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15 糖尿病患者の脂質異常症治療の意義 糖尿病患者の脂質異常症は積極的に治療する. 糖尿病は心血管疾患発症の独立した強いリスク因子である 1 6). 糖尿病に合併する脂質異常症は心血管疾患のリスクをさらに高めるが, その是正により心血管イベントを減らすことができる 7 9). 脂質の管理の目標 管理目標値にしたがって脂質異常症を治療する ( 表 1) 6, 10 14). 生活習慣の改善の有効性 食事療法と運動療法により糖 脂質代謝の改善が期待される 15). 199

薬物療法 生活習慣 血糖コントロールが改善しても脂質管理目標を達成できない場合には薬物療法を考慮する. 高 LDL コレステロール (LDL-C) 血症の薬物療法はスタチン系薬 (HMG-CoA 還元酵素阻害薬 ) を第一選択とする 8, 9, 11 14, 16, 17). 高トリグリセライド血症に対しては, フィブラート系薬を第一選択とする 18, 19). 糖尿病に合併した脂質異常症の意義 2 型糖尿病に合併する脂質代謝異常としては, 高トリグリセライド血症, 高 LDL-C 血症のいずれも出現し, 同時に低 HDL-C 血症が存在することが多い.WHO 分類ではⅡa,Ⅱb 型およびⅣ 型を呈し, 糖尿病に特徴的な表現型というものは存在しない ( 表 2). これらの脂質 リポ蛋白組成異常はすべてが動脈硬化惹起性である. 糖尿病 高血糖状態 では脂質 リポ蛋白の複合的な組成変化が出現し, 微量な変化の重積がその特徴といえる. また, 高血糖に伴って出現する組成異常は血糖コントロールの結果, 是正されるものである. 糖尿病患者では非糖尿病者に比べて心血管疾患の発症が 2 4 倍多いことが報告されている. 後述するような J-LIT(Japan Lipid Intervention Trial) 20) においても非糖尿病に対し, 糖尿病者のイベント発症は 2.37 倍であった. このようなリスクの大きさは他章で触れられているようにほぼ同等である ( 12. 糖尿病大血管症 参照 ). しかし, それぞれの研究においてエンドポイントの設定が異なることから, 研究間の差異を議論することはできないことに注意する必要がある. そのなかで冠動脈性心疾患 (coronary heart disease:chd) に罹患した場合の予後も悪いことが,Framingham Study をはじめとする疫学研究により明らかにされている 1 6). 糖尿病患者の初発心筋梗塞発症頻度は非糖尿病者のそれの 5 倍以上であり, すでに心筋梗塞を起こしたことのある非糖尿病者の心筋梗塞再発頻度とほぼ同等であるという報告もある 10). しかし, このようなハイリスク, すなわち二次予防と糖尿病者のリスクが同等であることを示唆する成績は外国における 1 編の論文にみられるのみである. 200

15 糖尿病に合併した脂質異常症 この点についてはわが国での検討が必要である. 高コレステロール血症は, 喫煙, 高血圧と同様に, 糖尿病患者が心血管疾患を発症するリスク, 死亡するリスクを増大させる. 総コレステロール値 200 mg/dl 以上では, その値が高くなればなるほど心血管イベントの発生が増加する 6).LDL-C は, 多くのエビデンスでは Friedewald の計算式 (F 式 )[LDL-C=TC (HDL-C+TG/5)](TG<400 mg/dl のとき ) にて計算される ( 空腹時採血 ). 最近では直接法による LDL-C の測定も可能であるが, 日本動脈硬化学会ではその測定値を採用せず,F 式による LDL-C 値を用いることを勧めている. その理由は再現性, 症例ごとの変動, キット間での変動などがあげられる. TG 400 mg/dl では F 式による LDL-C 値は求められない. 日本動脈硬化学会ではこのような例については non HDL-C 値を検討することを勧めている. すなわち総コレステロールから HDL-C を差し引いた値である. これはカイロミクロン,VLDL, レムナントなどのリポ蛋白に含まれるコレステロールということになる. これまでも non HDL-C 値と心血管疾患の発症には強い相関性が認められることは理解されていたが, 高トリグリセライド血症のリスク評価をする上で有用であることから, より強調されるようになった. この値は後述するレムナント-コレステロールも含むことから, 高レムナント血症もこの値に反映される. わが国において, 糖尿病患者を対象に脂質異常症の影響をみた調査結果は少なかったが, 最近いくつかの報告が行われている. 平成 8 年より全国 59 施設において行われている JDCS (Japan Diabetes Complications Study) によれば,LDL-C 160 mg/dl 以上の糖尿病患者の虚血性心疾患リスクは,100 mg/dl 未満の患者の 3.7 倍であった 21, 22, b). 最近の JDCS から心血管疾患の既往のない 2 型糖尿病を対象 ( 男性 940 人, 女性 831 人 ) として平均観察期間 7.86 年の結果が発表された 23). 冠動脈疾患 (CHD) と脳卒中 (stroke) を最終評価項目として検討された.LDL-C,TG の1mmol/L 上昇によりハザード比 (HR) はそれぞれ 1.49,1.54 であった.CHD の HR と LDL-C あるいは TG 値の関係を Spline curve で解析すると, ほぼ直線的で有意な関係が認められた. 直線的な関係であることから臨界値のようなものは求めがたいと考えられる. このなかで HDL-C については疾患発症との有意な関連性は認められなかった. 多くの研究では HDL-C と動脈硬化性疾患との強い関連性が指摘されてきた.JDCS ではこの点について議論され, 統計上の問題やアルコールの問題について触れられているが, その理由については不明である. 取り上げた最終評価項目の種類によっても異なった結果が得られる可能性について議論される必要がある. 高 LDL-C 血症は, 糖尿病患者における CHD 発症のリスクを有意に増加させる 24).JDCS の成績は糖尿病における観察研究であった. また, 日本における大規模観察研究として高コレステロール血症 ( 220 mg/dl) に対してシンバスタチンを通常量投与し,5 6 年間観察された J-LIT 20) があげられる. ここでは高コレステロール血症の冠動脈疾患に対するリス 25) クが欧米と同様に日本人においても大きいものであることが示された. このサブ解析では非糖尿病に比し, 糖尿病では有意な心血管イベントの増加が報告された.LDL-C が正常でも 2 型糖尿病患者の血中には催動脈硬化作用の強い小型で比重の高い small dense LDL が高頻度に出現する.small dense LDL の測定法としては, ポリアクリラマイド電気泳動による方法やリポ蛋白分画精密測定法によって LDL サイズを推定する方法,VLDL と正常の LDL 分画を分離し small dense LDL と HDL 分画が含まれる上清を従来の LDL-C の直接測定法を用いて求める方法などがある. しかし, これらは実臨床の場で測定されることが認 201

