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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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Transcription:

理 科 教 室 2002 年 2 月 pp.96-101 連 載 : 科 学 史 から 考 える2 灌 漑 農 業 と 科 学 技 術 の 発 展 河 村 豊 1. 科 学 主 義 の 風 潮 近 年 になって 科 学 研 究 を 経 済 対 策 に 利 用 しようという 動 きに 加 速 がついてきた ようだ.その 事 例 の1つを, 最 近 の 日 本 の 科 学 技 術 政 策 に 見 ることができる.2001 年 度 から 実 施 された 第 二 期 科 学 技 術 基 本 計 画 では, 政 府 が 24 兆 円 の 研 究 開 発 費 を 生 命 科 学 情 報 通 信 環 境 ナノテクノロジー の 4 分 野 に 向 けて, 今 後 5 年 間 に 渡 って 出 資 することになった.もちろん 応 用 研 究 に 主 軸 が 置 かれてい るが 一 部 には 基 礎 研 究 にも 研 究 費 が 注 ぎ 込 まれることになるだろう.こうした 莫 大 な 資 金 を 投 入 する 根 拠 は, 成 果 の 期 待 できる 科 学 研 究 を 発 展 させれば 新 技 術 が 登 場 し, 経 済 的 効 果 を 生 み 出 すに 違 いないという 見 通 しにある. 新 技 術 を 手 に 入 れるために 基 礎 研 究 を 行 う 必 要 があるとする 考 え 方 を, 一 般 に リニアモデル と 呼 んでいる. 科 学 研 究 の 一 直 線 (リニア) 上 に 新 技 術 があるという 意 味 からこ うした 名 前 が 付 けられたようだ.しかし,もとをただせば 深 刻 な 社 会 状 況 の 中 で, 科 学 研 究 をその 打 開 策 の1つとして 応 用 しようとする 考 えは, 第 一 次 世 界 大 戦 頃 にすでに 登 場 していた.わが 国 でも 1930 年 代 に 科 学 主 義 工 業 という 名 称 を 理 化 学 研 究 所 所 長 であった 大 河 内 正 敏 が 使 い 始 めている. ここで 問 題 としたいのは, 本 来 は 経 済 対 策 などの1つとして 科 学 政 策, 学 術 政 策 が 利 用 されていたものが, 近 年 では 科 学 研 究 の 目 的 そのものを, 技 術 開 発 目 的, 経 済 発 展 目 的 へと 結 びつけられてとらえていることにある.これを 科 学 の 打 ち 出 の 小 槌 モデル あるいは 科 学 主 義 モデルとでも 呼 んでおこう. 成 果 を 生 み 出 さ ない 科 学 は 無 視 され, 成 果 が 期 待 される 研 究 分 野 ばかりが 日 の 目 を 見 る. 科 学 教 育 にこうしたモデルが 持 ち 込 まれてしまうと, 自 然 探 求 の 幅 広 い 関 心 はひどく 狭 めてしまうことになる. このような 科 学 主 義 の 傾 向 を 克 服 する 第 一 歩 として, 科 学 史 を 利 用 することは 無 意 味 ではあるまい. 今 回 は, 古 代 文 明 期 の 科 学 と 技 術 を 事 例 に, 科 学, 技 術 と 社 会 制 度 との 間 にどのような 関 係 があったかを 振 り 返 えり, 科 学 主 義 克 服 のヒン

トにしたい. 2. 科 学 の 起 源 問 題 科 学 主 義 が 持 つ 根 本 的 な 問 題 点 の1つは, 上 位 に 科 学 を 起 き, 下 位 に 技 術 や 工 夫 などを 従 属 させる 点 にある.すなわち, 初 めに 頭 脳 があり, 科 学 があると 考 え る 点 だ. 頭 脳 を 優 先 するこのような 考 えは,すでに 考 古 学, 人 類 学 では 受 け 入 れ られない 主 張 だ. 人 類 の 進 化 は, 脳 容 積 が 拡 大 したことに 始 まるのではなく,2 足 歩 行 によって 自 由 になった2 本 の 手 を 使 い, 複 雑 な 労 働 を 行 う 結 果 にあった. このことは, 多 くの 研 究 者 の 共 通 する 到 達 点 となっていると 考 えて 良 いだろう. 