Vol.063 Non-compliant balloon の拡張応力と正確な拡張性能 ( 有効長の正確性 ) の検証 実験 1 Non-compliant balloon の拡張応力の検証実験 背景 Stent の拡張不十分はイベント発生に関連する NSE や Rotablator が施行できない状況下において 多くは Non-compliant balloon を使用した POBA で良好な Stent Apposition を獲得しなければならない 一般に Non-compliant balloon に求められる性能は 1 フラットに近い Compliance 2 高耐圧であること ( 高い RBP と Mean Burst Pressure) 3 長軸方向に伸長しないこと ( ショートショルダー ) 以上の 3 点があげられる しかしながら 市販されている Non-compliant balloon 個々の特性は一様ではない これらの特性を正確に知ることは 病変前後の血管損傷を予防し 安全に病変拡張を行なうことに繋がる 弊社は 上記に述べた特性に加え 術者が病変性状に適した Non-compliant balloon の選択と安全性の高い拡張圧コントロールを行なうための指標の一つとして 拡張応力 という新しい定義を提案する 本レポートでは 外部機関に委託して実施した Pantera LEO をはじめとする主要メーカーの Non-compliant balloon の拡張応力の実験結果と二次的に得られた balloon ショルダー部長軸伸長 (Nominal/RBP 拡張時 ) の分析結果も合わせて解説する 応力の概念 物体の内部に生じる力の大きさや作用方向を表現するために用いられる物理量で 物体の変形や破壊などに対する負担の大きさを検討するのに用いられる (Fig-1) PTCA balloon における拡張応力の定義 拡張応力 =Non-compliant balloon の本来の目的である硬い病変やステント拡張不十分部位を拡張するための能力 (Fig-2) Fig.1 Fig. 2 荷重 ひずみ 変形 ( 変位 ) 応力 力を加えないときの高さ 力を加えたときの高さ 1
実験方法 仮説の設定 3.5/15mm 長のStentを留置後 IVUSにて Stent 中央部に長さ5.0mm/ 深さ1.0mmの拡張不十分を確認 5つのNon-compliant balloonで拡張した場合 Pantera LEOが一番 拡張応力 が強い 仮説の実験方法 3.5/15mm のballoon の中央部を計測装置 ( 圧センサー φ5mm) がballoonに接触してから 1mm 押し その反発力を測定する 試験実施日: 2015 年 4 月 14 日 ( 火 ) 試験場所: 島津製作所本社三条工場 試験者: 島津テクノリサーチ 計測機械 : EZ Test EZ-LX ( 島津製作所社製 ) データ処理: TrapeziumX シングルソフト 検体数: 5 種類 各 1 本 Pantera LEO A 社 B 社 C 社 D 社 プロトコール 各検体測定点(5 種類 x 5 測定点 = 計 25 点 ) - 14atm 18atm 20atm - 各 balloonのnp RBPを測定 -16atmは14atmと18atmの平均値でデータを推定 計測位置設定 A)balloon 設置場所は42mm 幅で一定とする B) 中央にスタイレットを固定し 同じ個所に balloonが設置できるようにする C) ディスタルマーカー外側部を設置マーカーに合わせる balloonショルダーには圧センサーがかからないようにする 計測方法 - 圧センサーがballoonと接触し 反発力を少しでも感知した時点を0mm 地点とし1 分間かけて 1mm 押し込み その反発力 (N: ニュートン ) を計測 測定点順番 -からまで小さい気圧から順番に統一された方法で実施 2
結果 Pantera LEOは低い気圧で他社 Non-compliant balloon と同程度の拡張応力を得ることが出来た 考察 complianceチャートの低さと今回測定された反発力は 相関関係がみられない 拡張応力 とcomplianceとは別に評価すべき項目である可能性がある 例 :Pantera LEOとほぼ同じcomplianceを描くB 社はPantera LEOより 拡張応力 が低い まとめ 拡張応力が強いNon-compliant balloonを使用するメリットは以下の3 点が考えられる 1.Stent 拡張不十分部位に少ない気圧で 強い力をかけることができ より良いStent Appositionを得ることができると考えられる 従って 良好な Stent 長期予後に繋がりうる SAT PSSの予防 2. 硬い病変に対しても過拡張によるDog bone 現象発生を予防でき 且つ適切な拡張が期待できる NSE 不通過病変やRotablator 未認定施設での不十分拡張が予想される症例に対して有用と考える 3. 