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(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

難聴児童の伝える力を 高めるための指導の工夫 -iPadを活用した取り組みを通して-

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

群教セ I01-08 平 集 特 情緒障害 中学校自閉症 情緒障害特別支援学級における人と関わる意識を高める支援の工夫 自己肯定感を高めるための振り返りと ソーシャルスキルトレーニングを通して 特別研修員田子賢一 Ⅰ 研究テーマ設定の理由 自閉症 情緒障害特別支援学級の生徒は 社会生活

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3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

Microsoft Word - 9概要(多保田春美).docx

[ 中学校男子 ] 1 運動やスポーツをすることが好き 中学校を卒業した後 自主的に運動やスポーツをする時間を持ちたい 自分の体力 運動能力に自信がある 部活動やスポーツクラブに所属している 3 運動やスポーツは大切 [ 中学校女子

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

活動の流れ 1 4 人のグループに分かれ テーマを決める 校内の施設紹介 学校行事 クラブ活動 時間割など 2 各グループで実施計画を立てる 3 動画を撮影する 4 写真を使って動画を作成する 動画の長さは 1 人 2~3 分とし 全員が発表できるように 分担 を決める 5 必要な語いや表現を調べる

自己紹介をしよう

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

生徒用プリント ( 裏 ) なぜ 2 人はケンカになってしまったのだろう? ( 詳細編 ) ユウコは アツコが学校を休んだので心配している 具合の確認と明日一緒に登校しようという誘いであった そのため ユウコはアツコからの いいよ を 明日は登校できるものと判断した 一方 アツコはユウコに対して 心

Water Sunshine

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

案3                            ⑤なかまの誘い方(小学校低学年)

英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

6 年 No.8 You can see Daibutsu! 1/7 単元の目標 主な言語材料 本時の目標 できることを紹介する表現や感情を表す表現が分かる 修学旅行でできることについて具体物などを見せながら伝え合う 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり でき

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3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

(4) ものごとを最後までやりとげて, うれしかったことがありますか (5) 自分には, よいところがあると思いますか

Taro-H29結果概要(5月25日最終)

H30全国HP

<小学校 生活科>

あったらいいな ! こんなあそび場 (わたしの町大好き)

5 児童生徒質問紙調査 (~P23) (1) 運動に対する意識等 [ 小学校男子 ] 1 運動やスポーツを [ 小学校女子 ] することが好き 1 運動やスポーツをすることが好き H30 全国 H30 北海道 6 放課後や学校が休みの日に 運動部や地域のスポーツクラブ以外で運動やスポーツをすることが

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(3) 将来の夢や目標を持っていますか 平成 29 年度 平成 28 年度 平成

Microsoft Word - 6年国語「パネルディスカッションをしよう」

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

スライド 1

1 対象児童 省略 2 児童の実態 省略 発達障害 情緒障害通級指導教室自立活動学習指導案 コミュニケーションに課題のある児童の指導 平成 30 年 11 月 6 日 ( 火 ) 第 5 校時 3 指導観これまでに通級指導教室では 落ち着いた環境の中で 精神的安定を図り 本来持っている能力を発揮し

内容 児童 経験したことや調べたことから選んで話す 内容 ( 考え ) を分かりやすく話す はっきりした発音で声の大きさを考えて話す 丁寧な言葉を使って話す 相手の顔を見ながら話す 大事なこと

(4) 学校の規則を守っていますか (5) いじめは, どんな理由があってもいけないことだと思いますか

特別な支援を必要とする 子どもの受け入れと対応

 

演習:キャップハンディ ~言葉のわからない人の疑似体験~

2年生学級活動(性に関する指導)指導案

Taro-H29 教育課程編成届3

P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P

資料5 親の会が主体となって構築した発達障害児のための教材・教具データベース

スライド 1

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

小学校 第○学年 学級活動(給食)指導案

主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

いきたいと考える 第二に ビデオに撮ったインタビューの様子を繰り返し見て振り返ることで パターンに沿った質問だけでなく 自分なりの質問を考える活動に発展させていきたい そのために ビデオ視聴による振り返りを3 回行う また 自己評価だけでなく 他者評価により互いの良さを確認することで 話すことへの自

