十 勝 産 豆 類 を 用 いた 商 品 の 開 発 ( 平 成 21 年 度 ) 研 究 開 発 課 佐 々 木 香 子 共 同 研 究 紫 竹 ガーデン 1. 背 景 と 目 的 十 勝 は 日 本 有 数 の 豆 類 生 産 地 であり 近 年 では 雑 豆 を 原 料 とした 穀 物 酢 や 製 餡 煮 汁 を 用 いた 色 付 け 剤 常 温 流 通 可 能 な 豆 腐 の 薫 製 品 などの 開 発 について 共 同 研 究 を 行 ってきた これらは 豆 をペース ト 化 したり 抽 出 された 煮 汁 を 使 用 しているが 豆 の 形 を 残 したままの 新 規 製 品 開 発 については 商 品 化 には 至 っていないのが 現 状 である これらに 関 し 帯 広 市 の 美 栄 町 の 観 光 型 庭 園 を 経 営 する 紫 竹 ガー デンより 自 社 栽 培 の 豆 を 使 用 して 豆 の 形 色 を 生 かした 豆 板 様 の 製 品 開 発 を 行 いたいとの 依 頼 があった 豆 板 は 石 川 県 金 沢 市 の 和 菓 子 店 で 製 造 されている 大 豆 及 び 黒 豆 をもち 米 でまとめた 塩 味 の 餅 であるが 通 常 市 販 されている 豆 餅 とは 異 なり 配 合 の8 割 が 豆 で 加 熱 せずにそのままで も 食 べられる ユニークな 豆 製 品 である これを 基 に 大 豆 だけでなく 雑 豆 を 使 用 して 豆 の 形 を 残 し た 豆 である ことを 主 張 できる 新 しい 製 品 の 開 発 を 目 的 とし 新 規 豆 類 加 工 食 品 の 開 発 を 検 討 した 2. 研 究 課 題 と 検 討 項 目 本 研 究 の 開 発 では 大 豆 とその 他 の 豆 類 は 煮 熟 時 の 食 感 が 異 なることから できるだけ 大 豆 と 雑 豆 の 食 感 が 近 くなる 蒸 煮 条 件 の 検 討 を 行 った また 餅 部 分 が 加 熱 後 の 冷 却 によって 老 化 する 可 能 性 が あるため 糖 類 などの 配 合 等 についても 検 討 した 試 作 品 については 栄 養 成 分 について 豆 入 り 餅 等 の 市 販 品 と 比 較 するとともに 微 生 物 検 査 による 保 存 試 験 を 行 った さらに 開 発 製 品 の 商 品 化 に 向 け フーデックスジャパンにおける 市 場 性 調 査 を 行 った 3. 製 造 条 件 の 検 討 (1) 水 浸 漬 による 豆 調 製 条 件 の 検 討 各 豆 を 1 時 間 3 時 間 24 時 間 水 浸 漬 し 蒸 し 開 始 から 30 分 毎 の 豆 の 硬 さをテクスチャーアナライ ザーで 測 定 した( 図 1) 小 豆 や 金 時 では 浸 漬 時 間 が 短 いと 120 分 蒸 しても 硬 く 測 定 限 界 を 超 えた が 24 時 間 水 浸 漬 後 に 30~60 分 間 では 歯 ごたえを 程 よく 残 した 食 感 に 調 製 された 大 豆 では 24 時 間 浸 漬 で 30 分 3 時 間 浸 漬 で 60 分 黒 豆 は 1 時 間 浸 漬 で 90 分 3 時 間 浸 漬 で 30 分 間 の 蒸 し 時 間 で 程 よい 食 感 だった しかし 豆 の 種 類 ごとに 異 なる 浸 漬 蒸 し 時 間 では 製 造 時 の 管 理 が 難 しいことか ら 同 じ 浸 漬 蒸 し 時 間 で 同 時 に 製 造 出 来 る 条 件 の 検 討 が 必 要 と 考 えられた 図 1 豆 調 整 条 件 の 検 討 ( 水 浸 漬 )
