卒業論文

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税


Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

 

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Microsoft Word 短信.doc

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

4. 農 業 所 得 減 少 の 要 因 農 産 物 生 産 量 の 減 少 米 の 消 費 量 減 少 輸 入 品 との 競 合 農 家 戸 数 の 減 少 高 齢 化 販 売 価 格 の 低 下 価 格 支 持 政 策 の 縮 小 廃 止 ウルグアイラウンド 輸 入 価 格 の 低 下 円 高

●電力自由化推進法案

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

PowerPoint プレゼンテーション

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

厚 生 年 金 基 金 制 度 の 概 要 公 的 年 金 たる 厚 生 年 金 の 一 部 を 国 に 代 わって 支 給 ( 代 行 給 付 )しており 当 該 支 給 を 行 うための 費 用 として 事 業 主 から 保 険 料 を 徴 収 している 加 えて 各 基 金 ごとに 上 乗 せ

Microsoft Word 運営方針(本編)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

●幼児教育振興法案

第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

目 次 ルール1 決 算 書 には2 人 の 主 役 がいる! (1) 貸 借 対 照 表 (BS) P4 (2) 損 益 計 算 書 (PL) P5 ルール2 BSには3つの 家 と6つの 部 屋! (1)BSの3つの 家 と6つの 部 屋 P6 (2) 資 産 ( 流 動 資 産 固 定 資 産

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(Microsoft Word - \212\356\226{\225\373\220j _\217C\220\263\201j.doc)

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)



4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

公表表紙

39_1

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

Microsoft Word - ☆f.doc

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第1章 財務諸表

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資料 厚生年金基金の今後の方向性について.PDF

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

Microsoft Word - J_ エンゲル.docx

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18 国立高等専門学校機構

Taro-条文.jtd

労働時間と休日は、労働条件のもっとも基本的なものの一つです

平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

個人住民税徴収対策会議

1_2013BS(0414)

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経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

平成29年2月期 第2四半期決算短信

1. 官 業 時 代 の 簡 保 事 業 に 対 する 問 題 認 識 簡 易 生 命 保 険 と 民 間 生 保 との 競 争 条 件 の 不 整 合 国 営 事 業 として 一 定 の 事 業 制 限 のもと 民 間 と 競 合 することなく 民 業 を 補 完 する 目 的 (*1)で 事 業

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平成24年度 業務概況書

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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Microsoft Word - 目次.doc

法 人 等 に 対 する 課 税 際 課 税 原 則 の 帰 属 主 義 への 見 直 しのポイント 総 合 主 義 から 帰 属 主 義 への 移 行 法 人 及 び 非 居 住 者 ( 法 人 等 )に 対 する 課 税 原 則 について 従 来 のいわゆる 総 合 主 義 を 改 め OECD

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

注 記 事 項 (1) 四 半 期 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 無 (2) 会 計 方 針 の 変 更 会 計 上 の 見 積 りの 変 更 修 正 再 表 示 1 会 計 基 準 等 の 改 正 に 伴 う 会 計 方 針 の 変 更 : 無 2 1

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

2016年夏のボーナス見通し

建設特別・資産運用の基本方針

(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について

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定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

定款の一部変更、全部取得条項付普通株式の取得及び減資に関するお知らせ

対 象 者 株 式 (1,287,000 株 ) 及 び 当 社 が 所 有 する 対 象 者 株 式 (1,412,000 株 )を 控 除 した 株 式 数 (3,851,673 株 )になります ( 注 3) 単 元 未 満 株 式 も 本 公 開 買 付 けの 対 象 としております なお

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

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No.7 アメリカ 合 衆 国 小 規 模 事 例 (そ4) 助 金 も 財 源 になっている しかし 小 規 模 事 業 体 では 連 邦 政 府 から 基 金 はもちろん 市 から 補 助 金 もまったくない が 実 状 である すなわち 給 人 口 が25 人 から100 人 規 模 小 規


1. 売 上 高 と 利 益 の 状 況 (つづき) 売 上 高 営 業 利 益 率 は1.9%( 前 年 度 差.2%ポイント 上 昇 ) 売 上 高 経 常 利 益 率 は2.6%( 同.3% ポイント 上 昇 ) 売 上 高 当 期 純 利 益 率 は1.%( 同 1.%ポイント 上 昇 )

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官報掲載【セット版】

1 はじめに 財 政 の 役 割 資 源 配 分 ( 公 共 財 供 給 ) 所 得 再 分 配 経 済 安 定 化 ( 景 気 調 整 ) 地 方 自 治 体 の 役 割 は 資 源 配 分 ( 公 共 財 の 安 定 供 給 )とされる ( 所 得 再 分 配 や 経 済 安 定 化 は 国 の

