解剖・栄養生理学

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Taro-4

スライド 1

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

栄養表示に関する調査会参考資料①

Taro-①概要.jtd

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

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2214kcal 410g 9.7g 1 Point Advice

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

目次 < 栄養表示の特徴 > 栄養表示の特徴 1 < 健康 栄養政策と栄養表示の関係 > 健康 栄養政策と栄養表示基準 2 健康 栄養政策と栄養表示 3 健康 栄養政策と栄養表示の関係 4 21 世紀における国民健康づくり運動 ( 健康日本 21) の具体的な推進について 5 < 栄養表示の重要性の

2

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は全国平均を示したものであるから その考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 )


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栄養成分等の分析方法等及び「誤差の許容範囲」の考え方について

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食生活指針の解説要領 1. 食生活指針改定の趣旨我が国は世界でも有数の長寿国であり 平均寿命は男女ともに 80 年を超え 今後も平均寿命が延びることが予測されています こうした平均寿命の延伸には 日本人の食事が一助になっていると考えられます 日本人の食事の特徴としては 気候と地域の多様性に恵まれ 旬

結果の概要 1 栄養 食生活に関する状況 (1) 野菜の摂取状況 20 歳以上における 1 日の野菜摂取量の平均値は 288.1g 性別にみると男性 297.1g 女性 281.1g 年齢階級別にみると 男女ともに 40 歳代で最も少ない 図 1 野菜摂取量の平均値 (20 歳以上 性 年齢階級別

【0513】12第3章第3節

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Q ふだん どんな食事を食べていますか? よく食べる料理は? あまり食べない料理は? よく食べる料理に をつけてみましょう 副菜 野菜やいも 海藻などを主な材料とした料理主食や主菜で不足する栄養面の補強をし 食事に味や彩りなどの多様さをもたらす 主菜 魚や肉 卵や大豆などを主な材料とした料理副食の中

青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 目 次 1. 目的 1 2. 携帯食事手帳システムの概要 1 (1) システムの基礎データ 1 (2) 利用方法 1 (3) 確認できる情報 1 3. 携帯食事手帳利用の手引き 2 (1) 携帯食事手帳 (QRコード) 3 (2) 料理選択の仕方 4 (

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私の食生活アセスメント

Shokei College Investigation into the Physical Condition, Lifestyle and Dietary Habits of the Members of a Boy s Soccer Team and their Families (1) Ph

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

シェイクイット! ダイエットプロテインシェイク ( シリアルフレーバー ) [ID 201-JP] 15,000 ( 税込 ) 植物性タンパク質を主原料に グルコマンナン 穀物 ビタミン ミネラル 乳酸菌などを含む 栄養の偏りがちな現代人におすすめの栄養補助食品です ダイエットのために 1 食分の置

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具体的論点 1( 栄養成分 ) ( 案 ) 平成 28 年 2 月 16 日第 2 回検討会資料 2 から抜粋 1 栄養成分を機能性表示食品制度の対象とする意義 2 安全性の確保 対象となる食品 成分の範囲 摂取量の在り方 3 機能性の表示 適切な機能性表示の範囲 消費者に誤解を与えないための情報の

「健康食品」の定義

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調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

図 24 世界の高齢化率の推移 資料 :UN,World Population Prospects: The 2012 Revision ただし日本は 2010 年までは総務省 国勢調査 2015 年以降は国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 ( 平成 24 年 1 月推計 ) の出生中

学校給食摂取基準の策定について(報告)

Ⅵ ライフステージごとの取り組み 1 妊娠期 2 乳幼児期 (0~5 歳 ) 3 学童期 (6~12 歳 ) 4 思春期 (13~19 歳 ) 5 成年期 (20~39 歳 ) 6 壮年期 (40~64 歳 ) 7 高年期 (65 歳以上 ) ライフステージごとの取り組み ( 図 )

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

結果の概要

次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

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相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

H27地 08 子どもの食と栄養

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エネルギーの食事摂取基準 : 推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) 男性 女性 年齢 身体活動レベル 身体活動レベル Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 15~17 2,450 2,750 3,100 2,000 2,250 2,500 18~29 2,250 2,650 3,000 1,700 1,95

平成 29 年度食育活動の全国展開委託事業報告書 ( 食生活と農林漁業体験に関する調査 ) 平成 30 年 2 月

タイトル

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学校給食摂取基準の策定について(報告)

