Microsoft Word - JCSS2010 Mariko ITO

Size: px

Start display at page:

Download "Microsoft Word - JCSS2010 Mariko ITO"

こうじかみいしづ
5 years ago
Views:

1 けん玉操作における視覚情報と姿勢制御 Visual Information and Postural Control in Bilboquet 伊藤万利子, 三嶋博之, 佐々木正人 Mariko Ito, Hiroyuki Mishima, Masato Sasaki 東京大学, 早稲田大学 The University of Tokyo, Waseda University Abstract In this study, we addressed the relation between dexterity and the postural control in a skilled task. Four and four players of Bilboquet participated in this experiment. Participants performed trials of Swing-in, a task requiring perceptual-motor coordination with a moving ball on a string. Results indicated that the s head and knee movements were more extensive than the s, and the couplings of the head and the ball, and the knee and the ball were tighter in the s than in the s. And at the end of each trial, the s head and ball movements were more coupled than the movements of s, whereas there was no difference in the coupling of knee and ball movements in both groups. These results suggest that the s controlled their posture to dynamically coordinate their body with the moving ball and the strong visual coupling in the s which was supported by the knee movement seemed to contribute the stabilization of their vision. Keywords embodiment, dexterity, visual coupling, adaptive postural control 1. 背景目的身体知研究ある領域の熟練者の身体を検討することにより身体が知っている知識すなわち身体知 [1] を明らかにする試みがこれまで数多くなされてきたそのような試みを通してある領域の初心者は熟練者と同様の手続きを行うことはできても巧みさを真似することは困難であることがわかっている [] この初心者が真似できない巧みさこそ熟練者ならではの知識であり身体知解明の鍵を握るものであろうでは巧みさはなぜどのようにして成立するのであろうか巧みさと姿勢制御熟練者の巧みさを解明する上で示唆的な指摘であると考えられるのが運動制御姿勢制御の研究におけるものであるわれわれがある課題を行うときにはその目的の動作とともにそれを支える姿勢が制御されているある課題において姿勢は動作を達成する運動とは区別されるものであり補助的な役割を担っているそれにも関わらずある課題における姿勢の重要性が理論的には Bernstein(1996) や Reed() によって指摘されている [3][4] 実証的には主に視覚的な課題 ( 例えば動く対象と頭部との距離を維持するような課題 ) を実行する時の姿勢制御 ( つまり姿勢制御自体が目的ではない時の姿勢制御 ) を検討する Supra-postural task パラダイムの研究 ( 例えば [5][6]) において課題達成における姿勢の役割が検討されているそれら一連の研究により姿勢はその場に立って立位あるいはあるポーズを維持するというものではなく課題によって調整される適応的なものであり課題の遂行を促進するものであるということが明らかになっているこれらの知見にもとづけばあるパフォーマンスが上手にできることつまり巧みであることには姿勢制御が関連していると考えられるしたがって身体知を身体運動の分析によって明らかにしようとする場合課題を実行することに直接的に関わる動作だけを問うあるいはあらゆる身体部位の運動を網羅的に調べあげる方法ではなく動作の背後にあってそれをサポートする姿勢がどのように制御されているのかという観点から検討することができよう本研究では複雑な視覚運動課題であると考えられるけん玉操作の事例をとりあげるそしてけん玉の熟練者群と初心者群との姿勢の比較を通してこつを必要とする技において姿勢がどのように制御されているのかその特徴を明らかにし巧みさと姿勢制御の関連を検討することを目的と

