 礁 の 存 在 を 感 知 する 方 法 として 魚 礁 等 が 視 界 に 入 っていないとき には それから 発 生 する 振 動 やそこに 分 布 している 生 物 が 発 生 する 摂 餌 音 等 の 振 動 刺 激 分 布 している 生 物 を 起 源 とする 臭 い 刺 激 が 考 えられる 23) また 魚 礁 が 視 界 内 にある 時 には 視 覚 刺 激 魚 体 が 魚 礁 に 接 触 した 時 には 接 触 刺 激 の 受 容 がこれに 加 わる 23) このよ うに 魚 類 には 聴 覚 嗅 覚 味 覚 視 覚 触 覚 といった いわゆる 五 感 で 魚 礁 の 存 在 を 関 知 していると 思 われる 20,23) 魚 類 は 視 程 が 小 さい 水 中 で 行 動 するため 物 体 の 存 在 を 感 知 する 手 段 として 振 動 を 感 知 する 聴 覚 器 官 が 発 達 している 聴 覚 器 官 には うきぶくろ 内 耳 側 線 が 関 与 し 可 聴 域 は 魚 種 によって 異 なるが およそ 16~7,000Hz であり う きぶくろ> 内 耳 > 側 線 で 高 い 周 波 数 を 受 け 持 ち 300~1,000Hz の 内 耳 領 域 が 最 もよく 聞 こえる 22,23) また 嗅 覚 や 味 覚 は 水 中 に 溶 けた 臭 い 物 質 等 の 刺 激 を 受 容 するものであり 潮 上 側 には 届 かない 視 覚 は 水 中 視 程 距 離 に 左 右 されるが 最 大 でも 30m 程 度 21) である と 考 えられる 以 上 から 感 覚 器 の 受 容 範 囲 の 相 対 的 序 列 は 以 下 のとおりと 推 定 される 聴 覚 > 味 覚 嗅 覚 > 視 覚 > 触 覚 これらの 感 覚 器 によって 魚 礁 の 存 在 を 直 接 的 あるいは 間 接 的 に 感 知 し 蝟 集 すると 考 えられる 以 上 から 魚 類 は 種 それぞれが 持 っている 特 有 の 感 覚 器 官 によって 魚 礁 や 蝟 集 生 物 から 発 せられる 刺 激 を 感 知 して その 刺 激 をより 強 く 受 けるように 行 動 した 結 果 魚 礁 に 接 近 定 位 すると 推 察 される マグロ 類 やカツオ 等 の 浮 魚 類 の 魚 礁 における 日 中 の 分 布 様 式 は 主 として 魚 礁 から 離 れた 表 中 層 に 位 置 していることから 主 に 振 動 刺 激 流 れや 水 温 変 化 の 刺 激 に 反 応 して いるものと 考 えられる また 大 型 浮 魚 礁 では チェーン 等 がぶつかる 際 に 重 低 音 が 発 せられる これらの 低 周 波 音 は 遠 距 離 まで 届 くことから 浮 魚 礁 の 発 する 音 に 誘 引 され て 蝟 集 しているとも 考 えられる 24) 以 上 から マグロ 類 やカツオは 魚 礁 等 の 構 造 物 から 発 生 する 低 周 波 振 動 を 側 線 器 官 で 捉 えて 定 位 している 可 能 性 があるものと 推 測 される 21

5 浮 魚 礁 を 利 用 した 漁 業 の 実 態 5-1 沖 縄 県 のパヤオ 漁 業 (1) 石 垣 島 周 辺 の 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 石 垣 島 及 び 西 表 島 周 辺 には サワラ 用 浮 魚 礁 6 基 マグロ 用 浮 魚 礁 13 基 マグロ 用 大 型 浮 魚 礁 (ニライ)1 基 中 層 型 魚 礁 3 基 の 4 種 計 23 基 の 浮 魚 礁 が 設 置 されている こ のうち サワラ 用 浮 魚 礁 とマグロ 用 浮 魚 礁 の 19 基 は 八 重 山 漁 協 が 設 置 したものであるが マグロ 用 大 型 浮 魚 礁 と 中 層 型 魚 礁 は 沖 縄 県 により 設 置 されたものである 50~100m 7.6m 16m マグロ 用 浮 魚 礁 サワラ 用 浮 魚 礁 中 層 魚 礁 マグロ 用 大 型 浮 魚 礁 (ニライ) 図 24 沖 縄 県 石 垣 島 西 表 島 周 辺 の 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 (2) パヤオ 漁 業 の 操 業 スケジュール 八 重 山 漁 協 でパヤオ 漁 業 を 営 む 漁 業 者 は 約 60 名 であり 内 30 名 がこれを 専 業 とする 残 り 30 名 の 兼 業 者 の 多 くは 12~5 月 にソデイカの 旗 流 し 漁 業 を 営 む パヤオ 漁 業 者 の 年 間 操 業 スケジュールは 大 まかに 表 2 のとおりである なお 八 重 山 漁 協 では 資 源 管 理 のため パヤオ 漁 業 の 操 業 時 間 を 早 朝 4:00 から 昼 12:00 までの 約 8 時 間 に 自 主 規 制 している 22

表 2 八 重 山 漁 協 のパヤオ 漁 業 者 の 操 業 スケジュール 専 業 者 兼 業 者 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 パヤオ 漁 業 カツオ クロマク ロ キハタ シイラ 旗 流 し 漁 業 パヤオ 漁 業 ソテ イカ クロマク ロ キハタ シイラ (3) パヤオ 漁 業 による 漁 獲 物 パヤオ 漁 業 による 主 な 漁 獲 物 はカツオ キハダ シイラ ツムブリである この 他 クロカジキやクロマグロがまれに 漁 獲 される (4) 浮 魚 礁 の 利 用 状 況 八 重 山 漁 協 のパヤオ 漁 業 者 の 多 くは 操 業 時 間 の 8 割 以 上 を 浮 魚 礁 周 辺 で 過 ごす 1 つ の 浮 魚 礁 では 通 常 4~5 隻 程 度 が 操 業 するが 大 型 浮 魚 礁 は 魚 類 の 集 まりが 良 いことから ピークの 時 間 帯 には 10 数 ~20 隻 の 漁 船 が 集 まり 漁 場 は 混 雑 する 平 成 17 年 までは 石 垣 島 の 南 部 沖 合 海 域 にもう 1 基 大 型 浮 魚 礁 が 設 置 され 魚 類 の 蝟 集 が 良 く 漁 業 者 の 利 用 度 も 高 かったが 現 存 する 大 型 浮 魚 礁 は クリアランス 船 と 呼 ばれる 外 国 貿 易 船 の 航 路 上 に 設 置 されているため 漁 具 の 破 損 等 のトラブルが 頻 繁 に 発 生 することから 操 業 しにくいとの 声 がある また 漁 業 者 の 間 では 中 層 魚 礁 は 表 層 魚 礁 に 比 べて 魚 類 の 蝟 集 効 果 が 低 いとの 見 解 が 大 勢 を 占 め 表 層 魚 礁 に 比 べて 中 層 魚 礁 の 利 用 度 は 低 い 中 層 魚 礁 は 水 深 50~100m に 沈 んでいるため 肉 眼 で 確 認 できないことも 利 用 度 が 上 がらない 一 つの 要 因 である 浮 魚 礁 に 蝟 集 するマグロ 類 は 夜 間 は 浮 魚 礁 の 近 傍 表 層 域 に 集 まるが 夜 明 けととも に 水 深 150m あたりに 移 動 することが 経 験 的 に 知 られている また 大 型 魚 については 浮 魚 礁 から 潮 上 に 500m ほど 離 れた 海 域 に 移 動 するといわれ 大 物 狙 いの 漁 業 者 は 浮 魚 礁 か ら 一 定 距 離 離 れた 海 域 で 操 業 する (5) 浮 魚 礁 利 用 上 の 課 題 1 遊 漁 問 題 沖 縄 本 島 を 中 心 に 浮 魚 礁 の 利 用 において 漁 業 者 と 遊 漁 者 間 でのトラブルが 多 発 して いる 特 に 大 型 浮 魚 礁 は 遊 漁 者 の 利 用 度 が 高 くトラブルの 原 因 となるため 沖 縄 県 で は 遊 漁 者 の 多 い 沖 縄 本 島 では 今 後 は 中 層 魚 礁 を 増 設 していく 方 向 を 検 討 している 2 集 魚 灯 問 題 浮 魚 礁 周 辺 の 夜 間 操 業 においては 5kw 以 上 の 集 魚 灯 は 調 整 規 則 において 禁 止 されて いるが 十 分 に 守 られてはいないのが 実 情 である 夜 間 集 魚 灯 を 利 用 した 漁 業 を 行 った 場 合 翌 日 の 昼 間 は 漁 獲 が 極 端 に 低 下 するといわれる (6) 漁 業 現 場 からの 新 たな 見 解 1 浮 魚 礁 への 蝟 集 滞 留 効 果 の 向 上 大 型 耐 久 性 浮 魚 礁 の 周 辺 に 小 型 浮 魚 礁 を 設 置 することによって 大 小 両 型 の 浮 魚 礁 間 の 相 互 作 用 によってマグロ カツオ 類 の 蝟 集 効 果 が 高 まることが 経 験 的 に 知 られている ことから 漁 業 者 が 主 体 となり 大 型 浮 魚 礁 の 周 辺 への 小 型 浮 魚 礁 の 設 置 が 積 極 的 に 進 23