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食育って, ご存知ですか? 食育とは 生きる上での基本であって, 知育, 徳育及び体育の基礎となるべきもの 様々な経験を通じて 食 に関する知識と 食 を選択する力を習得し, 食育の推進に取り組んでいます! 28 年 ( 平成 2 年 )3 月に 福山市食育推進計画,213 年 ( 平成 25 年

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2 夜食 毎日夜食をとっている者は では 22.5%( 平成 23 年 23.9%) であり で % と割合が高い では 18.3%( 平成 23 年 25.2%) であり 40 歳代で割合が高い 図 夜食の喫食状況 (15 歳以上 性別 年齢階級別 )

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健康くるめ21概要

07 SDGsとCSV演習

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10.Z I.v PDF.p

Japanese Program

(5) 食事指導食事指導は 高血圧の改善 耐糖能障害の改善 代謝異常の改善について 各自の栄養状況 意欲などに応じて目標をたて これを達成できるよう支援する形で行った 開始時点で 食事分析を行い 3ヶ月ごとに 2 回進捗状況を確認する面接を行った 1 年後に終了時点の食事分析を行った 各項目の値の増

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高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

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ウ食事で摂る食材の種類別頻度野菜 きのこ 海藻 牛乳 乳製品 果物を摂る回数が大きく異なる 例えば 野菜を一週間に 14 回以上 (1 日に2 回以上 ) 摂る人の割合が 20 代で 32% 30 代で 31% 40 代で 38% であるのに対して 65 歳以上 75 歳未満では 60% 75 歳以

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2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

1カップ 74gあたり エネルギー (kcal) 57 ビタミンE(mg) 14 ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) 59 ビタミンB1(mg) 2.1 たんぱく質 (g) 0.5 ビタミンB2(mg) 2.1 脂質 (g) 0 ナイアシン (mg) 10.5 炭水化物 (

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

都市部中学 3 年生女子の食事調査 井ノ口美香子 * 今野はつみ * 德村光昭 * 川合志緒子 * 田中祐子 * 康井洋介 * 糸川麻莉 * 近年, 中学生女子における行動上の問題として やせ志向, 一方, 栄養上の問題ではやせ, および肥満の両面が指摘されている 食生活のあり方は生涯の健康づくりに

SoftBank 301SI 取扱説明書

具体的論点 1( 栄養成分 ) ( 案 ) 平成 28 年 2 月 16 日第 2 回検討会資料 2 から抜粋 1 栄養成分を機能性表示食品制度の対象とする意義 2 安全性の確保 対象となる食品 成分の範囲 摂取量の在り方 3 機能性の表示 適切な機能性表示の範囲 消費者に誤解を与えないための情報の

シトリン欠損症説明簡単患者用

食育論

1カップ 74gあたり 6311 エネルギー (kcal) ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) たんぱく質 (g) 脂質 (g) ナイアシン (mg) 1.5 炭水化物 (g) ナトリウム (mg) 22 ビタミンB12(μg)

肥満と栄養cs2-修正戻#20748.indd

目次 1, 研究背景 1-1, ダイエッに対する関心 1-2, 現代の食生活の問題 2, 肥満になる原因 2-1, 肥満になるメカニズム 2-2, 原因 3, 食事パターンによる比較 3-1, 食事パターンの構造と栄養素等の摂取状況の研究 4, 研究目的と分析手順 4-1, データ概要 4-2, 用

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Ⅰ はじめに

第 3 部食生活の状況 1 食塩食塩摂取量については 成人男性では平均 11.6g 成人女性では平均 10.1gとなっており 全国と比較すると大きな差は見られない状況にあります 図 15 食塩摂取量 ( 成人 1 日当たり ) g 男性

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スライド 1

新しい介護食品 の考え方 平成 26 年 3 月 介護食品のあり方に関する検討会議 定義に関するワーキングチーム 平成 25 年 2 月より 介護関係者や学識経験者等による これからの介護食品をめぐる論点整理の会 ( 以下 論点整理の会 という ) を立ち上げ 同年 7 月に論点が取りまとめられた

H22栄養調査

ちゃんと (450~650kcal 未満 ) 栄養バランスを考えて ちゃんと 食べたい女性や中高年男性の方向けしっかり (650~850kcal) 栄養バランスを考えて しっかり 食べたい男性や身体活動量の高い女性の方向け スマートミールの基準 1 エネルギー量 ( カロリー ) は 1 食あたり

