東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 硫 黄 漏 えい 事 故 調 査 委 員 会 報 告 書 ( 概 要 版 ) 2012 年 10 月 硫 黄 漏 えい 事 故 調 査 委 員 会 1
目 次 1 事 故 調 査 委 員 会 の 目 的 と 構 成... 1 2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 概 要... 1 3 発 災 事 業 所 および 発 災 施 設 の 概 要... 2 3.1 発 災 事 業 所 の 概 要... 2 3.2 発 災 施 設 の 概 要... 3 4 硫 黄 漏 えい 事 故 の 状 況... 3 5 硫 黄 漏 えい 事 故 の 発 生 要 因 と 再 発 防 止 対 策... 5 5.1 硫 黄 漏 えい 事 故 の 発 生 要 因... 5 5.1.1 直 接 要 因... 5 5.1.2 間 接 要 因... 5 5.2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 再 発 防 止 対 策... 6 6 硫 黄 漏 えい 事 故 の 通 報 義 務 に 違 反 した 要 因 と 再 発 防 止 に 向 けての 提 言... 7 6.1 石 災 法 による 異 常 現 象 通 報 に 関 する 社 内 体 制... 7 6.2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 通 報 義 務 に 違 反 した 要 因... 8 6.2.1 直 接 要 因... 8 6.2.2 間 接 要 因... 8 6.2.3 職 場 風 土 要 因... 10 6.3 通 報 義 務 違 反 の 再 発 防 止 に 向 けての 提 言...10 7 おわりに... 11 1
1 事 故 調 査 委 員 会 の 目 的 と 構 成 本 委 員 会 は 2011 年 6 月 11 日 に 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 で 発 生 した 硫 黄 漏 え い 事 故 に 関 して 第 三 者 による 公 正 な 立 場 から その 要 因 の 究 明 と 再 発 防 止 対 策 について 検 討 し また 事 故 発 生 時 点 で 石 油 コンビナート 等 災 害 防 止 法 ( 以 下 石 災 法 という )による 異 常 現 象 通 報 義 務 に 違 反 したことに 関 する 要 因 の 究 明 と 再 発 防 止 対 策 について 検 討 する そし て それらの 成 果 を 基 に 安 全 管 理 の 推 進 と 操 業 の 透 明 性 を 高 めるための 提 言 を 行 うことを 目 的 とする 本 委 員 会 は 4 名 の 学 識 経 験 者 からなる 委 員 および 関 係 官 庁 機 関 からのオブザーバーに より 構 成 された 本 委 員 会 のメンバーを 表 1-1 に 示 す 表 1-1 事 故 調 査 委 員 会 メンバー 氏 名 所 属 等 委 員 長 田 村 昌 三 東 京 大 学 名 誉 教 授 委 員 鈴 木 和 彦 岡 山 大 学 教 授 委 員 小 松 原 明 哲 早 稲 田 大 学 教 授 委 員 松 尾 眞 弁 護 士 ( 桃 尾 松 尾 難 波 法 律 事 務 所 ) オブザーバー 西 浦 教 之 堺 市 消 防 局 予 防 部 危 険 物 保 安 課 長 オブザーバー 尾 川 文 彦 大 阪 府 政 策 企 画 部 危 機 管 理 室 保 安 対 策 課 長 オブザーバー 山 下 忠 司 中 部 近 畿 産 業 保 安 監 督 部 近 畿 支 部 保 安 課 長 オブザーバー 安 田 慎 一 高 圧 ガス 保 安 協 会 理 事 2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 概 要 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 の 定 期 修 理 中 の 2011 年 6 月 11 日 12 時 頃 屋 外 タン ク 貯 蔵 所 (TK-703) 近 傍 の 出 荷 ポンプ 出 口 戻 り 配 管 に 設 置 されている 弁 の 取 外 し 後 のフランジ から 溶 融 硫 黄 が 漏 えいしていることが 協 力 会 社 員 により 発 見 された 連 絡 