H. Hamano,. 長柱の座屈 - 長柱の座屈 長い柱は圧縮荷重によって折れてしまう場合がある. この現象を座屈といい, 座屈するときの荷重を座屈荷重という.. 換算長 長さ の柱に荷重が作用する場合, その支持方法によって, 柱の理論上の長さ L が異なる. 長柱の計算は, この L を用いて行うと都合がよい. この L を換算長 ( あるいは有効長さという ) という. 座屈荷重は一般に, L したがって, 座屈応力度は L ( L / r) これは, オイラーの公式といわれるもので, 一般に L/r> の場合に適用される. また, を細長比という.r は断面 次半径である. 換算長 L と, 実際の長柱の長さ との間に L L の関係がある. は長柱の支持方法によって決まる係数で, これを換算係数という. (.) (.) (.3) L= μ =.5 L.7 L= L=.5 μ = μ = 図. 換算長と換算係数 は荷重に対する抵抗の強さを示しており, 上図の左の系を基準 とすると, 左から : : 8 : 6 の 割合になっている. たとえば, 両端単純支持の長柱は, 一端固定他端自由の長柱の 倍の強さを持っていることを示している.. 各種長柱公式 前に求めた両端ヒンジの長柱は Hooke の法則が成り立つ範囲で成立する. すなわち, この式は比例限度 よりも小さい範囲で適用しなければならない. E より E (.) 5 この式において E. N/mm, 35N/mm とすると, は約 9 となる. すなわち, は限界細長比よりも大きい範囲で成り立つ. これ以外の範囲 では次のような実験公式を用いる.
H. Hamano,. 長柱の座屈 - ) 直線式 ( テトマイヤー式 ) ab (a, b: 材料の性質から定まる定数 ) ) 双曲線式 ( ゴルドン ランキン式 ) a (a, b: 材料の性質から定まる定数 ) b 3) 放物線式 ( ジョンソン式 ) ab (a, b: 材料の性質から定まる定数 ) (.5) (.6) (.7) これらの式の関係は次図のようになる. 短柱 テトマイヤーの式 オイラーの公式 ジョンソン式 ランキン式 図. 各種実験公式 わが国の鋼道路橋示方書では SS,SM に対して許容応力度を次のように設定している ( 単位は N/mm ). L / r 8 : 8 L / r 9 : 9 L / r : a a a L.8 8 r L 6 7 r (.8)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -3.3 各種長柱の座屈荷重.3. 両端ヒンジ柱の座屈荷重 両端ヒンジの柱に集中荷重 が軸方向に作用している場合を考える. 支点 より の点のたわみを とすると, この点での曲げモーメントは M (.9) d M ここで k とおくと d k が得られる. 式 (.) の一般解は次のように得られる. cos k Bsin k ここに,,B は積分定数である. 境界条件を適用すると : : Bsink 式 (.) の第 式において B が であれば式 (.3) は成り立たないから B とおくと sink (.5) この式を座屈条件式という. これより k nπ ( n,, ) (.6) これを式 (8.) に代入すると n π (.7) したがって, たわみ式は式 (.3) より nπ Bsin (.8) この式の B は不定であり, 形状は決まらない. ここでは,n が最小 (n=) の場合が意味を持ち, 座屈荷重は次のようになる. π (.9) したがって, 座屈応力度は E E (.) / r この式で, r I / は断面 次半径, / r は細長比を表す. 図.3 式 (.9) は Euer の座屈荷重といわれ,Hooke の法則が成り立つ範囲で成立する. 両端ヒンジの柱 B (.) (.) (.) (.3) (.)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -.3. 一端固定 他端自由の柱の座屈荷重 図において点 の曲げモーメントは ( ) M d これより次式を得る. d k k ここに k 式 (.3) の一般解は cos k Bsink この式の,B は積分定数である. 境界条件を適用すると : d : これよりたわみは B ( cos k) (.7) この式で は不定であるが, : より cos k が得られる. ここで であるから座屈条件式は cos k (.8) これを満足する最小の根は k π であるから, 座屈荷重は π ( ) 座屈応力度は σ π π E r π ( ) λ この式で, r I / は断面 次半径, / r は細長比を表す. E (.) (.) この系の強度は式 (.3) より両端ヒンジの場合の / であることが分かる. 図. B 一端固定 他端自由の柱 (.3) (.) (.5) (.6) (.9) (.3)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -5.3.3 両端固定の柱の座屈荷重 両端ヒンジの柱に集中荷重 と, 点,B のたわみ角が となるような曲げモーメント M が作用している場合を考える. 支点 より の点のたわみを とすると, この点での曲げモーメントは (.3) M d これより d k k ここに k 式 (.33) の一般解はつぎのようになる. cos k Bsin k ここに,,B は積分定数である. 