整形外科疾患の生活に役立つ作業療法 北海道文教大学人間科学部作業療法学科金子翔拓 日本医療大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻坪田貞子
本日の内容 1 足関節捻挫に対する作業療法 2アキレス腱炎に対する作業療法 3 変形性膝関節症に対する作業療法 4 腰痛に対する作業療法 5 上腕骨外側上顆炎に対する作業療法 6 手根管症候群に対する作業療法
運動器疾患 外傷骨折, 脱臼, 靭帯損傷など脊髄損傷など Overuse( 使い過ぎ症候群 ) 繰り返させるストレスによって生じる非外傷性関節炎, 腱鞘炎, 腱付着部症, 腱炎など 退行変性加齢変化, 摩耗変化など変形性関節症など
運動器疾患に対する作業療法 どのようなイメージがありますか? 関節可動域訓練?
筋力訓練?
Stretch?
Relaxation?Massage?
作業療法 の仕事 作業療法士はリハビリテーション医療に従事する専門職 リハビリテーションとは 思想 考え方 復権 康復 作業とは 人が生活する上での総ての活動 日常生活動作 地域社会活動 就学 復職等 を作業と定義 作業療法とは 心身に障害を持った人々の作業能力を回復 させること つまり これらの人々が 再び 自己の価値観 を取り戻す事ができるよう必要な作業能力を取り戻すよう 支援する仕事 復権 リハビリテーション
Key point 機能障害 生活障害 機能障害の回復は重要だが, 生活障害の回復も重要. 作業療法は, リハビリテーション ( 復権 ) のための手段である.
演者が大切にしていること. 運動器疾患の多くは疼痛により活動制限や参加制約. 機能障害にのみアプローチしない. 生活障害の改善のために, アプローチする機能障害が改善するのか, しないのかを評価. 疼痛の無い状態で生活 ( 作業 ) をしてもらうことで, 機能障害の改善にも相乗効果があると考えている.
足関節捻挫 歩行時痛, 階段昇降時痛などなどが生じる
急性期なら
底屈 背屈時の腓骨の動き 底屈にて腓骨は前方へ 背屈にて腓骨は後方へ
慢性期, 急性期の一部 遠位脛腓関節の位置異常が生じるとされる. テーピングにて修正.
対象者の足関節捻挫は固定すべきなのか, 否かを含めて評価. 遠位脛腓関節の位置異常の場合, テーピングによって修正し, 疼痛無く歩行や階段昇降して生活してもらうことで, 改善していく.
アキレス腱炎 アキレス腱の反復した滑走により, 腱停止部に micro-rapture が生じる. 歩行時痛など
テーピング 腱の走行を内側方向へずらすことで, 腱滑走時の軟部組織との滑走抵抗を軽減.
変形性膝関節症
疼痛による生活障害 歩行時や階段昇降時の疼痛. 正座が出来ない.
内側型膝 OA 大腿筋膜張筋や外側広筋によりパテラが外側へズレル. 内側広筋の筋力が低下してくる. 下腿が外旋してくる. 膝関節屈曲時の下腿の内旋が減少する. パテラ外側にズレてくる. 疼痛の原因のひとつ.
テーピング パテラの位置をテーピングで内側へ修正.
日常生活での指導 下肢を内旋させることで疼痛を軽減.
腰痛症
腰痛の病態 1. 病期による分類 2. 部位による分類 3. 疾患別分類
1. 病期による分類 (1) 急性腰痛 2 週間以内に約 50~60%, 3~4 ヶ月以内に 80~90% が緩解する. (2) 慢性腰痛 ( イ ) 慢性再発性腰痛急性腰痛を繰り返し, 運動療法による耐性改善が必要. ( ロ ) 慢性持続性腰痛心理 社会的要因が大きく影響し, 認知行動療法などのアプローチも必要.
2. 部位による分類 (1) 椎間板性 : 腰痛の 40% (2) 椎間関節性 : 腰痛の 15~20% (3) 仙腸関節由来 : 腰痛の 20~25% (4) 筋 筋膜性 : 上記 (1)~(3) により長期間にわたる不良姿勢の継続や繰り返しがストレスになり惹起される場合が多い.
