国 土 交 通 大 臣 石 井 啓 一 殿 千 葉 ニュータウン 北 環 状 線 事 業 に 関 連 する 補 償 交 渉 過 程 に おける 職 員 のコンプライアンス 違 反 等 に 関 する 報 告 平 成 28 年 7 月 11 日 独 立 行 政 法 人 都 市 再 生 機 構 理 事 長 上 西 郁 夫
Ⅰ.はじめに 千 葉 ニュータウン 北 環 状 線 事 業 に 関 連 する 補 償 交 渉 過 程 における 職 員 のコンプライアン ス 違 反 等 に 関 し 4 月 13 日 の 国 土 交 通 大 臣 のご 指 示 を 踏 まえ 外 部 の 弁 護 士 4 名 からな る 調 査 委 員 会 により 中 立 公 正 な 立 場 から 当 該 事 案 の 事 実 確 認 発 生 原 因 の 分 析 と 再 発 防 止 策 の 検 討 等 行 っていただいてまいりました 今 般 当 該 委 員 会 による 調 査 結 果 がまとまり その 提 言 に 基 づいて 当 機 構 として 再 発 防 止 策 を 策 定 するとともに 関 係 職 員 に 対 して 厳 正 に 対 処 しましたので ご 報 告 いたします Ⅱ. 外 部 調 査 委 員 会 による 調 査 結 果 等 の 概 要 1. 外 部 調 査 委 員 会 の 構 成 委 員 長 石 川 達 紘 ( 弁 護 士 光 和 総 合 法 律 事 務 所 ) 委 員 小 林 正 樹 ( 弁 護 士 黒 澤 升 村 小 林 法 律 事 務 所 ) 同 倉 橋 博 文 ( 弁 護 士 弁 護 士 法 人 ほくと 総 合 法 律 事 務 所 ) 同 白 井 真 ( 弁 護 士 光 和 総 合 法 律 事 務 所 ) 当 委 員 会 は 委 員 らと 独 立 行 政 法 人 都 市 再 生 機 構 ( 以 下 UR という )との 間 に 利 害 関 係 はないこと 調 査 範 囲 の 決 定 調 査 方 法 の 選 択 報 告 書 の 起 案 権 が 当 委 員 会 に 専 属 す ることなどの 点 において 日 本 弁 護 士 連 合 会 による 企 業 等 不 祥 事 における 第 三 者 委 員 会 ガ イドライン の 内 容 に 準 拠 して 設 立 されている 2. 外 部 調 査 委 員 会 の 調 査 目 的 対 象 (1) 週 刊 文 春 記 事 で 指 摘 されたUR 職 員 2 名 に 対 するS 社 総 務 担 当 者 I 氏 ( 以 下 I 氏 という )から 金 品 等 の 供 与 や 飲 食 接 待 を 受 けた 事 実 の 有 無 の 確 認 調 査 (2) 北 環 状 線 事 業 の 補 償 交 渉 に 関 して UR 職 員 2 名 がI 氏 を 始 めとするS 社 関 係 者 に 対 してURの 内 部 情 報 を 提 供 していた 事 実 の 有 無 の 確 認 調 査 (3) 北 環 状 線 事 業 その 他 のURが 実 施 する 事 業 における 補 償 交 渉 に 関 し 本 件 文 春 記 事 1
に 掲 載 された2 名 以 外 のUR 職 員 が 上 記 (1)と 同 様 に 利 害 関 係 者 から 金 品 等 の 供 与 や 飲 食 接 待 を 受 けた 事 案 の 有 無 の 確 認 調 査 (4) 本 件 補 償 交 渉 に 関 し 甘 利 氏 又 は 甘 利 氏 秘 書 からの 要 請 要 望 等 によってS 社 に 対 する 補 償 金 額 が 増 額 したか 否 かの 確 認 調 査 (5) 上 記 (1)から(4)の 調 査 を 通 じて 認 識 された 問 題 点 について 発 生 原 因 を 分 析 し 今 後 の 類 似 事 案 の 再 発 防 止 策 の 検 討 を 行 い これに 関 する 提 言 をURに 対 して 行 うこと 3. 調 査 実 施 期 間 調 査 活 動 内 容 調 査 実 施 期 間 平 成 28 年 4 月 21 日 から 同 年 6 月 22 日 調 査 内 容 UR 等 から 提 供 された 資 料 の 収 集 検 討 (PCに 保 存 されていた 電 子 メール 等 の 精 査 を 含 む ) 関 係 者 ( 延 べ37 名 )からの 事 情 聴 取 UR 全 職 員 を 対 象 とした 補 償 業 務 に 関 するアンケート 調 査 委 員 間 での 議 論 意 見 交 換 等 ( 委 員 会 開 催 5 回 ) 4. 