colorectal cancer GuideBook 大腸がんガイドブック 監修 愛知県がんセンター中央病院薬物療法部部長室圭先生
大腸がんとは 日本人に多いがんで症状が現れにくいことがあります 粘膜 大腸がんは大腸の粘膜に発生します 大腸は 水分や塩分 一部の栄養素の吸収 便の形成などのはたらきをしている管状の臓器です 壁の厚さは3~5mmで 内側の粘膜から外側の漿膜 ( しょうまく ) までの5つの層からできています 大腸がんは最初に大腸の最も内側の粘膜で発生します 粘膜下層 固有筋層 漿膜下層漿膜 S 状結腸と直腸にできるがんが 7 割を占めています 大腸はおよそ1.5mから2mの長さがあり 大きく分けると結腸と直腸に分けられます 結腸はさらに盲腸 上行結腸 横行結腸 下行結腸 S 状結腸に分けられます 日本人の大腸がんの約 7 割はS 状結腸と直腸に発生します 大腸の構造と大腸がんの部位別発生頻度 肝臓 食道 胃 上行結腸 11% 盲腸 6% 虫垂 横行結腸 9% S 状結腸 34% 下行結腸 5% 結腸 小腸 大腸 直腸 35% 直腸 肛門 大腸がん検診ガイドライン ガイドブック を参考に作成 1
症状がなくても進行していることがあります 大腸がんの初期には自覚できる症状はほとんどありません がんが進行してくると 便に血が混じる 便が細くなる 便が残っている感じがする おなかが張る 下痢と便秘を繰り返す 腹痛 貧血 などの症状が出ることがあります しかし 盲腸や上行結腸 横行結腸のがんではこうした症状が現れにくく かなり進行した状態になるまでがんが見つからないこともあります 50 歳代から増加します 大腸がんは 日本人のかかるがんとしては胃がんに次いで2 番目に多いがんです 大腸がんにかかる人の割合 ( 罹患率 ) は50 歳代くらいから増えはじめ 高齢になるほど高くなります 大腸がんによって亡くなる方の割合は 検診による早期発見や治療法の進歩によって減ってきています 450 日本人の年齢階級別大腸がん罹患率 (2010 年 ) 人口 10 万人あたりの罹患者数 ( 人 ) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 0~4 年齢階級 ( 歳 ) 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~ 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターの資料より作成 2
大腸がんの進行度 大腸がんの進行度は深さと転移から判断します 大腸がんの進行度は 5 つの病期 ( ステージ ) に分類されます 大腸がんの進行度 ( 病期 ) は次の1~3の基準により 進行度の低いほうから 0 期 Ⅰ 期 Ⅱ 期 Ⅲ 期 Ⅳ 期の5 段階に分類されます 1 がんが大腸の壁の内側から外側へ向かって浸潤している深さ ( 深達度 ) 2 がんが発生した場所の周囲のリンパ節に散らばっているか ( リンパ行性転移 ) 3 がんが他の臓器に散らばっているか ( 遠隔転移 : 血行性転移 播種性転移 ) 5 つの病期とがんの深達度 転移 0 期 Ⅰ 期 Ⅱ 期 Ⅲ 期 Ⅳ 期 がんの深さに関係なくリンパ節に散らばっている 粘膜 粘膜下層 固有筋層 漿膜下層 漿膜 がんが大腸の粘膜にとどまっている がんが大腸の固有筋層にとどまっている がんが大腸の固有筋層を越えて広がっている がんが他の臓器またはおなかの中に散らばっている 早期がん 進行がん 3
がんの散らばり方には 3 つのパターンがあります がん細胞が最初に発生した場所 ( 原発巣 ) から血液やリンパ液の流れにのって別の臓器や器官に移動し ふえて大きくなることを 転移 といいます 転移は移動の仕方によって以下の3つに分類されます 全身へ がんが大腸の壁の中にある血管に入り込み 血液の流れにのって移動し 別の臓器でふえることを 血行性転移 といいます 大腸がんの場合は まず肝臓に転移する例が多く 続いて肺や骨 脳への転移が見られます 肺転移 血行性転移 肝転移 がんが大腸の壁の一番外側の膜を破って おなかの中に種をまいたように散らばり あちらこちらでふえる状態です この状態を 播種性転移 ( 腹膜播種 ) といいます 大腸がん ( 原発巣 ) リンパ行性転移 播種性転移 ( 腹膜播種 ) がんが大腸の壁の中にあるリンパ管に入り込み リンパ液の流れにのって移動し リンパ管の途中にあるリンパ節でふえることを リンパ行性転移 といいます 4
