検査ハンドブック

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足部について

足関節

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P26 3. 肩関節複合体の関節運動肩複合体の関節運動 P27 図 15 P28 4. 肩関節複合体の運動に関与する筋肩複合体の運動に関与する筋 P28 (2) 下制 3 行目 鎖骨下神経 鎖骨下筋神経 P28 下から 1 行目長筋神経長胸神経 P29 図 17 ( 誤 ) 2

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はじめに 児童の足部におけるアライメント不良は 衝撃緩衝機能と足部安定性の両側面の低下をもたらし 足底筋膜やアキレス腱への多大なストレスを与え その結果 損傷を引き起こす要因となり得る 特に過回内足による足部アーチの低下に着目し 足部アーチや踵骨傾斜角度を評価することは 踵部損傷の要因を検討する際に

国際エクササイズサイエンス学会誌 1:20 25,2018 症例研究 足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動が足部形態に 与える影響 扁平足症例に対しての予備的研究 嶋田裕司 1)4), 昇寛 2)3), 佐野徳雄 2), 小俣彩香 1), 丸山仁司 4) 要旨 :[ 目的 ] 足趾踵荷重位での立位姿勢保

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

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6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

A.L.P.S. Total Foot System LC


January Special 5 1 P.2 2 P.5 3 P.10 4 P.17 5 P.22

当院における足部・足関節領域のMRI

序 足は起立 歩行といった基本的な運動に直接的にかかわる器官であり, 外傷にさらされる機会が少なくない. 軽微な外傷と思われても, 慢性の足痛や足関節痛を後遺することがあり, 日常生活に支障をきたす. また, 先天性の変形のみならず, リウマチや変形性足関節症あるいは腫瘍性病変など様々な疾患によって

靭帯付 関節モデル ( 全 PVC 製 ) AS-6~AS-12 骨格の靭帯部分を 個別関節モデルとしてお買い求め頂けます 弊社カタログでは多くの選択肢の提案に努めています ご希望に合わせてお選び下さい ( 経済型関節モデル靭帯付 AJ-1~7 も良品です )

保発第 号

行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

神経叢 ) と ( 鎖骨下動脈 ) が通過する 4 鎖骨下動脈 subclavian artery は 右は( 腕頭動脈 ) から起こり 左は ( 大動脈弓 ) から起こる 5 甲状頸動脈の枝として 不適切なものを選べ 肩甲背動脈 肩甲上動脈 下甲状腺動脈 上行頸動脈 頸横動脈 6 鎖骨下動脈の枝を

膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella

ストレッチング指導理論_本文.indb

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

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両手 X 線のオーダー スクリーニング 両手正面 + 両手斜位

足底腱膜炎 ( 足の裏 ) 踵骨疲労骨折( 踵全体 ) アキレス腱付着部炎( 踵のうしろ ) 足の裏のしびれ 痛み足根管症候群母趾 ( 足の親ゆび ) が外を向いて 付け根が痛い外反母趾母趾の付け根がはれていたい そり返せない強剛母趾 それぞれの障害について 変形性足関節症 足関節の軟骨が磨耗して腫

358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcu

要旨 [ 目的 ] 歩行中の足部の機能は 正常歩行において重要な役割を担っている プラスチック短下肢装具 (AFO) 装着により足関節の運動が制限されてしまう 本研究は AFO 装着により歩行立脚期における下肢関節運動への衝撃吸収作用や前方への推進作用に対しどのような影響を及ぼすかを検討した [ 対

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

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原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

1 CAI 今月の特集は 慢性足関節不安定症 (CAI) がテーマ CAI とは 足関節捻挫を繰り返す ことで 足関節に慢性的な不安定感を抱く病 態だが スポーツ現場では非常に多くみられ るものである ここではまず小林先生に足関 節捻挫の発生に関するデータから CAI に関す る研究の現状 そして課

背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

短縮転位 尺側転位が軽度であるが改善され た ( 写真 5) 2 週後短縮転位が確認された [ 症例 3 左橈骨遠位端骨折 ] 14 歳女性負傷日 H Pm01:00 初検日 H Pm05:20 原因 : 柔道大会で相手を投げた際 道着に巻き込み 相手に乗られ負傷 腫脹中

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 八木茂典 論文審査担当者 主査 副査 大川淳 秋田恵一 森田定雄 論文題目 Incidence and risk factors for medial tibial stress syndrome and tibial stress fracture in hi

問題 5 55 歳の女性.5 年前に右肩関節周囲炎の既往がある. 約 1か月前に階段を踏みはずし右肩を強打した. 以来, 運動痛, 夜間痛が持続している. 肩関節は他動的に挙上可能であるが, 自動的には外側挙上は45 度までにとどまる 最も考えられる疾患名はどれか. 1. 五十肩 2. 上腕骨骨頭骨

m A, m w T w m m W w m m w K w m m Ⅰはじめに 中手指節関節 以下 MP関節屈曲位でギプス固定を行い その直後から固定下で積極的に手指遠位指 節間関節 以下 DI P関節 近位指節間関節 以下 PI P関節の自動屈伸運動を行う早期運動療法 以下 ナックルキャストは

今日の流れ 捻挫とは? 足の解剖から捻挫の定義まで 捻挫の受傷起点 救急処置 長期的観点から見た捻挫 再損傷予防 捻挫について 22

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外傷性肩関節前方脱臼に対する理学療法の一例 外旋位固定による保存療法 松平兼一 1) 風間裕孝 1) 1) 富永草野クリニックリハビリテーション科 キーワード : 外傷性肩関節前方脱臼 外旋位固定 肩関節後上方組織 はじめに 外傷性肩関節脱臼では前方脱臼が 95% を占めており 受傷時に前下関節上腕