3. 疾患別分類 (1) 椎間板ヘルニア : 5 年後の保存療法で, ADLでの支障が残存している患者は10% で, 予後は良好. (2) 腰部脊柱管狭窄症 : 馬尾型, 神経根型, 混合型があり, 神経根型は経過良好である. (3) 腰椎分離症 腰椎分離辷り症 : 長期的に50% 以上で腰痛は残存するが, ADL 上に支障をきたすことは少ない. (4) 変性辷り症 : 40 歳以降の女性に好発し, 上記 (2) と同じ経過. (5) 姿勢性腰痛症 : 画像診断などで病名のつかない腰痛全体の85% とされる非特異的腰痛の大多数を占める. 脊椎矢状面で, 腰仙角が30 以上と増加, 腰椎前弯が強いケースが多い.
脊椎 ( 腰椎 ) 脊髄 椎間板 椎間関節 神経 髄核
髄核 椎間板由来の疼痛
後方 前方
後方 前方
不良姿勢により椎間板が後方に突出しやすくなる. 椎間板が後方に突出することにより脊髄を圧迫.
椎間板由来の腰痛には 腰を曲げないようにする. 良い姿勢を keep. 腰椎伸展運動が疼痛を軽減することが多い.
腰部脊柱管狭窄症 腰痛 下肢痛 間歇性跛行 坐位にて休息をとると回復.
良姿勢をとることで脊柱管が狭窄し症状が増悪. 体幹伸展にて症状が増悪.
脊柱管狭窄による疼痛には 腰椎の後弯を作ってあげる. 体幹屈曲運動が効果をしめすことがある.
仙腸関節由来の腰痛
仙腸関節の評価 骨盤の後方回旋位. 大腿直筋伸張テストの陽性 股関節内旋制限 パトリックテスト陽性
仙腸関節由来の腰痛には 骨盤ベルト 良姿勢
筋 筋膜性腰痛 長時間の不良姿勢による腰背筋膜へのストレス 不良姿勢以外では疼痛は出現しない
筋 筋膜性腰痛には 良姿勢 温熱 ( 筋血流量の増加 ) 腰背筋膜のストレッチ マッサージもOK
上腕骨外側上顆炎
はじめに 肘外側部痛症候群 (lateral elbow pain syndrome) 原因が関節外病変の場合 : テニス肘 ( 腱付着部炎 ), Radial tunnel syndrome 関節内病変の場合 : 滑膜ヒダ障害, 滑膜炎, 輪状靱帯の変性 柔軟性の低下, 腕橈関節軟骨変性 難治性のテニス肘ではこの双方が存在し, 治療に難渋する.
病態 生体力学的な弱点といえる ECRB 付着部での障害 (enthesopathy) がテニス肘の病態, ECRB は総指伸筋 ( 以下,EDC) をはじめとする前腕伸筋群と共通腱を形成し, 肘関節外側側副靱帯や輪状靱帯, さらには関節包や滑膜ヒダとも一塊, もしくは連続性を有しているため,EDC や滑膜ヒダが原因であってもテニス肘と同様な症状を呈す.
病態 病理所見では局所の炎症性変化は乏しく, 血管増生や膠原線維の配列の乱れが主体になるため, 本疾患は上腕骨外側上顆における ECRB の急性炎症というより, 血管線維性の慢性腱症といえる. また, 本症の基盤には加齢による局所の退行性変性が強く関与.
病態 上腕骨外側上顆には短橈側手根伸筋を含めた前腕伸筋群の共通腱や肘関節外側側副靱帯, 輪状靱帯が融合した状態で付着している. 病態の本質は短橈側手根伸筋の牽引力による起始部の障害だが, 前述した解剖学的特性から総指伸筋や外側側副靱帯, 輪状靱帯が原因であっても上腕骨外側上顆部の疼痛が生じる.
画像検査 テニス肘の画像検査 a:x 線写真. 異常所見はない. b: 磁気共鳴撮像法 T2 強調画像. 短橈側手根伸筋起始部 ( 白矢印 ) の高輝度変化を認める.
