経鼻経管栄養チューブ 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) と栄養療法について 空気注入による確認を行っている施設において抜きうち調査では,60% が胃内に入っていなかった そもそも空気注入による確認の信頼性チューブ挿入時には胃内に挿入されていても嘔吐等により食道に戻る 香川県立中央病院内科稲葉知己 胃内に留置している場合でも誤嚥性肺炎を生じうるのに入っていなければ... PEG とは ASPEN 栄養補給の投与経路 栄養評価 YES 経腸栄養 消化管機能 NO 経静脈栄養 PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy): 経皮内視鏡的胃瘻造設術 開腹手術をしないで腹壁と胃壁との間に瘻孔を形成する内視鏡治療手技 経鼻チューブ 胃瘻 腸瘻 抹消静脈栄養 (PPN) 中心静脈栄養 (TPN) 短期 長期 短期 長期 経静脈栄養法 腸管の使用が不可能な患者を対象とする 2 週間以内の場合は経末梢静脈栄養 (PPN) 2 週間以上は経中心静脈栄養 (TPN) を行う ( 例 ) 消化管通過障害 ( イレウス ) 短腸症候群炎症性腸疾患 ( 活動期 ) 経腸栄養と経中心静脈栄養との比較 経中心静脈栄養 経腸栄養 適応の幅 広い 制限あり 消化 不要 必要 排便量 殆どなし 多少あり 手技 管理 煩雑 簡単 合併症 多い 少ない 敗血症など 下痢など 安全性 低い 高い 経済性 高価 安価
頭側PEG の適応基準 必要な栄養を自発的に摂取できない 正常な消化管機能を有している 4 週間以上の生命予後が見込まれる 成人及び小児 日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会 PEG ガイドライン ( 案 ) より PEG の一般的な適応 1. 経腸栄養アクセスとしての胃瘻造設 脳血管障害 痴呆などにより自発的に摂食できない例 神経筋疾患などにより嚥下不能な例 頭部 顔面外傷による摂食不能例 咽喉頭 食道 胃噴門部狭窄例 長期に成分栄養を必要とする炎症性腸疾患 2. 誤嚥性肺炎を繰り返す例 誤嚥のため経口摂取不可能な例 経鼻胃管留置に伴う誤嚥 3. 減圧目的 幽門閉塞 上部小腸閉塞 日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会 PEG ガイドライン ( 案 ) より 内視鏡的胃瘻造設の原理頭内視鏡的胃瘻造設の原理 頭側 胃図 Ⅰ 胃図 Ⅱ
瘻孔 & チューブ構造 チューブ図 外部バンパー ( ストッパー ) 内部バンパー PEG の手技と方法 1.Pull 法 (Gauderer-Ponsky) 長所 : ハ ンハ ー型で耐久性の高いチューブを留置できる 短所 :2 回の内視鏡挿入が必要 完全な清潔操作は不可能 2.Push 法 (Sacks-Vine) 長所 : ハ ンハ ー型で耐久性の高いチューブを留置できる 短所 :2 回の内視鏡挿入が必要 完全な清潔操作は不可能 3.Introducer 法 (Russell) 長所 : 内視鏡の挿入が 1 回で済む 感染の可能性が低減 短所 : 胃瘻チューブが細経で閉塞しやすい 穿刺針が太く 侵襲が大きい 手技の実際 -Push 法 症例に応じた使い分けが重要である 日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会 PEG ガイドライン ( 案 ) より
手技の実際 -Introducer 法 例 ) 食道癌で高度狭窄があり, 細径スコープ ( 径 6mm) を用いて狭窄部を通過し,PEG 増設する 外部バンパー ( ストッパー ) の注意事項 当日弱めの牽引 ガーゼを挟み 圧迫による止血を行う 翌日牽引解放 ガーゼを取り除き 圧迫をなくす 1 時間後 圧迫解除している挿入部の状態は良好である