められている これまでの 調 査 から 浮 魚 礁 が 魚 の 行 動 に 影 響 を 及 ぼす 範 囲 は 半 径 9~18km にも 及 ぶ ことが 知 られているが 複 数 の 魚 礁 を 設 置 し 魚 礁 群 を 形 成 することで 回 遊 途 中 のマグ ロ カツオ 類 が 浮 魚 礁 に 遭 遇 する 機 会 が 拡 大 することから 蝟 集 効 果 が 高 まることが 推 測 される 2 浮 魚 礁 の 効 果 の 範 囲 について 石 垣 島 南 東 沖 海 上 に 設 置 されている 東 側 浮 魚 礁 群 で 行 われたコード 化 ピンガーによる キハダの 追 跡 調 査 では 1 基 の 浮 魚 礁 に 滞 留 するキハダの 遊 泳 範 囲 は 魚 礁 を 中 心 とした 半 径 1,500m 以 内 であることが 明 らかにされている 同 調 査 報 告 では 同 海 域 に 蝟 集 する キハダの 滞 留 中 数 日 に 1 回 沿 岸 部 に 移 動 し 摂 餌 活 動 を 行 った 後 再 び 浮 魚 礁 に 戻 っ てくるか 或 いは 別 の 海 域 に 移 動 していることが 示 されており 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 によ って 滞 留 期 間 が 長 期 化 する 可 能 性 が 考 えられる 5-2 宮 崎 県 のカツオ 一 本 釣 漁 業 (1) 宮 崎 県 の 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 宮 崎 県 の 沖 合 には 表 層 型 5 基 中 層 型 8 基 の 合 わせて 13 基 の 浮 魚 礁 が 設 置 されてい る( 図 25 参 照 ) 表 層 型 は 平 成 7 年 以 降 中 層 型 は 平 成 14 年 以 降 設 置 されたものである 場 所 緯 度 経 度 水 深 設 置 年 月 うみさち1 号 油 津 港 東 30km N 31 34 52 E 131 44 23 508 m H7 年 4 月 うみさち2 号 川 南 漁 港 東 37km N 32 09 50 E 131 56 45 900 m H9 年 2 月 うみさち3 号 細 島 東 37km N 32 25 10 E 132 04 50 825 m H10 年 3 月 うみさち4 号 戸 崎 鼻 東 33km N 31 45 37 E 131 50 09 679 m H15 年 うみさち5 号 都 井 岬 東 南 42km N 31 03 47 E 131 36 48 1,063m H17 年 3 月 図 25 宮 崎 県 沖 の 浮 魚 礁 の 設 置 位 置 24

(2) 漁 業 の 概 要 平 成 20 年 現 在 宮 崎 県 では 36 隻 のカツオ 一 本 釣 漁 船 が 操 業 している このうち 19 隻 はフィリピン 沖 で 操 業 する 遠 洋 カツオ 一 本 釣 漁 船 (120 トン 以 上 )であり 残 り 17 隻 が 浮 魚 礁 周 辺 で 操 業 を 行 う 沿 岸 近 海 カツオ 一 本 釣 漁 船 である 1 日 南 市 漁 協 のカツオ 一 本 釣 漁 業 日 南 市 漁 協 にはカツオ 一 本 釣 漁 船 が 11 隻 所 属 している 1 隻 あたりの 乗 組 員 は 20 人 程 度 で いずれの 船 も 5~6 人 の 外 国 人 研 修 生 ( 研 修 期 間 3 年 )を 乗 せている 平 均 年 齢 は 50~60 歳 代 である 船 齢 25 年 以 上 の 漁 船 が 多 く また 機 関 換 装 には 5,000~6,000 万 円 かかるため ほとんどの 漁 船 が 機 関 換 装 を 行 っていない 一 本 釣 漁 船 の 年 間 の 操 業 スケジュールは 表 3 のとおりである かつては 4~11 月 の 7 ヶ 月 間 操 業 し 冬 場 は 休 漁 していたが 近 年 は 不 漁 と 燃 油 高 による 収 益 の 低 下 から 操 業 は 周 年 化 している 日 南 市 漁 協 に 所 属 するカツオ 一 本 釣 漁 船 の 操 業 パタ-ンは 大 きく 2 つのタイプがある A タイプに 分 類 した 8 隻 は 奄 美 諸 島 周 辺 および 九 州 西 部 を 主 漁 場 とする 漁 船 である 1~ 5 月 までの 5 ヶ 月 間 奄 美 諸 島 沖 合 で 操 業 した 後 長 崎 県 沖 合 に 移 動 し 10 月 末 まで 操 業 す る その 後 地 元 に 戻 り 11~12 月 の 2 ヶ 月 間 を 宮 崎 県 沖 で 操 業 する B タイプに 分 類 した 3 隻 は 三 陸 沖 に 出 漁 する 漁 船 である 1~4 月 に 奄 美 諸 島 南 方 海 域 で 操 業 した 後 5 ~11 月 の 7 ヶ 月 間 房 総 沖 あるいは 三 陸 沖 に 移 動 する いずれも 年 間 の 航 海 数 は 70 回 程 度 で 操 業 日 数 は 200 日 を 超 える 冬 ~ 春 季 の 主 要 漁 場 である 奄 美 諸 島 南 方 海 域 までの 移 動 時 間 は 約 24 時 間 夜 明 け 頃 出 向 し 漁 場 に 到 着 後 浮 魚 礁 周 辺 に 餌 をまいて 操 業 を 開 始 する 釣 れなければ 移 動 する 操 業 の 終 了 時 間 は 特 に 決 まっておらず 漁 模 様 によって 判 断 される 1 回 の 航 海 日 数 は 長 くても 4 日 程 度 で 漁 模 様 がよい 時 には 1 日 で 終 了 する 基 本 的 に 水 揚 げは 自 港 で 行 われる 長 崎 県 沖 での 操 業 は 比 較 的 新 しい 男 女 群 島 の 西 側 の 海 域 にまき 網 船 が 放 棄 した 漁 網 があり これにカツオが 蝟 集 して 好 漁 場 を 形 成 していたようである 現 在 は この 漁 網 は 取 り 除 かれたため 鳥 付 き 群 ( なだいお と 呼 ばれる)を 探 しての 操 業 となる 長 崎 県 沖 までの 航 行 時 間 は 約 12 時 間 と 奄 美 諸 島 南 方 漁 場 に 比 べて 短 く 燃 料 費 が 節 約 でき る 利 点 があると 言 われる また 長 崎 県 沖 で 操 業 する 場 合 には 長 崎 港 に 水 揚 げされる のであるが 地 元 に 水 揚 げするよりも 魚 価 水 準 が 高 いことも 魅 力 である 表 3 日 南 市 漁 協 所 属 一 本 釣 漁 船 の 操 業 スケジュール Aタイプ (8 隻 ) Bタイプ (3 隻 ) 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 奄 美 諸 島 南 方 長 崎 県 沖 宮 崎 県 沖 奄 美 諸 島 南 方 房 総 沖 三 陸 沖 休 み 資 料 :ヒアリング 調 査 による 2 外 浦 漁 協 のカツオ 一 本 釣 漁 業 外 浦 漁 協 にはカツオ 一 本 釣 漁 船 が 9 隻 所 属 し うち 5 隻 が 浮 魚 礁 周 辺 で 操 業 する 乗 組 員 等 については 日 南 市 漁 協 と 概 ね 同 様 であるが 操 業 スケジュールには 若 干 の 違 いが みられる A タイプとした 漁 船 は 日 南 市 漁 協 の A タイプと 概 ね 同 様 であるが B タイプ 25

