国内企業22万社の融資等の保全状況実態調査

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1 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: URL: 国内企業の 3 分の 2 がでの借入 ~ 無担保 無保証 ( ) 融資は約 1 割 ~ はじめに 10 月 21 日 金融庁は 平成 28 事務年度金融行政方針 を発表した この中で 金融機関による企業への融資姿勢について 担保余力を有する顧客への取り組みが優先されてきたなかで そうした余力が少ないながらも事業性や将来性を評価され資金を注入すべき先に対してのフォローができていないという 日本型金融排除 の問題が取り上げられている 9 月に発表された 金融仲介機能のベンチマーク にも 担保 保証依存の融資姿勢からの転換として 事業性評価に基づく融資金利や無担保与信先数 融資額の割合などが選択ベンチマークに設定されているなど 担保余力を有し いくらでも借りられる先 と 日本型金融排除により 借りられなかった先 との二極化の解消が これまで以上に金融機関に求められている 帝国データバンクは 調査報告書ファイル (170 万社収録 ) から 現状の金融借入における担保設定状況について分析可能な 22 万 2977 社 ( 全国 全業種 ) を対象に その実態や調達余力 資金需要について調査した なお 担保設定状況に関する調査は 今回が初めてとなる 対象は 2014 年 10 月以降の担保設定状況 ( 過去の借入分も含む ) が判明している企業で 無借金および役員借入のみの企業は除く 分類は 全借入が担保提供なしの 借入に付きのものが含まれるが保証がない 借入に不動産 預金 有価証券などの担保提供が 1 つ以上含まれる に分類している 調査結果要旨 1. 調査対象企業 22 万 2977 社のうち 3 分の 2() にあたる 14 万 5499 社が での借入を行っている 2. 製造業 不動産業 ではでの調達が多く 付き融資は 建設業 サービス業 に多い 3. 調査対象企業 22 万 2977 社のうち 32.9% が 資金調達余力に乏しいと見られる追加借入困難先となっている 4. 追加借入困難先のうち に前向きな資金需要あり 1

2 1. 企業の担保設定状況 調査対象企業 22 万 2977 社の担保設定状況について分析すると 借入に不動産 預金 有価証券などの担保提供が 1 つ以上含まれる による借入を行っている企業が最も多く 全体の にあたる 14 万 5499 社となっている 企業の約 3 分の 2 が担保差し入れによる資金調達を行っていることが分かる また 全借入が担保提供 保証なしの が 2 万 1845 社 社数 21,845 55, , ,977 ( ) で全体の約 1 割 での借入は無く の保証の付いた借入をしている が 5 万 5633 社 ( 同 ) となっている 業種別業種別の担保設定状況を見ると 設備や不動産を多く有する 製造業 ( :79.2%) と 不動産業 ( 同 83.3%) では 企業の約 8 割が借入を行っており 全業種平均 を大きく上回っている 一方で 担保物件を持ちづらい サービス業 ( 同 53.9%) やつなぎ融資での利用が多い 建設業 ( 同 61.3%) では 借入が少ないことが分かる 建設業製造業卸売業小売業 3,020 3,547 5,587 2, % 13, % 26, % 43, % 5, % 36, % 45, % 13, % 30, % 49, % 6, % 15, % 24,477 運輸 通信業 % 3, % 7, % 12,218 サービス業 5, % 11, % 19, % 36,409 不動産業 % % 6, % 7,702 その他 % % 2, % 3,761 21,845 55, , ,977 2

3 年商規模別年商規模別の担保設定状況を見ると 年商規模が 50 億円以上の企業では の比率が高まる一方で の利用は大きく減っている また 借入を最も利用しているのは年商 10 億円から 500 億円未満の中堅企業であり 10 億円 ~50 億円未満 ( 77.9%) と 50 億円 ~100 億円未満 ( 同 78.8%) では企業の約 8 割 100 億円 ~500 億円未満 ( 同 75.1%) では 4 社中 3 社が となっている 500 億円を超える大企業になると が減少し が大きく増加する傾向にある 1 億円未満 3, % 12, % 13, % 29,649 1 億 ~10 億円未満 9, % 37, % 81, % 128, 億 ~50 億円未満 5, % 5, % 38, % 48, 億 ~100 億円未満 1, % % 6, % 7, 億 ~500 億円未満 1, % % 4, % 6, 億 ~1000 億円未満 % 6 0.7% % 億円以上 % 2 0.2% % 1,121 21,845 55, , ,977 業歴別業歴別の担保設定状況を見ると 業歴が長ければ長いほどでの借入を行う先が多く 100 年以上 では約 9 割 (86.5%) の企業が となっている 一方で 業歴が浅く担保物件の少ない企業では や の比率が高く 10 年未満 では 7 割超 ( :18.7% :53.9%) の企業が 無担保での借入となっていることが分かる 10 年未満 3, % 10, % 5, % 19,364 10~30 年未満 6, % 26, % 29, % 62,653 30~50 年未満 5, % 11, % 46, % 63,664 50~100 年未満 5, % 6, % 57, % 69, 年以上 % % 6, % 8,042 未詳 % 0 0.0% % 8 21,845 55, , ,977 3

