ガス市場について

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2007年12月10日 初稿

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需要国へと変貌する東南アジアの需要国へと変貌する東南アジアの

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原稿メモ

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目 次 Ⅰ. 今後の電力需給見通しと燃料について Ⅱ. 原油 重油を巡る状況について Ⅲ.LNGを巡る状況について IV. 石炭を巡る状況について V. 電力の燃料調達について ( まとめ ) 2

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要 ( 平成 22 年 11 月 ) 資源エネルギー庁総合政策課編

北米からの原油供給量は 2011 年は前年比日量 +21 万バレル増であったが 2012 年は前年比 +158 万バレル増となり 2013 年は +130 万バレル増 2014 年は +92 万バレル増と見込まれている 北米を含めた OECD 先進諸国からの供給は 2011 年は +1 万バレル増

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

欧州天然ガス・LNGの現状と見通し

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参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日


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仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

確実に縮小する国内の石油市場 1 我が国の石油製品需要は ピーク時の 1999 年から 3 割減少 2030 年までに更に約 2 割減少する見込み 我が国の石油精製能力と石油製品需要量の推移 我が国の石油製品需要量の見込み 石油精製能力 ( 万 BD)

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で

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原発依存低下に伴うエネルギー政策の課題と解決策について

特集 平成 2 5 年 5 月 2 2 日東京税関調査部調査統計課 金の輸出入 2012 年の世界の金需要は 4,405 トン 2012 年に合金も含む金を日本は 132 トン輸出し 11 トン輸入しています 日本の 2006 年から 2010 年の平均年間金産出量は 10 トン足らずですが 200

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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< 目次 > 1. 機関の概要と事業環境等 2. 平成 30 年度要求の概要 3. 編成上の論点 1 産業投資の効率的 効果的な活用 4. 編成上の論点 2 収益性の確保

扉〜目次

目次 Ⅰ エネルギー供給の概要 1. 主要国の一次エネルギー供給構成 1 2. 主要国の石油輸入依存度 2 3. 我が国の一次エネルギー供給状況の推移 3 Ⅱ 石油 1. 世界の石油消費量の推移 4 2. 我が国の石油需給原油輸入状況 ( 国別 ) 5 製油所の能力と立地状況 6 石油製品生産量の推

スライド 1

資料 6 LNG 政策の展開 平成 30 年 11 月 資源エネルギー庁 資源 燃料部

(2) 主要シェール オイル鉱床シェール オイルの 3 大産地 ( テキサス州のパーミアン地域とイーグル フォード地域 ノース ダコタ州のバッケン地域 ) での生産量は 全体の約 50% を占めている 広い鉱床を有し 生産性 経済性に優れるテキサス州中西部パーミアン堆積盆地に開発が集中している 20

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

中国国内需給動向と中露石油ガス貿易

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将来の原油・天然ガス価格見通し(2013)

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(3) インドネシアインドネシアの電力供給は 石炭が 5 割 コンバインドサイクル 2 割 ディーゼル 1 割 水力 1 割 その他 1 割となっている 2015 年の総発電設備容量は PLN 3 が約 8 割 IPP が 2 割弱を 残り数 % を自家発電事業者 (PPU) が占めている 同国で

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することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

包括的アライアンスに係る基本合意書の締結について

熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

2 Ⅰ. 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の動向 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の伸び アジア 太平洋における油種別の需要伸長予測 アジア 太平洋域内での需給バランスと地域外からの輸出入 ( ガソリン 軽油 ) アジア 太平洋の需要伸長は大きく 域内及び域外との石油製品輸出入が多く 競争が

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1 はじめに 日本の原油輸入の 2 割を占める重要なパートナーである中東のアラブ首長国連邦 (UAE) 近年急激な経済成長を背景に 年平均 16 % 以上の電力需要増加が見込まれるこの国で 最近日本の総合商社が取組む大型電力案件の話題が相次いで報じられた 5 月 9 日 UAE のフジャイラ首長国に

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原油価格の動向 2019 年 2 月 株式会社三井住友銀行 コーポレート アドバイザリー本部企業調査部 本資料は 情報提供を目的に作成されたものであり 何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません 本資料は 作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づいて作成されたものですが

