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11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています


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関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

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ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

小児感染免疫第25巻第2号

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資料 6 rash2 マウス ( 短期発がんモデル ) の特性と品質管理 財団法人実験動物中央研究所 浦野浩司 2018/3/7 1

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

要旨 グレープフルーツや夏みかんなどに含まれる柑橘類フラボノイドであるナリンゲニンは高脂血症を改善する効果があり 肝臓においてもコレステロールや中性脂肪の蓄積を抑制すると言われている 脂肪肝は肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態で 動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病の原因となる 脂肪肝

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

リーなどアブラナ科野菜の摂取と癌発症率は逆相関し さらに癌病巣の拡大をも抑制する という報告がみられる ブロッコリー発芽早期のスプラウトから抽出されたスルフォラフ ァン (sulforaphane, 1-isothiocyanato-4-methylsulfinylbutane) は強力な抗酸化作用

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Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

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るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

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子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

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肝マクロファージの機能特性に基づいた肝毒性の新規評価手法の構築と緻密化山手丈至 ( やまてじょうじ ) 大阪府立大学生命環境科学研究科獣医学専攻獣医病理学教室教授 1981 年 3 月山口大学農学研究科獣医学専攻修士課程修了 1981 年 4 月 ( 財 ) 日本生物科学研究所 ( 東京都青梅市 ) 入所 1991 年 9 月博士 ( 農学 ) 取得 ( 東京大学 ) 1992 年 4 月大阪府立大学農学部獣医学科助手 1995 年 2 月大阪府立大学農学部獣医学科講師 1997 年 7 月カナダグエルフ大学オンタリオ獣医学部 研究員 2 年 4 月日本獣医学会賞 ( 第 88 号 ) 受賞 2 年 1 月大阪府立大学農学生命科学研究科獣医学専攻 助教授 27 年 4 月大阪府立大学生命環境科学研究科獣医学専攻 准教授 29 年 4 月大阪府立大学生命環境科学研究科獣医学専攻 教授 213 年 4 月大阪府立大学生命環境科学研究科 副研究科長 215 年 4 月大阪府立大学 学長補佐 国際交流機構副機構長 日本獣医学会 ( 理事 評議員 ) 日本毒性病理学会 ( 理事 評議員 ) 日本獣医病理学専門家協会 ( 副理事長 ) IATP( 副理事長 ) 医薬品医療機器総合機構 ( 専門委員 ) 内閣府食品安全委員会 ( 専門委員 ) < 研究成果概要 > 肝には約 2% の肝固有のマクロファージが存在し 肝機能の恒常性維持に係わるとともに その機能異常は化学物質による肝障害に一次的あるいは二次的に影響を与えている しかし 肝マクロファージの機能特性に基づいた肝毒性の評価手法の構築や 肝毒性の発現メカニズムは解明されていない 近年 病変部位に出現するマクロファージを M1 と M2 に分けて評価する概念が提唱された (M1/M2 分極化 ) M1 は 炎症初期に誘導され 高い貪食活性を示し 一方 M2 は 線維化を導き組織の修復に関与する 本研究では 化学物質誘発性肝障害を評価する新たな手法を構築する目的で 多彩な機能特性を現す肝マクロファージに着目し その機能を見極める検出系を確立するとともに その検出系を用いて 化学物質の肝毒性発現メカニズムを M1/M2 分極化に基づいて解明することを目的とした まず 肝マクロファージの基本性状を得るために 発生過程の肝マクロファージの特性を解析した その結果 胎子では貪食活性の高い CD68 M1 マクロファージが 新生子から成体では肝常在マクロファージである CD163M2 クッパー細胞が現れ 肝組織構築に係わることが分かった 次に 肝恒常性に係わるクッパー細胞の役割を解析した リポソームを投与すると それを貪食した CD163 クッパー細胞が活性化し AST と ALT が減少した 一方 クロドロネート投与によるクッパー細胞枯渇下では AST と ALT は増加した クッパー細胞は肝逸脱酵素のクリアランスに関わることが分かった すなわち 肝毒性においてクッパー細胞の機能状態を把握しておくことの重要性が示された 化学物質による肝障害の解析において チオアセトアミド (TAA) 投与の小葉中心性肝細胞傷害では M1 機能に関わる INF-γ TNF-α IL-6 と M2 機能に関わる IL-4 の発現が 組織傷害に先立ちすでに増加しており これに続いて CD68M1 と CD163M2 マクロファージが傷害部位に誘導され 同時に修復に係わる TGF-β1 や IL-1 が上昇した CD68M1 は MHC クラス II と Iba1 を CD163M2 は C D24 と Gal-3 を表出することが分かった クロドロネート前投与によるマクロファージ枯渇下での TA A 病変を解析したところ 初期では肝小葉中心部の凝固壊死の形成が遅延し 修復期では異栄養性石灰沈着が生じ 治癒が遷延した また α-naphthylisothiocyanate (ANIT) 投与によるグリソン鞘の胆管上皮傷害では MHC クラス II 発現マクロファージが病変形成に極めて重要であることが示された クロドロネート前投与による ANIT 病変では 胆管周囲の線維化が遅延した 肝毒性では小葉中心部とグリソン鞘領域の傷害において異なるマクロファージが機能することが分かった ラットマクロファージ株 HS-P を用いた in vitro でのマクロファージ機能解析により M1 因子である INF-γ あるいは M2 因子である IL-4 を添加することで in vivo で生じるマクロファージ機能の現象が再現できることが分かった HS-P は試験管内での肝毒性メカニズム解析において有用であることが示された マクロファージの M1/M2 分極化に基づいた肝毒性病変の評価手法は 薬物誘発性病変の新たな病理発生機序の解明につながると考える これは また 肝毒性評価において用いられる肝機能パラメーターの緻密化と精度の高い end-point を導くことができることから 食品健康影響評価でのより科学的な ADI( 一日摂取許容量 ) 設定が可能となる 本課題で得られた成績はその基礎情報を提供する

