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1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

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事例検証 事例 1 37 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (2 歳 ) が遺される場合ガイドブック P10 計算例 1 P3 事例 2 42 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (7 歳 4 歳 ) が遺される場合 P4 事例 3 事例 3A 事例 3B 53 歳の会社員の夫

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ジュニアNISAって どんな制度 ジュニアNISA とは 未成年者少額投資非課税制度の愛称で お子様 お孫様の将来の資産形成に活用できる制度です まずはジュニアNISA まずは ジュニアNISAを簡単にご紹介 を簡単にご紹介 日本に住む未成年者 0 19歳 が対象 資産

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1 各調整方式の比較 前提 : 法人実効税率 % 金融所得の税率 20% ( 配当軽課の場合の配当分の法人税率は 30%) 比較のポイント 適用税率 法人税率か所得税率か 金融所得課税一元化にマッチするか( 税率 損益通算 ) 簡素な制度か 特定口座への対応はか 法人の税負担は軽減されるか

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

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係を決めよう (1) 班の意見をまとめて発表する班長 (2) 金額を計算し マネープランシートに記入する記録 計算係 (3) 思い出ポイントを管理する思い出係 (4) カードをひくカード係 5 人の班はカード係を 2 人にしましょう 1

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新設 拡充又は延長を必要とする理⑴ 政策目的 地震等の災害からの復旧に際して 公的補助が公立学校に比べて少なく 自主財源の確保が求められる私立学校にとって 寄附金収入は極めて重要な財源である 災害時には 大口の寄附だけでなく 広く卒業生や地域住民を中心に 義援金 募金という形で小口の寄附を集める必要

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

本日の構成 1. 公務員の老後にまつわる制度改正 2. 個人型確定拠出年金 (DC) のしくみ 3. 個人型 DC の税制メリットとは? 4. 老後資産を形成するならどの制度? 他の制度 商品も併せて検討する 5. まだまだ 老後 のイメージがつかない方へ

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

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公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

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1 どちらかをご選択特定口座と客さま般口座の特定口座の概要 特定口座とは 個人のお客さまが公募株式投資信託を換金され利益が出た場合は 原則 確定申告が必要ですが お客さまの確定申告にかかる負担を軽減させるべく当金庫が納税の代行などを行う制度として 特定口座 があります 特定口座 をご利用いただくこと

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(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

各 位 平成 26 年 3 月 28 日 株式会社大和ネクスト銀行 大和証券株式会社 ダイワの NISA 口座開設キャンペーン ( 第 2 弾 ) 大和ネクスト銀行円定期預金 金利優遇キャンペーン ( 第 3 弾 ) および ご家族 ご友人紹介キャンペーン ( 第 3 弾 ) 実施のお知らせ 大和証

Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 1


18 歳人口予測 ( 全体 : :217~228 年 ) 年 45,961 人 228 年 4,98 人 (5,863 人減少 ) は 12 年間で 5,863 人 12.8% 減少し 全国の減少率 9.6% を 3.2 ポイント上回る 223 年に 41,13 人まで減少した後 224

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. 個人投資家の年齢層と年収 個人投資家 ( 回答者 ) の年齢層 8% 6% 28% 2~3 代 5% 2% 3% 4 代 5 代 6~64 歳 65~69 歳 7 代以上 個人投資家 ( 本調査の回答者 ) の過半数 (56%) は 6 歳以上のシニア層 昨年調査 6 歳以上の個人投資家 56%

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イノベーションの担い手の活動状況08

1 世帯人員世帯人員は 本人を含む同一生計を営む世帯の人数のことです 世帯の人数 を入力してください 住民票上の別世帯であっても 同一生計の者 ( 単身赴任中の父等 ) は世帯人員に含みます 2 家計支持者の収入 所得金額収入 所得が多い方を 主たる家計支持者の収入 所得金額 欄に入力してください

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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1. 期待収益率 ( 期待リターン ) 収益率 ( リターン ) には次の二つがあります 実際の価格データから計算した 事後的な収益率 将来発生しうると予想する 事前的な収益率 これまでみてきた債券の利回りを求める計算などは 事後的な収益率 の計算でした 事後的な収益率は一つですが 事前に予想できる

ファンド名説明 ifree 8 資産バランス 本を含む世界の 8 資産へ均等に分散投資します 株式および不動産投資信託に投資することで世界の経済成 の果実を享受するとともに これらとは値動きの異なる債券にも投資することで安定した収益の確保も期待できます これまで預貯 中 だったお客様が幅広く資産を分

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メモ 1

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リターン大2 運用商品を選ぼう 確定拠出年金は 自分で選んだ商品で運用し その運用結果によって将来の受け取り額が決まります なお 投資信託は預金とは異なり 運用の結果によっては損失が生じる可能性があります ご加入の方からの運用指図がないご資産は 未指図資産という現金相当の資産として管理されます 所定

基本方針に関する取組状況

Transcription:

