1950 ~ 1969 年 1970 ~ 1989 年および 1990 年から 2009 年の4つに区分し各期間の揚湯量温度導電率静水位の各項目の経年変化の傾向について検討することとした経年変化の傾向を示す指標として各期間における各データの時系列を最小二乗法により直線近似しその勾配

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えつみやなぎしま
5 years ago
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箱根地域における温泉資源の状況 - 実態調査結果にもとづく検討結果 - 板寺一洋 * 菊川城司 * State of hot spring resources in Hakone district (Considerations based on on-site inspection results) by Kazuhiro ITADERA and Joji KIKUGAWA 1.

1 箱根地域における温泉資源の状況 - 実態調査結果にもとづく検討結果 - 板寺一洋 * 菊川城司 * State of hot spring resources in Hakone district (Considerations based on on-site inspection results) by Kazuhiro ITADERA and Joji KIKUGAWA 1. はじめに神奈川県を代表する観光地である箱根には現在二十湯とも呼ばれる温泉地がある ( 平野,1994) 図 1 に温泉地学研究所の KOGMA プロジェクト ( 萬年ほか 2009) により所在地を把握している箱根地域の源泉分布図を示したこれらの源泉から湧出しあるいは揚湯される温泉が箱根地域の観光を支えておりその量は毎分 23,000 リットルにも及ぶ (2003 年神奈川県生活衛生課調べによる ) 箱根における温泉開発は温泉旅行が一般に浸透した昭和 30 年から 40 年代 (1950 ~ 1970 年ごろ ) の高度経済成長期に顕著であり源泉数揚湯量が急増した ( 大山迫 ;1987) それと並行するように箱根各地で自然湧泉や横穴湧泉の消失や既存源泉の水位低下および温度低下が観測され温泉の枯渇化が深刻化していった ( 大山 1989) 温泉地学研究所では箱根火山の活動監視と併せて温泉枯渇の状況をモニタリングするため 1968( 昭和 43) 年以来箱根地域の温泉について定期的な観測調査を継続している菊川 (2003) はこの観測結果に基づき 1990 年から 2002 年までの温泉の温度湧出量静水位の推移について報告しているこれらの観測は長期間にわたって同一の源泉を対象として行う都合上利便性などの条件を満たした源泉のみを対象としていることからこの観測調査の結果だけから箱根地域全体における温泉資源の状況を推し量るには限界がある一方菊川板寺 (2008) は箱根湯本地区において実施された4 回 (1970 年 1980 年 1990 年および年 ) の調査結果をもとに全調査の対象となった 40 源泉の温度量主要成分濃度などの平均値図 1 箱根地域における源泉分布 ( 太枠は図 5および 6の表示範囲源泉位置は萬年ほか (2009) による ) 最大値最小値の推移について検討し主要成分の減少傾向が 1990 年以降緩やかになっていることを報告している本報告では行政機関により箱根地域に分布するほぼ全ての源泉を対象として実施された実態調査等の立ち入り調査の結果を整理し箱根地域における温泉資源の推移について検討した結果について報告する 2. 使用したデータ 2009 年 3 月に環境省が公表した温泉資源の保護に関するガイドラインでは温泉資源の状況を的確に把握するためのモニタリング項目として温泉のゆう出量温度及び井戸の水位が適当であるとしている箱根地域の温泉を管轄する小田原福祉事務所では温泉台帳に登録されているすべての源泉を対象とした立ち * 神奈川県温泉地学研究所神奈川県小田原市入生田 586 報告, 神奈川県温泉地学研究所報告, 第 41 巻,57-62,2009.

1950 ~ 1969 年 1970 ~ 1989 年および 1990 年から 2009 年の4つに区分し各期間の揚湯量温度導電率静水位の各項目の経年変化の傾向について検討することとした経年変化の傾向を示す指標として各期間における各データの時系列を最小二乗法により直線近似しその勾配 ( 以下トレンドとする ) を用いたなお同じ年に複数回測定が行われている項目については