有 名 な 考 古 学 者 ゴードン チャイルドはその 著 文 明 の 起 源 ( 岩 波 新 書 )の 中 で, 考 古 学 の 前 提 を man makes himself すなわち, 人 はおのれ 自 身 を 作 り 出 すも のと 表 現 して, 脳 優 先 の 考 え 方 を 批 判 している. 科 学 を 優 先 する 考 えも,こうし た 頭 脳 を 特 別 視 する 考 えと 共 通 する 欠 点 を 抱 えている. 科 学 はある 社 会 の 人 間 活 動 の 結 果 として 誕 生 したのであって, 科 学 的 発 見 が 社 会 活 動 と 無 関 係 に 生 まれた わけではない.このことは 科 学 の 起 源 史 が 示 しているだろう. ただし, 科 学 の 起 源 をどの 時 代 から 始 めるかはなかなか 決 めづらい. 科 学 前 の 段 階 から 科 学 への 発 展 を 線 引 きすることが 容 易 ではないからだ.たとえば, 自 然 に 関 わる 経 験 的 知 識 は 科 学 の 成 立 にとって 重 要 な 要 素 であるので, 旧 石 器 時 代 の 猿 人 が, 狩 猟 活 動 などを 通 して 手 に 入 れた 自 然 に 関 わる 様 々な 知 識 も 科 学 の 起 源 の1つであると 考 えられる.しかし,だからといって 猿 人 たちが 科 学 を 手 にして いたと 主 張 するには 無 理 がある. 科 学 とは, 経 験 的 知 識 を 記 録 に 残 し, 個 別 の 知 識 からさらに 一 般 的 な 知 識 を 導 きだし, 体 系 的 な 知 識 する 作 業 が 必 要 と 考 えられ るからである. 新 石 器 時 代 後 期 の 古 代 メソポタミア 文 明 には,こうした 科 学 の 段 階 に 達 していたものと 考 えていいだろう. 3. 技 術 と 古 代 文 明 の 誕 生 まず, 科 学 を 生 み 出 す 舞 台 となった 古 代 都 市 国 家 が,どのように 形 成 されたか に 注 目 して, 技 術 と 社 会 制 度 との 関 わりを 考 えてみる. 古 代 文 明 は, 大 河 流 域 に 都 市 を 置 き, 周 辺 に 多 数 の 運 河 を 配 置 して 農 業 生 産 を 行 ったことから, 大 河 文 明 とか 灌 漑 文 明 とも 表 現 される. 特 に, 灌 漑 文 明 という 言 い 方 は, 灌 漑 というある 種 の 技 術 が 都 市 文 明 の 成 立 の 要 素 となっていたことを 示 しているようで 興 味 深 い. 技 術 が 社 会 制 度 の 形 成 に 関 わっていたように 理 解 で

きるからである.では 文 明 誕 生 に 灌 漑 はどのように 関 わっていたのだろうか. メソポタミア 文 明 はチグリス,ユーフラテス 河,エジプト 文 明 はナイル 河 にそ れぞれ 依 存 しながら 誕 生 した.こうした 大 河 を 人 工 的 に 管 理 することが, 古 代 文 明 を 維 持 するためには 不 可 欠 であった. 灌 漑 とは, 英 語 では irrigation で,その 動 詞 形 は irrigate である.ここから 灌 漑 という 意 味 が, 水 を 引 くこと である ことが 分 かる.ただし, 水 を 引 くこと には, 灌 漑 による 農 業, 灌 漑 のための 設 備, 灌 漑 を 行 う 労 働 の, 少 なくとも3つの 内 容 が 含 まれている. 灌 漑 の 役 割 を 深 く 理 解 するには,これらの 内 容 を1つずつ 点 検 し, 文 明 誕 生 に 効 果 をもたらした 灌 漑 がどのような 内 容 のものだったかを 確 認 する 必 要 がある. 第 1の 説 は, 灌 漑 農 業 説 である.つまりこうした 農 法 によって 農 業 生 産 力 が 増 大 し, 余 剰 生 産 物 を 生 み, 階 級 分 裂 を 引 き 起 こし,ついに 都 市 社 会 を 誕 生 させた という 説 明 である.しかしこの 説 明 には 難 点 がある. 灌 漑 農 業 は 確 かに 農 業 生 産 力 を 飛 躍 的 増 大 させたが, 生 産 力 の 増 大 は,すでに 狩 猟 生 産 から 農 耕 生 産 に 転 換 した 新 石 器 革 命 期 に 引 き 起 こされていたからである. 紀 元 前 8000 年 から 4000 年 までの 間 に 16 倍 ほどの 人 口 増 加 があったとも 推 定 されている. 