められる保険収載とはなっていない. これらの測定意義, 精度などが議論されなければならない. 高トリグリセライド血症も, 近年,CHD の独立したリスク因子であることは前述した JDCS の結果や疫学調査, ならびにメタアナリシスにより示されている 26, 27). 糖尿病では中性脂肪に富むリポ蛋白 ( カイロミクロン,VLDL) の異化障害が生じ, その結果として中間産物であるカイロミクロンレムナント,VLDL レムナントが増加する. このような変化を是正する治療法のひとつとしてフィブラート系薬剤があげられる. 上昇した TG 値を是正する目的で行われた FIELD 研究では有意な全死亡抑制が認められなかったが, 冠動脈疾患発症の有意な抑制が示された ( 後述 ). レムナントは動脈硬化惹起性リポ蛋白のひとつと考えられる. レムナントを反映する簡便な方法としてレムナント様リポ蛋白 -コレステロール(RLP-C) が測定でき保険収載されているが, この測定では抗体に反応しないカイロミクロン粒子や VLDL 粒子も同時に測定され, いわゆるレムナントとは異なったものであることを認識する必要がある. レムナントを正確に測定する方法は現在のところ確立されていない. アポ B48 を測定する ELISA 法が開発されており, カイロミクロン レムナントの測定が可能となることが期待される. HDL-C は, 末梢組織に蓄積したコレステロールをくみ出すコレステロール逆転送系として重要であり, 動脈硬化の抑制に関与していると考えられる. 糖尿病にみられる低 HDL-C 血症は, インスリン作用不足によりリポ蛋白リパーゼ (LPL) の活性が低下し, カイロミクロン,VLDL の異化障害のために HDL-C の生成が減少することによる. コレステロール低下療法は糖尿病患者における心血管イベントの発症を有意に抑制することが, 主として大規模臨床試験の糖尿病サブグループ解析から明らかにされた 7).6 つの大規模臨床試験 (AFCAPS 28),POSCH 29),VA-HIT 30),CARE 16),LIPID 17),4S 11) ) のメタアナリシスによると, コレステロール低下療法の効果として糖尿病患者の CHD リスクは平均約 31% 低下した c).hps(heart Protection Study) での糖尿病サブ解析は,LDL-C がほぼ正常の糖尿病患者約 6,000 人を対象にシンバスタチン 40 mg/ 日による脂質低下療法の効果をみた比較試験である 8).LDL-C 1 mmol/l(39 mg/dl) の低下は約 25% のリスク軽減をもたらした. これは, 糖尿病患者においては LDL-C が高くなくとも, 脂質低下療法が血管系イベントのリスクを有意に低下させたものである.CARDS(Collaborative Atorvastatin Diabetes Study) は,LDL-C 160 mg/dl 未満かつ TG 600 mg/dl 未満で糖尿病以外のリスク因子を 1 つ以上持つ CHD 既往のない 2 型糖尿病患者を対象に, アトルバスタチン 10 mg/ 日の効果を検討した 9). アトルバスタチンは主要 CHD イベントを 37% 減少させ, 全死亡 27% 減少させるなど, 顕著な有用性が示された.CARDS は日本国内においても通常投与される投与量で試験が行われており,LDL-C がそれほど高くなくとも糖尿病患者にはスタチンによる脂質低下療法がイベント抑制に有効であることを証明した意味でインパクトが大きい. 一方, わが国では血清コレステロールに対するプラバスタチン投与の効果について検討された MEGA(Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese)Study が報告されている 31). この一連の研究では日本人の LDL-C 低下療法が有効であることが女性について 32), 高血圧者について 33), あるいはそのサブ解析として血糖高値例に対するプラバスタチンの効果が報告された 34). これは日本人糖尿病の高コレステロール血症に対する治療効果をはじめて明らかにしたものである. 202

15 糖尿病に合併した脂質異常症 12) 9) 脂質異常症治療による脳梗塞への影響に関する検討では,HPS 研究,CARDS 研究, わが国では KLIS 13),PATE 4) などでその予防効果が示されている. 最近,14 種類 (4S,WOSCOPS,CARE,Post-CABG,AFCAPS/TexCAPS,LIPID, GISSI-P, LIPS, HPS, PROSPER, ALLHAT-LLT, ASCOT-LLA, ALERT, CARDS) のコレステロール治療試験 (Cholesterol Treatment Trialists:CTT) を集積して糖尿病患者を対象としたメタアナリシスについての成績が報告された 15). これらの対象では平均 4.3 年間の観察研究で死亡率が 13% 軽減する一方, 血管イベント以外の死亡率には差異を認めなかった. また, 主要な血管イベントの抑制は 21% に認めたが, これは非糖尿病例と同様の結果であった. したがって, 糖尿病の有無に関係なく,LDL-C 低下療法の意義が示されたといえる.LDL-C の低下量と心血管イベントの低下率が直線的な関係にあることはすでに指摘されていたことであるが d), 糖尿病に注目してメタアナリシスが行われたものとしては注目されるべきものである. 糖尿病における脂質異常症の治療は動脈硬化性疾患の予防 治療であると認識されてきた. 近年の研究では腎症, 網膜症に対する脂質低下療法の意義が議論されるようになった. このような問題についてはさらなる検討が必要である. 脂質管理目標値 2 型糖尿病では腸管における MTP(microsomal triglyceride transfer protein)mrna の発 e, f) 現が亢進していることが報告されている. この mrna 発現はスタチン投与によって低下するものの,2 型糖尿病では非糖尿病までの低下は得られず, なお増強しているという e). また, コレステロール吸収に際して機能が発揮されるコレステロールトランスポーター, すなわち NPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1) 蛋白の発現は糖尿病で亢進していることが報告されている f). したがって, 高血糖状態ではカイロミクロン生成が亢進し, 高トリグリセライド血症やレムナントの増加に関連すると考えられ, 血糖是正の意義がここにも存在する. 総コレステロール,LDL-C の目標値として,CHD の既往がない糖尿病患者では総コレステロール 200 mg/dl 未満,LDL-C 120 mg/dl 未満,CHD の既往がある場合には総コレステロール 180 mg/dl 未満,LDL-C 100 mg/dl 未満が推奨されている ( 表 1)( 日本動脈硬化学会ガイドライン a, 1, 11, 17, 35 37) ). NCEP の ATPⅢでは糖尿病は冠動脈疾患をすでに有する患者と同等の冠動脈疾患発症リスクがあるとし, 欧米ではそれを裏付けるエビデンスがある 10). それを受けて ADA(American Diabetes Association) では糖尿病患者の LDL-C 目標値を 100mg/dL 未満としている g). しかし, 日本においてはそれを支持するエビデンスは今のところなく,J-LIT の結果から糖尿病は高血圧や喫煙とほぼ同等のリスクであり, 久山町研究によると糖尿病では LDL-C 値が 120 mg/dl 以上で動脈硬化性疾患の発症リスクが有意に高くなる a) ことから LDL-C 120 mg/dl 未満とし, 米国での目標値とに差を生じている. 一方, 日本糖尿病学会は 1998 年 糖尿病における動脈硬化診療のガイドライン を考察して提言するための委員会 ( 委員長 : 山田信博 ) を設置した.1 年間に日本動脈硬化学会との合同委員会が 5 回開催され, 第 14 回日本糖尿病合併症学会 (1999 年 10 月 大津 ) シンポジウムおよび第 32 回日本動脈硬化学会総会 (2000 年 6 月 東京 ) ワークショップにおける公開討論を経て, 委員会報告がまとめられた h). ここでは LDL-C<100 mg/dl が治療目標として掲げられた. このように LDL-C の目標値にはなお議論が残るが,LDL-C を治療の目標とする考えは広く受け入れら 203

