2008 年度 1 延髄の名称と説明 (15 点 ) 2 正誤問題 30( 主に 管系 脳室系 神経伝導路 脳神経 )(15 点 ) 3 多肢選択問題 30( 主に 律神経系と脳神経 )(30 点 ) 4 脳核とその 出 線維の説明 (10 点 ) 5 脳辺縁系と線状体の説明 (16 点 ) 6 視

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1 神経解剖学 2009 年度期末試験対策資料 ( 解答解説編 ) 作成 : 下貴 (2008 年度 学 ) 前半 (5 章まで ) のみ公開 修正 (5 章 2007 年度の問 3の2 の解答を修正 ) 完全版として公開 ( 後半を統合 2009 年度の情報を追記 ) 神経解剖学の過去問 (2006 年度 2008 年度本試験 ) の解答解説です 2009 年度本試験の情報 ( コメント 説明問題の解答例 ) も記載しました もし間違いを つけられたら ご指摘いただけるとうれしいです またご要望や質問などもぜひどうぞ 直接知らせていただくか ホームページのアドレスまでメールをください 資料の構成について 3 年分の過去問をカテゴリーごとに分類して 理解にとって 然な順序となるような章 てに再編成しています 各章冒頭ではその章に関する内容整理をまとめて い そのぶん各問題についての解説は簡潔なものとしました 1 Introduction: 神経解剖学の対象 神経系の発 2 髄膜 脳室系 脳 管系 3 脊髄を通る神経伝導路 4 脳神経 5 律神経 6 脳幹の構造 神経内科の臨床問題 7 脳 8 間脳と 脳 年度本試験の内容 コメント 記述問題解答例 未編集の過去問が欲しい は 野さんの 公開主義 をご覧ください 2005 年度過去問の解答解説やその他の補 資料も公開されています 参考 献について 1 講義配布資料 2 解剖学講義 (2 版 ) 3 神経科学 コミュニケション障害理解のために (3 版 ) 神経解剖学は 講義と配布資料が 較的よくまとまっていました また 眼解剖学の指定教科書である 2も 神経解剖学にかかわる部分 ( 脳神経と中枢神経系 ) についてクリアな記述を与えています 復習として 1で取り上げられたトピックについて 2を読んでいくことを推奨します 3は詳細な説明と臨床についての豊富な記載を含み 本資料作成時の調べ物に最もよく参照しました 出題傾向について 本資料で取り上げた 3 年分 ( 年度 ) の過去問ついて 出題内容と形式 は次のようになっていました 正誤問題と多肢選択式の問題が半分弱を占め ( 概して難しい ) 残りの説明問題 はだいたい限られたパターンで出題されているようです ( 脳 視床 脳辺縁系 脳幹の断 など ) 1

2 2008 年度 1 延髄の名称と説明 (15 点 ) 2 正誤問題 30( 主に 管系 脳室系 神経伝導路 脳神経 )(15 点 ) 3 多肢選択問題 30( 主に 律神経系と脳神経 )(30 点 ) 4 脳核とその 出 線維の説明 (10 点 ) 5 脳辺縁系と線状体の説明 (16 点 ) 6 視床核と視床下部の説明 (14 点 ) 2007 年度 (104 点満点?) 1 中脳の構造の名称と説明 (16 点 ) 2 正誤問題 32(16 点 )( 主に 管系 脳室系 神経伝導路 脳神経 ) 3 多肢選択問題 12(30 点 )( 臨床問題 律神経系と脳神経 ) 4 脳の説明 ( 脳路 プルキンエ細胞 脳核 葉 節葉 )(14 点 ) 5 視床髄板内核 内包の説明 (14 点 ) 6 脳正中 状断の断 図の図 と名称 ( 視床下部と海 傍回 ) 側 図の図 と機能局在の説明 (14 点 ) 2006 年度 1 視床の核または構造を 5つ挙げ 機能と線維連絡する部位を説明 (10 点 ) 2 正誤問題 32( 主に 管系 脳室系 神経伝導路 脳神経 )(16 点 ) 3 多肢選択式問題 17( 主に 律神経系 脳神経 )(30 点 ) 4 脳の説明 ( 脊髄 脳路 原 脳 プルキンエ細胞 )(10 点 ) 5 ( リッサウェルの ) 終帯 脳辺縁系の図 と機能的意義 (14 点 ) 6-1 延髄の障害と神経徴候 ( 障害部位から徴候を判断 )(10 点 ) 6-2 臨床問題 ( 徴候から障害部位を推定 )(10 点 ) 2

3 1,Introduction: 神経解剖学の対象 神経系の発 この章ではまず 資料全体の導入として 神経解剖学は何を対象とするか を説明しよう また 後の章で何度 か参照することになる 神経系の初期発生について ごく簡単にまとめておく 1-1 神経解剖学が対象とするもの神経解剖学とは 神経系 の 構造 を扱う科目である もちろんそれはそうなのだけど もう少し具体的に どんな対象を どのように 扱うのか ふつう神経系は 次のように大きく分類される : まず中枢神経系 central nervous sytem; CNS( 脳 + 脊髄 ) と末梢神経系 peripheral nervous system; PNS に分類される PNS は構造に着目すると脳神経 cranial nerves( 脳から出る ) と脊髄神経 spinal nerve( 脊髄から出る ) に分類され 機能に着目すると体性神経系 somatic nervous system( 動物機能 つまり随意運動や感覚を担う ) と自律神経系 autonomic nervous system( 植物機能 つまり平滑筋や腺などによる循環や体液の調節を担う ) に分類される ( 右図も参照 ) 以上は ニューロンの集まり としての神経系についての分類であり 神経 < 解剖 > 学では 中枢神経系の内部の空洞である脳室系 ventricle system 中枢神経系を囲む髄膜 meningis( 硬膜 +くも膜 + 軟膜 ) や中枢神経系を栄養する脳血管系といった 神経系に密接にかかわる構造も扱う いっぽう 肉眼解剖学 神経生理学 組織学との棲み分けがあるから 末梢神経の細かい走行 各神経組織の機 能や顕微鏡レベルの微細構造については 簡単にしか言及されないことが多い また神経解剖学は伝統的に 神経内科の臨床と密接な関わりを持ってきた ごく簡単なイメージでいうと 神経内科医は神経疾患の患者の症状を外側から観察し また簡単な神経学的検査 ( 腱をハンマーで叩いて反射をみる 腕を屈曲する時の筋緊張をみるなど ) を行うだけで原因となる疾患の種類や部位をかなり特定し 必要な処方を行ってきた ( もっともごく最近は CT や MRI がかなり普及したことで 神経内科の現場はかなり変わってきているらしいけど ) 神経解剖学で各神経の支配領域や神経伝導路 neural pathway の経路 交叉する高さ 局所的な障害でどんな症状がでるかといった点を細かく扱うのは こうした臨床実践に役立つ体系的な知識を提供するためである 1-2 神経系の発 3

4 神経系の発生の知識は 成熟した神経系の構造や機能を知る上で非常に役に立つので ここで発生の初期段階を ざっとみておこう ( 発生学の予習にもなる!?) # 初期発 をざっとみる 後の解説でここを参照します 今のとこ興味ないやという人は後から返って読んでも構いません ( 上図 ) 受精後 6 日ごろ子宮内膜に着床した胚は 13 日頃には 2つの大福が 底をくっつけている様な形 をとる ( 上図 ) 上の大福の中空が羊膜腔 下の大福の中腔が卵黄嚢であり 大福の底面は肥厚して上下の胚盤 embryonic disc( 将来に胚になるところ ) をつくる 次いで上胚盤葉の細胞が 上下の胚盤葉の間に進入して中胚葉 mesoderm となり 18 日頃には内 中 外の三胚葉の構成ができる ( 右図 ) 単層の外胚葉は 肥厚し 溝を作り 落ち込んで環状の構造をつくる これが神経管 neural tube である 22 日の図は外胚葉の方 ( 将来の背側 ) からみたもので 神経管と体節 somite( 脊椎や胸郭などの節構造をつくる ) が背側部の頭側から尾側までできている また神経管の形成とともに 上胚盤葉の一部の細胞が落ち込んで 神経堤 neural # 神経管と神経堤の形成 4

5 crest という構造をつくる 神経管は中枢神経系に分化し いっぽう神経堤は胚の各所に遊走して 末梢神経系やグリア細胞 軟膜やクモ膜 皮膚のメラノサイトなどに分化する ( 次ページ上図 ) 胚はこの後 腹側を内側にして丸まったような形をとる ( 前ページの上図の 28 日 ) 頭部の屈曲に鰓弓 (branchial arch) ができ 心臓や四肢の形成もはじまる 鰓弓は魚の鰓 ( えら ) に由来し ヒトでは顔面 下顎 咽頭の周辺に重要な構造をつくる ( 脳神経の理解に重要なので 後でまた言及します ) 右下図のように 神経管は頭側で串団子のかたちに膨らみ 前脳胞 brain vesicle 中脳胞 後脳胞を作る これらはさらに発達して それぞれ 前脳胞 終脳 間脳 中脳胞 中脳 後脳 脳幹 ( 橋 小脳 延髄 ) と分化する 神経管の管腔も 脳の発達とともに拡大 変形して 頭側 ( 脳の内部 ) では複雑な形態の脳室系 ventricle system をつくり 尾側 ( 脊髄 ) ではあまり形をかえず中心管となる こうしてイモムシ形に丸まった胚の背側に神経管と体節ができ 腹側には消化管ができる さらに頭側が膨らんで脳ができることで 将来の腹側 背側 頭側 尾側ができあがっている これは脊椎動物に共通する body plan であり 各神経がどういう走行をするかを決定づける基本的な構造となる 神経管を構成する神経上皮細胞は分裂 分化して 神経管が厚くなり 機能局在がみられるようになる 下図右のように 背側の翼板は将来の感覚ニューロン 腹側の基板は将来の運動ニューロンとなっていく また神経堤に由来する脊髄神経節が翼板の感覚ニューロンに投射し 運動ニューロンは末梢へと軸索を伸ばす こうして将来の脊髄の基本形 ( 背側から感覚神経が入り 腹側から運動神経が出て行く ) が出来上がっていることを確認しておこう 5

6 2 髄膜 脳室系 脳 管系 この章では 神経系の全体にかかわる構造である髄膜 脳室系 脳血管系をとりあげる 2-1 髄膜 meningis 中枢神経系は 脳実質 ( 神経細胞 + グリア細胞 ) が 髄膜 menings( 内側から軟膜 クモ膜 硬膜の 3 層構造 ) に覆われた構造をとる それをさらに頭蓋骨または椎骨が囲む 下に脳の前頭断の模式図を示す 硬膜 dura mater は頭蓋骨の内側にぺったりと張り付く強靱な骨膜である 2 層からなる硬膜は通常は癒着して 1 枚の膜となっているが ところどころで 2 層がはがれて中空の構造をつくり 静脈血を容れる ( 静脈洞 venous sinus) 硬膜の一部は脳実質の溝へと板状に突出して 脳の構造を支えている ( 左右の大脳を分ける大脳鎌 cerebral falx 左右の小脳を分ける小脳鎌 celebellar falx 大脳と小脳を分ける小脳テント celebellar tentorium がある ) クモ膜 arachinoid mater は硬膜に 軟膜 pia mater は脳実質のほうに貼り付いている クモ膜 arachinoid mater と軟膜 pia mater の間には 結合組織性の線維が疎に張られたクモ膜下腔 subarachinoid space があり ここには後述の CSF( 脳脊髄液 ) が環流し また動静脈が走っている 硬膜静脈洞の付近には クモ膜が静脈洞内へと突出した構造 ( クモ膜顆粒 ) がみられ CSF( 脳脊髄液 ) はここで静脈に排出される クモ膜 顆粒 というのは 脳の外側から肉眼でみたときに顆粒状 ( カリフラワー状?) にみえるから 髄膜炎 meningitis: 髄膜のうちとくに軟膜は感染をうけやすい 主に軟膜の感染による炎症性反応を髄膜炎といい 発熱や脳圧亢進症状 ( 頭痛 嘔吐 ) として現れる 診断や感染原因の特定 ( 細菌性 ウィルス性 真菌性など ) には 後述の CSF を採取して その結果をみて判断を行う 2-2 脳室系 ventricle system 脳室系は脳実質内にある空洞で 無色透明の脳脊髄液 (cerebrospinal fluid, CSF) の産生 循環 排出を行って いる CSF は ( 豆腐パックの水と同じように ) 脳実質の水分量の調節や形態の保持にはたらいている 成熟後の脳室系の構造は 脳の主要な構造と関連させると把握しやすい ( 右図と 1-2 の最後の図も参照 ) 上 から 左右の大脳半球に囲まれるように 2 つの側脳室があり 左右の室間孔 ( モンロー孔 ) を経て 間脳の視床 6

7 に挟まれる薄い部分が第三脳室 中脳の背側を通る細い管状の中脳水道 橋と小脳の間にある第四脳室と続き 正中孔 ( マジャンディー孔 ) と外側孔 ( ルシュカ孔 ) で外部とつながっている 脳室系を満たす CSF は 脳室内の脈絡叢 choroid plexus という構造で作られている 脈絡叢は 脳室の背側の 脳実質がなく軟膜と脳室が接するところで 毛細血管が脳室の内面を覆う上衣細胞と軟膜を巻き込んで内側に突出した構造である CSF が脳室系を流れる経路については やや古い (2004 年度の ) 次の過去問を題材として解説す ることにしよう : (2004 年度問 1) 脳 脊髄の正中 状断 の模式図を描き, その図を いて脳脊髄液の産, 循環, 吸収について説明せよ.(12 点 ) < 解答 > 左下に模式図を示す CSF は脳室系の脈絡叢で産生される CSF は 側脳室 室間孔 第三脳室 中脳水道 第四脳室を経て 第四脳室の正中孔 外側孔から脳室系を 出て 脳と脊髄を囲うクモ膜下腔に入る クモ膜下腔を循環したあと ( 主に ) 硬膜静脈洞に突出するクモ 膜顆粒から静脈に排出される まずは ( 間脳や脳幹など ) 脳の主要な構造と脳室系をセットで正しく配置できることが試される 正中矢状 断だから側脳室はみえないことに注意 ( 図では脳梁と透明中隔のところに 側脳室の影が書いてある ) 右の正 面図と対比して脳室系の立体的な形をよく確認しておこう 脳室系の 形状から逆に 大脳や間脳の構造 前 下 # 脳室系を腹側からみる 7

8 や位置を正確に把握することができる : 前角は前頭葉 中心部は側頭葉 後角は後頭葉 下角は側頭葉のそれぞれ内側にある ( 大脳が発達して 各葉の方向に伸びていくときに側脳室のかたちができるのである ) 間脳は第三脳室の側壁をつくる あとは脳室系 クモ膜下腔 上矢状静脈洞という CSF の流れをたどる CSF の循環障害である水頭症もあわせておさえておこう ( 脳室系の局所的障害で どこに CSF が貯留するかがよく問われる ) 水頭症 hydrocephalia: 何らかの原因 ( 腫瘍 クモ膜下出血 髄膜炎など ) で CSF の循環が障害され 頭蓋内 ( 主に脳室 ) に CSF が貯留した状態 障害部位によって 頭痛や嘔吐 精神症状 視神経の圧迫による視力低下などの症状が出る 2-3 脳 管系脳に分布する血管系は 動脈と静脈が伴走せずに まったく異なる経路をとることをまずおさえる 脳の動脈系については (1) 頭蓋にはいるところ (2) 脳底での環状構造 (3) 大脳の各葉への分布 の 3 点に分けてみていく まず右図のような視点 ( 脳実質を底面からみる ) に慣れよう 図の下半分は脳幹で 脳底動脈は橋の中央を走っている (1) 頚部から頭蓋内に向かう動脈は2 種類の左右で計 4 本しかない 腹側よりの内頚動脈 internal carotid a. と頚椎の横突孔を通る椎骨動脈 vertebral artery である (2) これらの動脈は 頭蓋内に入ったあと 脳底部で左右と前後がつながり 特徴的な環状の構造 (Willis 動脈輪 ) をなし この周辺で大脳の栄養を分担する前 中 後の 3つの大脳動脈が分岐する より詳しく追ってみよう : 内頚動脈は間脳の付近で 前方に向かう前大脳動脈 anterior cerebral a.; ACA と側方に向かう中大脳動脈 middle cerebral a.;pca に分かれる 椎骨動脈は延髄の腹側で吻合して脳底動脈 basilar a.;ba となり 中脳でまた左右に分かれて後大脳動脈 posterior celebral a.; PCA を作る 両者は前後の交通動脈で連絡され 環状の構造をつくる (Willis 動脈輪 ) Willis 動脈輪の機能的意義 : この構造は局所的な血管障害の際には迂回路をなすと考えられるが 実際にはその機能は不十分で たとえば左内頚動脈が閉塞した場合に 他の動脈からの血流では十分にカバーできないらしい Willis 動脈輪はむしろ 下記のような脳血管障害のリスク部位として知られる もやもや病 :Willis 動脈輪に多発性の狭窄が起こり めまいや頭痛 てんかんなどの症状がでる これは正式な疾患名で 英語名も moyamoya disease という 脳血管造影をするとたばこの煙のようなもやもやとした異常血管 ( 側副路 ) がみとめられるが 疾患名はこのことに由来する 8

