タを用いた各種排出ガス試験モードによる評価を行った また 2 少量生産方式を想定し エンジン台上試験 ( 図 2) にて燃料供給系および点火制御系を改造することで (3) 出力性能および燃費性能の評価を行った 評価に使用した はプロパン含有率 25%(25P C 3 H 8 : C 4 H 1 =

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タを用いた各種排出ガス試験モードによる評価を行った また 2 少量生産方式を想定し エンジン台上試験 ( 図 2) にて燃料供給系および点火制御系を改造することで (3) 出力性能および燃費性能の評価を行った 評価に使用した はプロパン含有率 25%(25P C 3 H 8 : C 4 H 1 = 25:75) とした 3. 液体噴射システムの概要 3.1. システムに対する主な要求課題 (1) 様々なプロパン含有率への対応自動車用 における C 3 H 8 および C 4 H 1 の混合比率は地域や季節により様々である 特に寒冷地では プロパン含有率 1% の (1P) が用いられる場合もある したがって 本システムでは P~1P 全てのプロパン含有率の に対応する必要がある (2) 燃料気化の抑制 は極めて沸点が低く常温常圧で気体であるため 僅かな温度上昇や圧力降下により気化してしまう 燃料気化はエンストや燃料噴射制御および再始動性の悪化を引き起こすため 気化抑制が必要となる (3) システムの省電力化 (1) および (2) の対応には燃料供給圧力の昇圧が必要となるが システムの消費電力量増大に繋がるため 燃費悪化を引き起こす したがって 消費電力量を抑えつつ (1) および (2) に対応しなければならない 3.2. 液体噴射システムの特徴上述した要求課題に対応できるよう開発した 液体噴射システムの概略を図 3 に示す 本システムでは 燃料タンク内の をフィードポンプによりプランジャー型の高圧 ポンプへ送り 約 3 MPa の高圧に昇圧することで吸気ポートに設置したインジェクタからの液体噴射を可能とした 燃料噴射制御に関しては ベースガソリン乗用車の ECU から 用 Pump Driver Motor Cutoff Valve Regulator Pressure Sensor ECU ECU Temp. Sensor Injector High Pressure Pump Filter Feed Pump Fig. 3 Schematic of fuel injection system Pressure MPa 5. 4. 3. 2. 1% C 4 H 1 (P) 2% C 3 H 8 (2P) 1% C 3 H 8 (1P) 1. -2 2 4 6 8 1 Temperature C Fig. 4 Vapor pressure curve of ECU Input Output Pump High Press. Control Process Duty Driver Pump Pressure sensor [Pressure signal] Injector Fig. 5 Fuel injection pressure feed back system ECU に取り込んだ噴射信号を 燃料レールに設置した圧力および温度センサからの信号に応じて 用の噴射信号に変換し インジェクタに通電する方法とした 液体噴射システムにおいては ガソリン MPI システムと同様のフィードポンプを用い リターン配管により燃料を積極的に循環させ インジェクタ内部の燃料温度上昇を抑制する方法がある しかしながら この方法ではエンジンで暖まったリターン燃料によって燃料タンク内の温度および圧力が上昇し 燃料の再充填が困難になることが懸念される この現象は プロパン含有率の高い を使用しているときほど蒸気圧が高くなるため顕著に表れる したがって 本プロジェクトでは各種プロパン含有率の に対応することを目的としているため リターンレス燃料配管システムを採用した このシステムでは 燃料レールおよびインジェクタ付近における はエンジンからの熱により温度が上昇する このため 高圧 ポンプにより燃料供給圧力を高くすることで燃料気化を抑制しなければならない 図 4 に の蒸気圧線図を示す 例えば 1P 使用時においてインジェクタ近傍における 温度が 7 の場合 燃料圧力を約 2.6 MPa 以上に昇圧する必要がある 本システムではこのような高燃料圧力時においても高圧 ポンプの消費電力量を抑制するため 図 5 に示す目標燃料圧力フィードバック制御を用いた 具体的には 目標圧力に対してインジェクタからの燃料噴射により降下した燃料圧力を補完するよう 用 ECU にて 高圧 ポンプ駆動の Duty を高速演算し そ -22-