れており, 積極的な治療を行うことが求められる. LDL-C をどこまで低下させるべきかという問題に結論は出ていないが, 近年行われたハイリスク患者を対象にしたスタチンによる強力な LDL-C 低下療法の臨床試験から, 高度ハイリスク患者に対しては LDL-C<70 mg/dl という目標値も選択肢として提示されている i). しかし, わが国におけるエビデンスは存在しない. LDL-C 値が目標値を達成した場合には, 中性脂肪 150 mg/dl 未満,HDL-C 40 mg/dl 以上を目標に治療する a, c). 諸外国では lower-the-better の考えに基づき,LDL-C の大きな低下率が得られる治療法が求められている. しかし, 一方では LDL-C の低下療法によっても動脈硬化性疾患の予防効果は 30 40% であり, その限界と効率を見極めて治療にあたることが必要である. TG 値,HDL-C 値,non HDL-C 値についてもそれぞれ管理目標値が示されている. これらの値については LDL-C のようなエビデンスレベルではない.LDL-C 以外の脂質異常症関連リスクである. 治療法 1) ライフスタイルライフスタイルの改善は脂質異常症治療の基本である. 食事療法による肥満の改善と運動には, 直接的および糖代謝の是正を通じて間接的に脂質異常症を改善させる効果がある 38). 食事療法としては, 高 LDL-C 血症では, 糖尿病の血糖コントロールのための摂取エネルギー制限に加え, コレステロール摂取を 300 mg/ 日以下とする. 高 LDL-C 血症がさらに持続する場合には, コレステロール摂取を 200 mg/ 日以下とする. 脂肪摂取量は摂取エネルギーの 25% 以下とする. 飽和脂肪酸の多い動物性脂肪の摂取制限, 一価不飽和脂肪酸の適切な摂取,n-3 系多価不飽和脂肪酸の適切な摂取の指導も有用であるとされる. 食物繊維は 25 g/ 日以上摂取を指導する. 高トリグリセライド血症を合併する場合には, アルコール摂取制限または禁酒を加え, 炭水化物摂取制限 ( 摂取エネルギーの 50% 以下 ), 単糖類の制限, 高カイロミクロン血症では, 脂肪摂取を 15% 以下とする a). 2) スタチン系薬スタチン系薬は強力な LDL-C 低下作用を持ち, 使用上の安全性も高い. 糖尿病患者を対象にしたエビデンスも多く, 糖尿病に合併した高 LDL-C 血症の第一選択薬に位置付けられる. 3) フィブラート系薬フィブラート系薬は, 高トリグリセライド血症, 低 HDL-C 血症の改善に効果がある. VA-HIT(Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial) は, 低 HDL-C 血症があり LDL-C 値は 140 mg/dl 以下の CHD 既往男性を対象に gemfibrozil( 国内未承認 ) の効果をみた試験である 30). 糖尿病を対象としたサブグループ解析では CHD の発症が有意 (24%) に抑制された.2 型糖尿病患者のみを対象とした DAIS(Diabetes Atherosclerosis Intervention Study) では, フェノフィブラートの投与による冠動脈病変の進展抑制効果が確認された 18).FIELD(Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes) は, 軽度の脂質代謝異常 ( フェノフィブラート群 : 総コレステロール 195 mg/dl,ldl-c 119 mg/dl,tg 154 mg/dl,hdl-c 43 mg/dl, コントロール群 : 総コレステロール 195 mg/dl,ldl-c 119 mg/dl,tg 153 mg/dl,hdl-c 43 mg/dl) を伴う 2 型糖尿病患 204

15 糖尿病に合併した脂質異常症 者約 10,000 人を対象に, フェノフィブラートの心血管イベント抑制効果を検証した前向き研究である 19). 対象の 78% が心血管疾患の既往歴のない一次予防患者であったが, それらの患者においては非致死的心筋梗塞の初発または冠動脈心疾患による死亡の発生率が 25% 有意に低下した. また, 細小血管症である糖尿病網膜症 ( レーザー治療 ) と糖尿病腎症の進展を有意に抑制することが脂質異常症治療薬としてはじめて確認された.ACCORD-Lipid 39) では ACCORD 研究で登録された症例のなかで, シンバスタチン (20 40 mg/ 日 ) が投与された 5,518 人を対象とし, フェノフィブラート (54 mg あるいは 160 mg/ 日 ) 投与 非投与の 2 群で動脈硬化性疾患発症について検討された. 大血管症の発症や全死亡についてはまったく有意性を認めなかったが,TG 204 mg/dl かつ HDL-C 34 mg/dl の群 (941 例 ) を抽出して解析すると, 心血管イベントに対して 31%(p=0.03) のリスク低下が認められたという. 4) 陰イオン交換樹脂陰イオン交換樹脂を用いた大規模試験は, 糖尿病患者のみを対象にしたものはないが Ⅱ 型脂質異常症男性患者を対象にしたコレスチラミンの臨床試験では, 冠動脈疾患発症率および死亡率を低下させた 40). 5)EPA EPA は高トリグリセライド血症に適応のある薬剤であるが, その効果はフィブラートに比して劣っている. しかし, 大規模臨床研究での成績, すなわち, 高コレステロール血症例に EPA 製剤を用いた研究は JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Trial) 41) で検討され, 42) 心血管イベントに対して 19% のリスク低下 (p<0.011) を認め, 脳卒中に対するサブ解析では二次予防例で有意なリスク低下 (20%,p=0.048) が認められた. さらに高血糖 ( 糖尿病 43) と空腹時血糖高値 ) 群と正常血糖群とについて冠動脈イベントの比較を行ったサブ解析では, 高血糖群において 22% のリスク低下 (p=0.048) が認められたが, 非高血糖群では 18% のリスク低下 (p=0.062) であった. 最近,IFG,IGT, 糖尿病の患者を対象として EPA/DHA 合剤 (1 g-capsule/ 日, 少なくとも 900 mg 以上の n-3 脂肪酸を含む ) の心血管病に対する予防効果が検討された 44). 平均 6.2 年間の観察が行われ,TG の低下は EPA/DHA 投与群で有意な変化が認められたが, 心血管病については非投与群との差異がまったく認められなかった. その理由については対象の差異, 投与量の問題などが議論されているが不明である.JELIS との差異を直接比較することはできないが, 今後も議論される問題である. 6) エゼチミブ腸管上皮細胞のコレステロールトランスポーターである NPC1L1 についてはすでに触れたが, エゼチミブはこの膜蛋白に結合し, コレステロール吸収を阻害するものである. 血清コレステロール 13%,LDL-C 18% の低下率を示し, 一方,HDL-C は 17% の増加が得られるという. 糖尿病では NPC1L1の腸管細胞における発現が増強していることが示されていることから a), エゼチミブの効果が非糖尿病に比して大きいことが期待されるが, これまでの臨床研究では単剤による治療効果についてはほとんど行われていない. 多くの報告ではスタチンとの併用について行われている. アトルバスタチンやシンバスタチンとの併用療法により LDL-C の低下率は 30 50% に達することが示されている 45 48). 7) 薬物副作用脂質異常症治療薬の副作用として, スタチン系薬やフィブラート系薬を使用する場合には, 横紋筋融解症などに注意する必要がある j, k). 特に腎機能低下時にはこれら薬剤の使用が禁忌となる場合がある.FIELD においては, フェノフィブラート群の 16% がスタチン系薬 205

