肝 機 能 検 査 の 基 礎 刈 谷 豊 田 総 合 病 院 臨 床 検 査 科 大 島 彩
肝 臓 の 特 徴 と 働 き 特 徴 人 体 の 代 謝 能 の 中 枢 大 きな 予 備 能 と 再 生 能 を 有 する ( 正 常 肝 の 場 合 6/7を 切 除 しても 肝 機 能 は 正 常 に 働 く!!) 働 き 1 代 謝 機 能 (グルコース アミノ 酸 脂 肪 酸 など) 2 胆 汁 の 分 泌 3 解 毒 作 用 ( 薬 物 毒 物 ホルモンの 不 活 性 化 )
代 謝 能 肝 臓 1 糖 代 謝 グルコース グリコーゲン ( 貯 蔵 ) グルコース 2 蛋 白 質 代 謝 アミノ 酸 合 成 分 解 アルブミン 凝 固 因 子 コリンエステラーゼ アンモニア 尿 素 3 脂 質 代 謝 4BIL 代 謝 脂 肪 酸 グリセリン 間 接 BIL 合 成 分 泌 抱 合 分 泌 リン 脂 質 コレステロール 中 性 脂 肪 胆 汁 酸 直 接 BIL 5その 他 ホルモン 毒 素 不 活 化 無 毒 化 抱 合 排 泄
肝 機 能 検 査 選 択 法 の 基 準 肝 細 胞 障 害 胆 汁 うっ 滞 重 症 度 の 判 定 急 性 経 過 観 察 AST ALT γ -GT ALP : 必 須 :できるだけ 行 う 総 ビリルビン 直 接 ビリルビン 総 蛋 白 アルブミン ChE ZTT 総 コレステロール プロトロンビン 時 間 ICG 試 験 血 小 板 数 慢 性 日 本 消 化 器 学 会 肝 機 能 研 究 班 肝 機 能 検 査 法 の 選 択 基 準 (2006 年 )より 引 用
AST ALTの 作 用 と 分 布 アミノ 酸 のアミノ 基 をケト 酸 のケトン 基 に 転 移 させる 酵 素 アミノ 酸 代 謝 に 関 与 肝 細 胞 が 障 害 ( 破 壊 や 壊 死 )を 受 けたときに 血 中 に 逸 脱 する ASTは 広 域 に 分 布 ALTは 肝 に 集 中 ASTのみ 上 昇 : 肝 以 外 からの 臓 器 障 害 の 可 能 性 もある AST ALTともに 上 昇 : 肝 における 細 胞 障 害 の 可 能 性 酵 素 活 性 U/g 湿 重 量 臓 器 AST ALT 心 臓 156 7 肝 臓 142 44 骨 格 筋 99 5 腎 臓 91 19 膵 臓 28 2 脾 臓 14 1 肺 臓 10 1
ASTアイソザイムと 半 減 期 細 胞 内 可 溶 性 画 分 とミトコンドリア 画 分 (AST-s AST-m)の2 種 類 のアイソザイムが 存 在 する ASTとALTの 血 中 半 減 期 AST-s AST AST-m ALT 約 15 時 間 約 1~2 時 間 約 41 時 間 AST-mはミトコンドリア 膜 障 害 をきたす 重 篤 な 肝 障 害 で 血 中 に 逸 脱 アルコール 性 肝 炎 急 性 肝 炎 劇 症 肝 炎 で 増 加 する
肝 細 胞 障 害 が 起 きた 場 合 細 胞 障 害 早 期 :AST>ALT 存 在 比 を 反 映 高 度 な 細 胞 障 害 :AST>>ALT AST-mの 逸 脱 持 続 的 な 障 害 :AST<ALT ALTの 方 が 半 減 期 が 長 いため 高 値 となる 肝 硬 変 など 逸 脱 酵 素 が 少 ない 状 態 ではAST ALTは 基 準 範 囲 内 になる
