図 1 H. pylori と発生 0.4 の発見率となります 図 1 7 さらに H. pylori との発生に関して は組織学的 内視鏡的に詳細に検討されて 図 3 H. pylori と胃粘膜 未感染 表層性胃炎 C います以前は H. pylori が関与するのは分 萎縮性胃炎 軽度萎縮 中等度萎縮 高度萎縮 化型だけとされていましたが 実際に はスキルスを起こす未分化型にも関与して いることが分かりましたまた 同じように H. pylori に感染していても 胃粘膜萎縮 P36 参照 の程度が高度だと 軽度に比べて約 5 倍のリスクがあることが明らかになりました 表 1 7 表 1 H. pylori 陽性群の胃粘膜異常との発生 むくんで ただれたような状態 3. 萎縮性胃炎とH. pylori 感染 がんが分化型です一方 萎縮が進 H. pylori 未感染の胃は患者 年齢に関係なく萎縮の無い状 態 図 4 の軽度 が保たれてい ますが H. pylori に感染して いると萎縮が進行し 20 代の 4 割近くに中等度の萎縮が認め られます感染が 5 歳までに 起こることを踏まえると 20 代の人でも 20 年近く感 染していることになり 50 代になると中等度から高 度な萎縮の人が 8 割に達します 図 4 8 このように H. pylori 陰性と陽性では胃の状態に明らかな違いが 生じるのです られます中でも最も大きな因子は H. pylori への感 染ですWHO の外部組織である IRC International gency for Research on Cancer 国際がん研究機 発生には H. pylori が関与しています 図 2 内視鏡で見ると H. pylori 未感染のきれいな胃に は光沢とヒダがあります 図 3 が 表層性胃炎では 図 2 H. pylori と発生 Correa の仮説 関 P36参照 が 1994 年に H. pylori を 確実な発が ん要因 に分類しましたこれは喫煙やアスベストと 同じ分類です 21 Kawai T, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2010 25 S1 S80-5. 指腸の一部に分布しています 血液中の PG の濃度は 萎縮の進行によりいったん 上昇してから低下することが分かっています 図 5 9 これは H. pylori 感染によって炎症が起こり 細胞 が破壊されると PG を分泌する細胞数が減るためで 萎縮が進むほど PG 値は低下します 4. 萎縮性胃炎とペプシノゲン 一方で 細胞が破壊される際には通常よりも多く の PG が血液中に出ますつまり 萎縮が軽度の状態 2001 年の Uemura らの報告によると H. pylori 陽 ペプシノゲン PG は消化酵素であるペプシンの前 では PG を分泌する細胞数が大きく減っていないた 性 陰性を対象にそれぞれ約 10 年間内視鏡で追跡し 駆体です通常は 99 がペプシンとして胃液中に分 め PG 値は上昇しますその後 細胞数の減少に伴っ たところ H. pylori に一度も感染したことがない人 泌されますが 約 1 が血液中に出ますまた PG て PG 値も低下します からはが発生せず 感染している人の 16 名 には PG Ⅰと PG Ⅱの 2 種類がありますが 分布が異 胃粘膜の萎縮の程度は内視鏡検査により判断可能 2.9 からが発生しました年率にすると約 なっており PG Ⅰが胃底腺 PG Ⅱは胃全体と十二 ですが 血中の PG を測定すれば PG 法 内視鏡検査 が無くなっていきます 図 3C 照 を生じますこの状態から発生する胃 萎縮の進行に伴い ヒダや光沢 門部から広がっていきますが が徐々に進行していき 腸上皮化生 P37参 高度萎縮 由来しており 萎縮性胃炎は幽 すると表層性の胃炎を起こし 粘膜の萎縮 中等度萎縮 遺伝的因子 過度のストレス 喫煙 塩分などが挙げ 軽度萎縮 て 5 歳までに起こるとされています感染 ちらが未分化型ですどちらのタイプにも 発生に関与する因子としては H. pylori 感染 という名前は pyloric mucosa 幽門粘膜 に感染することに り が発生することがありますこ 2. とH. pylori 感染の関連 になります 図 3 H. pylori ヒトに対する H. pylori の感染は原則とし 行する前に遺伝子の損傷などの因子が加わ Uemura N, et al. N Engl J Med. 2001 345 11 784-9. 改変 図 4 H. pylori 感染および年齢別の萎縮性胃炎の程度 Uemura N, et al. N Engl J Med. 2001 345 11 784-9. 22