第1章

目 次 Ⅰ. 総括編 1. 世界各地域の人口, 面積, 人口密度の推移と予測およびGDP( 名目 ) の状況 ( 1) 2. 世界の自動車保有状況と予測 ( 5) 3. 世界の自動車販売状況と予測 ( 9) 4. 世界の自動車生産状況と予測 ( 12) 5. 自動車産業にとって将来魅力のある国々 (

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受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

調査の目的 対象 手法 調査目的海外で日本語教育を行う機関の現状を把握し 主に以下の 3 つの観点から有用な情報を提供する 1 研究者なと か 日本語教育に関する調査 研究を行う際の基礎資料 2 日本語関係機関 国際交流団体なと か 日本語教育に関する各種事業を実施する際の参考資料 3 日本語教育機

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インドネシア港(%) ラリア査対象とするが 一部の国については統計上の制約から部分的な言及にとどめている 2. 原油価格上昇の影響に関する理論的考察 (1) 油価上昇と交易条件 交易利得 / 損失本稿では 交易条件の変化により起こる国家間の所得移転を示す交易利得 / 損失を油価上昇の影響を測る手段と

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

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新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

Transcription:

LNG 市場戦略 ~ 流動性の高い LNG 市場 と 日本 LNG ハブ の実現に向けて ~ 概要 平成 28 年 5 月 2 日 経済産業省

1-1 我が国企業が先導した LNG 市場の発展 過去 40 年間で世界で最も拡大したエネルギー源が天然ガス 特にアジアでは LNG( 液化天然ガス :Liquefied Natural Gas) での輸入が大幅に拡大 東京ガスと東京電力が 1969 年に輸入を開始したのが先駆けとなり 日本の電力 ガス会社が世界の LNG 市場の発展を牽引 近年は日本 ( 世界の 1/3 を占める最大輸入国 ) のみならず 中国や韓国等も LNG 輸入を開始 世界エネルギー供給の内訳の変遷 1970 1990 2010 原油 46% 39 % 33% 天然ガス 18% 22% 24% 石炭 30% 27% 30% 原子力 0% 6% 5% 水力 5% 6% 6% 再エネ 0% 0% 1% ( 十億立方メートル ) 350 300 250 200 150 100 50 0 世界の LNG 輸入量の推移 Middle East Mexico South America Other Asia Thailand North America India China Taiwan South Korea Europe Japan Source: BP Statistics, Cedigaz 1

1-2 日本と欧米との天然ガス価格差の動向 日欧 日米 ~2008 年頃 価格差小 ( 主に天然ガスの液化 輸送コスト差 ) 価格差小 ( 主に天然ガスの液化 輸送コスト差 ) 2008 年頃 ~ 価格差大 ( 欧州 < 日本 ) ( 欧州ガス自由化を契機にガスの価格指標確立 油価連動 油価高騰 ) 価格差大 ( 米国 < 日本 ) ( 主にシェール革命による価格低下 油価連動 油価高騰 ) ($/ 百万 MBTU) 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 天然ガス価格の推移 欧州米国日本 Source: 貿易統計 IMF Primary Commodity Prices 日本 : JLC 米国 :Natural Gas spot price at the Henry Hub 欧州 :Russian Natural gas border price in Germany 2

1-3 これまでの LNG 取引モデル 特色契約条件への影響価格への影響 生産者は大きな投資が必要 ( ガスの開発 生産に加え そのコストを超える規模の投資を要する液化設備等 ) 市場の流動性が乏しい 買い手は地域独占型の公益事業者が主 15-20 年間の引取量をコミットする長期契約が中心で スポット取引は限定的 拡大する需要に対し 代替供給先は限定的 ( 売り手優位 ) 転売を制限する仕向地条項が付されることが多い 割高に設定される傾向 火力の石油代替燃料としての利用が多かった LNG 需給を反映する客観的な価格指標が未整備 石油価格に連動 高油価の際は割高 LNG と原油のバリューチェーンにおけるコストの割合 生産液化輸送 ~ 受入 LNG 32% 47% 20% 原油 93% 7% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% Source:IEA, 日本エネルギー経済研究所 3

