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宮 沢 賢 治 は そのわずか4カ 月 前 に( 大 正 11 年 11 月 末 ) 彼 の 作 品 の 最 大 の 理 解 者 であった 妹 トシを 亡 くしている 賢 治 は 妹 の 死 という 深 い 悲 しみに 出 会 い それでも 何 とか 悲 しみを 乗 り 越 え 人 生 を 肯 定 しようとして 苦 しみ 抜 いた そうして 生 まれたのが この やまなし という 物 語 なのではないかと 考 えられる しかし 文 章 には 二 枚 の 青 い 幻 灯 ( 五 月 と 十 二 月 )に 映 し 出 された 谷 川 の 情 景 と そこに 生 活 している 蟹 の 親 子 に 起 こる 出 来 事 が 描 かれているだけで 心 を 揺 さぶられるような 感 動 的 なストーリー 展 開 はない むしろ 読 む 者 の 多 くが これは 何 を 言 いたい 話 なのか と いう 疑 問 をもってしまう が その 一 方 で 文 章 上 に 溢 れている 賢 治 独 特 の 比 喩 や 描 写 には 読 み 手 のほとんどが 強 い 印 象 をもつ この 不 思 議 な 物 語 世 界 に 魅 かれ これまでに 多 くの 絵 本 作 家 たちが 様 々な 絵 画 表 現 で 絵 本 やまなし を 創 作 し(3) たくさんの 声 優 たちが 種 々の 読 み 方 で やまなしを 朗 読 した 声 を 残 している この 作 品 は 6 年 生 の 子 どもたちにとっても 新 鮮 な 読 後 感 をもたらし これまでの 国 語 科 の 学 習 で 身 に 付 けた 文 学 的 文 章 を 読 解 する 力 を 小 学 校 最 終 学 年 の 子 どもとして 再 確 認 する のにふさわしい 学 習 になると 思 われる 以 上 を 考 察 し 学 習 の 目 標 を 次 のようにした イメージ 豊 かに 読 み 味 わう 活 動 を 通 して 主 題 に 迫 ることができる 2 文 章 の 視 点 イメージ 豊 かに 読 む 力 を 付 けるためには 文 章 が 書 かれている 視 点 に 添 って 読 み 自 分 の 五 感 を 働 かせて 追 体 験 すること が 必 要 である 教 材 文 やまなし の 文 章 を 検 討 する と 水 中 世 界 を 水 底 にいる 蟹 の 目 から 見 たように 書 かれている このことを 教 師 の 発 問 で 気 付 かせることは 簡 単 であるが それよりも 子 どもたちが 自 ら 気 づくほうが 意 欲 的 な 学 習 展 開 になる 意 欲 化 は 学 力 向 上 の 大 前 提 である そう 考 え 作 品 と 出 会 わせる 前 に 卒 業 アルバムに 掲 載 する 候 補 写 真 の 記 念 撮 影 をした 一 か 所 は 校 庭 にある 藤 棚 の 下 である 子 どもたちは 満 開 の 藤 の 花 を 下 から 見 上 げ 辺 りに 広 がる 花 の 香 りを 印 象 深 くかいだ もう 一 か 所 は 校 舎 の 屋 上 である 子 どもたちは 快 晴 の 澄 み 切 った 天 空 を 見 上 げ まるで 深 い 空 の 底 にいるような 感 覚 に 浸 った また 作 文 の 時 間 には 教 室 内 の 水 槽 に 以 前 から 飼 っている 泥 鰌 になって 作 文 を 書 かせた 題 名 は おれはどじょうだ である 水 底 にいる 泥 鰌 の 視 点 からの 世 界 を 想 像 し 楽 しい な りきり 作 文 の 学 習 をした これらの 体 験 は 水 底 にいる 蟹 の 視 点 で 書 いてある やまなし という 物 語 世 界 に 入 り 込 み そこに 登 場 する 人 物 に 感 情 移 入 し イメージを 広 げて 読 む 学 習 の 手 助 けになっていった 3 作 品 との 出 会 い 作 品 との 一 回 目 の 出 会 いは まず ( 文 章 は 見 ないで) 耳 で 聞 く(だけ) という 方 法 にした 278

