平成 23 年度 高次脳機能障害教室 高次脳機能障害のリハビリテーション ~ 集団リハビリテーション編 ~ 福井県高次脳機能障害支援センター 平成 23 年 9 月 8 日
高次脳機能障害教室今後の予定 日時 : 毎月第 2 木曜日 * 教室 13:30~14:30 * 交流会 14:30~15:30( 変更になることがあります ) 場所 : 福井総合クリニック 6 階会議室 参加費 : 無料 申込み : 下記申込み先にご連絡ください 開催日内容 ( 予定 ) 4 月お休み 5 月 12 日高次脳機能障害の原因疾患 ~ 脳卒中と外傷性脳損傷を中心に ~ 6 月 9 日高次脳機能障害の基礎知識 ~ 用語の解説 ~ 7 月 14 日高次脳機能障害のリハビリテーション ~ 介入編 ~ 平成 23 年 8 月 11 日高次脳機能障害のリハビリテーション ~ 入院生活を支える編 ~ 9 月 8 日高次脳機能障害のリハビリテーション ~ 集団リハビリテーション編 ~ 10 月 13 日高次脳機能障害 ~ 家族にできること 11 月 10 日高次脳機能障害 ~ 暮らしに役立つアイテム 12 月 8 日高次脳機能障害 ~ 仕事探し みんなはどうしているの? 平成 24 年 1 月 12 日高次脳機能障害 ~ 当事者からのメッセージ 2 月 9 日福井県脳外傷友の会 福笑井 ( 高次脳機能障害者と家族の会 ) 活動の紹介 3 月 8 日高次脳機能障害 ~ 障害者手帳 障害年金 私は申請できるの? 問合せ 申込み 福井県高次脳機能障害支援センター支援コーディネーター木田裕子 910-0067 福井県福井市新田塚 1-42-1 福井総合クリニック内電話 0776-21-1300( 内線 5934) FAX 0776-25-8264 Mail fukui-koujinou@kve.biglobe.ne.jp
高次能機能障害のリハビリテーション ~ 集団リハビリテーション編 ~ 福井県高次脳機能障害支援センター福井総合クリニックリハビリテーション科大嶋康介 高次脳機能障害とリハビリテーション 注意障害 記憶障害 遂行機能障害 社会的行動障害 ( 行動と感情の障害 ) 病識の低下 個別での認知リハビリテーション 認知リハビリテーションだけでは 改善が難しい場合もある 集団リハビリテーションが有効とされている 2 1
集団リハビリテーションの効果 参加者同士の交流の場 他参加者との共感を得やすい ものごとに対する意欲を促す 他者を意識した行動を促す 自分を振り返るきっかけ作り 他人のフリ見て 我がフリ直せ 3 集団リハビリテーションの実際 注意 記憶の改善を目標としたグループ 再就労 就学を目標としたグループ 2
注意 記憶の改善を目的としたグループ 日時 : 毎週月曜日 13:00~14:00 対象 : 生活の質を向上するために 注意 記憶の改善が特に必要とされる方 内容 :5 つのプログラムで構成 1 分間スピーチ 病態の意識づけ 注意訓練 ( 数字抹消 ) 短文記憶訓練 5 プログラム紹介 1 分間スピーチ 自己紹介とテーマに沿った内容で 1 分間スピーチを行う 砂時計を見ながら 時間内に話をまとめる 指名された人は司会者の質問に答えたり 感想を述べる 人前で話をする場面の練習 求められたことを上手にまとめて話す練習 他者の話に集中する練習 6 3
病態の意識づけ プログラム紹介 毎回 注意と記憶の成り立ちについての説明を聞く 集団リハビリテーションの目的を理解する 課題への意欲を高める 病識を高める 7 病態の意識づけ 出典 : 中島恵子著 やってみよう! 記憶のリハビリ 8 4
注意訓練 ( 数字抹消 ) プログラム紹介 1~9 までの数字で 数字抹消課題を行う 課題は 4 枚 1 組で制限時間は 4 分間 1 枚ごとにターゲットの数字が変わり 数字も増える 同時に 2 つのことに注意を向ける練習 必要な情報に注意を向ける練習 時間がきたら 注意を切り替える練習 日常生活に注意を向けるための練習 9 10 5
短文記憶訓練 プログラム紹介 あらかじめ用意された短い文章を 1 回だけ聞き メモを取る 書き取った内容は参加メンバーに報告してもらう 最後に答え合わせをし 足りない部分を確認する 他人の話に注意を向ける練習 メモを取る練習 メモの内容を思い出す練習 メモをとる意識をつける 11 先週の日曜日 高校の同窓会があり 10 年ぶりに友人達と再会しました 30 人いたクラスメイトのほとんどが参加していました やはり みんな昔よりも老けたように見えましたが 気持ちは高校生の頃に戻ったような気分で楽しい同窓会でした 12 6
再就労 就学を目標としたグループ 日時 : 毎週水曜日 13:30~16:30 対象 : 就労や就学が目標で その為に他者を意識した行動や自己の気づきが必要な方 内容 :4つのプログラムとサブ要素で構成 2 分間スピーチ または 新聞討論会 高次脳機能障害を学ぼう 作業活動 自分を知ろう 役割分担による集団リハビリテーションの運営 ( 司会 ファイル管理 筆記具管理 白板管理 椅子管理 ) 振り返りシートの記入 13 2 分間スピーチ プログラム紹介 テーマに沿った内容で キーワードを決めて話す内容を考え 2 分間スピーチを行う 砂時計を見ながら 時間内に話をまとめる 他者の発表をメモを取りながら聞き 質問や感想を述べる 人前で話をする場面の練習 求められたことを上手にまとめて話す練習 他者の話に集中する練習 メモを取る練習 14 7
