政 府 管 掌 健 康 保 険 における 分 析 手 法 等 に 関 する 調 査 研 究 ( 概 要 ) 医 療 経 済 研 究 機 構 では 社 会 保 険 庁 より 委 託 を 受 け 政 府 管 掌 健 康 保 険 における 分 析 手 法 等 に 関 する 調 査 研 究 を 実 施 した 調 査 研 究 の 主 なポイントは 以 下 の 通 り Ⅰ. 調 査 研 究 の 背 景 と 目 的 平 成 18 年 度 の 医 療 制 度 改 革 関 連 法 により 平 成 20 年 4 月 から 政 管 健 保 を 含 む 保 険 者 に 対 して 40 歳 以 上 の 被 保 険 者 及 び 被 扶 養 者 に 対 して 内 蔵 脂 肪 型 肥 満 (メタボリックシンドロ ーム)に 着 目 した 健 診 や 保 健 指 導 を 実 施 することが 義 務 づけられた また 平 成 20 年 10 月 政 管 健 保 については 新 たな 公 法 人 ( 全 国 健 康 保 険 協 会 )を 保 険 者 として 設 立 し 地 域 の を 反 映 した 保 険 料 を 設 定 することとなっていることから 政 管 健 保 においても それを 見 据 え 地 域 の 実 情 に 応 じた 保 健 事 業 の 推 進 や 適 正 化 の ための 取 組 が 求 められている こうした 状 況 を 踏 まえ 政 管 健 保 においても 各 都 道 府 県 において 地 域 の 実 情 に 応 じた データに 基 づく 効 果 的 な 保 健 事 業 や 分 析 の 実 施 のための 手 法 を 確 立 していく 必 要 がある そこで 本 調 査 研 究 では 平 成 15 年 度 より 実 施 してきた 調 査 研 究 の 結 果 も 踏 まえ さらに 平 成 18 年 度 の 診 療 報 酬 明 細 書 ( 以 下 レセプト)の 傷 名 情 報 も 含 めて や 健 診 デー タを 活 用 したデータ 分 析 を 行 うとともに 地 域 の 分 析 のための 視 点 や 手 法 の 確 立 に 向 けた 調 査 研 究 を 行 った Ⅱ. 調 査 研 究 の 方 法 本 調 査 研 究 では 北 海 道 長 野 県 福 岡 県 を 調 査 対 象 地 域 とした 本 調 査 研 究 で 分 析 に 用 いたデータの 種 類 は 1 データ( 平 成 18 年 6 月 ~11 月 ) 2 生 活 習 慣 予 防 健 診 結 果 データ( 平 成 11 年 度 )である これらのデータを 用 いて 今 年 度 の 調 査 研 究 においては (1) 健 診 結 果 と 生 活 習 慣 等 の の 突 合 分 析 を 行 うとともに (2) 生 活 習 慣 を 中 心 に 地 域 の の 分 析 を 行 った (1)については 平 成 11 年 度 時 点 で 生 活 習 慣 にかかるリスクの 保 有 状 況 の 違 いにより 7 年 後 の 平 成 18 年 の 生 活 習 慣 の 有 などの 状 況 にどのような 違 いが 発 生 しているか 等 に ついて 分 析 した (2)については 地 域 の 疾 や の 動 向 等 を 平 成 18 年 の 6 ヶ 月 分 のデータを 用 いて 分 析 した 特 に 本 年 はレセプトの 傷 名 データの 分 析 が 可 能 となったため 生 活 習 慣 の 疾 ごとについて 分 析 が 可 能 となった i
Ⅲ. 調 査 研 究 の 結 果 1. 健 診 結 果 と 疾 との 関 係 (1) リスクの 個 数 別 の 状 況 平 成 11 年 度 における 健 診 の 4 指 標 (BMI 血 圧 脂 質 代 謝 )のリスク 1 の 個 数 に 応 じた 平 成 18 年 6~11 月 での 疾 ( 高 ( 図 表 1) 平 成 11 年 度 保 有 リスク 数 別 平 成 18 年 有 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 )の 状 況 をみたと 有 3 ころ リスクの 個 数 が 増 えるにつれて 2 高 脂 血 症 については 平 成 18 年 時 点 での 有 が 大 幅 に 高 くなる 傾 向 がみられる 0 1 2 3 4 リスクが 0 と 4 つで 有 を 比 較 すると 糖 尿 リスク 数 で 2.7%と 48.3% で 5.6%と 50.6% 高 脂 血 症 で 8.4%と 33.