調 査 結 果 の 概 要 (1) 次 のUR 職 員 2 名 について 複 数 回 にわたるI 氏 からの 金 品 等 や 飲 食 接 待 の 受 供 与 が 認 められた A 氏 :ファミリーレストラン 居 酒 屋 及 びフィリピンパブ 等 における 飲 食 物 の 提 供 ( 合 計 約 79 万 円 アルコールを 伴 う 飲 食 物 等 の 提 供 を 受 けた 日 数 は7 日 ) 及 びタクシー 代 名 目 での 金 員 の 提 供 ( 合 計 9 万 円 ) B 氏 :ファミリーレストラン 居 酒 屋 及 びフィリピンパブ 等 における 飲 食 物 の 提 供 ( 合 計 約 13 万 円 アルコールを 伴 う 飲 食 物 等 の 提 供 を 受 けた 日 数 は2 日 ) UR 職 員 2 名 が 金 品 等 や 飲 食 接 待 の 受 供 与 を 受 けていた 期 間 は 平 成 26 年 7 月 から 平 成 27 年 12 月 までである 上 記 記 載 の 飲 食 物 の 金 額 は 同 席 した 者 の 飲 食 分 の 代 金 相 当 額 も 含 まれており A 氏 及 びB 氏 自 身 が 実 際 に 飲 食 した 分 に 係 る 飲 食 代 金 とは 異 なる なお A 氏 及 びB 氏 の 合 2
計 額 には 重 複 部 分 があり それを 除 いた 合 計 額 は 約 90 万 円 である 後 日 A 氏 は 現 金 90 万 円 をI 氏 に 支 払 っている なお これら 金 品 等 の 供 与 又 は 飲 食 接 待 を 受 けた 際 に 甘 利 氏 秘 書 が 同 席 していた 事 実 は 認 められなかった また 北 環 状 線 事 業 の 補 償 交 渉 に 関 して 上 記 2 名 以 外 の 職 員 が 金 品 等 の 供 与 や 飲 食 接 待 の 提 供 を 受 けた 事 案 は 確 認 されなかった (2) 上 記 UR 職 員 2 名 からI 氏 らS 社 関 係 者 に 対 してURの 内 部 情 報 が 提 供 された 事 実 は 認 められず S 社 及 びI 氏 がUR 内 部 の 非 開 示 情 報 を 利 用 して 本 件 補 償 交 渉 を 有 利 に 進 めたという 事 実 は 認 められないものと 判 断 した (3) URが 行 う 北 環 状 線 事 業 以 外 の 補 償 交 渉 の 案 件 において 利 害 関 係 者 から 飲 食 物 の 提 供 を 受 け 倫 理 規 程 に 違 反 する 可 能 性 があると 判 断 した 事 案 が3 件 確 認 された(た だし いずれもS 社 や 甘 利 氏 とは 全 く 無 関 係 の 事 案 であった) T 氏 U 氏 案 件 : 平 成 26 年 11 月 頃 から 数 回 程 度 T 氏 は 同 僚 1 名 (U 氏 )と 一 緒 に 瓶 ビールをコップで 一 杯 程 度 補 償 交 渉 地 権 者 宅 にて 刺 身 など と 一 緒 に 提 供 を 受 けた V 氏 W 氏 案 件 : 平 成 25 年 6 月 頃 に 地 権 者 等 とV 氏 及 び 上 司 (W 氏 )の2 名 により 会 食 をしながら 面 談 し 費 用 負 担 する 旨 を 申 し 出 たが 地 権 者 が 頑 なに 受 領 を 拒 否 した その 後 2 回 同 様 の 飲 食 を 伴 う 協 議 を 行 った が 地 権 者 から 支 払 受 領 を 頑 なに 拒 否 された(1 回 一 人 あたり5~ 6 千 円 程 度 ) X 氏 案 件 : 工 事 担 当 のX 氏 が 地 権 者 に 誘 われ 平 成 27 年 7 月 及 び10 月 に 地 権 者 の 費 用 負 担 において 居 酒 屋 において 酒 食 を 共 にし 12 月 に は 地 権 者 の 自 宅 に 招 かれ 酒 食 の 提 供 を 受 けた なお X 氏 は 平 成 28 年 6 月 に 自 ら 上 記 飲 食 接 待 を 申 告 し その 後 3 回 分 として 1 万 5000 円 を 支 払 った (4) 甘 利 氏 又 は 甘 利 氏 秘 書 からの 要 請 要 望 等 によってS 社 に 対 する 補 償 金 額 が 増 額 し た 事 実 は 認 められなかった 3