9 動脈瘤 aneurysm: 動脈輪をつくる動脈は 血管がこぶのように膨らむ動脈瘤の好発部位である クモ膜下 出血 subarachnoid hemorrhage はその破綻により生じることが多い (3)3 つの大脳動脈の各々が大脳のどこに分布するかを右の模式図でみよう : 内頚動脈 ICA から分かれた前大脳動脈 ACA は 左右半球の間 ( 大脳縦裂 ) を走り 前頭葉 ~ 頭頂葉の内側面を栄養する 中大脳動脈 MCA は大脳半球の側面を走り 側頭葉を中心に大脳外側部の広い範囲に分布する 脳底動脈 BA から分かれた後大脳動脈 PCA は後方に向かい 側頭葉や後頭葉の内側面に分布する 脳の静脈系については 硬膜がつくる静脈洞が幹線となっている 脳実質に分布する静脈はすべて静脈洞に流れこみ 脳の後方に向かって流れて正中に合流し 最終的に左右の内頚静脈で頭蓋から出て行く という概要をまずおさえよう 右図では主な静脈洞と大脳鎌 小脳テントが示されている 重要な経路をみていこう : 上矢状静脈洞 ( 大脳鎌の上縁 ) は 大脳の静脈を受けつつ正中外側面を前方から後方へ走る 下矢状静脈洞は 同じく大脳の静脈を受けつつ大脳の正中内側面 ( 脳梁の上 ) を走り 間脳や脳底の静脈を集めた大大脳静脈を受けて直静脈洞と名前を変えて後方に走り 後頭部で上矢状静脈洞と合流する ( 静脈洞交会 ) その後に左右に分かれて 横静脈洞 S 状静脈洞を経て内頚静脈となって頭蓋外に出て行く 他に重要なものとして 海綿静脈洞は下垂体の左右にある網状の静脈洞であり 眼球周辺の静脈血を受ける ここは目や顔面の感染などが脳に波及しやすい上に 内頚動脈や脳神経 (CN ) が存在する重要な場所にあるため リスク部位として知られる 海綿静脈洞症候群 : 静脈炎 動脈瘤 周辺経が障害され 複合的な症状をきたす の腫瘍などでこの部位が障害されると 上記の脳神 9

10 ここまでで前振りは終了で 以下でようやく問題の解答解説に入ります 何やってんだと思うかもしれないけ ど 実は解説はだいたい終わっている! 問題と解答解説 2008 年度の問 2 より 下の各文について, 以下のいずれかを解答欄 ( 省略 ) に記入せよ. なお, 問題の性質上, 文中で言う 障害 は その部分の機能が完全に損なわれた状態 を意味する 正しい 誤りである どちらともいえない ( 以下はこの指示を省略する ) 1) 側脳室と第三脳室の脈絡叢は表裏の関係にあり, 同じ構造物の両面である. 2) 両側の室間孔が閉塞すると第三脳室の内圧が高まり, 水頭症になる. 3) クモ膜下腔は頭頂後頭溝の深部にも存在し, 脳脊髄液で満たされる. 4) クモ膜顆粒は硬膜を貫通して動脈内腔に突出する. 29) 大脳半球の大脳鎌に面した部分の大半は前大脳動脈で栄養される. 30 ) 間脳付近の血液は無対性の大大脳静脈を経由して海綿静脈洞に流入する. < 解答 > 1) 解剖実習の手引き で 第三脳室とその周辺 の項を参照してほしい まず脈絡叢は膜状の脈絡組織が静脈を巻き込んで突出した構造であった 側脳室と第三脳室の脈絡組織は同じ 1シートの脈絡組織からなり 室間孔周辺ではそれが折り返されて 裏表に貼り合わされた関係になっている その間に静脈が通り それが側脳室側と第三脳室側に突出して脈絡叢をつくる つまり問題文の前半は正しく 後半は 同じ構造物の同じ面である ならば正しい たぶん覚えてなくていいマイナーな内容だが 実習の手引きはなぜかこの点をフィーチャーしていたので 実習はまじめにやりましたか という問いなのだろう 2) 脳室系の構造と CSF の流れる方向をおさえる 両側の室間孔が閉塞すると側脳室の内圧が高まる 3) 硬膜とクモ膜は頭蓋骨にぺったり張り付き 軟膜は脳実質の方に張り付いている よって大脳の溝では むしろクモ膜下腔が広くなっている 大脳の溝や大脳と小脳の間などではクモ膜下腔がかなり広くなるところがあり これをとくにクモ膜下槽 subarachinoid cistern と呼ぶ クモ膜下槽の中でも 第四脳室正中孔の出口付近の小脳延髄槽は最大のもので ( 図 # 脳脊髄液の循環 を参照 ) ここで麻酔や脳脊髄液の採取を行うことがある ( とはいえ危険な場所なので ふつうは L4-L5 間で腰椎穿刺を行う ) 4) クモ膜顆粒は クモ膜下腔から硬膜を貫通して硬膜静脈洞に突出した構造であり ここから CSF が静脈へと排出される 29) 前大脳動脈の走行と大脳鎌の位置をおさえる 30) 間脳と海綿静脈洞の位置の見当がつけば 問題文が誤りだとわかる 直静脈洞に流入する だと正しい 2007 年度の問 2 より 1) 側脳室と第 3 脳室の脈絡叢は一つの脈絡叢の両面であり, その間にクモ膜下腔は介在しない. 2) 片側の室間孔が閉塞しても水頭症にはならない. 3) クモ膜下腔は小脳テントに沿って, 大脳底面にも存在し, 脳脊髄液で満たされる. 4) 上矢状静脈洞に沿って見られるクモ膜顆粒は軟膜を貫通して血管内に突出する. 29 ) 大脳半球の下面の大部分は前大脳動脈で栄養される. 30 ) 横静脈洞に集められた血液は, 直静脈洞, 大大脳静脈を経由して内頚静脈に入る. 10

11 < 解答 > 1) 解説済み 2) CSF は片側の室間孔が閉鎖すると 同側の側脳室に CSF が貯留する 3) 小脳テントは硬膜が脳の内側に向かって突き出した構造で 大脳と小脳を分けている こうした場所ではむしろクモ膜下腔がかなり広くなっていることを 図 (# 脳脊髄液の循環 ) で確認してほしい 29) 大脳半球下面に分布するのは主に後大脳動脈 30) 問題文はかなりデタラメ 正しくは 静脈洞交会に集められた血液は 横静脈洞 S 状静脈洞を経由して内頚静脈に入る となる 2006 年度の問 2 より 1) 側脳室前角の脈絡組織が破れると, 脳脊髄液は第 3 脳室に流れ込む. 2) 中脳水道が完全に閉鎖しても, 脳脊髄液は第 4 脳室外側口や正中口から出て行くことができるので, 水頭症にはならない. 3) 小脳延髄槽はクモ膜下腔の一部であり, 脳脊髄液が存在する. 4) 少数ながら下矢状静脈洞の沿ってもクモ膜顆粒は存在する. < 解答 > 1) 1-2 の図 (# 脳室系の概観 ) を確認すると 前角は前頭葉まで伸びてかつ左右に分かれており ここが破れても第三脳室には流れ込まない 2) CSF の流れをおさえる 中脳水道が閉塞するとその前の第三脳室で CSF が貯留する 3) 4) クモ膜顆粒は主に上矢状静脈洞に注ぐが 他の硬膜静脈洞に沿っても存在する この点を複数の教科書で調べても GOOGLE 先生に日本語で聞いても 明快な解答は得られなかったのだが 英語で聞いてみるとようやく解答が得られた : Largest granulations lie along the superior sagittal sinus, a large venous space running from front to back along the centre of the head (on the inside of the skull). They are, however, present along other dural sinuses as well. クモ膜顆粒のうち最も大きいものたちは上矢状静脈洞 つまり頭部の中央で頭蓋内を前から後ろに向かって走る静脈血を容れる空洞に沿ってある しかしそれらは 他の硬膜静脈洞にも同様に存在する (from en.wikipedia.org, arachinoid granulation ) こんなマイナーなことを問わないで欲しい 11

12 3, 脊髄を通る神経伝導路 神経系をつくる神経細胞たちは 同じ機能を担う神経細胞どうしでまとまって存在するのがふつうである そこから伸びる軸索も 機能ごとのまとまりを保持したまま束になって走行する そこでたとえば 大脳皮質運動野の足の指を動かす部位 から 足の指の筋肉 まで 神経線維束の走行を追うことができる このように機能ごとに束になった神経が走る経路を 神経伝導路 neural pathway という こうした機能的に連関した神経細胞の集まりを中枢神経系では神経核 nucleus 末梢では神経節 ganglion と呼ぶ また機能的に連関した神経線維の束は 路 tract 束 fasciculus 毛帯 lemniscus などと呼ばれ 場所によりこの束がさらに集まって索 funiculus をつくる ( つまり脊髄の 側索 や 後索 は神経線維束の集まり ) なお脳表面の皮質 = 灰白質は神経核とは言わないから 白質中にある細胞体の集まり というのが神経核についての別の捉え方になる 逆に こうした機能的に分化した構造が見られないのが網様体 reticular formation である 細胞体と神経線維が不規則に混じり合うところ というのが網様体の構造的な定義だが 中枢神経系のうち明確な構造を持たないところが網様体 といった概念のゴミ捨て場みたいな言及のされ方もする 神経伝導路の問題は とてもややこしいと思う 本章の目的は 神経伝導路の中では比較的単純な 脊髄を通る一般体性伝導路 ( 簡単にいうと 脊髄を通って全身に分布する感覚や運動の経路 ) の問題を すっきり解けるようにすることである まずは初歩的な導入を行い 次いで感覚神経や運動神経が脊髄に出入りするところを整理するところからはじめよう 3-1 脊髄を通る神経伝導路の 般的な構成たとえば道を歩いていたとき (A) 不意に肩を叩かれて (B) 後ろを振り向くと 友人が微笑んでいたととする このとき (A) では肩の皮膚にある感覚受容器で感知した情報を大脳皮質に伝え (B) では大脳皮質が発した情報を筋に伝えている これらの情報はどのような経路を通って伝わるのだろうか? 右図では 中枢神経系の冠状断面に 伝導路をごく模式的に示している (A) 感覚神経路は基本的に 3つのニューロンから構成される : 11 次ニューロンは 樹状突起で末梢の皮膚などに分布する感覚受容器から刺激を受け取る 脊髄後根に細胞体を持ち ( 脊髄神経節 ) 軸索を脊髄の内部に伸ばし 2 次ニューロンにシナプスする # 神経伝導路の基本的な構成 22 次ニューロンはすぐに交叉して上行し 視床の 3 次ニューロンにシナプスする 33 次ニューロンは大脳を上行して皮質感覚野に終わる 12

13 (B) また 運動神経路は基本的に 2つのニューロンから構成される : 1 上位運動ニューロン upper moter neuron;umn は大脳の皮質運動野の細胞体に発し 途中で交叉しつつ下行して 脊髄前角の運動ニューロンにシナプスする 2 下位運動ニューロン lower moter neuron;lmn はすぐに脊髄の外に出て 末梢を走って神経筋接合部で筋肉にシナプスする これらの経路を構成するニューロンは 感覚伝導路の 1 次ニューロンのみ偽単極性 pseudounipolar ニューロンで その他のほとんどは 最も一般的な多極性 multipolar ニューロンである 経路図ではたいてい省略されるが 実際には樹状突起で多数のニューロンの軸索末端から入力を受けることに注意しよう 特殊感覚 ( 視覚 聴覚 平衡覚 嗅覚 ) の1 次ニューロンには 単極性 monopolar や双極性 bipolar ニューロンがみられる 経路ごとに異なる点や例外もあるが ( 脳神経も含め ) 多くの感覚神経路 運動神経路はこの (A)(B) と共通の構成をとっている これを < 基本パターン >として知っておくと後でいろいろなものがでてきたときに覚えることが少なくてすむ また どういう目的でこの基本パターンがこのように切り出されたか も理解しておこう 第一の目的は 経路のどこかが障害されたときに どのようなマクロな身体症状がでるかという点を明確にすることである 運動神経路を例にすると UMN( 上位運動ニューロン ) の交叉前で障害があると 反対側の半身に痙性麻痺が出る. UMN( 上位運動ニューロン ) の交叉後で障害があると 同側の半身に痙性麻痺が出る LMN( 下位運動ニューロン ) に障害があると 同側の半身に弛緩性麻痺が出る となる ( 下記参照 ) 神経内科の臨床では 患者の訴えと症状をみて 逆方向の推論により障害部位を特定する材料とするのである 体性運動路の障害では 上位 (UMN) と下位 (LMN) のどちらのニューロンが障害されるかで異なる徴候がでる おおまかには UMN は LMN を制御し LMN は末梢での運動の発動を担うという関係にあるから 各々の障害は次のような徴候になる UMN 症候群 : 痙性麻痺 ( つっぱる ) 筋緊張の増強 反射の亢進 ( バビンスキー反射など異常反射あり ) 複数の筋や四肢に障害 LMN 症候群 : 弛緩性麻痺 ( ぐにゃぐにゃ ) 筋緊張の減弱 反射の減弱 ( 異常反射なし ) 特定部位のみ障害 バビンスキー反射 : 足裏をひっかくと親指が足背 ( 足の甲 ) の方に屈曲する という反射で 脊髄反射のひとつ 乳幼児にみられるが 2 歳ごろで消失し それ以降の年代にこの反射がみられる場合は病的反射で 錐体路障害 (=UMN 障害 ) を疑う 13

14 3-2 脊髄に神経が出 りする様 右図で脊髄の各部の名称を復習してほしい ここでは運動神経と感覚神経が脊髄を出入するところを整理しておこう ( 記述の都合上 情報の流れとは別に中枢から末梢への方向をたどる ) 感覚神経路の 1 次ニューロンは 脊髄の後角から出て後根 dorsal root で脊髄神経節 spinal ganglion をつくる 下位運動ニューロンは 脊髄の前角 anterior horn に細胞体を持ち 前根 anterior root へと軸索を伸ばす 前根と後根はすぐに合流して 1 本の脊髄神経 spinal nerve をなし そこで脊柱の椎間孔を出る 脊髄神経はすぐに前枝 ant. ramus と後枝 post. ramus に分かれるが 両者はどちらも混合性 ( 感覚神経と運動神経を含む ) で 太い前枝は体幹の外周を通って腹側へ向かい 細い後枝は背中のみに分布する さて右図のように 脊髄実質 ( 白質 + 灰白質 ) は 腰椎 L1 の少し下の高さで終わっている ( これは発生時に 脊髄に対して脊柱の方がよぶんに伸長することによる ) 脊柱の L2 以下のレベルでは 前根と後根が下方へしばらく走り その後で各レベルの椎間孔から出て行く この前根と後根が垂れ下がった構造を その形状から馬尾 cauda equina という 脊柱内にある馬尾はまだ中枢神経系の構造であることを理解しておこう CSF の採取や麻酔は腰椎 L3~S1 あたりで行うことが多いが ( 腰椎穿刺 lumbar puncture) このレベルでは脊髄は馬尾になっており 神経束 ( 前根と後根 ) は針を刺しても勝手によけてくれるからである 3-3 主要な神経伝導路の整理まずは 主要な神経伝導路としてどんなものが存在するかを一瞥しておこう ここであげる二十数個の伝導路は 経路をあるていど細かく覚える必要がある 一般 / 特殊 体性 / 臓性 などの用語は 次章 ( 脳神経 ) で改めて説明する (1) 一般体性運動路 (GSE) 錐体路 : 骨格筋による随意運動を担う 頭頚部を除く全身に分布する経路は皮質脊髄路ともよばれる 運動性の脳神経核へ分布する皮質延髄路も含める 錐体外路 : 錐体路以外の運動路の総称で 大脳基底核や小脳とのかかわりが深い 赤核脊髄路 網様体脊髄路 視蓋延髄路 視蓋脊髄路 前庭脊髄路 オリーブ脊髄路 内側縦束などがある ふつう錐体路と同時にはたらき 運動の不随意的な調節を担う 詳しい経路は覚えなくていいが こういう経路がある ということを知っておくと 大脳基底核や小脳のところで面食らわなくて済む 14