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

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Transcription:

卒 業 論 文 証 券 業 界 における 規 模 の 経 済 性 について 千 葉 大 学 法 経 学 部 経 済 学 科 大 鋸 ゼミナール 09A2168H 山 岸 美 保 子

目 次 1. はじめに 2. 証 券 業 界 の 概 要 2-1 証 券 会 社 の 動 向 2-2 大 手 証 券 会 社 とネット 証 券 会 社 の 現 状 2-3 証 券 会 社 の 収 益 構 造 2-4 先 行 研 究 3. 分 析 3-1 規 模 の 経 済 性 と 生 産 関 数 3-2 生 産 関 数 の 推 定 3-3 生 産 関 数 の 推 定 結 果 4. 結 論 と 課 題 5. 参 考 文 献 6. 付 録 1

1.はじめに 本 研 究 は 日 本 の 証 券 会 社 の 収 益 と 費 用 の 関 係 を 規 模 の 経 済 性 という 観 点 から 検 証 し 収 益 向 上 の 手 かがりを 見 つけだすことを 目 的 としている 今 日 の 証 券 業 界 は ネット 証 券 が 拡 大 し 投 資 がより 便 利 で 手 軽 に 行 えるようになり その 手 数 料 の 安 さや 少 額 投 資 ができることにより 投 資 人 口 を 増 やす 手 助 けになっている 一 方 で 証 券 会 社 にとっては 手 数 料 が 大 きな 収 益 源 であるため 収 益 の 減 少 をもたらし 図 1 からもわかるようにかつてより 収 益 は 大 きく 減 少 している よって 証 券 業 界 はこれまでの 対 面 営 業 を 中 心 とした 営 業 スタイルを 変 えざるを 得 ない 状 況 にある こうした 現 状 から 証 券 会 社 の 売 上 を 伸 ばすためにどのような 経 営 努 力 を 行 うべきであるかを 計 量 的 手 法 によ って 分 析 する 本 研 究 ではコブ ダグラス 型 の 費 用 関 数 を 想 定 し 規 模 弾 力 性 を 推 計 することによって 規 模 の 経 済 性 を 分 析 する 推 計 にあたり 生 産 物 は 営 業 収 入 と 定 義 し 具 体 的 には 委 託 手 数 料 収 入 引 受 売 出 業 務 からの 収 入 募 集 売 出 の 取 扱 業 務 からの 収 入 トレーディン グ 損 益 を 取 り 上 げる 生 産 要 素 は 労 働 資 本 を 表 すものとして 従 業 員 数 と 物 件 費 ( 不 動 産 関 係 費 事 務 費 減 価 償 却 費 合 計 )を 考 えた またサンプルはこれらのデータ 入 手 可 能 な 20 社 で 計 測 期 間 は 2002 年 から 2011 年 までの 10 年 間 とした また 大 手 準 大 手 証 券 と ネット 証 券 各 5 社 のそれぞれの 分 析 も 行 った 推 計 の 結 果 証 券 会 社 全 体 として 営 業 収 益 の 規 模 の 経 済 性 は 認 められたが 営 業 収 益 の 大 半 を 占 める 委 託 手 数 料 収 入 については 認 められなかった それに 対 し 引 受 売 出 手 数 料 収 入 の 規 模 弾 性 値 は 有 意 に 1 を 大 きく 超 えており 規 模 の 経 済 性 が 認 められた しかし 中 には 説 明 変 数 の 係 数 がマイナスとなるものもみられ 資 本 の 増 加 には 慎 重 を 要 するとい える 大 手 5 社 とネット 5 社 を 比 較 してみると 規 模 弾 性 値 に 大 きな 違 いはなくても 説 明 変 数 の 係 数 の 値 がネット 証 券 でマイナスになることが 目 立 った これはネット 証 券 の 業 務 形 態 から 考 えて わずかな 人 員 で 業 務 を 行 えることからも 必 要 以 上 の 資 本 投 入 はかえって 収 入 の 減 少 を 引 き 起 こすということがいえる また 全 ての 分 析 を 通 して 引 受 売 出 手 数 料 収 入 の 規 模 弾 性 値 が 高 かったことから 証 券 会 社 全 体 において 有 価 証 券 の 引 受 や 販 売 の 業 務 に 重 点 を 置 くとより 収 入 の 増 加 が 期 待 できるということがわかった 今 回 の 研 究 において 規 模 の 経 済 性 の 存 在 が 認 められたものの 説 明 変 数 の 係 数 がマイナ スとなることが 多 くみられた 従 業 員 やその 他 経 費 の 資 本 の 増 員 には 十 分 な 検 討 が 必 要 で あると 考 えられる また 今 後 のネット 証 券 の 拡 大 を 考 えても 資 本 の 投 入 にはより 慎 重 にな るべきであり HPの 充 実 など 多 くの 費 用 を 要 せずとも 人 々に 広 く 伝 わるネット 関 連 に 力 を 入 れていくことが 重 要 であると 考 えられる 本 論 文 の 構 成 は 以 下 のようになっている まず 2 章 で 証 券 業 界 について 説 明 し 先 行 研 究 を 挙 げる そして 3 章 で 規 模 の 経 済 性 についての 分 析 をし 4 章 で 結 論 と 課 題 を 述 べてい る 2