はかなり 広 い 範 囲 で 操 業 する 1~4 月 は 小 笠 原 沖 ~ 南 西 諸 島 で 操 業 した 後 カツオある いはビンチョウを 求 めて 房 総 沖 に 移 動 する その 後 金 華 山 沖 三 陸 東 方 海 域 にまで 北 上 する つまり B タイプは 浮 魚 礁 を 全 く 利 用 しない 漁 船 である ちなみに 年 間 漁 獲 金 額 は 九 州 沖 縄 海 域 で 周 年 操 業 する A タイプで 約 2 億 円 三 陸 沖 まで 出 漁 する B タ イプで 約 4 億 円 である ただし B タイプは 経 費 も 多 く 収 益 ではどちらが 多 いとはい えない 表 4 外 浦 漁 協 所 属 一 本 釣 漁 船 の 操 業 スケジュール 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 Aタイプ 奄 美 諸 島 南 方 長 崎 県 沖 奄 美 諸 島 南 方 休 み Bタイプ 小 笠 原 沖 ~ 南 西 諸 島 房 総 沖 カツオ ヒ ンチョウ 金 華 山 沖 三 陸 東 方 休 み 資 料 :ヒアリング 調 査 による (3) 浮 魚 礁 の 利 用 状 況 宮 崎 県 の 沖 合 に 設 置 されている 浮 魚 礁 は 主 に 5 トン 未 満 の 地 元 曳 縄 漁 船 5~6 隻 が 利 用 している 一 本 釣 漁 船 については 11~12 月 に 数 隻 が 利 用 する 程 度 である 浮 魚 礁 で 最 もカツオが 釣 れるのは 日 の 出 後 1 時 間 程 度 であるが 一 本 釣 漁 船 はこの 時 間 帯 に 浮 魚 礁 を 利 用 することは 許 可 されておらず このことが 一 本 釣 漁 船 の 低 い 利 用 度 の 一 因 とな っているようである 表 層 型 浮 魚 礁 については シイラまき 網 漁 船 も 利 用 するが 他 の 漁 業 船 が 操 業 していると まき 網 漁 船 は 操 業 が 許 可 されない また 他 県 船 も 入 漁 料 を 支 払 えば 3 隻 を 上 限 に 利 用 することを 認 めているが 近 年 は 県 外 船 によるこれら 浮 魚 礁 の 利 用 は 高 知 県 船 (19 トン 型 )1 隻 のみに 限 られている なお 宮 崎 県 水 産 試 験 場 の 調 査 報 告 によると 平 成 10 年 度 の 青 島 内 海 日 南 市 の 3 漁 協 に 所 属 する 曳 縄 漁 船 の 浮 魚 礁 における 漁 獲 量 は 235 トンであった これは 同 漁 船 の 総 漁 獲 量 の 65.8%を 占 める 値 であり 地 元 曳 縄 漁 船 においては 利 用 度 が 高 いことが 確 認 される 一 方 宮 崎 県 所 属 のカツオ 一 本 釣 漁 船 の 多 くが 利 用 する 奄 美 諸 島 周 辺 の 浮 魚 礁 につい ては 地 元 沖 縄 県 の 曳 縄 漁 船 (5~10 トン 型 )のほか 鹿 児 島 県 宮 崎 県 高 知 県 三 重 県 など 複 数 県 の 一 本 釣 漁 船 が 利 用 している (4) 浮 魚 礁 利 用 上 の 課 題 平 成 20 年 5 月 に 奄 美 諸 島 南 方 海 域 の 浮 魚 礁 に 関 係 する 主 要 3 県 ( 沖 縄 県 鹿 児 島 県 宮 崎 県 )で 浮 魚 礁 利 用 調 整 に 関 する 協 議 が 行 われ 沖 縄 県 より 鹿 児 島 県 および 宮 崎 県 所 属 船 の 奄 美 諸 島 南 方 海 域 における 浮 魚 礁 の 利 用 を 禁 止 する 考 えが 示 された 近 年 同 海 域 の 浮 魚 礁 の 数 が 減 少 し また 高 知 県 や 静 岡 県 所 属 船 (19 トン 型 )による 利 用 が 増 えたこと から 浮 魚 礁 周 辺 の 漁 場 が 混 雑 し 漁 場 の 取 り 合 いが 起 こっていることへの 対 応 である 一 方 同 海 域 は 従 来 宮 崎 県 所 属 漁 船 が 開 拓 した 漁 場 であり 同 船 団 が 自 費 で 浮 魚 礁 を 設 置 したこともあるなどから 既 得 権 を 主 張 する 意 見 もあり 利 用 の 調 整 は 困 難 を 極 め る 状 況 にある 26

(5) 漁 業 現 場 からの 見 解 1 浮 魚 礁 の 効 果 について 浮 魚 礁 が 設 置 される 以 前 は 鳥 付 き 群 を 探 しての 操 業 が 主 流 であり 魚 群 探 索 に 丸 1 日 船 を 動 かすこともあった しかし 浮 魚 礁 が 設 置 されたことで 曳 縄 漁 船 や 三 陸 沖 に 出 港 するグループを 除 く 大 半 の 一 本 釣 漁 船 は ほぼ 周 年 にわたり 浮 魚 礁 を 利 用 するこ とから 魚 群 探 索 のための 航 行 時 間 は 大 幅 に 削 減 され 燃 油 代 の 節 約 効 果 が 生 まれてい る また 浮 魚 礁 周 辺 で 操 業 する 場 合 船 団 内 で 各 船 の 水 揚 日 の 調 整 がなされている 従 来 の 漁 業 活 動 においては 操 業 海 区 にカツオの 群 れが 出 現 すると 漁 港 への 水 揚 が 集 中 し 魚 価 が 暴 落 する 事 態 がみられたが 水 揚 日 の 調 整 によりこうした 事 態 の 回 避 にもつ ながっているようである 2 魚 礁 周 辺 でのカツオの 行 動 特 性 について カツオ 一 本 釣 漁 業 の 場 合 餌 をまいて 魚 を 集 めることから 浮 魚 礁 の 効 果 範 囲 を 正 確 に 捉 えることはできないが 中 層 魚 礁 の 場 合 カツオの 群 れは 魚 礁 のほぼ 真 上 に 蝟 集 し ており 魚 礁 の 効 果 範 囲 は 100m 以 内 というのが 大 方 の 漁 業 者 の 意 見 であった 浮 魚 礁 周 辺 でのカツオの 摂 餌 行 動 については これを 把 握 する 材 料 に 乏 しい ただし 一 本 釣 漁 業 者 には 漁 獲 物 の 胃 内 容 物 には 餌 で 使 うイワシ 以 外 の 餌 生 物 はあまり 見 られ ないという 意 見 が 多 い なお 浮 魚 礁 の 周 辺 でカツオやマグロ 類 が 産 卵 している 様 子 はみられず 浮 魚 礁 を 産 卵 場 として 利 用 していることは 考 えづらい 3 表 層 型 と 中 層 型 の 効 果 の 違 い カツオ 一 本 釣 漁 業 の 場 合 各 漁 船 がソナーを 搭 載 しており 水 深 300m 位 までなら 魚 群 の 位 置 は 確 認 できるようである したがって 中 層 型 魚 礁 でも 表 層 型 魚 礁 に 匹 敵 する 効 果 があると 考 えられる また カツオに 限 れば 表 層 型 は 夏 場 の 蝟 集 が 少 ないが 中 層 型 は 周 年 蝟 集 しているとの 意 見 があり 中 層 型 がより 高 い 効 果 を 生 み 出 す 可 能 性 がある ただし 小 型 船 が 搭 載 する 魚 群 探 知 機 では 水 深 数 10m 以 深 に 設 置 された 中 層 型 浮 魚 礁 を 確 認 することはできない 4 浮 魚 礁 周 辺 における 魚 の 蝟 集 について 宮 崎 県 水 産 試 験 場 の 調 査 では 表 層 型 浮 魚 礁 では 表 層 ~ 水 深 160m 付 近 まで 魚 群 の 反 応 が 確 認 されている 中 でも 浮 魚 礁 のごく 周 辺 では 表 層 ~ 水 深 80m 付 近 まで やや 離 れた 4~8 マイル 付 近 では 表 層 ~60m 付 近 までに 魚 群 反 応 が 集 中 していた ただし この 水 深 はいずれもカツオやキハダの 遊 泳 水 深 ではあるが 魚 種 の 特 定 にまでは 至 っていない また 中 層 型 浮 魚 礁 では 礁 体 水 深 が 30~60m のものが 最 も 蝟 集 効 果 が 高 いようであ る 宮 崎 県 沖 には 礁 体 水 深 が 220m の 中 層 型 浮 魚 礁 もあるが カツオ メバチ キハダは ほとんどついておらず 利 用 度 は 低 い ただし 潮 の 流 れが 速 い 海 域 では 礁 体 は 100m 位 浮 き 沈 みする 礁 体 の 浮 き 沈 みが 小 さい 魚 礁 ほど 漁 獲 成 績 が 良 いようである 27

魚 礁 からの 距 離 (マイル) 0 40 水 深 (m) 80 120 160 図 26 うみさち 2 号 周 辺 での 定 点 観 測 における 魚 群 の 反 応 の 分 布 ( 平 成 9,10 年 ) 資 料 : 宮 崎 県 水 産 試 験 場 浮 魚 礁 の 漁 獲 効 果 5 その 他 浮 魚 礁 につくカツオは 鳥 に 付 くカツオに 比 べて 全 体 的 に 小 ぶりであり 型 も 不 揃 い であるといわれる また 奄 美 諸 島 の 東 側 に 設 置 された 浮 魚 礁 に 蝟 集 するカツオは 西 側 に 設 置 された 浮 魚 礁 に 蝟 集 するカツオに 比 べて 型 が 小 さいとの 意 見 がある 西 側 に 蝟 集 するカツオには 南 下 してきた 群 れが 混 じっているとも 考 えられる また 奄 美 諸 島 周 辺 に 大 量 の 浮 魚 礁 が 設 置 されたことにより カツオの 回 遊 が 変 化 し たとの 指 摘 がある 奄 美 諸 島 周 辺 の 浮 魚 礁 に 滞 留 したカツオは 以 前 は 数 週 間 程 度 滞 留 した 紀 伊 半 島 沖 を 1 週 間 程 度 で 通 過 し 房 総 沖 に 移 動 するようになったと 言 われる 28