AST ALTが 異 常 値 を 示 す 疾 患 考 えられる 疾 患 高 度 上 昇 急 性 肝 炎 劇 症 肝 炎 薬 物 性 肝 障 害 (500U/L 以 上 ) 中 等 度 上 昇 (100~ 500U/L) 軽 度 上 昇 ( 基 準 値 上 限 ~ 100U/L) 極 低 値 (1ケタ) 虚 血 性 肝 炎 (ピーク 時 ) 総 胆 管 結 石 慢 性 肝 炎 自 己 免 疫 性 肝 炎 薬 物 性 肝 障 害 脂 肪 肝 閉 塞 性 黄 疸 原 発 性 胆 汁 性 肝 硬 変 急 性 アルコール 性 肝 炎 肝 炎 ウイルス 以 外 のウイルスによる 肝 炎 筋 疾 患 (AST ) 心 筋 梗 塞 (AST ) 溶 血 性 疾 患 (AST ) 慢 性 肝 炎 肝 硬 変 肝 細 胞 癌 脂 肪 肝 自 己 免 疫 性 肝 炎 薬 物 性 肝 障 害 閉 塞 性 黄 疸 腎 不 全 透 析 患 者 理 由 ビタミンB6 不 足 により アポ 型 ( 不 活 性 型 )からホロ 型 ( 活 性 型 )に 変 換 できないため
胆 道 系 酵 素 ALP 糖 脂 肪 の 吸 収 リン 酸 やCaイオンの 吸 収 と 輸 送 核 酸 合 成 の 調 節 骨 の 破 壊 と 化 骨 に 関 与 する 肝 細 胞 膜 と 毛 細 胆 管 に 多 く 分 布 胆 汁 への 排 出 障 害 胆 肝 内 圧 亢 進 による 肝 での 生 成 亢 進 で 血 中 濃 度 上 昇 γ-gt 肝 の 解 毒 抱 合 排 泄 機 能 に 重 要 なグルタチオンの 分 解 再 合 成 に 関 与 肝 細 胞 のミクロソームや 毛 細 胆 管 膜 に 局 在 アルコールや 薬 剤 などで 誘 導 を 受 け 血 中 濃 度 が 上 昇 する
ALPのアイソザイムと 病 態 種 類 由 来 出 現 する 主 な 病 態 ALP-1 肝 ( 高 分 子 ) ALP-2 肝 毛 細 胆 管 閉 塞 性 黄 疸 ( 胆 管 癌 膵 頭 部 癌 総 胆 管 結 石 など) ALP-1の 病 態 に 加 え 胆 道 感 染 ほとんど 全 ての 肝 胆 道 疾 患 ALP-3 骨 骨 疾 患 骨 代 謝 異 常 成 長 期 ALP-4 胎 盤 癌 妊 娠 後 期 悪 性 腫 瘍 ALP-5 小 腸 血 液 型 B 型 O 型 の 分 泌 型 の 人 の 食 後 ALP-6 一 過 性 高 ALP 血 症 免 疫 グロブリン 結 合 性 ALP 潰 瘍 性 大 腸 炎 の 活 動 期 関 節 リウマチ 5 歳 未 満 の 幼 児 に 多 く 一 過 性 にALPが 著 しく 高 値 ( 成 人 基 準 値 上 限 の 約 5 倍 以 上 ) になる ALP 以 外 に 血 液 検 査 値 に 異 常 を 認 めず 4ヶ 月 以 内 に 基 準 範 囲 内 に 戻 る 原 因 はウイルス 感 染 ( 特 にRSウイルス)と 考 えられている
胆 道 系 酵 素 ALP 糖 脂 肪 の 吸 収 リン 酸 やCaイオンの 吸 収 と 輸 送 核 酸 合 成 の 調 節 骨 の 破 壊 と 化 骨 に 関 与 する 肝 細 胞 膜 と 毛 細 胆 管 に 多 く 分 布 胆 汁 への 排 出 障 害 胆 肝 内 圧 亢 進 による 肝 での 生 成 亢 進 で 血 中 濃 度 上 昇 γ-gt 肝 の 解 毒 抱 合 排 泄 機 能 に 重 要 なグルタチオンの 分 解 再 合 成 に 関 与 肝 細 胞 のミクロソームや 毛 細 胆 管 膜 に 局 在 アルコールや 薬 剤 などで 誘 導 を 受 け 血 中 濃 度 が 上 昇 する