物 件 移 転 補 償 契 約 ( 平 成 25 年 8 月 ): M 秘 書 がUR 本 社 を 突 如 アポイントメントもなく 訪 問 した 同 年 6 月 7 日 M 秘 書 は 北 環 状 線 事 業 に 関 するUR 内 での 検 討 状 況 を 確 認 したのみで 特 にS 社 に 対 す る 補 償 金 額 の 増 額 を 始 めとするS 社 に 対 する 便 宜 を 要 請 したような 事 実 はない ま た UR 内 部 の 補 償 の 検 討 経 緯 に 照 らし 甘 利 氏 秘 書 による 上 記 訪 問 等 による 影 響 があったとは 認 められないと 判 断 した 損 失 補 償 契 約 ( 平 成 27 年 ): URがS 社 に 対 し 損 傷 修 復 の 費 用 などを 提 示 し 契 約 を 締 結 した 期 間 に 甘 利 氏 や 甘 利 氏 秘 書 らからURに 対 し 本 件 補 償 交 渉 に 関 して 接 触 は 一 切 なかったこと 等 から 本 件 補 償 金 額 決 定 について 甘 利 氏 又 は 甘 利 氏 秘 書 からの 影 響 があったと の 事 実 は 認 められないものと 判 断 した その 他 の 現 在 交 渉 中 の 補 償 契 約 : 首 都 圏 ニュータウン 本 部 千 葉 業 務 部 ( 平 成 26 年 4 月 に 首 都 圏 ニュータウン 本 部 千 葉 ニュータウン 事 業 本 部 から 組 織 改 編 以 下 組 織 改 編 の 前 後 を 通 じ 千 葉 NT 部 と 総 称 する )で 検 討 して 算 定 した 補 償 金 額 について 平 成 27 年 10 月 以 降 の 甘 利 氏 秘 書 らによるURへの 接 触 後 も 上 記 補 償 金 額 について 一 切 増 額 されてい ないことなどにも 照 らせば 本 補 償 について S 社 から 依 頼 を 受 けた 甘 利 氏 や 甘 利 氏 秘 書 の 影 響 があったと 認 めることは 到 底 できない 5. 本 件 事 件 の 発 生 原 因 等 (1) 北 環 状 線 事 業 に 関 して 早 期 の 工 事 完 了 が 求 められる 背 景 事 情 が 存 在 していたこと 及 びこの 点 がUR 職 員 2 名 に 対 する 心 理 的 圧 力 を 加 える 要 因 として 作 用 したこと 1 千 葉 ニュータウン 事 業 については 平 成 25 年 度 中 に 工 事 を 完 了 させるというこ とが URにおいての 至 上 命 題 となり 同 事 業 に 付 随 する 北 環 状 線 事 業 について も 平 成 25 年 度 末 までの 工 事 完 了 が 強 く 意 識 されていた 2 本 件 では 対 象 土 地 に 産 業 廃 棄 物 が 埋 設 されているという 特 殊 事 情 に 加 え 難 航 地 権 者 が 更 にI 氏 という 人 物 をURとの 交 渉 窓 口 とした 非 常 に 難 しい 案 件 である 一 方 で 上 記 のような 厳 しい 時 間 的 な 制 約 が 付 されており A 氏 ら 工 事 を 進 めなけ ればならない 千 葉 NT 部 の 現 場 担 当 者 に 対 して 過 度 な 負 荷 がかかる 背 景 事 情 が 存 在 していたものと 認 められる 4
(2) 千 葉 NT 部 における 補 償 業 務 遂 行 に 係 る 体 制 が 脆 弱 であったこと それをサポート する 体 制 も 不 十 分 であったこと 1 千 葉 ニュータウン 事 業 は 新 住 宅 市 街 地 開 発 事 業 で 全 面 買 収 型 の 事 業 であったこ とから 千 葉 NT 部 内 に 補 償 を 担 当 する 部 署 が 設 けられていないなど 北 環 状 線 事 業 は 期 限 が 厳 格 に 区 切 られた 非 常 に 難 しい 事 案 であったにもかかわらず 補 償 業 務 体 制 は 非 常 に 脆 弱 なものであった 2 補 償 業 務 体 制 は 脆 弱 であったにもかかわらず 当 委 員 会 の 調 査 したところでは UR 本 社 や 首 都 圏 ニュータウン 本 部 においては 特 に 困 難 かつトラブルが 生 じて いる 案 件 に 対 しての 積 極 的 な 支 援 はなかったと 認 められる 3 また 困 難 な 補 償 交 渉 につき 専 門 家 の 援 助 を 求 める 十 分 な 体 制 が 構 築 されていな かったとも 認 められる (3) 職 員 の 