を 受 けた 製 油 部 員 により 直 ちにタンク 元 弁 が 閉 止 され 漏 えいは 停 止 した また 散 水 冷 却 措 置 により 漏 えい 硫 黄 は 固 化 し 漏 えいの 拡 大 防 止 が 図 られた 固 化 した 硫 黄 は その 大 方 が 同 日 中 に 回 収 除 去 さ れた なお 本 件 事 故 が 発 生 した 際 に 直 ちに 堺 市 消 防 局 への 石 災 法 に 基 づく 異 常 現 象 を 通 報 せ ず その 後 も 実 施 していない この 硫 黄 の 漏 えい 事 故 に 関 して 人 的 被 害 はなかった 当 該 タンク 貯 蔵 所 の 設 備 にも 補 修 11
等 が 必 要 となる 設 備 被 害 は 発 生 していない また 漏 えい 硫 黄 による 周 辺 地 域 への 環 境 被 害 も 発 生 しなかった 6 月 11 日 に 発 生 した 硫 黄 の 漏 えいの 状 況 を 以 下 に 示 す 漏 えい 場 所 (*1) 堺 工 場 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703) 付 属 配 管 部 近 傍 漏 えい 物 (*1) 危 険 物 第 2 類 可 燃 性 固 体 ( 品 名 硫 黄 ) (TK-703 貯 蔵 物 ) 漏 えい 量 (*1) 約 30 トン(TK-703 在 槽 量 の 変 化 より 算 出 ) 直 接 損 害 額 (*1) 約 60 万 円 ( 硫 黄 単 価 =200$/トン 為 替 =90 /$にて 計 算 ) 漏 えい 範 囲 面 積 =280m 2 平 均 厚 み=5~6cm 程 度 ( 常 温 での 密 度 =1920~2070kg/m 3 ) *1: 平 成 24 年 7 月 18 日 付 け 堺 消 危 第 922 号 異 常 現 象 の 通 報 義 務 違 反 等 について へのご 回 答 ( 第 3 報 ) より 抜 粋 3 発 災 事 業 所 および 発 災 施 設 の 概 要 3.1 発 災 事 業 所 の 概 要 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 は 敷 地 面 積 77 万 m² 従 業 員 数 407 人 (2011 年 6 月 ) で 主 要 設 備 として 常 圧 蒸 留 装 置 156,000 バーレル/ 日 ( 約 1,000m 3 / 時 ) 流 動 接 触 分 解 装 置 46,000 バーレル/ 日 ( 約 300m 3 / 時 )の 能 力 を 有 する 製 油 所 である 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 では 安 全 健 康 環 境 の 管 理 および 向 上 を 目 指 すエクソンモ ービル 社 統 一 の 完 璧 操 業 のマネジメント システム(Operations Integrity Management System 以 下 OIMS ともいう )を 1993 年 に 導 入 し また 人 の 行 動 に 焦 点 を 当 てた 安 全 活 動 のツールであるロス 予 防 システム(Loss Prevention System 以 下 LPS ともいう )を 2000 年 に 導 入 した さらに 2008 年 からは 危 険 性 の 高 いハイリスク 作 業 に 重 点 を 置 いた 作 業 許 可 監 査 の 取 組 みを 開 始 する 等 安 全 防 災 への 取 り 組 みを 行 っている 2
3.2 発 災 施 設 の 概 要 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 には 硫 黄 回 収 装 置 が 2 系 統 ある 硫 黄 貯 蔵 タンク TK-703 と TK-1701 の 概 要 は 次 の 通 りである 貯 蔵 所 の 名 称 屋 外 タンク 貯 蔵 所 TK-703 屋 外 タンク 貯 蔵 所 TK-1701 種 別 品 名 危 険 物 第 2 類 硫 黄 危 険 物 第 2 類 硫 黄 取 扱 い 数 量 と 危 険 物 指 定 数 量 の 倍 数 タンクサイズ 1,100(トン) 11,000 倍 直 径 10,520mm X 高 さ 7,650mm 4,993(トン) 49,930 倍 直 径 16,310mm X 高 さ 14,630mm 当 時 硫 黄 貯 蔵 タンク TK-1701 は 開 放 整 備 中 であり 硫 