小学生の英語学習に関する調査

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41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

0630指導案A1

第 2 学年 * 組保健体育科 ( 保健分野 ) 学習指導案 1 単元名生涯の各段階における健康 ( イ ) 結婚生活と健康 指導者間中大介 2 単元の目標 生涯の各段階における健康について, 課題の解決に向けての話し合いや模擬授業, ディベート形式のディスカッションなどの学習活動に意欲的に取り組む

2 経年変化 ( 岡山平均との差の推移 ) (1) 中学校 1 年生で比較 ( 昨年度まで中学校 1 年生のみの実施のため ) 平成 26 年度平成 27 年度平成 28 年度平成 29 年度 国 数 語 学 基 礎 活 用 基 礎

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5. 評価規準評価の観点コミュニケーションへの関心 意欲 態度外国語への慣れ 親しみ言語や文化に関する気づき 主な評価規準 積極的に表情やジェスチャーを加えて 自分の思いを表現している 言葉だけでなく表情やジェスチャーを加えて コミュニケーションすることの大切さを知る 様々な感情や様子を表す表現に慣

保健体育科学習指導案

6 年 No.12 英語劇をしよう (2/7) 英語での 桃太郎 のお話を理解し 音読する 導 あいさつをす 挨拶の後 Rows and Columns を交え 天気や時 入 候の確認 既習事項の確認をす (T1,T2) ペンマンシップ ペンマンシップ教材を用いて アルファベットの ジングル絵カー

1

演習:キャップハンディ ~言葉のわからない人の疑似体験~

6 年 No.8 You can see Daibutsu! 1/7 単元の目標 主な言語材料 できることを紹介する表現や感情を表す表現が分かる 修学旅行でできることについて具体物などを見せながら伝え合う 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり できることについ

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単元の目標 カレーライスを作ることに興味 関心をもち, 進んで活動する カレーライスの作り方を調べ, 作り方, 材料, 用具を発表することができる カレーライス作りの活動を通して, 食材を知ったり, 道具を使う仕事にふれたりして, 生活経験を豊かにする 人との関わりを通してコミュニケーション能力を身

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

3 第 3 学年及び第 4 学年の評価規準 集団活動や生活への関心 意欲態度 集団の一員としての思考 判断 実践 学級の生活上の問題に関心 楽しい学級をつくるために を持ち 他の児童と協力して意 話し合い 自己の役割や集団と 欲的に集団活動に取り組もう してよりよい方法について考 としている え 判

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小学校国語について

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

6 年 No.22 my summer vacation. 1/8 単元の目標 主な言語材料 過去の表し方に気付く 夏休みの思い出について, 楽しかったことなどを伝え合う 夏休みの思い出について, 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり, 他者に伝えるなどの目的

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

งานนำเสนอ PowerPoint

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

PowerPoint プレゼンテーション

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

Microsoft Word - 小学校第6学年国語科「鳥獣戯画を読む」

ことが大切である 本単元では, 児童にとってもっとも身近な存在である父親や児童が選んだ相手に手紙や暑中見舞いを出すことで, 気持ちを伝える学習ができるように工夫する この学習を通し, 障害児学級の児童の感情表現を豊かにし, 人とのかかわりを広げることにつながっていくと考える (4) 個に応じた支援に

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生活単元学習指導案 日時 : 平成 27 年 11 月 17 日 ( 火 ) 授業者 : 谷麻紗美 1. 単元名 校内販売を成功させよう 2. 単元について本学級は平成 27 年度より設置された特別支援学級 ( 知的 ) である 現在 1 年生の男子 3 名が在籍しており 障害の程度はさまざまである