5-3 高 知 県 の 曳 縄 漁 業 カツオ 一 本 釣 漁 業 (1) 高 知 県 の 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 平 成 19 年 4 月 現 在 高 知 県 の 沖 合 には 11 基 の 表 層 型 浮 魚 礁 土 佐 黒 潮 牧 場 ( 以 下 黒 牧 ブイという) が 設 置 されている 平 成 13 年 度 からは 中 層 型 浮 魚 礁 の 設 置 も 始 められ 5 ヵ 所 各 10 基 の 沿 岸 型 中 層 魚 礁 8 ヵ 所 各 4 基 の 沖 合 型 中 層 魚 礁 の 設 置 が 完 了 している ( 図 27) 設 置 場 所 緯 度 経 度 設 置 年 月 黒 牧 6 号 足 摺 岬 灯 台 真 方 位 88 25.0 海 里 N 32 44 2 E 133 31 0 H 4 年 2 月 黒 牧 8 号 興 津 崎 灯 台 真 方 位 109 14.0 海 里 N 33 04 8 E 133 29 0 H 7 年 2 月 黒 牧 9 号 足 摺 岬 灯 台 真 方 位 115 13.6 海 里 N 32 37 5 E 133 16 2 S62 年 3 月 黒 牧 10 号 室 戸 岬 灯 台 真 方 位 193 14.0 海 里 N 33 01 2 E 134 07 2 H 1 年 3 月 黒 牧 11 号 沖 の 島 灯 台 真 方 位 206 7.0 海 里 N 32 36 0 E 132 29 0 H 8 年 2 月 黒 牧 12 号 高 知 灯 台 真 方 位 174 22.8 海 里 N 33 07 2 E 133 37 2 S63 年 3 月 黒 牧 13 号 足 摺 岬 灯 台 真 方 位 201 22.1 海 里 N 32 22 8 E 132 51 7 H 2 年 2 月 黒 牧 14 号 室 戸 岬 灯 台 真 方 位 244 16.7 海 里 N 33 07 2 E 133 52 8 H10 年 3 月 黒 牧 15 号 室 戸 岬 灯 台 真 方 位 82 16.2 海 里 N 33 17 2 E 134 29 2 H10 年 12 月 黒 牧 16 号 室 戸 岬 灯 台 真 方 位 183 19.4 海 里 N 32 55 6 E 134 09 3 H 5 年 3 月 黒 牧 18 号 足 摺 岬 灯 台 真 方 位 147 17.1 海 里 N 32 29 1 E 133 12 1 H13 年 3 月 図 27 高 知 県 沖 の 浮 魚 礁 の 設 置 位 置 (2) 漁 業 の 概 要 1 高 知 県 漁 協 土 佐 清 水 支 所 の 曳 縄 漁 業 土 佐 清 水 支 所 の 曳 縄 漁 業 は サバやメジカ 等 を 狙 うたて 網 漁 業 との 兼 業 体 が 多 く 周 年 曳 縄 漁 業 を 営 む 漁 船 は 少 ない 曳 縄 漁 業 の 年 間 操 業 日 数 は 100~200 日 で 基 本 的 に 日 帰 操 業 である 23:00 頃 出 港 し 2:00 頃 から 操 業 を 開 始 する 昼 頃 に 操 業 を 終 了 して 帰 港 することが 多 いが 水 揚 が 少 ない 時 には 夕 方 まで 操 業 を 続 けることもある 土 佐 清 水 支 所 では 8:30~15:30 まで 1 時 間 ごとにセリが 行 われることから セリ 時 間 が 操 業 の 終 29

了 時 間 を 規 定 することはない 曳 縄 漁 業 の 着 業 者 は 60~70 歳 台 が 中 心 である 年 間 水 揚 金 額 は 約 200~600 万 円 であ り 燃 油 価 格 の 高 騰 により 所 得 は 減 少 している 現 状 の 所 得 水 準 では 後 継 者 の 獲 得 は 難 しい (トン ) 500 数 量 価 格 ( 円 /kg) 1000 400 800 300 600 200 400 100 200 0 H9 年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 図 28 土 佐 清 水 漁 港 のカツオ( 生 鮮 )の 水 揚 量 の 推 移 資 料 : 水 産 物 流 通 統 計 年 報 0 2 高 知 県 漁 協 佐 賀 支 所 のカツオ 一 本 釣 漁 業 佐 賀 支 所 にはカツオ 一 本 釣 漁 船 が 19 隻 在 籍 する このうち 奄 美 諸 島 周 辺 あるいは 高 知 県 沖 を 主 体 に 操 業 する 漁 船 (19 トン 型 )は 11 隻 であり 残 り 8 隻 は 小 笠 原 諸 島 周 辺 ~ 三 陸 沖 を 主 漁 場 とするいわゆる 大 型 船 である 大 型 船 については 黒 潮 ブイを 含 め 浮 魚 礁 を 利 用 するのは 3~4 隻 程 度 であり しかも 春 先 の 一 時 期 に 限 られる 19 トン 型 の 一 本 釣 漁 船 は かつては 4~6 月 頃 には 地 元 高 知 県 沖 で 操 業 していたが 近 年 は 屋 久 島 あるいは 奄 美 諸 島 周 辺 での 操 業 が 多 く 高 知 県 沖 での 操 業 は 12 月 頃 のわずか な 期 間 に 限 られている 1 航 海 は 2~3 日 で 年 間 約 90 航 海 したがって 年 間 操 業 日 数 は 約 200 日 である 屋 久 島 奄 美 諸 島 周 辺 で 操 業 する 場 合 漁 獲 物 は 基 本 的 に 鹿 児 島 港 あるいは 枕 崎 港 に 水 揚 げされるが 4~5 月 は 高 知 県 の 相 場 がよいため 地 元 に 水 揚 げす ることも 多 い 7~9 月 は 脂 ののりが 悪 く 加 工 用 として 枕 崎 港 に 水 揚 げされることが 多 い なお 佐 賀 支 所 にも 約 50 隻 の 曳 縄 漁 船 が 在 籍 するが 土 佐 清 水 支 所 同 様 他 漁 業 との 兼 業 が 大 半 を 占 める 7~8 月 にヨコワ シイラ 9 月 にイセエビを 狙 う 漁 船 が 多 い 30

(トン ) 2,500 数 量 価 格 ( 円 /kg) 1000 2,000 800 1,500 600 1,000 400 500 200 0 H9 年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 図 29 佐 賀 町 漁 港 のカツオ( 生 鮮 )の 水 揚 量 の 推 移 資 料 : 水 産 物 流 通 統 計 年 報 0 表 5 高 知 県 漁 協 佐 賀 支 所 所 属 一 本 釣 漁 船 (19 トン 型 )の 操 業 スケジュール 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 一 本 釣 奄 美 諸 島 高 知 休 漁 屋 久 島 周 辺 屋 久 島 周 辺 (19トン 型 ) 周 辺 県 沖 資 料 :ヒアリング 調 査 による (3) 浮 魚 礁 の 利 用 状 況 高 知 県 沖 に 設 置 される 浮 魚 礁 の 利 用 については ブイ 毎 の 利 用 度 の 違 いから その 年 間 水 揚 金 額 には 大 きな 格 差 がある 高 知 県 水 産 試 験 場 の 調 査 報 告 によると 13 号 ブイ(H2 ~14 年 は 5 号 )の 水 揚 金 額 が 飛 び 抜 けており 同 ブイだけで 年 間 約 174 百 万 円 もの 水 揚 がある 18 号 ブイがこれに 次 いで 多 く 約 109 百 万 円 水 揚 げされる これらはいずれも 足 摺 岬 南 方 沖 に 設 置 されたブイである この 他 のブイの 年 間 水 揚 金 額 は 概 ね 20~50 百 万 円 である これら 黒 牧 ブイを 利 用 する 漁 業 は 曳 縄 漁 業 とカツオ 一 本 釣 漁 業 である 曳 縄 漁 業 に ついては 土 佐 清 水 支 所 に 所 属 するほぼ 全 船 が 浮 魚 礁 を 利 用 している 浮 魚 礁 は 魚 群 に 遭 遇 する 確 率 が 高 いこと 燃 料 費 が 節 約 されること 等 のメリットがある 一 方 カツオ 一 本 釣 漁 業 については 近 年 カツオやマグロ 類 の 来 遊 が 減 っていることから 利 用 度 は やや 低 下 しているようである なお 高 知 県 所 属 船 以 外 に 県 外 船 にもその 利 用 を 認 め ているが 愛 媛 県 や 宮 崎 県 の 一 本 釣 漁 船 が 若 干 利 用 する 程 度 である 31