黄 の 貯 蔵 は TK-703 のみで 行 っ ており 6 月 9 日 の 状 態 では 207.5 トンの 硫 黄 が 貯 蔵 されていた 硫 黄 の 受 入 れ 払 出 しは 停 止 されていたが 硫 黄 貯 蔵 タンク TK-703 本 体 および 関 連 配 管 への 加 温 用 スチーム 供 給 は 継 続 されていた 4 硫 黄 漏 えい 事 故 の 状 況 硫 黄 サービスの 配 管 弁 は 二 重 構 造 になっており 内 側 に 硫 黄 外 側 にスチームを 通 して 加 温 している 弁 を 取 り 外 すため 事 前 に 配 管 の 加 温 用 スチームを 停 止 し 配 管 の 内 部 にある 硫 黄 を 固 化 させた 一 方 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703)の 加 温 は 継 続 していた 整 備 のために 取 り 外 す 弁 は 防 油 堤 外 側 からの 距 離 が 1.2m であり 加 温 領 域 からの 伝 熱 が 起 こりやすい 位 置 にあった 固 化 した 硫 黄 を 溶 融 させる 熱 は TK-703 系 から 供 給 されたと 考 え 想 定 図 を 基 に 硫 黄 が 漏 えいに 至 った 経 緯 を 説 明 する 3
(1) 6 月 7 日 午 前 弁 取 外 し 時 の 状 態 海 上 出 荷 TK-1701 ピンク 色 = 溶 融 硫 黄 黄 色 = 固 化 硫 黄 弁 取 外 し 周 辺 の 硫 黄 は 固 化 していた TK-703 ストレーナー 防 油 堤 図 4-1 6 月 7 日 弁 取 外 し 時 の 状 況 事 前 に 配 管 の 加 温 用 スチームは 停 止 されていた また 弁 の 保 温 材 も 除 去 されていた さ らに 同 日 にスチーム 系 統 の 工 事 が 予 定 されていたため 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703)のスチー ム 加 温 も 停 止 していた これらにより 冷 却 が 進 み 弁 を 取 り 外 した 時 には 硫 黄 は 固 化 していた 弁 を 取 り 外 した 後 の 開 放 部 については 閉 止 板 の 設 置 が 行 われず 雨 養 生 のシートを 被 せたの みであった スチーム 系 統 の 工 事 は 当 日 午 後 に 終 了 したので 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703)のスチーム 加 温 が 再 開 された (2) 6 月 11 日 12 時 頃 硫 黄 の 漏 えいが 起 こった 時 の 状 態 海 上 出 荷 TK-1701 加 温 用 スチームが 停 止 されていた 区 域 加 温 用 スチームが 復 旧 したと 想 定 される 区 域 ピンク 色 = 溶 融 硫 黄 黄 色 = 固 化 硫 黄 TK-703 STM STM ストレーナー 漏 えい 防 油 堤 図 4-2 6 月 11 日 12 時 頃 硫 黄 の 漏 えいが 起 こった 時 の 状 況 4
弁 取 外 し 部 は 閉 止 板 が 取 り 付 けられておらず 固 化 した 硫 黄 で 漏 えいを 防 止 していた 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703)のスチーム 加 温 が 継 続 されていたため この 熱 が 開 放 部 まで 伝 わり 固 化 していた 硫 黄 を 溶 融 したことにより 硫 黄 の 漏 えいを 引 き 起 こした 5 硫 黄 漏 えい 事 故 の 発 生 要 因 と 再 発 防 止 対 策 5.1 硫 黄 漏 えい 事 故 の 発 生 要 因 5.1.1 直 接 要 因 本 件 事 故 の 直 接 要 因 として エネルギー 源 である 硫 黄 貯 蔵 タンク(TK-703)からの 縁 切 りが 行 われていなかったことおよび 開 放 部 に 閉 止 板 が 設 置 されていなかったことが 挙 げられる 社 内 規 程 類 の 適 用 状 況 の 調 査 結 果 から 判 断 すると 製 油 1 課 ユーティリティーグループが 硫 黄 の 固 化 を 縁 切 りとみなせるとの 誤 った 認 識 により 漏 えいのリスクは 低 いものと 考 え プ ロセス 開 放 作 業 許 可 規 則 を 省 略 したことは 誤 りであった また 複 数 日 にわたり 