の結果を高圧 ポンプのモータドライバへ出力し 動作させる これにより アイドル等の燃料噴射量が少ない条件では高圧 ポンプは低速で動作し 加速時等の燃料噴射量が多い条件では高速で動作する また 燃料カット時には動作を停止する フィードポンプに対しても要求される燃料流量に応じ駆動電圧を変化させ 省電力化を図った 3.3. 燃料ポンプの省電力効果走行中におけるポンプ電流変化の概念を図 6 に示す ガソリンエンジンの場合 インジェクタからの燃料噴射量が変化しても一定負荷で駆動するのに対して 前述した制御手法を用いた 液体噴射システムでは フィードポンプおよび高圧 ポンプとも燃料噴射量に応じて負荷制御される 図 7 に 1-15 モード走行における 燃料ポンプシステムの消費電力量のガソリンシステムとの比較結果を示す 本試作車両では フィードポンプはタンク内圧力に対して.35 MPa で 高圧 ポンプは目標圧力 3 MPa で昇圧している ベースガソリンシステムの燃料圧力は大気圧に対して.35 MPa 加圧している この結果 燃料ポンプシステムは ガソリンシステム以下の消費電力で運転できることが確認された また 高圧 ポンプは目標圧力が高いにもかかわらず 大幅に消費電力量を低減できた 4. 車両の環境性能 4.1. 排出ガス性能 4.1.1. 冷機始動時のHC 排出特性試作車両を用いて各種排出ガス試験モードによる排出ガス性能試験を行った 図 8 に JC8 冷機始動モードにおいて HC 排出量をベースのガソリン乗用車と比較した結果を示す 試験は複数の車両で実施したが いずれの車両においてもベースのガソリン乗用車に対して HC 排出量が約半減した JC8 冷機始動モードにおける HC は 主に三元触媒が活性化する以前のエンジン始動直後に排出される 図 9 にファーストアイドル時のテールパイプ HC 排出濃度 ( 希釈 ) および空気過剰率を示すが 同図からも試作車両のベースガソリン乗用車に対する HC 排出量の低減効果が確認できる この要因を以下に述べる (1) 空気過剰率の影響ガソリン乗用車の場合 冷機始動時においては燃料が蒸発し難いため 空気過剰率を濃くすることで確実かつ安定した始動性となる 一方 は噴射後すぐに気化するため 理論空燃比近傍での運転が可能である ( 図 9 空気過剰率参照 ) これにより無駄な燃料を削減でき 未燃 HC を低減することが可能となる (2) 冷却水温に対する HC 排出特性の影響図 1 に エンジン台上試験においてエンジン冷却水温度を変化させた際のエンジンアウト HC を示す Current Injection flow Time System Feed Pump System Feed Pump High Pressure Pump Fig. 6 Schematic diagram of fuel pump power saving 1 8 6 4 2 Feed Pump High Pressure Pump Fig. 7 Comparison of electric power of the both pump systems Electric power %12 Test Vehicle: L4, 2.L, CVT Drive mode: JPN1-15mode Fuel / Injection Pressure: /.35MPa 2P/ 3.MPa Dilution HC ppm JC8 Cold-start mode.3.25.2.15.1.5 HC g/km Vehicle #2 #4 #3 #4 #5 Fig. 8 Comparison of HC emission in the JC8 cold-start mode 35 3 25 2 15 1 5 1.8 1.6 1.4 1.2 1..8.6 5 1 15 2 25 3 35.4 4 Time sec Fig. 9 Comparison of tail pipe dilution HC in the fast idle condition Excess air ratio -23-

12rpm, 2Nm, Ignition timing = 5 deg.btdc 3 25 2 15 1 5 3 4 5 6 7 8 Engine coolant temperature C Engine out HC ppm Fig. 1 Effect of coolant temperature on engine-out HC emission エンジンでは低水温時においてもすぐに燃料が気化するため 未燃 HC 排出量の低減効果が大きい 以上の要因は いずれも の気化特性から得られる効果であり これにより 乗用車の HC 排出量がベースガソリン乗用車に対して低減できた 4.1.2. 排出ガス試験モードによる排出ガス値図 11 に平成 2 年度国内排出ガス規制試験モード (.75 1-15 mode +.25 JC8 (cold) mode) による各種排出ガス試験結果を示す 本試験では 同等の排気量を有するミキサ式従来型 乗用車 ( 図中 Vehicle B mixer) に関しても同様に計測した 同図より 試作車両 ( 図中 ) は 緻密な空燃比制御が可能となったことから従来型 乗用車と比較していずれの排出ガス成分とも低減でき 更に 平成 2 年度排出ガス規制値に対して 4 つ レベルを達成することができた 以上より 液体噴射式 自動車は従来型 乗用車に対して十分に排出ガスを低減でき の持つ特性を引き出すことで 最新式のガソリン乗用車と同等以下の排出ガスレベルとなることが確認された 4.2. 