倫 理 意 識 の 欠 如 と 研 修 等 の 不 徹 底 1 本 件 事 件 が 生 じた 直 接 的 原 因 にA 氏 及 びB 氏 の 倫 理 意 識 の 希 薄 さがあったこと は 否 定 できないものと 認 められる 2 URでは コンプライアンスに 関 する 研 修 等 を 行 っているものの A 氏 らの 対 応 や 少 数 であるとはいえ 類 似 事 案 が 発 生 していたことから 研 修 の 効 果 が 職 員 に 十 分 に 浸 透 していなかったと 認 められる 3 URでは 倫 理 規 程 違 反 行 為 の 有 無 を 調 査 するため 全 部 署 のチームリーダーが 担 当 部 署 内 の 職 員 に 対 して1 年 に 一 度 ヒアリング 調 査 を 実 施 する 綱 紀 点 検 制 度 が 導 入 されている しかし 当 該 調 査 結 果 の 保 存 期 間 (3 年 間 )において 本 調 査 において 認 められた 倫 理 規 程 違 反 行 為 が 発 見 されていなかったとのことであり 当 該 調 査 制 度 が 形 骸 化 し 実 効 性 を 失 っていると 指 摘 せざるを 得 ない (4) 補 償 交 渉 のルールの 周 知 不 徹 底 1 本 件 では I 氏 の 要 請 に 応 じて 面 談 を 行 う 際 に A 氏 又 はB 氏 が 単 独 で 訪 問 をし ていることがあり これがI 氏 による 事 実 上 の 影 響 力 を 強 め また 職 員 相 互 間 でのコンプライアンス 違 反 等 に 対 する 監 視 機 能 を 低 下 させ I 氏 からの 飲 食 等 の 誘 いに 対 して 断 固 たる 対 応 をとることができなくなった 一 つの 大 きな 要 因 である と 認 められた 2 アンケートによれば 補 償 交 渉 において 複 数 者 で 交 渉 に 臨 むことは 常 識 的 対 応 で あると 回 答 する 者 が 多 く 存 在 したものの 当 委 員 会 が 聴 取 したUR 職 員 の 多 くが 土 地 区 画 整 理 事 業 の 施 行 に 伴 う 損 失 補 償 業 務 処 理 要 領 15 条 2 項 1 号 に 補 5
償 交 渉 は 原 則 として2 名 以 上 で 行 うものとする と 明 文 で 規 定 されていること を 知 らなかった このような 補 償 交 渉 ルールの 周 知 不 徹 底 も 本 件 事 件 を 招 く 一 つの 要 因 になったものと 認 められる 3 また 補 償 交 渉 に 複 数 の 職 員 で 臨 むことができなかった 要 因 の 一 つとしては 補 償 交 渉 を 担 当 する 職 員 数 が 十 分 でないという 点 も 指 摘 できる (5) 補 償 交 渉 等 に 関 する 情 報 共 有 の 不 足 により 相 互 牽 制 が 機 能 しなかったこと 1 URでは 補 償 交 渉 に 関 する 面 談 等 の 記 録 を 作 成 する 明 確 なルールが 存 在 してい ない また 面 談 記 録 の 回 覧 についても 明 確 なルールが 定 められていないため 必 ずしも 上 司 が 目 にする 仕 組 みとはなっていなかった 2 本 件 では 面 談 記 録 を 見 ればA 氏 やB 氏 が 頻 繁 にファミリーレストラン 等 でI 氏 と 面 談 をしていることや 単 独 で 面 談 していることが 分 かったはずである また A 氏 については I 氏 と 面 談 交 渉 を 行 っていることを 上 司 に 知 らせたくないとい う 思 いから 面 談 録 を 作 成 しなかった 場 合 があると 述 べていることからすると 面 談 記 録 の 作 成 や 共 有 ルールの 不 存 在 が 職 員 間 での 情 報 共 有 を 阻 害 し 職 員 相 互 のコンプライアンス 違 反 に 対 する 監 視 機 能 を 低 下 させ 本 件 事 件 を 発 生 させる 一 つの 要 因 になったものと 認 められる (6) 本 件 補 償 交 渉 において 強 硬 な 態 度 をとることなく 補 償 金 の 逐 次 投 入 を 続 けたURの 対 応 がI 氏 の 増 長 を 招 いたとも 考 えられること 千 葉 NT 部 では 工 事 の 開 始 進 行 を 急 ぐ 余 り S 社 に 対 して 訴 訟 や 強 制 収 用 と いった 