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Transcription:

耐衝撃特性に優れた BGA ボール の接合界面解析について 株式会社日本スペリア社国内営業部東京営業所西田大修 1. はじめに 2006 年 7 月から欧州で RoHS 指令 2007 年 3 月からは中国版 RoHS 指令の施行に伴い 実装業界では急速に鉛フリー化が進んだ その中で弊社が開発したSn-0.7-0.05Ni+Ge 組成の高信頼性鉛フリー は 民生用機器に量産採用されてから今年で 10 年を迎え 高い信頼性から多くの採用実績がある 本稿では の多くの優れた特性の中から BGA ボールの耐衝撃特性に絞り考察を行う 現在 様々な鉛フリー材料が使用されているが その特性は各組成によって異なる 携帯機器などに用いられる BGA(Ball Grid Array) C(Chip Size Package) の出現により接合部に使用される量は少なくなる一方で 実装現場からは さらに高い接合信頼性が求められている 例えば 機器を落下させたとき 接合部にはせん断 引張 圧縮などの様々なモードの衝撃力が加わる さらに 物体が 20 cm 程度の高さから自由落下する場合 衝突時の落下速度は 2000 mm/sec に達すると計算されている 従って 落下時にこの速度のような強い衝突エネルギーが小さなボールに加えられることになり 破壊が生じやすくなることが懸念される このため ボールに対する衝撃による力学的特性を評価することが重要となる 本実験では ハイスピードボンドテスターを用いて ボール接合部に対する低速度および高速度の衝撃試験を行い 各種合金の接合強度を評価した 2. 衝撃試験方法について 2.1. 試験に用いた各種合金の特性 Table 1 は実験に用いた合金の特性である Sn-0.7-0.05Ni+Ge 組成の ( 以下 と表記 ) Sn-3.0Ag-0.5( 以下 と表記 ) Sn-37Pb ( 以下 と表記 ) の 3 組成である Table 1 各種合金の特性 Sn-3.0Ag-0.5 Sn-37Pb 融点 *1 227 218-219 183 比重 7.4 7.4 8.3 引張強度 *2 32 50 44 伸び率 *3 48 32 25 クリープ 強度 *4 >300 >300 3 ( 当社測定値 ) *1: *2:MPa 10 mm/min.(25 ) *3: % 10 mm/min.(25 ) *4:hrs 150 荷重 1 kg 各種合金特性から は融点が 183 と低く クリープしやすいという特性がある 対して 鉛フリー組成 と の融点は 220 前後で クリープしにくいという特長がある さらに は伸び率が高く は引張強度が高いというそれぞれ異なった特徴を持つ 2.2. 試験基板の作成 Table 1 に表記した 3 種類の合金を用いて 液滴噴霧法により作製した直径 0.5 (±0.01) mm のボールを実験に供した 実験に用いた基板の仕様を Table 2 に示す 箔上への表面処理は O ( プリフラックス処理 ) と めっきの 2 種類とした ボール実装時のリフロー条件は および は 220 を 40 秒間程度保持し ピーク温度を 240 とした は 210 を 40 秒間程度保持し ピーク温度を 230 とした さらに ボール実装後基板に実装して

パッケージにする場合を想定し および のリフロー条件を用いて を含むすべての合金について 2 回目のリフローを施した なお フラックスはペースト状の活性ロジンタイプを用いた Table 2 基板の仕様材質 FR-4 厚さ 1.6 mm ランド径 0.42(±0.01)mm ( レジスト径 ) (A)O( プリフラックス処理 ) 表面処理 (B) 無電解 めっき (Ni: 3 μm Au: 0.03 μm) レジスト厚み 30~40 μm 2.3. 試験方法衝撃試験には ハイスピードボンドテスター (Dage 社 DAGE-4000HS) を用いた Fig. 1 に衝撃試験の模式図を示す (a) (b) Fig. 1 衝撃試験 (a) シェア試験 (b) プル試験シェア ( せん断 ) 試験では に対してせん断応力を負荷した 試験速度は 10, 100, 1000, 2000 mm/sec とした プル ( 引き上げ ) 試験では 接合部に対して垂直に引き上げて引張応力を負荷した 試験速度は 1, 10, 100, 200 mm/sec とした Fig. 2 に金属材料の引張試験で得られる一般的な応力 - 歪み曲線の模式図を示す 金属材料は初め弾性変形 ( 応力は歪みに対して直線的に増加 ) したのち 塑性変形を生じ 最大強度に達した後 くびれ ( クラック ) が入り応力が低下して破断に至る 今回の本衝撃試験においても Fig. 2 に似た応力 - 歪み曲線が得られ 同じような状態を示していると考えられる また 応力 - 歪み曲線で囲まれた領域を 吸収エネルギー量 と称することとする 通常 引張試験において固体金属やその接合体の強度評価には最大強度をよく用いるが 1) 本衝撃試験においては 材料内の延性 破壊モードと接合界面での脆性破壊モードが混在するため 最大強度ではなく 吸収エネルギー量で評価した Fig. 2 応力 歪み曲線 3. シェア試験結果について 3.1. 吸収エネルギー量の比較鉛フリー合金は軟らかい鉛を含まないため が硬くなり最大強度が増す傾向にある シェア試験はせん断応力が働くため 合金及び接合部分の延性特性や柔軟性が確認できる Fig. 3に めっきでシェア試験速度 1000 mm/sec におけるシェア試験で得られた応力 - 歪み曲線を示す Fig. 3 シェア試験で得られた応力 歪み曲線 ( めっき 1000 mm/sec) 衝撃試験の結果 合金ごとに吸収エネルギー量を比較すると > となった と では最大強度を過ぎた後も十分な伸びを見せている 対して では 最大強度が小さく伸びも少ないことがわかる 実際の製品が自由落下等により衝突する場合の速度は 場合によれば数千 mm/sec に達することも考えられるため 低速度だけでなく高速度の耐衝撃特性を確認し 材料の選定をする必要がある