を併用しており, プラセボ群 ( スタチン併用 32%) に比し横紋筋融解症は両群とも 1% 未満で有意差はなかったが 19), スタチン系薬とフィブラート系薬の併用は日本においては慎重投与となっている. やむをえず併用する際には, 十分な注意が必要である. スタチン系薬やフィブラート系薬が副作用などで使用できない場合には, プロブコール, ニコチン酸製剤, 陰イオン交換樹脂または EPA 製剤の使用を考慮する. スタチン系薬であるシンバスタチン, アトルバスタチンは, 薬物代謝酵素である CYP3A4 で代謝されるため,CYP を分子種非選択的に阻害するような薬物や CYP3A4で代謝される他の薬物との相互作用に注意する必要がある. 多くのスタチンの長期安全性は確認されている. しかし, 近年, スタチン治療による血糖上昇, あるいは, 新規の糖尿病発症が議論された. この問題については主にわが国での報告例をまとめた報告が総説として発表されている l). インスリン分泌能あるいはインスリン感受性に対するスタチンの作用が実験的に検討されているが, 一定の見解は得られていない. 臨床的な検討ではインスリン分泌に関する成績は報告が見当たらない. 一方, インスリン感受性に関するメタアナリシスの成績が示されている 49). 一部のスタチンでは有意なインスリン感受性低下をもたらすことが示された. しかし, このメタアナリシスではインスリン感受性を定義する測定方法が一定ではなく, 論文ごとの結論をまとめたものである. したがって, 現在のところはスタチンによるインスリン感受性低下について一定の見解は得られていない. 一方,1994 2009 年の間に発表された 13 のスタチンによる介入研究 (ASCOT-LLA,HPS,JUPITER,WOACOPS,LIPID S,CORONA,PROSPER,MEGA, AFCAPS TexCAPS,4S,ALLHAT-LLT,GISSIHF,GISSI PREVENZIONE(1,000 人以上の対象例で,1 年以上の観察が行われた を抽出 )) をもとにスタチン投与, 非投与における糖尿病新規発症のメタアナリシスが報告された 50). 平均観察 4 年間でスタチン群での糖尿病発症はオッズ比 1.09 と微増であった. 欧米ではスタチンの心血管病変に対する治療効果をよりベネフィットとして捉えることが主流であり, この 9% 増を大きな問題として捉えられてはいないが, わが国での症例報告を考慮すれば, 糖尿病の悪化をもたらす可能性も否定できず, 臨床的に観察を行うことが必要である. エゼチミブは腸細胞でほとんどがグルクロン酸抱合を受けて代謝されるが, 残ったものも肝でグルクロン酸抱合を受けて代謝される. 多くの脂質低下薬とは異なり,CYP の関与を受けないことから, スタチンとの併用療法は受け入れやすい. グルクロン酸抱合を受けた代謝産物は腸管循環することにより, その作用も維持される. 糞虫排泄の半減期は 20 時間であった. 尿中排泄は投与量の約 11% であるが, これは投与後 240 時間まで続くことから, 腎排泄量は少ないとはいえ腎障害例では薬物代謝が遅延することが想定される. このような代謝経路を考えると薬物間の相互作用が出現しやすいことは考えにくいが, 肝障害, あるいは腎障害時の投与では慎重を要する. わが国ではフィブラートとの併用については慎重投与とされている. この理由は国内での成績がないことがすべてであり, 併用によって有害事象が多発するといった成績はみられない. 今のところ 併用は認められないもの として認識することが必要である. 206

15 糖尿病に合併した脂質異常症 1) Abbott RD, Donahue RP, Kannel WB et al: The impact of diabetes on survival following myocardial infarction in men vs women: the Framingham Study. JAMA 260: 3456-3460, 1988 2) Kannel WB, McGee DL:Diabetes and cardiovascular disease. The Framingham study. JAMA 241:2035-2038, 1979 3) Lerner DJ, Kannel WB: Patterns of coronary heart disease morbidity and mortality in the sexes:a 26-year follow-up of the Framingham population. Am Heart J 111:383-390, 1986 4) Scheidt-Nave C, Barrett-Connor E, Wingard DL:Resting electrocardiographic abnormalities suggestive of asymptomatic ischemic heart disease associated with non-insulin-dependent diabetes mellitus in a defined population. Circulation 81:899-906, 1990 5) Garcia MJ, McNamara PM, Gordon T et al:morbidity and mortality in diabetics in the Framingham population:sixteen year follow-up study. Diabetes 23:105-111, 1974 6) Stamler J, Vaccaro O, Neaton JD et al:diabetes, other risk factors, and 12-yr cardiovascular mortality for men screened in the Multiple Risk Factor Intervention Trial. Diabetes Care 16: 434-444, 1993 7) Huang ES, Meigs JB, Singer DE:The effect of interventions to prevent cardiovascular disease in patients with type 2 diabetes mellitus. Am J Med 111:633-642, 2001 8) Collins R, Armitage J, Parish S et al(heart Protection Study Collaborative Group):MRC/BHF Heart Protection Study of cholesterol-lowering with simvastatin in 5963 people with diabetes:a randomised placebo-controlled trial. Lancet 361:2005-2016, 2003 9) Colhoun HM, Betteridge DJ, Durrington PN et al:primary prevention of cardiovascular disease with atorvastatin in type 2 diabetes in the Collaborative Atorvastatin Diabetes Study ( CARDS): multicentre randomised placebo-controlled trial. Lancet 364: 685-696, 2004 10) Haffner SM, Lehto S, Rönnemaa T et al:mortality from coronary heart disease in subjects with type 2 diabetes and in nondiabetic subjects with and without prior myocardial infarction. N Engl J Med 339:229-234, 1998 11) Pyörälä K, Pedersen TR, Kjekshus J et al: Cholesterol lowering with simvastatin improves prognosis of diabetic patients with coronary heart disease:a subgroup analysis of the Scandinavian Simvastatin Survival Study(4S). Diabetes Care 20:614-620, 1997 12) Collins R, Armitage J, Parish S et al: Effects of cholesterol-lowering with simvastatin on stroke and other major vascular events in 20536 people with cerebrovascular disease or other high-risk conditions. Lancet 363:757-767, 2004 13) The Kyushu Lipid Intervention StudyPravastatin use and risk of coronary events and cerebral infarction in japanese men with moderate hypercholesterolemia:the Kyushu Lipid Intervention Study. J Atheroscler Thromb 7:110-121, 2000 14) Ito H, Ouchi Y, Ohashi Y et al:a comparison of low versus standard dose pravastatin therapy for the prevention of cardiovascular events in the elderly:the pravastatin anti-atherosclerosis trial in the elderly(pate). J Atheroscler Thromb 8:33-44, 2001 15) Kearney PM, Blackwell L, Collins R et al:efficacy of cholesterol-lowering therapy in 18,686 people with diabetes in 14 randomised trials of statins:a meta-analysis. Lancet 371:117-125, 2008 16) Goldberg RB, Mellies MJ, Sacks FM et al: Cardiovascular events and their reduction with 207