200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 ( 百 万 円 ) 6 号 8 号 9(2) 号 10(4) 号 11 号 12(3) 号 13(5) 号 14 号 15 号 16(7) 号 17 号 18 号 図 30 高 知 県 沖 に 設 置 される 黒 牧 ブイの 年 間 水 揚 金 額 (S61-H17 年 の 平 均 値 ) 資 料 : 高 知 県 水 産 試 験 場 表 層 型 及 び 中 層 型 浮 魚 礁 による 漁 場 造 成 技 術 研 究 また 中 層 型 魚 礁 については 黒 牧 ブイに 比 べて 利 用 度 は 低 いようである 高 知 県 の 沖 合 は 潮 の 流 れが 速 く 礁 体 水 深 が 大 きく 変 化 することが 一 因 であると 考 えられる 中 層 型 浮 魚 礁 は 礁 体 水 深 が 70cm 位 になるように 設 置 されているが 流 れが 速 い 時 には 水 深 200m 程 度 まで 沈 む この 水 深 では 魚 群 探 知 機 はいうに 及 ばず ソナーでもとらえること が 難 しいようである(これについては 宮 崎 県 での 調 査 結 果 と 異 なる) そもそも 曳 縄 漁 業 は 潜 行 板 を 使 って 水 深 20~40m で 疑 似 餌 を 泳 がせ これを 追 う 魚 を 採 る 漁 法 であり 水 深 100m 以 深 の 魚 を 釣 ることはできない 中 層 型 浮 魚 礁 の 中 では 沖 の 島 灯 台 の 南 方 沖 に 設 置 された 11 号 ブイの 利 用 度 が 高 く 漁 獲 量 も 多 いようである 比 較 的 潮 の 流 れが 遅 い 海 域 に 設 置 されていることをその 理 由 にあげる 漁 業 者 が 多 い 佐 賀 支 所 でも 浮 魚 礁 の 利 用 は 曳 縄 漁 船 が 中 心 であり カツオ 一 本 釣 漁 船 の 利 用 は 限 定 的 である 最 も 利 用 度 が 高 いのは 足 摺 岬 南 方 沖 に 設 置 されている 13 号 ブイである 漁 港 から 13 号 ブイまでは 航 行 時 間 が 約 4~5 時 間 と 近 くはないが いつでも 魚 が 付 いている と 漁 業 者 の 評 価 は 高 い どちらかというと 沖 合 に 設 置 されたブイ(6 号 11 号 18 号 )の 利 用 度 が 高 いようである ただし 9 号 ブイには 魚 が 蝟 集 しないといわれる 戻 りカツ オについては 特 定 のブイに 偏 って 蝟 集 をする 状 況 はなく 分 散 する 傾 向 がある また マグロ 類 はほぼ 1 日 中 釣 れるが カツオは 日 の 出 前 後 ( 朝 まづめと 呼 ばれる)に よく 釣 れるため 浮 魚 礁 周 辺 はこの 時 間 帯 は 一 本 釣 漁 船 との 競 争 になる なお 佐 賀 支 所 では 浮 魚 礁 の 位 置 が 漁 港 からやや 離 れているため 現 在 でも 沿 岸 域 で 魚 群 (なぶらと 呼 ばれる)を 探 して 操 業 する 曳 縄 漁 船 も 少 なくない (4) 浮 魚 礁 利 用 上 の 課 題 高 知 県 では 遊 漁 船 業 者 には 浮 魚 礁 に 利 用 を 基 本 的 に 認 めていない しかし 比 較 的 沿 岸 域 に 設 置 されている 8 号 や 11 号 の 黒 潮 ブイは 遊 漁 船 による 利 用 も 多 い 遊 漁 船 業 者 の 中 には 漁 協 の 組 合 員 でない 者 も 多 く 調 整 が 難 しい また 曳 縄 漁 船 とカツオ 一 本 釣 漁 船 とのトラブルもある カツオ 一 本 釣 漁 業 は 餌 をま いてカツオを 集 め 漁 獲 する 漁 業 である 黒 潮 ブイの 周 辺 に 餌 がまかれると カツオが これに 集 まり 漁 船 の 移 動 とともにカツオも 船 について 移 動 する ブイから 2~3 マイル 離 れたカツオは 再 び 元 のブイに 戻 ることは 少 なく せっかくブイに 蝟 集 したカツオがし 32

ばらく 姿 を 消 すこともある (5) 漁 業 現 場 からの 新 たな 見 解 1 流 速 と 操 業 との 関 係 について カツオ 一 本 釣 漁 業 の 場 合 餌 をまいてカツオを 集 めるが 流 速 が 3kt 以 上 の 場 合 には まいた 餌 がすぐに 潮 下 に 流 されてしまい 操 業 ができない また 流 速 が 極 端 に 小 さい 場 合 には 表 層 にシイラが 蝟 集 していることが 多 く これが 邪 魔 になってカツオが 捕 れな いことがある 2 浮 魚 礁 周 辺 でのカツオの 蝟 集 浮 魚 礁 周 辺 では 潮 上 数 100m 以 内 の 範 囲 にカツオが 蝟 集 していることが 多 い 潮 が 弱 い 時 には 2~3 マイルまで 行 動 範 囲 が 広 がる 水 深 20~30mを 遊 泳 するカツオが 最 もよく 釣 れ 50m 以 深 のカツオは 釣 れにくい また 早 朝 の 暗 いうちは 比 較 的 ブイに 近 いところを 遊 泳 するが この 時 間 帯 はあまり 餌 を 食 わない 明 るくなってくると 次 第 に 行 動 範 囲 を 潮 上 に 広 げ 餌 を 食 い 始 める 3 浮 魚 礁 周 辺 の 餌 環 境 浮 魚 礁 にイワシの 群 れが 蝟 集 する 光 景 が 確 認 されており 必 ずしも 餌 環 境 が 悪 いとは いえないとの 意 見 が 聞 かれた 4 ヨコワ カンパチの 稚 魚 の 蝟 集 について 比 較 的 沿 岸 域 に 設 置 された 8 号 ブイと 12 号 ブイでは 餌 釣 でヨコワが 獲 られている ま た 漁 業 者 の 間 では 水 深 100m 以 浅 の 沿 岸 域 に 設 置 された 簡 易 浮 魚 礁 に 近 年 ヨコワや カンパチの 稚 魚 が 蝟 集 していることが 知 られている これら 稚 魚 は 畜 養 向 けにマルハや ニチロに 販 売 され 漁 業 者 の 貴 重 な 収 入 源 となっているようである 5 春 季 のカツオ 来 遊 量 の 減 少 春 季 に 高 知 県 沖 を 通 過 するカツオが 減 少 しているといわれる これについては 東 南 アジアのまき 網 が 影 響 している あるいは 南 方 海 域 に 大 量 の 浮 魚 礁 が 投 入 されたことに より 回 遊 が 変 化 したなど 様 々な 見 解 がある 33

5-4 鹿 児 島 県 の 曳 縄 漁 業 (1) 鹿 児 島 県 の 浮 魚 礁 の 設 置 状 況 現 在 鹿 児 島 県 には 薩 摩 地 区 に 12 基 奄 美 地 区 に 29 基 ( 漁 協 等 が 独 自 で 設 置 したもの を 除 く)の 浮 魚 礁 が 設 置 されている 表 層 型 浮 魚 礁 は 9 基 で うち 3 基 は AK 表 層 型 と 呼 ばれる 浮 沈 式 魚 礁 である AK 型 浮 魚 礁 は 従 来 の 表 層 型 浮 魚 礁 に 比 べて 礁 体 ( 浮 体 部 )が 軽 量 化 耐 圧 化 されたことから 通 常 の 緩 やかな 潮 流 では 礁 体 は 海 面 に 位 置 するが 流 速 が 増 すにつれて 礁 体 は 徐 々に 海 中 に 引 き 込 まれ 2.5 ノット 付 近 で 礁 体 が 完 全 に 水 没 する 仕 組 みとなっている 浮 魚 礁 の 設 置 水 深 は 奄 美 地 区 が 約 1,000mであるのに 対 し 薩 摩 地 区 は 300~600mと 若 干 浅 い また 鹿 児 島 県 では 浮 魚 礁 の 設 置 数 には 制 限 を 設 けてい ないが 設 置 する 際 には 海 区 調 整 委 員 会 の 承 認 が 必 要 となる この 他 奄 美 地 区 には 漁 協 が 独 自 で 数 多 く 魚 礁 を 設 置 している 魚 礁 の 利 用 については 県 内 の 漁 業 者 のみに 承 認 を 与 えており 遊 漁 船 や 県 外 漁 業 者 は 基 本 的 に 魚 礁 を 利 用 することはできない 図 31 鹿 児 島 県 沖 の 浮 魚 礁 の 設 置 位 置 34

図 32 AK 表 層 浮 魚 礁 (2) 枕 崎 漁 協 の 曳 網 漁 業 の 概 要 浮 魚 礁 周 辺 での 操 業 については 操 業 を 希 望 する 漁 業 者 が 毎 年 県 に 申 請 する 必 要 があ る 申 請 は 薩 摩 地 区 と 奄 美 地 区 で 個 別 に 必 要 であるが 地 理 的 な 条 件 から 両 地 区 ともに 利 用 申 請 を 行 う 漁 業 者 はほとんどいない 以 下 では 薩 摩 地 区 に 設 置 されている 浮 魚 礁 の 主 たる 利 用 者 である 曳 縄 漁 業 について 枕 崎 市 漁 協 所 属 船 の 実 態 を 報 告 する 枕 崎 市 漁 協 には 現 在 約 40 隻 の 曳 網 漁 船 があるが うち 20~30 隻 が 浮 魚 礁 での 操 業 の 許 可 を 保 有 している 曳 網 漁 船 の 漁 船 規 模 は 4~7 トンで 1 人 操 業 が 主 体 である ほとん どの 漁 船 が 魚 群 探 知 機 を 装 備 するが ソナーを 装 備 する 漁 船 は 1 隻 のみである 多 くの 船 が 周 年 曳 網 漁 業 を 営 んでおり 年 間 操 業 日 数 は 100~120 日 である 浮 魚 礁 が 設 置 される 以 前 は 天 然 礁 もしくは 鳥 山 を 狙 って 魚 群 を 探 索 していたが 設 置 後 は 操 業 の 大 半 を 浮 魚 礁 周 辺 で 行 っている (3) 浮 魚 礁 の 利 用 状 況 薩 摩 地 区 には 10 基 の 中 層 型 浮 魚 礁 と 2 基 の 表 層 型 浮 魚 礁 が 設 置 されているが 中 層 型 の 利 用 度 は 低 く 2 基 の 表 層 型 にその 利 用 は 集 中 している 中 層 型 の 利 用 度 が 低 い 理 由 については 次 の 2 点 が 上 げられる 1つは 中 層 型 浮 魚 礁 が 魚 探 に 映 らないことである 同 地 区 で 操 業 する 曳 網 漁 船 は 4~7 トンと 漁 船 規 模 が 小 さく ソナーを 搭 載 する 船 はほとん どない そのため 魚 探 に 映 らない 中 層 型 浮 魚 礁 を 敬 遠 する 漁 業 者 が 多 いためと 考 えら れる 2つは 中 層 型 の 機 能 的 な 課 題 であるが 礁 体 水 深 の 変 化 による 魚 類 蝟 集 度 の 低 下 である 中 層 型 浮 魚 礁 は 潮 流 によっても 当 然 その 水 深 は 変 化 するが 基 本 的 には 礁 体 自 体 の 重 さとそれにかかる 浮 力 によって 水 深 位 置 が 定 まっている しかし 設 置 からの 時 35

