肝疾患のみかた

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ダクルインザ・スンベブラの使用経験とこれからの病診連携

B型平成28年ガイドライン[5].ppt

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

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C型肝炎の新規治療薬

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九州支部卒後研修会症例

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

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厚生労働省班会議

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

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平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

監修 愛知医科大学病院 肝胆膵内科 准教授 角田圭雄先生

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DDWシェリング講演スライド(2009年10月)

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群馬県 C 型慢性肝炎 インターフェロン治療 地域連携シート 監修 : 群馬大学附属病院 肝疾患診療連携拠点病院 - 1 -

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B型慢性肝炎における発癌リスク因子の データマイニング解析と 慢性肝炎治療ガイドラインの検証

日本内科学会雑誌第105巻第3号

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C型肝炎の薬について

感染 発症 ALT 血清 IgG 抗体 糞便中 HAV 血液中 HAV 糞便中 IgA 抗体 血清 IgM 抗体 月 A 型肝炎ウイルス感染時の各指標の変動 B 型急性肝炎の経過 HBc 抗体陽性 14 7 HBV-DNA 陽性 HBs 抗原陽性 HBc 抗体

2017 年 10 月改訂版 リツキシマブ投与後の B 型肝炎ウイルス再活性化について 監修 名古屋市立大学大学院医学研究科血液 腫瘍内科学講師楠本茂名古屋市立大学大学院医学研究科病態医科学ウイルス学教授肝疾患センター副センター長中央臨床検査部部長田中靖人 リツキサン注 10mg/mL( 一般名 :

診療ガイドラインに沿った 潰瘍性大腸炎の治療

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愛媛県肝炎治療特別促進事業実施要綱(改正案全文)

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

1.HBV 持続感染者の自然経過 HBV 持続感染者の病態は 宿主の免疫応答と HBV DNA の増殖の状態により 主に下記の 4 期に分類される HBV 持続感染者の治療に当たってはこのような自然経過をよく理解しておくことが必要である 1 免疫寛容期 immune tolerance phase

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AASLD La protein

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血液疾患治療における B 型肝炎ウイルス再活性化 = がん治療 = Hepatitis B virus : HBV HBV 再活性化とは HBVを有する患者に化学療法薬や免疫抑制薬での治療を施行すると これらが誘引となってHBVの増殖が生じること

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はじめに 我が国の肝がん死亡者数は,2005 年頃を最多とし, その後はゆっくりと減少しつつあります しかし, いまだに年間死亡者数は 3 万人を超えており, 依然として対策が極めて重要な病気です 原因としては,C 型肝炎,B 型肝炎, 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: ナッシュ ) やアルコー

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生化学検査 臨床検査基準値一覧 近畿大学病院 (1) 検査項目 基準値 単位 検査項目 基準値 単位 CRP mg/dl WBC /μl Na mmol/l M RBC K mmol/l F 3.86-

72 20 Ope / class Alb g/ cm 47.9kg : /min 112/60m

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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Transfusion-Transmitted Hepatitis Verified from Haemovigilance and Look-back Study

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Sample2 g/dl Target1 : 6.01 g/dl TP Target2 : 8.39 g/dl

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

肝疾患に関する留意事項 以下は 肝疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあたって ガイド ラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 肝疾患に関する基礎情報 (1) 肝疾患の発生状況肝臓は 身体に必要な様々な物質をつくり 不要になったり 有害であったりす

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糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12


針刺し切創発生時の対応

平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

症例検討

C型慢性肝炎のガイドラインと 問題点について

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,

B型肝炎

厚生労働省班会議

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日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会 ( 五十音順 ) 朝比奈靖浩 東京医科歯科大学消化器内科 大学院肝臓病態制御学 泉 並木 武蔵野赤十字病院消化器科 桶谷 眞 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科消化器疾患 生活習慣病学 熊田博光 虎の門病院肝臓センター 黒崎雅之 武蔵野赤十字病院消化器科 *

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高脂血症の検査

肝臓第55巻第10号

人間ドック結果報告書 1/5 ページ 所属 : 株式会社 ケンコウタロウ健康太郎 様 性別 / 年齢 男性 / 49 歳 生年月日 昭和 40 年 3 月 17 日 受診日 平成 26 年 5 月 2 日 受診コース 人間ドック ( 胃カメラ ) 問診項目 今回前回前々回平成 26 年 5 月 2