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

環境 体制整備 4 チェック項目意見 事業所評価 生活空間は 清潔で 心地よく過ごせる環境になっているか また 子ども達の活動に合わせた空間となっているか クーラーの設定温度がもう少し下がればなおよいと思いました 蒸し暑く感じました お迎え時に見学させて頂きますが とても清潔だと思

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

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2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

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(4) ものごとを最後までやり遂げて, うれしかったことがありますか (5) 難しいことでも, 失敗を恐れないで挑戦していますか

平成18年度

調査結果の概要

第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

全国学力 学習状況調査の結果に寄与したと考えられる取組 授業における取組 全教科を通じた思考力 判断力 表現力の育成 本校では, 校内研修を実施するに当たり 生徒の 思考力 判断力 表現力, 情報活用能力, コミュニケーション能力 を高めること を研究主題として設定し, 各教科等において, 授業の改

Transcription:

83 知的障害を伴う自閉症生徒の社会性向上に関する研究 極小規模校におけるコミュニケーション能力の育成 A study on Social Improvement of Autistic Children with Mental Disorder (2012 年 3 月 31 日受理 ) Atsuko Magoshi Fumiharu Matsuda Mamoru Fukumori Key words: 自閉症, コミュニケーション, 社会性 要 旨 知的障害を伴う自閉症のある生徒への支援として, 生徒自身の自己表現力を高めるために, 理解力と認知力の向上をはかり, 活動しやすい環境を整えることが必要であると考えた そのため, 当該生徒を取り巻く他生徒に対し, 該当生徒の障害に対する理解を促し, 該当生徒とのコミュニケーションのはかり方を提示することで, 相互にコミュニケーションが深まることを目指した そこで, 当該生徒の理解力と認知力を向上させるため, 担任と発達段階に応じたSST(Social Skills Trainingの略 ) を行うことにより, コミュニケーションスキルの向上をはかり, その様子を見て, 他生徒とのコミュニケーションを徐々に増やすことにより, 社会性も向上することを目指した 実際に取り組んだ結果, 相互のコミュニケーションが深まった 1 目的 障害者自立支援法では, 障害のある人が地域で自立していくための支援などについて定められているが, 実際に障害のある人が地域で生活していくためには, 周囲の理解と協力, 支援が必要不可欠なものである 本校は島嶼部にある全校生徒 10 人未満の極小規模校である 同じ敷地内に幼稚園, 小学校があり, 校種を越えた交流がある また, 中学校卒業後は高等学校へ島から通学している者もいる そこで, 本研究では, 中度知的障害を伴う自閉症のある生徒が, 中学校 3 年間で他の生徒としっかりとした人間関係を構築することで, 中学校卒業後も周りの同年代の人間により活動に対しての理解, 支援がスムーズに行われるのではないかと考え, 本人に対するコミュニケーションスキルの向上にむけての働きかけと, 他の生徒に対するコミュニケーション向上の働きかけを並行して行 うこととした 2 方法 1 対象者対象生徒 (A:1 年女子 ) は, 中度の知的障害を伴う自閉症で, 田中ビネー検査ではIQは40 程度である W ISC-Ⅲでは診断不能であったが,PEP Rで,6 歳 8ヶ月程度の判定をうけた このことから, 単語の理解はあるが, 場にふさわしい言葉の使い方を指導する必要を感じ,SSTを取り入れることにした Aは小学校入学時より特別支援教室で教師とマンツーマンで活動することが多く, 中学校でも特別支援教室で, 一人で活動する場面が多く想定されていた 2 対象者に対する指導 (1) 語彙を増やす PEP-RとWISC-Ⅲでの理解語彙と表出語彙の