強 硬 手 段 を 控 えて 補 償 金 の 逐 次 投 入 を 続 けたため I 氏 が 本 件 補 償 交 渉 を 有 利 に 進 め URからより 多 くの 補 償 金 を 獲 得 するために A 氏 及 びB 氏 を 取 り 込 もうとして 本 件 事 件 に 至 ったものと 認 められる (7) 千 葉 NT 部 に 独 立 性 があり 本 社 との 間 の 連 携 情 報 共 有 にも 不 足 があったこと 1 千 葉 NT 部 における 補 償 契 約 締 結 等 の 最 終 決 裁 権 者 は 本 部 長 ( 平 成 26 年 の 組 織 改 編 後 は 千 葉 地 域 担 当 推 進 役 )であり 職 務 権 限 上 補 償 案 件 は 千 葉 NT 部 内 で 完 結 できることになっていた このようなことも 影 響 し 北 環 状 線 事 業 が 平 成 2 5 年 度 末 の 工 事 完 了 がURにおける 至 上 命 題 となっていた 千 葉 ニュータウン 事 業 に 付 随 する 事 業 であるため 同 時 期 までの 工 事 完 了 を 強 く 意 識 せざるを 得 ない 案 件 であった 上 難 航 地 権 者 がいる 難 しい 案 件 であったにもかかわらず UR 本 社 に おける 千 葉 NT 部 の 事 業 遂 行 への 関 心 の 低 さが 認 められた 他 方 千 葉 NT 部 に 6
おいても 同 事 業 の 早 期 かつ 円 滑 な 遂 行 のためにも UR 本 社 と 情 報 交 換 を 密 に し 種 々の 支 援 を 求 めるべきであったにもかかわらず UR 本 社 の 関 与 を 嫌 い 千 葉 NT 部 内 だけで 処 理 しようとしていた 2 このように 北 環 状 線 事 業 については UR 組 織 全 体 におけるその 重 要 性 の 高 さ にもかかわらず UR 全 体 で 対 応 していくという 姿 勢 に 欠 けていたといわざるを 得 ない そして このような 北 環 状 線 事 業 遂 行 に 向 けた 姿 勢 が 千 葉 NT 部 にお ける 補 償 業 務 遂 行 体 制 の 脆 弱 さと 相 まって 本 件 補 償 交 渉 におけるI 氏 への 対 応 をA 氏 やB 氏 ら 担 当 者 個 人 任 せにする 状 況 を 生 み 出 し I 氏 に 付 け 込 まれる 余 地 を 生 じさせることに 繋 がったものと 認 められる (8) 内 部 調 査 上 の 問 題 点 等 について 1 UR 職 員 がI 氏 と 酒 席 を 共 にしている 可 能 性 について 最 初 にURが 認 知 したの は 平 成 27 年 12 月 1 日 であり 本 社 総 務 部 長 のO 氏 がK 秘 書 と 面 談 した 際 情 報 が 提 供 された 2 O 氏 は 千 葉 NT 部 担 当 と 協 議 の 上 で 本 件 補 償 交 渉 の 状 況 に 照 らして 可 能 性 のあ る 職 員 としてはA 氏 が 想 定 されたことから その 上 司 であるP 氏 にヒアリングを 任 せた このヒアリングで A 氏 はI 氏 と 酒 席 を 共 にしていた 事 実 を 否 認 した P 氏 は A 氏 以 外 のI 氏 と 接 触 したことのある 千 葉 NT 部 の 職 員 に 対 する 聴 取 等 は 行 わないまま UR 本 社 に 聴 取 結 果 を 報 告 した 3 しかし B 氏 が 作 成 の 協 議 録 に 居 酒 屋 でI 氏 と 面 談 を 行 っていたことが 記 されて いたことからすれば この 時 点 でB 氏 やその 他 の 職 員 から 聴 取 を 行 えば B 氏 が I 氏 と 酒 席 を 共 にしていた 事 実 が 判 明 した 可 能 性 があった 4 また URにおいては 独 立 行 政 法 人 都 市 再 生 機 構 コンプライアンス 基 本 方 針 においてコンプライアンスに 関 する 問 題 についてコンプライアンス 法 務 室 に 情 報 が 伝 達 される 仕 組 みが 規 定 上 は 整 備 されている しかし 本 件 については コ ンプライアンス 違 反 等 が 存 在 する 可 能 性 について 情 報 提 供 があったにもかかわら ず 当 該 情 報 は 同 室 に 伝 達 されなかった また その 後 の 各 部 等 が 主 体 となっ たI 氏 との 