目 で 追 う 文 字 もなく 理 解 の 手 掛 かりになる 挿 絵 もない 状 態 で 物 語 の 世 界 に 出 会 う ほうが より 想 像 力 が 発 揮 されると 期 待 したからである しかし 一 番 多 かったのは 次 のような 内 容 の 感 想 である この 話 は なんだかわけがわかりません また こんな 感 想 もあった 何 のことを どのようなことで 言 っているのかわからない だけど この 前 書 いた どじ ょうの 作 文 のように 登 場 する かにたち から 見 た 風 景 がくり 広 げられているのでは ないかと 思 う そこで 二 回 目 は くわしくは 頭 の 中 に 入 らなかった 一 度 ゆっくりと 読 んでみたい と いう 子 どもの 感 想 を 紹 介 し 作 品 に 耳 と 目 で 出 会 う( 文 章 を 見 ながら 聞 く) 時 間 にした このときは 二 枚 の 幻 灯 で 成 り 立 っている 構 成 を より 鮮 明 に 意 識 させるために 五 月 の 場 面 と 十 二 月 の 場 面 を それぞれ 別 の 声 優 の 読 み 方 で 聞 かせた 聞 いただけのときよりも どういう 話 かはわかった しかし 何 をいいたいのかがわから ない 読 んでみると 少 し なんとなくわかってきたようでしたが やはりよくわかりません ( 中 略 )わからないけど 何 かを 感 じるというような 気 がしました わからなくてもきらい になれないような 話 だと 思 います 表 現 がとてもきれいで 水 の 中 が 見 えるような 気 がし ます このような 出 会 い 方 をして 互 いの 感 想 を 聞 き 合 ううちに それぞれの 子 どもたちの 心 の 中 に 内 容 や 表 現 作 者 などに 対 するいくつもの 疑 問 が 生 まれてきた 自 分 なりの こだわり つまり 読 みのテーマ が 生 まれてきたのである こうなると 子 どもたちは 自 分 のペース で 読 み 進 めたくなる 4 読 みのテーマ 読 みのテーマは そのことが 疑 問 だから という 理 由 で 生 まれる 場 合 や それがたいへん 気 になるから あるいは とても 好 きだから という 理 由 で 生 まれる 場 合 もある いずれにせよ 一 人 一 人 の 子 どもたちが 自 分 の 中 に 作 品 を 詳 しく 読 むためのテーマ を 根 付 かせることは 読 解 力 を 育 てる 学 習 には 不 可 欠 である わたしは まず 作 者 について 調 べたいです なぜこんな 文 を 書 いたのか 知 りたいし 他 の 作 品 もこのような 感 じなのか 知 りたいからです 次 に この 文 を 聞 いたり 読 んだりしていて 意 味 のわからない 言 葉 があるので 調 べてみよ うと 思 います そうすれば 登 場 人 物 の 気 持 ちがわかると 思 います それと 題 名 についても 考 えてみたいです 一 の 五 月 では まるで 題 名 のことなん か 関 係 していないようです わたしは きれいな 言 葉 を 書 き 出 していきたいと 思 っています その 他 は 宮 沢 賢 治 さん の 作 った 物 語 を 読 んでみたいと 思 います 279

5 友 達 とのかかわり 一 人 一 人 が 自 分 の 読 みのテーマをもつことができれば 次 は 互 いのテーマを 知 り 合 うことで 子 どもたち 同 士 のかかわりが 生 まれる かかわりは 読 解 力 のさらなる 向 上 に 繋 がる 授 業 では 短 冊 形 の 小 カードに 一 枚 一 項 目 と 決 めて 自 分 が 取 り 組 もうとしていること を 記 入 させた それを 壁 面 いっぱいの 大 型 座 席 表 の 自 分 の 席 に 貼 っていった これを 見 れば だれがどんなことを 追 究 しようとしているのかが 一 目 でわかる その 時 自 分 の 座 席 に 貼 る 小 カードには その 下 の 部 分 に 赤 丸 で 囲 んで 読 とか 書 とか 話 という 記 号 を 付 け 加 えるようにさせた この 意 図 は 二 つある 一 つは 読 む 書 く 話 す 聞 く という 四 つの 言 語 活 動 を 総 動 員 す る 学 習 を 進 めたいということ もう 一 つは 互 いの 追 究 方 法 をわからせたいということである 例 えば 自 分 と 同 じテーマがあり そこに 話 という 記 号 があったら その 子 のところへ 行 って 話 し 合 いをしてもいい しかし 同 じテーマでも そこに 書 という 記 号 があったら その 子 は 今 一 人 で 書 き 進 めようとしているのだから 行 くのは 遠 慮 するのである こうして 言 わば 学 習 活 動 の 自 由 化 とも 言 うべき 時 間 を 取 り 入 れた 結 果 教 室 内 にいく つものグループ 追 究 の 姿 が 生 まれてきた (もちろん 一 人 で 学 習 を 進 めている 子 もいる ) その 中 で はじめのテーマが 解 決 していったり 別 のテーマが 生 まれたりしていった そこで 授 業 の 終 わりは その 一 時 間 を 