燃費性能およびCO 2 排出量 は燃料中の炭素含有率が少ないため CO 2 排出原単位 [g-co 2 /MJ] がガソリンと比べて約 1~12% 低い したがって ガソリンエンジンと熱効率が同等の場合 自動車からの CO 2 排出量を 1~12% 低減できる 図 12 に 1-15 モードおよび JC8 モード走行時における燃費および CO 2 排出量を示す ガソリンと では単位体積あたりの発熱量が異なるため ガソリン乗用車の燃費値に関しては 換算を行った この結果 液体噴射式 乗用車はベースのガソリン乗用車と同等のエネルギ効率となり いずれの試験モードにおいても CO 2 排出量を約 1% 低減できた また CO g/km 1.2 1..8.6.4.2 NOx g/km.6.5.4.3.2.1 H2 regulatory level mixer H2 regulatory level mixer NMHC g/km.6.5.4.3.2.1 Fig. 11 Comparison of exhaust emissions in combined mode <1-15 mode> Fuel consumption km/l 14 equivalent 14.36 12 1 11.66 11.31 1.6 8 国土交通省 6 届出値 4 2 mixer mixer Fig. 12 Comparisons of fuel consumption and CO 2 従来型 乗用車に対しては 1-15 モードで約 7% の燃費向上が得られ CO 2 排出量を約 6% 低減できた H2 regulatory level H2 regulation.75 1-15 +.25 JC8(cold) mixer.25 JC8(cold).75 1-15 : DBA-KG11 (Displacement : 1.997L) : ABA-YXS11 (Displacement : 1.998L) <JC8 mode> Fuel consumption km/l 14 equivalent 12 13.89 1 8 6 11.27 11. 4 2 CO 2 g/km CO 2 g/km 2 2 18-9.5% 18-9.9% -5.8% 14 5.5 14 171.1 159 12 149.8 12 154.2 国土交通省 1 届出値 8 1 8 6 6 4 4 2 2-24-

5. エンジン性能の向上 5.1. 出力性能の向上 5.1.1. 高出力化に向けた課題本システムを搭載した 乗用車を普及させるためには 環境性能のみならず 動力性能の向上による車両の魅力向上が欠かせない このためにはエンジン出力を向上させる必要がある また エンジン出力の向上による比出力 ( 出力 / 排気量 ) の向上は エンジンのダウンサイジングや軽量化による更なる環境性能の向上を狙った車両設計に繋げることも可能となる 以下に 一般的な火花点火エンジンにおいて高出力化を図る際の要求課題を記す (1) ノッキングの抑制火花点火エンジンにおけるノッキング ( 末端ガスの異常燃焼 ) はエンジン燃焼室内部の焼損を引き起こすため 点火時期の制約を受ける したがって ノッキングの抑制は最重要課題である (2) 排気温度上昇の抑制三元触媒を備えた火花点火エンジンは 理論空燃比近傍で運転するため排気温度が高くなる 排気温度の過度な上昇は触媒の熱劣化や排気系部品の破損に至るため 排気温度上昇を抑制することは極めて重要である (3) 体積効率の向上体積効率はエンジンの吸気能力を示す指標である 出力を向上させるためには より多くの空気をエンジン燃焼室に導入する必要があるため 体積効率の向上が要求される 5.1.2. 液体噴射式 エンジンの出力特性図 13 に 開発エンジンの出力 トルク性能を示す 同図より 全ての回転数においてベースのガソリンエンジン以上のトルクを得ることができた 特に 8~ 24 rpm の低回転域においてはトルクが約 15~2 Nm 向上した また ガソリンエンジンの最大トルクおよび出力が 17 Nm(4 rpm) 86 kw(6 rpm) に対して 液体噴射式 エンジンでは 175 Nm(36 rpm) 88 kw(52 rpm) を得た このトルクの向上要因は 主に点火時期の進角と体積効率の向上による効果と推測され 以下で検証した (1) 点火時期の進角 の主成分である C 3 H 8 n-c 4 H 1 i-c 4 H 1 のオクタン価 (RON) はそれぞれ 112 94 12 であるため 本 試験燃料は RON 1.3 となる 一方 レギュラーガソリンは RON 9.3 であるため エンジンにおいては耐ノック性が向上する この特性を活かすことで 図 13 14 に示すように点火時期を 5~15 deg.ca 進角でき トルクが最大となる最適な点火時期 (MBT) に近づけることができたため トルクが大幅に向上した WOT, θ ig = Knock limit ignition timing or MBT Torque T e Nm Exhaust gas temp. T exh K Excess air ratio λ 18 17 15 14 13 12 11 13 12 11 1 9 8 1..9.8.7 9 85 8 75 3 2 1-1 8 12 2 24 28 32 36 4 44 48 52 56 6 1 2 Engine speed N e rpm 7 Power P e kw 1 95 9 85 8 75 7 Volumetric efficiency η v % Ignition timing θ ig deg. BTDC Fig. 13 Engine performance and operating parameters in WOT condition 2 rpm, WOT θ ig = Knock limit ignition timing Torque T e Nm Ignition timing θ ig deg.btdc 18 17 15 14 13 25 2 15 1 5.8.9 1. Excess air ratio λ 88 87 86 85 84 83 Volumetric efficiency η v % Fig. 14 Comparison of the volumetric efficiency and the knock limit ignition timing under the each excess air ratio -25-

Torque T e Nm Torque T e Nm 18 BSEC MJ/kWh 14 12 1 8 6 4 2 11 12 13 14 15 812224283236444 48 52566 Engine speed N 1 2 e rpm 18 BSEC MJ/kWh 14 12 1 8 6 4 2 11 12 13 14 15 8 12224283236444 48 52566 Engine speed N 1 2 e rpm Fig. 15 BSEC (Brake Specific Energy Consumption) contour map 今後は 従来型 自動車に対して 1% 以上の燃費向上を達成するため エンジンおよび燃料供給システムの最適化等 更なる技術開発を行う予定である 謝辞本研究は ( 独 ) 新エネルギー 産業技術総合開発機構の委託事業により実施した 低燃費 エンジンシステムの研究開発 の成果をまとめたものである また, 実験では当研究所川嵜修男氏 大槻俊也氏にご尽力頂いたことを記し 謝意を表する 参考文献 (1) 山口真也ほか, 次世代型 燃料供給システムの研究開発, 自動車技術会学術講演会前刷集, No.129-8,pp.13- (28) (2) 水嶋教文ほか, ガソリンエンジンベース 液体噴射システムの研究開発 ( 第 1 報 ), 自動車技術会論文集,Vol.39,No.5,pp-83-88 (28) (2) 体積効率の向上図 13 14 より エンジンではガソリンエンジンと比べて体積効率が 1~2% 向上していることが確認できる は気化特性に優れるため 吸気ポートにおいて吸入空気を冷却し 空気密度を向上させることが可能となる これにより体積効率が向上し トルクの向上に寄与した また エンジンでは十分に点火時期を進角できたため ガソリンエンジン以下の排気温度を保つことができた 更に 図 14 には各空気過剰率におけるトルクも示したが エンジンではガソリンエンジンよりも希薄側で十分なトルクを得られるため 燃料 空気混合比の過度なリッチ化を抑制することも可能となる 5.2. 高負荷領域の燃費低減 とガソリンは 単位質量あたりの発熱量が異なるため ここでは燃費の評価指標として正味エネルギ消費率 (BSEC) を用いた エンジンでは 上述したとおり点火時期の進角および過度なリッチ化の抑制が可能となるため 図 15 に示すように特にトルクが 1 Nm を超えるような高負荷運転領域において ガソリンエンジンと比べて BSEC を大幅に低減することできた したがって 車両開発時にトランスミッションの変速タイミングを見直す等の対策を反映させることで より低燃費な車両の開発に繋げることが可能となる 6. まとめ (1) 本プロジェクトにおいて開発した 液体噴射システムは 全ての 組成に対応できるリターンレスシステムとしながら ガソリンシステム以下の省電力化を図ることができた (2) 本システムを最新式のガソリン乗用車に適用した結果 4 つ レベルの排出ガス性能を維持しながら ミキサ式従来型 乗用車に対して燃費を約 7% 改善し ベースガソリン車に対しても CO2 排出量を約 1% 低減することができた (3) 液体噴射式 エンジンにおいては の耐ノック特性および気化特性を最大限に活かす事で ベースガソリンエンジンを上回る出力 トルクおよび高負荷燃費性能を確保できた -26-