飲 食 接 待 の 有 無 についての 調 査 等 についても 同 室 に 情 報 提 供 がなさ れなかった 5 このように コンプライアンス 違 反 に 関 する 調 査 が 本 来 主 管 となって 担 当 すべ きコンプライアンス 法 務 室 へ 情 報 提 供 されることもなく 実 施 されたため 調 査 の 範 囲 や 手 法 の 十 分 性 等 について 同 室 によるチェックが 行 われず そのため 不 十 分 な 調 査 にとどまり その 結 果 URは 4 月 にA 氏 やB 氏 からの 申 告 を 受 けて 初 めて I 氏 から 飲 食 接 待 を 受 けた 状 況 を 把 握 するに 至 ったものである 6 以 上 のとおり 職 員 によるコンプライアンス 違 反 等 の 可 能 性 を 認 知 した 場 合 にお 7
けるURの 内 部 調 査 体 制 には 大 きな 不 備 があるものと 認 められ 今 後 の 同 種 事 案 の 再 発 防 止 の 観 点 からも 問 題 であると 認 められた (9) 上 記 のような 組 織 体 制 上 の 問 題 を 放 置 し 改 善 に 向 けた 対 応 をとらなかった 内 部 統 制 上 の 問 題 点 以 上 の(1)から(8)に 記 載 のとおり 本 件 事 件 は 単 なる 個 人 の 資 質 や 性 格 といったことにとどまらず URにおける 組 織 体 制 上 の 様 々な 問 題 にも 発 生 原 因 が あるものと 認 められた これらの 組 織 体 制 上 の 問 題 点 について これを 放 置 して 改 善 に 向 けた 対 応 をとってこなかった 点 については URとしての 内 部 統 制 に 問 題 が あったものと 認 められる 6. 再 発 防 止 策 の 提 言 (1) トップによるメッセージの 発 信 本 件 事 件 の 発 生 原 因 等 の 判 明 を 受 けて 改 めてコンプライアンス 遵 守 意 識 の 徹 底 のためのメッセージをURトップから 発 信 するべきである また コンプライアン ス 遵 守 のためのメッセージを 定 期 的 に 発 出 する 仕 組 みを 作 り 本 件 事 件 の 教 訓 が 風 化 しないよう 工 夫 をするべきである (2) 組 織 内 における 相 談 報 告 体 制 の 充 実 人 員 の 不 足 や 職 員 の 経 験 値 の 不 足 等 が 認 められる 部 署 が 問 題 事 象 を 抱 えこむこと がないよう 各 部 署 において 容 易 に 本 社 等 の 上 部 組 織 や 弁 護 士 等 の 外 部 専 門 家 に 相 談 や 援 助 を 受 けることができる 仕 組 みを 設 けるべきである 他 方 本 社 においても UR 全 体 について 目 を 配 り 重 要 な 事 業 については 各 支 社 等 に 事 業 遂 行 を 任 せ 切 りにせず その 進 捗 状 況 を 把 握 しておき 適 時 適 切 に 指 揮 指 導 ができるような 態 勢 を 整 えておくことが 必 要 である また 部 署 内 においても 上 司 に 相 談 しやすい 風 通 しの 良 い 職 場 環 境 の 構 築 を 心 掛 ける 必 要 がある (3) 本 件 事 案 に 則 したコンプライアンス 研 修 の 実 施 等 本 件 事 件 が 発 生 した 経 緯 等 を 踏 まえ なぜこのようなコンプライアンス 違 反 行 為 8
が 発 生 したのか どのように 振 る 舞 えば 未 然 に 防 止 できたのかなど 具 体 的 な 事 案 に 則 した 研 修 を 定 期 的 に 実 施 して 職 員 に 理 解 させることが 重 要 である また 本 件 事 案 に 則 して 倫 理 規 程 に 関 する 研 修 を 実 施 し 倫 理 規 程 についての 理 解 を 十 分 に 行 わせることも 重 要 である (4) 補 償 交 渉 等 のルールの 徹 底 交 渉 相 手 に 付 け 込 まれることを 防 止 するため 補 償 交 渉 等 を 行 う 際 には 必 ず 複 数 で 実 施 することを 明 確 なルールとして 徹 底 させる 必 要 がある また 補 償 交 渉 等 を 行 った 際 には 必 ず 面 談 録 を 作 成 して 上 長 に 報 告 する 仕 組 みとするなど 面 談 録 を 保 存 共 