開 放 部 を 放 置 したことは 作 業 許 可 規 則 に 違 反 するものであった 5.1.2 間 接 要 因 (1) 硫 黄 の 漏 えいの 可 能 性 への 油 断 聞 取 り 調 査 によると 溶 融 硫 黄 は 外 気 へ 出 ると 固 化 するので ガソリン 灯 軽 油 のような 危 険 物 第 4 類 ( 引 火 性 液 体 )より 拡 散 範 囲 も 小 さく 危 険 性 が 高 くないという 誤 った 認 識 が 一 部 で 見 られた 硫 黄 は 消 防 法 で 定 められた 危 険 物 第 2 類 ( 可 燃 性 固 体 )である 万 一 燃 焼 した 場 合 は 毒 性 のある 二 酸 化 硫 黄 が 発 生 するので 適 切 に 取 扱 う 必 要 があるとの 認 識 が 不 足 していた と 思 われる (2) メジャーTA に 起 因 する 要 因 1) メジャーTA の 区 域 に 関 する 不 適 切 な 認 識 2011 年 はメジャーTA であったが TA 区 域 の 定 義 が 明 確 でなく 十 分 に 周 知 されていな かった その 結 果 TA 区 域 について 製 油 担 当 課 以 外 の 部 署 では 運 転 が 停 止 されていて 工 事 ができる 区 域 という 誤 った 解 釈 がされやすいし 本 件 事 故 のように 弁 を 外 したままにし ても 危 険 は 無 いと 判 断 されたおそれがある 5
2) TA 作 業 許 可 証 における 情 報 の 不 足 製 油 1 課 ユーティリティーグループでは 弁 整 備 は 当 日 中 に 終 了 し 復 旧 されると 思 い 込 ん で 閉 止 板 を 設 置 しなかった しかし 漏 えい 事 故 は 弁 取 外 し 4 日 後 の 6 月 11 日 に 起 こった こ の 誤 解 の 原 因 の1つとして TA 作 業 許 可 証 がある 一 般 に TA 工 事 は 事 前 に 工 程 や 工 事 詳 細 が 決 定 され 装 置 内 の 可 燃 物 等 が 完 全 にパー ジされた 状 態 で 工 事 が 行 われるので 工 事 手 続 きの 一 元 管 理 化 のため TA 時 のみ 使 用 される 作 業 許 可 証 を 使 用 していた この TA 作 業 許 可 証 ( 火 無 し 工 事 )は 1 件 1 行 程 度 の 情 報 を 記 載 し 工 程 は 記 載 されていない これが 誤 解 を 生 じた 原 因 の 1 つと 考 えられる (3) 工 程 内 容 の 相 互 理 解 とコミュニケーションの 不 足 1) 工 程 期 間 の 理 解 の 相 違 一 般 に TA 工 事 は 5 か 月 前 には 工 事 の 作 業 工 程 を 確 定 するが この 硫 黄 漏 えい 事 故 を 起 こした 弁 の 整 備 工 事 は TA の 1 か 月 前 の 4 月 に 追 加 された 工 事 である 期 間 限 定 工 事 に 認 定 され 工 程 も 事 前 に 作 成 されたと 思 われるが 数 多 くの TA 工 事 項 目 の 中 に 埋 もれて 情 報 が 製 油 課 ユーティリティーグループ 工 事 担 当 者 まで 周 知 されず 当 該 工 事 の 工 程 期 間 が 1 日 である との 誤 解 が 生 じていた 2) 製 油 部 門 の TA 準 備 の 不 備 製 油 1 課 ユーティリティーグループ 内 で この 工 事 のための 必 要 な 準 備 が 行 われていなか った 可 能 性 がある 本 件 に 関 しては 硫 黄 を 固 化 させれば 縁 切 りと 見 なすことができ 硫 黄 の 漏 えいは 起 こらな いとの 誤 った 認 識 により 一 連 の 作 業 が 省 かれた 可 能 性 が 高 い 5.2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 再 発 防 止 対 策 (1) 工 場 の 安 全 管 理 の 強 化 1) TA 工 事 項 目 に 対 する 製 油 課 内 の 準 備 文 書 を 明 確 にする 例 えば TA 検 討 チーム( 保 全 部 門 製 油 部 門 および 工 事 監 督 者 )では TA 時 の 限 定 工 事 項 目 表 を 作 成 している この 表 に 製 油 部 門 の 情 報 として 製 油 部 門 の 準 備 状 況 等 の 情 報 を 共 有 化 することが 改 善 策 として 考 えられる 1 製 油 部 門 で 作 成 する 手 順 書 の 要 否 ( 準 備 完 了 未 了 が 分 かるようにする ) 6