84 差から, 単語は理解できているが, 文では理解できず, 会話になりにくい傾向がみられた そのため, 本人の持っている単語の力を知るため, 中学 1 年の国語の単元にある 言葉の連鎖 を作っていき, 単語から連想されるものを次々とつなげていった また, 類義語 反対語の聞き取り, 簡単ななぞなぞを行った 絵本を使い, 自分で本を読む機会を多く作った 本校では朝読書という時間が月 2 週間あり, 全校生徒が一緒に約 10 分黙読する その時間, 他の生徒と一緒に黙って本に集中する時間を作った 感情について, 自分の感情と言葉が一致するように絵カードを使い, 具体的に自分の行動場面と感情, 表情が客観的に見ることができるよう, 一致するようにした (2) SSTを行う SSTを行う以前,Aの会話は単語文であり, エコラリアが多く, 選択はなかなかできにくい状態であった そのため, 担任は選択を必要とする会話は必ず ~いる? いらない? のように, 肯定 否定両方の言葉を付け加えるようにした その方法を教員間の共通理解とし, 他の教員にも質問する場合,2,3 選択できるように問いかけてもらうようにした 会話をする機会を増やすため, 教員に提出物など持って行く時のパターンを確立し, 対象生徒 Aに会話の会話に対する自信をつけていくことにした (3) 他の生徒に対する指導研究当時, 本校は中学 3 年生 3 名,2 年生 2 名,1 年生 2 名 ( うち対象生徒 1 名 ) であった 生徒たちは小学校からAと交流はあり, 登下校で一緒に手を引いたり, 全校活動時は声かけをしたりしていたが, 会話をすることはほとんどなかったといい, どうしていいのかわからない 話しかけても反応がない という印象をもっており, 入学当初はAも環境の変化で固まっていることが多く, 教員を介してコミュニケーションをはかることが多かった そこで, 担任とAのやりとりを全生徒が一緒になる給食時間に見せることで, コミュニケーションの取り方を学ばせたのち, 担任と交代して話しかけてみた また, Aとふれあう機会として, 手遊び唄をしてみせた 毎朝ボランティア活動の一環として, 全員で校門付近を掃除する際, 生徒だけになる状況をつくり,Aに話しかける機会をもうけた ( 写真 1) Aにとっても, 生徒の声や会話に注意しなければならない状況となり, 他の生徒に対して意識付けできる機会になると考えた \ 写真 1 校門付近の清掃の様子 3 結果 語彙を増やすために導入した言葉の連鎖は, 当初はしりとりとの違いを認識できずにいたが, 次第にルールを理解し, 楽しむことができた このことにより, 生徒の持つ単語力が生活に根付くこと, 単語に適切な擬音をつけて連想することがわかった ( 写真 2) 写真 2 言葉の連鎖また, 教科の担当以外の教員と一緒に言葉を探る中で, 本人の興味を持つ部分が増えていった