肝マクロファージの機能特性に基づいた肝毒性の新規評価手法の構築と緻密化 研究者からの提案に基づく研究 ( 課題番号 :145) ( 単年度 ) 鋭敏に反応する肝マクロファージの多様な機能特性を一つの指標として 化学物質による肝毒性を 毒性病理学的 ( 形態学的 ) な観点から より科学的に評価する手法を構築する 肝毒性評価の緻密化 メカニズム研究 より精度の高い ADI 設定 215.1.1 大阪府立大学生命環境科学研究科獣医病理学教室 代表研究者 山手丈至 分担研究者 桑村充 井澤武史 F344 ラット 1

肝マクロファージ ( クッパー細胞 樹状細胞 ): 約 2 % 恒常性 ラットの肝臓 門脈 肝バリアー GS 高い感受性 異物貪食 解毒 免疫応答 増殖因子産生 : 中心静脈 ;GS: グリソン鞘 肝マクロファージの肝毒性への係わり? 恒常性 グリソン鞘 GS GS CD163: クッパー細胞 MHC class II 発現抗原提示細胞 2

1. 肝マクロファージと恒常性 1-1: 肝マクロファージ活性化実験 1-2: 肝マクロファージ枯渇実験 2. 肝マクロファージを介した肝毒性の評価手法の構築 2-1:M1/M2 マクロファージ分極化 2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 (1)CD68 (M1 マクロファージ ) と CD163 (M2 マクロファージ ) の出現 (2) ラットマクロファージ株 (HS-P) を用いた CD68/CD163 発現機序 (3)MHC クラス II と CD24 発現マクロファージの M1/M2 分極化 (4)Iba1 と Galectin-3 発現マクロファージの M1/M2 分極化 (5) 肝マクロファージの初期誘導と M1/M2 分極化 2-3: 肝マクロファージ枯渇状態における TAA 誘発病変 3. まとめ 報告内容 3

1. 肝マクロファージと恒常性 1-1: 肝マクロファージ活性化実験 F344 雄ラット, 6 週齢 ( 体重 15-16 g) リポソーム (Lip) 単回投与 :5 mg/kg 体重, 静注 リポソーム (Lip) 単回投与 1 日 リン脂質膜に包まれマクロファージに貪食されやすい 対照 : PBS 対照 リポソーム (Lip) http://www.kose.co.jp/jp/ja/res earch/secretstory/liposome.html 組織学的な異常はみられない : 中心静脈 4