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

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微弱電流の通電

結果 上記の運動の概念を得た 2010 年 10 月以降に治療を行った PIP 背側脱臼損傷 19 指のうち 6 指に ORIF を施行した 結果 PIP 関節伸展平均 -2 度 屈曲平均 96 度であった 考察 掌側板と側方支持機構や伸筋腱は吊り輪状に連結しており リンクした運動をしている PIP

手指中節骨頚部骨折に対する治療経験 桐林俊彰 1), 下小野田一騎 1,2) 3), 大澤裕行 1) 了德寺大学 附属船堀整形外科 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 2) 3) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 要旨今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対

理学療法科学 17(4): ,2002 研究論文 静的および動的荷重位における足内側縦アーチの動きと機能 Changes and Functions of the Medial Longitudinal Arch during Static and Dynamic Loading 中村浩

歩行およびランニングからのストップ動作に関する バイオメカニクス的研究

であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

0. はじめに 当院でこれまで行ってきたメディカルチェックでは 野球選手のケガに対するアンケート調査も行 ってきました (P.4 表 1 参照 ) アンケート調査で 肘 ( ひじ ) の痛みを訴えていた選手は 高校生で 86.7% 小学生で 41.1% でした また 小学生に対しては 超音波 ( エ

博士 ( スポーツ科学 ) 学位論文 脛骨内側ストレス症候群患者の再発要因と対処法の検討 Consideration for Recurrent Factor and Prevention of Medial Tibial Stress Syndrome 2015 年 1 月早稲田大学大学院スポーツ

膝関節 Ⅱ 前回に引き続き 今回も膝関節に関するトピックについて説明していきたいと思います 前回は膝蓋大腿関節の座位における検査法について説明しました 今回は仰臥位で行う膝関節の検査について 特に Q アングルに焦点を当てて 解説していきたいと思います 仰臥位検査 :Q アングル膝関節の仰臥位検査で

アクソス ロッキングプレート カタログ

浅井正孝先生お別れの会に出席して

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【股関節の機能解剖】

2015 年度手術のうちわけ ( 実績 ) セキツイ脊椎 ナンブソシキ軟部組織 椎間板摘出術 35 アキレス腱断裂手術 40 内視鏡下椎間板摘出 4 腱鞘切開術 ( 関節鏡下によるものを含む ) 0 シュコンカン 脊椎固定術 椎弓切除術 椎弓形成術 ( 多椎間又は多椎弓の場合を含む )( 椎弓形成

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

1 を語る スポーツ整形外科の立場から 渡會公治 形成に寄与しているという構造を示してい 帝京平成大学健康メディカル学部 理学療法学科 教授 一般社団法人美立健康協会理事長 整形外科医 はよく知られていますが 長腓骨筋が足の ます 後脛骨筋が足の裏に広がっているの 裏 奥深くで立方骨の真下をこのよう

歩行時の足部外反角度 外転角度最大値ならびに変化量は関連する,3) 歩行立脚期における舟状骨高最低位 (the lowest navicular height: 以下 LNH と略す ) 時の足部外反角度 外転角度は関連することとした. Ⅱ. 対象と方法 1. 被験者被験者は健常成人 20 名 (

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

症状へのアプローチ

復習問題

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

第2回神戸市サッカー協会医科学講習会(PDF)F.pptx

Ⅰはじめに が膝関節を強く内旋したときに 近位脛骨の前外側部に剥離骨折が常在すること 年 P S またこの部位に真珠のような光沢を持つ線維束が付着していることを報告したそれ以来 この線維束は m m m m と様々な名称でよばれてきた しかしながら この線維束が恒常的な構造であるかどうかについて長い

第3回 筋系

のモチベーションを上げ またボールを使用することによって 指導者の理解も得られやすいのではないかと考えています 実施中は必ず 2 人 1 組になって パートナーがジャンプ着地のアライメントをチェックし 不良な場合は 膝が内側に入っているよ! と指摘し うまくいっている場合は よくできているよ! とフ

Ⅰはじめに 中節骨基部掌側骨折掌側板付着部裂離骨折 はPI P関節の過伸展によって生じる外傷で 日常でしばし ばみられるPI P関節背側脱臼に合併して発生することや単なる捻挫と判断されるなど 見逃されること が多く 骨癒合不全による掌側不安定性 運動痛および関節拘縮を起こすことがあるこの骨折に対する

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RA 前足部変形に対する手術療法の進歩 東裕隆桑園整形外科 (2013 年第 14 回博多リウマチセミナー ) はじめに近年 RA に対する薬物療法の進歩は目覚ましく滑膜炎を抑制し 関節を温存できる症例が増えてきている しかし 強力な薬物治療でも進行する症例や以前からの変形が残存している症例は少なく

(4) 最小侵襲の手術手技である関節鏡視下手術の技術を活かし 加齢に伴う変性疾患に も対応 前述したようにスポーツ整形外科のスタッフは 日頃より関節鏡手技のトレーニングを積み重ねおります その為 スポーツ外傷 障害以外でも鏡視下手術の適応になる疾患 ( 加齢変性に伴う膝の半月板損傷や肩の腱板断裂など

葛原 / 日本保健医療行動科学会雑誌 28(2), 焦点 3 筋の不均衡を改善するためのパートナーストレッチング 葛原憲治愛知東邦大学人間学部人間健康学科 Stretching with a Partner to Improve Muscle Imbalance Kenj

退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 看護師のための 緊張が強いこどものポジショニング 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法科 脇口恭生 1

椎間板の一部が突出した状態が椎間板ヘルニアです 腰痛やあしに痛みがあります あしのしびれやまひがある場合 要注意です 対応 : 激しい運動を控えましょう 痛みが持続するようであれば 整形外科専門医を受診して 検査を受けましょう * 終板障害 成長期では ヘルニアとともに骨の一部も突出し ヘルニア同様