2 プロセス 開 放 作 業 チェックリストの 要 否 ( 準 備 完 了 未 了 が 分 かるようにする ) 3 開 放 に 伴 い 必 要 となる 仕 切 り 板 閉 止 板 (サイズ 枚 数 を 記 載 する ) 2) TA 時 内 容 物 をパージしていない 工 事 区 域 では 通 常 の 作 業 許 可 証 を 使 用 する 内 容 物 をパージしていない 区 域 の 工 事 は TA タイミングであっても 通 常 の 作 業 許 可 証 を 利 用 することを 推 奨 する 3) 基 準 の 曖 昧 さをなくす 作 業 許 可 規 則 は 1 シフト 以 内 の 作 業 でも 仕 切 り 板 を 設 置 するよう 変 更 する プロセス 開 放 作 業 許 可 規 則 を すべてのプロセス 開 放 作 業 に 適 用 するよう 改 訂 する (2) 安 全 知 識 レベルの 向 上 1) 硫 黄 の 危 険 性 特 性 に 関 する 十 分 な 再 教 育 を 行 う 2) プロセス 開 放 のためのゼロエネルギー 状 態 の 達 成 を 徹 底 させる 3) 相 互 理 解 とコミュニケーションの 重 要 性 を 徹 底 させる 例 えば 従 業 員 フォーラムや 製 油 部 のシフト 単 位 での 勉 強 会 の 場 を 活 用 し 上 記 の 安 全 知 識 レベルの 向 上 を 図 る 6 硫 黄 漏 えい 事 故 の 通 報 義 務 に 違 反 した 要 因 と 再 発 防 止 に 向 けての 提 言 堺 工 場 では 硫 黄 の 漏 えい 事 故 後 直 ちに 堺 市 消 防 局 へ 通 報 せず 翌 年 7 月 匿 名 通 報 によっ て 明 らかになるまで 本 社 においても 把 握 されていない 以 下 に 通 報 されなかった 要 因 について 本 委 員 会 の 見 解 を 述 べる 6.1 石 災 法 による 異 常 現 象 通 報 に 関 する 社 内 体 制 通 報 義 務 は 石 災 法 第 23 条 第 1 項 に 基 づくものである また 堺 工 場 では 同 法 に 従 って 自 衛 防 災 規 程 を 定 め 異 常 現 象 が 発 生 した 場 合 当 日 勤 務 する 防 災 管 理 者 等 通 報 義 務 者 が 直 ちに 堺 市 消 防 局 に 通 報 を 行 うことと 規 定 している 防 災 管 理 者 は 原 則 として 工 場 長 であり 工 場 長 が 職 務 を 行 えない 場 合 は 定 められた 承 継 順 位 にしたがって 副 防 災 管 理 者 がその 職 務 を 代 行 するとされている さらに 夜 間 休 日 は 直 課 長 ( 副 防 災 管 理 者 )がその 責 任 と 権 限 の もとで 行 うと 定 められている また 自 衛 防 災 規 程 の 下 位 規 定 である 緊 急 対 策 規 則 には 異 常 7
現 象 を 発 見 し または 通 知 を 受 けた 者 は 上 位 者 に 報 告 することの 定 めがある このような 自 衛 防 災 体 制 は TA 時 においても 通 常 の 操 業 時 と 同 様 であり 特 例 的 に 変 更 されることはない なお 事 故 当 日 は 土 曜 日 で 工 場 の 休 日 であった また 当 時 堺 工 場 は 大 規 模 定 期 修 理 ( メジャーTA)の 最 中 であった 工 場 長 は 休 日 であり 製 油 部 長 および 製 油 副 部 長 は 各 々 業 務 のため 工 場 に 出 勤 していた 6.2 硫 黄 漏 えい 事 故 の 通 報 義 務 に 違 反 した 要 因 6.2.1 直 接 要 因 本 委 員 会 は 次 のような 要 因 によって 当 時 堺 工 場 では 異 常 現 象 の 通 報 が 直 ちになされな かったと 推 定 する (1) 通 報 に 関 する 教 育 訓 練 の 不 徹 底 聞 取 り 調 査 では 全 員 が 油 やガスの 危 険 性 を 強 く 認 識 し 従 来 からこれらが 少 量 漏 えいした だけでも 消 防 に 通 報 してきたとしている 一 方 硫 黄 の 漏 えい 事 象 については 固 化 した 硫 黄 の 危 険 性 がそれほど 高 くないので 通 報 しなくてもよいという 不 適 切 な 理 解 解 釈 に 至 った 可 能 性 がう かがえた