15 (2) 一般体性感覚路 (GSA) 後索内側毛帯路 : 精細触覚と意識できる固有感覚 ( 深部感覚 ) 脊髄視床路 : 温痛覚 ( 外側脊髄視床路 ) と粗大触覚 ( 前脊髄視床路 ) 脊髄小脳路 : 下半身の意識しない固有感覚 ( 後脊髄小脳路 ) 上半身 ( 副楔状束核小脳路 ) (3) 自律神経 : 交感神経と副交感神経 (4) 特殊感覚路 視覚路 聴覚路 平衡覚路 ( 体性感覚 ) 味覚路 嗅覚路 ( 臓性感覚 ) (5) 脳神経 ( 脊髄ではなく脳から出る神経のことで 上記の分類と重複する ) CN1~12 この章では一般体性運動路 (1 つ ) と一般体性感覚路 (4 つ ) を取り上げて説明する ( 比較のため自律神経系の 経路にも少し触れる ) 他にも体性伝導路はいろいろあるが 経路を細かくみるのはこれだけでいいと思う 次ページ図のようにごく単純化した各経路を横並びにして比較してみると 各経路に共通する一定の傾向があることに気づくとおもう : 大脳を含む伝導路は交叉する 中枢神経系を構成する各構造の中では 大脳のみが左右の半球に明確に分かれて 交連線維が発達し 機能的な左右差が存在する 交叉とはこの点に関連のある構造だと推測される 意識的で精密な制御を行う伝導路ほど 各中枢が高いレベルにあり また高いレベルで交叉する ここで 高いレベル とは 中枢 - 末梢の軸で中枢により近いという意味とする ( 大脳皮質が最も中枢よりということになる ) 2と3 を比べてみると 2 精細触覚の延髄レベルで 2 次ニューロンへの交代と交叉が起こっているが 3 粗大感覚では 1 次ニューロンと同じ高さで起こっている また 4と5 をみると これも 2 次ニューロンへの交代のレベルが 上半身 ( 主に腕 ) の方が下半身 ( 主に足 ) より高い こうした傾向は 自律神経にも同じように適用できる 錐体路以外の 5つを表でまとめてみよう 評価軸 種類 神経の種類 ( 細目 ) 中枢 交叉 2 番目のニューロンが交代する位置 意識的 体性感覚 精細触覚 大脳 延髄 延髄 精密 意識できる固有感覚 粗大触覚 大脳 脊髄 脊髄 温痛覚 意識されない固有感覚小脳 なし 脊髄 無意識的自律神経 交感神経 脊髄側角なし 脊髄を出てすぐ ( 交感神経幹 ) 粗大 副交感神経 脊髄側角なし 支配臓器の直前 動物の感覚 - 運動系は おおまかに 無意識的で粗大な制御 から 意識的で精密な制御 へ向かって進化し そ れに伴って中枢神経系のより高次の構造が発達してきたとすれば そこからこの傾向を説明できるかもしれない 以上の整理と説明は著者の着想 ( 思いつき ) なので 論述問題では使えない! 以上を念頭におきつつ 5つの伝導路について個別にみていこう 1 錐体路 piramidal tract( 皮質脊髄路 ): 一般体性運動路の中では 全身のほとんどの骨格筋に分布する錐体路が圧倒的に重要である 錐体路を構成するのはたかだか 2つのニューロンにすぎない 上位運動ニューロン (upper motor neuron UMN): 大脳皮質の運動野に発し 延髄下部腹側で交叉し ( 錐体交叉 ) 脊髄の側索を下降して 脊髄前角で LMN とシナプスする 下位運動ニューロン (lower moter neuron LMN) は脊髄前角に発し 前根から脊髄の外に出る 一部 ( 平均 15%) の線維は錐体で交叉せずにそのまま下降する ( 前皮質脊髄路 ) 15

16 延髄の錐体を通るからこの名称があるのだが 脳幹の運動性神経核を支配し 頭部の運動を担う皮質延髄路 も 途中までの経路や機能が共通していることから錐体路に含めることがある 神経内科の臨床で 錐体路障害 といったら ふつうは上位運動ニューロンの障害を指すことに注意しよう 2 後索内側毛帯路 dorsal colomn-medial lemniscal pathway は 精細で識別性のある触覚 意識できる固有感覚を伝える 1 次ニューロン ( 偽単極性 ): 末梢の感覚受容器の刺激は 脊髄後根神経節 dorsal root ganglion の細胞体を経て脊髄に入り 後索を上行して 延髄中部の後索核にいたる 2 次ニューロン : 後索核に発してすぐに交叉して内側毛帯を上行し 視床 VPL 核にいたる 3 次ニューロン : 視床 VPL 核に発して大脳皮質の感覚野へいたる 16

17 後索 とは 楔状束 薄束 をあわせた部分である 楔状束は上半身 薄束は下半身の感覚を伝えるの だが このことは次節で詳しく解説する 3 脊髄視床路 spinothalamic tract は温痛覚と粗大で識別性のない触圧覚の伝導路である 2と異なるのは 脊髄に入った一次ニューロンが 脊髄後角ですぐに二次ニューロンに交代し すぐに交叉して 反対側の側索を通って上行してそのまま視床 VPL 核に入るという点である 脊髄空洞症 syringomyelia: 脊髄での 2 次ニューロンは 交叉するときに脊髄灰白質のまんなか ( 中間質中心部 ) を通って 反対側の側索にはいる 何らかの原因 ( 腫瘍 炎症 血管障害 奇形など ) により脊髄の中心管に CSF が貯留して脊髄を内側から圧迫されておこる脊髄空洞症では 特徴的な徴候として 脊髄視床路の障害による温痛覚症状が出る ( 他に障害がなければ 精細触覚や意識できる固有感覚は無事 ) 45の脊髄小脳路 spinocerebellar tract は 意識されない固有感覚を小脳へと伝え 小脳性運動制御のインプットとしてはたらく この伝導路は大脳ではなく小脳に入るので ( ほとんど ) 交叉しない また上半身の知覚と下半身の知覚で 2 次ニューロンと交叉の位置が異なる点に特徴がある ここでも上記の < 傾向 >に当てはまることに注意しよう : 下半身の感覚 :1 次ニューロンは脊髄に入ったあと少しだけ上行して 後角の胸髄核 ( クラーク氏柱ともいう 主に胸髄レベル T1~L3 にのみ存在 ) で2 次ニューロンに交代し 延髄の下小脳脚を経て旧小脳に入力する 上半身の感覚 :1 次ニューロンは脊髄に入ったあと 後索をそのまま上行して 延髄の副楔状側核で 2 次ニューロンに交代し 同様に延髄の下小脳脚を経て旧小脳に入力する 3-4 体部位的局在 ( 薄束と楔状束の区別を例にして ) さて2 の後索内側毛帯路で紛らわしいのは 上半身と下半身の感覚で伝導路の途中の経路 ( 名称 ) が微妙に変わることである 面倒なら丸暗記で勝負してもいいかもしれないけど かなりのところまで理論的に理解することもできる またこの点の説明は 後述する体部位的局在がどのように組み立てられるか を理解するいい例となる 体部位的局在は神経系のいろいろな局面でみられるから ここで理解しておけば 後の章で問題を解くときにかなり楽をできるはずだ まず薄束と楔状束の名前と構造をイメージで結びつけておこう 右図の頚髄 C5 レベルの脊髄断面では 後正中溝の側に < 細い長方形の > 薄束 gracile fasciculus があり 外側よりに楔状束 cuneate fasciculus が斜めに楔 ( くさび ) を打ち込んだような形で位置する どちらが上半身でどちらが下半身の感覚だろうか? 答えを先に言ってしまおう 薄束が下半身からで 上半身の感覚を受ける楔状束は T1 より上のレベルで <まるで楔 ( くさび ) を打ち込むような形で > 現れるのである ( つまり T2 以下は薄束しかない ) 17

18 なぜこのような構造になるのかは簡単に理解できる 右に 身体の各レベルの精細触覚および意識できる固有感覚の伝導路をまとめた図を示す 図で腰髄と頚髄のところをみよう 1 次ニューロンは脊髄の後角にはいり 交叉せずにそのまますぐに隣接する後索に入り 上行する 脊髄の下から順に線維が入ってくるから より上位の線維ほど後角に近い方から入り より下位の線維は内側 ( 後正中溝の方 ) に押しやられていく そこで薄束は腰髄からずっと存在し T1 より上位 ( これは腕神経叢 brachial plexus の位置!) で後角側に楔状束がしだいに形成されていくのである よって頚椎レベルでみると 下半身からの線維ほど後正中溝より 上半身の線維ほど後角よりに並ぶことになる このように 中枢神経系のニューロンやその軸索が 身体のマクロな構造の相似形で規則的に配置するとき これを体部位的局在 somatotopic organization と呼ぶ 思い切ったいいかたをすると < 中枢神経系の中に身体の縮小マップがあらわれる > というわけだ 少し先取りになるが 顔面の精細触覚を伝える三叉神経 (CN5) の経路もあわせて考えてみよう この経路は橋で神経核をつくり 交叉して 中脳レベルでは後索内側毛帯路と隣り合って走行するようになる ここで下半身を L(Leg) 上半身を A(Arm) 顔面を F(Face) として それぞれの感覚の経路を追うと 経路の全長に渡り L-A L-A-F の配置が保持されているのである つまり 途中で一部だけねじれたり 散り散りになってしまったりしない! いま例にとっている経路では L-A L-A-F の 関係が 末梢側から 視床の 3 次ニューロンの細胞体までほぼそのままで維持される 視床の後外側腹側核 VPL 核と後内側腹側核 VPM 核はともに体性感覚の中継を担うが ここにも次のような体部位局在がみられる (Lateral は外側 Medial は内側 ): 下半身 視床 VPL( 後外側腹側核 ) の外側 上半身 視床 VPL( 後外側腹側核 ) の内側 顔面 視床 VPM( 後内側腹側核 ) そして 3 次ニューロンの走行中に半回転のひねりが入って 大脳皮質にいたる 大脳皮質でこの L-A-F の配置をより細分化して 18

19 また直行する軸も加えて 2 次元的にみれば 手や唇がでかいことで有名なあの人 ( 感覚ホムンクルス 右図 ) が 姿をあらわすのである 以上をまとめて 次の点をおさえておこう : 脊髄の下方からたどると 各レベルの脊髄神経を順次入れていくところで体部位的局在 ( の一次元 ) が形成され る 体部位的局在は神経伝導路の全長にわたって維持される 問題と解答解説 2008 年度の問 2より 5 ) 脊髄神経後根には感覚神経の軸索が含まれる. 6 ) 脊髄神経前枝には樹状突起は含まれない. 7 ) 馬尾は前根と後根の両方を含む. 8 ) 胸髄下部には楔状束が存在しない. 9 ) 副楔状束核を形成する神経細胞の軸索は中小脳脚を通って同側の小脳に到達する. 10 ) 足の指先の意識される固有感覚を伝える二次ニューロンの細胞体は脊髄灰白質にあり, 軸索は視床に到達する. 11 ) 脊髄神経節にある神経細胞の樹状突起が脊髄硬膜外に出ることはない. 12 ) 薄束核の神経細胞の樹状突起は, 脊髄神経節に細胞体がある神経細胞の軸索とシナプスを形成する. 15 ) 延髄上部の左半分に障害があると, 下半身の運動麻痺は左側に生じる可能性が高い 21 ) 錐体路内の体部位的局在は中脳レベルでは明瞭でない. < 解答 > 5) 脊髄神経後根の神経節には 1 次感覚ニューロンの細胞体 ( 偽単極性 ) があり 抹消からは樹状突起が 中枢 ( 脊髄の方 ) には軸索が伸びる 6) 脊髄前枝は運動 感覚 自律の各神経が通り 1 次感覚ニューロン ( 偽単極性 ) の樹状突起が含まれる 偽単極性ニューロンの場合 樹状突起の定義は実はあいまいだが 本資料では 3-1 の図のように樹状突起を定義しているので 確認しておこう 7) 前根と後根はまだ中枢神経系 ( つまり硬膜の内側 ) で 両者が合して脊髄神経となってから椎骨の外に出て行く 馬尾は脊柱管内の中枢神経系の構造であることは 前期の肉眼解剖でも観察した 8) 後索内側毛帯路 ( 精細触覚と意識できる固有感覚を伝える ) では 下半身の知覚は脊髄後索の内側よりの薄束 上半身の知覚は外側よりの楔状束を通る 9) 副楔状束核小脳路は 上半身の意識できない固有感覚の伝導路 脊髄から小脳への入力は 延髄の下小脳脚を通る 10) 意識できる固有感覚を伝える後索内側毛帯路は 脊髄の後索にはいった後はそのまま上行し 延髄の後索核でニューロンを交代し 直後に交叉して視床 大脳皮質に達する 11) 脊髄神経節には体性感覚路の 1 次ニューロン ( 偽単極性ニューロン ) の細胞体があり 末梢の感覚受容器から中枢に向かって 樹状突起 脊髄神経節 軸索 の順で情報を伝える よって樹状突起は末梢まで分布するから 題意は当然あやまり 12) 延髄の薄束核は 精細触覚と意識できる固有感覚を伝える後索内側毛帯路の 1 次ニューロンの細胞体がある 体性感覚なので 1 次ニューロンの細胞体は脊髄神経節にあり 1 次ニューロンの軸索が脊髄後索を上行して 薄束核にある 2 次ニューロンの樹状突起とシナプスを作る 15) 錐体路は延髄下部で交叉する ( 錐体交叉 ) よって延髄上部の片側性の障害では 反対側の運動麻痺症状が出る 19

20 21) 体部位的局在は神経伝導路の全長で保持される と考えていい 2007 年度の問 2より 5 ) 脊髄神経後根には運動神経と感覚神経の軸索が含まれる. 6 ) 脊髄神経前枝には樹状突起は含まれない. 7 ) 馬尾には感覚神経の成分は含まれない. 8 ) 胸髄下部には薄束が存在しない. 9 ) 副楔状束核を形成する神経細胞の軸索は中小脳脚を通って同側の小脳に到達する. 10 ) 足の指先の意識される固有感覚を伝える一次ニューロンの細胞体は脊髄後角の基部にあり, 軸索は視床に到達する. 11 ) 脊髄後角の中に細胞体のある感覚神経の軸索が直接軟膜に被われることはない. 12 ) 薄束核の神経細胞の樹状突起は, 脊髄神経節に細胞体がある神経細胞の軸索とシナプスを形成する. 15 ) 延髄上部の左半分に障害があると, 下半身の運動麻痺は左側に生じる可能性が高い. 31 ) 筋委縮は上位運動ニューロンより下位運動ニューロンの障害で起こりやすい. < 解答 > 5) 脊髄前根を通るのは運動神経と自律神経 後根は感覚神経のみ 6) 解説済み 7) 馬尾は前根 ( 運動神経 + 自律神経 ) と後根 ( 感覚神経 ) を含む 8) 脊髄後索の内側 ( 後正中溝 ) よりの薄束は 下半身の精細触覚と意識できる固有感覚を伝えるから 胸髄以下のレベルにも存在する 9) 副楔状束核小脳路 ( 上半身の意識できない固有感覚を伝える ) は 副楔状束核でニューロンの交代を行い その軸索は交叉せずに延髄の下小脳脚を通って小脳にはいる 脊髄から小脳への入力は一般に延髄の下小脳脚である 10) 意識される固有感覚を伝えるのは後索内側毛帯路で 1 次ニューロンは脊髄にはいったあとそのまま上行して 延髄の後索核で 2 次ニューロンに交代し 視床 VPL へ達する 11) 脊髄視床路を例にすると 脊髄の後角にある 2 次ニューロンの細胞体の軸索は すぐに交叉して視床までそのまま上行する 軟膜に直接覆われる のは 1 次感覚ニューロンの軸索 ( 脊髄の外 椎間孔を出る前 ) である 12) 解説済み 15) 解説ずみ 31) 下位運動ニューロン LMN は筋を直接支配するのだから その障害が弛緩性麻痺と筋萎縮をもたらすのは自然な連想だとおもう 2006 年度の問 2より 5) 脊髄神経後枝には運動神経の軸索と感覚神経の樹状突起が含まれる. 6) 脊髄神経前枝には樹状突起は含まれない. 7) 頚髄には中間質外側部が存在しない. 8) 仙髄には楔状束が存在しない. 9) 胸髄核を形成する神経細胞の軸索は小脳に到達する. 10) 手の指先の意識されない固有感覚を伝える一次ニューロンは, 脊髄神経節に細胞体があり, 軸索は副楔状束核に到達する. 11) 脊髄後角にある神経細胞の軸索が脊椎管の外に出ることはない. 12) 楔状束核の神経細胞から出た軸索は, 反対側の視床の後外側腹側核に到達する. 20