4 地域別地域別の担保設定状況を見ると 産業構造などを背景に大きく地域差が出ている 建設業者の多い 北海道 や卸 小売 サービス業者の多い 関東 では の割合が大きく ( 北海道 :25.1% 関東:33.2%) とくに 関東 では の割合が小さい(55.6%) 一方で 四国 北陸 では の割合が小さく ( 四国 :10.5% 北陸:15.7%) の割合が大きい ( 四国 :82.3% 北陸:75.2%) 北海道 % 2, % 6, % 9,635 東北 1, % 2, % 10, % 14,411 関東 8, % 26, % 43, % 78,859 北陸 % 1, % 7, % 10,025 中部 2, % 6, % 22, % 31,435 近畿 4, % 8, % 25, % 38,081 中国 1, % 2, , % 12,839 四国 % % 5, % 6,225 九州 1, % 4, % 15, % 21,467 21,845 55, , , 企業の資金調達余力分析 調査対象企業の調査報告書を分析すると 3 分の 1 追加借入うち前向き困難先比率にあたる 32.9% の企業で 財務や担保設定状況 業績見通資金需要有 しなどを総合的に見て資金調達余力が乏しい状態 ( 以下 15.8% 追加借入困難先という ) にある と見られることが分かっ 42.0% 16.5% た 担保設定の状況から追加借入困難先の比率をみると 32.0% 16.3% 最も高かったのは の 42.0% 担保提供による 全体 32.9% 借入がなく付き融資のみを受けている企業の約 4 割が 調達余力に乏しいと見られ 有 担保 とは 10 ポイント とは 26.2 ポイントの乖離がある こうした追加借入困難先の資金需要について 資金調達余力は限界ながらも 設備投資や業容 拡大に伴う運転資金など 前向き資金需要 のある企業の比率を分析すると 追加借入困難先の うち で前向きな資金需要があると見られる これについては 担保設定状況による差はほ とんどないが こうした企業の中には 積極的な借入ニーズがありながらも いわゆる 日本型金 融排除 の対象となっていた先が含まれている可能性が高い 4

5 業種別業種別に追加借入困難先比率をみると 最も比率が高いのは 建設業 の 36.2% 次いで 小売業 の 35.4% 運輸 通信業 の 34.3% となった 追加借入困難先のうち前向き資金需要のある割合をみると 不動産業 の が最も高く 運輸 通信業 の 20.3% が続く また での借入を行う不動産業者は 一定の前向き資金需要が発生している可能性があるものの 調達環境が苦しくなっている ( 追加借入困難先比率 22.4%) という実態も見られた 業種別追加借入困難先比率 建設業 16.9% 42.8% 34.9% 36.2% 製造業 9.4% 39.4% 33.5% 32.4% 卸売業 13.1% 40.3% 29.0% 30.2% 小売業 21.3% 42.6% 34.3% 35.4% 運輸 通信業 14.5% 42.1% 33.4% 34.3% サービス業 20.3% 44.6% 30.0% 33.3% 不動産業 22.4% 39.3% 28.4% 29.1% その他 11.4% 35.1% 25.1% 23.3% 全体 15.8% 42.0% 32.0% 32.9% うち前向き資金需要有 14.2% 17.9% 14.4% 16.9% 20.3% 16.3% 網掛は 全国平均を 5 ポイント以上上回ったものに赤 5 ポイント以上下回ったものに青 年商規模別年商規模別にみると 1 億円未満 の企業の 56.9% が資金調達余力に乏しいことが分かった 同レンジでは 全体の平均は下回っているものの 13.7% の企業で前向きな資金需要があると見られる 年商規模別追加借入困難先比率 うち前向き資金需要有 1 億円未満 1 億 ~10 億円未満 15.7% 40.0% 100 億 ~500 億円未満 1.2% 6.9% 500 億 ~1000 億円未満 1.2% 0.0% 1000 億円以上 0.6% 0.0% 46.1% 60.9% 56.2% 56.9% 38.5% 37.3% 10 億 ~50 億円未満 4.3% 16.6% 18.1% 16.5% 50 億 ~100 億円未満 1.3% 7.9% 8.4% 7.2% 2.7% 2.2% 15.8% 42.0% 32.0% 32.9% 4.3% 3.6% 0.8% 0.7% 13.7% 16.5% 20.5% 20.2% 22.9% 15.8% 37.5% 網掛は 全国平均を 5 ポイント以上上回ったものに赤 5 ポイント以上下回ったものに青 5