有 するルールを 策 定 し 徹 底 することも 重 要 である さらに 難 航 地 権 者 に 対 する 交 渉 等 難 度 の 高 い 補 償 交 渉 については 適 時 適 切 に 弁 護 士 等 の 外 部 専 門 家 の 援 助 あるいは 警 察 OB 職 員 の 補 助 等 を 受 けることができ るよう 予 算 上 の 措 置 を 含 め 所 要 の 措 置 を 講 じるべきである (5) 倫 理 規 程 等 の 見 直 し 及 び 解 釈 の 明 確 化 利 害 関 係 者 からの 飲 食 物 の 提 供 については 倫 理 規 程 等 により 禁 止 されている 旨 を 明 確 に 相 手 方 に 伝 え 断 固 として 拒 絶 をする 態 度 を 示 すことが 重 要 である もっとも 本 件 事 件 の 発 生 原 因 に 照 らすと 補 償 交 渉 等 においてはUR 職 員 が 交 渉 相 手 の 機 嫌 を 損 ねるような 行 為 をとり 得 ず 飲 食 物 の 提 供 の 申 出 を 拒 むことが 困 難 であ ったり 飲 食 代 金 を 支 払 うことが 困 難 であったりする 場 合 があり 得 るものと 思 われる そこで 仮 に 利 害 関 係 者 からの 飲 食 物 の 提 供 を 拒 絶 できなかった 場 合 には 直 ちに 上 司 に 報 告 した 上 で 飲 食 代 金 額 を 相 手 方 に 交 付 すれば 倫 理 規 程 違 反 に 該 当 しないとす るような 倫 理 規 程 等 の 見 直 し 又 は 解 釈 運 用 の 明 確 化 を 行 うことが 考 えられる また 現 在 の 役 職 員 倫 理 規 程 の 解 説 は 補 償 交 渉 等 の 相 手 方 が 利 害 関 係 者 に 該 当 す るのか(どの 条 文 に 該 当 するのか) 等 不 明 確 な 点 があるため 見 直 しが 必 要 である (6) 綱 紀 点 検 制 度 の 厳 格 な 運 用 及 び 誓 約 書 の 取 得 運 用 が 形 骸 化 していると 認 められる 綱 紀 点 検 制 度 については チームリーダー 等 に 対 して 厳 格 な 運 用 を 徹 底 するよう 指 導 を 行 う 必 要 がある また 受 ける 側 の 職 員 が 虚 偽 を 述 べた 場 合 には 社 内 で 処 分 を 受 けることがあり 得 ることを 明 示 するなど 倫 理 規 程 を 遵 守 する 意 識 を 醸 成 させる 仕 組 みを 設 けるべきである さらに 倫 理 規 程 違 反 を 含 めたコンプライアンス 違 反 行 為 を 行 わないことを 明 確 に 誓 約 させる 誓 約 書 を 全 職 員 に 提 出 させるなどして 職 員 にコンプライアンス 違 反 行 為 9
を 行 うことに 対 する 危 機 意 識 を 持 たせることが 有 用 である (7) コンプライアンス 違 反 行 為 等 が 発 生 した 場 合 の 一 元 的 統 括 部 署 の 設 置 と 運 用 の 改 善 コンプライアンス 違 反 又 は 違 反 の 疑 いのある 行 為 が 発 覚 した 場 合 に 適 時 適 切 に 対 処 するために 一 元 的 に 当 該 事 案 を 把 握 し 内 部 調 査 やその 後 の 対 応 等 を 指 揮 又 は 指 導 する 役 割 を 担 う 司 令 塔 的 な 部 署 を 設 けることが 必 要 である 現 在 のコンプライアン ス 法 務 室 はそのような 役 割 を 担 っておらず 同 室 の 拡 充 等 組 織 体 制 の 見 直 しが 必 要 である また 上 記 組 織 体 制 の 見 直 しを 待 つことなく 直 ちに コンプライアンス 違 反 行 為 等 が 発 覚 した 場 合 には 情 報 をコンプライアンス 総 括 部 署 である 本 社 コンプライアン ス 法 務 室 に 一 元 的 に 集 約 させるルールを 確 立 することが 必 要 であり このルールを 徹 底 するために 職 員 に 対 する 研 修 等 を 実 施 することが 重 要 である (8) 内 部 相 談 窓 口 及 び 外 部 相 談 窓 口 制 度 の 周 知 徹 底 URでは 内 部 相 談 窓 口 及 び 外 部 相 談 窓 口 の 制 度 を 設 けているが アンケート 調 査 に よって 初 めて 利 害 関 係 者 からの 飲 食 接 待 等 を 受 けた 類 似 事 案 の 存 在 が 確 認 されたこ とからすれば 有 効 に 機 能 していたとはいい 難 い したがって 本 制 度 の 存 在 等 を 今 一 度 全 職 員 に 周 知 徹 底 し 幅 広 く 情 報 を 収 集 できる 仕 組 みとすることが コンプライ アンス 違 反 行 為 の 未 然 防 止 等 の 観 点 からも 重 要 である Ⅲ. 