このように 従 業 員 が 正 しく 認 識 していなかった 背 景 には 教 育 訓 練 の 不 徹 底 がある と 考 える (2) 通 報 の 役 割 分 担 が 不 明 確 であった 今 回 の 硫 黄 の 漏 えいについては 危 険 性 がそれほど 大 きくないとの 認 識 があったこと 休 日 に 直 課 長 以 上 の 管 理 職 が 出 勤 していたため 緊 急 対 策 規 則 の 報 告 についての 理 解 が 通 報 義 務 との 関 係 であいまいになった 可 能 性 があり このため 通 報 の 役 割 分 担 が 曖 昧 となった (3) 事 故 情 報 が 環 境 安 全 部 に 入 らなかった 製 油 部 の 関 係 者 が 硫 黄 の 危 険 性 がそれほど 大 きくないと 判 断 し 当 日 中 に 大 部 分 の 硫 黄 が 回 収 清 掃 されたことから 電 話 等 で 環 境 安 全 部 員 に 相 談 することもなかった 専 門 知 識 を 有 する 環 境 安 全 部 に 情 報 が 入 らなかったことも 事 故 当 時 通 報 に 対 する 是 正 措 置 が 取 り 得 な かった 要 因 と 言 える 6.2.2 間 接 要 因 硫 黄 漏 えい 事 故 を 通 報 する 機 会 となる 情 報 の 共 有 の 場 はあったが それらをいかしきれず 8
事 故 情 報 が 製 油 部 を 超 えて 他 部 門 と 共 有 されなかった (1) 事 故 当 日 の TA 全 体 会 議 で 事 故 報 告 がされなかった TA 全 体 会 議 は TA 期 間 中 毎 日 15 分 間 開 かれる 比 較 的 短 時 間 の 会 議 であることから TA 全 体 に 関 わる 重 要 な 問 題 や 優 先 課 題 が 報 告 され 硫 黄 の 漏 えい 事 故 は 報 告 されなかった 可 能 性 が 高 い 聞 取 り 調 査 でも 誰 も TA 全 体 会 議 で 当 日 の 硫 黄 漏 えいの 事 故 について 報 告 を 聞 いた 者 はいなかった (2) 硫 黄 の 漏 えい 情 報 が 適 切 に 社 内 報 告 されなかった 事 故 やロスが 発 生 した 場 合 に 作 成 することとなっている 社 内 報 告 書 が 作 成 されていなかっ た 聞 取 り 調 査 では 通 報 しなかったので 社 内 報 告 の 作 成 提 出 は 必 要 ないという 意 識 が 覗 え た TA 終 了 後 の TA 報 告 書 等 にも 硫 黄 漏 えいの 記 載 はない また 工 場 長 へも 異 常 現 象 として の 報 告 は 行 われていない OIMS によるアセスメント( 監 査 )では 法 令 遵 守 や 事 故 あるいは 潜 在 的 事 故 の 報 告 に ついて 監 査 システムが 確 立 しており 硫 黄 漏 えい 後 の 11 月 に OIMS に 基 づく 工 場 の 内 部 アセ スメントが 実 施 された しかし 上 述 のように 硫 黄 漏 えいに 関 する 情 報 がなかったため この 事 象 は 発 見 されなかった (3) 本 件 事 故 後 の 製 油 1 課 内 での 硫 黄 の 漏 えいに 関 する 話 題 へのフォローアップが 十 分 で なかった (4) 産 廃 コスト 承 認 の 際 にも 硫 黄 漏 えい 事 象 としては 確 認 されなかった (5) 安 全 衛 生 委 員 会 でフォローアップが 確 実 に 行 われなかった 7 月 度 の 安 全 衛 生 委 員 会 において 労 働 者 側 委 員 から TA の 安 全 対 策 に 関 する 改 善 点 を 話 題 にする 中 で 硫 黄 の 漏 えいの 件 にも 言 及 があった 委 員 会 ではこれを 日 頃 からの 職 場 内 での コミュニケーション 不 足 の 問 題 と 捉 え 職 場 内 で 後 日 対 応 することとされた 8 月 度 委 員 会 で 再 度 確 認 されたが 工 場 側 担 当 委 員 欠 席 のため 回 答 されず 9 月 度 委 員 会 以 降 は 議 題 に 上 らなく なった 結 果 として 安 全 衛 生 委 員 会 としてフォローアップが 確 実 に 行 われなかった 9