平成 21 年循環器疾患登録の年集計について 喫煙習慣の割合は 男性で約 4 割 女性で約 1 割である 週 1~2 回以上の運動習慣のある割合は1 割程度と 男女共に運動習慣のある者の割合が低い 平成 21 年における循環器疾患登録者数 ( 循環器疾患にかかった人のうち届出のあった人 ) について

学校給食実施基準施行通知

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栄養生理学 食生活指針と食事摂取基準

この講義で身に付けること 食事摂取基準の概念と算出の仕方を理解する 推定必要量 推奨量 目安量 目標量 上限量について学ぶ エネルギーと三大栄養素の推奨量や目標量を学ぶ 食事摂取基準値の個人に対する活用での注意点について理解する 食生活指針の概念と現状について学ぶ 健康食品や機能性食品 特保の違いについて学ぶ

食事摂取基準の基本的な考え 最新版は 2010 年度版 (2010-2014 使用 ) 現在 2015 年版について検討中 エネルギーや栄養素をどれだけ摂取すれば 良いのか 欠乏症 摂取不足 過剰による健康障害と生活習慣病予防への対応 個人 集団によって必要な量が違う 本当に望ましい摂取量は変動する 食事改善 や 給食管理 を目的とした活用

日本人の栄養摂取基準 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量 目標量 確率の概念を導入 2005 年からの所要量 推奨量へと変更 日本人の栄養摂取基準 2010 年度版

2015 年版についての検討結果 日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) の概要

2015 年版策定の基本的事項 エネルギーの指標として BMI を採用 栄養素の指標としては従来通り ( 次スライド ) 2010 年版で課題となっていた項目について重点的にレビューを行った 年齢区分には変更なし 用語の変更 : 基準体位 参照体位 基準体位 が望ましい体位という訳ではないため

食事摂取基準指標の定義 (1) 1. 摂取不足の回避目的の指標 推定平均必要量 (EAR): 特定の集団を対象として推定された必要量から 性別 年齢階級別に日本人の必要量の平均の推定値 集団の 50% が必要量を満たすと推定される 推奨量 (RDA): 特定の性別 年齢階級に属する人の殆ど (97~98%) が 1 日の必要量を満たすとされる推定値 (EAR+2SD) 目安量 (AI): 推定平均必要量 推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られていない場合一定の栄養状態の維持に十分と考えられる量

食事摂取基準指標の定義 (2) 2. 過剰摂取による健康障害の回避 耐容上限量 (UL): 特定の集団に属する殆ど全ての人が健康障害をもたらす危険が無いとみなされる習慣的な摂取量の上限を与える量 3. 生活習慣病の予防 目標量 (DG): 生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量 循環器疾患 ( 高血圧 脂質異常症 脳卒中 心筋梗塞 ) とがん ( 特に胃がん ) 対象 : 脂質 コレステロール 炭水化物 食物繊維 ナトリウム ( 食塩 ) カリウム

UL NOAEL( 健康障害非発現量 ) &LOAEL( 最低健康障害発現量 ) 2010 年度版食事摂取基準

2015 年食事摂取基準で策定した栄養素と設定した指標 (1 歳以上 ) 推定平均必要量 (EAR) 推奨量 (RDA) 目安量 (AI) 目標量 (DG) 耐容上限量 (UL) たんぱく質 - - 脂質 総脂質 - - - - 飽和脂肪酸 - - - - n-6 系脂肪酸 - - - - n-3 系脂肪酸 - - - - 炭水化物 - - - - 食物繊維 - - - - 合計で 33 種類の栄養素が対象となっている

2008 鹿毛ら生物のボディープラン (1) 推定必要量 摂取量の求め方 体重 (W 0 ) の被験者の推定平均必要量 ( または目安量 ) の参照値 (X 0 ) が [1 日当たりの摂取量 ] として表されている場合 : 求めたい年齢階級の推定平均必要量 ( または目安量 )(X) はその年齢層の基準体重 (W) を用いた次の式で求める X=X 0 (W/W 0 ) 0.75 0.75 乗 体重を体表面積に換算するため 代謝量はほぼ体表面積に比例する