Fig. 4 にシェア試験における接合部の吸収エネルギー量の比較を示す 縦軸は を基準 (100%) とした時の吸収エネルギー量を比較したものであり 横軸はシェア衝撃試験速度である の吸収エネルギー量は O, めっきともに 100 mm/sec 以下では より大きいが 1000 mm/sec 以上で より急激に低下していることがわかる 100 mm/sec 1000 mm/sec Fig. 5 シェア試験後の BGA ボール打痕跡 ( めっき ) 1000 mm/sec においては と は 100 mm/sec の時と同等の打痕面積を示しているが は打痕面積が小さくなり 打痕面積を比較すると > になった 一般的に 物質が変形するときにエネルギーを吸収するので 似たような性質を持つ物質であれば打痕面積の大きいものほど衝撃エネルギーを吸収しやすいと考えられることから は衝撃を吸収しにくく は と同様に衝撃を吸収しやすいことがわかる 3.3. 基板側破断面の観察 Fig. 6 にシェア試験後の基板側破断面を示す Fig. 4 シェア試験吸収エネルギー量比較 ( 上 )O ( 下 ) また の場合 10 mm/sec から 2000 mm/sec までの全領域で と同等以上のエネルギー吸収量を示していることがわかる このシェア試験結果から 高速度における吸収エネルギー量の大きい順に > となり はに対する吸収エネルギー量が よりも大きいことがわかった 100 mm/sec 1000 mm/sec 3.2. BGA ボール打痕跡の観察 Fig. 5 にシェア試験後の BGA ボール側に残る打痕跡を示す 100 mm/sec において と 及び ともに同程度の打痕面積を示している Fig. 6 シェア試験後の基板側の破断面

100 mm/sec では 各合金とも接合界面での破壊が生じることはなく 合金部分で延性破壊を示している 1000 mm/sec になると と は 合金部分で延性破壊をしているが は と基板導体箔の接合界面にて脆性破壊を示している 後述するように と めっきとの接合界面に形成される硬くて脆い金属間化合物 (Inter Metallic Compound : 以下 と表記 ) は細くて凹凸が大きくなっている また は硬くて変形しにくい合金であるため 衝撃応力が加わった場合に合金によって応力が吸収できず 接合界面の に強い衝撃力が伝わり 脆性破壊が生じたものと考えられる 3.4. シェア試験後の断面観察比較 Fig. 7 にシェア試験後の接合界面の断面 SEM 写真を示す 試験速度はすべて 2000 mm/sec である 存した の形状が判別できるのに対して ではごくわずかな の破片しか残っていないことが確認できた また は O の場合 めっきの場合と比較して がやや多く接合界面に残存している 以上のことから シェア試験で加えられた衝撃エネルギーは 合金によって一部吸収されるが そこで吸収できる量を超えた場合 接合界面へ伝播して破断に至ると考えられる 4. プル試験結果について 4.1. 吸収エネルギー量の比較プル試験では 合金に強い引張応力がかかる 合金のみでは吸収できない応力が加わることにより 接合界面へも応力が伝播するため プル試験により接合界面強度が確認できる Fig. 8 にプル試験における接合部の吸収エネルギー量の比較を示す せん断面 O せん断面 Fig. 7 シェア試験後の断面観察 ( 3,500 倍 ) は O の場合 合金上側部分 ( 写真欄外 ) で破壊が生じている 一方 めっきの場合は の形状を残したまま / の間で破壊した箇所と 合金部分で破壊した箇所が混在している は O の場合 と同様 中で破壊を生じた および は めっきとの接合で どちらも / の間で破壊した箇所が観察された しかし は接合界面に残 Fig. 8 プル試験吸収エネルギー量比較 ( 上 )O ( 下 ) 縦軸は を基準 (100%) にした吸収エネルギー量の比較であり 横軸はプル衝撃試験速度である ( 上 ) はO ( 下 ) は めっき処理基板を用いた