なるほど金融 徹底活用! 投資優遇税制第 11 回第 2 部 4 教育費 ( 祖父母 孫 ) 2015 年 10 月 22 日 全 5 頁 孫のために教育資金を支援するならどの制度? 高校までなら一括贈与非課税制度 大学等ならジュニア NISA 金融調査部研究員是枝俊悟このシリーズでは 個人投資家の視点に立って 複数の制度を横断的に比較分析し 各制度の活用法を徹底研究します 第 2 部では 局面ごとにどのような制度を利用するべきか 利用局面 制度 の分析を行います 第 2 部の 4 回目は祖父母が孫の教育資金を支援する場合について考えます 候補となりそうな ジュニア NISA 教育資金の一括贈与非課税制度 都度贈与を横断比較して どのような人にはどの商品 制度が向いているのかを検討します 1. 孫の教育資金を支援することの意味 今回は 祖父母が孫の教育資金を支援する場合について検討します そもそも 孫に教育資金を支援することの効果にはどのようなものがあるのでしょうか 孫の教育資金の総額とその負担について 祖父母が孫に教育資金を支援しなかった場合と比較して考えたものが 次の図表です 祖父母が孫に教育資金を支援することによる 孫の教育資金総額の変化 Copyright C2015 Daiwa Institute of Research Ltd.

祖父母が孫へ教育資金を支援しなかった場合 教育資金の私費負担については 主に孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) と孫自身が負担することになります このため 祖父母が孫に教育資金を支援した場合の効果は 支援を行わなかった場合に比べて 1 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) の負担軽減 2 孫自身の負担軽減 3 孫の教育資金総額の増加の 3 つのいずれかまたはその組み合わせになるものと考えられます 祖父母が孫に教育資金を支援する場合 この1~3のどれにつながるかを意識するとよいものと思います 2. 高校までの教育資金を支援する場合 では 具体的に教育資金が必要となる時期および その負担者について考えてみましょう 高校以下の段階においては 一般的には 孫の教育資金は孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) が負担するのが一般的と考えられます 公立学校に通うことを前提とすれば 高校以下の段階では 教育費は子ども 1 人につき年間およそ 30 万円 ~50 万円程度です 一般的には 孫が公立学校に通う場合は 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) がそれほど問題なく教育費を負担できるケースが多いものと考えられます 一方 私立学校に通う場合は 小学校 生から高校 生まで年間 100 万円を上回り ( 年によっては年間 150 万円を上回り ) 高校 2 年生 3 年生でも 80 万円を超えます 私立学校に通い始めた場合 教育費は一度きりのものではなく 継続的に高水準になり続けるのです 小学校 ~ 高校の 1 人 あたり教育費 公立 私立 ( 単位 万円 年額 ) 学校での学校外の学校での学校外の総額教育費活動費教育費活動費 総額 12.8 18.4 31.1 122.3 48.2 170.5 2 年 7.6 17.6 25.3 76.1 44.1 120.2 小学校 3 年 8.3 18.7 27.0 77.8 47.0 124.9 4 年 8.2 21.3 29.5 79.8 58.0 137.8 5 年 9.1 22.1 31.2 80.0 65.2 145.2 6 年 12.4 26.5 38.9 82.9 72.4 155.3 23.2 21.9 45.1 130.5 25.7 156.1 中学校 2 年 13.4 26.4 39.8 83.3 28.8 112.1 3 年 13.8 36.4 50.2 86.6 33.8 120.5 31.4 12.6 44.0 97.6 18.6 116.2 高校 2 年 25.1 14.2 39.3 64.1 20.7 84.8 3 年 12.7 19.9 32.6 53.1 34.5 87.6 ( 出所 ) 文部科学省 平成 24 年度子供の学習費調査 をもとに大和総研作成 2

高校までの間 一度私立学校に通わせ始めた場合 経済的事情によって途中から公立学校に進学 転校させることはできる限り避けたいものと思います このため 親としては子どもを私立学校に通わせたいと思っても その後の継続的な教育費の負担を考えると 決断がしづらい面があるように思います 孫を小学校から高校までの間に私立学校に入れたり 習い事等の学校外活動を充実させたりしたいと考える場合は 小学校 中学校 高校の教育費に使えるような形で 支援を行うとよいでしょう この場合 必要な都度の贈与か教育資金の一括贈与非課税制度を利用するとよいでしょう いずれにしても贈与税は課税されません 特に孫が私立学校に入った場合 教育費負担が継続的に発生することを考えると 教育資金の一括贈与非課税制度により 今後も含めた教育費が確保されると孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) としての安心感は強くなるものと思います なお 高校までの教育資金を支援する場合には ジュニア NISA は利用すべきではありません ジュニア NISA は 18 歳まで払い出し制限があり それまでに払い出すとジュニア NISA で得た運用益すべてが所得税の課税対象になってしまうからです 3. 大学や専門学校の教育資金を支援する場合 高校までは公立学校に進学する進路を想定している場合 家庭にとって教育費負担が最大になるのは大学や専門学校となります 国公立の場合は私立よりも負担は抑えられますが 定員が少ない狭き門で 望めば必ず進学できるというわけではありません 学部 学科等にもよりますが 私立の大学や専門学校などの学費 ( 施設費等を含む ) は 子ども 1 人あたり年間 100 万円程度です 自宅外から学校に通う必要がある場合は これに加えて さらに下宿代等も必要となります 高等教育の 1 人 あたりの学費等 ( 施設費等を含む ) ( 単位 万円 年額 ) 国公立 私立 大学短期大学専門学校 81.8 52.2 37.1 131.3 111.9 108.0 2 年以後 2 年 2 年以後 53.6 38.8 32.6 104.8 87.2 91.7 ( 注 ) 国公立の欄は 大学は国立 短期大学 専門学校は公立の金額を指す ( 出所 ) 文部科学省 平成 25 年度の授業料等の学生納付金の状況について をもとに大和総研作成 このため 高校までの教育費は親が賄うことができても 大学や専門学校の教育費まで準備するのは困難となるケースも少なくありません 祖父母から孫へ大学や専門学校の教育資金が 3