図 5 内視鏡的胃粘膜萎縮とペプシノゲン値 図 6 ペプシノゲン PG 法 図 8 内視鏡検査による胃の 健康度 評価 リスク分類 図 10 血液検査による胃の 健康度 評価 同じ日の内視鏡検査で発見した 井上和彦 消化器科 2006 43 104-9. をしなくても萎縮がどの程度進行しているのかを推 表 2 萎縮性胃炎進展に伴う発生率とハザード比 図 9 血液検査による胃の 健康度 評価 リスク CD 分類 井上和彦 ペプシノゲン法 三木一正編 医学書院 とを示しています Ⅰ / Ⅱ比が 3 以下を PG 法陽性 + として 萎縮性胃 炎と判定しますさらに PG Ⅰが 30 ng/ml 以下で 6. C分類 C 分類はを見つける検査ではなく 胃が ます陽性判定以外は陰性 と判定します 図 6 んのリスク診断 すなわちになりやすい人を PG 法による死亡率減少効果については 見つける検査です内視鏡検査では などの 以内に受検した群よりも 1 年以内に受検した群の死 亡率が下がっており PG 法には死亡率減少効果があ ると報告しています 10 Ohata H, et al. Int J Cancer. 2004 109 138-43. 明らかな病変は認められないけれども高度な萎縮が 図 7 H. pylori に感染した胃 症例 50 代 男性 いますすなわち H. pylori 陰性 PG 陰性を 群 定したり 異常なし と判定したりしますが C H. pylori に感染しておらず萎縮も無いきれいな胃 分類では誰が判定しても同じ結果になりますしか H. pylori 陽性 PG 陰性を 群 H. pylori に感染して いるものの萎縮がほとんどみられない胃 H. pylori 陽性 PG 陽性をC 群 H. pylori に感染しており萎縮し ている胃 H. pylori 陰 性 PG 陽 性 を D 群 萎 縮 が 強くなり H. pylori が消失した胃 と 4 群に分けること でのリスクを判定します 図 9 しかし 実際 は D 群に該当する人は非常に少なく 1 以下のため 煩雑化を防ぐ目的で C 群と D 群を合わせて C 群とし C に分類しています 井上の報告によると 群からはは見つかっ ておらず 群からは一部見つかりますが C 群から の発見が大部分を占めています 図 10 12 Ohataらの 報告でも C 群から多くのが発見されています D 群は症例数が少ないのですが ハザード比で 121倍 と非常に高率でが見つかっています 表 2 13 その他にも C 群 D 群から高率にが発見される も その方法は簡便な血液検査です 図 8 に H. pylori 感染と萎縮性胃炎の有無による内 5. 内視鏡検査 しているものの萎縮がほとんどみられない胃 右下 のような未感染のきれいな胃からはがほとん は H. pylori に感染しており萎縮している胃 左下は萎 ど発見されません萎縮あるいは表層性の胃炎を起 縮が強くなり H. pylori が消失した胃です H. pylori は められる胃 や 図 7 ヒダが消失し粘膜がつるつる になっている胃 からのみが発見されます 1996 2010 年にかけて 3,161 例のを調べた 広島大学の報告によると H. pylori 陰性のは 症例 40 代 男性 正常の胃粘膜にしか定着できないため 萎縮が進み腸 上皮化生になると胃から消えてしまいます 前述の 順番でのリスクは増えていきます内視鏡検 査をすれば ほとんどの場合でどれに該当するのか が分かります 全体の 0.66 しかなく H. pylori 陰性の胃か C 分類は 上記の内視鏡検査による胃の 健康 らがほとんど発生しないことが明らかになり 度 評価 リスク分類 を血液検査で行います ました 11 これは H. pylori がの原因であるこ 血清H. pylori 抗体と PG 法を組み合わせて判定を行 感染の胃と内視鏡像が大きく異なっています図 3 おらず萎縮も無いきれいな胃 右上は H. pylori に感染 こしている 例えば図 7 ヒダが太く 分泌物が認 23 視鏡像の違いを示します左上は H. pylori に感染して が発見されるような H. pylori 感染の胃は 非 ある場合に 診断する人によって 異常あり と判 Yoshihara らにより報告されていますPG 法を 2 年 Ⅰ / Ⅱ比が 2 以下だと強陽性 ++ で高度萎縮となり 測できますPG 法では PG Ⅰが 70 ng/ml 以下で 24
図 12 H. pylori 感染から胃潰瘍やへの進展 ことが報告されています 14, 15 当院の検診センターで胃のレントゲン検査を行い胃 40歳以上で 70 を超えます 図 11 赤 どちらの 対 象 に H. pylori 感 染 率 を 炎が認められた54 歳男性の症例を紹介します オプショ データも 年齢とともに H. pylori 感染率は上がって 調 べ た と こ ろ 陽 性 率 は ンで行った H. pylori の抗体は 115.0 U/mL でH. pylori いますH. pylori の感染は 5 歳までにしか成立しな 5.2 で あ り17 予 想 以 上 陽性 PG Ⅰは 59.5 ng/ml と 70 以下 Ⅰ / Ⅱ比は 1.50 いため 感染率の高い人たちが年代の移行とともに に H. pylori の感染者が減っ と 3 以 下 の PG 陽 性 で あ り C 分 類 で C 群 で し 右にシフトしているのですsakaらのデータ 1992 ていました30 代の約 8 割 た内視鏡検査や除菌に関する相談目的で内視鏡セ 年 と 私たちのデータ 2003 年 とは 11 年の差があ はH. pylori 感染が無いため ンターに紹介となりましたレントゲン像で認めら り sakaらのデータを右に 