2 した. 方法研究対象実験に参加したのは実験以前にけん玉の経験があまりなかった者 4 名 ( 初心者群 ) と日本けん玉協会の定める段位においてけん玉の実力が最高レベルであると認められている者 4 名 ( 熟練者群 ) であった熟練者群の一人は左利きでありその他の実験参加者は右利きであった実験内容装置本研究ではけん玉の基本技であるふりけんを実験参加者に実行してもらったふりけんとは利き手でけんをもって前に振り出した玉を返し玉自体が一回転するところでけんを玉に入れるというわざである熟練者はこのわざを容易に成功させることできる一方初心者が成功させることは難しく熟練者のふるまいと初心者のそれとを比較した場合に巧みさを検討しやすいのではないかと考えられた実験参加者は 1 セット回のふりけん試行を 1 セット行った実験参加者の回のふりけん動作とけん玉の挙動を 3 次元動作解析装置 (Vicon46, 1Hz) と DV カメラで記録した分析方法ふりけんの開始は行為者が非利き手で玉を放し始めたところとし試行の終わりは玉とけんが接触したところとした分析に使用したデータは基本的には熟練者群の全試行 [ このうち成功試行は E1( 熟練者群の参加者 1)=193 回 E=199 回 E3=18 回 E4=195 回 ] と初心者の失敗試行 ( 各初心者回 ) のうち試行の最後で玉とけんとの接触があった試行 [N1( 初心者群の参加者 1)=188 回, N=189 回, N3= 回, N4=193 回 ] であった解析対象としたのは頭部腰膝足首玉の運動であったなおふりけん実行時に横方向への運動があまり観察されなかったため分析の際には前後方向と上下方向のデータを用いることとした頭部腰膝足首玉の運動データを用いて 1) 玉の運動 ) 身体の運動 3) 玉の運動と身体の運動とのカップリングについて評価した玉の運動玉の運動はまず玉の自転を除いた玉の軌道について調べたさらにふりけんでは各試行の最終フェーズで玉がそれ自体として 1 回転したところでけんを玉に入れなければ成功したことにならないため玉の回転 ( 玉が 1 回転していたかどうか ) についても検討した身体の運動身体の運動を評価するため頭部の平均移動距離 (mm/sec) と膝の平均運動量 (degrees/sec) を算出したそれらのデータは実験参加者ごとに各ブロックで平均値を算出し Group(/) Block(1Blocks) の反復測定分散分析を行った玉と身体とのカップリング玉の運動と身体の運動とのカップリングを検討するため玉の運動と身体 ( 頭部 / 腰 / 膝 / 足首 ) の運動の RMS を算出したカップリングの評価は別の方法でも行った実験時の観察により回転する玉の穴にけんを入れる各ふりけん試行の最終フェーズで熟練者群のみ玉が頭部付近にあるときに試行の終了となっていると思われたそこで各ふりけん試行の最終時点における玉と身体 ( 頭部 / 腰 / 膝 / 足首 ) との位置関係が試行間で安定していたのかを身体と玉との距離方向を算出し Variable Error(VE) を求めて評価した RMS と VE の値はまず時系列データを標準化し実験参加者ごとに各ブロックでの平均値を算出して Group Block Body(head/hip/knee/ankle) の反復測定分散分析を行ったなお RMS と VE はそれらの値が小さいほど身体と玉とが協調していたことを示す本研究で行った反復測定の分散分析において球面性の仮定が成り立たなかったものに関しては Greenhouse-Geisser の調整がなされた統計解析のために SPSS16.J が使用された 3. 結果結果についてはスキルの違い (/) に焦点化して述べる試行に要した時間の平均値は熟練者群が 1.19sec 初心者群が 1.sec であり熟練者群のほうが大きかった [t (6)=.67, p <.5] 玉の運動図 1-1 と 1- はあるブロック ( ふり

3 けん試行 ) における熟練者群と初心者群の玉の軌道の代表例である図のように玉の運動については熟練者群の方が試行間で似たような玉の軌道を生成できていると思われたしかしながら熟練者群であっても各試行の最終フェーズでは軌跡の再現性が相対的に低下していた vertical displacement (mm) vertical displacement (mm) AP displacement (mm) 図 1-1. 玉の軌道 ( 熟練者 ) AP displacement (mm) 図 1-. 玉の軌道 ( 初心者 ) 玉の回転については熟練者群では有効なデータのうち試行を除いて玉を 1 回転させることができていたそれに対し初心者群では有方向 ) の平均移動距離と膝の運動の平均運動量に対して Group(/) Block(1Blocks) の反復測定分散分析を適用したその結果上下方向の頭部運動について Group の主効果が有意であり上下方向における熟練者群の頭部運動の方が初心者群のそれよりも大きかった [F (1, 6) = 5.13, p <.1] 前後方向の頭部運動については Group の主効果が有意傾向にあった ( 図 ) 膝の平均運動量に関しても熟練者群の方が初心者群よりも大きかった [F (1, 6)= 4.97, p <.1] ( 図 3) mm / sec degrees / sec head movement head AP 図. 頭部運動 knee movement knee movement 図 3. 膝の運動 head vertical 効なデータのうち 5 試行について玉を 1 回転させることができていたつまり熟練者群では基本的に玉を 1 回転させることができていたが初心者群ではふりけんを成功させるために必要な玉を一回転させるという事象が生じていなかった玉身体のカップリング玉の運動と身体の運動とのカップリングを検討するため算出した前後方向と上下方向の RMS 値に対し Group Blocks Body (head/hip/knee/ankle) の反復測定分散分析を適用したその結果前後方向の RMS につ身体運動算出された頭部運動 ( 前後方向上下いて Body の主効果が有意傾向にあった [F (1.78,