支援されれば 孫の進学につながるほか 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) や孫本人の負担軽減にもつながります 祖父母から孫へ 大学や専門学校に進学するための教育資金を支援する場合は その孫の現時点の年齢によって利用すべき制度が分かれるものと思います 孫がまもなく高校を卒業する年齢であれば 学費そのものを支援する都度の贈与が有効でしょうし 既に中学生や高校生となっているなど 大学や専門学校への進学までの期間があまりない場合は 教育資金の一括贈与非課税制度での贈与も有効と考えられます 他方 孫が生まれてすぐや幼いうちなど 大学や専門学校への進学までの期間が長い場合は それまでの間の資産運用も意識しておきたいところです 前回も述べましたが 今後 ある程度の物価上昇 ( に伴う大学授業料の上昇 ) を見込むのであれば ある程度価格変動リスクを取っても 物価上昇率を上回るリターンを期待できる運用を行うことが有効と考えられます 教育資金の一括贈与非課税制度では 贈与された資金は ほとんどの場合預貯金や元本保証の信託商品で運用されることとなり 大きなリターンを期待することはできません ある程度価格変動リスクを取っても物価上昇率を上回るリターンを期待できる運用を行いたいのであれば 贈与税の基礎控除の範囲内で ( 年 110 万円以内で ) 孫に資金を贈与した上で 孫のジュニア NISA で上場株式や株式投信などを購入し 資金が必要になるときまでの資産運用を行うのも有効でしょう もっとも 孫のジュニア NISA の口座を管理するのは孫を育てる親によって行うことが一般的になるものと思います 孫の教育資金について 価格変動リスクを取った運用を行うべきか否かは祖父母だけでなく 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) と相談して決めるべきでしょう 価格変動リスクを取った運用を行いたくない場合は 期待リターンは低くなりますが 教育資金の一括贈与非課税制度を利用することが有力な候補となります 4. 相続税 贈与税の負担軽減を意識する場合 祖父母自身に相当の資産があり 相続税や贈与税の負担軽減を意識する場合は 孫の教育資金を支援する必要性の有無にかかわらず 教育資金の一括贈与非課税制度を活用して贈与を行うことが有効と考えられます 第 1 部でも述べましたが 教育資金の一括贈与非課税制度には 教育資金 という名称はついているものの 実際にはお金に色はついていません ( 本シリーズ第 7 回参照 ) 孫の教育資金については なるべく孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) が負担するのではなく 祖父母自身が負担するようにすれば その分 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) にとって自由に使える資金が増えます 孫への教育資金の一括贈与非課税制度で 実質的には 自由に使える資金 を贈与できるという考え方もできます 4

祖父母から孫への教育資金の支援のまとめ 孫を小学校から高校までの間に私立学校に入れたり 習い事等の学校外活動を充実させたりしたいと考える場合は 小学校 中学校 高校の教育費に使えるような形で 支援を行うとよいでしょう 特に孫が私立学校に入った場合 教育費負担が継続的に発生することを考えると 教育資金の一括贈与非課税制度により 今後も含めた教育費が確保されると 孫を育てる親 ( 祖父母にとっての子 ) としての安心感は強くなるものと思います 孫の大学や専門学校などへの進学のための教育資金を支援したいと考える場合は その孫の現時点の年齢によって利用すべき制度が分かれるものと思います 孫の大学や専門学校などへの進学が近い場合は 必要な都度の贈与や教育資金一括贈与非課税制度を利用することが有効と考えられます 他方 孫が生まれてすぐや幼いうちなど大学や専門学校などへの進学までの期間が長い場合は それまでの間の資産運用も意識しておきたいところです ある程度価格変動リスクを取っても物価上昇率を上回るリターンを期待できる運用を行いたいのであれば 贈与税の基礎控除の範囲内で ( 年 110 万円以内で ) 孫に資金を贈与した上で 孫のジュニア NISA で上場株式や株式投信などを購入し 資金が必要になるときまでの資産運用を行うのも有効でしょう ( 次回は 最終回老後資金の形成について ) 以上 5