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15 糖尿病に合併した脂質異常症 pravastatin in Japan(MEGA Study):a prospective randomised controlled trial. Lancet 368: 1155-1163, 2006 32) Mizuno K, Nakaya N, Ohashi Y et al:usefulness of pravastatin in primary prevention of cardiovascular events in women:analysis of the Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese( MEGA study). Circulation 117: 494-502, 2008 33) Kushiro T, Mizuno K, Nakaya N et al:pravastatin for cardiovascular event primary prevention in patients with mild-to-moderate hypertension in the Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese(MEGA)Study. Hypertension 53: 135-141, 2009 34) Tajima N, Kurata H, Nakaya N et al:pravastatin reduces the risk for cardiovascular disease in Japanese hypercholesterolemic patients with impaired fasting glucose or diabetes: diabetes subanalysis of the Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese(MEGA)Study. Atherosclerosis 199:455-462, 2008 35) The Scandinavian Simvastatin Survival Study( 4S)Group: Randomised trial of cholesterol lowering in 4444 patients with coronary heart disease:the Scandinavian Simvastatin Survival Study(4S). Lancet 344:1383-1389, 1994 36) Hoogwerf BJ, Waness A, Cressman M et al:effects of aggressive cholesterol lowering and low-dose anticoagulation on clinical and angiographic outcomes in patients with diabetes: the Post Coronary Artery Bypass Graft Trial. Diabetes 48:1289-1294, 1999 37) Sacks FM, Pfeffer MA, Moye LA et al: The effect of pravastatin on coronary events after myocardial infarction in patients with average cholesterol levels. Cholesterol and Recurrent Events Trial investigators. N Engl J Med 335:1001-1009, 1996 38) Heilbronn LK, Noakes M, Clifton PM:Effect of energy restriction, weight loss, and diet composition on plasma lipids and glucose in patients with type 2 diabetes. Diabetes Care 22:889-895, 1999 39) Ginsberg HN, Elam MB, Lovato LC et al:effects of combination lipid therapy in type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med 362:1563-1574, 2010 40) The Lipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trial( LRC-CPPT): The Lipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trial results: Ⅰ. Reduction in incidence of coronary heart disease. JAMA 251:351-364, 1984 41) Yokoyama M, Origasa H, Matsuzaki M et al:effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients(jelis):a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 369:1090-1098, 2007 42) Tanaka K, Ishikawa Y, Yokoyama M et al:reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients:subanalysis of the JELIS trial. Stroke 39: 2052-2058, 2008 43) Oikawa S, Yokoyama M, Origasa H et al:suppressive effect of EPA on the incidence of coronary events in hypercholesterolemia with impaired glucose metabolism:sub-analysis of the Japan EPA Lipid Intervention Study(JELIS). Atherosclerosis 206:535-539, 2009 44) Bosch J, Gerstein HC, Dagenais GR et al(origin Trial Investigators):n-3 fatty acids and cardiovascular outcomes in patients with dysglycemia. N Engl J Med 367:309-318, 2012 45) Simons L, Tonkon M, Masana L et al:effects of ezetimibe added to on-going statin therapy on the lipid profile of hypercholesterolemic patients with diabetes mellitus or metabolic syndrome. Curr Med Res Opin 20:1437-1445, 2004 46) Gaudiani LM, Lewin A, Meneghini L et al:efficacy and safety of ezetimibe co-administered with simvastatin in thiazolidinedione-treated type 2 diabetic patients. Diabetes Obes Metab 209

7:88-97, 2005 47) Constance C, Westphal S, Chung N et al:efficacy of ezetimibe/simvastatin 10/20 and 10/40 mg compared with atorvastatin 20 mg in patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetes Obes Metab 9:575-584, 2007 48) Goldberg RB, Guyton JR, Mazzone T et al:ezetimibe/simvastatin vs atorvastatin in patients with type 2 diabetes mellitus and hypercholesterolemia:the VYTAL study. Mayo Clin Proc 81:1579-1588, 2006 49) Baker WL, Talati R, White CM et al:differing effect of statins on insulin sensitivity in nondiabetics:a systematic review and meta-analysis. Diabetes Res Clin Pract 87:98-107, 2010 50)Sattar N, Preiss D, Murray HM et al:statins and risk of incident diabetes:a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. Lancet. 375:735-742, 2010 参考にした資料 a) 日本動脈硬化学会 ( 編 ): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012 年版, 日本動脈硬化学会, 杏林舎 ( 製作 ), 東京,2012 b) 糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究 (JDCS). 平成 14 年度総括分担研究報告書,2003 c) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults: Executive Summary of The Third Report of The National Cholesterol Education Program (NCEP)Expert Panel on Detection, Evaluation, And Treatment of High Blood Cholesterol In Adults(Adult Treatment Panel Ⅲ). JAMA 285:2486-2497, 2001 d)thompson GR, Barter PJ:Clinical lipidology at the end of the millennium. Curr Opin Lipidol 10:521-526, 1999 e) Phillips C, Mullan K, Owens D et al: Intestinal microsomal triglyceride transfer protein in type 2 diabetic and non-diabetic subjects: the relationship to triglyceride-rich postprandial lipoprotein composition. Atherosclerosis 187:57-64, 2006 f) Lally S, Tan CY, Owens D et al:messenger RNA levels of genes involved in dysregulation of postprandial lipoproteins in type 2 diabetes:the role of Niemann-Pick C1-like 1, ATP-binding cassette, transporters G5 and G8, and of microsomal triglyceride transfer protein. Diabetologia 49:1008-1016, 2006 g) Haffner SM(American Diabetes Association):Dyslipidemia management in adults with diabetes. Diabetes Care 27(Suppl 1):S68-S71, 2004 h) 及川眞一, 井藤英喜, 江草玄士ほか : 糖尿病における動脈硬化症診療のガイドラインおよび提言 : 糖尿病の動脈硬化診療ガイドライン. 糖尿病 44:777-782, 2001 i) Grundy SM, Cleeman JI, Merz CN et al:implications of recent clinical trials for the National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel Ⅲ guidelines. Circulation 110:227-239, 2004 j) 厚生省労働省薬務局 : 医薬品副作用情報 No.112,1991 http://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr112.htm( 最終アクセス日 :2013 年 4 月 9 日 ) k) 厚生省労働省薬務局 : 医薬品副作用情報 No.119, 1993 http://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr119.htm( 最終アクセス日 :2013 年 4 月 9 日 ) l) Sasaki J, Iwashita M, Kono S:Statins:beneficial or adverse for glucose metabolism. J Atheroscler Thromb 13:123-129, 2006 210