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文京学院大学保健医療技術学部紀要第 7 巻 2014:1-7 踵骨 - 下腿の運動連鎖と変形性膝関節症の関係 荷重位における踵骨回内外と下腿回旋の連動動態の解析 江戸優裕 1, 山本澄子 2, 保坂亮 3, 櫻井愛子 3 1 文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科 2 国際医療福祉大学大学院医療福

末梢神経障害

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膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響


1 画像検査診断のために行う画像による検査 画像検査には 超音波 ( エコー ) 検査 X 線検査 ( レントゲン検査 ) C T( コンピューター断層撮影 ) MRI( 磁気共鳴画像 ) PET( 陽電子放出断層撮影 ) などがある 2 保存療法手術をしないで治療すること 薬の内服 外用 固定 理

膝関節周囲の疼痛に対し下位腰椎アライメントの改善が有効であった一症例 ~ 神経徴候と症状との関連について~ 稲葉将史 1) 岡西尚人 1) 山本昌樹 2) 1) 平針かとう整形外科 2) トライデントスポーツ医療看護専門学校キーワード : 膝関節周囲部痛 下位腰椎伸展拘縮 神経徴候 はじめに 膝の疼

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( 参考 ) 国民年金法施行令別表 厚生年金保険法施行令別表第 及び第

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80 武凪沙, 他 態で腰椎のわずかな右側屈により 骨盤を右挙上させ下肢を後方へと振り出す これに対し本症例は 立位姿勢から上位胸椎部屈曲位 胸腰椎移行部屈曲 左非麻痺側 ( 以下 左 ) 側屈位を呈し体幹直立位保持が困難となっていた また右股関節 膝関節が左側と比べてより屈曲していることで骨盤右下

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Chapter1 Anatomic Definitions 解剖学的定義 本章の目的 以下の用語の定義を確認する 解剖学 生理学 病態生理学 ホメオスタシス 解剖学的姿勢 ( 矢状面 正中矢状面 水平面 前頭面 ) 救急隊員同士が 身体部位について互いに共通の言葉で表現できるように 適切な専門用語を

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スライド 1

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エビデンス 診察手順 1 第 8 章と趾の病態 C H A P T E R 8 と趾の病態 趾 診察手順 問 診 既往歴 現病歴 視 診 機能評価 の一般的視診の一般的分類 Feiss 線距骨下関節中間位におけるの位置の評価 趾の視診趾の位置第 1 趾の位置 内側を構成する組織の視診内側縦アーチ 外側を構成する組織の視診第 5 中骨 背の視診長趾伸筋腱 底の視診底腱膜踵骨内側結節仮骨 水泡形成 後部の視診アキレス腱踵骨踵骨後方外骨腫と踵のアライメントの視診距骨下関節中間位の評価 距骨下関節中間位の状態での一般的なの位置第 1 根中関節の位置 触 診 内側を構成する組織の触診第 1 中趾節関節第 1 中骨第 1 楔状骨舟状骨距骨頭載距突起踵舟靱帯距骨内側結節踵骨後脛骨筋長母趾屈筋腱長趾屈筋後脛骨動脈 外側を構成する組織の触診第 5 中趾節関節第 5 中骨茎状突起立方骨踵外側縁腓骨結節腓骨筋腱 背の触診列楔状骨舟状骨距骨のドーム 次頁へ続く

診察手順 問 診 118 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 119 診察手順 ( 続き ) 趾 根洞短趾伸筋下伸筋支帯前脛骨筋長母趾伸筋長趾伸筋背動脈 底の触診踵骨内側結節底腱膜中骨間の神経種中骨頭種子骨 関節と筋の機能評価 角度計検査後部の内反 外反第 1 中趾節関節の外転中趾節関節の屈曲 伸展 関節自動可動域趾屈曲趾伸展 徒手筋力テスト趾屈曲趾伸展 関節他動可動域趾屈曲趾伸展第 1 列の動き 関節安定性試験 ストレステスト中趾節関節と趾節間関節 中趾節関節 趾節間関節の内反 外反ストレステスト 関節運動評価中骨間関節根中関節中根関節 神経学的評価 L4-S2 神経根 根管症候群 趾間部神経種 血管の評価 背動脈の拍動 後脛骨動脈の拍動 毛細血管再充満試験病態と特殊検査の形舟状骨沈降テスト 凹 底腱膜可橈性扁平に対するテスト 底腱膜破裂 踵骨骨棘 根骨癒合 根管症候群背屈 外がえしテスト 中骨骨折急性骨折疲労骨折 Lisfranc 損傷 趾骨折 中骨間神経種 Mulder 徴候 強剛母趾 外反母趾 第 1 中趾節関節の捻挫 種子骨炎 問診 表 8-1 疼痛の位置により考えられる病態 疼痛の位置 病態近位 ( 踵骨 ) 遠位 ( 趾 ) 底背内側外側 軟部組織 踵骨滑液包炎 べんち 胼胝 MTP 捻挫 ばね靱帯捻挫 腓骨筋腱炎 の病態 踵骨後方滑液包炎 強剛母趾 底腱膜炎 前部捻挫 底腱膜炎 アキレス腱炎 IP 関節捻挫 底腱膜損傷 底腱膜損傷 MTP 関節捻挫 底のいぼ または捻挫 陥入爪 中骨間神経種 後脛骨神経絞扼 根管症候群 ( 根管症候群 ) 後脛骨筋腱炎 骨の病態 踵骨骨折 趾骨折 種子骨障害 中骨疲労骨折 舟状骨疲労骨折 立方骨骨折 踵骨骨棘 変形性関節症 種子骨骨折 Lisfranc 骨折 / バニオン 第 5 中骨骨折 踵骨嚢胞 あるいは感染 踵骨骨棘 Lisfranc 脱臼 強剛母趾 ( とくに基部 ) 距骨骨折 外反母趾 バニオネット 距骨癒合 IP: 趾節間 MTP: 中趾節 趾