となっている また 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 についてもわずかではあるが リスクの 個 数 が 増 えるにつれて 有 が 高 くなっていた( 図 表 1) 6 5 4 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 平 成 11 年 度 の 健 診 のリスクの 個 数 別 に 平 成 18 年 6~11 月 の 疾 の 状 況 をみたところ リスク の 個 数 が 多 いほうが 1 人 当 たり が 高 く ( 図 表 2) 入 院 外 のレセプトでは 生 活 習 慣 が 主 傷 となっているレセプトの 割 合 が 高 くな っている( 図 表 3) 入 院 外 の 生 活 習 慣 に 関 す るレセプトの 割 合 はリスクが 0 個 の 場 合 には 14.9%であるが リスクの 個 数 が 4 個 の 場 合 は 57.4%となっている ( 図 表 2) 一 人 当 た り 医 療 費 ( 円 ) 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 平 成 11 年 度 保 有 リスク 数 別 平 成 18 年 一 人 当 たり 0 1 2 3 4 リスク 数 ( 図 表 3) 7 リスク 数 別 レセプト 件 数 割 合 ( 入 院 外 ) 6 5 4 3 2 2 0 1 2 3 4 2 1 各 指 標 のは BMI:25 以 上 血 圧 : 収 縮 期 血 圧 130mmHg 以 上 かつ/または 拡 張 期 血 圧 85mmHg 以 上 脂 質 : 中 性 脂 肪 150mg/dl 以 上 かつ/またはHDLコレステロール 40mg/dl 未 満 代 謝 : 空 腹 時 血 糖 110mg/dl 以 上 としている 2 高 脂 血 症 は 他 の 内 分 泌 栄 養 及 び 代 謝 疾 患 に 含 まれる ii
(2) リスクの 内 容 別 の 状 況 BMI 血 圧 脂 質 代 謝 の 個 別 のリスクの 保 有 状 況 と 疾 の 発 生 状 況 の 関 係 をみたところ いずれのリスクについても リスクがない 場 合 よりもある 場 合 のほうが 各 疾 の 有 が 高 くなっている( 図 表 4) 平 成 11 年 度 BMIリスクの 有 無 別 平 成 18 年 有 ( 図 表 4) 平 成 11 年 度 血 圧 リスクの 有 無 別 平 成 18 年 有 3 4 3 2 有 2 1 4 3 3 有 2 2 1 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 平 成 11 年 度 脂 質 リスクの 有 無 別 平 成 18 年 有 平 成 11 年 度 代 謝 リスクの 有 無 別 平 成 18 年 有 3 5 2 2 有 1 有 4 4 3 3 2 2 1 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 (3) 類 メタボリックシンドロームの 有 無 別 の 状 況 類 メタボリックシンドローム 3 の 有 無 で 比 較 した 場 合 も 各 疾 の 有 は 類 メタボリ ックシンドロームありの 群 のほうが 高 くな る 傾 向 がみられる( 図 表 5) ( 図 表 5) 有 5 4 4 3 3 2 2 1 平 成 11 年 度 メタボリスクの 有 無 別 平 成 18 年 有 なし あり 高 脂 血 症 心 疾 患 脳 血 管 疾 患 3 類 メタボリックシンドロームのは BMIでリスクがあり かつ 血 圧 脂 質 代 謝 で 2 つ 以 上 リスクがある 場 合 とし ている iii