過度の圧迫牽引結果 創部感染 ( 発赤 創部圧迫壊死 ) 埋没症候群 術後 1 週間 毎日の瘻孔観察 瘻孔周囲の消毒と洗浄 外部バンパーの定期的回転 良好な瘻孔を維持するためには 1 週間が勝負 術後 2 週間以降 スキンケア 瘻孔完成後は 滲出液や液漏れがなければカ ーセ 保護は不要 瘻孔周囲皮膚を清潔に保つ シャワーは一週間を目安に開始 入浴は2~3 週間後 感染が無いことを条件に開始 スキンケアに関するまとめ 1, 瘻孔周囲の観察は毎日行う 2, 体表上にあるストッハ ーはきつく締めない ( 皮膚から5mm~10mmの余裕をもたし 毎日 PEGカテーテルを回転させる ) 3, 瘻孔周囲は生食や微温湯などでよく洗う ( 消毒後も薬剤が皮膚に残らないように洗い流す ) 理想的な瘻孔 ストッパーと皮膚の間に 1~2cm くらい余裕をもたせるカテの回転や押し込んでも抵抗がないことを確認する 瘻孔完成の目安 出口部をカテで圧迫しないよう皮膚面に対して垂直に 胃瘻ができるのは,3 週間くらいであるが, チューブ交換可能な強度までに完成するのは 2~3 ヶ月 固定位置は適時ずらし カテによる摩擦 圧迫を回避
交換用カテーテル一覧 バンパー型 ボタンタイプ バルーン型 ボタンタイプ 交換用カテーテル バンパー型 チューブタイプ バルーン型 チューブタイプ 交換用胃瘻カテーテル特徴比較 抜けない短い抜きやすい ( 抜ける ) バンパー型 ボタンタイプ スキンレベルでの管理 長期留置が可能 外観がよい長い バルーン型 ボタンタイプ 挿入 抜去が容易 スキンレベルでの管理 外観がよい 交換時期の目安 バンパー型 4 ヶ月に一度 最低でも半年に一度の交換を バンパー型 チューブタイプ 管理が容易 長期留置が可能 サイズ調整が容易 バルーン型 チューブタイプ 挿入 抜去が容易 管理が容易 サイズ調整が容易 バルーン型 1 ヶ月に一度 カテーテル抜去方法 内視鏡的回収 : 内視鏡を使用し口腔外より抜去 経皮的抜去 : 潤滑剤等を使用して経皮的に抜去 カテーテルの交換理由 理由 清潔性を保つため 切り落として排便時に回収することは 機械的イレウスの原因になる 異物除去としての保険請求は認められない カテーテル硬化による抜去困難を避けるため 半永久的 は誤解
IMG_0174 IMG_0174 カテーテル交換後の注意 経皮的カテーテル挿入後は留置確認の徹底を腹膜炎の防止確認方法 ( 確実な順番 ) 1. 内視鏡確認 2.X 線透視で確認 3. 生理食塩水を注入後吸引 4. 胃内 ( 胃液 ) 吸引 X 線透視下でガストログラフィン注入で確認 1.PEG 交換用カテーテル < 院内での交換 > 保険請求 償還区分 : 交換用胃瘻カテーテル 胃留置型 バンパー型材料費 :27,200 円手技料 : カテーテル交換は設定されていない 算定上の留意点 : バンパー型の交換用胃瘻カテーテルは 4 ヶ月に 1 回を限度として算定出来る 2.PEG 交換用カテーテル < 院内での交換 > 保険請求 償還区分 : 交換用胃瘻カテーテル 胃留置型 バルーン型材料費 :11,300 円手技料 : カテーテル交換の手技料は設定されていない 酢水の管理方法 酢 : 水 =1:10 チューブタイプが適応で 5cc 位で十分です 4ヶ月比較 算定上の留意点 : 交換用胃瘻カテーテルは 24 時間以上体内に留置した場合に算定出来る