2016 年 1 月 28 日 特別企画 C 型肝炎座談会 / 甲信越エリア 日時 :2015 年 11 月 10 日場所 : ホテルオークラ新潟 C 型肝炎治療の新時代 C 型肝炎治療における新規経口薬 (DAA 製剤 ) の将来展望と適正使用 C 型肝炎に対して経口の直接作用型抗ウイルス薬 (D

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デスフルラン

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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医学教育用基準範囲 JCCLS 共用基準範囲に基づく 医学部学生用基準範囲設定についてのパブリックコメント公募 JCCLS 基準範囲共用化委員会 JCCLS 共用基準範囲は一般的な臨床検査 40 項目の基準範囲であり 日本臨床検査医学会 日本臨床化学会 日本臨床衛生検査技師会 日本検査血液学会の共同

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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1 2 2 ANCA pouci immune IgG C3 ANCA 68 '01 '02 7 UN 14mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, -, - ' UN 45mg/dl, Cr 2.4 mg/dl, Ht 29.5%, 4+, cm 61

Transcription:

肝疾患の診断 肝臓 胆のう 膵臓内科眞柴寿枝

肝障害の原因と鑑別診断に有用な検査

慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 2. アルコール 3. 薬物 4. 代謝異常 5. 免疫異常 6. その他

B 型肝炎と C 型肝炎は? B 型肝炎約 140 万人 C 型肝炎約 180 万人 2014 年 1 月 : 日本総人口 1 億 2722 万人 320 万人 /1.3 億人 2.5% 40 人に 1 人はウイルス肝炎

肝硬変の成因別割合 PBC 2.3% AIH 1.9% NASH 関連 2.2% 他 4.4% B 13.1% (1998-2007 年 ) B+C 1.0% アルコール 14.8% C 60.2% ( n = 20,719 ) 第 44 回日本肝臓学会総会 (2008)

都道府県別の肝癌死亡率 ( 人口 10 万人対 ) 21.5 未満 21.5 以上 24.2 未満 24.2 以上 29.1 未満 29.1 以上 33.4 未満 33.4 以上 ( 人口 10 万対 ) 厚生労働省. 人口動態調査 ( 平成 19 年 ) 都道府県別にみた死因簡単分類別死亡率 ( 人口 10 万対 ) より作成

B 型肝炎

B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBs 抗体 HBV-DNA HBcrAg HBe 抗原 遺伝子型 HBc 抗体 HBe 抗体 HBcrAg: HB コア関連抗原

B 型肝炎の検査 HBe 抗原 HBe 抗体 HBe 抗原 / 抗体はウイルスの活動性 HBe 抗原 (+) HBe 抗体 (-) 活動性あり HBe 抗原 (-) HBe 抗体 (+) 活動性低い (10% は活動性あり )

B 型肝炎の検査 HBV-DNA ウイルスの量 感染初期 :10 9 個以上 /ml 肝炎期 : 10 4-5 個以上 /ml 少ない方が肝がん発生を抑制

B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBcrAg HBs 抗原と HBV コア関連抗原は 血液内だけでなく 肝臓内のウイルス量を反映 治療効果予測

B 型慢性肝炎の治療対象は? 慢性肝炎 ALT(GPT) が30 以上 ウイルスの量が多めの人 (HBV-DNAが4.0より多い人) 肝硬変 HBV-DNA が陽性の人 ( 日本肝臓学会 B 型肝炎診療ガイドライン第 2 版 )

B 型慢性肝炎の治療薬は? ペグインターフェロン -α 核酸アナログ

B 型肝炎治療 HBs 抗原消失が最終目標 ペグインターフェロン治療(48 週間 ) 20% で肝炎安定 12%/5 年でHBs 抗原消失 核酸アナログ製剤テノホビルとエンテカビルテノホビルでHBs 抗原減少効果条件次第で中止できる場合あり

インターフェロンと核酸アナログ インターフェロン核酸アナログ 投与方法 注射 経口 治療期間 24-48 週間 長期 耐性 なし まれ~ 多い 副作用 多い 少ない 催奇形性 なし 否定できない