視診 視 診 120 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 121 趾 視診 視診所見 8-1 一般的なの分類 ( 荷重 ) 扁平中間位凹 底が地面に対して垂直な状態から 3 踵が内反している内側の隆起は存在しない Feiss 線を用いると アーチは高い 踵がわずかに外反する内側の隆起は認めない Feiss 線は舟状骨の最上縁が内果先端と第 1MTP 関節底側の表面を通過する 内側の隆起 前部の外転 踵外反内側の隆起は距舟関節で生じ距骨の内転を意味する内側のアーチは低下する これは 第 1 中骨の骨頭中心 舟状骨結節 内果を結ぶラインである Feiss 線により定義される (Box 4-1 参照 ) 説明 視診所見 8-2 病的な趾 鉤爪趾ハンマートウ Morton 趾外反母趾 観察 図 偏向 骨間筋や虫様筋の拘縮 患趾の伸筋腱と屈筋腱が拘縮 第 2 趾が第 1 趾より長い状態 時間とともに 第 1MTP 関節が弛む状 している状況である 骨間 にみえるが 第 1 趾が第 2 態である 第 1MTP 関節の内側にバ 筋がきいてないことが趾の 趾より短くなることで形成 ニオンが生じる 位置を維持している される 母趾の外側への変形が 第 2 趾の機能 を妨げることもある 30 説明 MTP 関節の過伸展と PIP MTP 関節と DIP 関節の過伸 構成は問題ないが 母趾に対 第 1MTP 関節に 20 以上の角度がつ 関節 DIP 関節の屈曲であ 展と PIP 関節の屈曲 し第 2 趾が長い状態である く状態である 第 1 趾と第 2 趾が重 る 外側の 4 趾に生じる なることもある DIP: 遠位指節間 PIP: 近位指節間 趾

視診 視 診 122 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 123 趾 視診所見 8-3 距骨下関節中間位におけるの一般的構成 正常なの構成前部内反前部外反後部内反後部外反 観察 図 構成 踵は下腿軸に関して垂 中骨は後部に比較し 中骨頭は回外する 第 踵は下腿軸に対し回内し 踵は下腿軸に対し回外し 直もしくは軽度回内 て回外する 1 8 の 1 中骨の底屈のため た状態で踵は内反した た状態で脛骨に対し外 ( 外反 )(3 以下 ) であ 内反は正常である 31 前部の外反を認める 状態である 反した状態である 後 る 中骨頭は踵に対 部の外反はまれに認 し直角に交わる められる 代償 荷重時の状態において 荷重時の状態において 距骨下関節の動きにより 後部は動きが大きくな 前部は外転し回外 第 1 中骨の接地が 後部は歩行時早期に り 回内が強まる する 歩行時におい 中部の回外を引き 回内する て変形が進むと地面 起こし 凹を作る に接地したときに第 歩行時は第 1 中骨 1 中骨は浮いた状 が地面にあたり そ 態になる の結果としてすばや い回外が起こり 下 肢の衝撃を和らげる 能力が減少する 写真は Donatelli RA: Biomechanics of the Foot and Ankle. Philadelphia: FA Davis 1990 より転載 趾

触診 触 診 124 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 125 触診内側を構成する組織の触診 外側を構成する組織の触診 1 2 1 2 9 4 3 5 3 4 6 8 6 趾 10 7 11 7 5 9 8 趾 12 13 14 15 1. 第 1 MTP 関節 2. 第 1 中骨 3. 第 1 楔状骨 4. 舟状骨 5. 舟状骨粗面 6. 距骨頭 7. 載距突起 8. 踵舟靱帯 9. 距骨内側結節 10. 踵骨 11. 踵骨内側結節内側の腱 12. 長母趾屈筋 13. 後脛骨筋 14. 長趾屈筋 15. 後脛骨動脈 1. 第 5 MTP 関節 2. 第 5 中骨 3. 茎状突起 4. 立方骨 5. 踵骨外側縁 6. 腓骨結節 7. 下腓骨筋支帯 8. 長腓骨筋 9. 短腓骨筋

触診 触 診 126 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 127 背の触診 底の触診 9 10 5 4 8 11 3 4 3 2 6A 7 5 6 2 1 1 趾 趾 1. 列 2. 楔状骨 3. 舟状骨 4. 距骨滑車 5. 根洞 6. 短趾伸筋 6A. 短母趾伸筋 7. 下伸筋支帯 8. 前脛骨筋 9. 長母趾伸筋 10. 総趾伸筋 11. 背動脈 1. 踵骨内側結節 2. 底腱膜 3. 中骨間神経腫 4. 中骨頭 5. 母趾の種子骨

関節と筋の機能 関節と筋の機能 128 第 8 章と趾の病態 関節と筋の機能評価関節自動可動域 表 8-2 関節包のパターン根中関節 MTP 関節 : 母趾 MTP 関節 : 第 2 5 趾 と趾の関節包のパターンとエンドフィール (end-feel) 背屈 底屈 外転 内転伸展 屈曲屈曲 伸展 第 8 章と趾の病態 129 エンドフィール 中根関節の外転 firm( やや硬い ): 軟部組織の伸張 ( 骨間筋 関節包 靱帯 ) 中根関節の内転 firm: 軟部組織の伸張 ( 骨間筋 関節包 靱帯 ) 趾の屈曲 firm: 伸筋腱の硬さ 趾の伸展 firm: 屈筋腱の硬さ MTP 関節の外転 firm: 軟部組織の伸張 ( 骨間筋 関節包 靱帯 ) MTP 関節の内転 firm: 軟部組織の伸張 ( 骨間筋 関節包 靱帯 ) 角度計検査 趾 図 8-1 母趾の趾節関節の屈曲 伸展の自動可動域 可動域は母趾から第 5 趾にかけて減少する 角度計検査 8-1 後部の回内 回外 趾 関節他動可動域 A 図 8-2 母趾 (A) と外側 4 趾 (B) の他動的屈曲運動 B 回内 0 30 回外 0 5 腹臥位で距骨下関節を中間位にする 角度計の当て方 支点 基本軸 移動軸 内外果を 2 つに分けるようにアキレス腱上に置く 下腿の正中線に置く 踵骨の正中線に置く A 図 8-2 母趾 (A) と外側 4 趾 (B) の他動的伸展運動 B