1-1: 肝マクロファージ活性化実験 対照 CD163 ( クッパー細胞 ) リポソーム (Lip) Macrophages/.2 mm 2 3 25 2 15 1 5 CD163 ( クッパー細胞 ) 対照 Untreated PBS Lipo GS < < GS PV: Perivenular area; PP: Periportal area; : 中心静脈 ; GS: グリソン鞘 IU/L 16 12 8 AST 肝逸脱酵素値 6 IU/L 8 4 ALT クッパー細胞増加 肝逸脱酵素値の低下 4 2 Untreated 対照 PBS Lipo Untreated 対照 PBS Lipo, P <.5 5

例 : ラットの 3 か月間毒性試験 用量 (mg/kg/day) 16 雄 体重増加抑制 AST と ALT 低下 ( ) 肝絶対 相対重量の増加 ( 組織学的変化なし ) 雌 体重増加抑制 AST と ALT 低下 ( ) ( 組織学的変化なし ) 4 AST と ALT 低下 ( ) 1 著変なし 著変なし 意義 : 毒性所見としてどう捉えるか? 化学物質により肝マクロファージ機能が亢進していないか? 肝マクロファージ機能特性の免疫組織化学的評価! 6

1. 肝マクロファージと恒常性 1-2: 肝マクロファージ枯渇実験 F344 雄ラット, 6 週齢 ( 体重 15-16 g) クロドロネート (CLD) 単回投与 :5 mg/kg 体重 静注 CLD: liposome-encapsulated dichloromethylene diphosphonate clodronate クロドロネート (CLD) 単回投与 対照 : 1 2 3 5 7 9 12 対照群 CLD 投与群 投与後日 組織像に異常なし : 中心静脈 7

1-2: 肝マクロファージ枯渇実験 クロドロネート (CLD) 投与により 肝組織像には傷害はないが クッパー細胞が枯渇する CD163クッパー細胞中心静脈周囲 3 CD163 クッパー細胞 門脈野周囲 Macrophage/.2 mm 2 25 2 15 1 5 中心静脈周囲 門脈周囲 GS GS 対照 1 3 5 7 9 12 after CLD injection, P<.5 対照 CLD 投与 : 中心静脈 ; GS: グリソン鞘 8

1-2: 肝マクロファージ枯渇実験 肝酵素値 IU/L 8 6 4 2 AST IU/L 2 15 1 5 ALT cont 対照 1 3 5 7 9 12 after CLD injection cont 対照 1 3 5 7 9 12 after CLD injection 5 4 ALP.8.6 T. Bil IU/L 3 2 1 IU/L.4.2 cont 1 対照 3 5 7 9 12 after CLD injection 対照 cont 1 3 5 7 9 12 after CLD injection 肝マクロファージの枯渇により肝酵素値が上昇 クッパー細胞枯渇により肝酵素のクリアランスが低下?, P <.5 9

CLD 投与ラット肝の遺伝子プロファイル ( >2 fold change) Functional categories Gene symbol Gene description Fold changea BrdU Cell proliferation Cell surface and structural protein Signal transduction and transcription Lcn2 Rattus norvegicus lipocalin 2 (Lcn2), mrna [NM_13741] 16.56 Map3k5 Rattus norvegicus mitogen activated protein kinase kinase 7.58 kinase 5 (Map3k5), mrna [NM_1277694] Rab27b Rattus norvegicus RAB27B, member RAS oncogene family (Rab27b), mrna [NM_53459] 5.57 Tgfb2 Rattus norvegicus transforming growth factor, beta 2, mrna 5.2 (cdna clone IMAGE:793873), complete cds. [BC1663] Sphk1 Rattus norvegicus sphingosine kinase 1 (Sphk1), transcript 4.66 variant 6, mrna [NM_133386] Pdgfd Rattus norvegicus platelet derived growth factor D (Pdgfd), 3.98 mrna [NM_23962] Dbp Rattus norvegicus D site of albumin promoter (albumin D 3.91 box) binding protein (Dbp), mrna [NM_12543] Map4k3 Rattus norvegicus mitogen activated protein kinase kinase kinase kinase 3 (Map4k3), mrna [NM_13347] 2.92 Wnt5b Rattus norvegicus wingless type MMTV integration site 2.41 family, member 5B (Wnt5b), mrna [NM_11489] Wsb1 Rattus norvegicus WD repeat and SOCS box containing 1 2.2 (Wsb1), transcript variant 1, mrna [NM_142561] Cdca7 Rattus norvegicus cell division cycle associated 7 (Cdca7), mrna [NM_125693] 2.9 Krt1 Rattus norvegicus keratin 1 (Krt1), mrna [NM_1882] 12.43 Krt1 Rattus norvegicus keratin 12 (Krt12), mrna [NM_18761] 4.52 Orm1 Rattus norvegicus orosomucoid 1 (Orm1), mrna 3.13 [NM_53288] H19 Rattus norvegicus H19, imprinted maternally expressed 2.72 transcript (non protein coding) (H19), long non coding RNA [NR_27324] Hnf4g Rattus norvegicus hepatocyte nuclear factor 4, gamma 5.18 (Hnf4g), mrna [NM_118939] Onecut1 Rattus norvegicus one cut homeobox 1 (Onecut1), mrna 2.12 [NM_22671] 肝マクロファージの枯渇により肝細胞増殖亢進 BrdU +ive hepatocytes (%) 16 14 12 1 8 6 4 2 : 中心静脈 BrdU; 肝細胞の増殖 Cont 1 3 5 7 9 12 対照 after injection, P <.5 1