性別 年齢別の参照体位 2 妊婦を除く

各ライフステージの推定エネルギー必要量 乳児 小児の推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) 総エネルギー消費量 + エネルギー蓄積量 発育に必要なエネルギー量の確保 妊婦の推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) 妊娠前の総エネルギー消費量 + 妊娠期別のエネルギー付加量 胎児の発育に必要なエネルギー量の確保 授乳婦の推定エネルギー付加量 (kcal/ 日 ) 母乳のエネルギー付加量 - 体重減少分のエネルギー量 身体活動の減少 総消費量自体は妊娠前と同じ 母乳生産のためのエネルギー量 ~517kcal/ 日

日本人の基礎代謝量 基礎代謝基準値 : 体重 1kg 当たりの基礎代謝量 (kcal/kg 体重 / 日 ) 日本人の食事摂取基準 (2010 年版 ).2009. 厚生労働省

推定エネルギー必要量 理想のエネルギー必要量 = エネルギー消費量 小児 乳児 妊婦 授乳婦では成長や組織増加分のエネルギー ( エネルギー蓄積量 ) や 組織形成に必要なエネルギーを考慮する必要がある 推定エネルギー必要量 (Estimated Energy Requirement: EER) EER = 基礎代謝量 (BMR) x 身体活動レベル (PAL) = 基礎代謝基準値 x 基礎体重 x 身体活動レベル

身体活動レベルとは? 身体活動レベル (Physical Activity Level: PAL) 身体活動量の指標 PAL 区分 低い (I):1.40~1.60 ( 生活の大部分が座位 ) ふつう (Ⅱ):1.75~1.90 ( 座位中心の仕事 + 立位 ) 高い (Ⅲ):1.90~2.20 ( 移動や立位の多い仕事 ) PAL =1 日当たり総エネルギー消費量 1 日当たりの基礎代謝量

15~69 歳における各身体活動レベルの標準的な活動内容 個々の活 動の分類 ( 時間 / 日 ) 身体活動レベル 日常生活の内容 低い (Ⅰ) ふつう (Ⅱ) 高い (Ⅲ) 1.50 (1.40~1.60) 生活の大部分が座位で 静的な活動が中心の場合 1.75 (1.60~1.90) 座位中心の仕事だが 職場内での移動や立位での作業 接客等 あるいは通勤 買物 家事 軽いスホ - ツ等のいずれかを含む場合 2.00 (1.90~2.20) 移動や立位の多い仕事への従事者 あるいは スホ - ツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合 睡眠 (1.0) 7 ~ 8 7~8 7 座位または立位の静的な活動 (1.5: 1.1~1.9) 12~13 11~12 10 ゆっくりした歩行や家事など低強度の活動 (2.5: 2.0~ 2.9) 3~4 4 4~5 長時間持続可能な運動 労働など中強度の活動 ( 普通歩行を含む ) (4.5: 3.0~5.9) 頻繁に休みが必要な運動 労働など高強度の活動 (7.0: 6.0 以上 ) 0 ~ 1 1 1 ~2 0 0 0~1

タンパク質の代謝を調べる方法 : 窒素の出納実験 (Nitrogen Balance) 排出窒素量 (g) b は無タンパク質食を摂取した際の窒素排出量 a は窒素出納を保つのに必要な最低タンパク質量 ( 窒素グラム数 ) 尿クレアチニン N=0.6g( 一定 ) 摂取窒素量 (g) 窒素の排出量は通常 = 摂取量 摂取量が少ない場合 : 摂取量に関係なく一定量の窒素が排出 排出量は蓄尿の分析から測定する ( 日本人では 58mgN/ 体重 kg/ 日 尿中 34mg 屎中 12mg 経皮( 毛 垢 爪 )10mg その他 2mg) 成人では推奨量 (g/ 日 )= 推定平均必要量 (g/ 日 ) x 推奨量算定係数 (1.25)

たんぱく質の食事摂取基準 性別男性女性 年齢 推定平均必要量 (g/ 日 ) 推奨量 (g/ 日 ) 目安量 (g/ 日 ) 目標量 ( 中央値 ) % エネルギー 1 推定平均必要量 (g/ 日 ) 推奨量 (g/ 日 ) 目安量 (g/ 日 ) 目標量 ( 中央値 ) % エネルギー 1 18~29 ( 歳 ) 50 60 13~20 (16.5) 40 50-13~20 (16.5) 30~49 ( 歳 ) 50 60-13~20 (16.5) 40 50-13~20 (16.5) 50~69 ( 歳 ) 50 60-13~20 (16.5) 40 50-13~20 (16.5) 70 以上 ( 歳 ) 50 60-13~20 (16.5) 40 50-13~20 (16.5) 2010 年版と 2005 版で推定平均必要量と推奨量は同じ 新しく目標量を設定