(2) 熱 湯 浸 漬 による 豆 調 製 条 件 の 検 討 上 記 試 験 結 果 から 同 時 に 製 造 出 来 る 条 件 の 検 討 が 必 要 と 考 えられたため 次 に 熱 湯 浸 漬 による 製 造 条 件 を 検 討 した 大 豆 及 び 黒 豆 は 1 時 間 小 豆 と 金 時 は1 時 間 及 び 3 時 間 熱 湯 に 浸 漬 した 後 蒸 し 開 始 から 30 分 毎 の 豆 の 硬 さを 比 較 した( 図 2) その 結 果 大 豆 黒 豆 金 時 については 1 時 間 熱 湯 浸 漬 で 30 分 の 蒸 し 時 間 でやや 硬 めの 食 感 で 餅 混 合 時 の 作 業 性 も 良 いと 考 えられた 一 方 小 豆 は 1 時 間 熱 湯 浸 漬 後 30 分 の 蒸 し 時 間 では 煮 えムラがあり 60 分 間 で 程 よい 食 感 となった 小 豆 のみ 他 3 種 と 蒸 し 時 間 の 違 いが 生 じたが 豆 調 製 後 は 餅 と 混 合 後 にさらに 加 熱 がかかることから 4 種 の 豆 を 同 時 に 蒸 す 場 合 は 熱 湯 浸 漬 1 時 間 蒸 し 時 間 30 分 で 行 い 餅 をまぶしてからさらに 30 分 間 蒸 すと 豆 の 形 を 崩 すことなく 混 合 出 来 小 豆 の 硬 さもちょうどよい 食 感 になると 考 えられた 図 2 豆 調 整 条 件 の 検 討 ( 熱 湯 浸 漬 ) (3) 豆 種 類 混 合 量 の 検 討 上 記 熱 湯 浸 漬 の 条 件 で 小 豆 金 時 大 豆 黒 豆 を 調 製 し それぞれを 単 独 で 使 用 して 豆 餅 を 試 作 し 官 能 試 験 による 食 感 や 味 の 比 較 を 行 った( 図 3) 小 豆 を 用 いた 場 合 4 種 類 の 豆 の 中 では 最 も 堅 く 食 感 がしっかりしており 金 時 を 用 いた 場 合 は 皮 の 口 残 りが 目 立 ったが デンプン 質 の 甘 みが 感 じら れた 大 豆 を 使 用 した 場 合 は 表 面 に 粘 質 物 が 生 じてまとまりにくかったが 大 豆 特 有 の 甘 みがあり 黒 豆 を 使 用 した 場 合 は 堅 さがちょうどよく まとまりも 良 かった そこでこれら 4 種 の 豆 を 等 量 混 合 さ せたものを 試 作 したところ それぞれの 豆 の 特 徴 が 生 かされ 食 感 が 楽 しく 色 合 いも 良 くなった( 図 4) さらに 豆 と 餅 の 混 合 率 を 変 えて 試 作 した 場 合 では 豆 の 混 合 率 が 低 いと 餅 部 分 の 白 さや 餅 の 老 化 感 が 目 立 つことから 出 来 るだけ 豆 の 量 を 多 くし 最 終 的 には 煮 豆 対 餅 が4:1が 適 していると 考 え られた 小 豆 金 時 大 豆 黒 豆 図 3 小 豆 金 時 大 豆 黒 豆 を 用 いた 豆 餅 の 試 作
餅 : 豆 =1:3 餅 : 豆 =1:4 図 4 豆 4 種 を 用 いた 豆 餅 及 び 餅 との 混 合 比 率 (4) 餅 部 分 調 製 条 件 の 検 討 次 に 餅 部 分 の 調 整 条 件 を 検 討 した まず 上 新 粉 白 玉 粉 道 明 寺 粉 をそれぞれ 用 いて 試 作 を 行 っ た 結 果 上 新 粉 及 び 白 玉 粉 はどちらも 作 業 性 が 良 く 豆 の 色 が 明 瞭 に 見 えたが 道 明 寺 粉 の 場 合 はベ タつきが 多 く 取 扱 いにくかったことから 上 新 粉 または 白 玉 粉 を 用 いることとした また 餅 部 分 の 老 化 を 防 ぐため ショ 糖 やトレハロースを 加 えた 場 合 の 餅 の 堅 さを 経 時 的 に 測 定 した( 図 5) 糖 類 無 添 加 では 冷 蔵 保 存 1 日 目 で 老 化 し テクスチャーアナライザーの 押 し 潰 し 測 定 時 にはひび 割 れが 見 られた 砂 糖 15%を 添 加 すると 老 化 の 進 み 具 合 が 遅 くなっていた さらにトレハロース 15% 及 び 砂 糖 7.5%+トレハロース 7.5%の 添 加 では 砂 糖 15%に 比 べて 冷 蔵 2 日 目 までは 老 化 が 抑 えられていた が 3 日 目 からは 急 激 に 老 化 が 進 んでいた トレハロースを 増 量 して 20% 添 加 したところ 3 日 後 も 無 添 加 に 比 べて 半 分 程 度 の 堅 さであり 老 化 は 抑 えられていた しかしトレハロース 独 特 の 甘 さが 感 じ られ 豆 餅 の 味 に 影 響 する 可 能 性 がある そこでトレハロースの 濃 度 を 15%に 戻 し その 保 水 性 を 利 用 して 水 分 を 増 