知的障害を伴う自閉症生徒の社会性向上に関する研究 85 簡単ななぞなぞは, 物の定義付けを促すためにも取り入れてみた 名詞についてはだいたい正答できていたが, 動詞 形容詞はなかなか解答が得られなかった 類義語は, 単語同士につながりが見つけられにくいようで, 例えば 筆記用具 =ふでばこ は, 約半年かかって理解した 反対語は ~ない を付けた言葉で解答した 例えば 行く の反対は 行かない というように, 日常で担任が選択させる会話の言葉が反対の言葉として定着してしまった 絵本は, 当初興味はなく, 座っているだけだったが, 学校司書と話し合い,Aが小学校で読んだことのある絵本を借り受け, 文を指でおいながら読む指導をした結果, 10 分間で2 冊程度黙読することができるようになった この時読んでいた本に他の生徒が興味をもち, 話しかけることがあった そのときには自分の読んでいる本について興味を持たれたことがうれしく, それ以来朝読書では毎回 1 冊はその本を読むようになった 感情については, 絵本を見て この子, 泣いてる? 笑ってる? 楽しそうだね と, 登場人物の表情について質問したり, 印象を伝えたりした その後, 表情のカードを利用し, この子は怒ってる? 笑ってる? と聞き, カードでは Aはどんな時に笑うかな? と質問した その結果, 本人は表情や笑い声ではなかなか表出しないが, 特定の教員との会話や他の生徒と一緒に朝掃除をすることが楽しいと感じていることがわかった また, どんな時に悲しい? という質問に対しては 泣いとる と答え, どんな時に泣く? という問いには 悲しい時 というように, なかなか実際の自分の感情と悲しいという言葉は一致していないことがわかった ( 写真 3) SSTについて,Aの生活や興味関心を保護者や小学校の担任から聞き, 単語で返すことのできる会話をすることから始めた 入学当初, 手持ちの鏡が落ちて割れたことに執着していたAは 鏡, 割れた 怒った という言葉を何度も繰り返していた そこで いつ割れたの? どこで割れたの? 何色の鏡? だれが怒ったの? など, 単語で答えられる質問を何度も繰り返してみた その結果, 月 日, 鏡落ちた パーンいうた で落ちた 母さん怒った と, 解答をつなげて返すことができる 写真 3 こんな気持ちになるのはどんな時? ようになった また,Aは日付に関して非常に優れた記憶力を持っていることがわかってきた 月 日, 先生怒った 月 日, 先生出張 など, 半年前の担任の言動, 行動を記憶していることがわかった しかし, 何で先生怒ったの? と聞いても, 記憶に残っていないことが多かった また, 担任が叱った時は反応がないが, 約 1 時間経って他の教員の授業中いきなり泣き出すことがあった このことから, 叱られた衝撃の方が印象深く, 叱った内容が理解できていないことが推測できた そこで, 叱ったあと, なぜ先生は怒ったか というポイントを書き, イラストをつけて一緒に唱和した そしてそのとき, どうすれば の行動か, を一緒に示すようにした 語彙を増やす練習と, イラストで解説をはじめた結果, 泣き出すまでの時間が大幅に短くなった また 自分がなぜ叱られたのかを理解し, 他の教員に どうしたの? と聞かれた際も ~して叱られた と, 言うようになった また, 叱られた内容が理解できるようになると, 気持ちの切り替えが早くなり, 家に帰っても泣き続けることがなくなった 学校でも,1 時間のうちに気分を切り替え, 次の作業に臨むことができるようになった 他の生徒との交流は, 朝の掃除や給食を中心に行った 他の生徒の話では, 小学校の時,Aと一緒に活動はす