大腸がんの検査と治療法の決定までの流れ 検査を行ってがんの有無 進行度を確認し治療法を決めます 大腸がんがあるかどうかは 大腸内視鏡検査などの方法で調べることができます 大腸がんが確認されたら がんの広がりや転移の有無を調べるために超音波 ( エコー ) 検査やCT 検査を行います がんの有無を調べる 大腸内視鏡検査 先端にビデオカメラのついた内視鏡を肛門から入れて 大腸の中を直接観察します がんの疑いがあれば 病理検査のために組織を採取することができます ( 生検 ) 本当にがんかどうか確かめる 病理検査 大腸内視鏡検査で採取した組織に がん細胞があるかどうか 顕微鏡で調べます がんの進み具合を確認する CT MRI 超音波 PET さまざまな画像診断装置を用いて がんがある場所や大きさ 形 転移について詳しく調べます 腫瘍マーカー 血液検査でがんの進行に従って増える物質 ( 腫瘍マーカー ) を調べます 5
がんを見つける広がりを調べるがんの検査と治療法決定までのおおまかな流れ 異常の発見 ( 便潜血検査 血便 便通異常 腹痛など ) 大腸内視鏡検査 [+ 生検 ] 異常なし病変あり定期的に受診病理検査 良性 悪性 定期的に受診 腫瘍マーカー検査 ( 血液検査 ) 胸部 腹部の CT MRI 腹部エコー PET など 病期 ( ステージ ) の判定 病期 ( ステージ ) 0 期 Ⅰ 期のうち浸潤が深いもの Ⅳ 期 Ⅰ 期のうち浸潤が浅いもの Ⅱ 期 転移巣を切除できる 転移巣を切除できない Ⅲ 期 治療方針 内視鏡治療 手術 ( 腸管切除 + リンパ節郭清 ) 手術 ( 原発巣の切除 + 転移巣の切除 ) 手術以外の治療 ( 化学療法 放射線療法など ) 術後補助化学療法! さまざまな検査の結果から がんの病期 ( ステージ ) を判定して 治療の方針を決定します 6
早期大腸がんの治療 [ 内視鏡による治療 ] がんが早期ならば肛門から内視鏡を入れて治療できます 大腸がんの治療は 手術による切除が基本です しかし 早期大腸がん (3ページ参照) のうち リンパ節転移の可能性が極めて低いものについては 内視鏡を肛門から入れて大腸の内側からがんを取り除く方法で治療することもあります 以下に内視鏡による早期大腸がんの治療法 3 種類を紹介します 大腸内視鏡 ポリペクトミー ポリペクトミーは キノコ状のポリープ ( 有茎性ポリープ ) に対して用いられます 内視鏡を通してスネアと呼ばれる細いワイヤ ( 針金 ) の輪をポリープの付け根に引っかけて締め 高周波電流で焼き切り ポリープを取り除きます スネア 内視鏡的粘膜切除術 (EMR) EMRは 隆起の少ない病変に対して用いられます 病変の下層部に生理食塩水などを注入して ポリープのように浮き上がらせてから スネアで病変を含む粘膜を焼き切ります 注射針 大腸内視鏡 腫瘍 ( がん ) 生理食塩水など スネア 内視鏡的粘膜下層剝離術 (ESD) ESDは 病変の下層部に液体を注入しながら 病変を電気メスで徐々にはぎ取る方法で 大きな病変も一括して切除できます! 切除したがんは 顕微鏡で詳しく調べて がんを取り残していないか 転移や再発の危険性が高くないかを確認します その結果によっては さらに手術が必要となる場合もあります 7
大腸がんの治療 [ 外科手術による治療 ] 手術ではがんを含む広い範囲をまとめて取り除きます 大腸がんの手術では がんのある腸管とリンパ節を切除します がんが周囲の臓器に転移している場合には それらも一緒に切除します 血管 十分な長さの腸管とリンパ節をまとめて取り除きます リンパ節 がんを残さず取り除くために がんを中心とした十分な長さの腸管と がんが転移する可能性のあるリンパ節をまとめて取り去ります 直腸がんの場合は がんを取り切るために肛門を残せないことがあります 人工肛門 ( ストーマ ) 直腸がんの場合 がんが肛門に近いところにあると 肛門も切除する必要がある場合や 肛門の機能を残せない場合があります このような場合 肛門の代わりの便の出口として 結腸あるいは小腸 ( 回腸 ) の端をおなかに開けた穴につないだ人工肛門 ( ストーマ ) を設けます コラム 腹腔鏡下手術について 最近では おなかを数ヵ所小さく切開して そこから小型カメラや手術器具を入れ 画像を見ながらがんを摘出する腹腔鏡下手術という方法もあります! がんの位置に応じて切除範囲 起こりうる合併症や危険性も異なるため 担当医の説明をよく聞いてください 8