定 住 により 最 初 の 原 始 集 落, 原 始 共 同 体 社 会 が 形 成 されたことになる.この 頃 に 行 われた 農 業 は 天 水 農 業 と 呼 ばれるもので, 比 較 的 恵 まれた 土 地 で 実 施 される 農 業 であった. 灌 漑 農 業 は,この 天 水 農 業 に 比 べて 特 別 に 高 い 農 業 生 産 力 をもっていたわけでは ない. 天 水 農 業 が 不 可 能 な 土 地,つまり 降 水 量 の 少 ない, 乾 いた 土 地, 本 来 は 不 毛 の 大 地 を, 水 路 などの 灌 漑 設 備 を 用 いることで 農 地 に 変 えて 農 業 を 行 う.これ が 灌 漑 農 業 である. 不 毛 の 大 地 で 農 業 を 行 なければならなくなった 理 由 は, 増 大 した 人 々を 天 水 農 耕 でまかなうほどの 豊 かな 大 地 が 不 足 したことにある. 恵 まれ た エデンの 園 から 追 い 出 された 人 々が, 必 死 で 到 達 した 農 業 が, 灌 漑 農 業 で あった.したがって, 生 産 力 が 拡 大 すると 都 市 文 明 を 生 み 出 すという 論 理 では, 天 水 農 業 との 違 いが 説 明 できないことになる. 第 2の 説 は, 灌 漑 設 備 説 である. 運 河, 井 戸,ダムあるいは 揚 水 装 置 であるは ねつるべなど, 水 を 管 理 する 設 備 を 用 いて, 飛 躍 的 な 農 業 生 産 力 を 作 りだし,そ の 結 果, 都 市 文 明 が 誕 生 したという 説 明 となろう.しかし, 灌 漑 設 備 説 も, 灌 漑 農 業 説 と 同 様 の 難 点 がある. 灌 漑 設 備 はあくまでも 灌 漑 農 業 のための 労 働 手 段 に すぎず, 社 会 的 な 効 果 は 農 業 生 産 量 の 拡 大 が 基 本 となる.それゆえ 水 管 理 技 術 を 手 に 入 れることで 都 市 文 明 を 生 み 出 したと 考 えることは, 説 得 力 のある 説 明 とは いえない.

4. 灌 漑 労 働 が 古 代 文 明 の 形 成 につながった. 残 る 第 3の 説 は, 灌 漑 労 働 説 である. 灌 漑 農 業 用 の 灌 漑 設 備 を 作 るために 行 っ た 土 木 工 事 作 業 が, 中 央 集 権 的 な 社 会 機 構 を 生 み 出 し, 都 市 文 明 を 作 り 出 したと いう 説 明 である.この 説 には 説 得 力 があるように 思 うが,これを 理 解 するための 前 提 は, 古 代 文 明 時 代 がいまだ 鉄 器 時 代 に 至 っていない 新 石 器 時 代 であったこと である.やがて 銅 器, 青 銅 器 が 使 われる 金 石 併 用 時 代 に 入 るが, 貴 金 属 である 銅, 青 銅 は, 武 器 や 装 飾 品 には 使 用 されても, 農 業 労 働 のための 農 具 や 灌 漑 設 備 作 り の 工 具, 労 働 用 具 として 利 用 されることはほとんどなかった.つまり, 古 代 文 明 社 会 は, 原 始 共 同 体 社 会 に 到 達 した 磨 製 石 器 を 主 とする 石 器 中 心 の 技 術 レベルに 留 まっていたということである.こうした 貧 弱 な 工 具, 労 働 用 具 を 利 用 して 大 規 模 な 土 木 工 事 を 行 うには, 結 局 は, 集 中 的 労 働 投 下 が 不 可 欠 であった.いわば 人 海 戦 術 によって 大 規 模 土 木 工 事 を 実 施 しなければ, 不 毛 な 大 地 を 農 地 に 転 換 させ ることはできない. 集 中 的 に 労 働 を 投 下 する 体 制 を 整 えるためには,それまで 家 族 単 位 で 生 産 労 働 を 行 っていた 原 始 共 同 体 システムに 代 わり, 統 率 者 が 労 働 管 理 を 行 う 中 央 集 権 的 社 会 システムに 転 換 する 必 要 があった.ここに, 灌 漑 労 働 こそ が, 古 代 都 市 社 会 を 作 り 上 げた 主 要 な 要 因 であるとする 理 由 がある. もちろん 古 代 文 明 の 形 成 を,この 要 因 だけで 説 明 できると 主 張 しているわけで はない. 強 調 したいのは, 灌 漑 文 明 とよばれる 古 代 社 会 の 形 成 は, 実 は 技 術 発 展 によってもたらされたのではなく, 技 術 に 大 きな 発 展 が 見 られないまま, 大 規 模 な 土 木 工 事 を 実 施 させたために, 人 間 労 働 のあり 方 そのものに,より 一 層 の 深 刻 な 変 化 を 及 ぼしたという 点 である. 