例 : ラットの 6 か月間毒性試験 用量 (mg/kg/day) 8 2.5 雄 体重増加抑制 肝絶対 相対重量増加 中心静脈周囲肝細胞腫大 AST と ALT 増加 ( ) 中心静脈周囲肝細胞腫大 AST と ALT 増加 ( ) AST と ALT 増加 ( ) ( 組織学的変化なし ) 雌 体重増加抑制 肝絶対 相対重量増加 中心静脈周囲肝細胞腫大 AST と ALT 増加 ( ) 著変なし 意義 化学物質による肝マクロファージの機能抑制はないか? 肝細胞肥大と肝マクロファージ機能抑制との係りは? 肝マクロファージ機能特性の免疫組織化学的評価! 11

2. 肝マクロファージを介した肝毒性 ( 肝細胞傷害機序 ) の評価手法 肝細胞 ( 形態学 ) 腫大 1 活性代謝物 2 CYP 化学物質 ペプチド ハプテン 3 肝毒性発現機序 肝マクロファージ / 抗原提示細胞 3-2: 免疫介在性肝細胞毒性 3-1: 肝細胞傷害性毒性 Th1/Th2 リンパ球 Treg/Th17 リンパ球 肝細胞萎縮 変性 壊死 アポトーシス 不十分 肝マクロファージの機能特性を指標とした肝毒性評価手法の構築の必要性 1 直接的な肝細胞傷害作用 ( 膜 小器官 核酸 ) 2 活性代謝物を介した肝細胞傷害作用 3 肝マクロファージを介した肝毒性発現機序 3-1: 活性化マクロファージよる傷害因子産生に起因する肝細胞傷害性毒性 3-2:MHC クラス II 発現マクロファージによる免疫介在性肝細胞毒性 12

2-1:M1/M2 マクロファージ分極化 Th1: IFN γ M1 (CD68) TNF α, IFN γ IL 6, IL1 ROS (NO) 炎症誘起貪食活性組織傷害 マクロファージ 細胞傷害性毒性 Th2: IL 4 M2 (CD163) IL 1 IGF 1 TGF β1 炎症抑制免疫反応修復 / 線維化 免疫介在性毒性 M1 マクロファージ (CD68) M2 マクロファージ (CD163) 炎症誘起 組織傷害 炎症抑制 免疫応答 線維化 傷害進展修復 炎症性病変 13

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 M1/M2 マクロファージ分極化に基づいた評価手法の確立 F344 雄ラット, 6 週齢 (BW 15-16 g) TAA 単回投与 TAA, 単回腹腔内投与 :3 mg/kg BW 対照 : 1 時間 1 2 3 5 7 1 投与後日 TAA H3C C S NH3 14

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 中心静脈周囲の肝細胞凝固壊死とその後の修復性線維化 3 mg/kg BW 膠原線維 Control Hour 1 azan-mallory Control Day 1 HE Day 1 Day 2 Day 2 Day 3 修復性線維化 : 筋線維芽細胞 -SMA Day 3 Day 5 Control Day 3 15