間 経 過 と 共 に 礁 体 への 付 着 物 により 礁 体 重 量 が 増 し 礁 体 水 深 は 毎 年 深 くなっている と 漁 業 者 は 捉 えている 表 層 型 は 下 甑 と 黒 島 の 2 箇 所 に 設 置 されている 枕 崎 漁 港 からの 距 離 はそれぞれ 50 マ イル 33 マイルであり 下 甑 までは 片 道 約 4 時 間 黒 島 までは 2~2.5 時 間 の 移 動 時 間 を 要 す る かつては 下 甑 まで 向 かう 漁 船 も 数 隻 あったが 近 年 の 燃 油 高 騰 をうけ 長 距 離 移 動 は 経 済 的 な 負 担 が 大 きいことから 現 在 はほとんど 見 られなくなった なお 魚 礁 での 魚 の 蝟 集 が 少 ない 時 には 天 然 礁 で 操 業 することになる 鳥 山 を 捜 して 操 業 することはほとんどない (4) 浮 魚 礁 への 蝟 集 の 状 況 薩 摩 地 区 黒 島 に 設 置 されている 表 層 型 浮 魚 礁 へのカツオ マグロ 類 の 蝟 集 状 況 につい ては 表 6 に 示 すとおりである 3~5 月 にかけては 魚 のつきが 悪 く 6~2 月 が 浮 魚 礁 にお ける 盛 漁 期 である 魚 種 別 にはヨコワやキハダが 多 く カツオやメバチは 蝟 集 が 少 ない また 11 月 にサンマが 魚 礁 につくことがあるが その 時 にはヨコワやカツオの 蝟 集 も 多 いようである 蝟 集 範 囲 については 不 明 であるが 操 業 範 囲 としては ヨコワで 礁 体 から 150m カ ツオで 400m 以 内 である 基 本 的 に 礁 体 に 近 いほどよく 獲 れるが 夜 間 に 比 べて 昼 間 はや や 分 散 する 傾 向 にある また 魚 種 に 関 係 なく 魚 礁 の 潮 上 に 集 まる 傾 向 が 強 く 潮 下 では 極 端 に 釣 獲 が 低 下 する 潮 の 流 れと 魚 の 蝟 集 との 関 係 については 漁 業 者 の 経 験 上 潮 の 流 れが 東 向 きの 場 合 よりも 西 向 きの 場 合 の 方 が 浮 魚 礁 への 魚 の 蝟 集 はよいといわれている 表 6 表 層 型 浮 魚 礁 ( 黒 島 )におけるカツオ マグロ 類 の 月 別 蝟 集 状 況 魚 種 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 ヨコワ キハダ メバチ カツオ (5) 浮 魚 礁 の 課 題 1 利 用 の 集 中 薩 摩 地 区 では 10 基 の 中 層 型 浮 魚 礁 が 設 置 されているが これらの 利 用 度 は 低 く 漁 業 者 の 利 用 は 2 基 の 表 層 型 浮 魚 礁 に 集 中 する 状 況 にある しかも これら 2 基 についても 漁 業 者 が 選 択 的 に 利 用 できるということはなく 地 理 的 な 側 面 から 限 定 されているのが 実 態 である 利 用 者 間 では 魚 礁 の 周 りでは 右 回 りで 操 業 するといったルールをつくり 操 業 の 安 全 と 効 率 的 な 漁 獲 に 努 めているが 多 い 時 には 1 箇 所 に 10 隻 以 上 が 集 中 するこ ともあり 新 たな 表 層 型 浮 魚 礁 の 設 置 を 求 める 声 が 強 い 36

2 違 法 操 業 鹿 児 島 県 の 浮 魚 礁 の 利 用 については 設 置 者 である 県 の 許 可 が 必 要 であり 地 元 漁 船 に しかその 利 用 許 可 は 与 えられていない したがって 遊 漁 船 が 浮 魚 礁 を 利 用 することは ほとんどみられない しかし 県 外 船 については 監 視 の 届 きづらい 夜 間 を 狙 って 違 法 操 業 をしている 状 況 が 少 なからずみられる ルールを 持 たない 違 法 船 の 操 業 は 許 可 船 が 享 受 すべき 魚 礁 の 効 果 を 低 下 させ 許 可 船 の 経 営 にも 悪 影 響 を 及 ぼしているとの 意 見 も 聞 かれる (5) 漁 業 現 場 からの 新 たな 見 解 1 浮 魚 礁 の 設 置 水 深 と 魚 の 蝟 集 との 関 係 について 深 場 を 漂 流 する 天 然 の 流 木 にカツオが 付 いてる 状 況 を 漁 業 者 は 確 認 しているが 流 木 が 浅 場 ( 沿 岸 部 )に 移 動 するにつれてカツオはいなくなる こうした 経 験 から 浮 魚 礁 の 設 置 水 深 と 魚 の 蝟 集 には 強 い 関 係 性 があると 考 える 漁 業 者 も 多 く なるべく 深 い 水 深 に 浮 魚 礁 を 設 置 してほしいといった 要 望 が 聞 かれた 2 中 層 型 浮 魚 礁 の 設 置 について 薩 摩 地 区 の 場 合 表 層 型 浮 魚 礁 の 利 用 度 が 極 端 に 高 く 中 層 型 はほとんど 利 用 されて いない その 理 由 の 一 つは 設 置 位 置 の 特 定 が 困 難 である 点 にあった つまり 現 状 の 漁 船 設 備 で 設 置 場 所 が 特 定 できれば 利 用 度 が 上 がる 可 能 性 がある 漁 業 者 の 中 には 表 層 型 と 中 層 型 の 組 合 せで 魚 礁 群 を 作 ることで 設 置 場 所 の 特 定 が 容 易 になり 使 いやすくなると の 意 見 が 聞 かれた 但 し 中 層 型 浮 魚 礁 の 設 置 水 深 については 魚 の 蝟 集 状 況 に 関 係 な く ソナーを 搭 載 しない 現 状 の 漁 船 では 水 深 20m 位 が 限 界 であり これ 以 上 だと 利 用 度 は 期 待 できない 37

6 浮 魚 礁 の 効 果 の 把 握 6-1 漁 業 生 産 活 動 に 関 する 効 果 (1) 水 揚 量 の 増 大 浮 魚 礁 を 利 用 することによって 操 業 1 回 あたりの 漁 獲 量 が 増 大 する あるいは 削 減 された 魚 群 探 索 時 間 を 漁 獲 活 動 に 当 てられることなどから 水 揚 量 が 増 大 している 可 能 性 がある しかし 今 年 度 の 調 査 では 浮 魚 礁 の 利 用 によって 水 揚 量 が 増 大 したこと を 示 すデータを 得 ることはできなかった (2) 漁 業 経 費 の 削 減 浮 魚 礁 を 利 用 した 操 業 では 魚 群 探 索 の 作 業 が 大 幅 に 削 減 されるため この 作 業 に 要 する 燃 油 量 等 が 節 約 されることが 予 想 される 開 発 センターの 調 査 報 告 によると 南 西 諸 島 海 域 で 操 業 するカツオ 一 本 釣 漁 業 の 場 合 浮 魚 礁 への 依 存 度 が 約 37%の 漁 船 (タイプ A)は 同 依 存 度 が 約 10%の 漁 船 (タイプ B)に 比 べて 燃 油 費 や 餌 代 等 を 含 む 運 航 費 が 約 30% 節 約 されていることが 示 されている 表 7 カツオ 一 本 釣 漁 船 の 操 業 タイプ 別 年 間 収 支 の 比 較 ( 平 成 16 年 1~12 月 ) A B 南 西 諸 島 / 九 州 西 方 水 域 南 西 諸 島 / 九 州 西 方 本 州 南 ~ 東 方 水 域 6 隻 平 均 2 隻 平 均 総 漁 獲 量 619.7 トン 602.4 トン 中 層 型 浮 魚 礁 での 漁 獲 量 229.2 トン 58.4 トン 南 西 諸 島 九 州 西 方 水 域 での 漁 獲 量 390.5 トン 227.3 トン 本 州 南 ~ 東 方 水 域 での 漁 獲 量 0 トン 316.7 トン 中 層 型 浮 魚 礁 での 漁 獲 依 存 度 37.0 % 9.7 % 総 水 揚 金 額 172,310 千 円 162,361 千 円 中 層 型 浮 魚 礁 での 水 揚 金 額 63,183 千 円 14,053 千 円 南 西 諸 島 九 州 西 方 水 域 での 水 揚 金 額 109,293 千 円 46,613 千 円 本 州 南 ~ 東 方 水 域 での 水 揚 金 額 0 千 円 101,695 千 円 中 層 型 浮 魚 礁 での 水 揚 金 額 依 存 度 36.7 % 8.7 % 支 出 合 計 173,437 千 円 165,154 千 円 運 航 費 53,828 千 円 77,259 千 円 燃 油 費 21,854 千 円 34,826 千 円 餌 代 16,438 千 円 21,299 千 円 他 15,536 千 円 21,134 千 円 販 売 経 費 28,584 千 円 15,980 千 円 労 務 費 59,858 千 円 45,542 千 円 減 価 償 却 費 2,807 千 円 4,501 千 円 一 般 管 理 費 21,161 千 円 11,973 千 円 その 他 7,199 千 円 9,899 千 円 収 支 -1,127 千 円 -2,793 千 円 資 料 : 平 成 17 年 度 大 水 深 沖 合 漁 場 造 成 開 発 事 業 報 告 書 (3) 操 業 期 間 の 延 長 浮 魚 礁 の 設 置 により カツオやマグロ 類 がその 海 域 に 滞 留 する 期 間 が 長 くなることか ら 従 来 に 比 べて 操 業 期 間 が 延 長 される 地 域 がみられる 本 年 度 調 査 を 実 施 した 高 知 県 では 同 県 の 沖 合 に 浮 魚 礁 が 設 置 されるまでは 採 算 性 の 問 題 から 多 くの 曳 縄 漁 船 が 12 月 を 休 漁 期 にあてていた しかし 魚 礁 が 設 置 されて 以 降 操 業 あたりの 漁 業 経 費 が 節 約 されたこともあり 12 月 も 操 業 する 漁 船 が 増 えている 6-2 漁 業 資 源 に 関 する 効 果 (1) マグロ 類 の 資 源 に 関 する 効 果 38