ペグインターフェロンの治療効果 (%) 30 投与終了後 24 週間に 3 条件すべて満たす HBe セロコンバージョン HBV-DNA(5.0Logcopy/ml 未満 ) ALT 正常化 (40U/L 以下 ) ( 国内第 3 相試験 ) 20 17.1 19.5 10 9.8 7 4.9 0 90μg 24 週間 180μg 24 週間 90μg 48 週間 180μg 48 週間 HLBI 24 週間

核酸アナログは中止できるか? HBs 抗原 (IU/ml) スコア 1.9log(80) 未満 0 1.9log(80)IU/ml 以上 2.9log(800)IU/ml 未満 2.9log(800)IU/ml 以上 2 1 HBコア関連抗原量 (logu/ml) スコア 3.0 未満 0 3.0 以上 4.0 未満 1 4.0 以上 2 09:29

核酸アナログは中止できるか? 再燃リスク 総スコア 予測成功率 低リスク群 0 80-90% 中リスク群 1-2 約 50% 高リスク群 3-4 10-20% (35 歳未満 : 30-40%) 核酸アナログ製剤からインターフェロンに切り替えてから中止する (sequential 療法 ) 方法もある

De novo Hepatitis B virus infection HBs 抗原陰性化に伴う HBs 抗体や HBc 抗体の出現 以前は臨床的に HBV 治癒とされていた 実際には微量の HBV が肝細胞内などに存在 HBs 抗原陰性,HBs 抗体又は HBc 抗体陽性例に化学療法, 免疫抑制などを行った場合に HBs 抗原陽性化及び肝炎の発症が見られることあり de novo HBV infection

免疫抑制 化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドライン スクリーニング ( 全例 ) HBs 抗原 HBc 抗体 HBs 抗体 HBs 抗原 (+) HBc 抗体 (+) or HBs 抗体 (+) HBc 抗体 (-) and HBs 抗体 (-) HBe 抗原 HBe 抗体 HBV-DNA 定量 HBV-DNA 定量 通常の対応 (+):2.1 LogC/ml 以上 (-): 2.1 LogC/ml 以上未満 モニタリング HBV-DNA 定量 1 回 /1~3 月 ( AST/ALT 1 回 /1~3 月 ) 治療内容を考慮して間隔 期間を検討 核酸アナログ投与 (+):2.1 LogC/ml 以上 (-): 2.1 LogC/ml 以上未満

C 型肝炎

C 型肝炎に対する治療法の変遷 1992 インターフェロン (IFN) 単独治療 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 12 月 IFNα-2b+リバビリン (RBV) 2002 2 月 IFN 長期投与 2003 12 月 ペグIFNα-2a 単独 2004 12 月 ペグIFNα-2b+RBV 2005 4 月 IFN 自己注射 (HLBI) 2006 2007 3 月 ペグIFNα-2a+RBV リバビリン 2008 2009 2010 2011 11 月テラプレビル + ペグ IFNα-2b+RBV 2012 2013 11 月シメプレビル + ペグ IFNα+RBV 2014 9 月アスナプレビル + ダクラタスビル 週 1 回の IFN ウイルス直接阻害薬 IFN free

日本における C 型肝炎ウイルスの型 インターフェロンが効きやすい 血清型 :2 (30%) 遺伝子型 2b (10%) 遺伝子型 2a (20%) インターフェロンが効きにくい 遺伝子型 1a (0%) 血清型 :1 (70%) 遺伝子型 1b (70%)

インターフェロン治療とウイルスの関係 1 型 2 型 高ウイルス量 5.0 LogIU/ml 300 fmol/l 1.0 Meq/ml 以上 最も効きにくい 効きにくい 低ウイルス量 5.0 LogIU/ml 300 fmol/l 1.0 Meq/ml 未満 効きやすい

インターフェロン治療に影響する宿主因子 人種 黒人 性別 女性 年齢 高齢 (60 歳以上 ) 体重 肥満 肝線維化 肝硬変に近づくと効きにくい 肝脂肪化 インスリン抵抗性 IL-28 遺伝子多型 ITPA 遺伝子多型