2 ー 1 環境変化 1 シェールガス革命による油価とガス価の乖離 2000 年代後半の米国のシェールガス革命以降 シェールガスの生産コストは激減 中長期的にも米国産ガスの価格は 原油に比して低位で推移する見込み 米国ガスの輸出拡大が始まる今 我が国が石油とガスの価格分離のメリットを享受する好機 米国の石油とガスの生産性の推移 ( 掘削リグあたりの原油 ガス生産量 ) (10 億立方フィート / 日 ) ( バレル / 日 ) 7,000 700 米国ガス価格と国際原油価格の推移と見通し ( ドル / 百万 BTU) 25 [ シェール革命前 ] [ シェール革命 ] [ 将来見通し ] 6,000 600 20 5,000 2007 年 2016 年 500 4,000 3,000 2,000 生産性は約 6 倍 掘削コストは約 1/6 400 300 200 15 10 米国ガス価格 ( ヘンリーハブ ) 国際原油価格 ( ブレント ) 1,000 100 5 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 Source: EIA データを元に資源エネルギー庁試算 BP Statistics 0 0 1990 年 1992 年 1994 年 1996 年 1998 年 2000 年 2002 年 2004 年 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 2016 年 2018 年 2020 年 2022 年 2024 年 2026 年 2028 年 2030 年 2032 年 2034 年 2036 年 2038 年 2040 年 4

2 ー 2 環境変化 2 LNG 需要はアジアが牽引し 今後も世界で拡大 LNG 需要は 2020 年までに約 45% 拡大見込み 特に アジアの需要が牽引 代表的な輸出国であったマレーシアが既に輸入国に転じ インドネシアもまもなく輸入国に転じる見込み LNG 輸入国は 中東 中南米 東欧にも拡大 ( 万トン ) 40,000 LNG 需要の今後の伸び 約 3.5 億トン 今後の LNG 輸入国は拡大 (2020 年までの輸入開始予定国 ) 過去 3 年に輸入開始 2020 年までに輸入開始予定 30,000 中東 約 2.5 億トン 北米 20,000 中南米 10,000 欧州 アジア オ 0 セアニア 2014 年 2020 年 Source: IEA, 日本エネルギー経済研究所 5

2 ー 3 環境変化 3 LNG 供給の軸足はアジア 中東から米 豪の企業へ これまでの LNG 供給では 東南アジアやカタール等の国営企業の存在感が大きかった 今後は 東南アジアが輸入国に転じていく一方で 米国 カナダ 豪州等の市場指向型の多様な民間企業からの供給が急増していく見込み 我が国企業にとって市場指向型の欧米系企業との取引から果実を引き出す好機 今後の LNG 輸出量の推移 (10 億立方メートル ) 今後の LNG 輸出量見通し (IEA の New Policy Scenario を前提 ) 北米 東南アジア 中東 豪州 アフリカ Source: IEA World Energy Outlook 2015 より資源エネルギー庁作成 6

2-4 環境変化 4 我が国企業の市場指向の高まり 我が国の電力 ガス事業者は 自由化の進展に伴い 需要の想定が難しくなる上に 有利な燃料調達を巡る競争が激化 欧州企業と同様 今後は我が国企業も市場指向を強めざるをえない LNG 輸入の約 3 割を占める我が国企業の行動変化は 市場のあり様を変える潜在力 スポット取引等のウェイトの高まり (2000 年の約 5% 2014 年の約 30% に ( 約 6 倍 )) 100 万トン スポット 短期契約のシェア 80 中東 35% 中南米 70 北米 30% 欧州 60 他アジア中国 25% 50 インド 台湾 20% 40 韓国日本スポット 短期契約シェア 30 15% 日本の電力 ガス会社のLNG 調達量 ( 日本全体で世界の約 1/3) 台湾 インド その他 JERA( 東電 + 中電 ) 2014 年世界 LNG 総輸入量約 2 億 4300 万トン 東京ガス 関西電力 大阪ガス 日本の調達量約 8800 万トン ( 約 36%) 20 10% 中国 日本その他 10 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 5% 0% 欧州 韓国 Source: GIIGNL, 貿易統計および資源エネルギー庁調べ 7