関節と筋の機能 関節と筋の機能 130 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 131 角度計検査 8-2 第 1 中趾節関節の外転 角度計検査 8-3 中趾節関節の屈曲 伸展 他動的外転 趾 角度計の当て方 背臥位もしくは座位で距骨下関節 関節を中間位にする 屈曲 0 70 伸展 0 30 背臥位で関節を中間位とする 趾 支点 MTP 関節背側に置く 角度計の当て方 基本軸 検側の中骨上に置く 支点 MTP 関節背側に角度計を置く 移動軸 近位基節骨に置く 基本軸 中骨の正中線に置く 移動軸 近位基節骨の正中線に置く コメント MTP 関節伸展の計測には 角度計を底側に置く

関節と筋の機能 関節と筋の機能 132 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 133 徒手筋力テスト 徒手筋力テスト 8-2 趾の伸展 徒手筋力テスト 8-1 趾の屈曲 趾 開始位置 母趾 MTP 屈曲 長座位で関節を中間位とする 趾を中間位とする 固 定 中骨頭部を握ることにより前 部を安定させる 外側 4 趾屈曲 触 診 第 1 中骨頭 長母趾屈筋を触 不可能 ( 腱が深い ) 診する 開始位置 MTP 伸展 長座位で関節を中間位とする 趾を中間位とする 固 定 中骨頭部を握ることにより前 部を安定させる 外側 4 趾伸展 触診第 1 中骨背側面を触知する背の総趾伸筋腱 抵抗母指基部の背側第 2 5 趾基部の背側 趾 抵抗趾の底側外側 4 趾の底側 初期力源 長母趾屈筋腱 :IP 関節 長趾屈筋腱 :DIP 関節 (L5S1) ( 支配神経 ) (L4L5S1) 短趾屈筋腱 :PIP 関節 短母趾屈筋腱 :MTP 関節 (L4L5S1) (L4L5S1) 短小趾屈筋 第 5MTP 関節 (S1S2) 初期力源 長母趾伸筋腱 (L4L5S1) 長趾伸筋腱 (L4L5S1) ( 支配神経 ) 短母趾伸筋腱 (L5S1) 短趾伸筋腱 (L5S1) 背側骨間筋 :IP 関節伸展 (S1S2) 底側骨間筋 :IP 関節伸展 (S1S2) 虫様筋 (IP 関節伸展 ) 代償前脛骨筋腱前脛骨筋腱 二期的力源背側骨間筋 :MTP 関節屈曲 ( 支配神経 ) (S1S2) 底側骨間筋 :MTP 関節屈曲 (S1S2) 虫様筋 :MTP 関節屈曲 ( 第 1 趾 :L4L5S1 第 2 5 趾 :S1S2) 代償 IP 関節屈曲 距腿関節底屈距腿関節底屈 コメント 趾の屈筋は MTP 関節を屈曲する

関節と筋の機能 関節と筋の機能 134 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 135 趾 表 8-3 と趾の内在筋 筋動作起始停止神経支配神経根 小趾外転筋 第 5MTP 関節屈曲 踵結節外側 第 5 基節骨外側 外底側 S1S2 第 5MTP 関節外転 踵近位外側 母趾外転筋 第 1MTP 関節外転 内側踵結節 第 1 基節骨基部 内底側 L4L5S1 第 1MTP 関節屈曲の補助 屈筋支帯 前部の内転補助 底腱膜 母趾内転筋 第 1MTP 関節内転 斜頭 第 1 基節骨基部外側表面 外底側 S1S2 第 1MTP 関節屈曲の補助 第 2 4 中骨基部 長腓骨筋腱鞘 横頭 第 3 5 中骨頭底 短小趾屈筋 第 5MTP 関節屈曲 立方骨底部 第 5 基節骨底部 外底側 S1S2 第 5 中骨基部 短趾屈筋 第 2 5PIP 関節屈曲 踵骨内側結節 4 つの腱はそれぞれ内外に 内底側 L4L5S1 第 2 5MTP 関節屈曲補助 底腱膜 分かれ基節骨基部につく 短母趾屈筋 第 1 MTP 関節屈曲 立方骨内底側 4 つの腱はそれぞれ内外に分かれ 内底側 L4L5S1 後脛骨筋腱滑走部 母趾基節骨基部につく 骨間筋 背側 第 34 趾関節外転 中骨頭の横に接し 基節骨基部 外底側 S1S2 MTP 関節屈曲の補助 通る 第 2 5 趾の外側 第 3 5 IP 関節背屈の補助 骨間筋 底側 第 3 5 趾関節内転 第 3 5 中骨基部 第 3 5 基節骨基部 外底側 S1S2 MTP 関節屈曲の補助 第 3 5 IP 関節背屈の補助 虫様筋 第 2 5 MTP 関節の底屈 長趾屈筋腱 長趾屈筋腱を通り第 2 5 趾後 第 1: 内底側 第 1:L4L5S1 第 2 5 IP 関節伸展の補助 面 第 2 5: 外底側 第 2 5:S1S2 底方形筋 FHL( 長母趾屈筋 ) 角を変 内側頭 長趾屈筋背 底側 外底側 S1S2 更する 踵内側 第 2 5 MTP 関節屈曲 外側頭 の補助 踵外側 ( 平野貴章 ) 趾