たんぱく質 エネルギー欠乏による 身体変化 同じ栄養失調でもマラスムス ( エネルギー欠乏 ) とクワシオルコル ( たんぱく質欠乏 ) で身体的特徴が異なる マラスムス ( 左 ) とクワシオルコル ( 右 ) Journalist on the Run より (http://janetnewenham.wordpress.com/2011/10/05/lives-togetherworlds-apart/) http://janetnewenham.files.wordpress.com/2011/10/recently-updated.jpg

高齢者は低栄養状態になりやすい 70 60 50 40 30 20 男性 女性 10 0 0 5~20 25~40 45~60 65~80 85~95 100 日常生活動作 (Berthal Index) 自立老齢者と比べて要介護老齢者で高リスク 高齢者の栄養管理サービスに関する研究 : 男性 1,109 名 女性 1,361 名 認知症 薬の副作用や生活習慣病でも起こりうる サルコぺニアからの転倒 骨折 脱水 感染症リスク増加

http://research.goo.ne.jp/database/data/000579/image/image001.gif 2055 年には高齢者の割合が 40.5% に上ると推定

2015 年版総脂質の食事摂取基準 ( 総脂質の総エネルギーに占める割合 ( 脂肪エネルギー比率 ); % エネルギー ) 年齢 男性 女性 目安量目標量目安量目標量 18~29 ( 歳 ) 30~49 ( 歳 ) 50~69 ( 歳 ) 70 以上 ( 歳 ) - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 - 20 以上 30 未満 妊婦 - - 授乳婦 - -

飽和脂肪酸の食事摂取基準 (% エネルキ ー ) 18 歳以上は男女ともに 7.0 未満 n-3 系脂肪酸の 2015 年版食事摂取基準と 年齢 n-6 系脂肪酸の食事摂取基準 ( % エネルキ ー ) 4 以上 13 未満 ( 男性 ) 4 以上 10 未満 ( 女性 ) 摂取量 (g/ 日 ) 男性摂取量と目標量 女性摂取量と目標量 α リノレン酸 : DHA 目標量 * α リノレン酸 : DHA 目標量 * 18~29 ( 歳 ) 30~49 ( 歳 ) 1.49:0.162 2.0 以上 1.24: 0.145 1.6 以上 1.42: 0.229 2.1 以上 1.19: 0.143 1.6 以上 50~69 ( 歳 ) 1.32: 0.481 2.4 以上 1.14: 0.380 2.0 以上 70 以上 ( 歳 ) 1.06: 0.505 2.2 以上 0.96: 0.378 1.9 以上 * 実際の n-3 系脂肪酸摂取量以上を目標量とした : 妊婦 1.8 以上授乳婦 1.8 以上

不可欠脂肪酸摂取量の大部分は α ーリノレン酸 (ALA) から ALAからエイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸 (DHA) への変換効率は悪い 原料食物 大豆等の植物 エキウム等 SDA 大豆 魚油 魚油 海藻 日本人の摂取割合 70-80% 0-5% 5-10% 10-20% 不可欠脂肪酸 (EFA) Omega-3 αリノレン酸 (ALA) 18:3 合成困難 ステアリドン酸 (SDA) 18:4 合成容易 エイコサペンタエン酸 (EPA) 20:5 ドコサヘキサエン酸 (DHA) 22:6 人体での変換率の比較 ( * ) 16 14 12 10 8 6 4 2 0 ALA SDA EPA EPA1g を合成するのに要する量 James MJ et al. Am J Clin Nutr 77: 1140-1145 (2003).