2-5 環境変化 5 アジアと北米 欧州のガス市場の接続 天然ガス市場はこれまで 近隣国 域内のガス田とパイプラインで接続された北米と欧州 そして中東 東南アジアから北東アジアに LNG で運ばれるアジアとが分断 欧州 北米 アジアでガス価格にも差 ( 特にシェール革命以降は顕著に ) 今後は 拡大するアジア市場に北米産の LNG 等が大量に供給 さらに 欧州の LNG 輸入拡大等によって アジア 欧州 北米の市場が相互接続され 価格の裁定 収斂化が進む可能性 我が国は 需要量や交易ルートからみて LNG 取引のハブ ( 取引が集積し 価格の形成 発信が行われる拠点 ) となる優位性あり その地位を得て より有利な条件での LNG 調達を可能とする好機 欧州ガス市場 ロシア等 米国産ガス カナダ産ガス 北米ガス市場 日本 LNG 市場 中東 東南アジア オーストラリア ロシア 8

3-1 目指すべき LNG 取引の姿 これまでのLNG 取引 長期契約が主 仕向地条項により転売等が制限 石油価格に連動した価格設定 今後の LNG 取引 長期契約は必要最小限とし 短期契約やスポット取引を活用 需給安定化 仕向地条項を撤廃 緩和し 転売や裁定取引を活用 価格抑制 LNG の需給を反映した価格設定 価格の安定化 透明化 今後の LNG 取引を支えるためには 世界大で流動性の高い LNG 市場の実現が必要 同時に 最大消費国 日本としては LNG の取引集積と価格の形成 発信の拠点 ( ハブ ) の地位を目指すべき 調達交渉力の向上や価格抑制 内外の大きな環境変化を好機と捉え 2020 年代前半に実現すべく あらゆる取組を加速化すべき 9

( ハブ運営者 価格情報提供者 取引所等の観点から ) 市場の発展段階(=流動性の上昇)3-2 原油や欧米の天然ガスの経緯から見た市場発展の道筋 現物のスポット取引拡大 1970~1980 年代石油ショック 複数の関連事業者の集積 1970~1980 年代石油ショック 複数の関連事業者の集積 1980 年代自由化 ハブ運営事業者の登場 1990 年代自由化 パイプライン網管理事業者の分離 2010 年代自由化 更なる LNG 基地第三者開放 ( ハブの確立 ) 相対 設備 原油タンク 製油所パイプライン 場所 米国オクラホマ州等 設備 原油タンク 製油所パイプライン 場所 北海沿岸等 設備 パイプライン ガス処理施設 場所 ルイジアナ州等 設備 パイプライン ガス処理施設 場所 英国等 現物の先渡し取引拡大 1980 年代価格情報機関が情報発信 1980 年代価格情報機関が情報発信 1990 年代価格情報機関が情報発信 1990 年代価格情報機関が情報発信 2010 年代一部の価格情報機関が情報発信を開始 ( 価格指標の形成 ) ( 米国原油価格 (WTI 等 )) ( 欧州原油価格 ( ブレント等 )) ( 米国ガス価格 ( ヘンリーハブ等 )) ( 欧州ガス価格 (NBP) 等 ) 相対 現物の長期契約 個別交渉 原油市場欧米ガス市場米国欧州米国欧州 オイルショック前後まで資源メジャー OPEC 石油精製会社等 1970 年代以前国営企業 資源メジャー 公益事業者等 LNG 市場 2000 年代以前国営企業 資源メジャー 大手電力 ガス会社 先物取引 取引所 1980 年代ニューヨーク マーカンタイル取引所 (NYMEX) が開始 1980 年代ロンドン国際石油取引所 (IPE)( その後 ICE が買収 ) が開始 1990 年代以降 NYMEX 及び ICE が開始 ( ヘンリーハブ先物 ) 1990 年代以降 ICE が開始 (NBP 先物 ) 注 )ICE= インターコンチネンタル取引所 ( 本部米国アトランタ ) 10