関節と筋の機能 関節と筋の機能 136 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 137 趾 表 8-4 関節 趾に作用する下肢後方筋群 筋動作起始停止神経支配神経根 長趾屈筋 第 2 5 趾 PIPDIP 関節の屈曲 脛骨遠位 2/3 の後面内側 第 2 5 趾末節骨基部 脛骨神経 L5S1 第 2 5 趾 MTP 関節の屈曲 後脛骨筋筋膜 関節底屈の補助 部回外の補助 長母趾屈筋 母趾 IP 関節の屈曲 腓骨遠位 2/3 の後面 母趾基節骨底面 脛骨神経 L4L5S1 母趾 MTP 関節の屈曲の補助 骨間膜と筋膜に結合 部回外の補助 関節底屈の補助 腓腹筋 関節底屈 内側頭 アキレス腱を介して踵骨 脛骨神経 S1S2 膝関節屈曲の補助 大腿骨内顆後面 大腿と膝の関節包の一部に隣接 外側頭 大腿骨外顆後面 大腿と膝の関節包の一部に隣接 短腓骨筋 部回内 腓骨外側遠位 2/3 第 5 中骨基部の茎状突起 浅腓骨神経 L4L5S1 関節底屈の補助 長腓骨筋 部回内 脛骨外顆 第 1 中骨基部外側面 浅腓骨神経 L4L5S1 関節底屈の補助 腓骨頭 第 1 楔状骨外側 背側面 腓骨外側近位 2/3 底筋 関節の底屈 大腿骨外顆顆上線の遠位部 アキレス腱を介して踵骨 脛骨神経 L4L5S1 膝関節屈曲の補助 大腿膝窩面に隣接 斜膝窩靱帯 ヒラメ筋 関節底屈 腓骨頭後面 アキレス腱を介して踵骨 脛骨神経 S1S2 腓骨後面近位 1/3 脛骨骨幹後面のヒラメ筋線 脛骨内側縁中央 1/3 後脛骨筋 部回外 下腿骨間膜 舟状骨粗面 脛骨神経 L4S1 関節底屈の補助 脛骨外側後面 載距突起 腓骨内側近位 2/3 立方骨 全楔状骨 第 2 4 中骨基部 趾

関節と筋の機能 関節安定性試験 138 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 139 趾 表 8-5 関節 趾に作用する下肢前方筋群 筋動作起始停止神経支配神経根 短趾伸筋 第 1 4 趾 MTP 関節の伸展 踵骨前外側遠位 第 1 趾基節骨背面 ( 短母趾伸筋 ) 深腓骨神経 L5S1 第 2 4 趾 PIPDIP 関節の伸展の補助 外側距踵靱帯 第 2 4 趾趾節骨と長趾伸筋の付 下伸筋支帯の外側 着部を介して遠位趾節骨基部 短母趾伸筋 第 2 5 趾 MTP 関節の伸展 脛骨外顆 4 つの腱を介して第 2 5 遠位趾 深腓骨神経 L4 L5S1 第 2 5 趾 PIP DIP 関節の伸展の補助 腓骨前面近位 3/4 節骨基部 部回内の補助 骨間膜の近位の一部 関節背屈の補助 長母趾伸筋 母趾 MTP 関節の伸展 腓骨前面中央 2/3 母趾末節骨基部 深腓骨神経 L4 L5S1 母趾 IP 関節の伸展 骨間膜の一部に隣接 関節背屈の補助 第 3 腓骨筋 部回内 腓骨前面遠位 1/3 第 5 中骨基部背側 深腓骨神経 L4 L5S1 関節背屈 骨間膜の一部に隣接 前脛骨筋 関節背屈 脛骨外顆 第 1 楔状骨内底側面 深腓骨神経 L4 L5S1 部回外 脛骨外側近位 1/2 第 1 中骨内底側面 骨間膜の一部に隣接 関節安定性試験ストレステスト ストレステスト 8-1 中趾節関節と趾節間関節の内反 外反ストレステスト 趾の関節包のストレステスト (A)IP 関節に外反ストレスを加える (B)MTP 関節に内反ストレスを加える 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 コメント エビデンス A 背臥位あるいは座位 LCL: 外側側副靱帯 MCL: 内側側副靱帯 立位テストする関節の近位の骨を固定するテストする関節の遠位の骨の骨幹の中央近くを掴むテストする靱帯が一致せず テスト中に関節が脱臼することがあるので注意する 外反ストレス (A): 関節の内側を広げるように 遠位の骨を外側へ動かす内反ストレス (B): 関節の外側を広げるように 遠位の骨を内側へ動かす 痛みや反対側の同じ関節と比較して動揺性の増減 外反ストレス (A):MCL 損傷 裂離骨折あるいは関節の癒着内反ストレス (B):LCL 損傷 裂離骨折あるいは関節の癒着 関節動揺性が増加し とくにエンドフィールがないとき 骨折を反映している可能性がある 文献的に欠ける あるいは確定的ではない B 趾