15 糖尿病に合併した脂質異常症 論文コード 対象 方法 結果 1)Abbott RD et al(framingham study), 1988 心血管疾患のない白人男女 (5,209 人 )(30 62 歳 ). このうちコレステロール値を解析できたのは, 非糖尿病男性 359 人, 女性 15 人, 糖尿病男性 55 人, 女性 37 人 2)Kannel WB et al, 1979 心血管疾患のない白人男女 (5,209 人 )(30 62 歳 ) 3)Lerner DJ et al(framingham study),1986 4)Scheidt-Nave C et al, 1990 横断研究 5)Garcia MJ et al(framingham study), 1974 35 84 歳の白人男女 (5,127 人 ) 59 89 歳の白人男女 (2,223 人 ) 白人男女 (5,209 人 ), うち 239 人が最初の 4 年間で糖尿病と診断 6)Stamler J et al, 1993 35 75 歳の白人男性 (347,978 人 ). うち糖尿病患 者 5,163 人 7)Huang ES et al, 2001 メタアナリシス 8)Collins R et al(hps), 2003 9)Colhoun HM et al (CARDS), 2004 10)Haffner SM et al, 1998 1996 2000 年に報告された 7 つの を対象に, 計 2,603 人の 2 型糖尿病患者の脂質治療効果を検討 糖尿病の英国人 (5,963 人 ) (40 80 歳 ) と閉塞性動脈疾患を持つ非糖尿病者 (14,573 人 ). 糖尿病患者の平均 LDL-C は 124mg/dL であった 心血管疾患の既往がない 2 型糖尿病患者 (2,838 人 )(40 75 歳 ).LDL-C は 160mg/dL 以下 45 64 歳のフィンランド人男女 (2,432 人 )( 糖尿病 1,059 人, 非糖尿病 1,373 人 ) Framingham コホート [34 年間追跡 ] Framingham Study の 20 年間追跡データを解析. 糖尿病の有無と心血管イベントの関連を検討 Framingham コホート [26 年間追跡 ] 耐糖能による心血管障害の頻度の違いを横断調査した Framingham コホート [16 年間追跡 ] 11 13 年間にわたり, 心血管疾患による死亡率を検討した スタチンもしくはフィブラート vs プラセボ [4.3 6.1 年間追跡 ] シンバスタチン投与群 (40mg/ 日 )vs プラセボ群 [ 治療期間 5 年間 ] アトルバスタチン投与群 (10mg/ 日 )(1,428 人 )vs 非投与群 (1,410 人 )[3.9 年間 ( 中央値 ) 追跡 ] 7 年の追跡期間中の心筋梗塞発症率を比較 総コレステロール値は有意差がなかったが, 糖尿病患者の冠動脈疾患の再発や心不全の進行は男性より女性に 2 3 倍多い 糖尿病患者では心血管疾患のリスクが非糖尿病患者に比べ 2 3 倍高い. 心血管死 / うっ血性心不全の糖尿病によるリスク増加は女性でより大きかった 冠動脈疾患とこれによる死亡には男女差がある. 糖尿病患者は心血管合併症が非糖尿病者に比べ多い. 総コレステロール値は, 女性では男性に比し強い心血管病の予測因子となる 糖尿病患者では心筋梗塞が多く, 無症候性心筋虚血も多い 糖尿病患者では糖尿病のない者に比べ心血管障害の発症が多い 血圧, コレステロールのコントロールと禁煙が心血管疾患の発症抑制に重要. 糖尿病患者ではこれらのリスク因子が非糖尿病者に比べ予後を増悪させる 脂質低下療法により心筋梗塞の発症が 40% 抑制され, 心疾患死, 脳梗塞発症にも低減傾向がみられた シンバスタチンは糖尿病患者, 非糖尿病患者のいずれにおいても初発心血管イベントを約 25% 有意に低下させた LDL-C が高くない 2 型糖尿病患者において, アトルバスタチン 10mg/ 日は心血管イベントの発生を 37% 低下させた. 総死亡率は 27% 減少した 総コレステロール, 中性脂肪値は, 糖尿病患者で有意に高い. 心筋梗塞の既往のない糖尿病患者が心筋梗塞を発症するリスクは, 既往のある非糖尿病患者が再発を生じる率に匹敵するほど高い 211

論文コード 対象 方法 結果 11)Pyörälä K et al(4s), 35 70 歳の欧州人男女 1997 (4,398 人 )( うち糖尿病患者 のサブ解析 483 人,IFG 678 人 ) 12)Collins R et al, 2004 13) The Kyushu Lipid Intervention Study Group (KLIS), 2000 心血管病のある患者 (3,280 人 ), 血管閉塞疾患および糖尿病のある患者 (17,256 人 )( 計 20,536 人 ) 総コレステロール 250mg/dL 以上の日本人男性 (5,640 人 ) シンバスタチン 20 40mg/ 日 vs プラセボ [ 平均 5.4 年間 ] シンバスタチン 40mg またはプラセボ [ 治療期間 5 年間 ] 以前の治療継続またはプラバスタチン 10 20mg 追加 シンバスタチンを用いたコレステロール低下療法は, 糖尿病患者の冠動脈性心疾患二次予防に有効である 脳卒中 25% 減, 梗塞 28% 減, 主要血管イベントは 20% 減 総コレステロールは 15% 減, 追加なしでは 8% 減. プラバスタチンにて心血管イベントは危険率 0.86, 脳梗塞は 0.78 に減少, 総合で 0.81 に減少 14)Ito H et al(pate), 2001 60 歳以上の高齢者 (665 人 ) 低用量 (5mg/ 日 ) または標準用量の 10 20mg/ 日のプラバスタチン 標準用量にて心血管イベントが 32.6% 減少. この傾向は非糖尿病群にて著明 15)Kearney PM et al, 2008 糖尿病 (1 型 1,466 人,2 型 17,220 人 ), 非糖尿病 (71,370 人 ) スタチンの投与によって LDL- C 1mmol/L( 約 39.8mg/dL) の低下が心血管イベントに及ぼす効果を検証 16)Goldberg RB et al (CARE), 1998 心筋梗塞患者の既往があり LDL-C 平均値 139mg/dL の プラバスタチン (40mg/dL)vs プラセボ [5 年間 ]. 冠動脈イベ 21 75 歳の男女 ( 白人 90%) ントの発症を検討 (4,159 人 )( うち糖尿病 586 人 ) 17)LIPID Study Group, 1998 18)Diabetes Atherosclerosis Intervention Study Investigators(DAIS), 2001 19)Keech A et al(field), 2005 冠動脈疾患を有する 31 75 歳の患者 (9,014 人 ). 糖尿病 (782 人 ) カナダ, フィンランド, スウェーデンおよびフランス在住,40 65 歳の 2 型糖尿病男女 (418 人 )(96% が白人 ) 軽度の脂質代謝異常を有する 2 型糖尿病患者 ( 平均 HbA1c (NGSP)6.9%)(9,795 人 ) プラバスタチン (40mg/ 日 )vs プラセボ [6.1 年間 ] フェノフィブラート ( 200 mg/dl)vs プラセボ [3 年間以上観察 ] 微粉化フェノフィブラート 200mg/ 日投与群 vs プラセボ投与群 [5 年間以上観察 ] 心血管に基づく死亡は 13% (p=0.008), 非心血管による死亡は 3%(p=0.7) であり, 死亡の原因として心血管病変に対する抑制効果が示された. 全死亡は糖尿病で 9% 抑制され, 非糖尿病では 13% 抑制された. 冠血管死に対する抑制効果は糖尿病で 12%, 非糖尿病で 22 % であった. 心筋梗塞と冠血管死を合わせた major coronary events の抑制は糖尿病で 22 %, 非糖尿病で 23% が抑制された.LDL-C の低下療法は糖尿病の有無にかかわらず有効であることが示された プラバスタチン群は糖尿病患者において冠動脈イベントの発症リスクを 25% 低下させた コレステロール低下は心血管疾患の抑制に重要である フェノフィブラート群で, 冠動脈細小血管内径の減少や狭窄度の増加が有意に抑制された 一次エンドポイントで冠動脈イベントの発生に有意差を認めなかったが, 一次予防患者において心血管イベントを有意に減少させた. また, 糖尿病網膜症, アルブミン尿の進行を抑制した 212