21 29) バビンスキー反射は上位運動ニューロン障害の徴候である. 30) 筋萎縮は上位運動ニューロンより下位運動ニューロンの障害で顕著である. < 解答 > 5) 前根 ( 運動神経 ) と後根 ( 感覚神経 ) が合流して脊髄神経となり 前枝は腹側へ 後枝は背中に向かう よって前枝と後枝は混合性で ニューロンの方向性を考えると 運動神経の軸索と感覚神経の樹状突起を含む 6) 5) と同様 7) 脊髄灰白質は 前角 中間質 後角 に分かれるから 中間質の外側部 は存在するに決まってる ただし交感神経の中枢が存在する T1-L2 の中間質外側部は側方に突出し 側角 lateral horn とよばれる 逆に T1~L2 以外のレベルでは側角は存在しないので 頚髄には側角が存在しない なら正しい 8) 楔状束は上半身の精細触覚と意識できる固有感覚を伝えるから T1 以上 ( 腕神経叢のレベル ) にしかない 9) 後脊髄小脳路 ( 下半身の意識されない固有感覚を伝える ) は 脊髄後角の胸髄核 ( クラーク氏柱 ) でニューロンを交代し すぐに交叉して後索を上行して 下小脳脚から小脳へ入る 10) 副楔状核小脳路 ( 上半身の意識されない固有感覚を伝える ) では 1 次ニューロンは脊髄に入ってそのまま後索を上行し 延髄の副楔状核でニューロンを交代して 下小脳脚から小脳に入る 11) 2007 年度問 2の11) と同様 12) 後索内側毛帯路 ( 精細触覚と意識できる固有感覚を伝える ) の2 次ニューロンである延髄の後索核 ( 上半身の知覚は楔状束核 ) は 延髄ですぐに交叉して 反対側の視床 VPL 核へと達する 29) バビンスキー反射陽性は錐体路障害を疑う 反射が起こる 下位運動ニューロンは正常だから 上位運動ニューロンの障害 30) 解説済み 21

22 4, 脳神経 この章では まず脳神経について解説し ついで各年度の問 2( 正誤問題 ) の残りの問題 ( 多くの問いは脳神経から ) を扱う 脳神経について 付録として別ファイルで 脳神経まとめ を用意したので 本資料の記述とあわせて参照してほしい この表は 細かい事柄をいちいち説明する煩雑さを避けるとともに それぞれの脳神経の経路や機能についてみていくときに参照することで 脳神経の全体像を俯瞰的にみてもらうことを意図している ので とにかくこの表を丸暗記しろ! というわけではありません 4-1 脳神経の定義 おおまかな分類 脳神経 cranial nerves は ( 脊髄ではなく ) 脳からでる末梢神経である と定義される ただし CN1( 嗅神経 ) と CN2( 視神経 ) は 脳から出るというより中枢神経系の一部をなす 残りの CN3~12 は脳幹から出る 機能成分によるおおまかな分類 12 本の脳神経は 機能に着目して (1) 純感覚性 (2) 純運動性 (3) 混合性 と大きく 3つに分類すると分かりやすい (1) 純感覚性 :CN1( 嗅 ) CN2( 視 ) CN8( 内耳 ) いわゆる 特殊感覚 特にまぎらわしいところはないが 各々が特異な経路を持つから 別個に見ていく必要がある (2) 純運動性 :CN3( 動眼 ) CN4( 滑車 ) CN6( 外転 ) CN11( 副神経 ) CN12( 舌下神経 ) 骨格筋を支配するだけなので非常に簡単 ただし CN3( 動眼神経 ) については 内眼筋を支配する副交感成分を持ち 視覚関連の反射 ( 対光反射 調節反射 ) にかかわる点が重要 (3) 混合性 :CN5( 三叉 ) CN 7( 顔面 ) CN 9( 舌咽 ) CN 10( 迷走 ) このグループは感覚 運動 副神経の複数の成分を含むというだけでなく いろいろな点でとにかくややこしいことが多い 脳神経がらみで何か例外的なことが出てきたらたいていこのグループだと思っていい 本資料ではこのグループを ややこしい脳神経たち と呼ぶことにする ややこしさの一因は これらの脳神経とその支配領域が 発生時の鰓弓 ( 後述する ) に由来することによる 4-2 経路の基本パターン 脳神経 というのは末梢神経に着目した用語だが 意識できる感覚や随意運動を支配する脳神経は 当然なが ら中枢側 ( 皮質と脳神経核の間 ) の経路が存在する ここでは 中枢 ~ 末梢まで経路全体の基本パターンを示す 感覚路の多くは 脊髄を通る感覚神経と共通のパターンをとる つまり 3つのニューロンで構成され 1 次ニューロン ( 偽単極性 ) は中枢神経系の外に神経節を持ち 中枢内の脳神経核にシナプスする 2 次ニューロンはすぐに交叉して視床に達し 3 次ニューロンは視床から皮質にいたる ただし特殊感覚の中には例外的な経路を持つものが多い : CN1( 嗅神経 ) と CN2( 視神経 ) は中枢神経系の一部 CN1( 嗅神経 ) の経路はかなり特殊で 視床を通らず 大脳辺縁系と密接なかかわりを持つ CN8( 内耳 ) のうち蝸牛神経の経路は 多数 (4~6 個 ) のニューロンで構成される 22

23 運動路は 皮質から延髄へ向かうから皮質延髄路 または脳幹の運動神経核へ向かうことから皮質核路と呼ばれる 皮質延髄路は 2つの基本パターンがあると考えると分かりやすい 2 純運動性の脳神経は 反対側支配のパターンをとる 3 混合性脳神経は 両側支配のパターンをとる 2は 脊髄を通る運動神経とかなり共通したパターンを示す それに対して脳神経でだけみられる 3のパターンは 片側の大脳皮質からの経路が 末梢の手前で両側に分かれる つまり末梢の筋は 左右の皮質からの運動神経を受けていることになる 2のような経路を反対側支配というのに対して 3のような経路を両側支配ということを覚えておこう 両側支配の経路の特徴は 片側の上位運動ニューロン障害が起こっても もう片方からの神経があるので 麻痺が起こらず機能が温存されることである 純運動性 反対側支配 混合性 両側支配 という原則の例外は CN7( 顔面 ) で 顔面上部は両側支配 顔面下部は片側支配 となる たとえば左半球の運動野が広範に障害された場合 CN12( 舌下 ) は純運動性 つまり反対側支配なので 右側の舌筋に麻痺がでる CN9( 舌咽 ) の嚥下にかかわる成分は 両側性支配なので 一定の機能低下はみられるものの機能は温存される. 4-3 脳神経の各論 (1) 純感覚性の脳神経 このグループはおもに特殊感覚からなる 各々の経路がかなり異なるので 個別にみていこう CN1: 嗅神経 olfactory nerve 鼻腔の天井にある 1 次ニューロンの嗅覚受容細胞 ( 嗅神経細胞 ) が 匂い物質をキャッチする その軸索は 頭蓋骨の篩板を通って嗅球に終わる 2 次ニューロン ( 僧帽細胞 ) の細胞体の集まりが嗅球をなし その軸索が嗅索をつくる 2 次ニューロンは大脳辺縁系の一次聴覚中枢 ( 前有孔質 鉤皮質 梁下野 ) に終わる 23

24 嗅覚の伝導路は特殊感覚のなかでもとりわけ特殊である 嗅覚系は大脳のうち系統発生的にかなり古い部分に属し 視床には入らない 大脳のうち嗅覚に関連する領域を嗅脳というが これは嗅球 + 大脳辺縁系にほぼ相当する 原始的な動物 ( 魚類レベル ) では大脳のほとんどが嗅脳であり 嗅覚や大脳辺縁系が動物としての基本的な部分を担っていることをうかがわせる CN2: 視神経 optic nerve 1 次ニューロンである網膜の神経節細胞の軸索 ( 視神経 ) は 視交叉を経て視索という名称に変わり 視床の外側膝状体 LGB に終わる LGB の2 次ニューロンの軸索は マイヤーのループ~ 視放線をなして一次視覚野に終わる 視覚経路については その局所的な障害がどういう視野障害として出るかを判断できるように 右図の経路を正確に再現できるようにしておこう 対象からの光線は 水晶体で上下左右がさかさまになって網膜に映る 左眼の右視野は 左の網膜に入り 視交叉で交叉しないで左の視床 LGB でニューロンを交代し 左の一次視覚野に入る 左目の右視野は交叉せず左皮質へ 右目の右視野は交叉して左皮質に入り 結局 両眼の右視野が左皮質で統合されることになる などの点を 経路を追って理解しておくこと CN8: 内 神経 vestibulocochlear nerve 内耳神経は vestibulocochlear nerve という名前の通り 平衡覚をつたえる前庭神経 vestibular nerve と 聴覚をつたえる蝸牛神経 cochlear nerve からなる 聴覚の経路は 音が聞こえる わけだから当然 上行して大脳の聴覚野に向かう この経路は 1 次と2 次と最後のニューロンは他の感覚経路と共通の構成だが 2 次と最後のニューロンの間でいくつかに分岐し 左右の交通や中継ニューロンを多く含む独特の経路をとる 1 次ニューロンは蝸牛内 コルチ器の近傍のラセン神経節にある その軸索である聴神経は 延髄の ( 背側 腹側 ) 蝸牛神経核に終わる 2 次ニューロンは蝸牛神経核を出て 延髄の上オリーブ核を通り 脳幹部で外側毛帯を上行して 中脳下丘を通って 視床の内 延髄上部 蝸 神経核 24

25 側膝状体 MGB に至る これらの経路の途中で 左右で交叉したりしなかったり 中継核を介在させたりさ せなかったりと 多様な経路をとる 視床 MGB を出た最後のニューロンは 聴放線となって内包を通り 側頭葉の聴覚野に終わる いっぽう平衡覚の経路は 教科書的に 平衡覚を伝える と書くと 何かバランスの感覚みたいなものが大脳に伝えられる気がしてしまうが 実際には身体の平衡を維持するための < 反射的な感覚 - 運動システム >の一部としてはたらく経路がメインであり 内耳を出た後は小脳 脳幹の網様体や運動核に接続する 1 次ニューロンは内耳で前庭神経節をつくり 延髄の前庭神経核におわる 2 次ニューロンの主な行き先とその機能は (1) 前庭小脳路 ( 小脳による平衡の制御 ): 延髄の下小脳脚を通ってを小脳の古い構造 ( 片葉小節葉 虫部 ) に向かう (2) 前庭脊髄路 ( 骨格筋の緊張を調節して姿勢を保持 ): 脊髄を下行して前角の運動ニューロンに投射する (3) 内側縦束 ( 外眼筋を調節して 頭部が動いても対象への視点を維持する ): 脳幹正中部の内側縦束に向かい CN3( 動眼 ) 4( 滑車 ) 6( 外転 ) の神経核に投射する 乗り物酔いや目眩 ( めまい ) は 平衡神経の障害により起こる一般的な症状 視覚 聴覚 平衡覚の経路の区別を問う正誤問題 多肢選択式問題が多く出題されている 各経路の特徴を整理しておこう 視覚は 中脳レベルでほぼ水平に伝わる 視床の外側膝状体 LGB を通り 後頭葉の一次視覚野にいたる 聴覚は 延髄上部 ( 内耳は頭蓋内のだいたいこのレベルにある!) の蝸牛神経核に入り 外側毛帯を上行して 中脳下丘を通り 視床の内側膝状体 MGB を通り 側頭葉の一次聴覚野にいたる 内側毛帯は精細触覚を伝える後索内側毛帯路の経路 中脳上丘は CN3( 動眼 ) が関与する視覚反射の経路 平衡覚は 延髄上部の前庭神経核に至り 小脳 脊髄 内側縦束などに投射する 4-4 脳神経の各論 (2) 純運動性の脳神経 純運動性の 5つの脳神経は CN3( 動眼 ) の副交感性成分を除けば非常に単純 大脳皮質に発する 1 次ニュー ロンが脳神経核に終わり 2 次ニューロンが支配筋に投射するというだけである 下に各脳神経の脳神経核とそ のレベル 支配筋をまとめる CN3 動眼神経 oculomotor n. 動眼神経核 ( 主核 ) 中脳 下記以外の外眼筋 4+ 上眼瞼挙筋 CN4 滑車神経 trochlear n. 滑車神経核 中脳 上斜筋 ( 滑車を通る!) CN6 外転神経 abducens n. 外転神経核 橋 外側直筋 ( 眼球の外転!) CN11 副神経 accessory n. 脊髄前角 C1-C5 脊髄 胸鎖乳突筋 ( 頭部回旋 ) 僧帽筋 ( 肩の挙上 ) CN12 舌下神経 hypoglossal n. 舌下神経核 延髄 舌筋群 眼球を動かす筋 ( 外眼筋 ) がどういう作用を持つかを 次の図で復習しておこう 外側直筋 眼球の外転はすぐ わかると思う 上斜筋 眼球の下方外側への回転 というのは大丈夫? ( 筋の付着位置と引っ張る方向を正確に 把握すること ) 脳神経の走行については 次の 2 点が例外的 CN4 は 神経核から交叉しつつ後方に向かい 脳幹の背側から出る 25

26 CN11 は C1~C5 の脊髄前角からの線維が上行しつ つ融合して 頭蓋の中に入り もう一度頭蓋の外に出て 行く さて CN3( 動眼 ) には 上記の主核の他に副核 (Edinger-Westphal 核 EW 核 ) を持ち 毛様体神経節を経て内眼筋 ( 平滑筋 ) である毛様体筋と瞳孔括約筋に副交感性の支配を及ぼす経路がある これは 日常的に作動している次の二つの反射にかかわる : 対光反射 LIGHT REFLEX: 片側の眼に光が入射すると 両側の眼の瞳孔が収縮する 同側の瞳孔収縮を直接反射 反対側の瞳孔収縮を共感性反射といい これは反射経路の一部が左右で連絡しているため この反射は まさに機械としての視覚系の自動的な作動というべきもので 大脳を介さず無意識的に起こる 調節反射 ACCOMMODATION REFLEX( 遠近調節性輻輳反射とも ): 近づいてくる物体に対して水晶体の厚さを調節する反射で 大脳の視覚野を介する経路をとる ( 動く物体の注視は いかにも意識的で脳の高次機能を使いそうな操作である ) 右図で対光反射の経路を追跡しよう (1) 視床の外側膝状体 LGB の前で視索のごく少数が分かれて 中脳上丘 ( 視蓋前域 ) に入る (2) 視蓋前域の核は 左右で交通しつつ 副核 (EW 核 ) に入る (3)EW 核からの動眼神経 ( 節前ニューロン ) が 毛様体神経節にいたる (4) 節後ニューロンが瞳孔括約筋に達する. なお共感性反射は 視交叉の存在と 中脳の視蓋前域と EW 核のところで左右の交通があることにより起こっている 右図には 眼球の瞳孔調節を拮抗支配する交感神経も描かれているので あわせて確認しておこう この交感神経の節後ニューロンは 脊髄の側角の節前ニューロンが上頚神経節にシナプスし 節後ニューロンが上行して瞳孔散大筋を支配する また調節反射は 視床 LGB 大脳視覚野を経て 同様に中脳上丘 ( 視蓋前域 ) に入る その後は対光反射と同じ経路で毛様体筋と瞳孔括約筋を支配する他 動眼神経核を介して外眼筋である内側直筋も支配する ( 物体が近づくときは当然寄り目をするから!) 以上 2 26

27 つの反射経路について 下のチャートで比較で両者の違いを確認しておこう ちなみに上記の 2 つの反射とよく対比される角膜反射は CN5( 三叉 ) と CN7( 顔面 ) が関与し CN2 や CN3 は無関係 その経路を以下に示すが CN5 の温痛覚を伝える経路と CN7 の運動成分が脳幹で連 絡するのが特徴 角膜 CN5-1( 眼神経 ) 三叉神経節 三叉神経脊髄路 三叉神経脊髄路核 顔面神経核 CN7( 顔面 ) 眼輪筋 4-5 脳神経の各論 (3) 混合性の脳神経 ( ややこしい脳神経たち ) CN5: 三叉神経 trigeminal nerve Ⅴ1: 眼神経 ophthalmic nerve Ⅴ2: 上顎神経 maxillary nerve Ⅴ3: 下顎神経 mandibular nerve CN7: 顔面神経 facial nerve CN9: 舌咽神経 glossopharyngeal nerve CN10: 迷走神経 vagus nerve ややこしい脳神経たち はとにかく面倒なことが多く それぞれについて順に説明していくと情報量や例外が多く混乱しがちなので 分布と機能についておおまかなイメージを作ることを目指そう 1-2 で 胚発生の 18 日目頃に 胚が腹側の方に屈曲し 頚部のあたりに鰓弓 (branchial arch) ができることに言及した 鰓弓とは軟骨魚類の鰓 ( えら ) に由来する期間で かつては並んだ鰓 ( 軟骨や筋からなる ) を開閉して 水から食物をろ過したり酸素を吸収したりしていた その後 鰓弓の一部から顎ができ ヒトでは顔面 ~ 頚部腹側の 表情筋や嚥下 咀嚼 発声 頭部回旋 肩の挙上などにはたらく筋となった 頭部回旋 肩の挙上にはたらく筋は CN11( 副神経 ) 支配で 残りの表情筋 嚥下 咀嚼 発声にはたらくのが この節で説明する混合性の脳神経たちである 次ページ左図は発生第 5 週の胚の模式図で 第 1~ 第 4 鰓弓にそれぞれ CN5の枝 CN7 CN9 CN10 が分布している いっぽう右図は 発生が進んだあとの 鼻腔 口腔 咽頭 喉頭の知覚神経の分担を示した図で これらの 4つの脳神経でこの周辺を分担していることがわかる また下図は顔面 ~ 頚部にある筋を由来別に色分けた図で ( 筋の色は上の左図と対応 ) CN7が支配する筋群が顔面中央に T 字型に大きく広がり CN5は周辺部の咀嚼にかかわる筋のみを局所的に支配し また CN10 が喉頭部の筋を支配していることをみよう 27