2. 証 券 業 界 の 概 要 2-1 証 券 会 社 の 動 向 図 2 1 によると 証 券 会 社 の 数 は 2003 年 からは 年 々 増 加 したが 2008 年 を 機 に 再 び 減 少 傾 向 である 2003 年 以 降 規 制 緩 和 の 浸 透 や 良 好 な 市 場 環 境 などを 背 景 として 金 融 先 物 取 引 業 者 やネット 取 引 業 者 投 信 販 売 に 特 化 した 証 券 会 社 の 新 規 参 入 が 相 次 いだ 2007 年 2008 年 の 世 界 的 金 融 危 機 により 財 務 状 況 が 悪 化 し 2009 年 以 降 金 融 商 品 取 引 業 を 廃 止 する 証 券 会 社 が 増 加 し 現 在 の 数 字 に 至 っている 図 2-2 によると 証 券 会 社 全 体 の 従 業 員 数 営 業 所 の 数 は 2003 年 から 2008 年 にかけ 年 々 増 加 したが それ 以 降 減 少 し 続 け 2011 年 にはピーク 時 の 約 90%にまで 減 少 している また 証 券 会 社 の 数 に 対 し 営 業 所 や 従 業 者 の 数 が 大 きく 減 少 している これは 投 資 家 の 株 式 離 れに 加 えて 株 式 委 託 手 数 料 の 値 下 げ 競 争 が 激 化 し 証 券 会 社 の 収 益 が 悪 化 して 多 く の 営 業 所 や 従 業 者 を 維 持 することができなくなったためだと 考 えられる また 最 近 では ネット 取 引 が 普 及 し 図 2-3 からわかるようにネット 口 座 も 年 々 増 加 しており こうした ネット 取 引 の 普 及 が 営 業 所 や 営 業 マンの 数 の 減 少 に 拍 車 をかけていると 考 えられる 80 年 代 の 金 融 自 由 化 により 証 券 会 社 の 経 営 環 境 は 大 きく 変 わった 97 年 に 4 社 寡 占 体 制 の 一 角 を 占 めていた 山 一 證 券 が 自 主 廃 業 し 事 実 上 倒 産 した また 経 営 困 難 に 陥 った 準 大 手 証 券 中 堅 証 券 の 再 編 が 相 次 いだ 同 時 に 証 券 業 界 への 新 規 参 入 促 進 も 業 界 地 図 を 大 きく 変 え 89 年 に 証 券 会 社 の 設 立 は 免 許 制 から 届 出 制 に 変 わり 他 産 業 からの 参 入 が 容 易 となった 新 規 参 入 企 業 との 競 争 から 守 られてきた 証 券 業 界 は これを 機 に 抜 本 的 な 経 営 の 見 直 しを 迫 られることにな った 異 業 種 からの 参 入 としては ソニーがマネックス 証 券 に 出 資 したり インターネッ ト 企 業 の 楽 天 が DLJ ディレクト 証 券 (2004 年 7 月 に 社 名 を 楽 天 証 券 に 改 称 )を 買 収 した している こうした 新 規 参 入 証 券 の 特 徴 は 多 くがネット 証 券 である 従 来 の 店 舗 を 設 置 し 大 量 のセールスマンを 投 入 する 営 業 形 態 は 収 益 性 が 低 いため 低 い 手 数 料 を 武 器 に ネット 取 引 を 拡 大 することで 独 自 の 営 業 基 盤 を 確 立 している 2-2 大 手 証 券 会 社 とネット 証 券 会 社 の 現 状 表 2-1 によると 証 券 会 社 大 手 5 社 の 平 成 23 年 4 月 1 日 ~ 平 成 23 年 12 月 31 日 までの 業 績 は 野 村 HD 大 和 証 券 みずほ 証 券 は 赤 字 で 黒 字 を 維 持 している 三 菱 と 日 興 も 前 年 同 期 比 では 大 幅 な 減 少 となっている 同 条 件 でネット 証 券 大 手 5 社 を 見 てみると 純 利 益 は 軒 並 み 前 年 同 期 比 で 大 幅 な 減 少 になっているが 各 社 黒 字 は 維 持 しており 大 手 証 券 会 社 と の 明 暗 が 分 かれた 形 となっている 証 券 業 界 は 他 業 種 に 比 べ 給 料 が 高 く 現 状 のような 厳 しい 市 場 環 境 では 人 件 費 が 抑 えられるネット 証 券 の 方 が 黒 字 を 確 保 しやすく マネックス グループの HP によると 費 用 額 のうち 人 件 費 が 占 める 比 率 は 大 手 証 券 会 社 だと 50% 程 度 (40~60%)であるところ 当 会 社 は 20% 弱 と 表 記 している 現 に 大 手 証 券 会 社 は 大 3