技 術 は 生 産 量 の 拡 大, 便 利 さの 増 大 を 通 して 社 会 に 影 響 を 与 えるとつい 考 えてしまうが, 実 際 にはそうした 影 響 が 社 会 制 度 の 変 革 につながりことは 少 ない.むしろ 技 術 の 変 化 がきっかけとなって, 従 来 まで の 仕 事 のやり 方, 労 働 形 態, 社 会 慣 習 などの 転 換 が 起 きてしまうこと,このこと が 社 会 へ 深 刻 な 影 響 を 及 ぼす 技 術 の 機 能 である. 5. 古 代 文 明 の 科 学 さて 次 に, 灌 漑 文 明 期 における 科 学 活 動 の 特 徴 を, 社 会 制 度 と 関 連 づけながら 考 えてみたい. メソポタミア 文 明,エジプト 文 明 に 代 表 される 古 代 文 明 では, 算 術, 天 文 術, 医 術 の3つの 科 学 分 野 に 大 きな 発 展 があった. 特 にメソポタミア 文 明 における 算 術 の 場 合, 紀 元 前 1600 年 頃 には60 進 法 による 計 算 法 が 確 立 し,かけ 算 に 関 し

ては59 59のかけ 算 表 が 作 られていた.わり 算 は, 逆 数 のかけ 算 で 行 うため に, 逆 数 表 が 作 られていた. 例 えば24 3の 場 合 は,24 (3の 逆 数 )とす る.3の 逆 数 は1/3=20/60なので,60 進 法 の 規 則 から20と 逆 数 表 に 表 記 されている. 従 って24 3は24 20と 計 算 でき,かけ 算 表 から480 であることが 分 かる.ただし60 進 法 の 規 則 から,480は480/60=8と 同 じ 表 記 なので, 上 記 の 計 算 の 答 えは8であることが 求 まる.こうした 計 算 法 の 存 在 から,60 進 法 はわり 算 を 容 易 に 行 う 工 夫 から 登 場 したようにも 考 えられる. また 発 掘 された 粘 土 板 文 書 には,こうした 表 テキスト と 呼 ばれるものが 多 く, 書 記 をめざした 当 時 の 生 徒 が 繰 り 返 し 作 成 したことを 物 語 っている.ただし,6 0 進 法 による 計 算 方 法 にも 欠 点 がある.たとえば,7や11,13などの 数 では, 逆 数 が 定 まらないため,わり 算 は 実 行 できない.また 位 取 りがないために,1と 60とは 同 一 数 字 で 表 記 されるために 混 乱 が 生 まれてしまうなどである.ただし, 実 際 には 近 似 的 な 計 算 を 行 ったり, 計 算 している 問 題 の 文 脈 から1であるか60 であるかを 区 別 するので, 実 際 上 は 混 乱 が 起 きない.つまり 正 確 さは 不 足 してい るものの, 十 分 に 実 用 的 な 算 術 として 機 能 していたことになる. 一 方, 粘 土 板 に は 問 題 テキスト と 呼 ばれる 別 のグループもある.これは 食 料 分 配 や 納 税 額 の 計 算, 遺 産 処 理 のための 土 地 分 配 の 計 算 など, 当 時 の 経 済 活 動 などで 不 可 欠 とな ったあらゆる 数 値 計 算 が, 練 習 問 題 という 形 で 残 されていた.これらも 当 時 の 生 徒 がトレーニングのために 繰 り 返 し 作 成 したため, 大 量 の 粘 土 板 を 残 すことにな った.このように 古 代 シュメール 人 によって 生 み 出 された 算 術 は, 複 雑 な 数 値 計 算 に 利 用 できる 段 階 にまで 達 していたことが 分 かる. 一 方, 天 文 術 においても,60 進 法 が 活 用 され,1 年 を360 日 とする 暦 を 作 ったり,1 日 を12に 区 分 する 規 則 が 登 場 した.このように 正 確 な 暦 を 作 成 する ために 天 体 観 測 を 実 施 していた. 古 代 エジプトでは, 洪 水 の 予 測 を 含 めた, 農 業 暦 を 作 成 するために 天 体 現 象 が 記 録 された.いわば 農 業 天 文 学 とでもいう 分 野 で ある.