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 (1) CD68 (M1 マクロファージ ) と CD163 (M2 マクロファージ ) の出現 CD68 (Control) M1 マクロファージ CD68 (Day 2) M2 マクロファージ CD163 (Control) CD163 (Day 2) Cells per.2 sqmm 15 1 5 Cells per.2 sqmm 4 2 8 CD68 (for M1) CD163 (for M2) 6 グリソン鞘 ; 中心静脈周囲, P<.5 16

(2) ラットマクロファージ株 (HS-P) を用いた CD68/CD163 発現機序 :MCP-1 MCP 1 TAA 誘発病変 CD68 cont 1 3 5 7 1 15 (days) CD68 や CD163 の発現増加 ng/ml TGF ( ng/ml) TGF (1 ng/ml) 1 ng/ml CD68 (M1) CD163 (M2) ラットマクロファージ株 (HS-P) TGF- 1 / -actin 2.5 2 1.5 1.5 CD68/CD168 発現の低下 TGF- 1 TGF 1 for for M2 M2 1 1 (ng/ml) MCP-1, P<.5 17

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 :M1/M2 マクロファージの出現 IFN γ マクロファージ IL 4 M1 (CD68) MCP-1 M2 (CD163) TNF α. IFN γ, IL 6, IL1 ROS (NO) TGF β1 IL 1 IGF 1 TGF β1 炎症誘起貪食活性組織傷害 細胞傷害性毒性 炎症抑制免疫応答修復 / 線維化 M1 マクロファージ (CD68) 炎症 組織傷害 M1/M2 シフト M2 マクロファージ (CD163) 炎症抑制 / 線維化 免疫介在性毒性 CD163/CD68/Merge CD163/CD68/Merge Day 2 Day 3 1 75 M2 CD163/M1 CD68 MCP 1 TGF 1 5 25 Day 2 Day 3 M1/M2 シフト, P<.5 18

1 8 6 4 2 IFN- (M1 誘導因子 ) と IL-4(M2 誘導因子 ) を添加したラットマクロファージ株 HS-P M1 因子 IFN- IL-4 M2 因子 IFN- IL-4 TNF 2.5 2 8 IL 1 2.5 Relative values 1.5 1.5 6 4 2 2 1.5 1.5 2.5 IL 6 2 1.5 1.5 2 1.5 1.5 1.2 1.8.6.4.2 TGF 1 2 1.5 1.5 Relative values Relative values Relative values Relative values Relative values Relative values Relative values 1 8 6 4 2 MCP 1 2 1.5 1.5 HS P Relative values Relative values P<.5, different from control 19

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 :M1/M2 マクロファージの出現 IFN γ マクロファージ IL 4 M1 (CD68) MCP-1 M2 (CD163) TNF α, IFNγ, IL 6, IL1 ROS (NO) TGF β1 IL 1 IGF 1 TGF β1 炎症誘起貪食活性組織傷害 細胞傷害性毒性 炎症抑制免疫応答修復 / 線維化 M1 マクロファージ (CD68) 炎症 組織傷害 M1/M2 シフト M2 マクロファージ (CD163) 炎症抑制 / 線維化 免疫介在性毒性 CD163/CD68/Merge CD163/CD68/Merge Day 2 Day 3 1 75 M2 CD163/M1 CD68 MCP 1 TGF 1 5 25 Day 2 Day 3 M1/M2 シフト, P<.5 2

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 (3) MHC クラス II と CD24 発現マクロファージの M1/M2 分極化 CD68 (Control) M1 マクロファージ CD68 (Day 2) M2 マクロファージ CD163 (Control) CD163 (Day 2) CD24 (Control) CD24 (Day 2) MHC class II (Control) MHC class II (Day 2), 中心静脈 21

, central vein; 2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 : 分極化の解析 CD68/CD24 CD163/CD24 Day 2 Day 2 CD68/MHC class II/Merge CD163/MHC class II/Merge Day 2 Day 2 二重免疫染色 : Day 2 CD68(M1) 陽性細胞に対する MHC クラス II あるいは CD24 発現 CD163(M2) 陽性細胞に対する MHC クラス II あるいは CD24 発現 % of double positive cells % of double positive cells 8 4 CD68 + /MHC class II + CD163 + /MHC class II + 1 5 Day 2 Day 3 Day 2 Day 3 % of double positive cells % of double positive cells 8 4 1 5 Day 2 Day 3 CD68 + /CD24 + CD163 + /CD24 + Day 2 Day 3, 中心静脈 ;, P <.5 MHC クラス II 細胞は M1 分極化 CD24 細胞は M2 分極化 22