MRI 画像 (T2 強調像 )
関節外病変の所見 理学所見 上腕骨外側上顆の圧痛 Thomsen test の陽性 Middle finger extension test の陽性 Chair test の陽性 関節内病変の所見 腕橈関節圧迫テストの陽性 Fringe impingement test の陽性 肘関節以外の所見 Horizontal flexion test の陽性
徒手的検査法 ( 関節外病変 ) < Thomsen test > < middle finger extension test > < chair test >
徒手的検査法 ( 関節内病変 ) < fringe impingement test > 前腕回内位に肘伸展ストレスを加える < 腕橈関節圧迫テスト >
徒手的検査法 <Horizontal flexion test(a: 陽性, b: 陰性 )> 大円筋の緊張状態を反映する HFT
上腕骨外上顆炎の一般的な治療 ステロイド 安静 装具 ( テニスバンド 中指伸展防止 ) 物理療法 ( ホットパック 超音波 レーザー ) リラクセーション ストレッチ 筋力増強訓練 手術療法 慢性化に対して ( 保存治療 6 か月以上経過 )
保存療法 ( バンド ) 30~40mmHg で巻く 活動時 120mmHg ECRB の起始部の負荷を 13~15% 減少させる. J Hand Surg 28-A:279-287,2003 バンドの位置は手関節から 80% の位置が有効. J Orthop Sports Phys Ther 38(5):257-261,2008 従来型 (ECRB の圧迫 ) より新型 ( 中指伸展防止 ) の方が疼痛に対して有効. PT ジャーナル 40(12):1049-1054,2006
80%
ECRB および ECRL のストレッチング a 短橈側手根伸筋のストレッチ肢位. 肘関節伸展, 前腕回内で手関節を他動屈曲 尺屈させることで, 短橈側手根伸筋を最大にストレッチさせることが可能である. b 長頭側手根伸筋のストレッチ肢位. 肘関節伸展, 前腕回内で手関節を他動屈曲させることで, 長橈側手根伸筋を最大にストレッチさせることが可能である.
他の治療法 テーピング療法 : 大円筋の過緊張による上肢内旋位を修正. 上腕二頭筋の走行を修正. 関節 mobilization: 橈骨頭の前方偏位を修正. 関節運動に伴う軌跡を修正. 手関節伸筋群の遠心性収縮 exercise: コラーゲンの産生とそれぞれのコラーゲン線維のクロスリンクに有利に働き, 腱再生を促進. 橈骨輪状靱帯のストレッチング : テニス肘症例では回内制限を認める症例が散見.
テーピング療法のための評価 テーピング実施前の評価 (a: 上腕二頭筋筋腹および停止腱を外側にずらす. b: 上腕二頭筋を外側にずらしたまま手関節伸展に抵抗を加える )
テーピング テーピング療法の実際 (a: 上腕二頭筋筋腹内側にテーピング先端を貼付し, 緊張加えて巻く. b: テーピングは二重に巻き, 二巻目は一巻目と少しずらして貼付する.) 金子翔拓, 池本吉一 : 北海道作業療法. Vol.28, No.2, 78-83, 2011.
関節 mobilization Lateral glide (a: 自動屈曲運動, b: 自動伸展運動 ) 上腕骨を外側より把持し, 前腕の尺側より尺骨をもう一方の手で把持し, 肘関節自動屈曲 伸展運動を行ないつつ, 尺骨および橈骨の橈側への他動的滑り運動を行う手技. Vicenzino B, Paungmali A, Buratowski S, et al. Man Ther, 2001.
ベルトを用いた lateral glide
手関節伸筋群の遠心性収縮 ex
腱付着部症に対する遠心性収縮 ex Eccentric exercise とは, 筋の遠心性収縮を用いた訓練. 求心性の収縮と比較し腱に与える負荷が 20% 増加. コラーゲンの産生とそれぞれのコラーゲン線維のクロスリンクに有利に働き, 腱再生を促進. また, 増生した神経線維を減少させ, 痛みの伝達物質を産生を抑制し, 付着部の疼痛を軽減. Rees JD, et al. Rheumatology, 2008. Magnusson SP, et al. Nat Rev Rheumatol, 2010. Nakamura K, et al. J Orthop Sci, 2008. Knobloch K, et al. Am J Sports Med, 2006.
橈骨輪状靱帯のストレッチング 前腕回内運動時, 橈骨頭は回転運動ともに外方かつ前方へ移動. 橈骨頭の運動を許容する LCL, 輪状靱帯の柔軟性の欠如が疼痛の要因のひとつ. 林典雄. 理学療法学, 2010. 肘関節 45, 前腕回外位から肘関節屈曲 回内させながら, 橈骨頭を外側に突出させる.
まとめ テニス肘には関節外 内の 2 つの病変がある. ストレッチや筋力訓練, テニス肘バンドを中心に実施し, 症例によってはテーピングや Mobilization も実施すべきである. 近年は, 遠心性収縮を用いた運動療法が用いられており, プログラムに入れていくべきである. どの症例にどの治療法が効果的であるかは, これからの課題である.