また 古 代 メソポタミアの 天 文 術 では, 太 陰 暦 のために 月 の 満 ち 欠 けについ ての 正 確 な 記 録 が 取 られ,また 月 食 や 日 食, 惑 星 の 会 合, 新 星 の 発 現, 流 星, 彗 星 の 発 現 など, 時 おり 現 れる 天 体 現 象 を 綿 密 に 記 録 している. 特 に 天 体 の 異 常 現 象 の 記 録 は 綿 密 に 記 録 されていたようで, 紀 元 前 1000 年 ころには, 約 700 0 種 類 に 達 していたという.これらの 記 録 は, 占 星 術 のために 利 用 されていた. 医 術 についても, 病 気 の 記 録 が 記 録 されている 一 方 で, 治 療 行 為 として 呪 文 を 唱 えることやある 種 の 儀 式 が 行 われ, 肝 臓 占 い のように, 動 物 から 摘 出 した 肝 臓

の 形 や 表 面 の 模 様 などから, 近 未 来 の 社 会 状 況 を 予 知 しようとした. 占 いなどの 目 的 を 含 んでいたために, 古 代 文 明 期 の 算 術, 天 文 術, 医 術 は, 科 学 とは 呼 べないのではないかと 主 張 する 議 論 もある. 古 代 科 学 史 の 第 1 人 者 であ ったノイゲバウアーは, 古 代 算 術, 天 文 術 を 精 密 科 学 であると 評 価 しながら, 例 えば バビロニア 数 学 は 前 科 学 的 な 思 考 の 敷 居 を 越 えはしなかった などと 述 べ ている. 占 星 術 や 呪 術 が 含 まれている 活 動 は, 科 学 とはいえないのではないかと 考 えているようである. 6. 科 学 は 社 会 制 度 に 縛 られている. では 古 代 文 明 期 の 科 学 を,どのように 評 価 すべきであろうか. 個 別 の 自 然 知 識 や 現 代 の 科 学 との 単 純 な 比 較 ではなく, 当 時 の 社 会 の 中 でどのような 立 場 で 自 然 現 象 を 理 解 しようとしたかを 知 ることが 必 要 であろう.この 作 業 に 不 可 欠 なのは, 自 然 認 識 の 活 動 を 担 った 人 物,この 時 代 の 場 合 には 書 記 と 呼 ばれる 人 々に 注 目 す ることである. 書 記 たちは, 神 殿 を 中 心 とする 中 央 集 権 的 社 会 の 官 僚 層 ( 神 官 ) の 一 部 を 構 成 し, 神 殿 経 営 を 取 り 仕 切 るいわば 情 報 収 集 係 である. 農 業 生 産 の 収 穫 予 測 や 税 徴 収 の 管 理 などの 日 々の 活 動 に 加 え, 近 隣 諸 都 市 との 争 いや 不 意 に 発 生 する 自 然 災 害 など, 近 未 来 に 発 生 する 出 来 事 に 対 処 することが 任 務 であった. 当 時 の 書 記 たちは,こうした 神 殿 経 営 を 切 り 盛 りするために, 自 然 現 象 を 利 用 し たことになる.さらに, 神 殿 経 営 を 維 持 するには, 神 殿 の 権 威 を 維 持 する 必 要 も ある. 神 を 中 心 とした 世 界 観 を 作 り 上 げ, 自 然 現 象 の 理 解 もこの 世 界 観 に 組 み 込 む 必 要 がある. 神 話 的 自 然 観 とはこうした 背 景 から 形 成 されたものといえよう. 7.おわりに 社 会 における 技 術 や 科 学 の 役 割 を, 古 代 文 明 社 会 を 事 例 にして 説 明 してみた. 歴 史 の 発 展 に 伴 い, 技 術 や 科 学 の 意 味 は 確 かに 変 化 するだろう.しかし, 技 術 の 社 会 的 機 能 や, 科 学 活 動 の 意 味 が 社 会 から 影 響 受 け 続 けていることに, 大 きな 変 化 はない. 今 日 の 科 学 主 義 も, 経 済 活 動 中 心 のわれわれの 社 会 が 生 み 出 した1つ の 科 学 観 である.それも20 世 紀 になって 強 調 されるようになった 科 学 観 である. 21 世 紀 にはこうした 単 純 な 科 学 観 を 克 服 する 努 力 が 必 要 なのではないだろうか. 参 考 文 献 ノイゲバウアー 古 代 の 精 密 科 学 恒 星 社 厚 生 閣,1974 年

リュッタン バビロニアの 科 学 白 水 社,1961 年 ホッジズ 技 術 の 誕 生 平 凡 社,1975 年 チャイルド 文 明 の 起 源 上 下 岩 波 新 書,1951 年 川 村 喜 一 古 代 オリエントにおける 灌 漑 文 明 の 成 立 世 界 歴 史 1 岩 波 書 店, 1969 年