精度の高い拡張コントロールができるため 必要以上の圧をかけず安全な PCIの施行を行うことができる PanteraLEO B ATM mm mm 6 3.36 3.27 7 3.38 3.31 8 3.40 3.35 9 3.42 3.38 10 3.43 3.42 11 3.45 3.44 12 3.47 3.47 13 3.49 3.49 14 3.50 3.50 15 3.52 3.52 16 3.54 3.54 17 3.55 3.55 18 3.57 3.57 19 3.59 3.58 20 3.61 3.60 21 3.62 3.62 22 3.64 3.63 23 3.65 24 3.67 NP RBP 参考文献 Enrico Romagnoli, Drug-Eluting Stenting The Case for Post-Dilation, JACC, 2008 Francesco Prati, Suboptimal stent deployment is associated with subacute stent thrombosis: Optical coherence tomography insights from a multicenter matched study. From the CLI Foundation investigators: the CLI-THRO study, AHJ, 2015 3
実験 2 Non-compliant balloon 有効長の正確性の検証実験 背景 Balloon に求められる正確性とは どのような状況においても正確に規格 ( 径と有効長 ) 通りに拡張できることである しかしながら 加圧に伴う有効長の仲長について添付文書には記載がなく 製造メーカーは殆ど情報開示をしていない その為 術者は拡張中の balloon の有効長がどの位伸長しているかを予測できないまま病変を拡げているのが現状である そこで 拡張応力の実験から得た病変部の拡張を想定した場合の主要 Non-compliant balloon(5 種類 3.5/15mm) の有効長を測定し 個々の balloon の有効長の正確性を検証する Balloon 有効長血管壁に接触し 押し広げることができる長さ 血管への接触は コーンの起点が重要な尺度となってくる 体内にあるballoonの有効長の位置を医師が確認できる手段は X 線不透過マーカーのみ 推定有効長の定義 Proximal コーンの起点から Distal コーンの起点までの距離を主観で測定する 実験 実験の方法 3.5/15mmのballoon は を通常の形態と想定する 限界状態でのに拡張後 balloonに擬似病変を 1.0mm 押し込んだ後の形状を比較する 試験実施日: 2015 年 4 月 14 日 ( 火 ) 試験場所: 島津製作所本社三条工場 試験者: 島津テクノリサーチ 計測機械: EZ Test EZ-LX ( 島津製作所社製 ) データ処理: TrapeziumX シングルソフト 検体数: 5 種類 各 1 本 Pantera LEO A 社 B 社 C 社 D 社 プロトコール通常時 と限界拡張時点 のマーカー外々長を計測 通常時 と限界拡張時点 のProximalコーンの起点からDistalコーンの起点までの距離を主観で計測 それぞれを比較する balloon 有効長血管壁に接触し 押し広げることができる長さ 4
結果 推定有効長 (13.5mm) 推定有効長 (14mm) 推定有効長 (16mm) マーカー外々長 (15.5mm) 推定有効長 (17.5mm) マーカー外々長 (16.5mm) 推定有効長 (17mm) マーカー外々長 (17mm) 5
考察 マーカーを指標とした拡張は 各メーカーによって長さが違う Dog bone 現象により有効長が伸びる 規格長はメーカーによって設定基準が違う 以上 3 点において注意が必要と考える 監修者のコメント現在市販されているNon-compliant-balloon は balloon 部分にSemi-compliantの様な柔軟性を持たせた通過性重視の設計になっているモデルが少なくない それらのballoon 特性はそのcomplianceチャートから正確にはNon-compliantではなくLow-compliant であり 拡張力は多少なりとも犠牲になっていると推測していた 実験 -1はそれを裏付ける検証結果であったと考えられる 当然 balloon catheterのデリバリーに難渋する症例においてはこのような通過性重視のnon-compliant-balloonが必要とされるが その際 実験 -2の検証結果からも推察できるように通過性重視のNon-compliant-balloonは柔軟性があるが故に加圧によって一定の径とballoon 有効長も伸長することに注意すべきである 病変が拡がらないからといってその特性を知らず 必要以上に高圧をかけてしまい血管損傷を誘起することは避けるべきである 本稿は 各社のNon-compliant-balloonの特性を知り 石灰化病変を安全にPOBAするうえで非常に有意義な情報であると考える 6
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監修 豊橋ハートセンター循環器内科部長木下順久先生 2016-04-odp-02-s00569