幅 な 人 員 削 減 などコスト 圧 縮 を 推 進 している 今 後 もネット 取 引 が 伸 びていくことは 明 ら かで 対 面 営 業 中 心 としてきた 証 券 会 社 でもネット 取 引 口 座 は 年 々 増 加 傾 向 にある 2-3 証 券 会 社 の 収 益 構 造 証 券 会 社 の 営 業 収 益 は 受 取 手 数 料 ( 委 託 手 数 料 引 受 売 出 手 数 料 募 集 売 出 しの 取 扱 手 数 料 その 他 受 取 手 数 料 ) トレーディング 損 益 からなる また 証 券 業 務 は 発 行 市 場 に おけるアンダーライター 業 務 と 流 通 市 場 におけるディーラー 業 務 及 びブローカー 業 務 に 分 けられ アンダーライター 業 務 とは 有 価 証 券 の 引 受 及 び 売 出 を 行 う 業 務 である ディー ラー 業 務 とは 証 券 会 社 が 顧 客 または 他 の 証 券 会 社 から 有 価 証 券 を 買 い またはこれらに 対 して 自 己 の 有 価 証 券 を 売 却 する 業 務 である また ブローカー 業 務 とは 顧 客 の 計 算 にお いて 行 う 有 価 証 券 の 売 買 の 媒 介 取 次 などの 業 務 である アンダーライター 業 務 から 得 ら れる 収 益 が 引 受 売 出 手 数 料 および 募 集 売 出 の 取 扱 手 数 料 であり ディーラー 業 務 がト レーディング 損 益 ブローカー 業 務 が 委 託 手 数 料 となっている 原 田 福 田 (2010)はバブル 崩 壊 後 の 証 券 業 界 の 業 容 変 化 に 関 する 分 析 を 行 っており それ によると 株 式 委 託 手 数 料 が 自 由 化 されるまでの 時 期 (1987 年 から 1999 年 )は 売 買 代 金 と 証 券 会 社 の 経 常 損 益 の 相 関 は 0.96 と 非 常 に 強 いのに 対 し 株 式 委 託 手 数 料 自 由 化 後 の 時 期 (2000 年 から 2009 年 )は 相 関 係 数 が 0.33 にまで 低 下 していると 述 べている 株 式 委 託 手 数 料 の 自 由 化 以 降 証 券 会 社 は 株 式 委 託 手 数 料 収 入 に 頼 れなくなっている 2-4 先 行 研 究 大 手 中 規 模 の 証 券 業 界 の 個 別 の 財 務 データを 用 いた 分 析 としては 規 模 の 経 済 性 の 研 究 を 行 っている 村 山 渡 辺 (1989)が 挙 げられる この 研 究 は 生 産 物 を 営 業 収 益 生 産 要 素 として 従 業 員 数 固 定 資 産 および 有 利 子 負 債 残 高 としてわが 国 の 証 券 業 トップ 10 社 に ついて 規 模 の 経 済 性 を 分 析 している また 証 券 会 社 の 業 務 を 株 式 売 買 の 取 り 次 ぎとその 他 業 務 に 二 分 し 業 務 別 の 規 模 の 経 済 性 を 測 定 している それによると 証 券 会 社 間 に 規 模 の 経 済 性 が 存 在 する つまり 事 業 規 模 が 大 きくなればなるほど 単 位 当 たりのコストが 小 さ くなり 競 争 上 有 利 になることがわかった また 業 務 別 にみても 両 業 務 ともほぼ 規 模 の 経 済 性 が 見 られ 委 託 売 買 業 務 よりもその 他 業 務 のほうが 規 模 の 経 済 性 が 大 きいという 結 果 にいたった この 結 果 より 規 模 の 経 済 性 の 存 在 を 前 提 としたとき 証 券 業 において 規 模 拡 大 による 生 産 効 率 促 進 よりも 競 争 促 進 による 資 源 配 分 の 効 率 促 進 に 重 点 を 置 くべきであり 中 でもその 他 業 務 において より 競 争 促 進 政 策 がとられるべきであると 結 論 付 けている 上 記 の 研 究 は 1978 年 ~1987 年 までのデータであり また 証 券 業 務 を 単 に 二 分 して 多 様 性 を 考 慮 していない またより 具 体 的 な 業 務 の 促 進 については 不 明 確 である 近 年 の 証 券 市 場 は 手 数 料 の 自 由 化 やネット 証 券 の 参 入 など 以 前 とは 大 きく 様 変 わりしており 業 務 も 多 様 化 している そういった 観 点 を 考 慮 しつつ 本 研 究 では 証 券 会 社 の 売 上 げを 伸 ば すためには どこに 重 点 をおいた 経 営 をしていくべきかを 検 証 する 4