対策法 栄養投与の最大の問題漏れ 誤嚥の対策法は? 1 胃内の減圧を行ってから栄養投与を行う 2 半座位にして栄養投与を行う *(30 度保持 ) 3 栄養剤の投与速度を遅くする 4 栄養剤の濃度を上げて投与量を減らす 漏れ 誤嚥対策 1 経腸栄養剤に 粘度調整食品 を反応させ経腸栄養剤の粘度を増す方法 ツインライン エレンタール エンテルード エンシュアリキッド 漏れ 誤嚥対策 2 ミキサー食 漏れ 誤嚥対策 3 胃内で固形化されているためには, 体温付近で溶解可能な物 ( 粘度増強剤 ) は不十分 栄養剤に寒天粉を混ぜ 固形化 して漏れを防ぐ 寒天粉は各社で販売されている 転院あるいは在宅治療を視野に入れると 介護者負担も考慮し 安易な導入は問題がある 作成時,80 あるいは 100 にて寒天を溶解し, 冷却過程で固形化する必要があり手間 経管栄養剤メーカーの今後の製品開発に期待するが, 種々の問題もあり,,,, 漏れ 誤嚥対策 4 胃瘻チューフ 内にシ ェシ ュナルカテーテルを通し 空腸への栄養投与 (PEJ) を行う 事故 自己抜去時の対応策は? 瘻孔形成された場合 ( 造設後 2~4 週間以降 ) ルート ( 瘻孔 ) の確保が第一です 瘻孔は 2~3 時間で閉塞します 1 予備カテーテル ( 同等製品 ) の挿入 2 フォーリーもしくはネラトンカテーテルを挿入 以上の対策を応急的にとり あわてず主治医の指示を仰いでください
事故 自己抜去時の対応策は? 瘻孔形成されていない場合 ( 造設 1 ヶ月未満 ) カテの自己抜去により 胃壁と腹壁の癒着が外れ 腹膜炎発症の可能性がある 栄養剤の注入中止し ネラトンなどを瘻孔に挿入 ドレナージを行う ( 胃内にあるか心配 ) 経鼻胃管チューフ を挿入し 胃液を持続吸引する 病院からPEGを装着した患者さんが退院してきたら バンパー型 か バルーン型 か カテーテルのメーカー名確認ブランド名規格 ( 太さ ボタン型ならシャフト長 ) バンパー型 ボタンタイプバルーン型 ボタンタイプ 以上の対策を応急的にとり 主治医に緊急連絡造設早期は自己抜去されないこと抑制はしたくない予防衣の工夫等 バンパー型 チューブタイプ バルーン型 チューブタイプ バルーン型 バルーンの虚脱により明日にでも抜けるかもしれないその際の対応を決めておく ( すぐ入れいれるように新品を1つ あるいは 尿道カテーテルを用意 瘻孔閉鎖を防ぐ ) バルーンの水は少しずつぬけるため バルーンの古い水を抜いて残量を確認し 新しい蒸留水を指定の量もう一度注入しバルーンを膨らます バルーン水の確認 バンパー型 当面は抜ける事が無い 一方で交換が難しい次回交換は誰が ( 在宅かかりつけ医か造設医か ) どこで ( 在宅で行うか 内視鏡のできる病院かクリニックか ) Q; PEG は誤嚥性肺炎の発症を防止するのか? A1. 誤嚥性肺炎を防止しない Ciocon JO et al. Arch Intern Med 148:429~433,1988 A2. 誤嚥性肺炎を防止しない C Baeten et al. Scand J Gastroenterol 194:95~98,1992 A3. 誤嚥性気管支炎は防止する 小川滋彦他 Gastroenterol Endosc 34:2400~8,1992 A4. 短期的には誤嚥性肺炎を防止する Fay DE et al. Am J Gastroenterol 86:1604~09,1991 A5. 誤嚥性肺炎を防止する上に 生命予後も改善する Dwolatzky T et al. Clin Nutr 20:535~40, 2001 Q; PEG 施行後の創部の局所消毒は必要か? 必要とすれば 何日間か? 術前消毒ではイソジン と石鹸 + アルコール消毒との間の有意差はない Q; PEG 施行後 何日目から栄養注入開始すべきか? A1. PEG 施行 3 時間後からでよい Choudhry U et al. Gastrointest Endosc 44:164~7, 1996 A2. PEG 施行 4 時間後からでよい McCarter TL et al. Am J Gastroenterol 93:419~21998 PEG は, 安全性, 簡便性にも優れ, 全身状態の改善, 生活の質の向上が期待される手技である その 適応は今後も検討が必要であるが 安定した栄養管理が可能となるよう 医療サイドのより一層の努力が必要である -Kagawa prefectural central hospital-