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 (4)Iba1 と Galectin-3(Gal-3) 発現マクロファージの M1/M2 分極化 Iba1 (Control) Iba1 (Day 2) Cells per.2 sqmm 3 2 1 CD68 for M1 2 15 1 5 Cells per.2 sqmm CD163 for M2 Gal-3 (Control) Gal-3 (Day 2), central vein Cells per.2 sqmm 8 6 4 2 Iba1 Cells per.2 sqmm 15 1 5 Gal-3 M1/M2 分極化の解析, P <.5 23

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 : 分極化の解析 二重蛍光免疫染色 : CD68(M1) 陽性細胞に対する Iba1 あるいは Gal-3 発現 CD163(M2) 陽性細胞に対する Iba1 あるいは Gal-3 発現 CD68/Iba1/Merge CD163/Iba1/Merge Day 2 Day 2 % of double positive cells 8 4 CD68 + /Iba1 + Day 2 Day 3 % of double positive cells 8 4 CD163 + /Iba1 + Day 2 Day 3 CD68/Gal-3/Merge CD163/Gal-3/Merge Day 2 Day 2, 中心静脈 % of double positive cells 1 CD68 + /Gal-3 + CD163 + /Gal-3 + 5 Day 2 Day 3 Iba1 細胞は M1 分極化 Gal-3 細胞は M2 分極化 % of double positive cells 1 5 Day 2 Day 3, P <.5 24

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝傷害実験 : M1/M2 分極化 ( まとめ ) IFN γ マクロファージ M1 (CD68) TNF α IFN γ IL 6 IL1 ROS (NO) 炎症誘起細胞傷害貪食活性 細胞傷害性毒性 IL 4 M1 マクロファージ (CD68/MHC II/Iba1) M2 (CD163) IL 1 IGF 1 TGF β1 M2 マクロファージ (CD163/CD24/Gal-3) 炎症抑制免疫応答修復 / 線維化 免疫介在性毒性 M1/M2 シフト M1: 貪食活性 / 傷害因子産生 (CD68) 抗原提示能 (MHC クラス II) 細胞活性 遊走 (Iba-1) M2: 炎症抑制因子産生 TGF- (CD163) 貪食活性 / 脂質代謝 (CD24) 線維化 / 組織修復 (Gal-3) 25

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 (5) 肝マクロファージの初期誘導と M1/M2 分極化 Cells per.2 sqmm 15 1 5 CD68 (M1) Cells per.2 sqmm 4 2 8 6 CD163 (M2), 中心静脈 グリソン鞘におけるマクロファージの出現 Cells per.2 sqmm 4 3 2 1 MHC class II Cells per.2 sqmm 15 1 5 CD24 グリソン鞘 ; 中心静脈,, P<.5 26

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝傷害実験 (5) 肝マクロファージの初期誘導 :MHC クラス II と CD24 マクロファージ Cells per.2 sqmm 4 3 2 1 MHC クラス II Cells per.2 sqmm 15 1 5 CD24 グリソン鞘 中心静脈,, P <.5 GS GS GS MHC class II CD24 1 時間 (HE) : 中心静脈 ; GS: グリソン鞘 27

(5) 肝マクロファージの初期誘導と M1/M2 分極化 1 hours M1 関連因子 M2 関連因子 IFN- CD68 M1: 2-3 days 1 hours IL-4 CD163 M1: 2-3 days TNF- IL-1 IL-1 ( 修復因子 ) IL-6 GS TGF- ( 線維化因子 ) IL-6 (ISH) 1-3 days, P<.5 28

2-2: チオアセトアミド (TAA) 誘発肝細胞傷害実験 : M1/M2 分極化と肝毒性発現 IFN-γ Macrophages IL-4 MHC II M1 (CD68) MCP-1 M2 (CD163) TNF α. IFN γ, IL 6, IL1 ROS (NO) TGF β1 IL 1 IGF 1 TGF β1 炎症誘起貪食活性組織傷害 細胞傷害性毒性 炎症抑制免疫応答修復 / 線維化 免疫介在性毒性 グリソン鞘の既存 MHC II /CD24 細胞の活性化 1 時間 既存の鋭敏に反応するマクロファージが肝傷害を助長する M1 マクロファージ (CD68/MHC II/Iba1) M1/M2 移行 M2 マクロファージ (CD163/CD24/Gal-3) 初期 修復 線維化 CD24 -SMA: 筋線維芽細胞 29