3. 分 析 3-1 規 模 の 経 済 性 と 生 産 関 数 本 研 究 では 規 模 の 経 済 性 という 観 点 から 分 析 を 行 う 規 模 の 経 済 性 とは 企 業 が 生 産 規 模 を 拡 大 した 時 に 生 産 の 効 率 性 がよくなることをいう 言 い 換 えれば 資 本 や 労 働 などの 生 産 要 素 の 投 入 量 を 増 加 させたとき 生 産 量 が 比 例 的 以 上 に 増 大 することであ る いま m 種 の 生 産 要 素 から 単 一 の 生 産 物 が 作 られるという 関 係 をあらわすものとして 生 産 関 数 を 考 える Y を 産 出 量 X を 投 入 量 とし 生 産 関 数 を Y=f(X)と 書 く 例 えば X=(x1,x2, xm)で x1 は 労 働 量 x2 は 資 本 設 備 量 などを 表 す 規 模 の 経 済 性 とは 投 入 量 をすべて n 倍 にしたときに 産 出 量 が n 倍 になることをいうのであるから と 定 義 される > 収 穫 逓 増 ( 規 模 の 経 済 ) f(nx) = nf(x) 規 模 に 関 する 収 穫 一 定 < 収 穫 逓 減 ( 規 模 の 不 経 済 ) また 生 産 要 素 構 成 比 を 一 定 に 保 った 場 合 の 生 産 要 素 規 模 をμとするとμに 関 する 生 産 量 の 弾 力 性 が 規 模 弾 力 性 として 定 義 される つまり 規 模 弾 力 性 は 生 産 要 素 の 投 入 規 模 の 増 加 率 dμ/μに 対 する 生 産 量 の 増 加 率 dy/y の 比 として 次 のように 定 義 される 規 模 弾 力 性 :k= dd/y dμ/μ したがって 規 模 弾 力 性 kが1より 大 きいとき 生 産 要 素 規 模 の 増 加 率 よりも 生 産 量 の 増 加 率 が 大 きく 規 模 の 経 済 性 があるといえる また k=1のときは 規 模 に 関 する 収 穫 一 定 k<1 のときは 規 模 の 不 経 済 を 意 味 する 規 模 の 経 済 性 の 有 無 を 判 定 するには 生 産 関 数 を 推 計 し 規 模 弾 力 性 を 計 算 すればよい ことになる 3-2 生 産 関 数 の 推 定 生 産 関 数 を 推 定 するにあたり 生 産 物 と 生 産 要 素 を 定 義 する 必 要 がある 証 券 会 社 のト ータルの 活 動 から 生 まれる 生 産 物 として 営 業 収 入 を 用 いる また 業 務 別 に 生 まれる 生 産 物 として 委 託 手 数 料 収 入 引 受 売 出 手 数 料 収 入 募 集 売 出 の 取 扱 手 数 料 収 入 トレーデ ィング 損 益 を 取 り 上 げる これらの 収 入 とその 他 収 入 を 合 わせたものが 営 業 収 入 であるが 本 研 究 ではその 他 収 入 についての 分 析 は 行 わない 次 に 生 産 関 数 の 説 明 変 数 である 生 産 要 素 としては 労 働 と 資 本 を 表 す 指 標 として 従 業 員 数 と 物 件 費 を 用 いる 5