4 1.7) = 3.4, p <.1] Body の主効果について Bonferroni 法によって多重比較を行った結果有意ではなかった上下方向の RMS 値に関しては腰と膝においては熟練者群のほうが初心者群よりも RMS が小さく [ それぞれ F (1, 6)= 7.7, p <.1; F (1, 6)= 18.51, p <.1] 頭部についても熟練者群のほうが初心者群よりも RMS が小さい傾向があることが明らかになった [F (1, 6) = 3.89, p <.1] それに対し足首については初心者群の方は熟練者群よりも RMS が大きい傾向があった [F (1, 6) = 5.35, p <.1] また熟練者群においては頭部のほうが足首よりも腰が足首よりも膝が足首よりも RMS 値において小さかった ( それぞれ p <.5) 初心者群においては腰のほうが頭部よりも腰が足首よりも膝が頭部よりも膝が足首よりも RMS 値において小さかった (p <.5)( 図 4-1, 4-) RMS RMS RMS (Expert:VERTICAL) Blocks 図 4-1. 熟練者群の RMS (Vertical) RMS (Novice:VERTICAL) Blocks 図 4-. 初心者群の RMS (Vertical) head hip knee ankle head hip knee ankle 試行の最終時点での身体と玉との位置 ( 距離方向 ) の一貫性を検討するため算出した VEdistance と VEdirection に対して Group Blocks Body の反復測定分散分析を適用したまず VEdistance においては頭部と腰について熟練者群のほうが初心者群よりも VE 値が小さかった [F (1, 6)= 3.7, p <.1; F (1, 6)=.74, p <.1] 膝と足首の VEdistance においては有意でなかった熟練者群においてのみ頭部のほうが足首よりも腰のほうが膝足首よりも VE 値において小さい傾向があった (p <.1)( 図 5) VEdirection についてはスキルによる差はなかった VE (distance) 3 VE head hip knee ankle 図 5. ふりけん試行の最終時点における VEdistance 4. 考察分析の結果をスキルの違いに焦点をあててまとめると以下のようになる : 玉の軌道については熟練者群は初心者群よりも試行間でその再現性が高かった頭部膝の運動ともに熟練者群のほうが初心者群よりも大きかった熟練者群の運動のほうが初心者群のそれより玉の運動と協調していた各ふりけん試行の最終時点に注目すると熟練者群のほうが初心者群よりも頭部玉のカップリングは強かったが膝玉のカップリングの強さは両群で変わらなかった以上の結果から両群の姿勢制御について熟

5 練者群では運動する玉に対して頭部が動的に協調するように膝の運動を利用して姿勢を調整していたのに対し初心者群では玉に対して身体を静的に安定させた姿勢制御であったと特徴づけることができるだろう熟練者群における適応的な膝の運動に支えられた頑強な知覚的カップリングはたえず運動する玉を見やすくすること視覚の安定化に寄与し特に各試行の最終フェーズでは回転を伴う玉の穴の検知に役立ちふりけんの成功に貢献していたと考えられる本研究において熟練者群の柔軟な姿勢制御は身体 ( 見る器官である目を備えた頭部 ) と運動する玉とが結びつくことつまり知覚的なカップリングを支えるものであったしたがって巧みさを支えているのは適応的な姿勢制御というよりも知覚的なカップリングであると考えられる Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 5, 参考文献 [1] ポランニー, M. 高橋勇夫 ( 訳 ) (3). 暗黙知の次元ちくま学芸文庫 [] 生田久美子 (1987). わざから知る東京大学出版会 [3] Bernstein, N. A. (1996). On the dexterity and its development. In M. L. Latash, & M. T. Turvey (Eds.), Dexterity and its development (pp.9-44). Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum Associates. [4] Reed, E. S. (1996). Encountering the World: Toward an Ecological Psychology. Oxford University Press. ( リード, E. S. 細田直哉 ( 翻訳 ) 佐々木正人 ( 監修 )(). アフォーダンスの心理学生態心理学への道新曜社 ) [5] Stoffregen, T. A., Pagulayan, R. J., Bardy, B. G., & Hettinger, L. J. (). Modulating postural control to facilitate visual performance. Human Movement Science, 19, 3. [6] Stoffregen, T. A., Smart, L. J., Bardy, B. G., & Pagulayan, R. J. (1999). Postural stabilization of looking. Journal of

25 D Effects of viewpoints of head mounted wearable 3D display on human task performance

25 D Effects of viewpoints of head mounted wearable 3D display on human task performance 1140322 2014 2 28 D HMD HMD HMD HMD 3D HMD HMD HMD HMD i Abstract Effects of viewpoints of head mounted wearable