O 処理基板での試験結果は 試験速度 1 mm/sec の場合は >SN100= となる 試験速度 10 mm/sec では 3 組成ほぼ同等レベルで 試験速度 100 mm/sec 以上の場合は 逆転して > となった また 及び ともに 破壊の生じた箇所はすべて合金部分であった また めっき処理基板の場合 と比較すると は試験速度が高速であるほど吸収エネルギー量が増加する傾向がみられた 一方 は試験速度 10 mm/sec 以上で吸収エネルギー量が低下していた 後述の断面観察により の脆性破壊が見られた このため は 及び と異なり 高速度の引張応力が与えられたときに で破壊が生じ急激に吸収エネルギー量が低下する傾向がみられた 4.2. プル試験後の断面観察比較プル試験での接合強度に影響を与える の状態を確認するため 試験前後の断面観察をおこなった Fig. 9 にプル試験後の接合界面近傍の断面写真を示す 試験速度はすべて 200 mm/sec である 破壊を生じた箇所は Fig. 7 に示したシェア試験の場合と同様であった O 10,000 倍の倍率で観察することにより金属間化合物層の結晶形状がよく確認できた O Fig. 10 金属間化合物層の表面観察 ( 10,000 倍 ) O では 及び 共に が大きく 密度が粗いことがわかる 特に の は一部の結晶の先端が欠けており また長さにバラつきがあることも確認できた それに対して の は細かく さらに密度が高い 側の界面形状はできるだけ平坦な形状が望ましいとされており 2) 平坦な の場合外部応力が伝播した際に を起点に破断に至る可能性は低くなると考えられる 破断部 4.4. 衝撃試験前の断面と破壊箇所の模式図 Fig. 11 に衝撃試験における接合部の破壊箇所を模式図で示す 断面観察の結果から シェア試験およびプル試験によ 破断部 って破壊を生じた箇所は同じであるため これらを一つにまとめてみた 図は衝撃試験前の接合界面を示し 太線は破壊の生じた箇所である Fig. 9 プル試験後の断面観察 ( 3,500 倍 ) 4.3. 金属間化合物層の表面観察 Fig. 10 は 付け界面をエッチングして を上部から観察したSEM 写真を一覧にした

SCNG O Ni plating Solder Solder Ni plating Ag 3 Sn Ag 3 Sn Ni plating :Crack Fig. 11 衝撃試験前の断面と破壊箇所の模式図 5. おわりにボール接合部に対してインパクト試験を行い 各種合金の接合強度を評価した結果 次のことが明らかとなった 1BGA ボールの打痕跡比較から 条件 1000 mm/sec 時に は と同等の打痕面積だった 一方 は打痕面積が小さく 硬くて変形しにくい合金であることが確認できた 2 基板側の破断面の比較から 条件 1000 mm/sec 時に は と同等以上の延性破壊が確認された 対して では合金中ではなく 面での脆性破壊が発生していた 3 高速度での吸収エネルギー量を比較すると > となった は柔軟性に優れているために対する吸収エネルギー量が大きかった 4 高速度の試験後の断面観察から シェア試験では と は合金部から延性破壊をしているが は O 及び 両基板ともに接合界面部から脆性破壊をしていた プル試験では -O 基板にて のみが接合界面部にて脆性破壊をしていた 5 金属間化合物層の表面観察から では細かい丸みを帯びた形状を持つ が確認でき た では の一部が割れている部分が確認できた 以上のことから は高速度における衝撃試験において Sn-37Pb 共晶と同等以上の優れた耐衝撃特性を有することがわかった また Sn-3.0Ag-0.5 は 高速度において急激に衝撃特性が低下することがわかった 6. 参考文献 1) 加納誠, 菊池正紀, 町田賢司 : 金属の疲労と破壊破面観察と破損解析, 内田老鶴圃, (1999), pp. 72-74 2) 須賀唯知 : 表面実装ポケットブック鉛フリー技術, 日刊工業新聞社, (1999), pp. 52-55 3) 関園子, 宮岡志典, 末永将一, 西村哲郎 :14th Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics,pp.235-240(2008) 4) 宮岡志典, 末永将一, 西村哲郎 :BGA ボールの衝撃試験結果 (2008) 5) 西田大修 :INJ セミナー,BGA ボールの鉛フリー化の課題 耐衝撃試験について (2009) 製品についてのお問い合わせ先 株式会社日本スペリア社 URL:http://www.nihonsuperior.co.jp 本社 : 大阪府吹田市江坂町 1-16-15 NS ビル TEL:06(6380)1121 東京 : 東京都江東区木場 2-7-15 第一びる別館 4F TEL:03(3642)5234 名古屋 : 愛知県名古屋市昭和区福江 2 丁目 5-4-802 TEL:052(882)6011