生 産 物 と 生 産 要 素 の 関 係 を 表 す 生 産 関 数 としてはコブ ダグラス 型 の 関 数 形 を 想 定 し 以 下 の 回 帰 式 を 最 小 2 乗 法 で 推 計 した コブ ダグラス 型 生 産 関 数 Y i = α 0 K α i L β i ε i (1) Y は 生 産 物 Kは 資 本 投 入 量 Lは 労 働 投 入 量 を 表 す 本 研 究 では 生 産 物 Yを 前 述 した 営 業 収 入 と 4 つの 収 入 項 目 とし Kを 物 件 費 Lを 従 業 員 数 とした (1) 式 を 対 数 変 換 すると lny i = a 0 + αlnk i + βlnl i + ε i (2) となり a 0 は 定 数 項 α βは 推 計 される 各 係 数 を 表 す また 規 模 弾 力 性 kは(3) 式 のようになる k=α + β (3) なお 分 析 するデータは 2002 年 3 月 決 算 期 から 2011 年 3 月 決 算 期 までの 10 年 間 とす る サンプル 数 は 20 社 であるが 対 数 変 換 のため 収 入 項 目 がマイナスとなるデータは 除 い た 3-3 生 産 関 数 の 推 計 結 果 前 節 で 説 明 した 5 つの 生 産 物 の 規 模 弾 力 性 の 推 計 結 果 は 表 3-1 2 3 のようになった 全 体 の 分 析 を 通 して 営 業 収 益 の 規 模 弾 性 値 が 有 意 1に 1 を 超 えるか 1 に 近 い 値 となってい るが 営 業 収 益 の 大 半 を 占 める 委 託 手 数 料 収 入 の 値 はどれも 有 意 に 1 を 下 回 った それに 対 し 引 受 売 出 手 数 料 収 入 の 値 はどれも 有 意 に 1 を 大 きく 超 えており 規 模 の 経 済 性 が 認 められた しかしネット 証 券 の 分 析 結 果 を 見 ると 物 件 費 の 説 明 変 数 の 値 がマイナスと なっている これは 物 件 費 を 増 やすことにより 収 入 が 減 少 することを 意 味 する ネット 証 券 の 他 の 収 入 を 対 象 とした 分 析 結 果 を 見 ても 説 明 変 数 の 係 数 にマイナスが 目 立 つ これは ネット 証 券 の 業 務 形 態 から 従 来 よりも 少 ない 人 員 で 業 務 を 行 えるためだと 考 えられる 必 要 以 上 の 資 本 投 入 はかえって 収 入 の 減 少 を 引 き 起 こしてしまうということがわかった 1 (1) 式 において 仮 説 検 定 を 行 う 帰 無 仮 説 H 0 :α + β = 1 対 立 仮 説 H 1 :α + β 1 で 帰 無 仮 説 の 制 約 下 での 対 数 モデルは 次 のように 展 開 される α + β = 1より β =1 α と 変 形 して 対 立 モデルに 代 入 すると,lnY i = a 0 + αlnk i + (1 α)lnl i + ε i = a 0 + α(lnk i lnl i ) + lnl i + ε i よって lny i lnl i = a 0 + α(lnk i lnl i ) + ε i が 帰 無 仮 説 の 回 帰 式 となり 制 約 下 モデルの 残 差 平 方 和 と 制 約 なしモデルの 残 差 平 方 和 を 用 い て 検 定 統 計 量 を 算 出 し F 検 定 を 行 う 6