手根管症候群 横手根靱帯
はじめに 手根管症候群 (Carpal tunnel syndrome; 以下 CTS) 正中神経領域の知覚, 運動障害を病態とする最も頻度が高い絞扼神経障害. Nakasato YR, 2003. 50 歳代中心, 1:2~5 で女性に多く, 利き手の発症が多い. Hamann C et al, 2001. 職業は CTS を悪化, 手関節を中間位からの頻繁な偏位や, 力, 振動や機械的刺激が CTS を悪化させる. Szabo RM,1993.; Geoghegan JM, 2004.
CTS の症状 手内筋の麻痺 手のしびれ感や疼痛進行期では手内筋の麻痺 ( 高頻度に両側性 ) 日常生活動作を著しく障害し QOL を低下する
CTS の病態特徴 手関節や手指の過剰な運動が発症原因の一つ 屈筋腱滑膜の肥厚 炎症 横手根靱帯 (TCL) の肥厚 腱滑膜や TCL の肥厚による手根管内スペースの狭小化
身体所見 ; CTS の診断 正中神経領域の知覚低下, Phalen test 陽性, Tinel 徴候陽性, 母指球筋筋力低下や萎縮. 電気生理学的診断 ; 神経伝導検査にて伝導速度遅延. 画像診断 ;MRI や超音波が注目. 超音波は神経動態の評価, MRI は定量的な評価. Jarvik JG, et al. Neurology, 2002
手根管横断面積 (cross-sectional area; 以下 CSA) について 大菱形骨 有鉤骨レベルで評価. CTS では, CSA が増大, 横手根靱帯が掌側に張り出す. Mesgarzadeh, 1989. Jarvik JG, et al. Neurology, 2002. CSA を増大させる徒手的保存療法 (HET) により症状の改善. 金子, 坪田ら, 2011.
CTS の治療 治療戦略 : 病期により異なる. 1 保存療法 : 急性期滑膜の腫張の軽減で手根管内圧が低下, 正中神経への減圧を目的に, ステロイド注射やスプリントには短期的には一定の効果. Sevim S et al, 2004. 2 手術療法 : 慢性期または保存療法に抵抗する場合正中神経の除圧を目的に, 観血的手根管開放術または鏡視下手根開放術を施行. Gartsman GM et al, 1986.; Richman JA et al, 1989. 臨床における治療成績 : 保存療法と外科的療法の比較 : Nancollas MP et al,1995. 1) 手術が保存療法よりも優れている. 2) 術後に再発する症例や遺残症状を呈する症例が存在する. Gerritsen AA et al, 2002.
評価 Tinel sign フリック sign 見るのはこれらだけでいいですか??
重要 頚椎との鑑別をすること ( しびれの領域も再確認 ). 正中神経領域だけにしびれがあるか? 上肢にはないか ( 前腕も )? 急性期 ( 炎症期には前腕遠位部にもあることあり ) 小指には? 手背には? 細かく問診と評価を実施.
頚椎疾患との鑑別 ( 座位 ) 頚椎屈曲位をとらす 頚椎の椎間孔を拡大して, 症状の軽減があるかをみる. 頚椎を症状側と反対側に側屈 頚椎の椎間孔を拡大し, 症状の軽減があるかをみる. 頚椎を症状側と同側に側屈 頚椎の椎間孔を狭小化させ, 症状の増大があるかをみる ( スパーリングテストを実施しても可 ). 頚椎のリトラクションを実施し, 頚椎椎間板由来の症状がないかを確認.
頚椎疾患との鑑別 ( 背臥位 ) 頚椎のトラクション 頚椎の椎間孔を拡大して, 症状の軽減があるかをみる. 肩甲帯を挙上させる 胸廓出口との鑑別で, 挙上によって症状が軽減するかどうかを確認. 症状側の肩関節を外転させる 症状側の神経のテンションを緩めることで症状が軽減するかどうかを確認.
治療方法の選択 アイシング 温熱 装具療法 前腕リラクゼーション 神経滑走訓練 正中神経ストレッチング 横手根靱帯ストレッチング (HET) どれにしますか??
急性期 ( 炎症期 ) 安静時痛あり 夜間痛または夜間しびれによって目覚めることあり 動作により症状の増減あり HET にて症状の増大あり ( 横手根靱帯のストレッチが逆に手根管の中の炎症を圧迫してしまう場合は, 急性期の炎症症状が強い ) アイシング (1 回 15 分, 3 時間おき ), 装具療法
装具療法
亜急性期, 回復期 温熱 装具療法 前腕リラクゼーション 神経滑走訓練 正中神経ストレッチング 横手根靱帯ストレッチング (HET) どれにしますか??