インターフェロン治療の効果 (2 型と低ウイルス量 ) ウイルス陰性化率 (%) 100 80 60 40 27% 低ウイルス量は約 90% 68% 76% 2 型高ウイルス量約 90% 20 0 インターフェロン単独療法 24 週間 (1992 年 ) ペグインターフェロン単独投与 48 週間 (2003 年 12 月 ) インターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2001 年 12 月 ) ペグインターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2005 年 12 月 )

IFN の治療効果 (1 型高ウイルス量 ) ウイルス陰性化率 (%) 100 80 60 40 16% 1 型高ウイルス量は治療効果が不足 30% 50~60% 20 5-6% 0 インターフェロン単独療法 24 週間 (1992 年 ) ペグインターフェロン単独投与 48 週間 (2003 年 12 月 ) インターフェロン + リバビリン併用療法 24 週間 (2001 年 12 月 ) ペグインターフェロン + リバビリン併用療法 24-72 週間 (2004 年 12 月 )

DAA を含んだ治療法 従来の治療 Peg-IFN RBV プロテアーゼ阻害薬を含んだ治療 Peg-IFN RBV DAA プロテアーゼ阻害薬テラプレビルシメプレビルバニプレビル

プロテアーゼ阻害薬併用 IFN 治療 初めてインターフェロン治療を受ける ( 初回治療 ) 前のインターフェロン治療時に ウイルスが検出感度以下 ( 陰性 ) になっていたが 終了後に再度陽性になった ( 再燃 ) 約 90% の人でウイルス排除

プロテアーゼ阻害薬併用 IFN 治療 前のインターフェロン治療時に ウイルスが検出感度以下にならなかった ( 前治療無効 ) 約 50% の人でウイルス排除 新しい治療方法が必要

DAA を含んだ治療法 従来の治療 Peg-IFN RBV プロテアーゼ阻害薬を含んだ治療 Peg-IFN RBV DAA NS3/4A 阻害薬 インターフェロンを含まない DAA 治療 DAA NS3/4A 阻害薬 DAA NS5A 阻害薬 DAA ポリメラーゼ阻害剤

Direct Acting Antivirals(DAAs) 一覧 Schinazi et al. Liver int. vol 34, s1 P69-78 2014

SVR 24 率 (%) ダクラタスビル + アスナプレビル 100% 80% 84.7% 80.5% (Kumada H, et al. Hepatology 59: 2083-91, 2014) 87.4% 60% 40% 20% 0% 全体 (222 人 ) 前治療無効例 (87 人 ) インターフェロン不応 不耐例 (135 人 )

C 型肝炎治療 NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬併用のインターフェロン治療初回 再燃 :90% 前治療無効 :50% ダクラタスビル+アスナプレビル耐性変異なし :90% 耐性変異あり :40% さらに強力な治療がぞくぞく登場

SVR 12 率 (%) ソホスブビル + レディパスビル (Genotype1 ) 100% 初回 ( 国内第 3 相試験 ) 再治療 80% 60% 40% 20% 0% ソホスブビルレディパスビル ソホスブビルソホスブビルレディパスビルレディパスビルリバビリン ソホスブビルレディパスビルリバビリン

SVR 12 率 (%) ソホスブビル + リバビリン (Genotype2 ) ( 国内第 3 相試験 ) 100% 96.7% 97.7% 95.2% 80% 60% 40% 20% 0% 全体初回再治療

C 型肝炎治療の展望 100 C 型肝炎の撲滅 ウイルス陰性化率 (%) 80 60 40 20 0 IFN 単独 24 週 IFN 単独 48 週 IFN RBV ペグ IFN RBV ペグ IFN RBV DAA DAAs

非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)

脂肪肝 アルコール性 非アルコール性 (NAFLD) 単純脂肪肝 脂肪肝炎 (NASH) 非アルコール性の定義一日当たりの飲酒量が 20g 以下

純アルコール 20g( アルコール 1 単位 ) に相当する量 日本酒ビールワイン ウイスキー 焼酎 アルコール度数 15% 5% 12% 40% 25% 量 180ml 500ml 200ml 60ml 100ml 目安 1 合 中瓶 1 本 グラス2 杯 ダブル コップ1/2 杯