6.2.3 職 場 風 土 要 因 本 委 員 会 の 委 員 は 堺 工 場 の 各 階 層 の 従 業 員 と 委 員 だけの 懇 談 会 を 開 催 し 背 景 となる 職 場 風 土 要 因 についても 検 討 した (1) 臨 機 応 変 自 由 闊 達 の 風 土 に 負 の 側 面 がある 可 能 性 堺 工 場 の 臨 機 応 変 自 由 闊 達 という 職 場 の 雰 囲 気 は 一 般 的 には 悪 い 風 土 ではないが 一 人 一 人 の 規 範 意 識 が 希 薄 な 場 合 安 全 管 理 上 ネガティブなものに 転 化 する 可 能 性 がある 検 証 する 必 要 があろう (2) 会 社 の 基 本 理 念 が 共 有 されていない 可 能 性 工 場 に 掲 げられている 安 全 操 業 等 の 会 社 方 針 は 内 容 は 大 変 よいものであるが 分 かり 易 いとはいえない 会 社 の 基 本 理 念 が 工 場 の 管 理 側 と 現 場 従 業 員 の 間 で 共 有 されているか 検 証 する 必 要 があろう 6.3 通 報 義 務 違 反 の 再 発 防 止 に 向 けての 提 言 以 上 から 本 委 員 会 として 再 発 防 止 のための 提 言 を 述 べる (1) 教 育 訓 練 によるルールと 手 順 役 割 と 責 任 の 周 知 徹 底 1) 法 令 に 基 づき 異 常 現 象 として 通 報 すべき 事 象 対 象 物 質 の 周 知 徹 底 と 教 育 を 強 化 する 2) 再 教 育 計 画 の 立 案 実 施 について 各 々 担 当 責 任 者 を 明 確 にし 規 程 化 する 3) 環 境 安 全 部 等 専 門 家 による 通 報 に 関 する 教 育 防 災 教 育 を 実 施 する (2) 通 報 体 制 の 明 確 化 1) 通 報 役 割 分 担 の 明 確 化 : 異 常 現 象 や 事 故 発 生 時 の 通 報 担 当 部 署 の 長 は 平 日 および 休 日 夜 間 を 問 わず 直 課 長 とし 安 全 上 の 判 断 は 現 場 に 任 せ その 判 断 の 是 非 を 問 わ ない 等 現 場 の 判 断 を 尊 重 することを 明 確 にする なお 担 当 部 署 は 当 該 通 報 後 事 業 の 実 施 を 統 括 管 理 する 者 に 連 絡 し 連 絡 を 受 けた 事 業 の 統 括 管 理 者 は 災 害 の 発 生 または 拡 大 の 防 止 のために 必 要 な 措 置 を 講 じる 等 の 社 内 体 制 を 明 確 にする 2) 責 任 体 制 の 確 立 : 工 場 長 不 在 時 の 副 防 災 管 理 者 に 対 しては 責 任 を 担 うことについて 意 識 付 けを 行 うことが 大 切 である そのため 工 場 長 不 在 時 に 工 場 長 を 代 行 する 副 防 災 管 理 者 について 再 度 役 割 分 担 を 明 確 にする 10
(3) 異 常 現 象 の 確 実 な 通 報 を 監 査 する 体 制 の 強 化 異 常 現 象 の 通 報 の 実 施 に 関 し 定 期 的 に 監 査 する 仕 組 みを 構 築 する また 異 常 現 象 等 に 係 る 報 告 事 案 が 漏 れなく 適 切 に 工 場 内 で 扱 われるように 既 存 の 仕 組 みを 強 化 する (4) 経 営 姿 勢 のあり 方 今 回 の 一 連 の 事 態 は 堺 工 場 で 起 こったものではあるが 会 社 全 体 で 受 け 止 め 経 営 姿 勢 に 問 題 はなかったかという 反 省 も 必 要 である 石 油 精 製 業 における 安 全 や 環 境 に 関 わる 哲 学 を 本 社 経 営 陣 が 改 めて 認 識 し 会 社 の 安 全 方 針 やそのための 仕 組 みの 意 義 や 精 神 を 全 社 員 に 対 して 現 場 目 線 で 教 育 し 形 に 流 れない 管 理 規 程 運 用 の 徹 底 等 の 経 営 姿 勢 が 大 変 重 要 である 1) 本 社 主 導 で 安 全 法 令 遵 守 が 何 よりも 優 先 する という 経 営 方 針 を 再 度 周 知 徹 底 し さ らに 効 果 を 上 げる 2) 通 報 する 意 識 を 徹 底 するため 直 課 長 その 他 現 場 の 通 報 実 施 者 の 判 断 の 適 否 を 問 題 にしないという 経 営 姿 勢 を 本 社 主 導 で 確 立 する 3) 本 社 が 防 災 管 理 者 や 副 防 災 管 理 者 に 対 する 教 育 研 修 に 関 与 する 等 工 場 の 管 理 側 および 現 場 従 業 員 に 対 する 教 育 研 修 