大腸がんの治療 [ 化学療法 ( 抗がん剤による治療 )] 再発を予防するための化学療法と 転移 再発がんに対して行う化学療法があります大腸がんの化学療法 ( 抗がん剤による治療 ) には大きく分けて 2 種類あります 1 手術後のがんの再発を予防するための化学療法 2 手術での切除が難しい進行がんまたは再発がんに対して行う化学療法 1 手術後の再発を防ぐための化学療法 ( 術後補助化学療法 ) 術手術で目に見えるがんを完全に取り除くことができた場合でも 目に見えない後小さながん細胞が体内に残っている可能性があります Ⅱ 期のうち再発の危険性が高い場合とⅢ 期の大腸がんでは 手術後に再発を防ぐための化学療法を行います 手2 転移 再発を起こした大腸がんの化学療法手術で取り除くことが難しい転移 再発した大腸がんについては 複数の抗がん剤を組み合わせて治療を行います 患者さんのからだの状態やん抗がん剤の効果をみながら治療法の継続や変更 転移 再発大腸がを検討します 9
さまざまな要素を考えて 患者さんに適した抗がん剤の組み合わせと投与のスケジュールが決められます 術後補助化学療法においても 転移 再発大腸がんの化学療法においても 使用する抗がん剤の組み合わせと治療のスケジュールは がんの進行度 患者さんのからだの調子 生活上の都合など さまざまな要素を考えて決められます 1 術後補助化学療法のスケジュール例 (UFT+LV 療法 ) 薬剤 :UFT( テガフール ウラシル配合剤 )+ LV( ホリナート ) 飲み方 :1 日 3 回服用 4 週投与 1 週間休薬継続期間 : 6 ヵ月 1 週目 UFT 1 日 3 回 LV 1 日 3 回 2 週目 3 週目 4 週目 5 週目 UFT 1 日 3 回 UFT 1 日 3 回 UFT 1 日 3 回 1 1 週間休薬 LV 1 日 3 回 LV 1 日 3 回 LV 1 日 3 回 5 週を 1 クールとして繰り返す 2 転移 再発大腸がんの化学療法のスケジュール例 (mfolfox6+ ベバシズマブ療法 ) 薬剤 :mfolfox6(5-fu レボホリナート オキサリプラチン ) ベバシズマブ投与方法 : 1 日目にベバシズマブを30 90 分間点滴 続いてオキサリプラチンとレボホリナートを 2 時間点滴し 5-FUの注射と46 時間点滴 12 日間休薬 ベバシズマブ点滴 30 90 分 2 レボホリナート点滴 2 時間 オキサリプラチン点滴 2 時間 1 日目 2 日目 5-FU 注射 5-FU 点滴 46 時間 3 日目 14 日目 12 日間休薬 1 2 週を 1 クールとして繰り返す 1: 抗がん剤による副作用からからだを回復させるための休薬期間です 2: 初回 90 分 2 回目 60 分 3 回目以降 30 分! 薬剤のスケジュールはあくまで一例であり 主治医または薬剤師の説明をよく聞いてください 10
新しいタイプの抗がん剤 分子標的薬 分子標的薬は がんの増殖に関係する特定の分子だけを狙い撃ちにしてがん細胞の増殖を抑える薬で 副作用が比較的少ないとされています ほかの抗がん剤と組み合わせて使うことで効果を高めることが期待されています 大腸がんの治療に使われるセツキシマブやパニツムマブは がん細胞を増やす命令の入り口を遮断する分子標的薬です 大腸がんの中には これらの薬が効かないものがあります それは変異型のKRASをもつ大腸がんです 変異型のKRASは 細胞を増やす命令が遮断されていても 勝手に細胞を増やす命令を流してしまうので がん細胞はふえ続けてしまうのです そのため セツキシマブやパニツムマブを使う前には 手術や内視鏡検査で採取したがん細胞の遺伝子を調べて KRASがこれらの薬の効く型 ( 野生型 ) か 効かない変異型かをあらかじめ調べることになっています 細胞を増やす命令物質 セツキシマブまたはパニツムマブ 細胞を増やす命令物質 命令の入り口 野生型 KRAS がん細胞 変異型 KRAS 野生型 KRASをもつがん細胞命令を遮断すれば増殖は止まります 変異型 KRASをもつがん細胞命令を遮断してもがん細胞が増殖します 11