86 るが,Aがどのような学習活動をしているのか, 他の生徒は知らず, 休憩時間にはどのようなことをしているか, 全く知らないということがわかった 入学当時, 女子がAを含め,4 人だったこともあり, 三年女子 Bが積極的に関わった 登校後, 荷物を置く場所や草取りや落ち葉掃除の用具置き場を丁寧に, 側について教え, 作業を一緒に行った また, 行事のたびに側に寄り添い, 手を引いて移動したり,Aの担任の口真似をして, する? しない? と聞いたりした また,A が不安な様子を見せると,Aが担任と行う手遊び唄を一緒に歌ったり, 遊んだりして,Aが落ち着いて活動できるよう, 配慮する様子が見られた その結果, この生徒 Bに非常に親近感を持ち,4 月当初は固まり, 手を引かれて動いていたが,10 月には自分からBの視界に入るよう, 移動して話しかけようとする仕草をみせるようになった また, 三年男子 CとDのうち,Cは自分自身もあまりコミュニケーションをうまくとれないためか,Aに対してはおそるおそる近づき,A の担任が ~と言ってみて と言った場合以外は自分から話すことはあまりなかった それに対し,D は積極的にAと交流をもとうとした Dは二年男子 Eと一緒に活動することが多く,Eは掃除の時,Bが別の行動をして困っているAに Aちゃん一緒にやろう! と声をかけ,Dと一緒に活動するきっかけを作った その時,D は Aちゃんは何が好きなん? と話しかけたり,Aが自立活動で作った作品を見せると Aちゃんすごいな! と褒めたりしていた また, 休憩時間, 特別支援教室を開放し, バランスボールを設置した これはAの休憩時間の過ごし方における一つの選択肢としていたが, 他の生徒も来ては乗って遊ぶこともあった 当初,Aはバランスボールを恐がり, 自分から乗ることはなかったが,DやEが楽しそうに乗っている様子を観察していた そして,DやEが促すと, 待っていたかのようにバランスボールに座り, 手を支えてもらって弾むことができるようになった 担任が促すよりも, 生徒が促した時の方が,Aは積極的に参加した これは他の授業の時も見られる行動となり, 全学年合同で行う体育では特に顕著に見られた 運動会では, 中学生は全員裸足で組体操を行う そのことを担任がAに伝えていなかったが,E が 裸足になって! というと, すんなりと靴やソックスを脱いだ そのとき, 周りの生徒が裸足だったことも影響していると考えられる このように,Aは他の生徒の様子を見て活動することができるようになっていった また, 二年生の女子 Fは, 三年生 Bがいる時はあまり積極的にAに声かけをすることはなかったが, 一, 二年生合同の研修旅行の際, 生徒だけでの自主研修中はAの側に寄り添い, 大丈夫? と声をかけ, 様子を見て, Aの不安を和らげようとする行動が見られた その後学校でも,Aと担任との手遊びを見て, 真似して一緒にA と遊んで関わりを持った Aと唯一の同級生であるGは, 入学当初はあまりAに対して関わりを持とうとしなかった 接し方がわからないということと, なにかとAの世話を先生に任せられることが多く, 少し距離を置きたいと感じているように見られた A 自身も, ~さん, 優しい? 厳しい? と聞いた場合, 何度質問しても他の生徒については 優しい と答えるのに対し,Gについては 厳しい と答えていた Gはそれについて, ショックを受けて Aちゃんに優しくしているつもりなんだけど と担任に話していた GはAの行動に手を出さず, 見守る行動が多かったこと,GよりBやD,EやFの方がAに対する声かけが早いことが多かったことが,Aの認識に大きく関与していると思われた AとGは実技教科では一緒に活動し, 同じ空間で過ごすことが他の生徒に比べ多いことから, 接し方を変えることで,AのGに対する認識は変わった GはB,D,E,F のAとのかかわり方を間近で見て, Aに対する声かけのタイミングや言葉の使い方を覚えていった 研修中はFがAに接する様子を見て, 途中から Aと手をつないで歩く光景が見られた また,Aは美術で独特の感性を発揮し, 作業が非常に早く,Gが追いつけないこともあった このことがGの Aに対する見方の変換点になった 世話しなくてはいけない同級生 という認識から 独特の個性を持った友達 という接し方に変わってきた 入学当初にはAは非常に表情が乏しく, 笑顔でも泣き顔