外 部 調 査 委 員 会 の 提 言 を 踏 まえた 再 発 防 止 策 1. 職 員 のコンプライアンスに 関 する 意 識 改 革 の 更 なる 徹 底 (1)トップメッセージの 発 信 強 化 理 事 長 によるコンプライアンス 遵 守 に 関 する 職 員 向 けメッセージの 繰 り 返 し 発 信 会 議 研 修 等 における 役 員 から 職 員 への 直 接 伝 達 によるコンプライアンス 意 識 の 醸 成 強 化 (2) コンプライアンスに 関 する 研 修 内 容 等 の 充 実 実 効 性 の 強 化 10
本 事 案 や 他 社 のコンプライアンス 違 反 事 例 を 題 材 にした 対 話 型 議 論 型 の 研 修 の 実 施 (3) 判 断 行 動 基 準 の 明 確 化 役 職 員 倫 理 規 程 の 解 説 コンプライアンス マニュアル について 禁 止 行 為 や 職 員 が 遵 守 すべき 事 項 等 をより 明 確 化 するための 改 訂 周 知 徹 底 (4) 綱 紀 保 持 点 検 制 度 の 改 善 及 び 誓 約 書 の 見 直 し 綱 紀 保 持 点 検 制 度 について 実 効 性 向 上 のための 見 直 し 運 用 の 厳 格 化 職 員 採 用 時 の 誓 約 書 の 内 容 の 見 直 し 誓 約 事 項 の 確 認 手 続 の 毎 年 度 実 施 2. 各 職 員 がコンプライアンス 違 反 行 為 に 踏 み 込 むことを 未 然 に 防 止 するための 業 務 上 の 環 境 整 備 (1) 組 織 的 な 情 報 共 有 の 強 化 補 償 等 の 交 渉 の 複 数 人 による 対 応 の 徹 底 交 渉 後 の 文 書 報 告 の 徹 底 (2) 各 職 員 個 人 として 責 任 を 抱 えず 組 織 として 受 け 止 め 方 針 の 決 定 や 処 理 を 進 める ための 体 制 ルールの 整 備 補 償 等 の 契 約 に 至 るまでの 節 目 毎 の 段 階 的 決 裁 のルール 化 事 業 スケジュール 上 重 大 な 影 響 を 与 える 補 償 等 の 案 件 について 現 場 と 本 社 との 情 報 共 有 のルール 化 特 殊 な 案 件 について 法 務 チェック 体 制 の 再 構 築 リーガルチェックの 徹 底 警 察 等 関 係 機 関 との 連 携 や 弁 護 士 の 活 用 3. 各 職 員 の 行 動 を 組 織 としてフォローするコンプライアンス 面 の 環 境 整 備 (1) コンプライアンスに 係 る 各 職 員 からの 相 談 の 受 け 付 け コンプライアンス 違 反 に 至 らないための 対 応 の 指 導 等 を 行 う 組 織 の 整 備 本 社 コンプライアンス 法 務 室 の 組 織 強 化 本 部 支 社 へのコンプライアンス 担 当 部 長 の 新 設 これらの 組 織 によるコンプライアンス 遵 守 状 況 のフォローアップ コンプライアンス 関 連 情 報 の 一 元 的 集 約 11
(2) コンプライアンス 相 談 窓 口 ( 組 織 内 及 び 外 部 弁 護 士 )の 活 用 促 進 相 談 窓 口 における 相 談 者 保 護 匿 名 性 確 保 等 の 職 員 への 再 周 知 による 活 用 促 進 Ⅳ. 職 員 の 処 分 等 について 1. 処 分 日 平 成 28 年 7 月 11 日 2. 被 処 分 者 及 び 処 分 内 容 職 員 A: 本 社 所 属 の 職 員 ( 元 首 都 圏 ニュータウン 本 部 千 葉 業 務 部 所 属 の 職 員 )52 歳 停 職 3か 月 ( 同 日 付 退 職 ) 職 員 B: 首 都 圏 ニュータウン 本 部 千 葉 業 務 部 所 属 の 職 員 43 歳 停 職 1か 月 3. 管 理 監 督 者 に 対 する 措 置 訓 告 3 名 文 書 厳 重 注 意 2 名 以 上 12