年齢 2015 年版炭水化物の食事摂取基準 ( 炭水化物の % エネルギー ) 男性 女性 目安量目標量目安量目標量 18~29 ( 歳 ) 30~49 ( 歳 ) 50~69 ( 歳 ) 70 以上 ( 歳 ) - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 - 50 以上 65 未満 妊婦 - - 授乳婦 - - 食物繊維 :18 歳以上の男性は 19g+/ 日 同女性は 17g+/ 日

めざしたい範囲 ( 個人への適用 ) ( 栄養素 : 推定平均必要量 推奨量 目安量 上限量 ) 個人の必要量が分かる場合は それに見合った量がお勧め ( 同じ値でも足りている人と足りていない人がいることに注意 ) 安全 おそらく問題は生じないだろうがメリットもない 通常の食品を摂取している限りありえない量 絶対に避ける! 危険 ( 不足 過剰 ) 推定平均必要量 推奨量 個人の必要量がわからない場合 このあたりがお勧め ( ほとんどの人で足りている量 = ほとんどの人で余っている量 であることに注意 ) 目安量 通常の食品をしている限りほとんどありえない量 ( サプリメントなどで摂取している場合 使い方の誤りで過剰摂取になってしまう危険をはらんでいることに注意 ) 近づきたくない量 上限量 摂取量 不足にならないように 過剰にならないように

日本人の 15% が葉酸の代謝効率が 悪い MTHFR 多型 (TT 多型 ) 米国の推奨量 (400µg) 遺伝子 TT 多型にはこれだけ必要 日本の推奨量 (240mg) 植物 日本人の総摂取量 309mg 294μg 動物 遊離型 43mg 植物 1 : 0.6 ( 利用効率の比率 ) 利用効率をを考慮すると (202mg) ホ リク ルタミル型 266mg 動物 25% の人は 196μg 以下 TT 型はホモシステイン値も上昇 テロメア長が短縮 寿命も縮む J.B.Richards et al. Atherosclerosis. 2008 平成 15 年度国民健康 栄養調査平成 16 年度国民健康 栄養調査

諸指標 日本は貧血予防水準のみ 血清濃度 (nmol/l) 血清濃度 (μg/l) 葉酸欠乏分類ための血清 / 血漿葉酸のカットオフポイント Dary, O.: Nutr. Reviews 67:235-244 (2009) 巨赤芽球性貧血の予防水準 >7.0 日本人レベル 脳卒中等病態の予防水準 国民の二分脊椎症予防水準 >10.0 >15.9 米国民レベル 許容上限量の過剰レベル 45.3 >3.1 >4.4 >7.0 20 DEF (μg/ 日 ) 葉酸摂取 (μg/ 日 ) >205 >294 >474 1370 >120 >173 >279 846

小麦粉に対する添加の国際的な動き 2012 年 8 月現在 : 74 ヶ国が小麦製品に少なくとも鉄および / もしくは葉酸を添加することが必須

公衆栄養学

新しい食生活指針 1. 食事を楽しみましょう 2. 1 日の食事のリズムから 健やかな生活リズムを 3. 主食 主菜 副菜を基本に 食事のバランスを 4. ごはんなどの穀類をしっかりと 5. 野菜 果物 牛乳 乳製品 豆類 魚なども組み合わせて 6. 食塩や脂肪は控えめに ( 食塩 <10g/ 日 ) 7. 適正体重を知り 日々の活動に見合った食事量を 8. 食文化や地域の産物を活かし ときには新しい料理も 9. 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく 10. 自分の食生活を見直してみましょう

新しい食生活指針 1. 食事を楽しみましょう 2. 1 日の食事のリズムから 健やかな生活リズムを 3. 主食 主菜 副菜を基本に 食事のバランスを 4. ごはんなどの穀類をしっかりと 5. 野菜 果物 牛乳 乳製品 豆類 魚なども組み合わせて 6. 食塩や脂肪は控えめに ( 食塩 <10g/ 日 ) 7. 適正体重を知り 日々の活動に見合った食事量を 8. 食文化や地域の産物を活かし ときには新しい料理も 9. 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく 10. 自分の食生活を見直してみましょう

朝食の欠食率がいまだ高い 平成 22 年国民健康 栄養調査報告書

睡眠時間は学年が上がるにつれて減少する Benesse 第 2 回子ども生活実態基本調査 2009 就寝時間が遅くなると朝食欠食率は高くなる 1. イライラしやすくなる イジメを起こしやすくなる 2. 集中力低下 怪我をしやすくなる 3. 間食をしやすくなる 肥満になりやすくなる 4. 脳の発達に影響 成績に影響

日本の食糧消費量の変化 コメの摂取量が減少し 逆に肉 油が増加 CHO 比率は71.6%( 昭和 40) 58.4%( 平成 23 年 ) Fat 比率は16.2%( 昭和 40) 28.6%( 平成 23 年 ) http://www.pref.chiba.lg.jp/annou/shokuiku/shokuiku/images/graph_2.gif