28 この4 つの脳神経を 上の右図の斜め破線により 二つずつのペア 2 組に分けてみる 斜め破線の前方 つまり顔面および鼻腔 口腔 舌前 2/3 に分布するのが CN5と CN7である このペアは 分布域がかなり重複していて 機能的に分担している点に特徴がある CN5( 三叉 ) は主にこの領域の一般感覚 ( 精細触覚 固有感覚 温痛覚 ) を広くカバーする あとは咀嚼筋群の支配 CN7( 顔面 ) は主にこの領域の運動成分 ( 骨格筋 + 外分泌腺 ) をカバーする あとは味覚 いっぽう斜め破線の後方 舌後ろ 1/3 咽頭 喉頭に分布する CN9と CN10 は 機能はほとんど同じで 分布域で分担している CN9( 舌咽 ) は 舌後ろ 1/3~ 咽頭上部付近にのみ分布する CN10( 迷走 ) は 頚部の前方を下方に長く走行し 喉頭部から体幹の広い領域をカバーする CN9と CN10 は どちらも次のようにひととおりの機能を持っている 感覚成分 : 一般感覚 ( とくに血流モニター ) 特殊感覚 ( とくに味覚 ) 運動成分 : 鰓弓由来筋の運動 ( とくに嚥下 ) 腺や内臓の副交感支配 CN9と CN10 の機能のおおきな特徴は 内臓 の 自律的 な作用を担うという点にある つまり 頚動脈にある圧受容器や化学受容器は 血圧や O2 CO2 をモニターして 呼吸や血圧の反射的な調節を行う 味覚は消化管壁に発達した化学受容器が受容する 嚥下は 消化管を囲む筋の半ば反射的な運動である また迷走神経は 頚部腹側を通って体幹まで長く走行し その途中や先にある 発声にかかわる筋の運動 胸腹部内臓の副交感支配などを担う 最後に これら 4つの脳神経がかかわる主な脳神経核 ( 感覚成分と副交感成分については神経節も ) を 機能別に整理しておこう 個別に名称がついているものは覚えるしかない 感覚成分の神経核は 脳幹を縦に長く伸びているものが多いことも意識しておこう 28

29 三叉神経の感覚成分は 分布域の異なる末梢神経 ( 眼神経 上顎神経 下顎神経 ) が 三叉神経神経節でいったん合流し 脳幹内部では感覚の種類ごとにそれぞれ異なる核に分かれる : ( 精細触覚 )1 三叉神経節 2 主知覚核 ( 温痛覚 )1 三叉神経節 2 脊髄路核 ( 固有感覚 )1 中脳路核ただし面倒なことに 固有感覚を伝える神経の 1 次ニューロンは 三叉神経節を素通りして脳幹内で核を作る ( つまり 中脳路核は 1 次ニューロンの細胞体からなる ) 孤束核は CN7 9 10の線維を受け おもに味覚 ( 臓性の特殊感覚 ) を伝える CN7:1 膝神経節 2 弧束核 CN9:1 下神経節 2 弧束核 CN10:1 下神経節 2 弧束核 副交感成分の自律神経節は次のようなものがある 各神経のおおまかな分布と対応付けておくこと CN7: 上唾液核 翼口蓋神経節 ( 涙腺と鼻腺 ) CN7: 上唾液核 顎下神経節 ( 顎下腺と舌下腺 )" CN9: 下唾液核 耳神経節 ( 耳下腺 ) CN10: 迷走神経背側核 胸腹部内臓へ 運動成分の核 CN5: 三叉神経運動核 咀嚼筋 CN7: 顔面神経運動核 表情筋 CN9 10: 疑核 発声や嚥下にかかわる筋 4-6 脳神経核の配置 脳神経核の機能による分類最後に全 12 本の脳神経について 別の視点から整理しよう 各脳神経は 基本的に脳の上のレベルから出る順に番号が振られている 各脳神経の核が 脳幹のどのレベルにあるかをおおよそ理解しておこう 間脳より上 :CN1( 嗅 ) CN2( 視 ) 中脳レベル :CN3( 動眼 ) 4( 滑車 ) 橋レベル :CN5( 三叉 ) 6( 外転 ) 7( 顔面 ) 延髄レベル :CN8( 内耳 ) 9( 舌咽 ) 10( 迷走 ) 12( 舌下 ) 脊髄レベル :CN11( 副 ) ここまでの説明は 運動成分 や 内臓に対する副交感支配 などの用語を使ってきたが 脳神経の機能分類については 機能および発生上の由来から 次のような 3つの分類軸がよく使われる 1 一般 general/ 特殊 special か : 身体全体にある一般的な器官が担うか それとも身体の一部にしかない特殊な器官が担うかという区別である 感覚について 皮膚感覚は前者だが 視覚や聴覚などは專門の受容器が存在するため後者である また運動について 多くの骨格筋は発生時の体節 somite するため前者に属するが 顔面 ~ 頚部腹側の一部の筋は発生時の鰓弓 branchial arch に由来するので後者に属する 2 体性 somatic/ 臓性 visceral: これは生理学で 動物機能 植物機能 という場合と同じ区分で 骨格筋や外皮を支配するのが体性 平滑筋や内臓を支配するのが臓性である 3 遠心性 efferent/ 求心性 afferent: これは中枢に向かうか末梢に向かうかという経路の方向性についての分類で 遠心性 = 運動神経 求心性 = 知覚神経である 29

30 この3 つの組み合わせにより (SSE はないので 8-1 で )7 通りの機能分類が立てられる 1を 一般 に固定した 4 通りの組み合わせは 脊髄神経と脳神経で共通する機能を担う 1 GSA( 一般体性遠心性 ): ふつうの運動神経 全身の体節由来の骨格筋を支配 2 GSE( 一般体性求心性 ): ふつうの感覚神経 全身の皮膚や骨格筋や関節からの感覚を伝える 3 GVE( 一般臓性遠心性 ): 主に自律神経で 内臓の平滑筋や腺を支配 4 GVA( 一般臓性求心性 ): 内臓からの感覚を伝える 脳神経では 以上に加えて 特殊 に属する 3つの機能成分がある 5 SSA( 特殊体性求心性 ): 視覚 聴覚 平衡覚などの体表面近くに受容器がある特殊感覚 6 SVA( 特殊臓性求心性 ): 味覚 嗅覚など 内臓近くに受容器がある特殊感覚 7 SVE( 特殊臓性遠心性 ): 顔面から頚部腹側にかけての鰓弓由来の筋を支配 各機能分類の神経核は 発生過程に依存しておおまかな位置取りが決まってくる 以下に示す脊髄と延髄の発生の模式図で確認しておこう : 脊髄では 背側が感覚性 腹側が運動性の核がある また腹側から背側に向かって体性 臓性 体性というように 臓性をサンドした配置になる 脳幹では 脳室が肥大しつつ背側に押しやられることで 脊髄を < 背側で切って左右に開いた様な形 >となり 外側が感覚性 内側 ( 正中より ) が運動性という配置に変わる また 一般 核の間に 頭頚部に特有の 特殊 核があらわれる 問題と解答解説 2008 年度の問 2 より 13 ) 延髄にある疑核には大脳皮質にある神経細胞の軸索が到達する. 14 ) 舌下神経核には運動神経の細胞体が集積し, その軸索は脳神経として末梢に出る. 16 ) 皮質橋路は視床での感覚受容を制御する回路の一部である. 17 ) 外側毛帯の障害は平衡感覚の異常をもたらす可能性が高い. 18 ) 中脳腹側の左半分が障害されると, 顔面上部では左半分だけに運動麻痺が生じる. 19 ) 咀嚼筋を支配する運動神経の大半は三叉神経節に発する. 20 ) 三叉神経脊髄路核に存在する神経細胞は顔面の温痛覚の情報を視床の後内側腹側核 (VPM) に伝える. 22 ) 脳幹網様体は大脳, 脊髄などからの入力を受け, 大脳, 脊髄などに出力する. 30

31 23 ) 視覚情報は視神経を通って上丘に達し, そこから視覚野に伝達される. 24 ) 味覚は視床に伝達されない数少ない感覚の一つである. 25 ) 扁桃体は間脳の一部であり, 情動の形成などに関与する. 26 ) 嗅索は嗅神経細胞の軸索で形成され, 嗅脳の一部を形成する. 27 ) 前頭葉の連合野は知的活動に関係し, 視床内側核からの入力を受ける. 28 ) 感覚性失語症は優位半球の側頭葉にあるウェルニッケ野の障害で起こることが多い. < 解答 > 13) 延髄の疑核 ambiguous nucleus は 発声や嚥下にかかわる鰓弓由来の筋群を支配する神経核で 機能分類上は特殊臓性遠心性 SVE であり CN9( 舌咽神経 ) と CN10( 迷走神経 ) の一部を出している 特殊 からも分かるとおり 嚥下や発声にかかわる筋群は反射的にも随意的にも制御されるが いずれにせよ自らの意思で動かせる = 大脳皮質とつながっているから 題意は正しい 14) 舌下神経核 hypoglossal nucleus (SVE) は舌筋群の運動を支配する神経核で CN12( 舌下神経 ) を出す 16) 皮質橋路は 大脳運動皮質 橋 小脳という経路 ( 皮質 - 橋 - 小脳路 ) の一部で 現在進行中の運動の情報を ( 骨格筋だけでなく ) 小脳に送っている この情報は小脳からのフィードバックにより 運動制御に用いられる 小脳の章で詳しくみる 17) 中脳の外側毛帯は平衡感覚ではなく聴覚の中継路である 18) 顔面上部の表情筋を支配する CN7( 顔面神経 ) の神経核は橋にあり 中脳腹側の大脳脚からの下行線維 ( 皮質延髄路 ) を受けている CN7 は原則として両側性支配なので 中脳の片側の障害は麻痺を引き起こさない ただし顔面下部については片側支配なので要注意 19) CN5( 三叉神経 ) のうち感覚神経は三叉神経節を通って眼神経 上顎神経 下顎神経に分岐するのだが 咀嚼筋を支配する運動神経は三叉神経節を通らずに脳幹を出て 下顎神経に沿って走る ( 右図 ) また面倒なことを と思うかもしれないが むしろ脊髄でもみられた 下記のごく一般的なパターンが脳神経でも踏襲されている と考えよう 感覚神経では 偽単極性の 1 次ニューロンが 中枢に入る少し前に神経節をつくる 運動神経では 中枢から出る直前の LMN( 下位運動ニューロン ) が 末梢の骨格筋を支配する 20) CN5( 三叉 ) の脳神経核は 感覚の種類ごとに上から中脳路核 ( 固有感覚 ) 主知覚核 ( 精細触覚 ) 脊髄路核 ( 温痛覚 ) に分かれていた 視床の後外側腹側核 VPL 核と後内側腹側核 VPM 核はともに体性感覚の中継を担うが 3-4 で説明した通りここにも次のような体部位局在がある (Lateral は外側 Medial は内側 ) 下半身の感覚は視床 VPL( 後外側腹側核 ) の外側より上半身の感覚は視床 VPL( 後外側腹側核 ) の内側より顔面の感覚は視床 VPM( 後内側腹側核 ) 22) 網様体 reticular formation は脳幹で名前がついているような部分を除いた 残りの部分 にほぼ相当し 多数の線維がさまざまな方向に網の目のように走り ( だから網様 ) 細胞体が散在するような構造である 網様体は系統発生的に古い構造で より高次な意識や精細感覚 複雑な運動を処理する部分の土台となる 31

32 構造だと考えておけばいいと思う 次に挙げる 網様体の接続や機能 ( とされているもの ) も この点から理解できる : 網様体は中枢神経系のほかのさまざまな場所から入力を受け また出力を返す 覚醒 / 睡眠の調節や 呼吸や心臓などの生命維持に必須の中枢をつくる 23 ) 中脳背側の上丘 ( 視蓋ともいわれる ) は 視覚にかんする反射経路 ( 対光反射や調節反射 ) の中継地点であり 視覚情報の経路 ( 網膜 視床 LGB 大脳視覚野 ) とは別物 CN3( 動眼神経 ) とのかかわりで理解しておくこと プチ整理 : 視床の外側膝状体 LGB は視覚の中継 内側膝状体 MGB は聴覚の中継 また中脳の上丘は視覚反射 下丘は聴覚の中継 24) 視床に入らない特殊感覚のは嗅覚である 嗅覚系 ( 嗅脳系 ) は大脳の一部で 大脳辺縁系と同じく ( 新皮質に対して ) 系統発生的に古い皮質からできている そのため他の感覚系とは情報の経路がまったく異なり 視床に入らない 25) 扁桃体 amygdaloid body は間脳ではなく大脳辺縁系の一部である 26) 匂い物質は 鼻腔の天井の 1 嗅上皮 ( 嗅神経細胞 ) でキャッチされ 嗅球の僧帽細胞にシナプスする 嗅索を走るのはこの僧帽細胞の軸索である 27) 大脳と間脳について 細かいことは後の章で解説する 28) 大脳の機能局在は 中心溝とそれを挟む中心前回 ( 体性運動野 ) 中心後回 ( 体性感覚野 ) を軸としておおまかに整理すると分かりやすい 感覚性言語野 ( ウェルニッケ野 ) は体性感覚野のやや後方の側頭葉に 運動性言語野 ( ブローカ野 ) は 体性運動野のやや前方の前頭葉にある ところで 定義上これらの言語中枢がある方が ( 言語機能に関して ) 優位半球なので 優位半球にあるのは当たり前すぎる! 2007 年度の問 2より 13 ) 延髄にある疑核には大脳皮質にある神経細胞の軸索が到達する. 14 ) 舌下神経核には運動神経の細胞体が集積し, その軸索は脳神経として末梢に出る. 16 ) 皮質橋路は錐体路系の活動を制御する回路の一部である. 17 ) 中脳の障害で聴覚に麻痺が生じる可能性は低い. 18 ) 中脳腹側の左半分が障害されると, 顔面上部では左半分だけに運動麻痺が生じる. 19 ) 三叉神経節に存在する神経細胞から出る軸索は, 橋にある神経細胞にシナプスする. 20 ) 三叉神経主知覚核に存在する神経細胞は顔面の精細触覚の情報を視床内側腹側核 (VPM) に伝える. 21 ) 大脳脚の大半は視床にある神経細胞体から出て橋に至る神経線維で占められる. 22 ) 赤核は小脳からの入力を受け, 網様体, 脊髄などに出力する. 23 ) 視覚情報は上丘から外側膝状体に至るニューロンで伝達される. 24 ) 海馬傍回の皮質は新皮質に属し, 発生の途中で 6 層構造を取る時期がある. 25 ) 大脳辺縁葉には海馬が含まれる. 26 ) 嗅索は嗅神経細胞の樹状突起で形成され, 嗅脳の一部を形成する. 27 ) 網膜にある神経細胞の軸索は視索, 視放線を形成し, 後頭葉の視覚野の細胞にシナプスする. 28 ) 前頭葉の連合野は知的活動に関係し, 視床内側核からの入力を受ける. 32 ) 小脳テントより上の錐体路障害では, 障害の反対側の顔面下部と上下肢に運動麻痺が起こる. < 解答 > 13) 解説ずみ 14) 解説ずみ 32