振 り 返 るノート 学 習 の 時 間 にした 学 習 の 跡 を 記 録 することは それまでの 自 分 の 追 究 を 見 直 して 次 時 への 意 欲 を 高 めることになる また ノートに 書 かれた 内 容 や 追 究 方 法 が 他 の 子 どもたちの 考 えを 深 めるきっかけになる 場 合 には クラス 全 体 に 紹 介 して かかわりの 渦 がより 大 きなものになっていくようにした ぼくは 今 日 は クラムボン を 英 語 辞 典 で 調 べました クラム は かに という 意 味 で ボン は うまれた という 意 味 でした ぼくは 君 と 題 名 のことについて 話 し 合 いました それは 題 名 の 意 味 がわかれば この 話 の 主 題 がわかっていろいろなことがわかると 思 ったからです やまなし という 題 で 十 二 月 はやまなしのことが 書 いてあるけど 五 月 はやまなしのことが 何 も 関 係 していないので 五 月 の 場 面 はいらないのではないかと 話 し 合 っていたら なにか 五 月 のかわせみと 十 二 月 のやまなしを 対 比 して 書 いているのではないかということになりまし た けれど まだどうして やまなし という 題 になったかわからないので 話 し 合 いたい です 6 共 通 課 題 と 全 体 学 習 グループの 話 し 合 いでもすっきり 解 決 しないことが 次 第 にはっきりしてきた そこで クラス 全 員 で 話 し 合 いたいこと や みんなで 取 り 上 げて 考 えてみたいところ を 出 し 合 い 八 つの 共 通 課 題 を 設 定 した 1 幻 灯 について 2 クラムボン について 280

3 会 話 文 について 4 作 者 の 表 現 の 仕 方 について 5 五 月 と 十 二 月 について 6 題 名 について 7 主 題 について 8 作 者 について 全 体 学 習 は グループ 学 習 の 成 果 も 踏 まえつつ 1から 順 に23と 解 決 することを 目 指 した しかし 実 際 の 学 習 では 急 に7が 話 題 になったり8に 発 展 していったりすることもあった また 話 し 合 いの 内 容 によって やまなし 以 外 の 宮 沢 賢 治 作 品 の 紹 介 が 必 要 になることや 作 者 の 生 涯 年 表 を 調 べることが 必 要 になることもあった 授 業 後 子 どもたちのノートには それぞれの 学 びの 手 ごたえが 累 積 されていった おわりに 以 上 述 べたように 文 学 的 文 章 の 読 解 力 を 育 てるには まず 教 師 が 教 材 文 の 特 質 を 把 握 し た 学 習 目 標 を 設 定 し 文 章 記 述 の 視 点 に 添 って 読 む 学 習 を 進 めることである そして 読 み 手 が 文 章 から 体 験 を 想 起 し 五 感 を 活 用 して 想 像 する 学 習 活 動 を 取 り 入 れること さらには 文 脈 から 物 語 展 開 を 予 測 したり 因 果 関 係 を 考 察 したりする 話 し 合 いを 行 うこと 等 が 求 められる この 学 習 終 了 後 に ある 子 どもが 書 いた 感 想 である 勉 強 の 一 番 最 初 に 先 生 が このお 話 がわかるか と このお 話 が 好 きか と 二 つの 質 問 をされました ぼくは きらいでわからない というところに 手 をあげました でも 今 もう 一 度 先 生 に 同 じ 質 問 をされたとしたら 正 反 対 の 好 きでよくわかる のところに 真 っ 先 に 手 をあげます たぶん ほとんどの 友 達 もそう 考 えているでしょう ( 以 下 略 ) 子 どもたちが 求 めているのは 自 分 が 今 もっている 言 葉 への 感 性 と 理 性 を 全 力 活 用 する 学 習 である それは 文 章 読 解 力 を 育 てる 学 習 指 導 そのものであると 言 える 注 1 文 部 科 学 省 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 国 語 編 東 洋 館 出 版 社 2009 20 頁 2 光 村 図 書 出 版 の 6 年 生 用 国 語 科 教 科 書 に 昭 和 46 年 から 掲 載 されている 3 画 小 林 敏 也 画 本 宮 沢 賢 治 やまなし パロル 舎 1985 絵 葉 祥 明 サンリオ 名 作 童 話 館 やまなし サンリオ1988 絵 安 藤 徳 香 やまなし YAMA-NASHI 福 武 書 店 1986 他 多 数 281