自然サイクルの崩壊 http://feww.files.wordpress.com/2009/09/ozone-hole-comparison.jpg http://pictures.howbits.com/wp-content/uploads/global-warming-polar-bear.jpg http://www.sfbappa.org/sf29.images/spot%20news/ae%201kgp1.jpg http://farm4.static.flickr.com/3656/3448871957_ec4832cfc0.jpg

気候の変化は作物や魚介類に影響 気象庁. 気候変動監視レポート 2009 杉浦と横沢 2004

中高年での肥満者と若年女性のやせ

食料自給率が低い日本 平成 21 年度カロリーベース自給率 :41%( 農水省 ) 平成 15 年度穀物自給率 :28%(OECD 加盟国 30 か国中 26 番目 )( 農水省 世界の穀物自給率 2003 試算 )

約 1,700 万トンの食品廃棄物と食品ロス 廃棄理由 ( 個人 ) の約 7 割 : 食べる見込みが無いから ( 平成 19 年度食品ロス統計調査 ) 農林水産省食品ロス削減に向けて ~ もったいない を取り戻そう ~ 2013

日本の食品ロスの規模の大きさ 農林水産省食品ロス削減に向けて ~ もったいない を取り戻そう ~ 2013

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/img/nofoodloss.jpg 農林水産省 2013 年 10 月 25 日プレスリリース

特保とは? 栄養機能食品とは? 保健機能食品の分類と名称 栄養機能食品の対象成分 医薬品 ( 医薬部外品を含む ) 保健機能食品 特定保健用食品 ( 個別許可型 ) 栄養機能食品 ( 規格基準型 ) 一般食品 ( いわゆる健康食品を含む ) ビタミン類 (13 種類 ) ナイアシンビオチンパントテン酸 β カロテンビタミンA 表示内容 栄養成分含有表示保健用途の表示 ( 栄養成分機能表示 ) 注意喚起表示 栄養成分含有表示栄養成分機能表示注意喚起表示 ( 栄養成分含 有表示 ) ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンB6 ビタミンB12 ビタミンC ビタミンD ビタミンE 葉酸 ミネラル (5 種類 ) カルシウム鉄亜鉛銅マグネシウム

食物の三機能 : 栄養素 味覚 生理 健康食品の目標は食物の三機能を補助して健康の維持増進をすること その EBN: 科学的根拠の確立には : 1 人体を対象とすること 2 個人差 多型の検討 3 数十年の長期の検討 生活習慣病予防 介護予防に重点

五大栄養素 http://me-ta-bo.com/images/eiyouso-5.gif 三大栄養素 + ビタミン + ミネラル 第 6 の栄養素 : 食物繊維 第 7 の栄養素 ( フィトケミカル ) ポリフェノール クロロフィル イオウ化合物 イソチオシアナート ( 辛味成分 ) 栄養素 と 非栄養素 :ATP 産生に関わるかで判断酵素や受容体の機能を変える可能性 ( 抗酸化 抗肥満 整腸など )

サプリメント摂取の目的 不足している栄養素を補う 目的に合わせた症状の改善 不足による病気を予防 サプリメントの注意点 ラベルの成分表示を確認 一日の摂取量を守る 治療中 服薬中の人は医師に相談

情報に振り回される社会 膨大な情報が氾濫している現代社会 細かい成分ばかりを取り上げるメディア 情報に振り回される国民性 かゆいところに手が届く商品のラインアップ 健康食品 サプリメント 特保 科学的な根拠 (Evidence Based) に基づいた謳い文句 根拠が無いまま特定の成分や食品を信じることを フードファディズム という

健康情報の信頼性のレベル 具体的な研究結果か? はい ヒトを対象にした研究か はい 論文で発表されてるか はい いいえ 終了 動物実験や培養細胞による 有害作用 についての研究には一定の注意を払う 利益 についての研究はヒトに同様の効果があるかわからない いいえ 学会発表は不十分 研究方法は適切か はい 支持されているか 将来報告が覆る可能性あり いいえ いいえ 無作為割付研究や前向きコホート研究以外は重視しない 結果を留保

健康食品 食の安全の情報源 世の中に溢れている食の情報 健康食品 成分 科学的な根拠に基づいて (Evidence Based) 情報提供をしている メディアに振り回されないことが大事