NAFLD の年齢別割合 : 愛媛県での調査 (%) 50 40 N=2045 男性 30 20 10 女性 (%) 0 50 40 30 20 20 歳代以下 30 歳代 40 歳代 50 歳代 60 歳代 70 歳代以上 N=4325 10 0 20 歳代以下 30 歳代 40 歳代 50 歳代 60 歳代 70 歳代以上 (Miyake T, Onji M, et al. J Gastroenterol. 2012)

非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD):1000 万人 単純性脂肪肝:700 万人 非アルコール性脂肪肝炎(NASH):300 万人診断時 既に10-20% は肝硬変

どの程度の肝障害でしょうか? 症例 68 歳女性 主訴 なし ( 精査目的 ) 既往歴 18 歳 : 虫垂炎手術 家族歴 特記事項なし 生活歴 飲酒 : 機会飲酒喫煙 : なし 現病歴 30 歳時に耐糖能異常を指摘されていた 平成 18 年 8 月 糖尿病の内服治療を開始した HbA1c は 8% 前後で推移していた 身体所見 身長 :145 cm体重 :69kg BMI:32.3kg/m² 腹囲 :96cm ( 最大体重 :70kg (58 歳 ) 20 歳 :50kg) 血圧 :145/81mmHg 脈拍 :73/min 体温 :36.6

入院時血液検査所見 WBC 6,100 / l RBC 454 x10 4 / l Hb 14.0 g/dl Hct 42.7 % Plt 19.8 x10 4 / l PT 81.8 % TP 7.3 g/dl Alb 3.7 g/dl T.Bil 0.7 ChE 269 U/L AST 51 IU/l ALT 47 IU/l mg/dl LDH 229 IU/l ALP 313 IU/l GTP 34 IU/l TG 152 mg/dl T.Cho 192 mg/dl HDL-C 42 mg/dl LDL-C 115 mg/dl Na 140 meq/l K 3.7 meq/l Cl 102 meq/l BUN 14 mg/dl Cre 0.44 mg/dl CRP 0.07 mg/dl Glu HbA1c 8.8 % 221 mg/dl HBs 抗原 (-) HCV 抗体 (-) ANA (-)

ALT 値による組織学的検討結果 ( 生検にて診断した糖尿病合併 NAFLD 59 症例 ) ALT 基準内群 (n=20) ALT 異常群 (n=39) 単純性脂肪肝 9 例 11 例 Stage1 1 例 9 例 Stage2 3 例 55% NASH 7 例 72% Stage3 5 例 8 例 Stage4 2 例 4 例 Stage3,4/ 全体 7/20 (35%) 12/39 (31%)

血小板数 (x10 4 /μl) 脂肪肝における線維化と血小板数の関係 30 20 万以下では進行した NASH を疑う 20 10 0 Stage 0 Stage 1 Stage 2 Stage 3 (n = 216) (n = 334) (n = 270) (n = 187) Stage 4 (n = 41) (Eguchi, et al. J Gastroenterol. 46:1300-1306, 2011)

NASH による発癌 ; 肝硬変の前向き調査 肝細胞癌の併発 NASH (68) HCV (69) 生命予後 NASH (68) HCV (69) 11.3%/5 年 30.5%/5 年 75.2%/5 年 73.8%/5 年 (Yatsuji S, Hashimoto E, et al:j Gastroenterol & Hepatol) NASH(F3~4)89 名 平均 44 か月観察 5 名で発癌 20%/5 年累積発癌率 (Hashimoto E, Yatsuji S, et al: Hepatol Res33:72,2005)

脂肪肝 NAFLD 5~15 年の自然経過 0~40% NASH 5~20% NASH 肝硬変 肝細胞癌の 2~13% は NASH を基盤に発癌している 0~15% 肝細胞癌 日本肝臓学会編 :NASH NAFLD の診療ガイド 文光堂 東京 2010 を改変

糖尿病診療における肝疾患のスクリーニング 1. B 型肝炎ウイルスと C 型肝炎ウイルスの検査 2. 定期的な肝機能検査 CBC の測定 ALT(GPT) 基準値は正常値ではない正常値男性 :30 IU/L 未満女性 :20 IU/L 未満 血小板減少( 特に15 万 /μl 以下 ) 3. 画像検査 脂肪肝 慢性肝障害が疑われる所見