15 プログラム紹介 新聞討論会 担当者が1 週間で気になった新聞記事を持ってくる 参加者は その記事を読み それぞれ意見を述べ合う 自分の意見を相手に伝える練習 相手の意見を聞く練習 集団で話し合う場面の練習 16 8
プログラム紹介 高次脳機能障害を学ぼう 注意や記憶など 高次脳機能についての知識を得る 参加者同士で相談し 毎回のテーマを決める 話の内容は 専用のノートにメモする 高次脳機能障害 という言葉に慣れる 注意や記憶といった 言葉の意味を知る メモを取る練習 17 18 9
プログラム紹介 作業活動 参加者全員で ゲームや作品作りを行う 毎回の活動内容は 参加者同士で相談し決める 他者の言動に注意を向ける練習 自分の役割をこなす練習 他者と協調して活動する練習 コミュニケーションの練習 19 自分を知ろう プログラム紹介 神経心理循環図に沿って 自分の得意 不得意を考える 1 週間の具体的目標を決め 振り返りを行う 毎回 1 人が主役になり その人の困っていることやしてみたいことについて話し合う 自己を振り返る練習 目標に向かって具体的な行動を取る練習 自分の経験を他参加者と共有する場 他者の話を聞き 自分の意見を述べる練習 20 10
出典 : 橋本圭司著 生活を支える高次脳機能リハビリテーション 21 22 11
実際に体験してみよう! 作業活動 資料 1 自分を知ろう 資料 2 これまでの実績 注意 記憶の改善を目標としたグループ 平成 22 年 11 月 ~ 集団リハビリテーション開始 再就労 就学を目標としたグループ 平成 22 年 5 月 ~ 集団リハビリテーション開始 参加人数 13 名 ( 男性 12 名 ) ( 女性 1 名 ) 参加者の主な帰結復職再就職就労継続支援事業所 A 型集団リハヒ リ中断求職中 その他 1 名 5 名 2 名 1 名 4 名 24 12
症例紹介 41 歳 男性原因疾患 : 髄膜脳炎 発症経過年 : 約 9 年 手帳 : 精神障害者保健福祉手帳 2 級 ニード : 再就職 神経心理学的評価 : 知的機能は保たれている 記憶力の低下がみられ 行動の中で覚えておくことや後で思い出すことが苦手 全体を把握しながら効率よく作業を組み立てることが苦手 25 経過 X 年 X+1 年 X+2 年 11 月 2 月 5 月 6 月 10 月 1 月 5 月 X+3 年 1 月 4 月 個別 ST 個別 OT 評価 100 問計算シークワーズスケルトンクロスワード 3 種混合課題 宿題漫画の説明文章入力論理的思考日記 音読パズル伝票入力訓練棚整理 集団訓練 就労支援 職業評価就労移行支援事業所正規雇用 ( パート ) ハローワーク職業準備支援トライアル雇用 26 13
集団リハビリ 生活での変化 他者の話を聞いたり 課題の説明を待てるようになってきた ゲームの中で 他者に教えてはいけない というルールを無視してしまうことが減った 行動する時に してもよいかを確認することが増えてきた 家族との関係を保つための具体的な工夫を心がけるようになってきた 食事をゆっくり食べる という具体的目標を立て それについて意識的に取り組むようになった イライラしやすい場面でも 感情をコントロールしようと努めるようになってきた 27 症例のまとめ 1 障害因子 : 自分の障害特性や課題について 具体的に把握できるようになった 心理因子 : 心理的安定感が増した一方で 家族との関係に悩みを抱えるようになってきた家族因子 : 本人 家族ともに社会的スキルの向上を実感で きている社会因子 : 他の支援機関利用や受診などの予定調整が出 来るようになった. 就職後は 勤務と休日のメリハリをつけることや自己流で仕事をしないことを課題として取り組んでいる 28 14
症例のニード : 再就職平成 X 年 症例のまとめ 2 6 月職業準備支援開始 9 月就労支援事業所利用開始 平成 X+1 年 5 月集団リハビリテーション開始平成 X+2 年 1 月トライアル雇用開始 4 月継続雇用決定 仕事上の問題点と対応 自分の判断だけで行動してしまう 集団 個別リハの中で 1 週間の仕事を振り返り 状況に合わせた行動の仕方を考える 気になることがあると作業に集中できない 止められない ジョブコーチからの指導内容を個別リハで復習し 自己流で作業を進めないように練習する 休養の必要性を話し合い 支援センターを通して職場にも休日出勤をしないように配慮してもらう 29 まとめ 集団リハを通して 個別リハでは捉えきれない課題を見出し取り組むことが出来た 参加者間の交流により 求職活動などの社会的活動に積極的に取り組むよい動機付けとなった 集団リハで考えた目標や課題を定着させるためにも 個別リハでの振り返りが必要である 自己認識の改善に伴う心理的変化に配慮する必要がある 30 15