33 16) 皮質 - 橋 - 小脳路は小脳性の運動制御を行う経路だから 最終的には錐体路系を通して骨格筋による運動を制御する 小脳の章で詳しくみる 17) 中脳の下丘には聴覚系伝導路の中継点があるから 中脳の障害は聴覚の麻痺につながる 聴覚系伝導路が橋 ~ 中脳を上行して大脳皮質の聴覚野に至る というおおまかな経路の知識でも解答可能 18) 解説ずみ 19) 三叉神経節には三叉神経の 1 次感覚ニューロンの細胞体があり 脳幹の神経核にシナプスする 精細触覚を伝える主知覚核は橋にあるが 温痛覚を伝える脊髄路核は橋 ~ 脊髄の上下に長く存在する 20) 精細触覚と意識できる固有感覚 の経路について以下にまとめる (3-4 の体部位的局在の復習 ) 頭部 : 三叉神経節 主知覚核 視床 VPM 上半身 : 脊髄神経節 延髄の楔状束核 視床 VPL 下半身 : 脊髄神経節 延髄の薄束核 視床 VPL 21) 中脳の大脳脚は大脳皮質に発する運動神経の伝導路 ( 錐体路と皮質橋路 ) がとおり これらは視床を通らない 22) 中脳の赤核は上小脳脚から小脳からの情報を受けて 脳神経の運動核や網様体 脊髄前角などに至り 骨格筋の運動や緊張を制御する 詳しくは小脳の章で扱う 23) 視覚の伝導路は 1 網膜神経節細胞 2 外側膝状体 ~ 大脳皮質 1 次視覚野 上丘は視覚系の経路のごく一部を受けて 動眼神経を介して対光反射や調節反射を行う 24) 海馬傍回は大脳辺縁系に属し 新皮質にみられる明瞭な 6 層構造をとらない旧い皮質からなる 詳しいことは大脳の章で扱う 25) 大脳辺縁系は大脳の下部の旧皮質からなる部位で 海馬 海馬傍回 帯状回 扁桃体などを含み 情動や記憶形成にかかわるとされている やはり詳しくは大脳の章で 26) 嗅索は僧帽細胞の軸索で形成され が正しい なお嗅上皮 ( 嗅神経細胞 ) はふつう嗅脳に含めないようだ 27) 視床の外側膝状体 LGB の細胞にシナプスする が正解 視覚系の経路は 1 網膜神経節細胞 ( 視神経 ~ 視交叉 ~ 視索 ) 2 外側膝状体 ( マイヤーのループ ~ 視放線 ) 3 後頭葉 1 次視覚野 で 1 次ニューロンと 2 次ニューロンの軸索が順に名称が変わるので 経路図で確認しておくこと 28) 解説ずみ 32) 1 小脳テントは小脳と大脳を分ける構造だから 小脳テントより上 は 中脳より上 にほぼ等しい 2 < 狭義の錐体路 >は延髄の錐体を通る皮質脊髄路だが 頭頚部の筋を支配する皮質延髄路も 途中まで同じ経路を通り経路としての性質が共通する点が多いため < 広義の錐体路 >に含める 3 皮質脊髄路は反対側支配 皮質延髄路については : ( ア ) 純運動性の脳神経と 顔面神経の顔面下部に分布する運動成分 反対側支配 ( イ ) 顔面神経の顔面上部に分布する運動成分 およびそれ以外の混合性脳神経の運動成分 両側支配以上より小脳テントより上の障害は 顔面下部 上下肢ともに反対側に出る なお顔面上部は両側支配だから 機能低下があるものの運動麻痺にはならない 2006 年度の問 2より 13) 延髄にある迷走神経背側核には二次ニューロンの細胞体が集積する. 14) 舌下神経核は反対側の前頭葉からの入力を受け, 舌の同側約半分を動かす骨格筋を支配する. 15) 延髄後外側の障害で生じる Wallenberg( ワレンベルク ) 症候群では同側の顔面神経の麻痺が起こる. 16) 延髄下部の障害で聴覚麻痺が生じる可能性は低い. 33

34 17) 橋の左側半分が障害されると, 顔面を含めた右半身の運動と触覚, 温痛覚が麻痺する. 18) 橋の横走線維は錐体路の一部であり, 反対側の小脳に至る. 19) 三叉神経運動核に存在する神経細胞は下位運動ニューロンである. 20) 三叉神経脊髄路核に存在する神経細胞は顔面の温度核, 痛覚を伝導する二次ニューロンである. 21) 大脳脚では, 正中に近い側から順に頭頚部, 上肢, 下肢の運動を支配する上位運動ニューロンが走行する. 22) 赤核は視床からの入力を受け, 小脳や網様体, 脊髄などに出力する. 23) 視覚失認は上丘の障害で起こることが多い. 24) 視床下部の室傍核, 視索上核にある神経細胞は脳下垂体後葉に軸索を送る. 25) 松果体の障害は第二次性徴の早期出現をもたらすことがある. 26) 松果体の前部は第 3 脳室に面し, 後部はクモ膜下腔に面する. 27) 黒質から線条体に至るニューロンの障害はパーキンソン病の原因となる. 28) 脳幹網様体は大脳からの入力を受けると同時に, 大脳に対して出力する. 31) 言語中枢が一側の大脳半球に偏在する傾向は女性より男性の方が強い. 32) 脳梁は交連線維の束であり, 女性よりも男性の脳で太い傾向がある. < 解答 > 13) 迷走神経の背側核は遠心性 (GVE) で 胸腹部内臓の副交感支配をおこなう経路の節前神経である 2 次ニューロン という用語は ふつう感覚系伝導路の場合に使う 下のプチ整理を参照 感覚系 :1 次ニューロン 2 次ニューロン 3 次ニューロン 運動系 : 上位運動ニューロン UMN 下位運動ニューロン LMN 自律神経系 : 節前ニューロン 節後ニューロン 14) 大脳皮質の機能局在のところで詳しくやるが 運動性なら前頭葉と当たりをつける 皮質延髄路のうち純運動性の脳神経核に投射する経路は反対側支配 だから 反対側の前頭葉から は正しい 両側支配か反対側支配かは脳神経核にいたるまでの経路の話だから 脳神経核と同側の舌筋を支配するのは当たり前 15) Wallenberg 症候群は延髄外側症候群とも呼ばれ 延髄外側部の障害により ここにある複数の核や伝導路が障害され 多様な症状がでる のだが Wallenberg 延髄外側 顔面神経の核 橋ということを知っていれば 間違いだとすぐわかる! ワレンベルク Wallenberg 症候群は 椎骨動脈 ~ 後下小脳動脈の閉塞などが原因で延髄外側部が障害されることにより 次に挙げるような各種の症状がでる 三叉神経脊髄路核の障害 同側顔面の温痛覚の障害 疑核の障害 構音障害 嚥下障害 脊髄小脳路の障害 小脳性運動失調 交感神経の障害 同側の眼瞼下垂や顔面の発汗減少 ( ホルネル症候群 ) 16) 聴覚系は脳幹の外に 1 次ニューロンをもち ( これは感覚伝導路の一般的な構成 ) その後 橋のレベルで脳幹に入り 大脳皮質へ向かう よって延髄下部の障害では聴覚麻痺は生じない 17) 顔面の運動は CN7( 顔面 ) で 神経核は橋にある 顔面の触覚 温痛覚は CN5( 三叉 ) で 神経核は橋にある よっていずれも症状は同側 ( 患側 ) に出るので 題意は誤り なお 上下肢の運動は錐体路 これは延髄で交叉して反対側を支配 上下肢の触覚 温痛覚は脊髄または延髄で交叉して反対側を支配 34

35 なので 顔面を除く右半身 は正しい 18) 錐体路は基本的に下行しているので 横走線維のわけがない 橋の横走線維は皮質橋小脳路の一部で 中小脳脚をとおり同側の小脳に至る 橋断面では 横走線維のすきまに縦走する錐体路束がみられる 19) 一般に随意運動を担う下行性伝導路では 上位運動ニューロン (UMN) は大脳皮質 下位運動ニューロン (LMN) は末梢にでていく直前に細胞体を持つ 20) 感覚性の脳神経核はふつう 2 次ニューロン 三叉神経の感覚成分は 上から中脳路核 ( 固有感覚 ) 主知覚核 ( 精細触覚 ) 脊髄路核 ( 温痛覚 ) で 中脳路核のみ例外で 1 次ニューロンが脳幹に埋め込まれたものなのであった 21) 正中に近い側から順に頭頚部, 上肢, 下肢の運動を支配する という 体部位的局在の向きが正しいか それとも逆なのかを評価する必要がある これを暗記ではなく解答するためには 運動性の脳神経核は正中より 感覚性の脳神経核は外側よりにある という発生上の原則を知っておけばよい (4-6 の最後を参照 ) そうすると錐体路のうち脳神経核にいたる線維 ( 皮質延髄路 ) は 脳神経核により近い側にあるはずである 上の右図で FACE ARM LEG の位置関係を確認しておこう 22) 解説済み 赤核は小脳からの入力を受け ならば正解 23) 中脳背側の上丘は 対光反射や調節反射の中継路で 視覚情報そのものを伝える経路ではない 視覚失認 ( 視野にみえるものの形は分かっているが それが何なのか分からない状態 ) の場合は 1 次視覚野までは無事で 2 次視覚野の障害による 24) 視床下部の室傍核と視索上核は神経分泌細胞で 脳下垂体後葉 ( 神経下垂体 ) に軸索を伸ばしここで分泌を行う 下垂体については以下の区別をおさえておこう ( 右上図 ): 下垂体前葉は腺性下垂体とも呼ばれ 視床下部の漏斗核の分泌物 ( 主に X 刺激ホルモン放出ホルモン ) は下垂体門脈系により下垂体前葉に運ばれ 前葉ホルモンの放出を促進または抑制する 下垂体後葉は神経下垂体とも呼ばれ 視床下部の室傍核と視索上核 ( 神経分泌細胞 ) がここに軸索を伸ばし 後葉ホルモン ( バソプレシン オキシトシンなど ) を直接血中に放出する 25) 松果体 pineal gland は視床の後方で第三脳室に面する無対性の構造で 概日リズムを調節するホルモン ( メラトニン ) を分泌する内分泌腺として知られる 松果体は 7 歳ごろに最も大きくその後は縮小していく 子どもの時期のメラトニン産生は性成熟を抑制していると考えられ 松果体が腫瘍などで障害された児童には早熟がみられる 26) 脈絡叢 choroid plexus は 脳室壁の上衣細胞が脳実質をおおう軟膜 +クモ膜と接するところにできる そのため脳室系は構造上 どこか ( 主に背側 ) でクモ膜下腔と必ず接している 松果体は第三脳室のすぐ後方にあるが ここは第三脳室がクモ膜下腔と接しているところである 27) パーキンソン病は 中脳黒質の神経細胞 ( 線条体に軸索を伸ばし ドーパミンを分泌する ) の変性 degeneration によって起こる 主な症状は安静時の振戦 無動 ( 表情の少なさから仮面様顔貌といわれる ) 35

36 筋固縮など 変性の原因や神経回路的な発症機序はまだ未解明の部分が多い 28) 解説済み 29) 解説済み 30) 上位運動ニューロン障害 痙性麻痺 下位運動ニューロン 弛緩性麻痺 31) 脳の性差についてはいろいろな俗説も流布しているが 学術的には以下のような点が報告されている : 全体の大きさ : 男性の脳の方が平均重量で 1 割ほど大きい ( このことと一般的な知能水準の高さは無関係であることがしばしば強調される ) 言語野付近の活動パターン : 脳機能イメージングでは 男性では左脳 ( 言語野がある ) 優位 女性では左右両方の活性化がみられる 脳梁の形 : 脳梁 ( 左右の大脳半球を結ぶ交連線維の束 ) の後部 ( 膨大部 ) の形状が 男性は小さく管状 女性では太く球状になる傾向がみられる 32) すぐ上で解説したとおり 男性よりも女性の脳で太い傾向がある が正解 36

37 5, 律神経 この章ではまず自律神経について簡単にまとめ 次いで各年度の問 3( 多肢選択式 ) の問題を解いていく 問 3 は主に自律神経系と脳神経からの出題である 5-1 律神経系の概要自律神経系 autonomic nervous system は 生物にとって必須の生理機能や無意識下の行動の調節を行う機構の末梢部分 (!) である 機構の中枢側にあるのは大脳辺縁系 間脳の視床下部 脳幹網様体などで これら 4つは機能的に関連の深いグループをなす 自律神経系の最高中枢は視床下部であるとされるが 視床下部は網様体の呼吸中枢や循環中枢に投射し 網様体脊髄路を介して自律神経系を支配する よって感覚系や運動系のような明確な伝導路をつくるわけではない ( たとえば 視床下部側角路 みたいなものはない ) 自律神経系は通常 次の 2つのニューロンで構成される末梢系である : 脳幹や脊髄にある節前ニューロンはすぐに末梢に出て 自律神経節で節後ニューロンに交代し 末梢の平滑筋 心筋 腺に分布する よくみかける自律神経系まとめ図と 脊髄周辺の自律神経の走行を示す図をそれぞれ示すので これらをみながら順にポイントをおさえていこう 1. 交感神経系は T1~L3 から出る 副交感神経系は 脳幹の CN3( 動眼 ),CN7( 顔面 ),CN9( 迷走 ) CN10( 副 ) と 仙髄の S2~S4 から出る 2. 交感神経は中枢に近い方に神経節をつくり 副交感神経は支配器官の近くに神経節をつくる この違いは 交感神経と副交感神経の機能および分布域の違いと関連している 交感神経は たたかうか逃げるか のときに < 全身の > 活動状態を < 急速に > 高めようとするから 末梢の範囲内でより中枢側に神経節をおいて 各器官の中央集権的な操縦を行う いっぽう副交感神経は 交感神経に拮抗するものとして発達し 支配器官の近くに神経節をおいて 末梢での制御にまかせるような分権的な体制をとる そのため交感神経に比べると その作用は緩慢で 範囲も限定されている このように 拮抗支配 といっても 単に二つの力がバランスしているのではなく 両者の守備範囲が時間的 空間的にある程度分離されているということを知っておこう たとえばまさにバトル中で交感神経優位の状態でも 眼に光が入れば対光反射 ( 副交感支配 ) が起こる! 交感神経節は椎骨体の腹側にあるから 椎前神経節とも呼ばれる これは上下につながって交感神経幹 sympathetic trunk をつくる 以上に加えて 各ニューロンが有髄か無髄か また各シナプスでの神経伝達物質の種類を右図にまとめる 神経伝達物質について 交感神経の節後ニューロンのみノルアドレナリン (NA) で その他はアセチルコリン (Ach) 37

38 3. 交感神経系の節前ニューロンは 脊髄の中間質外側部 (T1~L3 で側角と呼ばれる外側に突出した構造をつくる ) に発して 前根と白交通枝を通って交感神経節に入り 次の 3つの様式でニューロンを交代する ( 下図で経路を追ってみよう ): a. 交感神経節ですぐにニューロンを交代し 灰白神経節を経て脊髄神経に戻り 全身の血管や皮膚の汗腺に分布する 上図だと 各レベルの交感神経節から 向かって左に出ているのがこのパターン 38

39 灰白交通枝をとおるのは a. のパターンのみ つまり灰白交通枝は節後ニューロン ( 無髄 ) のみが通るから 灰白 なのである ( 有髄神経は 髄鞘の脂肪のため白色にみえる ) b. 交感神経幹を上行して上中下の頚神経節をつくり 顔面から胸部内臓へ向かう c. 交感神経節を素通りして その後に神経節や神経叢をつくって腹部や骨盤の臓器に分布する 上図で副腎髄質に分布する交感神経は 腹腔神経節も素通りして 節前線維が髄質にまで至っている 節後ニューロンはどこにいったかというと 副腎髄質の分泌細胞になってしまっている この分泌細胞になってしまった副腎髄質の節後ニューロンを クロム親和性細胞 ( 組織切片がクロム酸塩で染まることからこの名前がある ) といい アドレナリンまたはノルアドレナリンを分泌する つまり 交感神経の節後ニューロンは一般にシナプスへとノルアドレナリンを放出するが クロム親和性細胞は血中へとノルアドレナリンを放出するのである 以上の経路を上図でも確認し また副交感神経の経路と比較してみることが重要である 眼の内眼筋 ( 毛様体や瞳孔括約 / 散大筋 ) にいたる自律神経を例すると : 副交感神経の節前ニューロンは中脳 EW 核にあり 眼球の近くで毛様体神経節をつくる 交感神経の節前ニューロンは胸髄側角にあり 交感神経幹を上行して上頚神経節をつくる 問題と解答解説 2008 年度問 3 39