3-3 流動性の高い LNG 市場実現への 3 つの基本要素 原油や欧米ガス市場の発展経緯からみて 流動性の高い市場実現に必要な要素は以下のとおり 原油市場欧米ガス市場 LNG 市場 [ 現状 ] 取引の容易性 (Tradability) エネルギー企業に加え 多数のトレーダー 金融機関等が取引に参加 小口運搬が可能 エネルギー企業に加え 多数のトレーダー 金融機関等が取引に参加 小口運搬が可能 取引参加者が限定的 ( 特に金融機関 ) 大型カーゴで運搬 冷却保存の手間 欧州委は域内の仕向地条項を違法化 仕向地条項が多く残る オープンかつ十分なインフラ (Open Infrastructure) 民間事業者等が 受け渡しに利用できる大量のタンクを提供 規制緩和によりインフラへの第三者アクセスを確保 インフラ運営事業者等がパイプライン LNG 基地 地下貯蔵施設を十分に提供 日本のタンクは限定的な第三者アクセス 日本のパイプラインは未接続 地下貯蔵施設は限定的 インフラ運営事業者も育っていない 需給を反映した価格指標 (Price Discovery) 現物取引拡大に伴い 先物取引が活発化 NYMEX/ICE 等の取引所がマッチングや清算のインフラを提供 価格報告機関が価格情報を集約 公表 現物 先物取引は発展途上 価格情報機関の価格情報の信頼性は不十分 日本の取引所は未成熟 11

4 LNG 市場育成に取り組む際の 3 つの基本原則 官 取引等の環境整備 市場監視 需要拡大策などの支援策 プレイヤーは 民間 (Private First) 民 積極的な市場活用への意識改革 価格指標育成への貢献 仕向地条項廃止に向けた交渉 官 国際発信 LNG 生産国との対話 LNG 消費国との連携 民 海外プレイヤーとの協業 グローバル 指向 (Globalism) 行動重視 (Action Oriented) 官 民 の行動を後押しすべく 一歩前へ出た対応 ( 国際協調 政策支援 ) 民 具体的行動で 鶏と卵 の関係を打破 12

5 ー 1 具体的アクション 取引の容易性向上 1 契約における転売制限 ( 仕向地条項 ) の緩和 撤廃 官 世界の大口需要国 ( 日 欧 韓 中 印で世界の 8 割 ) と連携し 緩和 撤廃を呼び掛け 民 調達交渉等の場において 仕向地条項の緩和 撤廃に向けた交渉を実施 2 円滑なプロジェクト立ち上げと市場育成に資する公的なファイナンスの実施 官 LNG 市場の育成に資するプロジェクト ( アジアのガス指標活用 日本引取りと第三国への転売の組合せ等 ) は JBIC や NEXI 等により積極支援 3 ガス需要 LNG 需要拡大による LNG 市場 の厚みの拡大 官 国内ではエネファームや燃料電池の導入や LNG バンカリング ( 船舶用燃料 ) の促進 海外のガス市場獲得に向けたアジア主要国との政策対話 民 積極的なガス需要拡大に向けた販促強化 海外ガス事業の推進 4 LNG の迅速な受け渡し 官 LNG 船の港湾への接岸審査の迅速化等 ( 国交省と連携 ) 民 ISO 等の場における LNG 船や関連設備の標準化の推進 13

5-2 具体的アクション ( 続き ) 需給を反映した価格指標 5 日本の LNG の需給を反映した価格指標の実現 官 東京商品取引所によるマッチングや価格発信機能の強化を側面支援 官 日本の需給を反映した価格指標 ( 複数の価格情報会社が提供 ) の活用 競争の促進 民 価格指標の信頼性向上に向けた積極的な情報提供 LNG 価格指標の取引への活用 オープンかつ十分なインフラの整備 6 第三者が受渡しや取引に使える LNG 基地 地下貯蔵 広域パイプラインの容量拡大 官 既存の LNG 基地への 第三者アクセス の実現 ( ガスシステム改革の一環 ) 官 オープンな LNG 基地 広域パイプライン 地下貯蔵設備等のインフラが十分かつ確実に整備されるよう 新たな公的支援 制度的枠組みを検討 民 市場の育成 活用を先取りした インフラ運営事業やトレーディングなどの新たなビジネスモデルへの挑戦 その他 7 消費国や産ガス国との連携の強化 8 民間プレーヤーとの継続的な対話 9 今後のレビュー及び継続的検討 14