2-3: 肝マクロファージ枯渇状態における TAA 誘発病変 クロドロネート (CLD) 投与実験 F344 雄ラット, 6 週齢 ( 体重 15-16 g) クロドロネート投与 (CLD):5 mg/kg 体重, 静注 TAA, 腹腔投与 単回 : 3 mg/kg 体重 1 日前 PBS 投与 TAA 投与 TAA+PBS 群 CLD 投与 1 2 3 5 7 TAA 投与投与後日 TAA+CLD 群 肝マクロファージの枯渇は 1 週間持続 3

2-3: 肝マクロファージ枯渇状態における TAA 誘発病変 傷害部位に出現する CD68M1 マクロファージと CD163M2 マクロファージが激減 Cells /.2 mm 2 25 2 15 1 5 CD163 for M2 day 1 2 3 5 7 Day 2 Cells /.2 mm 2 36 27 18 9 TAA+Lipo + PBS CD68 for M1 day 1 2 3 5 7 TAA+LCL + CLD, P<.1 TAA+PBS TAA + CLD TAA+PBS TAA + CLD 31

2-3: 肝マクロファージ枯渇状態における TAA 誘発病変 Day Day 1 Day 2 Day 7 TAA + CLD (HE) 肝マクロファージ枯渇により凝固壊死が遅延し 異栄養性石灰沈着が生じる 不完全治癒 病変増悪 CLD (von Kossa) Day Day 1 Day 2 Day 7 TAA + PBS (HE) 肝マクロファージ存在下では正常な修復 PBS (von Kossa), 中心静脈 32

2-3: 肝マクロファージ枯渇状態における TAA 誘発病変 IFN-γ マクロファージ IL-4 MHC II 初期反応 : グリソン鞘の既存の抗原提示細胞や CD24 細胞 CD24 M1 (CD68) MCP-1 M2 (CD163) M1 マクロファージ (CD68) TNF α. IFN γ, IL 6, IL1 ROS (NO) TGF β1 IL 1 IGF 1 TGF β1 傷害 修復異常 炎症誘起貪食活性組織傷害 炎症抑制免疫応答修復 / 線維化 マクロファージ枯渇 不完全組織修復 病変増悪 細胞傷害性毒性 免疫介在性毒性 M2 マクロファージ (CD163) 33

まとめ 1. 肝マクロファージは恒常性維持に重要である 活性化状態では 肝逸脱酵素が低下する 枯渇状態では 肝逸脱酵素が増加し かつ肝細胞が増殖する 2. 薬物誘発肝細胞傷害病変 (TAA 誘発肝病変 ) は M1/M2 マクロファージ分極化に基づいて解析できる 傷害初期には M1 マクロファージ (CD68/MHC II/Iba 3) が 修復時には M2 マクロファージ (CD163/CD24/Gal 3) が出現する 肝細胞傷害前に グリソン鞘既存のマクロファージから M1/M2 マクロファージ誘導因子が産生される 肝マクロファージの多様な機能特性に基づいた新規肝毒性評価手法の構築 肝マクロファージ機能を基軸とした in vivo と in vitro の実験系の構築 マクロファージの出現状況を免疫組織化学染色法あるいは培養系を用いて評価することで肝毒性病変の発生機序の一端を解明できる メカニズム解析 食品健康影響評価への応用性 : より精度の高い ADI 設定 34

その他の実験 ( 継続中 ) 1. 肝組織発生における M1/M2 マクロファージの特性に関する研究 胎生期には CD68 + M1 マクロファージがアポトーシス細胞の貪食活性に 生後においては CD163 + M2 マクロファージが組織 機能分化に係ることが分かった 2.TAA 反復投与により作出した肝硬変における GST-P 陽性前腫瘍性病変における M1/M2 マクロファージ特性に関する研究 GST-P 陰性偽小葉に比べ GST-P 陽性偽小葉では M1/M2 マクロファージが より多く しかも混在して出現していた 前腫瘍性病変の形成に両マクロファージが複雑に係ることが分かった 3.TAA 誘発肝病変における Danger Associated Molecular Patterns(DAMPs) による免疫介在性肝毒性発現機序に関する研究 S1A4 などの DAMPSs が傷害部位に発現し TLR-4 を介し抗原提示マクロファージを活性化することで 免疫介在性の肝細胞傷害が生じる可能性が示された 4. クロドロネート投与による肝マクロファージ枯渇条件下での α-naphthylisothiocyanate 誘発の小葉間胆管上皮傷害とその後の線維化形成の病態解析 グリソン鞘の胆管上皮傷害病変の形成には MHC クラス II 発現マクロファージが重要であること そして肝マクロファージ枯渇条件下では 胆管上皮傷害後の線維化が遅延することが分かった 35