40 1. 自律神経節にあって, 後根神経節に無いものはどれか. a. 衛星細胞 b. シナプス c. 偽単極神経細胞 d. リポフスチン顆粒 2. 交感神経節において誤っているものはどれか. a. 節前神経の軸索は交感神経節内で節後神経にシナプス結合する. b. 一部の節前神経の軸索は, 同じ高さの交感神経節を通過し, それより上下に存在する交感神経節でシナプス結合をする. c. 腹部内臓, 骨盤内臓に分布する交感神経の節前神経の軸索は交感神経幹を通過し, 大動脈近傍の神経節でシナプス結合をする. d. 一部の節前神経節の軸索は神経節を通過し, 直接, 平滑筋を支配する. 3. 調節反射について誤っているものはどれか. a. 瞳孔括約筋に分布する副交感神経が縮瞳を起こす. b. 毛様体筋に分布する副交感神経が水晶体の厚みを増す. c. 大脳皮質視覚野が関与する. d. 内直筋に分布する動眼神経が関与する. e. 瞳孔散大筋に分布する交感神経が散瞳を起こす. 4. 分泌に関わる軸索を涙腺に送っている細胞体はどこにあるか. a. 上唾液核 b. 下唾液核 c. 膝神経節 d. 耳神経節 e. 翼口蓋神経節 5. 損傷によってホルネル症候群が起こりうるのはどれか. a. 三叉神経視床路 b. 毛様体神経節 c. 動眼神経 d. 上頚神経節 e. 視放線 6. 対光反射に関わっている神経核はどれか. a. 孤束核 b. 迷走神経背側核 c. 上唾液核 d. 顔面神経核 e. エディンガー ウェストファール核 7. 右目に光が入っても縮瞳しないが, 左目に光が入ると両眼の縮瞳が見られた場合, 以下の部位のうち損傷が疑われるのはどれか. a. 右の視索 b. 右の視神経 c. 右の動眼神経 d. 左の動眼神経 8. 料理の匂いで唾液の分泌が促されるが, このとき, 関わっていない部位はどれか. a. 扁桃体 b. 嗅球 c. 視床下部 d. 舌下神経核 9. 嗅覚について正しいものはどれか. a. 嗅覚伝導路は同側の嗅覚野のみに投射する. b. 僧帽細胞は一次嗅覚野に直接シナプス結合する. c. 嗅神経は扁桃体に直接シナプス結合する. d. 損傷した嗅神経は再生しない. e. 嗅索は嗅上皮内の知覚神経細胞からの軸索からなる. 10. 視覚について正しいものはどれか. a. 大脳皮質視覚連合野の損傷で同名半盲が起きる. b. 黄斑部の視覚情報は, 視覚野の後方に投射する. c. 視覚野の細胞は, 視索を通ってきた軸索からシナプス結合を受ける. d. 鳥距溝の下面の細胞には, 反対側下方の視野からの視覚情報が投射する. e. 片側の視索の損傷で, 両耳側半盲が起きる. 11. 視覚について正しいものはどれか. a. 視神経の髄鞘はシュワン細胞によって作られる. b. 網膜の黄斑部の視力が最も良いのは, 錐体細胞が密在しているからである. c. 眼房水が過剰になると, うっ血乳頭 ( 乳頭水腫 ) が起きる. d. マイヤーのループは後頭葉にある. e. 網膜右半分からの情報は, 左側の視覚野に投射する. 12. 内側縦束について正しいものはどれか. a. 動眼神経, 滑車神経, 外転神経の神経核を連絡する神経線維を含む. b. 三叉神経脊髄路核のすぐ外側を通る. c. 下丘と内側膝状体とを連絡する. d. 辺縁系を連絡する. e. 大脳皮質の感覚性言語中枢と運動性言語中枢とを連絡する. 13. 角膜反射に関わっていないものはどれか. a. 三叉神経脊髄路 40

41 b. 三叉神経節 c. 顔面神経核 d. 眼神経 e. 三叉神経視床路 14. 二次知覚ニューロンの細胞体や軸索ではないものはどれか. a. 三叉神経脊髄路核 b. 三叉神経視床路 c. 内側毛帯 d. 三叉神経主知覚核 e. 三叉神経中脳路核 15. 上顎の歯の痛みの伝達に関わっているのはどの視床核か. a. 前外側腹側核 b. 視床内側核 c. 後内側腹側核 d. 後外側腹側核 e. 視床前核 16. 眉毛が生えている部位の皮膚の痛みを伝える経路はどれか. a. 三叉神経 - 三叉神経主知覚核 - 視床後内側腹側路 - 大脳皮質一次知覚野 b. 眼神経 - 三叉神経節 - 三叉神経運動根 - 三叉神経毛帯 - 大脳皮質一次知覚野 c. 眼神経 - 三叉神経脊髄路核 - 三叉神経毛帯 - 視床 - 大脳皮質一次知覚野 d. 三叉神経 - 翼口蓋神経節 - 三叉神経毛帯 - 視床後外側腹側核 - 大脳皮質 e. 顔面神経 - 膝神経節 - 三叉神経脊髄路核 - 三叉神経毛帯 - 視床 - 大脳皮質 17. 第 VI 脳神経で支配されるのはどれか. a. 内側直筋 b. 外側直筋 c. 上斜筋 d. 下斜筋 e. 上眼瞼挙筋 18. 顔面神経核の軸索が終止するのはどれか. a. 顔面筋 b. 顔面の皮膚 c. 顎下神経節 d. 涙腺 e. 孤束核 19. 側頭骨内の顔面神経管の損傷で左の顔面神経が切断されてしまった場合, どのような所見がみられるか. a. 左側の顔面上半分の顔面筋の麻痺が見られるが, 下半分の顔面筋の機能は保たれる. b. 左側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られるが, 上半分の顔面筋の機能は保たれる. c. 左のすべての顔面筋の麻痺が見られる. d. 両側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られるが, 上半分の顔面筋の機能は保たれる. 20. 聴覚系について正しいものはどれか. a. 高音 ( 周波数の高い音 ) は蝸牛底の近くの有毛細胞によって受容される. b. コルチ器の基底面によって, 前庭階と鼓室階が分けられる. c. 外有毛細胞は, 音情報を受容し, その軸索によって音情報を聴覚中枢へ伝える. d. 蝸牛神経の中を走る軸索は, 下丘に投射する. 21. 平衡感覚の一次知覚神経はどの部位で脳幹に入るか. a. 延髄の尾側 b. 延髄と橋の境界 c. 橋の中央 d. 中脳の脚間窩 e. 乳頭体の基部 22. 頭部の位置の変化や, 直進運動を受容する仕組みについて正しいものはどれか. a. 平衡斑の有毛細胞の興奮によって受容される. b. 膨大部稜の有毛細胞の興奮によって受容される. c. 膨大部稜のゼラチン頂の傾きが刺激となる. d. 外リンパの流れによって有毛細胞が刺激されて興奮する. 23. 前庭神経核のニューロンが直接シナプス連絡をしないものはどれか. a. 動眼神経核 b. 頚部の筋を支配する脊髄前角運動ニューロン c. 小脳片葉 d. 大脳皮質 24. 舌の後ろ 1/3 の味覚を伝える神経線維が通っているのはどれか. a. 内側縦束 b. 中間神経 c. 孤束 d. 三叉神経脊髄路 e. 迷走神経 25. 舌咽神経について正しいものはどれか. a. 舌咽神経に含まれる知覚神経のうち三叉神経脊髄路核へ投射する成分は, 頚動脈 41

42 小体や頚動脈洞からの情報を伝える. b. 舌咽神経に含まれる知覚神経のうち孤束核へ投射する成分は下の後ろ 1/3 の味覚を伝える. c. 舌咽神経に含まれる知覚神経の細胞体は疑核にある. d. 脊髄根と延髄根とがある. 26. 右側の声帯麻痺, 右側の咽頭反射 ( 催吐反射 ) の消失, 嚥下障害を呈する患者におて損傷が見られうる部位はどれか. a. 右舌下神経核 b. 右疑核 c. 右顔面神経核 d. 左大脳皮質運動野 27. 内臓感覚を伝える一次知覚神経細胞が存在するのはどこか. a. 三叉神経節 b. 膝神経節, 舌咽神経神経節, 迷走神経神経節 c. 腹腔神経節, 上腸間膜神経節, 下腸間膜神経節 d. 上頚神経節 e. 翼口蓋神経節 28. 内臓の知覚に関わる二次知覚神経が存在するのはどこか. a. 孤束核 b. 三叉神経脊髄路核 c. 三叉神経主知覚核 d. 三叉神経中脳路核 e. 中間質外側核 29. 舌下神経が分布しているのはどれか. a. 舌の後ろ 1/3 の味蕾 b. 舌粘膜の自律神経終末 c. 茎突咽頭筋 d. 顎舌骨筋 e. 舌骨舌筋 30. 片側の舌下神経の損傷が起きた場合, おこりうる障害はどれか. a. 同側の舌前 2/3 の味覚障害 b. 同側の舌後ろ 1/3 の味覚障害 c. 舌を前に出させると損傷側に偏位して突出する. d. 舌を前に出させると損傷側と反対側に偏位して突出する. e. 損傷側の声帯麻痺が起こり, 嗄声が起こる. < 解答 > 1 b 自律神経節では節前ニューロンと節後ニューロンの交代が行われる ( つまりシナプスがある ) いっぽう 後根神経節には感覚神経の 1 次ニューロン ( 偽単極性 ) の細胞体があり ここでシナプスを作っているわけではない 他の選択肢の用語もあわせて解説しておこう 末梢神経におけるグリアはシュワン細胞と衛星細胞 ( 外套細胞 ) リポフスチン顆粒は ニューロンを光学顕微鏡で観察される色素で 加齢とともに蓄積がみられる これは電顕レベルではリソソーム ( 細胞内消化を担う ) に相当する 2 a 5-1 で説明した通り 交感神経節でシナプスを作るのは一部の線維 (a. のパターン ) のみ 3 e まず a. ~e. の選択肢は いずれも内容自体は正しい テスト的には a. と e. のどちらかが間違いなのだが 調節反射 ( 近づいてくる物体に対して焦点を合わせ続ける反射 ) のときに起こるのは 散瞳 ( さんどう ) か 縮瞳 ( しゅくどう ) のどちらか? 答えは縮瞳で その理由は レンズを厚くすると焦点深度が浅くなり色収差が大きくなるから それを是正するために縮瞳が起こる となる しかしこれでは物理学 ( 光学 ) の話になってしまう カメラや顕微鏡の原理でもあるから 興味のある人は 色収差 をキーワードに調べてみよう 光学顕微鏡の絞りを絞ると視野は暗くなるが像ははっきりする のは組織実習で散々やったので 直感的にはこのことからも判断できる 4 e 42

43 副交感神経 ( 脳神経 ) の経路の問題 腺に分布するのは節後ニューロンなので a と b は消える 頭部の腺に分布する副交感神経の経路は次の 3つ CN7( 顔面神経 ): 橋の上唾液核 翼口蓋神経節 涙腺 鼻腺 CN7( 顔面神経 ): 橋の上唾液核 顎下神経節 顎下腺 舌下腺 CN9( 舌咽神経 ): 延髄の下唾液核 耳神経節 耳下腺なお膝神経節には舌前 2/3 の味覚を伝える CN7( 顔面神経 ) の1 次ニューロンがあり これは孤束核にシナプスする 5 d ホルネル症候群は顔面と眼球にいたる交感神経の障害である という点を知っておく 頭部の交感神経はほとんどが上頚神経節から長い経路をたどって上行して各部に分布する ( いっぽう すぐ下の中頚神経節は心臓や肺に行く!) この経路のどこかが障害されればホルネル症候群がおこるから たとえば延髄外側部の障害であるワレンベルグ症候群においても その症状のひとつにホルネル症候群がみられる ホルネル症候群 Horner s syndrome では 眼球や顔面に分布する交感神経の障害によって 縮瞳 眼瞼下垂 顔面の発汗減少などの症状がみられる 6 e 7 b 4-4 の対光反射の図を参照 対光反射では 入射した光と同側および反対側の眼球の縮瞳が同程度に見られる これは視交叉の存在と 経路の途中 ( 視蓋前域 EW 核 ) で左右の交通があることによる 各選択肢が障害されたらどうなるかを実際に経路を追って確かめると 最初の視交叉の前で障害がある場合にのみ題意の現象がみられることが分かる 8 d CN12( 舌下神経 ) の舌下神経核は専ら舌の運動にかかわるから 問われている嗅覚 ~ 唾液分泌とは無関係 扁桃体と嗅球は嗅脳を構成する 視床下部には唾液分泌の中枢がある 9 b 嗅覚系の経路は 4-3 で説明した通り 1 嗅神経細胞 ~ 嗅神経 ~2 僧帽細胞 ~ 嗅索 ~1 次嗅覚皮質 となる a. については本資料では説明していないが 片側の嗅索は左右の 1 次聴覚皮質に入る 大脳に入る経路のほとんどは片側だけで完結せず 左右の交叉または連絡がみられるという原則の一例 d. について 嗅覚系には神経幹細胞が存在し 嗅細胞はおよそ 40 日ごとに入れ替わっていく これは海馬と並び 中枢神経系において神経新生がみられる珍しい例なので 神経発生や神経分化の研究で注目されている 10 b 視覚系の伝導路を自力で書けるようにしておき 主要な構造は覚えておこう 網膜のうち 錐体細胞が密に集まり 解像度の高い像を得る黄斑部の視覚情報は 特別に 1 次視覚野後方の大きな面積を持つ皮質に送られる よってこれが正解 なのだが 少しマイナーな知識だと思う 消去法で解けるように 他の選択肢を検討しよう : a. 連合野 (2 次視覚野 ) の障害では視覚失認 ( ものの形は分かるが それが何なのか分からない ) が起こるので 誤り なお同名半盲とは たとえば右視索の障害で左視野のみが両眼ともみえなくなるような場合 c. 視索を通ってきた軸索は視床の外側膝状体 LGBでニューロンを交代するので 誤り d. 経路をたどってみると 結局 両眼の左視野は右の 1 次視覚野に 両眼の右視野は左の 1 次視覚野に入る と 43

44 ころで対象物はレンズを通し 上下と左右が反転して網膜に写っているので 上下の軸に注目しても同じことがいえる つまり両眼の上視野は下視覚野に入る そこで問題文の 反対側 は だが 下方 が間違い e. 両耳性半盲とは 視交叉の内側線維のみが選択的に損傷された場合に 両眼のそれぞれ耳側 ( 外側 ) の視野が欠損するような場合であり 誤り 眼の障害については 耳側 鼻側 という用語を使うことがある 11 b b が正解なのはまあ常識的 他の選択肢もいちおう検討しておく a. 視神経 = 脳神経 = 末梢神経だからシュワン細胞 と考えたくなるが 実は視神経は中枢神経系で オリゴデンドロサイトが髄鞘をつくっている c. 眼房水の過剰により眼圧が上昇して視神経に障害が起こるのは緑内障 glaucoma である 乳頭水腫 ( うっ血乳頭 ) は 脳腫瘍などによる頭蓋内圧が上昇で 眼底の視神経乳頭が腫れて充血し突出することにより 頭痛 視野狭窄 視力低下などの症状を引き起こす d. 視床の外側膝状体 LGBを出たあとの軸索は いったん大脳の前側方へ迂回した後で後方 ( 後頭葉 ) に向かう この迂回路をマイヤーのループというが ここは視床や大脳基底核のやや外側部で 後頭葉ではない e. ひっかけ選択肢 視野の右半分からの情報は 左側の視覚野に投射する が正しい 経路図から両眼左視野 両網膜右半分 右側の視覚野となることを確認しておこう 12 a 内側縦束 medial longitudinal fasciculus (MLF) は 名称からすると 内側を縦方向に走る神経路 くらいの意味で 脊髄 ~ 中脳の内側部にみられる 中脳では外眼筋支配の神経核 すなわち動眼神経核 (CN3) 滑車神経核 (CN4) 外転神経核 (CN6) を接続しており これらの筋群の協調運動に寄与しているとされる すなわち MLF の障害は外眼筋群の協調運動の破綻であり MLF 症候群 核間性眼筋麻痺 などと呼ばれる 仮に右側の MLF が障害されたとすると : 同側の眼球の内転障害がでる ( 対象が左に動くとき 右目が内転しない ) が 対象を鼻先に近づけた場合には両眼の内転 ( 輻輳反射 ) が起こるといった ( ビミョーな!?) 症状がでる 13 e 角膜反射 corneal reflex とは 角膜にものが触れると眼が閉じるというもので 機能の単純さから想像できるように大脳を介さず CN5( 三叉 ) の感覚性神経核から CN7( 顔面 ) の顔面神経核への投射で起こる 三叉神経から視床 大脳へ向かう経路は無関係なので e. が誤り 反射経路とポイントを確認しておこう : 経路 : 皮膚の自由神経終末 ~ 眼神経 (CN5 1)~1 三叉神経節 ~( 三叉神経脊髄路 ) 2 三叉神経脊髄路核 顔面神経核 顔面神経 眼輪筋 角膜反射は相対的に低級な感覚である痛覚で起こる 三叉神経脊髄路核は三叉神経節よりもかなり下方にあるから 温痛覚を伝える線維はいったん下行して ( これが三叉神経脊髄路 ) 三叉神経脊髄路核にシナプスする 14 e ふつう感覚系の 1 次ニューロンは中枢の外側で神経節をつくるが 顔面の固有感覚を伝える三叉神経中脳路は数少ない例外で 発生上の都合で 1 次ニューロンの細胞体が脳幹内の神経核となっている そのことを知っていますか というだけの問題 15 c 44

