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領域等タイトル日時単位 卒後 卒後 2 卒後 3 卒後 4 卒後 8 卒後 9 卒後 0 卒後 卒後 2 卒後 3 卒後 4 卒後 5 卒後 6 卒後 7 卒後 8 卒後 9 尿路感染症 性感染症ガイドライン 4 月 23 日 ( 土 )8:20-9:50.5 VUR の診断と治療 4 月 23 日

第1 総 括 的 事 項

15 検査 尿検査 画像診断などの腎障害マーカーの異常が3ヶ月以上持続する状態を指すこととしている その病期分類方法は成人と小児では若干異なり 成人では糖尿病性腎障害が多い事からこれによる CKD 患者ではアルブミン尿を用い その他の疾患では蛋白尿を用いてそのリスク分類をしている これに対し小児では

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

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e 治癒困難な腸瘻 ( 注 3) があり かつ 腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状 態 ( 注 4) 又は高度の排尿機能障害 ( 注 2) があるもの f 高度の排尿機能障害 ( 注 2) があり かつ 高度の排便機能障害 ( 注 5) があるもの 3 等級表 4 級に該当する障害は 次の


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販売名 : アドバンテージ ( 承認番号 : 22300BZX ) 別紙 改訂箇所を _ 下線で示しております < 新記載第 5 版 > 適切な項目へ記載した < 旧記載第 4 版 > 警告 1. 適応対象 ( 患者 ) 以下の患者には TVT 術を実施する際のリスクと利点を慎重に検討

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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小児泌尿器科 3 水腎症 / 膀胱尿管逆流 上部尿路機能 上部尿路 : 腎杯 腎盂 尿管により構成さる 北海道立こども総合医療センター小児泌尿器科西中一幸 機能 : 尿搬送を円滑に行うことである 1 2 上部尿路の解剖 尿細管における内圧の勾配 1 ボーマン嚢 50cmH 2 0 5 腎杯 4-5cmH 2 0 3 4 腎盂の収縮 尿の運搬 - 腎盂から尿管へ 5 6 1

尿路通過障害の分類 上部尿路通過障害の原因 1. 部位による分類 上部尿路 - 片側性 両側性 下部尿路 2. 原因による分類 先天性 後天性 3. 時間的経過による分類 急性 慢性 7 先天性 : 腎盂尿管移行部通過障害筋層の形成 発育不全 ( 内因性閉塞 ) 異常血管 ( 外因性閉塞 ) 後天性腎盂尿管移行部通過障害 ( 外因性狭窄 ) 腎盂癌 尿管癌 尿管ポリープ尿管の非腫瘍性疾患 ( 結石 炎症など ) 下部尿路の機能的 器質的疾患 ( 神経因性膀胱 前立腺肥大症など ) 8 先天性腎盂尿管移行部通過障害 先天性腎盂尿管移行部通過障害 排泄性尿路造影 逆行性腎盂造影 CT 9 10 腎盂尿管移行部通過障害の機序 水腎症の程度の評価 超音波断層法 排泄性尿路造影 11 (New 泌尿器科学 2000:133) 12 2

腎盂尿管移行部通過障害の機能的評価 - レノグラム ( 利尿負荷 )- 腎盂尿管移行部通過障害の機能的評価 - レノグラム ( 利尿負荷 )- 99m Tc-DTPA (diethylenetriamine pentaacetic acid):gfr の指標 ( 糸球体濾過 ) 99m Tc-MAG3 (mercaptoacetyl gycyl-glycyl-glycine):rpf の指標 ( 尿細管分泌 ) 利尿薬投与 T-half (1/2 減少時間 15 分以上 : 閉塞 ) 閉塞あり 境界 閉塞なし (New 泌尿器科学 2000:74) 13 (New 泌尿器科学 2000:134) 正常 14 先天性腎盂尿管移行部閉塞手術治療 - 腎盂形成術 Dismembered pyeloplasty 1. 開放手術 2. 鏡視下手術 上部尿路通過障害の治療 原因の除去腎盂尿管移行部通過障害 ( 外因性狭窄 ) 腎盂癌 尿管癌 尿管ポリープ尿管の非腫瘍性疾患 ( 結石 炎症など ) 後腹膜腫瘍性疾患 ( 浸潤 転移 ) 下部尿路の機能的 器質的疾患 ( 神経因性膀胱 前立腺肥大症など ) 尿管ステント挿入 / 経皮的腎瘻造設 ( ベッドサイド泌尿器科学手術編 2000:179) 15 16 尿管ステント挿入 経皮的腎瘻造設 W-J カテーテル使用 17 (Urologic Surgery シリーズ No 1 2000:9) 18 3