分でわかる副作用検査でわかる副作用化学療法の副作用と対策自副作用はお薬や生活の工夫によって軽くすることができます 抗がん剤は がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします そのため 化学療法を受け ている患者さんには さまざまな副作用が現れます 副作用が強い場合には抗がん剤の変更や 治療の休止 中断を検討することもありますが 昔と比べると 副作用の苦痛を軽くする対策が進歩し 外来通院で抗がん剤治療を受ける患者さんも多くなっています 主治医からの説明をよく聞いて 使用する抗がん剤の副作用にうまく対処してください 主な副作用と発現時期 急性の吐き気 嘔吐 アレルギー反応 下痢 脱毛遅延性の吐き気 嘔吐 食欲低下 下痢手足のしびれ ( 末梢神経症状 ) 皮膚症状 手足症候群 投与日数日 ~ 数週間数週間 ~ 数ヵ月 白血球減少 血小板減少肝機能 腎機能 心機能障害 貧血間質性肺炎高血圧 この図表には抗がん剤と分子標的薬の両方の副作用を掲載しています 副作用の現れる時期は 治療薬の種類や個人によって 差があります 12
主な副作用と対処法 アレルギー 息苦しさ 動悸 発疹やかゆみ 汗が出る などの症状が現れたら すぐに治療を中止して医師や看護師にお知らせください これまでに他のお薬でアレルギー症状を経験したことのある方は治療前に主治医にお知らせください 吐き気 嘔吐食欲不振 吐き気止めの薬によって症状を予防することができます 消化のよい食事を少量ずつ複数回に分けて食べるようにしましょう 吐き気がして食事がとれないとき 処方された吐き気止めのお薬が吐き気のために服用できないときなどは 主治医にご相談ください 下痢 下痢が起こったら整腸剤を服用します 水様性の下痢が続くときは下痢止め薬を使用します 脱水症状にならないよう温かい飲み物で水分を補給しましょう 皮膚症状 にきびのような発疹 皮膚の乾燥 炎症などの症状が現れることがあります あらかじめ保湿剤でスキンケアを行い 症状が現れたら抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬などで早めに治療します 皮膚を清潔にするよう心がけ 衣服や紫外線 化粧品などによる刺激を避けましょう 手足症候群 手のひらや足の裏の痛み 腫れなどが起こります 悪化すると角質が厚くなり ひび割れ 水ぶくれ 潰瘍ができます ステロイド外用薬を塗ることで症状を抑えることができます 症状が現れた時は 必ず主治医の診察を受けてください 13
末梢神経症状 手 足 口のしびれ のどが締め付けられるような感覚などが現れます 寒冷刺激に誘発されやすいため 冷たい物を触ったり 飲んだりすることを控え 身体保温に努めましょう しびれが持続する場合は薬の量を減らしたり 投与間隔を延長したり 治療を中止したりして対処することもあります 骨髄抑制 白血球 好中球の減少 赤血球の減少 ( 貧血 ) 血小板の減少が起こります 白血球が減少すると抵抗力が低下し 感染を起こしやすくなります 外出時はマスクを着用し 人込みを避け うがい ( 冷たい水は使わない ) 手洗いを行いましょう 血小板が減少すると 出血が止まりにくくなります 激しい運動は避け けがをしないように気をつけましょう 歯ブラシは柔らかいものを使い かみ p7 そりの代わりに電気かみそりを使いましょう 赤血球が減少すると めまい 疲労感 動悸 息切れなどの貧血の症状が現れます ゆっくりとした動作を心がけましょう 高血圧 投与開始時から毎日 決まった時間に血圧を計測し 診察時に担当医に報告しましょう 症状が現れたら血圧を下げるお薬でコントロールします 脱毛 シャワーキャップを被って寝ると布団に髪の毛が落ちるのを防ぐことができます 洗髪の際 頭皮を傷つけないように爪を短く切りましょう 必要に応じてかつらを利用しましょう 14