胆 道 系 酵 素 はどのように 逸 脱? 正 常 な 場 合 肝 細 胞 毛 細 胆 管 胆 汁 とBIL 総 胆 管 へ 類 洞 中 心 静 脈 へ グルコースや 蛋 白 質 など
胆 道 系 酵 素 はどのように 逸 脱? 細 胞 障 害 毛 細 胆 管 ALP γ-gt 胆 石 類 洞 ALP γ-gt
γ-gtが 異 常 値 を 示 す 疾 患 考 えられる 疾 患 高 度 上 昇 急 性 アルコール 性 肝 炎 アルコール 性 肝 障 害 閉 塞 性 黄 疸 (200U/L 以 上 ) 慢 性 活 動 性 肝 炎 肝 内 胆 汁 うっ 滞 中 等 度 上 昇 アルコール 性 肝 障 害 薬 物 性 肝 障 害 慢 性 活 動 性 肝 炎 (100~200U/L) 肝 硬 変 肝 癌 脂 肪 肝 胆 道 疾 患 軽 度 上 昇 (100U/L 以 下 ) アルコール 性 肝 障 害 薬 物 性 肝 障 害 慢 性 肝 炎 脂 肪 肝 特 徴 個 人 差 が 大 きい: 年 齢 性 別 飲 酒 歴 服 薬 歴 アルコール 性 肝 疾 患 の 場 合 は 禁 酒 により 値 が 正 常 化 する 妊 婦 : 週 数 と 共 に 低 下 新 生 児 : 高 値 (50~150IU/L) 禁 酒 が 守 られていれば 約 2 週 間 でγ-GTの 値 は 前 値 の1/2 値 まで 減 少 する
ChEの 特 徴 肝 細 胞 において 合 成 され 血 中 に 分 泌 される 酵 素 で 肝 細 胞 障 害 特 に 蛋 白 合 成 障 害 時 に 低 下 する 肝 疾 患 では 多 くの 場 合 が 血 清 ALBと 相 関 が 見 られ 過 栄 養 性 の 脂 肪 肝 で 高 値 を 示 す 農 薬 やサリンなどの 有 機 リン 中 毒 で 著 明 に 低 下 する
ビリルビンの 代 謝 赤 血 球 ヘモグロビン ヘム+グロビン 肝 臓 ビリベルジン+ 鉄 肝 細 胞 で グルクロン 酸 抱 合 直 接 型 BIL 肝 動 脈 門 脈 を 通 り 肝 細 胞 へ 運 搬 腸 管 間 接 型 BIL 血 管 外 溶 血 ( 脾 臓 など) 毛 細 胆 管 に 排 泄 胆 管 ウロビリノーゲン
黄 疸 の 種 類 と 疾 患 1 肝 前 性 黄 疸 ( 溶 血 性 黄 疸 ) 溶 血 亢 進 により 間 接 型 BIL 溶 血 性 貧 血 など 関 連 検 査 :ヘモグロビン 網 状 赤 血 球 LD ハプトグロビン 2 肝 性 黄 疸 ( 肝 細 胞 性 黄 疸 ) 肝 細 胞 障 害 により 直 接 型 間 接 型 BIL 肝 炎 肝 硬 変 など 関 連 検 査 :AST ALT γ-gt ウイルスマーカー DLST 3 肝 後 性 黄 疸 ( 閉 塞 性 黄 疸 ) 胆 汁 うっ 滞 により 直 接 型 BIL 胆 石 症 膵 頭 部 癌 など 関 連 検 査 : 腫 瘍 マーカー 超 音 波 検 査 CT 検 査 など T-BILが2mg/dLを 超 えると 肉 眼 的 に 黄 疸 と 分 かる