膀胱尿管逆流症例の発見契機 ( 典型例 ) 膀胱尿管逆流症 (vesicoureteral reflux: VUR) 症例 :3 歳 男子 主訴 : 排尿痛 発熱 既往歴 : 特記すべきとこなしただし これまでに数回原因不明の発熱 (>38ºC) あり抗菌薬投与により 2-3 日で症状消失 現病歴 :3-4 日前より排尿痛出現 2 日前より発熱 (>38ºC) も出現呼吸器症状はない. 19 20 排尿時膀胱尿道造影 ( 逆流なし ) 逆流あり 21 22 膀胱尿管逆流症 (vesicoureteral reflux: VUR) 小児の尿路奇形として最も重要 尿路感染症 ( 膀胱炎 腎盂腎炎 ) のある小児ではこの疾患の存在を必ず念頭におく 男児では尿路奇形がなければ尿路感染症は出現しない 女児でも複数回の尿路感染症のエピソードがある場合は要注意 小児の原因不明の発熱 ( 特に上気道感染症の兆候がない ) 尿路感染症 尿路奇形 (VUR) 多くの場合 手術により治癒する腎機能低下を示す前に治療する VUR の頻度 本邦では小学生の 0.05% に認められる. 自然消失例も含めると発生頻度はもっと高い. 急性腎盂腎炎に罹患した小児の 22-70% に VUR あり (5 歳以下 :40-50% 1 歳以下 :50-70%) 家族内発生あり : VUR の患児の同胞の 33% にVURが認められる 親子間の発生率のほうが高い? 男女比 - 小児全体 1:1 1 歳以下 8-9:1 6 歳以上 女児にやや多い 23 24 4

年齢別の VUR の頻度 尿管膀胱接合部の解剖と機能 (1) ワルダイヤー鞘 浅三角部 深三角部 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:139) 25 (Smith s General Urology, 2004:189) 26 尿管膀胱接合部の解剖と機能 (2) 尿管膀胱接合部の解剖と機能 (3) Wolffian duct 由来の中胚葉組織 : 交感神経支配尿管 表三角部 (superficial trigone) 尿管鞘 (Waldeyer s sheath) 深三角部 (deep trigone) 尿生殖洞 ( 内胚葉組織由来 ): 副交感神経支配膀胱排尿筋 - 内縦走筋 中輪状筋 外縦走筋 27 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:139) 28 膀胱尿管接合部の逆流防止機構 膀胱尿管接合部の解剖と逆流の可能性 1. 正常な膀胱平滑筋に尿管が囲まれ 尿管底部が強固な膀胱壁に裏打ちされている. 2. 両側尿管の縦走筋が三角部で合流し 三角部から後部尿道にかけて平滑筋の複合体を形成する. 3. 尿管の筋層が十分発達している. 4. 尿管が膀胱壁および粘膜下を十分な長さにわたり斜行する. ( 粘膜下尿管の長さと尿管内径の比 :5:1. 粘膜下尿管の長さは成長により延長するー逆流の自然消失 ). 29 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:139) 30 5