15 糖尿病に合併した脂質異常症 論文コード 対象 方法 結果 20)Matsuzaki M et al 日本人の高コレステロール血症 (J-LIT), 2002 ( 220mg/dL 以上 ) 患者 (47,294 人 ) シンバスタチン 5 10mg/ 日を投与し,6 年間の観察期間で急性心筋梗塞あるいは心臓突然死をエンドポイントとして検討した 血清コレステロール値 200 220mg/dL に低下した群に比し 220mg/dL から 20mg/dL ごとの増加により, 相対リスク f(rr)1.47,2.63,4.03 と有意に増加した 21 22)JDCS, 2002, 2003 糖尿病患者 (2,547 人 ), 全国 59 施設 患者指導の介入 LDL-C 160mg/dL 以上で虚血性心疾患のリスクは 3.7 倍であった 23)Sone H et al, 2011 2 型糖尿病 (1,776 人 ) 日本人 2 型糖尿病を登録 (1995 年 1 月 1996 年 3 月 ) し, 糖尿病合併症の発症頻度を前向きに検討した. 平均 7.86 年の結果として冠動脈疾患 ( CHD), 脳血管障害 (stroke) 発症に対するリスクをまとめた CHD 発症 9.59 人 /1000 人 年, 脳卒中発症 7.45 人 / 1000 人 年. リスク因子としてハザード比は TG 1.54, LDL-C 41.49, 収縮期血圧 1.31 であった 24)Turner RC et al (UKPDS 23), 1998 25)Oikawa S et al, 2007 26)Assmann G et al, 1998 27)Austin MA et al, 1998 メタアナリシス UKPDS の患者のうちデータの完備した白人男女 (2,693 人 ) 日本人, 非糖尿病 (35,247 人 ) と糖尿病 (6,554 人 ) の高コレステロール血症 (220mg/dL 以上 ) 患者 中年白人男性 (4,849 人 ). うち糖尿病患者約 300 人 15 81 歳の白人男性 (46,413 人 ), 女性 10,864 人を含む 17 のを解析. 糖尿病患者数については記載なし 虚血性心疾患の発症リスクをベースラインデータから Cox 比例ハザードモデルで解析 [ の疫学的解析 ] シンバスタチン 5 10mg/ 日を投与し,6 年間の観察期間で急性心筋梗塞あるいは心臓突然死をエンドポイントとして検討した 試験登録時にみられたリスク因子と 8 年の追跡期間中の冠動脈性心疾患発症の関係を解析 平均 11.4 年の調査期間におけるトリグリセライド値と心血管疾患発生の関係を検討 838 人を部分的腸バイパス手術群とコントロール群に分け平均 9.7 年間 ジェムフィブロジル (1,200 mg/dl)vs プラセボ [5.1 年間 ] LDL-C 高値,HDL-C 低値, 高血圧, 高血糖, 喫煙が 2 型糖尿病における虚血性心疾患のリスク因子であった 非糖尿病 (0.76 人 /1,000 人 年 ) に比し, 糖尿病 (1.8 人 / 1,000 人 年 ) では有意な心血管イベントの増加 (2.38 倍 ) し, 血清コレステロール 10 mg/dl の値の増加は非糖尿病で 19.4%, 糖尿病で 17.3% の増加を示し, コレステロールに依存した相対比は糖尿病の有無ではほぼ同等であった トリグリセライドは, 冠動脈性心疾患の独立したリスク因子である 高トリグリセライド血症は心血管疾患発症リスクを男性で 14%, 女性では 32% 増加させた 28)Downs JR et al 冠動脈性心疾患の既往がない ロバスタチン (20 40mg/dL) 平均的 LDL-C, 低 HDL-C の (AFCAPS/TEXCAPS), 2001 45 73 歳の男性 (5,608 人 ), vs プラセボ [5.2 年間 ] 55 73 歳の女性 (997 人 ). うち糖尿病患者 (155 人 ), 白 男女においてロバスタチンは初発の冠動脈イベントのリスクを有意に低下させた 人 89% 29)Buchwald H et al (POSCH), 1990 30)Rubins HB et al (VA-HIT), 1999 心筋梗塞の既往の脂質異常症患者 (838 人 ). 平均年齢 51 歳 冠動脈性心疾患の既往がある LDL-C 正常,HDL-C 低値の 74 歳未満男性 (2,531 人 ). うち糖尿病患者 627 人, 白人 90% 手術患者で血清脂質改善あり. 心血管による死亡も低下 ジェムフィブロジル群で, トリグリセライドの低下,HDL-C の上昇により心血管疾患の発症リスクが 24% 低下した 213

論文コード対象方法結果 31)Nakamura H et al 日本人, 高コレステロール血症 (MEGA study), 2006 (220 270mg/dL) 32)Mizuno K et al, 2008 のサブ解析 日本人女性, 高コレステロール血症 (220 270mg/dL) 33)Kushiro T et al, 2009 高血圧を有する日本人, 高コレ のサブ解析 ステロール血症 (220 270 mg/dl) 34)Tajima N et al, 2008 日本人, 血糖高値 (2,210 人 ) のサブ解析 ( 糖尿病 1,746 人, 空腹時血糖 高値 464 人 ) 群と正常血糖群 (5,622 人 ) 食事療法群 (3,966 人 ), プラバスタチン ( 10mg) 投与群 (3,866 人 ) について 5 6 年間 ( 平均 5.3 年 ) 観察し, 心筋梗塞, 心臓突然死, 狭心症, 冠動脈再建をエンドポイントとして検討した 食事療法群 (3,966 人 ), プラバスタチン ( 10mg) 投与群 (3,866 人 ) について 5 6 年間 ( 平均 5.3 年 ) 観察し, 心筋梗塞, 心臓突然死, 狭心症, 冠動脈再建をエンドポイントとして検討した 食事療法群 (3,966 人 ), プラバスタチン ( 10mg) 投与群 (3,866 人 ) について 5 年間の観察を行い, 心筋梗塞, 心臓突然死, 狭心症, 冠動脈再建をエンドポイントとして検討した 5 6 年間 ( 平均 5.3 年 ) 観察し, 心筋梗塞, 心臓突然死, 狭心症, 冠動脈再建をエンドポイントとして検討した プラバスタチン投与により, 33% の有意 (p<0.01) なリスクの軽度の低下が認められた. 心血管と脳血管を合わせたものでは 30%(p<0.01) のリスク低下が認められた プラバスタチン投与により, 冠動脈疾患は 33%(p<0.01), 脳卒中は 17%(p=0.33), 冠動脈疾患と脳梗塞を併せたイベントは 30%(p<0.005) のリスク低下が認められた プラバスタチン投与により, 冠動脈疾患 + 脳梗塞は 35%(p= 0.02), 心血管イベントは 46%(p=0.04) のリスク低下が認められた 血糖高値群においてプラバスタチンの投与により冠動脈疾患, 脳梗塞, 脳血管障害の発症は低下したが有意ではなかった. これらを併せた心血管疾患の発症についてはプラバスタチン投与により 32% の有意 (p<0.03) なリスク低下が認められた 35)4S, 1994 35 70 歳の欧州人男女 (4,444 人 )( 糖尿病患者 202 人 ) シンバスタチン 20 40mg/ 日 vs プラセボ [ 平均 5.4 年間 ] 糖尿病患者を含め, 冠動脈性心疾患の既往のある者はコレステロール低下により心血管疾患の発生が抑制される 36)Hoogwerf BJ et al(post CABG), 1999 37)Sacks FM et al, 1996 CABG 後の患者 (1,351 人 )( 薬物療法の必要な糖尿病患者 116 人 ) 血清総コレステロール,LDL-C の平均値がそれぞれ 209, 139mg/dL の心筋梗塞の既往のある患者 (4,159 人 )( 男性 3,583 人, 女性 576 人 ). プラバスタチン群 (2,081 人 ), プラセボ群 (2,078 人 ) ロバスタチンにより LDL-C を 60 85mg/dL を目標に低下させた群 プラバスタチン 40mg/ 日 vs プラセボ [5.0 年間 ( 中央値 ) 追跡 ] 60 85mg/dL を目標にした群で, 有意ではないものの, 死亡, 冠血管イベント, 脳卒中の総和が減少した 対照群と比べて, プラバスタチン群で冠動脈疾患死および非致死性心筋梗塞の発症が 24%, CABG の必要が 26%,PTCA の必要が 23%, 脳卒中の発症が 31% 減少した 38)Heilbronn LK et al, 1999 39)Ginsberg HN et al, 2010 肥満 2 型糖尿病患者 (35 人 ) 2 型糖尿病 (5,518 人 ) 異なる食事内容で 12 週にわたりエネルギー制限を行った シンバスタチンが投与されている 2 型糖尿病をランダムにフェノフィブラート投与とプラセボに分け,4.7 年間観察. 心筋梗塞, 脳卒中, 心血管死を一時エンドポイントとして検討 エネルギー制限は血糖コントロールに有用である 一時エンドポイント発症率はフェノフィブラート群 2.2%, プラセボ群 2.4% と差異なし. 脂質値によるサブ解析 (n= 941,TG 204mg/dL+HDL- C 34mg/dL) では 31% のリスク低下であった 214