ICG 試 験 ( 色 素 負 荷 試 験 ) 目 的 肝 予 備 能 を 調 べる 原 理 方 法 インドシアニングリーン(ICG)は 類 洞 を 通 過 す る 際 に 肝 細 胞 に 摂 取 され 抱 合 を 受 けること なく 胆 汁 に 排 泄 される これより 一 定 量 の ICGを 静 脈 に 投 与 し 15 分 後 にICG 濃 度 を 測 定 することで 血 中 停 滞 率 を 算 出 する 基 準 範 囲 と 臨 床 意 義 基 準 範 囲 :10% 未 満 高 値 : 肝 硬 変 慢 性 肝 炎
肝 病 態 に 関 連 する 検 査 項 目 1 肝 細 胞 障 害 を 反 映 肝 細 胞 の 合 成 能 障 害 を 反 映 線 維 化 の 程 度 を 反 映 検 査 項 目 動 向 考 えられる 疾 患 AST ALT 劇 症 肝 炎 LD 直 接 BIL 血 清 鉄 アンモニア ALB T-CHO ChE PT ZTT IgA G M Ⅳ 型 コラーゲン ヒアルロン 酸 ウイルス 性 肝 炎 薬 物 性 肝 炎 肝 硬 変 アルコール 性 肝 炎 劇 症 肝 炎 肝 硬 変 低 栄 養 など 肝 硬 変 など
肝 病 態 に 関 連 する 検 査 項 目 2 検 査 項 目 動 向 考 えられる 疾 患 肝 での 取 り 込 み 排 泄 障 害 を 反 映 ICG 試 験 15 分 値 慢 性 活 動 性 肝 障 害 肝 硬 変 など 肝 細 胞 の 癌 化 を 反 映 AFP PIVKA-Ⅱ 肝 細 胞 癌 など ALP 胆 石 症 γ -GT 閉 塞 性 黄 疸 胆 汁 うっ 滞 を 反 映 LAP 膵 頭 部 癌 など T-CHO 直 接 BIL
症 例 1 39 歳 男 性 初 診 2 日 目 UN 17.3 18.4 CRE 0.94 1.04 TP 6.8 7.2 ALB 4.1 4.2 T-BIL 0.9 2.5 D-BIL 0.3 1.5 AST 237 576 ALT 135 606 LD 473 553 初 診 2 日 目 ALP 388 598 γ GT 80 253 CHE 300 397 AMY 80 73 CK 82 100 T-CHO 175 197 CRP 0.91 4.25 PT(%) 77 PLT 23.3 26.5
劇 症 肝 炎 とは? 肝 炎 症 状 発 現 後 8 週 間 以 内 に 起 こる 高 度 の 肝 機 能 障 害 発 症 10 日 以 内 : 急 性 型 発 症 10 以 上 8 週 間 以 内 : 亜 急 性 型 意 識 障 害 ( 肝 性 脳 症 昏 睡 Ⅱ 度 以 上 ) プロトロンビン 時 間 40% 以 下 異 常 行 動 羽 ばたき 振 戦 など
症 例 2 78 歳 男 性 UN 16.0 CRE 0.76 TP 6.0 ALB 2.9 A/G 0.94 T-BIL 1.0 D-BIL 0.3 AST 50 ALT 64 LD 199 ALP 243 γ GT 50 CHE 170 T-CHO 171 ZTT 21.8 PLT 10.8 PT(%) 61 AFP 53.2
症 例 3 41 歳 男 性 初 診 2 日 目 UN 13.2 9.9 CRE 0.75 0.82 TP 6.8 6.4 ALB 4.6 4.3 T-BIL 2.0 4.9 D-BIL 0.4 2.6 AST 58 275 ALT 47 154 LD 243 363 初 診 2 日 目 ALP 410 1012 γ GT 535 CHE 388 AMY 60 35 CK 133 168 T-CHO 150 TG 32 GLU 129 160 CRP 1.15 14.23