2 1950 ~ 1969 年 1970 ~ 1989 年および 1990 年から 2009 年の4つに区分し各期間の揚湯量温度導電率静水位の各項目の経年変化の傾向について検討することとした経年変化の傾向を示す指標として各期間における各データの時系列を最小二乗法により直線近似しその勾配 ( 以下トレンドとする ) を用いたなお同じ年に複数回測定が行われている項目についてはその平均値をその年の測定値として計算に用いた図 2 箱根地域全体の温泉掘削許可件数の推移 ( 小田原保健福祉事務所温泉課資料による ) 入り調査 ( 温泉実態調査 ) を実施し温泉の温度静水位導電率揚湯量などを実測している最も古いデータは揚湯量と温度が 1925 年導電率が 1973 年静水位が 1956 年のものであり最新のデータは各項目とも 2009 年のものであった調査の頻度は地区ごとあるいは源泉ごとに異なるが概ね 1960 年代までは数年に一度 1970 年代から 1990 年代前半までは毎年それ以降は 3 年に 2 度の頻度で実施されている温泉資源の状況を把握するにあたってはたとえば個々の源泉の温度や静水位などの推移に着目する方法が考えられるが既に述べたとおり箱根地域には 280 以上の源泉がありそれらの一つ一つの状況について検討するのは非常に煩雑である上全体の状況を把握するためには効率も悪い図 2 に箱根地域全体における温泉掘削許可件数の累計の推移を示す図 2 は源泉数そのものの推移を示しているわけではないが箱根地域における温泉開発状況がどのように推移してきたのかを把握することができる図 2によれば温泉の開発得傾向は 1920 年代から始まり特に 1950 ~ 1970 年ごろに顕著であったその後許可数の増加傾向はゆるやかになり年間数件程度の状況が続いているそこで本稿ではこのような源泉数の推移に対応させてデータの存在期間を 1925 ~ 1949 年 3. 結果 3.1. トレンドの頻度分布温泉実態調査による揚湯量温度導電率静水位の各データをもとに上記の各期間におけるトレンドを源泉ごとに算出しヒストグラム ( 図 3) および累積度数分布曲線 ( 図 4) を作成したまた各期間各項目の平均値中央値について表 1にまとめた度数を集計するデータ区間の値の正負については一般的に温泉枯渇化を示すと考えられる傾向すなわち揚湯量減温度低下導電率低下静水位低下の場合にそれぞれ負となるように設定した各項目のトレンドのヒストグラム ( 図 3) は検討した全ての期間で正負両方の区間に裾をひいた単峰性 ( ピークが一つ ) の形状となっているデータ区間の端で若干頻度が高くなっているがこれは個々の源泉の状況やその付近のローカルな状況の変化の影響を受けている可能性もありここでは検討しないこととするこうしたヒストグラムの特徴から過去に温泉資源の枯渇化が深刻な問題とされていた時期においても箱根地域の全ての源泉が枯渇化傾向にあったわけではないことがわかる一方トレンドの最頻区間は4 期間を通じて同一であり揚湯量は年間 -2 ~ 0(l min -1 / 年 ) 温度は -0.5 ~ 0( / 年 ) 導電率は -0.1 ~ 0(mS cm -1 / 年 ) 静水位が -0.5 ~ 0(m / 年 ) であったしたがって全体的に見た場合は今もなお枯渇化傾向が続いていると考えられる表 1 揚湯量温度導電率静水位のトレンドの平均値と中央値

3 図３揚湯量温度導電率静水位のトレンドのヒストグラム図４揚湯量温度導電率静水位のトレンドの累積頻度分布曲線

図５温度のトレンドの地理的分布 ( 上 1950 1969 年下 1990 2009 年 ) 累積頻度積算曲線図 4 についてみると各項目と図６揚湯量のトレンドの地理的分布 ( 上 1950 1969 年下 1990 2009 年 ) 源泉と低下減少傾向にあった源泉の地理的分布図も年代が進むにつれて最頻区間における曲線の勾配図 5 および 6

1969 年の温度と揚湯量は 1950 1969 年に測定を実施した源泉数が少なかっを除けば年代が新しいほど大きくなる傾向が認められたため比較ができなかったる以上のことから年代が進むとともに強い枯渇化傾図５および６によれば 1950 1969 年では強羅地向を示す源泉の割合が減少しており全体的な枯渇化傾域に温度上昇傾向の見られた源泉が集中しているまた

4 図５温度のトレンドの地理的分布 ( 上年下年 ) 累積頻度積算曲線図 4 についてみると各項目と図６揚湯量のトレンドの地理的分布 ( 上年下年 ) 源泉と低下減少傾向にあった源泉の地理的分布図も年代が進むにつれて最頻区間における曲線の勾配図 5 および 6 を作成しそれぞれの特徴を比較したが急になっている特に 1950~1969 年の温度を除くと分布図の作成にあたっては温泉地学研究所の KOGMA 負のデータ区間における累積頻度およびその増加傾向プロジェクト萬年ほか 2009 により把握している源が小さくなっていることが注目されるトレンドの平均泉の位置情報を用いたなお導電率と静水位について値と中央値についても年の温度と揚湯量は年に測定を実施した源泉数が少なかっを除けば年代が新しいほど大きくなる傾向が認められたため比較ができなかったる以上のことから年代が進むとともに強い枯渇化傾図５および６によれば年では強羅地向を示す源泉の割合が減少しており全体的な枯渇化傾域に温度上昇傾向の見られた源泉が集中しているまた向も緩和されていると考えられる同地域の南側において揚湯量が増加傾向の源泉が多く分布している一方年の地理的分布には 3.2. 温度揚湯量のトレンドの地理的分布年における温度のトレンドは累積頻度温度上昇揚湯量増加の傾向のある源泉が特定の範囲に集中している状況は認められない曲線図 4 の最頻区間から正のデータ区間にかけての年の期間中は 1966 年に箱根群発地震活勾配が緩やかであり中央値平均値とも正の値をとる動が発生しておりそれに続いて強羅温泉の異常昇温表 1 など他期間他項目とは明らかに異なる特徴が 1967 年に観測されている大木ほか 1968 温泉のを示しているそこでこの期間と最新の 20 年間年について温度揚湯量が上昇増加傾向にあった異常昇温はその後徐々に下流へ波及し広田粟屋 1973 強羅地域の末端部にあたる自然湧泉では 5 年後の 1972 年に温度のピークが観測されている大山ほ