関節安定性試験 関節安定性試験 140 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 141 関節運動評価 関節運動評価 8-2 根中関節の運動 関節運動評価 8-1 中骨間の滑走 根骨と中骨基部との間の滑走の大きさの評価 5 つの根中関節それぞれに対してこのテストを実施する 趾 第 12 中骨骨頭間の中骨間滑走の大きさの評価 5 つの中骨の間の 4 つの関節それぞれに対してこのテストを実施する 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 エビデンス 背臥位あるいは膝を伸展してテーブルの上で座位 被検者のの前に立つ片手で第 1 中骨骨頭をつかみ もう一方の手で第 2 中骨骨頭をつかむ 一方の中骨骨頭を固定し もう一方を底 背屈する外側の中骨骨頭へと移り 中骨間関節の 4 つ全てを評価するまでこの過程を繰り返す 痛みや反対側と比較して滑走の増減 横中靱帯 骨間靱帯 あるいは両方の損傷動揺性はなく痛みがある場合は 神経腫の存在を示唆していることがある 文献的に欠ける あるいは確定的ではない 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 背臥位あるいは座位は回内する膝を屈曲して踵をテーブルの端で固定する 被検者のの前に立つ あるいは座る片手で近位根骨をつかむ ( 楔状骨 立方骨など ) もう一方の手で中骨頭をつかみ 滑走させる 中骨を根骨に対して背側に滑走させ 続いて根骨に対して底側に滑走させるそれぞれの関節で繰り返す 動作に伴って疼痛が生じる反対側と比較して滑走が増減する 滑走の増加 : 靱帯の弛緩性滑走の減少 : 関節の癒着 関節の癒合による関節性変化 趾 変法近位の十分な固定を得るためにくさびやボールが必要となる エビデンス評価者内信頼性 32

関節安定性試験 特殊検査 142 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 143 関節運動評価 8-3 中根関節の運動 特殊検査 特殊検査 8-1 Feiss 線 根骨間の滑走の大きさの評価 背臥位あるいは座位膝を屈曲して踵をテーブルの端で固定する 趾 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 被検者のの前に立つあるいは座る片手で 1 つの根骨を底 背側よりつかみ固定する もう一方の手で隣接する根骨を同じようにつかむ 一方の根骨を隣接する固定した根骨に対して背側に滑走させ それから底側に滑走させるそれぞれの関節で繰り返す 動作に伴って疼痛が生じる反対側と比較して滑走が増減する 滑走の増加 : 靱帯の弛緩性滑走の減少 : 関節の癒着 関節の癒合による関節性変化 変法近位の十分な固定を得るためにくさびやボールが必要となる エビデンス 文献的に欠ける あるいは確定的ではない Feiss 線はの静止時の形状と型の一般的な評価を行うために使用する 荷重時に 第 1 中骨骨頭の底側から内果先端へ線を引き 舟状骨結節との関係を記録する 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 体重を均等にかけてリラックスした状態 被検者のの前 を肩幅に開き 体重を均等にかけて立つように 被検者に指示する体重をかけている間に 内果先端と第 1 中骨骨頭の底側を同定し印をする舟状骨結節の位置を印し 線との関係を記録する 舟状骨結節が線より上 : 凹舟状骨結節が線を横切る : 正常舟状骨結節が線より下 : 扁平 凹型は衝撃を吸収する能力が低い扁平型は過運動性であることが多い 趾 コメント Feiss 線は部非荷重時の状態で評価することもできる エビデンス 文献的に欠ける あるいは確定的ではない

特殊検査 特殊検査 144 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 145 趾 特殊検査 8-2 距骨下関節の評価 A B この手技は 距骨下関節を中間位にし 後部と前部の位置を評価する (A) 被検者の検査位置 (B) 距骨を触知し 前部を徒手整復する手の位置 ( 写真ではみやすいように被検者は背臥位になっている ) 腹臥位でをテーブルの端から下ろす健側は 股関節屈曲 外転 外旋し 膝関節を屈曲する (4 の字ポジション ) 検者位置被検者のの前母指と示指で前距腿関節 内 外側の距骨頭を触知する遠位の手の母指と示指で第 4 5 中骨骨頭を握り 軟部組織の抵抗を感じるまで徐々に背屈強制する 評価手順近位の手で距骨の位置を触診しながら 遠位の手で回内 回外させる中間位は 距骨が近位の母趾と前趾と対称的に並ぶ位置である この位置で前部と後部の肢位を確認する ( 視診 8-3 参照 ) 角度計は 距骨下関節が中間位のときの踵骨の位置を評価する目的で使用する 近位踵骨に支点を合わせる 基本軸は下腿を二分する位置にする 移動軸は踵骨を二分する位置にする 変 法 距骨下関節は被検者が立位あるいは座位 検者は被検者の前で膝立ちの状態で評価することもできる また 被検者が背臥位でも 評価できる コメント安静時のの位置は機能的な結合から判断すべきである エビデンス非荷重時 : 評価者間信頼性 評価者内信頼性 荷重時 : 評価者間信頼性 評価者内信頼性 趾

特殊検査 特殊検査 146 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 147 趾 特殊検査 8-3 第 1 根中関節の位置と可動性 A B 第 1 中骨の安静時の状態と可動性は部構造に影響し 非荷重時で距骨下関節が中間位の状態で評価すべきである (A) 内側面 (B) 外側面 腹臥位でをテーブルの端から下ろし 距骨下関節は中間位とする ( 特殊検査 8-2 参照 ) 健側は 股関節屈曲 外転 外旋し 膝関節を屈曲する (4 の字ポジション ) 検者位置第 4 中骨骨頭外側の虫様筋をつかみ 第 1 中骨骨頭の中骨の位置をみる 評価手順第 1 中骨の安静時の位置を評価し記録する第 1 中骨を底屈 背屈し それぞれの動きでの可動域を評価する 陽性所見硬く底屈した第 1 中骨は中間位に至ることができないが 柔軟に底屈した第 1 中骨は中間位に至る十分な可動性がある底屈した第 1 中骨が 外側の 4 つの中骨骨頭と比較し下降する 臨床的意味底屈の拘縮は 早い回外を引き起こし 結果的に歩行時の衝撃吸収が少なくなる 疲労骨折や種子骨の障害を引き起こす可能性がある過剰運動性は一般的な中骨痛や外反母趾変形の原因となる 34 変法定量的な評価に定規を使用することは 評価者間信頼性が低い (ICC=0.05;SEM=1.2 mm) 32 コメント前部の外反肢位は とくに第 1 中骨の底屈と混同しやすい エビデンス第 1 中骨の可動性の評価の評価者間信頼性は低い (k) 0.16 徒手的な方法と より信頼性の高い機械による方法の結果の関連性が低いことから 有効性も疑わしいことが示唆される 34 第 1 中骨の背側への可動性の機械的な測定の信頼性は低い (ICC=0.05) 32 趾