また 委 託 手 数 料 収 入 において 証 券 会 社 全 体 では 従 業 員 数 の 係 数 がマイナスとなっている ことから 人 員 をあまり 割 くべきではないといえるが 大 手 証 券 の 係 数 の 値 はプラスにな っている 大 手 証 券 では 営 業 マンを 主 体 とした 業 務 形 態 であるため やはり 人 員 は 必 要 で あるということがいえる その 他 収 入 項 目 については 証 券 会 社 全 体 としては 規 模 の 経 済 性 が 認 められたものの 大 手 5 社 には 認 められず ネット 証 券 の 方 で 規 模 の 経 済 性 が 認 められた よってこれらの 収 入 に 関 わる 業 務 はネット 証 券 において 資 本 の 増 加 により 収 入 の 増 加 が 期 待 できると 考 えられる 以 上 で 得 られた 結 果 から 証 券 会 社 全 体 については 引 受 売 出 し 手 数 料 収 入 の 規 模 弾 性 値 が 高 かったことから 有 価 証 券 の 引 き 受 け 業 務 に 重 点 を 置 くとよいといえる しかし 引 受 業 務 は 証 券 会 社 が 新 株 式 や 新 債 券 をいったん 買 い 取 り 広 く 投 資 家 へ 販 売 する 業 務 で 引 き 受 け た 後 に 全 部 売 りきることができなければ 証 券 会 社 が 引 き 取 らなければならないというリスクを 負 う よって 安 易 に 引 受 業 務 を 拡 大 することは 危 険 であるため 経 営 を 見 直 す 際 の 参 考 として 考 えることが 望 ましい また 大 手 証 券 とネット 証 券 の 比 較 より 結 果 の 違 いからみても 両 者 の 業 務 形 態 の 違 いが 伺 える ネット 証 券 については 説 明 変 数 の 係 数 の 値 がマイナスになることが 多 くみられ これはネット 証 券 の 業 務 形 態 から 考 えて わずかな 人 員 で 業 務 を 行 えることからも 必 要 以 上 の 資 本 投 入 はかえ って 収 入 の 減 少 を 引 き 起 こすということがいえる 4. 結 論 と 課 題 以 上 本 研 究 では 証 券 業 務 を 規 模 の 経 済 性 という 観 点 から 検 証 した 今 回 の 研 究 におい て 規 模 の 経 済 性 の 存 在 が 認 められたものの 説 明 変 数 の 係 数 がマイナスとなることが 多 く みられた 単 に 資 本 を 投 入 すれば 収 入 も 増 えるというわけにはいかず 従 業 員 やその 他 経 費 の 増 員 には 十 分 な 見 直 しが 必 要 であると 考 えられる また 今 後 ネット 証 券 が 拡 大 してい くことは 明 らかなので 資 本 の 投 入 にはより 慎 重 になるべきであるといえる 従 業 員 や 営 業 所 を 増 やすより 多 くの 費 用 を 要 しないネット 関 連 に 力 をいれていくことがよいと 考 え られる このように 今 後 も 人 員 削 減 が 進 行 するであろう 証 券 業 界 において ネット 証 券 の さらなる 利 便 性 従 業 員 の 質 や 知 識 の 向 上 により 証 券 業 界 の 発 展 を 目 指 していくことが 必 要 であると 考 えられる 今 後 の 課 題 としては 今 回 の 研 究 はサンプル 数 が 財 務 諸 表 データが 公 開 されている 20 社 に 限 られていることもあり 統 計 的 に 有 意 な 結 果 が 十 分 に 得 られなかった よって 200 社 を 超 えるわが 国 証 券 業 界 全 体 について 論 ずるには 不 十 分 である また 生 産 物 や 生 産 要 素 と して 用 いる 指 標 については 様 々な 議 論 があることからさらなる 検 討 が 必 要 とされる デー タを 増 やし 指 標 を 変 えることでさらなる 有 用 な 結 果 が 得 られることが 期 待 できるので このような 課 題 を 踏 まえて 研 究 を 続 けたい 7

5. 参 考 文 献 日 本 証 券 業 協 会 http://www.jsda.or.jp/ マネックスグループHP http://www.monexgroup.jp/ 原 田 喜 美 枝 福 田 徹 証 券 業 界 の 変 遷 と 展 望 証 券 アナリストジャーナル 52 62 項 (2010) 村 山 純 渡 辺 健 わが 国 証 券 業 における 規 模 の 経 済 性 について ファイナンシ ャル レビュー 1989 年 1 月 大 蔵 省 財 政 金 融 研 究 所 (1989) 8

6. 付 録 図 1 証 券 業 界 の 手 数 料 収 入 推 移 3500000 3000000 2500000 2000000 1500000 1000000 500000 0 手 数 料 収 入 手 数 料 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 図 2-1 350 証 券 会 社 数 の 推 移 300 250 200 150 100 会 社 数 50 0 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 9

図 2-2 従 業 員 店 舗 数 推 移 105000 100000 95000 90000 85000 80000 75000 2350 2300 2250 2200 2150 2100 2050 2000 1950 1900 従 業 員 店 舗 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 図 2-3 インターネット 取 引 口 座 数 推 移 出 所 : 日 本 証 券 業 協 会 10

表 2-1 大 手 証 券 会 社 とネット 証 券 会 社 比 較 (2011 年 4 月 1 日 ~12 月 31 日 ) 大 手 証 券 営 業 収 益 純 利 益 前 年 同 期 比 増 減 率 % 野 村 HD 1,286,358 10,499 大 和 証 券 G 309,025 50,355 三 菱 UFJ 証 券 G 220,638 4,082 77.8 SMBC 日 興 証 券 180,698 9,143 62.3 みずほ 証 券 166,785 63,383 ネット 証 券 SBI 証 券 29,247 4,087 28.3 マネックス G 23,387 753 60.3 楽 天 証 券 15,249 2,164 35.2 松 井 証 券 12,900 2,870 36.7 カブドットコム 証 券 9,407 1,120 43.8 出 所 : 各 企 業 ディスクロージャー 資 料 より 11