2. 地 域 の の 状 況 と 分 析 手 法 (1) 地 域 の の 分 析 40 歳 以 上 の の 上 位 を 占 める 疾 患 としては 入 院 については 各 種 悪 性 新 生 物 が 上 位 を 占 めていた 入 院 外 については いずれの 道 県 においても 高 血 圧 性 疾 患 他 の 内 分 泌, 栄 養 及 び 代 謝 疾 患 ( 高 脂 血 症 を 含 む) の 順 番 で 上 位 となり 生 活 習 慣 に 関 する 医 療 費 の 割 合 が 高 くなっている( 図 表 6) ( 図 表 6) 40 歳 以 上 の 平 成 18 年 6~11 月 の 主 傷 別 上 位 10 傷 ( 北 海 道 ) 入 院 入 院 外 1 位 他 の 悪 性 新 生 物 72,207,460 10.8% 高 血 圧 性 疾 患 424,347,770 16.3% 2 位 52,844,213 7.9% 214,096,370 8.2% 3 位 肺 の 悪 性 新 生 物 36,334,609 5.4% 他 の 内 分 泌, 栄 養 及 び 代 謝 疾 患 121,019,676 4.7% 4 位 他 の 消 化 器 系 の 疾 患 33,728,421 5. 胃 及 び 十 二 指 腸 潰 瘍 78,402,046 3. 5 位 良 性 新 生 物 29,890,515 4. 良 性 新 生 物 70,315,566 2.7% 6 位 26,137,799 3.9% 他 の 消 化 器 系 の 疾 患 57,652,742 2.2% 7 位 胃 の 悪 性 新 生 物 24,969,701 3.7% 他 の 神 経 系 の 疾 患 54,838,378 2.1% 8 位 他 の 心 疾 患 21,554,681 3.2% 喘 息 53,268,171 2. 9 位 脳 梗 塞 14,738,088 2.2% 他 の 眼 及 び 付 属 器 の 疾 患 50,450,130 1.9% 10 位 結 腸 の 悪 性 新 生 物 14,586,213 2.2% 他 の 悪 性 新 生 物 50,420,435 1.9% 40 歳 以 上 の 平 成 18 年 6~11 月 の 主 傷 別 上 位 10 傷 ( 長 野 ) 入 院 入 院 外 1 位 他 の 悪 性 新 生 物 16,935,167 8.8% 高 血 圧 性 疾 患 148,723,400 17. 2 位 9,454,120 4.9% 63,853,370 7.3% 3 位 他 の 消 化 器 系 の 疾 患 9,434,406 4.9% 他 の 内 分 泌, 栄 養 及 び 代 謝 疾 患 42,573,096 4.9% 4 位 良 性 新 生 物 8,523,963 4.4% 22,317,263 2.6% 5 位 胃 の 悪 性 新 生 物 6,855,261 3.6% 他 の 神 経 系 の 疾 患 21,232,069 2.4% 6 位 骨 折 6,171,628 3.2% 良 性 新 生 物 20,960,322 2.4% 7 位 5,614,312 2.9% 乳 房 の 悪 性 新 生 物 20,678,261 2.4% 8 位 他 の 損 傷 及 び 他 の 外 因 の 影 響 5,368,676 2.8% 胃 及 び 十 二 指 腸 潰 瘍 19,713,822 2.3% 9 位 肺 の 悪 性 新 生 物 5,282,773 2.8% 脊 椎 障 害 ( 脊 椎 症 を 含 む) 19,673,244 2.2% 10 位 脳 梗 塞 5,259,670 2.7% 胃 及 び 十 二 指 腸 炎 19,472,434 2.2% 40 歳 以 上 の 平 成 18 年 6~11 月 の 主 傷 別 上 位 10 傷 ( 福 岡 ) 入 院 入 院 外 1 位 他 の 悪 性 新 生 物 42,755,680 8.8% 高 血 圧 性 疾 患 345,006,230 15.1% 2 位 他 の 消 化 器 系 の 疾 患 24,413,115 5. 