膀胱尿管逆流の原因 1. 原発性 (primary reflux) : 膀胱尿管接合部の先天的な形成不全. 粘膜下尿管の長さの短縮 膀胱三角部の形成不全 尿管口の開口位置の異常 ( 側方への偏位 ) をともなうことが多い. 2. 続発性 ( 二次性 secondary reflux) 尿管の先天異常 : 完全重複尿管 尿管異所開口 尿管瘤膀胱の異常 : 炎症 神経因性膀胱医原性 : 手術 膀胱尿管逆流の程度 : 国際分類 Grade I: 尿管のみの逆流 Grade II: 腎盂 腎杯に達する逆流腎杯 腎盂 尿管の拡張なし Grade III: 腎盂 腎杯に達する逆流軽度 - 中等度の尿管 腎盂の拡張腎杯は正常あるいは軽度拡張 Grade IV: 腎盂 腎杯に達する逆流中等度の腎盂 腎杯 尿管の拡張尿管の屈曲あり Grade V: 腎盂 腎杯に達する逆流腎盂 腎杯 尿管の拡張は著明尿管の屈曲も高度. 腎杯は鈍円化 31 32 膀胱尿管逆流の程度 - 国際分類 臨床症状 ( 所見 ) 尿路感染症の原因検索で発見されることが多い 男児 : 基礎疾患 ( 尿路奇形 ) のない尿路感染症はない一度でも尿路感染症を起こした場合には 精査必要 女児 : 男子よりは基礎疾患のない尿路感染症の頻度は高い繰り返す場合には要注意 特に急性腎盂腎炎. 時に 無症候性である ( 膿尿 細菌尿のみ ). 高血圧 腎不全で発見されることあり ( 逆流性腎症 ). Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 5 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:141) 33 34 膀胱尿管逆流の症状 所見 逆流に関連した症状 所見 1. 急性腎盂腎炎 (70-80%) 2. 慢性腎盂腎炎 ( 膿尿 細菌尿 ) 3. 膀胱炎様症状 4. 排尿時の側腹部痛 5. 高血圧 6. 腎機能低下 基礎疾患に関連した症状 35 膀胱尿管逆流の診断 病態評価に必要な臨床検査 尿路感染症の診断尿沈渣 尿中細菌数定量 尿培養 ( 膿尿の存在 起炎菌は大腸菌を中心とするグラム陰性菌 ) 逆流および関連所見の診断排尿時膀胱尿道造影 (VCUG) 排泄性尿路造影 (excretory urography) 腎シンチグラム : 99m Tc dimercaptosuccinic acid (DMSA) 基礎疾患の検索尿道 膀胱鏡 膀胱内圧測定 36 6

膀胱尿管逆流に対する検査の意義 排尿時膀胱尿道造影 VCUG: voiding cystourethrogram VUR の存在 その程度 (grade) の評価下部尿路通過障害 ( 後部尿道弁 神経因性膀胱など ) の除外 排泄性尿路造影 (excretory urography) intravenous pyelography (IVP) drip-infusion pyelography (DIP) 腎 尿管の形態学的変化を評価腎盂 腎杯の拡張が一定以上であれば腹部超音波断層法でも評価可能 腎シンチグラム 99m Tc DMSA 腎瘢痕 ( 腎皮質の萎縮 ) の存在 分腎機能の評価 膀胱尿管逆流の治療 (1) 1. 保存的治療が可能な理由 小児における逆流の自然消失 (5 年間 ) 膀胱三角部 膀胱尿管接合部の成熟粘膜下尿管の長さの延長 Grade I, II: >80% Grade III, IV: 20-40%, Grade V: <2-3% 膀胱内 ( 壁内 ) 尿管の長さ ( 平均 ) 未熟児 (7 か月 ):0.1cm 未熟児 (8.5 か月 ):0.35cm 出産時 :0.5cm 1 歳 :0.7cm 2 歳 :0.55cm 6 歳 :0.85cm 10 歳 :1.15cm 12 歳 :1.0cm 19 歳 :1.45cm 21 歳以上 :1.3cm 37 38 膀胱尿管逆流の治療 (2) 膀胱尿管逆流の治療 (3) 2. 保存的治療とその適応抗菌剤の予防投与 : 尿路感染症の予防 <1 歳 : 逆流消失まで 1 歳 :6-12 か月適応 :Grade I II Grade III, IV( 年齢 腎機能による ) 3. 規則的な排尿習慣 2 時間ごとの排尿 2 段階排尿 ( 残尿の除去 ) 便秘の防止 4. 外科治療適応 :1 Grade V 2 抗菌薬予防投与に抗する尿路感染症あるいは逆流の存続 3 腎瘢痕の出現 4 思春期以降の逆流 手術方法粘膜下トンネル法 : Polotano-Leadbetter 法 Cohen 法 Paquin 法 ( いずれも粘膜下 壁内尿管の長さの延長が目的 ) 39 40 Politano -Leadbetter 法 Cohen 法 膀胱内からのアプローチ 膀胱内からのアプローチ Lich-Gregoir 法 膀胱外からのアプローチ鏡視下手術に有用 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:147) 41 ( 新図解泌尿器科学講座 5 1999:149) 42 7