Horizontal extension technique( 以下 HET 手技 ) とは CTSの治療に利用. 横手根靭帯を弛緩 伸張させる. 効果 : 1 靭帯の粘弾性を変化させ, 手根管内に存在する正中神経へのストレスを軽減させる. 2 反復的な圧迫で, 過剰な静脈血を手根管内より外へ絞り出して鬱血を軽減させ, 動脈血が手根管内に流入することによって酸 素化が促進される. Shacklock, 2005. 金子翔拓, 池本吉一, 青木光広, 坪田貞子, 内山英一 : 手根管症候群症例に対する horizontal extension technique の効果. 運動 物理療法. 22(4):431-435, 2011.
HET の実際 1) 検者の左右の示指と母指で, 手関節, 第 1, 第 5 中手骨を内側と外側より挟む. 2) 検者は一方の手で被験者の第 1 中手骨と舟状骨を保持, 他方の手で有鈎骨, 豆状骨, 第 5 中手骨を保持. 3) 検者の母指で被験者の手関節背側部に腹側方向へ圧迫, 検者の示指で手の橈側部と尺側部を互いに引き離す力を加える. Shacklock, 2005.
HET 実施 or 非実施 実施して症状の増大がある場合, 概ね急性期が多い ( 自験例 ), そのため固定する 実施して症状が軽減する場合, 治療法として実施していく 症状の増減がない場合, 神経の柔軟性や滑走性に問題あるか? 次の検査へ
HET による症状の変化に着目 初回 HET による症状の増悪と関連のある項目に, 夜間痛 (p=0.0001), 罹病期間 (p = 0.012) の 2 項目が統計学的有意差を認めた. 症状軽減 症状増悪 夜間痛 罹病期間
I 群における罹病期間は 15.4 日 (7-21), 夜間痛を I 群全例で認めたことから, I 群の病期は炎症期であると考えられ, HET は炎症期の症例に実施した場合, 症状が増悪する可能性が示唆. 一方, D 群の症例は罹病期間が 90 日 (30-180) で, 夜間痛が認められない亜急性期から回復期の症例が該当しており, HET は亜急性期から回復期の症例に効果を示す可能性. 症状軽減 亜急性期, 回復期 症状増悪 炎症期
神経滑走訓練 or 正中神経ストレッチング 頚椎の側屈と組み合わせた神経の柔軟性の評価を実施する. 上肢の外転角度 ( 緊張が高い, または低い ) は, 左右差を比較. 上肢を少しずつ外転させていき, 頚椎を側屈させたときの頚椎の抵抗感を評価する.
神経滑走訓練 術後のセルフエクササイズや, 保存療法での自宅でのエクササイズに用いる.
正中神経ストレッチング 抵抗感のある外転角度の少し手前で外転を止め, 手関節の背屈を実施していく. 自宅では壁を使用し, 壁に手をついて頚椎の反対側への側屈を指導する. 万歳体操 ( 手関節を背屈位に固定し, 両上肢を同時に外転させていく ) をセルフエクササイズにする.
慢性期 自験例では, 神経ストレッチングが効果的なようであるが, 中には装具療法が効果を示したり, HET が効果を示す症例もあり. Atrophy がある場合は, 症例の強い希望がない限りは手術を選択すべき. Atrophy がある症例で保存療法を実施した場合, 治療を受けたという満足感はあるが, 筋委縮の改善やピンチ力 握力の改善にはならない. DASH スコアが上がったりすることもあるが, 精神的な充足感によることが多い ( 満足できるほどの保存療法を受けていないため ).
ハンドル操作時の前腕肢位に着目 前腕筋群のリラクセーション 神経滑走訓練 手関節固定装具の装着 特に訴えの強かった自動車運転時のしびれの増悪の軽減を目的に, ハンドルを握る際の前腕肢位について, 前腕肢位の変更の提案.
前腕肢位による影響 前腕回内位 45 で手根管内圧が高く, 前腕回外位でのスプリント固定推奨. ハンドル操作やキーボードタイピングといった前腕回内位での手の使用により症状の増悪. 前腕回外位にて手根管内の容積が増大し, 正中神経へのストレスが減少. Luchetti R, et al. J Hand Surg, 1994
本日のまとめ 1 足関節捻挫に対する作業療法 2 アキレス腱炎に対する作業療法 3 変形性膝関節症に対する作業療法 4 腰痛に対する作業療法 5 上腕骨外側上顆炎に対する作業療法 6 手根管症候群に対する作業療法 上記の疾患に対する評価 治療, そして生活障害に対してどのようにアプローチしていくか.