加 させたところ 水 分 含 量 に 応 じて 柔 らかさが 保 持 され 餅 部 分 も 糖 の 甘 みはそれほ ど 感 じられなかった 図 5 糖 類 添 加 による 餅 の 老 化 防 止 試 験 (5) 十 勝 お 豆 餅 製 造 フロー 上 記 試 験 結 果 を 踏 まえ 豆 餅 製 造 は 次 の 工 程 で 行 うこととした( 図 6) 成 型 後 に 蒸 した 豆 餅 は 1.5cm 程 度 に 板 状 にカットし 真 空 包 装 したものを 冷 凍 保 存 して 流 通 する また 紫 竹 ガーデン 内 レストラ ンで 提 供 する 場 合 は 解 凍 後 にさらにカットし そのままあるいは 加 熱 後 に 提 供 する 予 定 である
図 6 十 勝 お 豆 餅 製 造 フロー 4. 成 分 分 析 試 作 品 については 成 分 分 析 保 存 試 験 を 行 った 成 分 分 析 では 使 用 している 豆 の 割 合 が 多 いこと から 市 販 の 豆 餅 に 比 べて 蛋 白 質 が 多 く カロリーが 低 く 抑 えられていた( 表 1) 保 存 試 験 は 解 凍 後 に 冷 蔵 保 存 したもので 細 菌 検 査 を 行 い その 結 果 一 般 生 菌 数 大 腸 菌 群 真 菌 数 全 てにおいて 10 日 目 で も 菌 の 増 殖 は 見 られなかった( 表 2) 但 し 10 日 目 では 糖 類 を 添 加 しても 餅 部 分 の 老 化 がみられたこ とから 解 凍 後 に 焼 かずにそのまま 食 べる 場 合 は 3~4 日 程 度 の 保 存 期 間 が 妥 当 と 考 えられる 表 1 試 作 品 成 分 分 析 結 果 表 2 試 作 品 の 解 凍 後 の 保 存 試 験 結 果 5. 市 場 性 調 査 試 作 品 は Foodex Japan 2010 で 市 場 性 調 査 を 行 った( 図 7) 下 記 写 真 の 試 作 品 をさらに 細 かく カットしたものを そのまま 及 びホットプレートで 加 熱 した 物 を 試 食 品 として 提 供 し 外 観 味 の 濃 さ 硬 さ 美 味 しさ 価 格 購 入 意 欲 について 調 査 を 行 った 調 査 対 象 は 男 性 女 性 それぞれ 25 名 26 名 であり 職 業 別 の 内 訳 は メーカーが 25% 次 いで 小 売 店 が 18%だった その 結 果 外 観 味 と もに 好 評 であり 購 入 意 欲 も 90%の 回 答 者 が 買 いたい やや 買 いたいという 回 答 だった また 価 格 帯 としては 500 円 が 最 も 多 く 上 限 を 700 円 としていることが 判 った( 図 8)
図 7 調 査 風 景 と 試 食 品 調 査 対 象 内 訳 図 8 調 査 結 果
6. 今 後 の 展 開 現 在 紫 竹 ガーデンでは 手 作 り 製 造 を 行 い 自 社 レストランのメニューに 取 り 入 れる 他 要 望 があ れば 販 売 しているが 今 後 は 委 託 製 造 先 での 製 造 を 検 討 する しかし 現 在 の 製 法 では 機 械 化 が 難 しく 製 造 方 法 の 改 良 が 必 要 と 考 えられる 7.まとめ 本 研 究 では 豆 の 形 色 を 生 かした 豆 板 様 の 製 品 の 開 発 を 検 討 した 豆 の 調 製 は 熱 湯 浸 漬 1 時 間 蒸 し 時 間 30 分 で 行 い 餅 をまぶしてからさらに 30 分 間 蒸 す 条 件 が 適 していた 餅 部 分 の 調 整 は 上 新 粉 または 白 玉 粉 を 用 い 15%トレハロース 添 加 で 甘 さを 出 さずに 老 化 が 抑 えられた 試 作 品 成 分 分 析 では 市 販 の 豆 餅 に 比 べて 蛋 白 質 が 多 くカロリーが 低 かった 保 存 試 験 では 一 般 生 菌 数 大 腸 菌 群 真 菌 数 全 てにおいて 10 日 目 でも 菌 の 増 殖 は 見 られなかったが 餅 部 分 の 老 化 がみられたため 解 凍 後 に 焼 かずにそのまま 食 べる 場 合 は 3~4 日 程 度 の 保 存 期 間 が 妥 当 と 考 えられた