公表論文 学会発表と謝辞 Articles; 1. Wijesundera KK, Izawa T, Murakami H, Tennakoon AH, Golbar HM, Katou-Ichikawa C, Tanaka M, Kuwamura M, Yamate J. M1- and M2- macrophage polarization in thioacetamide (TAA)-induced rat liver lesions; a possible analysis for hepato-pathology. Histology and Histopathology. 29: 497-511, 214. 2. Wijesundera KK, Izawa T, Tennakoon AH, Murakami H, Golbar HM, Katou-Ichikawa C, Tanaka M, Kuwamura M, Yamate J. M1- and M2- macrophage polarization in rat liver cirrhosis induced by thioacetamide (TAA), focusing on Iba1 and galectin-3. Experimental and Molecular Pathology. 96: 382-392, 214. 3. Wijesundera KK, IzawaT, TennakoonAH, Murakami H, Golbar HM, Katou-Ichikawa C, Tanakawa M, Kuwamura M, Yamate J. M1-/M2-macrophages contribute to the development of glutathione S-transferase placental form (GST-P)-positive pseudolobules in thioacetamide-induced rat cirrhosis. Experimental and Toxicologic Pathology. 67: 467 475., 215. 4. Pervin M, Golbar MD, Bondoc A, Izawa T, Kuwamura M, Jyoji Yamate. Immunophenotypical characterization and influence to liver homeostasis of depleting and repopulating hepatic macrophages in rats injected with clodronate. (submitted), 215. Presentation ; 1. Golbar HM, Izawa T, Alexandra B, Wijesundera KK, Tennakoon AH, Katou-Ichikawa C, Tanaka M, Kuwamura M, Yamate J. Macrophage-derived galectin-3 is the key regulator of acute hepatic fibrogenesis in rats. Proceedings of the 33rd Annual Symposium of the Society of Toxicologic Pathology (STP). Marriott Wardman Park Hotel, Washingon DC, USA. Poster Presentation. Poster No. 19. June 22-26, 214. 2. Pervin M, Golbar HM, Alexandra B, Uemura M, Izawa T, Kuwamura M, Yamate J. Characterization of repopulating macrophages in liver after depletion with liposomal clodronate in rats. 第 157 回日本獣医学会学術集会. 口頭発表. 札幌. Abstract No. BO-56. September 9-12, 214. 3. Pervin M, Golbar HM, Alexandra B, Wijesundera KK, Izawa T, Kuwamura M, Yamate J. Analyses of hepatic macrophages depleted by clodoronate in rat liver. Proceeding of the American College of Veterinary Pathologists (AP), Poster Presentation. Abstract T-9. Atlanta, GA, USA. November 9-11, 214. 4. 山手丈至 : 教育講演 マクロファージと毒性病理学 : 第 31 回日本毒性病理学会学術集会 215 年 1 月 29-3 日 ( 東京 ) Related Articles; 1. Golbar HM, Izawa T, Wijesundera KK, Tennakoon AH, Katou-Ichikawa C, Tanaka M, Kuwamura M, Yamate J. Nestin expression in remodelling of α-naphthylisothiocyanate (ANIT)-induced acute bile duct injury in rats. Journal of Comparative Pathology 151(2-3), 255-263, 214. 2. Tennakoon AH, Izawa T, Wijesundera KK, Katou-Ichikawa C, Tanaka M, Golbar HM, Kuwamura M, Yamate J. Analysis of glial fibrillary acidic protein (GFAP)-expressing ductular cells in a rat liver cirrhosis model induced by repeated injections of thioacetamide (TAA). Experimental and Molecular Pathology, 98: 476-485, 215. 36