10 年分動かすと 私た になることはありま れたのは胃炎だけで その他の所見は認められなかっ ちのデータときれいに重なります 図 11 つまり せんこのことは たのですが 内視鏡検査を実施したところ大きな胃 現在の H. pylori 感染率は図 11 に示す緑の折れ線の にならないから検査は不要 がんが見つかりました病理学的検査の結果は早期 ようになっていると考えられますH. pylori の感染 というのではなく H. pylori 類似進行がんであり 深達度は SE で腹腔に露出して 率は非常に速いスピードで減っているのです 抗体検査を行うだけでもリスクのある人を絞り ン検査の対象とするのではなく - 2 群には内視鏡 込めるようになったと解釈すべきでしょう 検査を実施するべきとされています 19 いる状態でした幸いリンパ節転移が無かったため 別の企業の全社員に対して 2008 年に 生活習慣 C 分類はのリスク診断なので レントゲ 査だけだったとしたら非常に危険な状況だったとい を行いました結果 35 歳以上の検診対象者 21,144 抗体に加え 胃レントゲン検査も行いましたが 検 ン検査に併用して補助診断にしたり 内視鏡検査と えるでしょうC 分類が補助診断として意味があ 人の内 H. pylori 抗体陽性者は 5,822 人と わずか 診では午前中に約 40 50 名を撮影する必要があり 併用したりといろいろな使い方が可能です ることを示す良い例だと思います 27.5 にとどまっていますつまり 誰もが H. pylori その受診者が撮影されたのは 6 枚で 結果は異常な に感染している時代はすでに終わっているのです しでしたしかし H. pylori 陽性の受診者には原則 7. 現状の検診における 胃レントゲン検査 年代別感染率では 30 代が 18.0 40 代が 22.9% として内視鏡検査の上 除菌していましたので こ 50 代が 37.4%でした60 代では 46.1 と約半数 70 の受診者にも内視鏡検査を実施したところ 噴門の の発生は 数十年にわたる H. pylori の感染 代では 68.2 と約 7 割でした地域別では 北海道 直下に早期が見つかりましたこのは により起こります感染により慢性胃炎となった胃 現在 H. pylori の感染率はどのくらいでしょうか が 31.8% 九州が 35.9%と比較的高めなのに対し 本 胃レントゲン検査では写りにくい微小な早期 に さまざまな環境因子や持続感染により発生する 州は 20 台という結果でした でした 活性酸素などが関与して組織が破壊され その結果 2003 2004年 ある企業の全社員 20 50代の419 名 2009 年以降は 35 歳時だけを対象に検査を行いま 検査も実施しました結果 H. pylori 抗体陽性率は した感染率は年々低下しており 2008年の17.5%か C 分類を使ってリスクのある人を絞り込んで内視 40代で34.3 と低い値でした 図 11 黄 8 H. pylori ら 2011 年には 13.3 にまで低下しています最近 鏡検査を行うことで より早期のの発見につ なげることが必要だと思います C 分類では 例えば 群は画像検査なし 群 はレントゲン検査 C 群は内視鏡検査といった運用 法が考えられていますその他にも 群は 5 年に 1 C 群は逐年の内視鏡検査という組み合わせなども考 えられます個人的にはA群 B群でも一度は内視 鏡検査を受けていただきたいと考えています また 川崎医科大学の井上先生が中心となって 群の細分類を行っており PG Ⅱを 30 ng/ml で分け て 30 ng/ml 未満 を -1 群 30 ng/ml 以下 を - 2 群 とする提案がされています 18 19-2 群はのリ スクが高いため 群としてひとまとめにレントゲ 25 H. pylori の除 菌 適 応は これ まで は 潰 瘍 の 再 発 予防や 切除後の異時性 P37参照 の 抑制だけでしたしかし今では内視鏡検査を行えば 胃炎でも H. pylori の除菌ができるようになりました 慢性胃炎の段階で除菌できることは 粘膜の萎縮や腸 上皮化生 そしての発症を抑えることができ 1 次予防 P37参照 に近いがんの予防につながると考 えています 除菌の効果を検討した報告によると 切除 後に除菌を行わないコントロール群と 除菌を行う 除菌群に分けて比較したところ H. pylori の除菌に よりの発生リスクが約 3 分の 1 に低下するこ とが明らかになりました 20 また 除菌により PG 値も大きく変化します 21 PG 値に影響を与える因子には 胃粘膜の萎縮や炎症 回の内視鏡検査 群は 2 3 年に 1 回の内視鏡検査 胃潰瘍やが発生します 図 12 図 11 H. pylori 感染率 現在は H. pylori の感染者が減ってきているので を対象にして内視鏡検査を行い 同時にH. pylori の 8. C検診における今後の課題 2008 年のある受診者の例を紹介しますH. pylori 病予防検診の血液検査と一緒に H. pylori の抗体検査 今でもご健在ですC 分類を行わずレントゲン検 信州大学が高校生 300 名を 16 感染率を示した最も有名な sakaらのデータでは 26