境界条件を適用すると : d : B したがって, たわみ式は式 (.6) より ( cos k) d また, :, より cos k および sink この座屈条件式を満足する最小値は k となる. したがって, 座屈荷重は π (/ ) 座屈応力度は σ π π E r π E ( / ) λ この式で, r I / は断面 次半径, / r は細長比を表す. この系は, 式 (.) より両端ヒンジの柱の 倍の強さを示している. 図.5 両端固定の柱 B (.3) (.33) (.3) (.35) (.36) (.37) (.38) (.39) (.)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -6.3. 一端固定 他端ヒンジの柱の座屈荷重 両端ヒンジの柱に集中荷重 と, 点 のたわみ角が となるような曲げモーメント M が作用している場合を考える. この場合, 釣合いが成立するように両端に垂直反力 Q (.) が図示のように作用する. B Q Q 図.6 一端固定 他端ヒンジの柱 支点 より の点のたわみを とすると, この点での曲げモーメントは Q( ) M d Q ( ) これより d Q k k ( ) ここに k 式 (.) の一般解は Q cosk Bsink ( ) ここに,,B は積分定数である. 境界条件を適用すると Q : d Q : B k したがって, たわみ式は式 (.6) より Q cos k sink( ) k また, : より次の座屈条件式が得られる. (.) (.3) (.) (.5) (.6) (.7) (.8) tan k k この式を満足する値は.9 k.93, π (.7). 7.75,.9,.66, π したがって, 座屈応力度は π π E π E σ (.7) λ.7 r この式で, r I / は断面 次半径, / r は細長比を表す. この系は, 式 (.5) より両端ヒンジの柱の 倍の強さを示している., このうちの最小値をとって座屈荷重は (.9) (.5) (.5)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -7.3.5 任意横分布荷重が作用するはりの座屈微分方程式 一般に横荷重の作用する座屈の微分方程式を導く. 軸方向荷重 と横荷重 q() が作用した場合を考える. q() M+dM Q B M Q+dQ (a) (b) (c) q d 図.7 任意分布荷重の作用する単純支持の柱 微小要素 を取り出し, それが変形した状態を図 (c) とする. dq V : Q q Q( dq ), q つぎに d M : M q ( Q dq ) ( M dm ) 次の微小項を無視すると Q dm d ゆえに dm d Q 回微分して d M d dq ここで, d M d d M, 式 (.57) の第 式と式 (.5) を式 (.56) に代入すると d d q ここで,q = とおくと d k d, ただし k これが横荷重の作用しないときの座屈の微分方程式である. この一般解は cos k B sin k C D 式 (.59) は横荷重 q() が作用するときの座屈微分方程式である. この式より d k d k q この式の一般解は q cosk B sink C D 式 (.6) に境界条件を適用すれば解が得られる. (.5) (.53) (.5) (.55) (.56) (.57) (.58) (.59) (.6) (.6) (.6)
H. Hamano,. 長柱の座屈 -8 [ 例題.] 次の座屈応力度を求めよ [ 解 ] ) の場合 : 曲げモーメント : ) M ( d M ( ) E I E I ここで k とおくと d k k この式の一般解は次のように得られる cos kbsin k ここに,,B は積分定数である. d ksin k kbcos k 境界条件 : : より B tan k EI.8 曲げ剛性の変化する柱 ) の場合 : 曲げモーメント : ) M ( d M ( ) ここで k とおくと d k k この式の一般解は次のように得られる Ccos kdsink ここに,C,D は積分定数である. d kcsin k kdcos k 境界条件 : : より C : より D したがって, cos k ) ( 連続条件 ; : より cos k cos k B sin k : より k tan k tan k k ここで, k k の特別の場合には
H. Hamano,. 長柱の座屈 -9 tan となるから が得られる. よって座屈荷重は となる. また, 座屈応力度は r E E E / r ここに, r I / は断面 次半径, / r は細長比を表す. [ 例題.] 作用荷重 =tf, 長さ =m の H 型鋼の座屈荷重を求めよ ( 工学単位 ). H 型鋼 : 3 3 5 Y [ 解 ] 細長比は 53. r 7.55 ) 鋼材 SS の場合 : 5 3.9 H 型鋼の座屈 3 規格表より I I,cm 6,75cm 8.cm r 7.55cm 93 よりテトマイヤーの式を使う. 8.( ) 8.(53. ) a ゆえに, 座屈荷重は 38.kgf 3.9tf tf a ) 鋼材 SM9 の場合 : 5 8 よりテトマイヤーの式を使う. 9 3( 5) 9 3(53. 5) a a 6.8kg/cm kg/cm 6 8. 667.kgf 66.5tf tf