症例 5 歳 男児 主訴 : 全身の浮腫 尿検査所見 : 尿蛋白 (3+) 3.8g/day 尿沈渣所見 :RBC 5-6/hpf WBC 10-15/hpf 桿菌 (+) 尿培養 :E.coli 1,000,000/ml 血液生化学 : 総蛋白 5.7g/dl 血清アルブミン 2.9g/dl 総コレステロール 220mg/dl 診断は? ネフローゼ症候群? 原因? 逆流性腎症 (reflux nephropathy) 逆流による腎の瘢痕 萎縮 ( 腎杯の鈍化 棍棒化 ) 腎実質の菲薄化 陥凹 ( 排泄性尿路造影 99mTc-DMSA- 腎シンチグラム ) 5-10% が逆流性腎症 ( 高血圧 腎不全 ) を発症 ( 外科治療 - 逆流防止術は逆流性腎症を防止できない ) 99mTc-DMSA- 腎シンチグラム 43 ( 標準泌尿器科学 2010:368) 右 44 腎瘢痕の発生機序 1. 細菌尿による腎実質の感染 2 逆流の水力学的作用逆流単独 (water-hammer effect) 細菌尿尿中 Tamm-Horsfall protein) 3. 随伴する先天性腎疾患腎の異形成 低形成 腎瘢痕の発生時期 VUR の程度 新生と進行 腎瘢痕の発生は胎児期 新生児期 乳児期 : VUR の症例の 30-50% は初診時に腎瘢痕あり 腎瘢痕の程度 vs. VUR の grade: 平行する grade I, II: <1% grade III: 18% grade IV: 48% grade V: 35% 通常 新生 進行は少ないしかし 尿路感染症は進行を助長する 45 46 腎瘢痕の合併症 腎性高血圧腎瘢痕の大きさと程度には無関係危険因子は不明 腎不全 ( 糸球体障害 ) Hyperfiltration? 免疫複合体の沈着? Proliferative glumerulonephritis の随伴? 巨大尿管症 巨大尿管症とは? 原発性 続発性 先天性の種々の疾患を原因とする著しい尿管拡張をともなうすべての病態を含んだ症候名である. 47 48 8

巨大尿管 :megaureter 巨大尿管症の分類 巨大尿管 逆流性 閉塞性 非逆流性非閉塞性 原発性 続発性原発性続発性原発性続発性 49 逆流性巨大尿管 ( プルン ベリー症候群に合併しやすい ) 下部尿路閉塞 ( 神経因性膀胱 ) 尿管下端の内因性閉塞 下部尿路閉塞 ( 神経因性膀胱 ) 新生児巨大尿管 多飲 多尿 50 巨大尿管症 逆流性巨大尿管 : 病態の上では 高度 (grade V) の膀胱尿管逆流とほぼ同一 逆流性巨大尿管症 (grade V の逆流 ) 閉塞性巨大尿管 ( 原発性 ): 尿管下端の adynamic segment が原因 非逆流性 非閉塞性 ( 原発性 ) 新生児巨大尿管 - 胎児期 新生児期に発見無症状に経過. 腎機能の悪化なし自然軽快が多い 51 52 閉塞性 原発性巨大尿管症 尿管下端の紡錘形の拡張 ( 蠕動あり ) 膀胱 Adynamic segment ( 蠕動欠如 ) 53 9