表 3-1 規 模 弾 力 性 の 推 定 結 果 全 20 社 を 対 象 とした 場 合 の 推 計 結 果 推 定 値 説 明 変 数 推 定 値 の 標 準 t 値 P 値 偏 差 定 数 項 1.098 0.194 5.657 0.000 従 業 員 数 0.047 0.037 1.281 0.202 営 業 収 益 物 件 費 0.996 0.040 24.821 0.000 0.927 4.117 1.043** 定 数 項 1.159 0.303 3.826 0.000 従 業 員 数 -0.170 0.057-2.958 0.003 委 託 手 数 物 件 費 1.039 0.063 16.606 0.000 料 0.790 14.503 0.869*** 定 数 項 -7.072 0.646-10.946 0.000 従 業 員 数 1.430 0.123 11.672 0.000 引 受 売 出 物 件 費 0.336 0.134 2.517 0.013 0.783 73.555 1.766*** 定 数 項 -2.607 0.598-4.357 0.000 従 業 員 数 1.497 0.113 13.193 0.000 募 集 売 出 物 件 費 -0.013 0.124-0.107 0.915 しの 取 扱 0.763 42.968 1.484*** 定 数 項 0.131 0.628 0.209 0.835 従 業 員 数 1.732 0.131 13.181 0.000 トレーディ 物 件 費 -0.423 0.136-3.111 0.002 ング 損 益 0.712 17.668 1.308*** ( 注 ) F 統 計 量 は 自 由 度 (1 197)の F 分 布 に 従 う ***1% ** 5% * 10% 水 準 で 有 意 を 表 す 12

表 3-2 大 手 5 社 を 対 象 とした 場 合 の 推 計 結 果 推 定 値 説 明 変 数 推 定 値 の 標 準 t 値 P 値 偏 差 定 数 項 0.367 0.498 0.737 0.465 従 業 員 数 0.862 0.193 4.466 0.000 営 業 収 益 物 件 費 0.403 0.155 2.598 0.012 0.927 12.458 1.265*** 定 数 項 2.540 0.675 3.763 0.000 従 業 員 数 0.530 0.261 2.026 0.048 委 託 手 数 物 件 費 0.321 0.210 1.528 0.133 料 0.735 2.739 0.851 * 定 数 項 -9.535 1.054-9.044 0.000 従 業 員 数 1.702 0.408 4.169 0.000 引 受 売 出 物 件 費 0.347 0.329 1.057 0.296 0.859 26.205 2.049*** 定 数 項 1.059 0.676 1.568 0.124 従 業 員 数 -0.674 0.262-2.577 0.013 募 集 売 出 物 件 費 1.373 0.211 6.521 0.000 しの 取 扱 0.794 9.484 0.698*** 定 数 項 0.950 0.762 1.247 0.219 従 業 員 数 0.345 0.295 1.169 0.248 トレーディ 物 件 費 0.648 0.237 2.729 0.009 ング 損 益 0.771 0.005 0.992 ( 注 ) F 統 計 量 は 自 由 度 (1 47)の F 分 布 に 従 う ***1% ** 5% * 10% 水 準 で 有 意 を 表 す 13

表 3-3 ネット 5 社 を 対 象 とした 場 合 の 推 計 結 果 推 定 値 説 明 変 数 推 定 値 の 標 準 t 値 P 値 偏 差 定 数 項 1.155 0.762 1.516 0.136 従 業 員 数 -0.161 0.172-0.939 0.353 営 業 収 益 物 件 費 1.119 0.160 7.005 0.000 0.747 0.216 0.957 定 数 項 2.231 0.801 2.785 0.008 従 業 員 数 -0.170 0.181-0.940 0.352 委 託 手 数 物 件 費 0.939 0.168 5.587 0.000 料 0.636 5.276 0.768** 定 数 項 -6.245 3.537-1.766 0.084 従 業 員 数 2.359 0.798 2.956 0.005 引 受 売 出 物 件 費 -0.313 0.742-0.423 0.675 0.325 5.507 2.045** 定 数 項 2.658 2.877 0.924 0.360 従 業 員 数 2.799 0.649 4.311 0.000 募 集 売 出 物 件 費 -1.416 0.603-2.347 0.023 しの 取 扱 0.326 1.234 1.383 定 数 項 -10.687 3.388-3.154 0.004 従 業 員 数 2.859 0.638 4.482 0.000 トレーディ 物 件 費 0.079 0.627 0.126 0.901 ング 損 益 0.638 13.609 2.937*** ( 注 ) F 統 計 量 は 自 由 度 (1 47)の F 分 布 に 従 う ***1% ** 5% * 10% 水 準 で 有 意 を 表 す 14