5 か 1985) 1950 ~ 1969 年における温度のトレンドの地理的分布および頻度分布の特徴はこうした異常昇温の影響を反映しているものとみられる 4. まとめ温泉実態調査結果にもとづき 2009 年までの温泉の揚湯量温度導電率静水位のトレンドについて検討した結果から箱根地域における温泉枯渇化の傾向は現在も続いているものの年代とともに緩和されていると見ることができるしかしながら菊川板寺 (2008) によれば 1990 年以降箱根湯本地域の温泉溶存成分の減少傾向が穏やかになっている一方で温泉地の中心部で溶存成分の減少が進んでおり塩類泉が減少し単純温泉が増加しているここで検討したトレンドについても 20 年間の平均的な傾向であることを考慮すれば決して小さな値とは言えず源泉によっては依然看過できない状況にあることを示している本稿では検討しなかったが大きなトレンドを示した源泉については源泉そのものはもちろんのこと周辺のローカルな状況も把握し経年的な変動の原因を明らかにする必要がある本稿で示した通り温度や揚湯量など現地で測定可能な基本的項目により地域の温泉がどのような状況にあるか把握することが可能である今後も可能な限り多数の源泉を対象としたモニタリングを継続することが重要である謝辞本稿をまとめるにあたり小田原保健福祉事務所温泉課の温泉実態調査結果を利用させていただきました膨大な帳票データの入力に尽力された横山洋司温泉課長をはじめ温泉課職員の皆様に敬意を表するとともに記して感謝いたします参考文献箱根湯本温泉旅館組合 (2000) 箱根湯本塔之沢温泉の歴史と文化箱根湯本温泉旅館組合創立 50 周年記念誌,399p. 平野富雄 (1994) 箱根二十湯, 神奈川新聞社,259p. 広田茂粟屋徹 (1973) 箱根火山における泉温および水の連続観測, 昭和 47 年 (1972), 温研報告,4(1), 菊川城司 (2003) 箱根火山における温泉の温度湧出量水位の観測結果 1990( 平成 2)~ 2002( 平成 14) 年, 温地研報告,35,79-90,2003. 菊川城司板寺一洋 (2008) 箱根湯本地区温泉の泉質経年変化の評価 - 成因の解明に向けて, 神奈川博調査研報,13, 萬年一剛小田原啓菊川城司代田寧板寺一洋 (2009) 温泉利用施設の意識調査 -アンケート結果から-, 観測だより, 59, 大木靖衛荻野喜作平野富雄広田茂大口健志守矢正則 (1968) 箱根強羅温泉の温度異常上昇とその水理地質学的考察, 温研報告,6,1-20. 大山正雄伊東博大木靖衛 (1985) 箱根温泉の温度と湧出量の観測昭和年 ( ), 温地研報告,16(5), 大山正雄迫茂樹 (1987) 箱根湯本塔の沢温泉の水位の経年変化, 温地研報告,18(2), 大山正雄 (1989) 箱根湯本湧泉の流出解析 ( 第 2 報 ), 温地研報告,20(2),

図2 箱根湯本地域の自然湧泉における温度の連続観測結果(a)2011 年 1 月 1 日 4 月 30 日 (b)2011 年 3 月 10 日 15 日矢印は東北地方太平洋沖地震の発生時刻を示す図4 図3 湯本地域の地下水位観測井における連続観測結温泉温度および揚湯量の推移源泉の位置を

図2 箱根湯本地域の自然湧泉における温度の連続観測結果(a)2011 年 1 月 1 日 4 月 30 日 (b)2011 年 3 月 10 日 15 日矢印は東北地方太平洋沖地震の発生時刻を示す図4 図3 湯本地域の地下水位観測井における連続観測結温泉温度および揚湯量の推移源泉の位置を東北地方太平洋沖地震の影響による箱根温泉の変化板寺一洋 * 菊川城司 * 代田寧 * Changes in temperature and discharge of hot spring waters observed in Hakone spas caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake by Kazuhiro ITADERA,