15 糖尿病に合併した脂質異常症 論文コード対象方法結果 40)Lipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trial(LRC-CPPT), 1984 CABG 後の患者 (1,351 人 ) ( 薬物療法の必要な糖尿病患者 116 人 ) コレスチラミンとプラセボ群に分けた [7 年間 ] 冠動脈疾患発症, 死亡を抑制 41)Yokoyama M et al 日本人, 高コレステロール血症 (JELIS), 2007 (250mg/dL,18,645 人 ) 42)Tanaka K et al, 2008 日本人, 高コレステロール血症 のサブ解析 (250mg/dL,18,645 人 ) 43)Oikawa S et al, 2009 日本人, 高コレステロール血症 血糖高値群 ( 糖尿病および空腹 血糖高値群では EPA 投与によ のサブ解析 (250mg/dL,18,645 人 ) 時血糖 110 125mg/dL, り心血管イベントが 22%(p= 4,565 人 ) と血糖正常群 0.048) 抑制された. 血糖正常 (14,080 人 ) について,EPA 群でのイベント抑制は 18% 投与, 非投与の 2 群を 5 年間 (p=0.062) であった の観察し, 心血管イベントを検 討した 44)Bosch J et al (ORIGIN), 2012 心血管イベントリスクの高い IFG もしくは IGT,2 型糖尿病患者 (12,537 人 ) スタチン投与単独群 (9,319 人 ) と EPA(1,800mg) の併用群 (9,326 人 ) について 5 年間の観察を行い, 心筋梗塞, 心臓突然死, 狭心症, 冠動脈再建をエンドポイントとして検討した スタチン投与単独群 (9,319 人 ) と EPA(1,800mg) の併用群 (9,326 人 ) について 5 年間の観察を行い, 脳卒中の一次予防, 二次予防について検討した n-3 脂肪酸 1g( 最低 900mg 以上含有 )vs プラセボ ( とインスリン グラルギン vs 通常療法との 2 2 要因計画 ). 主要評価項目 : 心血管疾患死 [ 追跡期間の中央値 6.2 年 ] 平均 4.6 年間の観察が行われた. 冠動脈疾患では 19% のリスク低下 (p<0.048) が認められた. 両群間における血清コレステロール値には差異を認めないことから EPA の効果が魚を多く摂取する日本人においても証明された 一次予防では EPA の投与, 非投与の両群で差異を認めなかったが, 二次予防では 20% のリスク低下 (p=0.048) が認められた n-3 脂肪酸群とプラセボ群の主要評価項目に有意差を認めなかった (HR 0.98,p=0.72) 45)Simons L et al, 2004 スタチンがすでに投与されてい糖尿病 (191 人 ), 非糖尿病る 2 型糖尿病あるいはメタボ (330 人 ) に対し, エゼチミブリックシンドロームを有する例 (10mg/ 日 ) あるいはプラセボを無作為に投与.8 週間のエゼチミブ投与が,LDL-C の低下に対する影響を検討した. また, メタボリックシンドローム症例を取り上げてサブ解析を行った LDL-C 低下は糖尿病 27.3 %, 非糖尿病 22.1%,TG はそれぞれ 15.8%, 11.9 % の低下を示し,HDL-C はそれぞれ 1.5%,4.3% 上昇した. MetS でもエゼチミブの効果は同様であった. スタチン単独療法に対しエゼチミブの併用は有意な LDL-C のみならず,TG 低下にも有意に作用した 46)Gaudiani LM et al, 2005 ピオグリタゾンを 3 ヵ月以上服用して安定した 30 75 歳の糖尿病患者で LDL-C> 2.6 mmol/l(100mg/dl) を示したもの 全例にシンバスタチンが 20mg/ 日投与され,6 週間観察されたあと, 二重盲検で無作為にエゼチミブ 10mg/ 日 (104 人 ) 投与とシンバスタチン 40mg/ 日への増量とに分けて (110 人 ),24 週間観察された シンバスタチン 20mg/ 日に加えエゼチミブ 10mg 投与では LDL-C が 20.8% 低下した. シンバスタチン 40mg への増量では 0.3% であった 215

論文コード対象方法結果 47)Constance C et al, 2007 18 歳以上でアトルバスタチン 10mg を 6 週間以上服用して いる糖尿病患者で HbA1c 10% の症例 症例登録後アトルバスタチン (ATV)10mg を 4 週間服用したあと, 無作為にエゼチミブ (EZE)10mg とシンバスタチン ( SIMVA)20mg 併用群 ( EZE/SIMVA10/20, 220 人 ),EZE/SIMVA10/40 の併用群 (222 人 ),ATV 20mg 単独群 (219 人 ) の 3 群に分け,6 週間の LDL-C 低下を検討した ATV 10mg/ 日の服用時と比較して, EZE/SIMVA10/20 で 26.89%, EZE/SIMVA 10/40 で 30.13%,ATV 10 から 20mg への増量で 8.49 % の LDL-C 低下率が認められた.EZE と SIMVA の併用療法に意義がある 48)Goldberg RB et al (VYTAL study), 2006 49)Baker WL et al, 2010 メタアナリシス 50)Sattar N et al, 2010 メタアナリシス 2 型糖尿病 (1,229 人 ) 2 型糖尿病 (1,146 人 ) 2 型糖尿病 LDL-C に対するエゼチミブ / シンバスタチン 10/20mg 投与とアトルバスタチン 10 あるい は 20mg 投与との比較, また, 高用量としてエゼチミブ / シンバスタチン 10/40mg 投与とアトルバスタチン 40mg 投与との比較 16 の二重盲検比較試験 ( プラセボとの比較試験 ). インスリン感受性についてさまざまな方法 (glucose clamp, ミニマルモデル,HOMA など ) で行われた結果を解析. 単に血糖値とインスリン値の比を検討したものは除かれた 13 の二重盲検比較試験 ( プラセボとの比較試験 ). 対象 1,000 人以上で 1 年以上の観察が行われた研究が抽出. 糖尿病の診断は血糖値や主治医の報告によった [ 平均観察期間 4 年 ] LDL-C の低下率はエゼチミブ / シンバスタチン 10/20mg で 53.6%, アトルバスタチン 10mg で 38.3%,20mg で 44.6%, エゼチミブ / シンバスタチン 10/40mg で 57.6 %, アトルバスタチン 40mg で 50.9% であった プラバスタチン, アトルバスタチン, ロスバスタチン, シンバスタチンについて解析. インスリン感受性を強く悪化させるものはないと結論. ただしシンバスタチンでは有意な変化が認められた スタチン投与による新規糖尿病発症のオッズ比 1.09. スタチンのベネフィットを考慮すれば問題ないとの結論 216