182,308,267 8. 3 位 肺 の 悪 性 新 生 物 22,186,010 4.6% 他 の 内 分 泌, 栄 養 及 び 代 謝 疾 患 93,508,200 4.1% 4 位 良 性 新 生 物 22,116,158 4.6% ウイルス 肝 炎 62,016,460 2.7% 5 位 22,100,392 4.6% 他 の 眼 及 び 付 属 器 の 疾 患 60,887,628 2.7% 6 位 21,901,948 4. 胃 及 び 十 二 指 腸 炎 59,173,911 2.6% 7 位 15,813,560 3.3% 良 性 新 生 物 54,706,837 2.4% 8 位 脳 梗 塞 14,241,767 2.9% 他 の 消 化 器 系 の 疾 患 50,808,933 2.2% 9 位 骨 折 13,948,639 2.9% 他 の 損 傷 及 び 他 の 外 因 の 影 響 50,243,864 2.2% 10 位 乳 房 の 悪 性 新 生 物 13,442,914 2.8% 他 の 神 経 系 の 疾 患 48,678,941 2.1% iv
入 院 入 院 外 のレセプトに 占 める 生 活 習 慣 の 割 合 をみたところ いずれの 道 県 においても 40 歳 代 から 50 歳 代 に 生 活 習 慣 の 占 める 割 合 が 大 幅 に 増 えている( 図 表 7) ( 図 表 7) 3 2 2 1 北 海 道 北 海 主 道 傷 医 別 療 医 費 療 割 費 合 割 ( 合 入 ( 院 入 ) 院 ) 北 海 道 主 医 傷 療 費 別 割 医 合 療 ( 費 入 割 院 合 外 ( 入 ) 院 外 ) 4 4 3 3 2 2 1 3 長 野 主 医 傷 療 費 別 数 医 割 療 合 費 ( 割 入 合 院 () 入 院 ) 4 長 野 主 医 傷 療 費 別 割 医 合 療 ( 費 入 割 院 合 外 () 入 院 外 ) 2 4 3 2 3 1 2 2 1 福 岡 福 主 岡 傷 医 別 療 医 費 療 数 費 割 合 ( 入 院 ) 福 岡 主 福 傷 岡 別 (( 入 院 外 ) 3 4 2 4 3 2 3 1 2 2 1 v
(2) 分 析 の 視 点 と 手 法 生 活 習 慣 のリスク 因 子 によって 将 来 の 生 活 習 慣 の 有 の 差 異 がみられることから 地 域 の 実 情 に 応 じた 効 果 的 な 保 健 事 業 を 展 開 していくためには 地 域 ごとに 健 診 データを 活 用 し 被 保 険 者 等 の 生 活 習 慣 のリスクの 状 況 を 分 析 し ハイリスク 集 団 を 適 切 に 把 握 す ることにより 重 点 的 な 保 健 指 導 を 進 めていくことが 重 要 となる については 傷 名 情 報 等 のレセプト 情 報 を 活 用 し 地 域 における 生 活 習 慣 等 の 疾 ごとの 分 析 や これらと の 三 要 素 の 分 析 や 年 齢 別 の 分 析 を 組 み 合 わせていくことが 生 活 習 慣 等 に 対 する 対 策 を 進 めていく 上 で 有 効 と 考 えられる Ⅳ. まとめ の 適 正 化 を 図 るためには 生 活 習 慣 に 対 する 効 果 的 な 対 策 を 進 めていくことが 重 要 であり 本 調 査 研 究 でも 試 みたように 健 診 データやレセプトデータを 有 効 に 活 用 し 生 活 習 慣 のリスクの 状 況 の 分 析 や 地 域 の 生 活 習 慣 等 の 動 向 の 分 析 を 行 っていく 必 要 がある 本 調 査 研 究 においては こうした 分 析 を 行 うための 視 点 を 示 すとともに 一 定 の 手 法 を 試 み ているが さらにこれらを 深 めていくとともに 地 域 間 の 比 較 も 含 め そのためのデータの 整 備 が 課 題 である また こうした 分 析 を 行 うに 当 たっては 個 人 情 報 の 保 護 に 十 分 な 措 置 を 講 じることが 不 可 欠 である vi