知的障害を伴う自閉症生徒の社会性向上に関する研究 87 でも変化があまり見られなかったが, 研修以降笑顔の時, 目元が細くなるようになった また, 泣く時も口をゆがませるようになってきた このことから,A の表情が他の生徒にもわかりやすくなり, Aが喜んでいる Aが困っている と認識し,Aの状況に適した声かけをすることが多くなった また,Aが自立活動で作ったおやつなどを生徒全員で食べる時, 他の生徒がAに賛辞を送り, お返しに手紙をくれたりすることも増えた このことから,Aの活動に対する意欲がうまれ, 積極的におかし作りや野菜や花の栽培を行った Aに対する会話にも, 生徒たちは配慮した ~する? しない? や ~ 好き? 嫌い? など, 担任の選択を促す会話を生徒も取り入れて行ってくれた結果,Aは自分の意志を表すことができるようになってきた 生徒たちもこのことは気づいたらしく,Aの担任に 先生,A ちゃんが僕の話を聞いてくれた 前はAちゃんがどう思っているのかようわからんかったけど, 最近はAちゃんが笑ってくれるし, 答えてくれるからうれしい と話しかけた このことからも, 生徒たちはAに対してコミュニケーションを取りたい意欲はあったものの, 方法が解らず, 戸惑っていたことがわかった 4 考察 一年間,A 自身に対する働きかけと, 他の生徒に対する働きかけを平行して行ったことにより,A の 嬉しい 楽しい 腹が立つ 悲しい といった感情の表出は入学当初に比べ, はっきりとしたものとなり, コミュニケーションがより円滑にすすむようになった また, 他の生徒のAに対する態度も, 世話をする対象 ではなく, チームの一人 として共に活動するようになっていった このことは,Aと他の生徒とのコミュニケーションが増え,Aの特性が理解しやすくなったことが大きな要因と考えられる Aは, 相手の表情で感情を読み取ることがだいたいでき, 他の生徒が自分と手遊び唄をしたり, 自立活動で作ったものについて, 誉めてくれたりする場面で, しばらく 相手を見, 喜んでいる様子を見て表情をゆるめることが増えてきた このことから, 他の生徒に喜ばれたり, 笑顔を見せてもらったりすることが,Aにとって自己肯定する機会となり, 自分の存在を他の生徒に認めてもらう機会にもなった コミュニケーションの向上にはSSTによる会話の練習が大きな成果をもたらしたと考えられる その中でも, 選択できるように発問されたことにより, 回答したAの意志を他の生徒や教員が尊重することで,Aは選択の意味や意義を理解し, 自分のしたいこと, 欲しい物をきちんと表現するようになった そして, ~いる? と聞かれた場合でも いらない と答えることができるようになった このことは他の生徒に,Aに質問しても答えてくれないという意識からAに聞いたらAなりに選んで答えてくれるから,Aの意見も聞こうとするように意識に変化するきっかけになった Aの会話は徐々に単語文から二語, 三語文に変化し, 状況を伝えることがうまくできるようになっていった これは,Aが会話のスキルを何度も練習したり, 実際の会話で生かすことにより,A 自身が会話に自信を持ち, 積極的に人と関わろうとする意欲づけに発展した 他の生徒のAとの関わりは, 入学時より一年経った段階では飛躍的にコミュニケーションの機会や共に活動する場面が増えた 学校行事が多く, 全校で活動する機会が常にあることが一つの要因であると考えられるが, その際にAが他の生徒と一緒に活動することに喜びを感じている様子や, コミュニケーションの向上が大きいと考えられる 入学当初 Aに対して積極的に関わりをとろうとしなかったGは,BやFの行動を間近で見ることにより, 小学校時習得できなかったAとの関わり方を習得し, 徐々に実践する様子が見られるようになった それに伴い, GのAに対する態度や声かけが変わっていった 間近に障害のある人に対する接し方の手本があるということで, 積極的ではない人物も徐々に見て学ぶことができ, 必要に応じてはうまく関わりをもつことができるということがわかった Aが他の生徒と一緒に活動することで, みんなでフォ

88 ローしようとする意識も強まり, 他の生徒同士の結束も強まった 本研究では, 極小規模校という限られた人間関係の中で, 障害のある生徒もその一員となり, いろいろな活動をしていくためには, 障害のある生徒のコミュニケーション能力の向上だけでなく, 他の生徒に対するコミュニケーションの指導が大きなポイントであるということがわかった 今後の課題として,Aは今まで教員とのマンツーマンでの活動が多かったが, 次年から初めてクラスメイトをもつことになる このことは,Aを取り巻く環境の大きな変化となる また, 同級生のG 以外卒業してしまった本校で,Aがどのように下級生とコミュニケーションを構築していくか, 教員いかに下級生にAとのコミュニケーションを指導していくかが, 大きな課題であると考える 文 献 (1) 石原幸子 青木千帆子 望月昭 (2002) 自閉症児のコミュニケーション支援 活動選択の機会設定による効果 立命館人間科学研究第 3 号 (2) 作見泰徳 (2007) 自閉症児の社会性を高めるための教育的支援について- 太田のStage 評価による認知発達治療をもとに社会性の伸長を図る- 高知県教育センター HP (3) 田中和代 岩佐亜紀 (2008) 高機能自閉症 アスペルガー障害 ADHD LDの子のSSTの進め方黎明書房 (4) 谷亜由美 (2007) 混合学級における自閉症児へのコミュニケーション指導高知県教育センター HP