の 徹 底 に 積 極 的 に 関 与 する 4) 本 社 は 工 場 における 責 任 体 制 の 確 立 通 報 に 関 するチェック 体 制 の 確 立 について 工 場 に 対 して 積 極 的 に 適 切 なアドバイスを 与 え 工 場 従 業 員 の 理 解 を 促 すことが 必 要 であ る 7 おわりに 今 回 の 硫 黄 漏 えい 事 故 は 消 防 法 で 定 められている 危 険 物 第 2 類 可 燃 性 固 体 である 硫 黄 という 物 質 に 対 する 間 違 った 認 識 縁 切 り 方 法 における 過 去 の 成 功 体 験 等 による 当 該 運 転 部 門 の 誤 った 社 内 ルールの 解 釈 と 運 用 に 基 づく 工 事 方 法 により 引 き 起 こされた 人 的 被 害 物 的 被 害 および 環 境 被 害 は 無 かったものとはいえ 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 は 本 件 事 故 を 真 摯 に 捉 え 社 内 ルールにおいて 定 められている 通 り プロセスを 開 放 するのであれば ゼロエ ネルギー 状 態 を 確 保 する という 基 本 思 想 について 従 業 員 に 再 教 育 し 誤 った 解 釈 と 運 用 が なされないように 徹 底 されたい また 全 社 的 に 硫 黄 を 含 む 危 険 物 に 関 する 正 しい 理 解 が 得 ら 11
れるよう 十 分 に 教 育 を 行 い 再 発 防 止 に 努 めることを 提 言 する さらに 今 回 の 事 故 は 定 期 修 理 時 に 発 生 しているが 定 期 修 理 工 事 といえども 内 容 物 が 残 っている 設 備 に 対 する 工 事 管 理 体 制 の 強 化 についても 検 討 されたい 石 油 コンビナート 等 災 害 防 止 法 で 定 められている 異 常 現 象 の 通 報 に 関 しては その 硫 黄 の 危 険 性 や 特 性 に 関 する 誤 った 認 識 に 加 え 複 数 の 上 司 が 関 与 したため 社 内 規 程 上 定 めら れている 本 来 の 通 報 担 当 部 署 の 責 任 者 が 的 確 な 判 断 をせず 責 任 の 所 在 が 曖 昧 となった こ のため 通 報 義 務 を 果 たせない 事 態 を 引 き 起 こした 今 後 異 常 現 象 通 報 に 関 する 社 内 規 程 を 厳 格 に 運 用 するとともに 迷 ったら 通 報 する という 意 識 を 現 場 で 徹 底 させるため 会 社 経 営 者 は たとえ 結 果 的 に 異 常 現 象 通 報 の 必 要 がなかったという 場 合 でも 通 報 者 の 判 断 の 適 否 を 問 題 にしないという 姿 勢 を 徹 底 すべきである また 通 報 が 適 切 に 行 われたかをチェックするた め 担 当 部 門 を 外 側 から 監 査 する 方 法 のさらなる 強 化 も 検 討 されたい さらに 委 員 会 による 聞 取 り 調 査 においては 通 報 すべきであったと 感 じた 運 転 員 も 確 認 されているが 上 司 への 報 告 は 事 故 の 情 報 だけに 止 まっており 通 報 要 否 等 についてもオープンに 話 し 合 える 雰 囲 気 風 通 しのよい 組 織 風 土 の 醸 成 についても 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 は 配 慮 されたい 堺 工 場 では 工 場 の 安 全 を 確 保 するために 完 璧 操 業 のためのマネジメント システム (OIMS)を 十 数 年 前 から 導 入 し 運 用 しているが 今 回 の 事 故 を 教 訓 として 同 システムの 現 場 における 実 効 性 をさらに 向 上 させるための 努 力 や 工 夫 を 継 続 し 工 場 の 安 全 を 維 持 向 上 させ ることを 期 待 する 調 査 委 員 会 活 動 にご 協 力 をいただき ご 尽 力 をいただいた 関 係 各 位 に 謝 意 を 表 するととも に 本 報 告 書 が 今 後 の 産 業 保 安 や 安 全 文 化 の 向 上 の 参 考 になれば 幸 いである 2012 年 10 月 東 燃 ゼネラル 石 油 株 式 会 社 堺 工 場 硫 黄 漏 えい 事 故 調 査 委 員 会 委 員 長 田 村 昌 三 12