1 餌 場 としての 効 果 浮 魚 礁 周 辺 で 漁 獲 されるキハダに 空 胃 個 体 が 多 いことから カツオ マグロ 類 が 浮 魚 礁 に 集 まる 餌 生 物 を 求 めて 蝟 集 するという 仮 説 には 否 定 的 な 報 告 が 多 い 一 方 で Schaefer Fuller(2005) 28) は マグロ 類 の 食 性 に 関 する 過 去 の 研 究 はその 標 本 の 多 くが 日 中 漁 獲 されたものであり 潜 在 的 な 偏 りがあることを 指 摘 している かれらの 調 査 報 告 では 浮 魚 礁 に 蝟 集 するマグロ 類 の 胃 内 容 物 について 夜 間 採 取 した 標 本 からは 主 に ヨコエソ 科 ハダカイワシ 科 頭 足 類 がみられた 一 方 日 中 採 取 した 標 本 は 空 胃 が 多 い ことが 示 されている これはマグロ 類 の 夜 間 の 索 餌 行 動 を 示 唆 するものであり 浮 魚 礁 周 辺 域 でのマグロ 類 の 索 餌 行 動 について 新 たな 事 実 が 生 まれる 可 能 性 を 与 えている また 高 知 県 の 曳 縄 漁 業 を 営 む 漁 業 者 から 高 知 県 の 沿 岸 部 に 設 置 した 小 型 浮 魚 礁 の 沈 子 ( 直 径 1.5m のコンクリート)に 小 魚 が 付 いているとの 報 告 があった この 魚 礁 ではヨ コゴやヨコワが 獲 れることから これらが 沈 子 に 付 く 小 魚 を 餌 としていることが 確 認 で きれば 浮 魚 礁 の 餌 場 としての 効 果 が 明 らかとなる さらに これよりやや 沖 合 に 設 置 される 8 号 ブイ 12 号 ブイ 14 号 ブイでは 近 年 ヨコワが 漁 獲 される これらは 7 月 ~ 翌 4 月 頃 と 比 較 的 長 い 期 間 ブイ 周 辺 に 蝟 集 しており 4 月 頃 には 3~4kg サイズまで 成 長 し ているといわれる 魚 礁 周 辺 でのヨコワの 行 動 を 調 査 することで 新 たな 見 解 が 生 まれ る 可 能 性 がある 2 産 卵 場 としての 効 果 昨 年 度 の 報 告 書 では 浮 魚 礁 周 辺 域 でキハダとクロカジキの 仔 魚 が 採 取 されたことか ら 浮 魚 礁 の 産 卵 場 効 果 についてはその 可 能 性 を 指 摘 したが その 他 の 研 究 報 告 今 回 のヒアリンク 調 査 では 肯 定 的 な 見 解 を 得 ることはできなかった 3 隠 れ 場 休 息 場 としての 効 果 マグロ 類 は 群 れをつくって 回 遊 することが 知 られているが こうした 行 動 は 自 身 の 生 残 率 を 向 上 させるためという 説 がある Dagorn L.(1999) 29) は 浮 魚 礁 がミーティングポイ ントとして 利 用 されていることを 指 摘 している (2) カツオの 資 源 に 関 する 効 果 1 餌 場 としての 効 果 昨 年 度 の 調 査 では 浮 魚 礁 に 集 まるカツオやマグロ 類 に 空 胃 体 が 多 いことから 浮 魚 礁 の 餌 場 効 果 については 否 定 的 な 見 解 が 多 いことを 報 告 したが 今 年 度 実 施 した 高 知 県 の 漁 業 者 へのヒアリング 調 査 では 黒 牧 ブイ(18 号 )の 周 辺 で 漁 獲 された 一 部 カツオの 胃 からはウルメイワシやイカ トビウオ 等 が 見 つかることがあるとの 報 告 があった ただ し 同 ブイの 北 西 海 域 はイワシの 漁 場 であり ここで 餌 を 食 ったカツオがブイに 移 動 し て 漁 獲 されたとの 考 え 方 もできる 2 産 卵 場 としての 効 果 カツオが 浮 魚 礁 を 産 卵 場 として 利 用 しているとの 報 告 はなく 当 効 果 については 期 待 できない 3 隠 れ 場 休 息 場 としての 効 果 マグロ 類 同 様 カツオについてもミーティングポイント 説 が 指 摘 されている 39

7 浮 魚 礁 の 効 果 的 な 設 置 浮 魚 礁 への 蝟 集 滞 留 効 果 の 向 上 については 開 発 センターが 実 施 した 浮 魚 礁 によ る 漁 場 造 成 事 業 に 効 果 的 な 設 置 方 法 が 報 告 されている 但 し 同 調 査 の 結 果 は 竿 釣 りによる 漁 獲 結 果 をもとに 分 析 したものであり 蝟 集 効 果 を 直 接 測 ったものではない 以 下 に 同 センターの 調 査 結 果 を 中 心 に 浮 魚 礁 の 効 果 的 な 設 置 位 置 設 置 水 深 設 置 間 隔 を 示 す 7-1 設 置 位 置 南 西 諸 島 西 側 水 域 で 東 西 に 等 間 隔 に 設 置 した 中 層 型 浮 魚 礁 の 操 業 1 回 あたりの 漁 獲 量 から 浮 魚 礁 の 設 置 位 置 と 魚 類 蝟 集 効 果 の 関 係 を 分 析 した 結 果 黒 潮 流 域 の 東 縁 付 近 か ら 流 域 東 外 側 に 設 置 した 浮 魚 礁 の 漁 獲 量 が 最 も 多 いことが 示 された また このことが 黒 潮 との 相 対 位 置 によるものか 流 速 の 違 いのみによるものかを 検 討 した 結 果 では 表 層 流 速 2kt 以 上 あるいは 0.5kt 以 下 の 時 には 漁 獲 量 が 少 なくなる 傾 向 が 認 められている しかし 流 速 と 漁 獲 量 の 関 係 は 流 向 によって 異 なっており 流 速 のみが 漁 獲 量 に 影 響 を 及 ぼすとはいえず 黒 潮 との 相 対 位 置 による 違 いが 影 響 してい る 可 能 性 が 高 い また 高 知 県 の 研 究 者 からは カツオの 群 れは 海 底 山 脈 の 山 肌 に 移 動 していると 言 わ れており その 通 り 道 に 設 置 した 黒 潮 ブイは 利 用 度 が 高 く 漁 獲 量 が 多 いとの 報 告 があ ったが 海 底 地 形 との 効 果 的 な 設 置 位 置 の 関 係 はまだ 明 らかではない 更 に 中 層 型 浮 魚 礁 の 場 合 礁 体 水 深 の 振 れが 魚 礁 の 利 用 度 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすこ とが 確 認 されていることから 潮 の 流 れが 穏 やかな 海 域 に 設 置 することも 重 要 であると 考 えられる 図 33 浮 魚 礁 別 の 竿 釣 による 操 業 1 回 あたりカツオ 漁 獲 量 ( 南 西 諸 島 海 域 ) 資 料 : 海 洋 水 産 資 源 開 発 センター 調 査 報 告 40