6 業歴別業歴別にみると 年商規模と同様に業歴が長いほど資金調達余力も増していくという傾向が見られた 一方で 前向き資金需要の動向をみると業歴に反比例しており 10 年未満 のレンジでは 44.5% の企業が追加借入困難となっているが その中でも 22.3% の企業では前向きな資金需要が発生している 業歴別追加借入困難先比率 10 年未満 39.2% 48.4% 40.4% 44.5% 10~30 年未満 17.5% 45.1% 35.9% 37.8% 30~50 年未満 9.5% 36.5% 32.7% 31.4% 50~100 年未満 5.3% 30.2% 29.4% 27.6% 100 年以上 6.0% 25.6% 27.3% 25.6% 未詳 0.0% % 15.8% 42.0% 32.0% 32.9% うち前向き資金需要有 22.3% 17.1% 15.0% 14.5% 13.7% 0.0% 網掛は 全国平均を 5 ポイント以上上回ったものに赤 5 ポイント以上下回ったものに青 地域別 地域別にみると 追 地域別追加借入困難先比率 加借入困難先比率が最うち前向きも高いのは 関東 の資金需要有 35.6 % となった一方で 東北 と 北陸 ではそれぞれ 23.5% 21.2% と全体平均を 10 ポイント以上下回っている これは 不動産などへの依存度の高さに関連していると見られ 前段の分析で の利用率 北海道東北関東北陸中部近畿中国四国九州 17.3% 12.5% 18.4% 5.8% 8.9% 18.2% 10.8% 13.1% 17.4% 15.8% 42.0% 24.6% 45.1% 22.6% 41.1% 44.6% 40.4% 44.8% 39.1% 42.0% 32.8% 24.3% 33.4% 22.8% 35.2% 34.9% 33.9% 33.3% 26.6% 32.0% 33.9% 23.5% 35.6% 21.2% 34.2% 35.2% 33.3% 33.0% 28.4% 32.9% 4.4% 10.6% 14.6% 18.4% 27.3% 19.4% 7.0% 11.1% 15.8% が高い地域は総じて追 加借入困難先比率も高く の利用率が高い地域では追加借入困難先比率が低くなってい る 追加借入困難先のなかでも前向き資金需要のある企業で見ると 中部 が 27.3% と最多 一方 で 北海道 ( 同 4.4%) や 東北 ( 同 10.6%) 中国 ( 同 7.0%) が全体平均を大きく下回っ ており 企業の資金需要が停滞している可能性がある 6

7 3. まとめ今回の金融行政方針により 担保 保証に過度に依存せず 顧客の事業性を評価し顧客とともに地域経済の成長に寄与していくという働きかけが 各金融機関に対しこれまで以上に求められることとなった 十分な調達余力を残す企業に集中していた貸出を フィデューシャリー デューティー ( 顧客本位の業務運営 ) に則って いわゆる日本型金融排除の対象となっていた企業へ分散させていくことが狙いとなっている 今回の調査では 企業の担保設定状況を統計的に分析するなかで 業績や業歴の面だけでなく 業種や地域でも格差が出ている実態が見えてきた 加えて 資金調達余力に乏しく追加調達が困難である先について分析するなかで そうした企業群の中にも 前向きな資金需要があり金融機関からの積極的融資が必要な企業も 少なからずある可能性が見えてきた 当然のことながら 金融機関側も過去の不良債権問題などから 保全によるリスク排除を進めてきた歴史もあるが こうした先へのアプローチによって 従来とは異なった目線に立ちながら国内の中小企業の事業価値を高めていくことが 今後期待されるところだろう 内容に関する問い合わせ先 ( 株 ) 帝国データバンク東京支社情報部箕輪陽介 TEL FAX yousuke.minowa@mail.tdb.co.jp 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております 報道目的以外の利用につきましては 著作権法の範囲内でご利用いただき 私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます 7