手術後の定期検査 手術後 少なくとも 5 年間は再発を調べるために定期的に検査を受けてください 大腸がんが再発した患者さんのうち 約 80% が手術から3 年以内 95% 以上が5 年以内に再発が見つかっています このため 手術を受けてから少なくとも 5 年間は 再発チェックのため定期的に検査を受けてください 5 年目以降は 1 年に1 回程度健康診断を受けるとよいでしょう 大腸がん手術後の定期検査 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 問診 診察 3 ヵ月ごと 6 ヵ月ごと 直腸診 ( 直腸がん ) 6 ヵ月ごと 腫瘍マーカー 3 ヵ月ごと 6 ヵ月ごと 胸部 CT 6 ヵ月ごと 腹部 CT 6 ヵ月ごと 骨盤 CT( 直腸がん ) 6 ヵ月ごと 大腸内視鏡検査 1 2 年ごと 大腸癌治療ガイドライン医師用 2014 年版 大腸癌研究会編金原出版刊を参考に作成 15
公的助成 支援について 治療費や後遺症に対して経済的に支援する制度があります 高額の医療費負担を軽減する制度や 障害のある方を支援する制度など さまざまな助成 支援の仕組みがあります 高額療養費制度 がんの治療では 保険が適用される医療費の自己負担額が高額になることがあります 医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に 超過分の費用を公的医療保険で賄う制度があります 公的医療保険の担当窓口か医療機関の相談窓口にご相談ください 障害年金 障害年金は 病気やけがによる障害のために日常生活や働くことが困難な場合などに支給されます 人工肛門を造設されていて 初診日から1 年 6ヵ月を経過し全身状態が思わしくない場合は 年金事務所等へご相談ください 身体障害者手帳 永久人工肛門を造設された方は 身体障害者手帳を申請できます 市区町村の福祉事務所に 身体障害者診断書 意見書( ぼうこう 直腸機能障害用 ) を請求し 判定の資格を持つ指定医に診断書を作成してもらいます その他にも患者さんそれぞれの状況に応じて支援を受けられる制度がありますので がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターや 各医療機関の相談窓口 ソーシャルワーカー 各自治体の相談窓口でご相談ください 16
日常生活の注意点 手術後の日常生活では食生活や運動習慣に注意を払いましょう 食事は消化の良いものを 退院後しばらくは腸の機能が十分に回復していません よく噛んで腹 7~8 分目の食事量を心がけましょう 食物繊維が多く消化の悪い食品は術後 3ヵ月は控えましょう 水分を十分にとり 規則正しい食事を心がけましょう 軽い運動を積極的に ウォーキングや柔軟体操などの軽い運動を積極的に行うように心がけましょう ただし 腹筋を使う激しい運動は手術後半年くらいは避けてください 排便 排尿機能障害との付き合い方 排便 排尿機能に障害がある場合は おしりに力を入れて肛門を引き締めたり緩めたりするトレーニングを行いましょう 外出時には 移動経路上や目的地のトイレの場所をあらかじめ調べておくとよいでしょう 下着の中に失禁用パッドを敷いておいたり 替えの下着を用意したりしておくと安心です 17
人工肛門について 手術で人工肛門を造設された患者さんは 専用の袋 ( 装具 ) を装着し そこに便をためて捨てます 人工肛門の取り扱い ( ストーマケア ) については 入院中に看護師から指導を受けてください ストーマケア専門の外来を設けている病院や ストーマケアに詳しい看護師が相談に応じている病院もあります 手術後の社会復帰について 社会復帰できる時期は 患者さん個々の状況によって異なります デスクワークの場合は術後 1ヵ月程度 腹筋をよく使う仕事の場合は術後 2~3ヵ月程度を目安に社会復帰を考えるとよいでしょう その他に注意すること 吐き気が長い間続く おなかが張る 急な腹痛などの症状があるときは 腸閉塞を起こしてい る可能性がありますので すみやかに病院で診察を受けてください 排便 排尿 性機能について気になる症状があれば 我慢しないで担当医に相談しましょう 18
医療機関名 C003MI01 M004MI01 2012 2015 年 115 月作成 A1 50 A1 10 CO K.M. Y.Se