7-2 設 置 水 深 水 深 2,000m 以 浅 に 設 置 した 中 層 型 魚 礁 と 2,000m 以 深 に 設 置 した 中 層 型 魚 礁 を 比 べる と 魚 種 構 成 や 主 要 魚 種 の 尾 叉 長 操 業 1 回 あたりの 漁 獲 量 に 顕 著 な 違 いは 確 認 されて おらず 設 置 水 深 が 魚 類 の 蝟 集 に 及 ぼす 影 響 は 小 さいとの 考 えが 主 流 である ただし 中 層 型 浮 魚 礁 の 場 合 水 深 が 大 きい 海 域 に 設 置 した 魚 礁 は 流 速 に 対 する 礁 体 の 振 れが 大 きくなることが 確 認 されている 例 えば 高 知 県 沖 合 に 設 置 された 中 層 型 魚 礁 の 場 合 水 深 764~819m に 設 置 された 中 層 型 魚 礁 群 (9 工 区 )と 水 深 1,588~1,606m に 設 置 された 中 層 型 魚 礁 群 (11 工 区 )を 比 較 すると 表 層 流 速 が 1kt の 時 にはアンカーから 礁 体 までの 水 平 距 離 は 前 者 が 約 100m 後 者 が 約 150m であるが 3kt の 時 には 前 者 が 約 250m に 対 して 後 者 は 480m と 2 倍 以 上 流 されることが 確 認 されている つまり 大 きな 水 深 に 設 置 された 中 層 型 魚 礁 の 場 合 礁 体 が 予 想 外 の 位 置 にある 可 能 性 があり ソナーが 搭 載 されていない 漁 船 では 礁 体 位 置 の 把 握 はかなり 困 難 な 場 合 が あることが 指 摘 されている また 中 層 型 魚 礁 に 蝟 集 した 魚 群 を 竿 釣 りによって 漁 獲 することが 可 能 な 礁 体 水 深 の 下 限 は 約 100m 季 節 的 には 約 150m まで 漁 獲 することが 可 能 であるとの 結 果 が 示 されて いる 図 34 中 層 型 浮 魚 礁 の 礁 体 水 深 と 竿 釣 による 操 業 1 回 あたりカツオ 漁 獲 量 資 料 : 海 洋 水 産 資 源 開 発 センター 調 査 報 告 41

7-3 設 置 間 隔 中 層 型 浮 魚 礁 の 影 響 範 囲 を 2 海 里 と 仮 定 し 6 基 の 浮 魚 礁 をそれぞれ 2 海 里 ( 魚 礁 群 G: 互 いの 影 響 範 囲 が 重 なる 間 隔 ) 6 海 里 ( 魚 礁 群 H: 互 いの 影 響 範 囲 が 重 ならない 間 隔 )の 間 隔 で 正 三 角 形 に 配 置 した 浮 魚 礁 群 の 漁 獲 量 を 比 較 した 結 果 設 置 間 隔 については 魚 類 の 蝟 集 効 果 に 影 響 を 及 ぼさないと 結 論 づけている したがって 設 置 の 容 易 さや 操 業 効 率 等 に 留 意 して 中 層 型 浮 魚 礁 の 設 置 間 隔 を 決 定 すればよいということになる ただし 設 置 間 隔 が 小 さすぎると 蝟 集 した 魚 が 分 散 してしまうことから 魚 礁 群 全 体 として 漁 獲 量 の 増 大 にはつながらないとの 意 見 もあり 研 究 者 の 中 では 魚 礁 の 設 置 間 隔 については 10 マイル 以 上 が 望 ましいとの 考 えが 主 流 である 一 方 宮 崎 県 の 漁 業 者 からは 魚 礁 間 の 移 動 にかかる 時 間 が 節 約 できるという 理 由 から 5 マイル 程 度 の 間 隔 で 幾 つかの 魚 礁 を 並 べて 設 置 するのが 望 ましいとの 意 見 も 聞 かれた 図 35 中 層 型 浮 魚 礁 群 G と H の 位 置 42

8 マグロ 養 殖 業 の 浮 魚 礁 利 用 の 可 能 性 8-1 マグロ 養 殖 業 の 現 状 マグロの 養 殖 業 は 1970 年 頃 から 始 められ 既 に 約 40 年 の 歴 史 がある 2002 年 には 近 畿 大 学 が 世 界 で 初 めて 人 工 ふ 化 から 育 てた 成 魚 が 産 卵 し 卵 を 人 工 ふ 化 仔 魚 から 稚 魚 幼 魚 成 魚 に 育 て またその 魚 が 卵 を 産 むことに 成 功 し 完 全 養 殖 の 技 術 を 確 立 している その 後 クロマグロの 養 殖 生 産 量 は 急 速 に 増 大 し 2008 年 には 約 8,000 トンが 生 産 され ている 養 殖 地 は 西 日 本 の 温 暖 な 海 域 であり 特 に 奄 美 大 島 には 全 国 生 産 量 の 約 半 分 が 集 中 している 現 在 のところ クロマグロの 養 殖 は 100% 天 然 種 苗 に 依 存 しているが 人 工 種 苗 の 生 産 技 術 は 急 速 に 進 歩 しており 技 術 的 には 更 なる 増 産 が 可 能 な 状 況 にある しかし マ ダイやブリ 等 の 養 殖 に 比 べて 後 発 であるため 好 条 件 の 養 殖 場 所 の 確 保 が 難 しく 今 後 の 生 産 拡 大 には 沖 合 海 域 への 展 開 が 課 題 のひとつであるといわれている 図 36 奄 美 栽 培 漁 業 センターのクロマグロ 養 殖 施 設 8-2 沖 合 養 殖 における 浮 魚 礁 の 利 用 の 可 能 性 現 在 のマグロ 養 殖 は 海 岸 から 数 百 mの 沿 岸 部 で 行 われるのが 一 般 的 であるが 最 適 な 海 域 の 確 保 が 困 難 になりつつある そこで 日 東 製 網 はマルハニチログループと 共 同 で クロマグロの 沖 合 養 殖 の 実 用 化 に 向 け 高 知 県 沖 で 研 究 を 進 めている 実 施 されている 沖 合 養 殖 の 方 法 は 海 岸 から 2~3km の 沖 合 域 で 養 殖 網 を 10m 程 度 の 深 さに 沈 め 海 洋 で 取 った 幼 魚 を 3 年 間 かけて 出 荷 サイズ(50~60kg)まで 育 てるとい うもの 海 中 に 網 が 沈 んだ 状 態 でマグロが 餌 を 食 べて 大 きくなるかが 課 題 とされている こうした 課 題 の 解 決 策 の 一 つとして 音 響 給 餌 ( 音 響 発 信 によって 摂 餌 行 動 を 習 慣 づけ る)の 仕 組 みが 活 用 できる 可 能 性 がある マダイやヒラメの 養 殖 では 既 に 音 響 給 餌 機 能 を 備 えた 浮 魚 礁 の 事 例 がある 43

9 魚 礁 メーカーによる 浮 魚 礁 の 設 置 条 件 蝟 集 効 果 向 上 のための 工 夫 等 9-1 魚 礁 の 種 類 とその 特 徴 (1) 表 層 型 浮 魚 礁 表 層 型 魚 礁 の 最 大 の 特 徴 は 礁 体 が 海 面 に 位 置 していることであり そのためソナー 等 を 搭 載 しない 小 型 漁 船 でもその 設 置 位 置 が 目 視 で 特 定 できる 点 にある その 一 方 で 航 路 が 設 定 されている 海 域 では 礁 体 が 障 害 となるため 設 置 することはできない また 潮 流 による 過 度 な 圧 力 で 係 留 索 (ワイヤー)が 切 断 した 場 合 に 備 えた 保 険 や 定 期 的 なメン テナンス 費 など 維 持 管 理 費 は 中 層 型 浮 魚 礁 に 比 べて 大 きい 最 近 新 たに 設 置 された 表 層 型 浮 魚 礁 の 中 には AK 型 と 呼 ばれる 浮 沈 式 のものがある 礁 体 部 が 軽 量 化 され 一 定 の 潮 流 圧 を 受 けると 礁 体 が 水 没 する 仕 組 みになっている 維 持 管 理 費 も 従 来 型 に 比 べて 大 幅 に 節 約 されている (2) 中 層 型 浮 魚 礁 中 層 型 魚 礁 の 特 徴 は 設 置 が 容 易 であり 通 信 費 以 外 の 維 持 管 理 費 用 が 基 本 的 に 必 要 ない 点 にある また 礁 体 が 水 深 20~50m の 海 中 にあるため 船 舶 航 行 の 障 害 にならな いことも 利 点 としてあげられる また 中 層 型 魚 礁 で 漁 獲 された 魚 は 身 やけ が 少 な く 表 層 型 浮 魚 礁 で 漁 獲 された 魚 に 比 べて 商 品 価 値 がやや 高 いといわれる 但 し 礁 体 が 海 面 にないため 設 置 場 所 を 目 視 で 把 握 することは 困 難 であり ソナー 等 を 搭 載 しない 小 型 漁 船 にとっては 利 用 しづらいといったデメリットも 漁 業 者 から 指 摘 されている なお 身 やけ の 原 因 については 明 らかにされていないが 表 層 の 高 水 温 が 影 響 しているとの 意 見 がある 図 37 AK 表 層 浮 魚 礁 ( 左 )と AK 中 層 浮 魚 礁 ( 右 ) 表 8 浮 魚 礁 の 年 間 維 持 管 理 費 ( 概 算 ) 表 層 型 浮 魚 礁 AK 型 ( 浮 沈 式 ) 浮 魚 礁 中 層 型 浮 魚 礁 通 信 費 保 険 料 - - メンテナンス 費 ほか - 概 算 費 用 ( 千 円 ) 1,725 537 22 資 料 : 岡 部 株 式 会 社 44