特殊検査 特殊検査 148 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 149 趾 特殊検査 8-4 舟状骨沈降テスト A B C D 舟状骨沈降テストはの回内の程度を評価する 非荷重時と荷重時の舟状骨結節の高さを測定し 下方偏位の距離を測定する 荷重は両側均等にかけるようにする 上の写真では みやすいように非検査側を移動している 両をカーペットではない床の上に置いて座る 検者位置被検者の前で膝立ち 評価手順被検者の距骨下関節を中間位にして を地面に対して非荷重で平行にする 非荷重時の状態で舟状骨結節に印をつける (A) 非荷重位でを地面につけたまま 内側縦アーチに沿うようにカードをつける 舟状骨結節と一致する高さでカードに印をつける (B) 被検者は両に均等に荷重をかけて立ち を回内で緩めておく 新しい高さの舟状骨結節を確認しカードに印をつける (C) 舟状骨の 2 つの印の間の距離をミリメートル単位で図る (D) 陽性所見舟状骨が 10 mm 以上沈降する 35 舟状骨沈降距離が制限された正常の評価は測定すべきではない 臨床的意味回内の制限あるいは過回内 コメント静的な舟状骨の沈降距離は 歩行時の回内の大きさに影響する エビデンス高い不定の評価者内信頼性 (ICC=0.61 0.96) が報告されており 検者の経験により変動する 313637 評価者内信頼性は ICC 0.61 36 0.96 31 と報告されている 評価者間信頼性は低い (ICC=0.57 0.73) 3637 前部の過度の内反 (>8 ) と舟状骨の下降の増加とに強い関連性がある 31 舟状骨沈降テストの評価者間信頼性の低さは 距骨下関節の中間位の評価の信頼性の低さと関連している 舟状骨の荷重時での最高位 ( 舟状骨沈降テストの 2 回目の測定 ) は 画像的に測定した荷重時での舟状骨の最高位と高く関連する 38 趾

特殊検査 特殊検査 150 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 151 趾 特殊検査 8-5 可撓性扁平巻き上げテスト A B C 可撓性扁平 非荷重時には正常なアーチを示す (A) 荷重時には アーチは消失する (B) 爪先立ちをすると 巻き上げ効果でアーチは戻る (C) 底腱膜炎がある場合 (C) 巻き上げテストを行うと疼痛が生じる テーブルの端に座る 検者位置被検者のの前 評価手順被検者を非荷重位とし 内側縦アーチの位置を記録する (A) 被検者を立位にし 両に均等に荷重させる (B) さらに 検査側ので片で爪先立ちさせる (C) 可橈性扁平があれば アーチが戻る 巻き上げテスト ( 底腱膜炎を特定するため使われる ) では 疼痛が生じる 陽性所見非荷重時には正常に示される内側縦アーチが 荷重時に消失する C の手順で疼痛が再現されれば 巻き上げテスト陽性である 臨床的意味荷重時に内側縦アーチが消失する場合 可橈性扁平である非荷重時にもアーチがみられない場合 硬い扁平である コメント可橈性扁平に対するテストは非荷重位で内側縦アーチがみられる場合のみ有意である エビデンス陰性尤度比 巻き上げテストは高い特異度をもつが (1.00) 感度は低い (0.24) 陽性所見は底腱膜炎との関連性が高いが 陰性所見は除外にそれほど役立たない 39 趾

特殊検査 特殊検査 152 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 153 特殊検査 8-6 根管症候群に対する背屈 外がえしテスト 特殊検査 8-7 中骨間神経腫に対する Mulder 徴候 Mulder 徴候は 中骨横アーチを圧迫し底側趾神経を圧迫することにより 中骨間神経腫の症状を再現する 歩行時の扁平の状態を再現し 後脛骨筋を緊張させる 40 長座あるいは端座 趾 検者位置 評価手順 陽性所見 臨床的意味 テーブルの端に座る 被検者のの前 検者はと趾を背屈させながら踵部 ( 踵骨と距骨 ) を外がえしさせるこの肢位を 5 10 秒継続する に放散する痛みあるいはしびれ 後脛骨神経機能不全 変法この手技の間 神経領域に沿って Tinel 徴候を確認する 検者位置評価手順陽性所見臨床的意味エビデンス 被検者のの前 片手で第 5 中骨の遠位を もう一方の手で第 1 中骨の遠位を把握する横アーチに沿って圧迫する母指と示指で症状のある中骨間を圧迫する クリック 疼痛 あるいは徴候の再現 中骨間神経腫 文献的に欠けるあるいは確定的ではない 趾 エビデンス 陽性尤度比 = 推測することができない テスト陽性の状態では 確率が高い陰性尤度比

特殊検査 神経学的評価 154 第 8 章と趾の病態 第 8 章と趾の病態 155 中骨間神経腫 神経学的評価 図 8-4 中骨間神経腫の存在の判定 消しゴム付き鉛筆の消しゴムを用いて 中骨間を圧迫し 神経終末を圧迫する 趾 長管骨圧迫テスト 図 8-6 の末梢神経の症状 趾 図 8-7 根管症候群のための Tinel 徴候の位置 後脛骨神経の走行に沿って叩打することで 症状がや趾に放散する 図 8-5 中骨骨折が疑われる場合の長管骨圧迫テスト 骨幹に沿って長軸方向に力を加える 骨折の場合 2 つの骨片を圧迫すると痛みが生じ 偽関節がみられる場合もある ( 秋山唯 )