45 体性感覚は視床の VPM 核と VPL 核に伝えられる ここにも体部位的局在がみられて 3-4 より再掲すると次のようになる 下半身の感覚 視床 VPL(VENTRAL POSTEROLATERAL; 後外側腹側核 ) の外側 上半身の感覚 視床 VPL の内側 顔面の感覚 視床 VPM(VENTRAL POSTEROMEDIAL 後内側腹側核 ) 16 c まず 眉毛 より眼球周辺の知覚は CN5-1( 眼神経 ) また 痛み だから 温痛覚を担う三叉神経脊髄路 核 以上で決まり 17 b CN6 は 外転 神経 眼球の外転を担うのは外側直筋とすぐわかる 外眼筋は 4-4 でまとめておいた 18 a CN7( 顔面神経 ) の顔面神経核は運動性 (SVE) すなわち下位運動ニューロンで その軸索は表情筋 ( 顔面筋 ) にいたる 19 c CN7( 顔面神経 ) は 中枢を出たあと 内耳孔 顔面神経管 茎乳突孔を経て頭蓋の外に出て 各成分が分岐する 反対側支配か両側支配か がややこしいのは中枢レベル ( 脳神経核まで ) で 末梢の顔面神経管の障害では単純に同側の表情筋 ( 顔面筋 ) に麻痺がでる というだけ 20 a a. 蝸牛の入り口 ( 卵円窓 ) に近い有毛細胞ほど高い音 ( 周波数の大きい音波 ) を受容する b. コルチ器の基底面によって鼓室階と蝸牛管 ( 中間階 ) が分けられる 蝸牛管と前庭階を分けるのはライスナー膜 ( 前庭膜 ) a. は生理学 b. 組織学の範囲だとおもうので詳しくは解説しません c. 有毛細胞は受容細胞で 音情報を伝える 1 次ニューロンはラセン神経節にある d. 蝸牛神経は延髄の蝸牛神経核にはいる 中脳の下丘を通るのはその後なので 誤り 21 b CN8( 内耳神経 ) の神経根 ( 脳幹に入るところ ) はどこかを聞いている 前庭神経核が延髄レベルであることを 知っていれば解答可能 22 a 感覚受容器の詳細な仕組みは神経解剖学の範囲外 ( 肉眼解剖 組織学 生理学にまたがる!?) だと思うが 内耳の感覚器をごく簡単にまとめておこう 蝸牛管のコルチ器の外有毛細胞は 音波を感知 半規管の膨大部稜の有毛細胞は 頭部の回転運動を感知 球形嚢と卵形嚢の平衡斑の有毛細胞は 頭部の直線的な動きや傾きを感知 半規管と球形嚢 卵形嚢は次のような共通のしくみで運動を感知する すなわち 1 頭部の運動により管内の内リンパが流れ 2それがゼラチン物質を動かし 3ゼラチン物質に毛を伸ばした有毛細胞が興奮する 以上より解答は a. となる 45

46 いちおう 以下でもう少し詳しくまとめてみましたが 神経解剖学の範囲ではこんなの知らなくていいはずです 側頭骨の中の空洞 ( 骨迷路 ) 内の膜性の構造を膜迷路といい 膜迷路は蝸牛管 3 つの半規管 卵形嚢 + 球形嚢からなる 骨迷路と膜迷路の間を外リンパが 膜迷路内を内リンパが流れる 耳に入った音波は 前庭階と鼓室階の外リンパを伝わり 蝸牛管の基底膜を振動させる するとコルチ器の外有毛細胞の不動毛が蓋膜にあたって 有毛細胞が興奮する 半規管は回転運動 ( 角加速度 ) を感知し 球形嚢と卵形嚢は 頭部の直線的な動き ( 直線加速度 ) や傾きや傾きを感知する これらは次のような共通した感知のしくみを持つ :1 頭部の運動により管内の内リンパが流れ 2それがゼラチン物質を動かし 3 ゼラチン物質に毛を伸ばした有毛細胞が興奮する 半規管のでの感覚受容 : 頭部の回転運動で半規管の内リンパが流れると 膨大部稜のクプラ ( ゼラチン物質 ) が動き 膨大部稜の有毛細胞が感知する 球形嚢と卵形嚢での感覚受容 : 頭部の直線運動で球形嚢または卵形嚢内の内リンパが流れると 耳石膜 ( ゼラチン物質 ) が動き 平衡斑の有毛細胞が感知する 23 d 平衡覚を伝える前庭神経系は 主に反射的な平衡調節システムの一部としてはたらき 小脳や脊髄 脳幹の運動 核と連絡する また大脳に行くとしても 大脳に行く感覚神経は基本的に視床を中継するから d が誤り 24 c 味覚は内臓感覚 (SVE) に分類され 4つの脳神経がかかわる 4つとは例によって ややこしい脳神経たち つまり CN5( 三叉 ) 7( 顔面 ) 9( 舌咽 ) 10( 迷走 ) である 広義の味覚には舌触りなどの化学受容器によらない一般感覚と 化学受容器による内臓感覚があり 4つの脳神経が次のように分担している : CN5: 舌の前 2/3 の一般感覚 ( 舌触り ) CN7: 舌の前 2/3 の内臓感覚 ( 味覚 ) CN9: 舌の後 1/3 の一般感覚 ( 舌触り ) と内臓感覚 ( 味覚 ) CN10: 咽頭部 (!) の内臓感覚 ( 味覚 ) 面倒なら 化学受容器による味覚 ( 内臓感覚 ) は CN7, 9, 10 が担う ことだけ覚えてもいいだろう これらはい ずれも孤束核に入り 舌前 2/3 舌後 1/3 咽頭部という分担は脳神経が上から順に出ていることとおおまかに対 応している 25 b 24 で説明した通り 残りの選択肢も検討しておこう : a. 三叉神経脊髄路核 が間違いで 孤束核 にすれば正しい c. 疑核は発声や嚥下にかかわる筋を支配する 運動性 (SVE) の神経核 46

47 d. 延髄根と脊髄根を持つのは CN11( 副神経 ) 26 b 発声や嚥下にかかわるのは CN10( 迷走 ) その運動性核は疑核である 左右の交叉や分岐は大脳皮質と脳神 経核の間で起こるから 脳神経核じたいの障害は一般に同側に出る 27 b 体性感覚 と 内臓感覚 は対をなす用語で 皮膚の触覚や温痛覚 視覚や聴覚など体表面近くに受容器があるものは前者に 内臓に受容器がある味覚や嗅覚は後者に属する 選択肢をみると嗅覚は関係なさそうだから 味覚を担う脳神経 (CN7,9,10) の1 次感覚ニューロンの神経節を選ぶ a. 三叉神経節には 頭部の体性感覚にはたらく 1 次ニューロンの細胞体がある c. とd. は交感神経系の神経節 e. 翼口蓋神経節は 橋の上唾液核より出て涙腺や鼻腺を支配する副交感神経の節後ニューロンが発するところ 28 a 味覚を担う神経核である aを選ぶ b,c,d は顔面の各種体性感覚を分担しており 脊髄路核は温痛覚 主知覚核は精細触覚 中脳路核は固有感覚を担う eの 中間質外側 とは脊髄髄質の前角と後角にはさまれた中間部の外側よりの部分で 自律神経の低次中枢 ( 節前ニューロン ) がある 29 e CN12( 舌下神経 ) は純運動性で舌筋群を支配する d. は下顎と舌骨を結ぶ筋で 舌筋には含めない 30 c 繰り返しになるが左右の交叉や分岐は大脳皮質と脳神経核の間で起こるから 舌下神経 つまり末梢の障害は同側に出る この場合は下位運動ニューロン LMN の障害なので 障害側の舌筋に弛緩性麻痺と筋萎縮が起こってシワシワになりる そこで患者に頼んで舌を突き出してもらうと 障害側に偏ってしまう 2007 年度の問 3より 1) は臨床問題の章に回す 2) 耳下腺を支配している副交感神経は以下のどの神経に由来するか.(1 点 ) a. 顔面神経 b. 動眼神経 c. 迷走神経 d. 頚動脈神経叢 e. 舌咽神経 3) 次の構造物について, 交感神経の構造物には a, 副交感神経の構造物には b, 両方に関わる構造物には c, どちらとも関係の無い構造物には d と解答欄 ( 省略 ) に記入しなさい.(5 点 ) i. 毛様体神経節 ii. 顎下神経節 iii. 星状神経節 iv. 骨盤神経叢 v. クロム親和性細胞 4) 脊髄神経節と自律神経節の構造の説明として正しいものはどれか.(1 点 ) a. 脊髄神経節は知覚神経の細胞体を含む. 自律神経節には節前神経と節後神経とのシナプスがある. b. 一方は神経堤由来であり, もう一方は神経管由来である. c. 両方の神経節にシナプスがある. d. 一方は中枢神経系に属して, もう一方は末梢神経系に属する. 5) i から iv の部位に傷害 ( 原文ママ ) があったとき, それによって起こりうる視覚障害を a から d の中から選びなさい.(4 点 ) i. 右視神経 ii. 視交叉 iii. 右マイヤー係蹄 iv. 左視覚皮質 a. 右眼視野欠損 b. 両眼の耳側視野欠損 c. 両眼の右側視野欠損 d. 両眼の左側視野欠損 6) 顔面神経の神経核はどれか.(1 点 ) 47

48 a. 三叉神経脊髄路核 b. 下唾液核 c. 疑核 d. 三叉神経主知覚核 e. 上唾液核 7) 顔面神経管のなかにあって舌の前 2/3 の味覚にたずさわる知覚神経節はどれか. (1 点 ) a. 耳神経節 b. 翼口蓋神経節 c. 顎下神経節 d. 膝神経節 8) 舌の後ろ 1/3 の味覚に関わる神経はどれか.(1 点 ) a. 顔面神経 b. 舌咽神経 c. 舌下神経 d. 副神経 9) 眼瞼下垂に関わりうる神経はどれか.(1 点 ) a. 動顔神経 b. 滑車神経 c. 三叉神経 d. 外転神経 10 ) 蝸牛神経の一次知覚神経節はどこにあるか.(1 点 ) a. 延髄 b. 蝸牛の骨軸 c. 内耳道 d. 顔面神経管 11 ) 対光反射と調節反射について,i から iv の項目にあてはまるものを a-d から選びなさい.(4 点 ) i. 網膜神経節細胞の興奮 ii. 外側膝状体ニューロンの興奮 iii. 視蓋前域の興奮 iv. 視覚皮質の興奮 a. 対光反射のみ b. 調節反射のみ c. 対光反射と調節反射両方に関与する. d. 対光反射にも調節反射にも関与しない. 12 ) 以下の i から iv の各神経の機能として最もふさわしいものを a-d の中から選びなさい.(4 点 ) i. 舌咽神経 ii. 迷走神経 iii. 副神経 iv. 舌下神経 a. 舌を前に突き出す b. 心拍を低下させる c. 首を動かす d. 咽頭の感覚 < 解答 > 2)e. ややこしい脳神経たち のうち 感覚成分が主体の CN5 を除いた三択になるが 大雑把な分布域をおさえておけば CN9( 舌咽 ) と分かる 3)i. b ⅱ. b ⅲ.a ⅳ. c ⅴ.a 5-1 の自律神経まとめ図を ざっとながめるのではなくよくみておこう 星状神経節は 交感神経幹の下頚神経節 + 第一胸神経節 ( しばしば融合する ) の別名で 胸部内臓 ( 心臓 など ) に分布する 神経叢 NERVE PLEXUS は複数の神経が網状に絡まり合った構造で 主に次の 2 種類がある 1 脊髄からでる体性運動神経と体性感覚神経が網目状に絡まったもの 頚 腕 腰仙骨 のみ 2 主に大動脈付近にある 交感神経と副交感神経が網目状に絡まったもの 頚 腕 腰仙骨 神経叢以外は自律神経叢だと考えておこう クロム親和性細胞は 副腎髄質でノルアドレナリンを内分泌する細胞で 交感神経の節後ニューロンが軸 4)a. 索を失って分泌細胞になったもの 脊髄神経節には 1 次感覚ニューロン ( 偽単極性 ) の細胞体があり シナプスはない 自律神経節では節前ニューロンと節後ニューロンがシナプスしている 脳神経 脊髄神経 自律神経はいずれも末梢神経系 神経系の発生について 中枢神経系は神経管 末梢神経系は神経堤に由来する (1-2 で説明しました!) 5) i. a ii. b iii. d iv. c 正確な経路図さえ書くことができれば あとは単純作業にすぎない 6)e. 7)d. ややこしい脳神経たち の中でも 末梢の経路が最も分かりにくいは CN7( 顔面 ) だと思う 下図をたよりに 構成要素を確認しておこう ( 正確な図はアトラスを参照 ) 48

49 運動 副交感 味覚の 3 成分はいっしょに内耳道に入るが 出口は 3つに分かれる 運動神経と副交感神経 + 味覚神経は肉眼的に区別できるから 前者を狭義の顔面神経 後者を中間神経と呼ぶ 味覚神経は内耳道で膝神経節をつくる 副交感神経は上方に向かう大錐体神経 ( 翼口蓋神経節 涙腺 鼻腺 ) と下方に向かう鼓索神経 ( 顎下神経節 顎下腺 舌下腺 ) の両方を含む 8)b. 味覚 ( 内臓感覚 ) を担うのは ややこしい脳神経たち の CN7,9 10 で あとは位置の分担を考える ( 舌前 2/3 舌後ろ 1/3 咽頭の順 ) 9)a. CN3( 動眼 ) は 上斜筋と外側直筋以外の残りの外眼筋と上眼瞼挙筋を支配する 10)b CN8( 内耳神経 ) のうち聴覚を伝える蝸牛神経の 1 次感覚ニューロンは コルチ器で音声を受容したすぐ直後にラセン神経節をつくる ( 組織学のスケッチを思いだそう ) これは蝸牛のラセン構造をつくる内側部にあたり 蝸牛軸 ( 蝸牛骨軸 ) 呼ばれる これは神経解剖学としては細かすぎる知識だが 蝸牛神経と前庭神経はいずれも受容器の付近で神経節をつくり 合流して内耳神経となってから内耳道に入る というくらいでおさえておこう 11)ⅰ.c ⅱ.b ⅲ. c ⅳ. b 4-4 の経路のまとめを参照 簡単にまとめると : 調節反射は近づいてくる物体にピントを合わせ続ける反射だから 視床 LGB と大脳皮質を通る 対光反射は光の入射で眼を閉じる単純な反射で 視床 LGB に入る手前で分かれて中脳上丘の視蓋前域に入 る 12)ⅰ.d ⅱ.b ⅲ.c ⅳ.a 脳神経のおおまかな機能を聞いているだけ 49

50 2006 年度の問 3 より 1. 自律神経系について正しいものはどれか.(1 点 ) a. 副交感神経は, 個体の生存が脅かされたときに機能する. b. 白交通枝は交感神経幹の胸部に限局して存在する. c. 白交通枝は節前神経線維を含む. d. 大内臓神経は無髄の神経からなる. e. 小内臓神経は胸部交感神経幹の第 8 から第 9 神経節から枝分かれする. 2. 交感神経系について正しいものはどれか.(1 点 ) a. 起始細胞は脊髄後角に存在する. b. 節前線維は脊髄後根を通る. c. 節前線維は脊髄 T1-L2 のレベルより脊髄を出る. d. 節前線維の起始細胞は, 脊髄より上位の中枢によって, 脊髄後索を通る下行性の線維の支配を受ける. e. 節前線維の多くは脊髄神経節でシナプスを形成する. 3. ノルアドレナリンが分泌される部位はどれか.(1 点 ) a. 交感神経節前線維 b. 副交感神経節前線維 c. 副交感神経節後線維 d. 交感神経節後線維 e. 副腎に分布する節前線維 4. 副交感神経について正しいものはどれか.(1 点 ) a. 節前線維は脊髄の胸髄, 腰髄に由来する. b. 節前線維は少数の節後線維とシナプス連絡をしているので, 作用は限局している. c. 節前線維は短い, d. 感情がたかぶると機能が亢進する. e. 血糖を高める. 5. 以下に挙げた腺を支配する自律神経節を選びなさい.(a-e は何回使用しても良い.)(5 点 ) ⅰ. 顎下腺 ⅱ. 涙腺 ⅲ. 鼻腺 ⅳ. 耳下腺 ⅴ. 舌下腺 a. 耳神経節 b. 顎下神経節 c. 翼口蓋神経節 d. 毛様体神経節 e. 上記のどれでもない. 6. 以下に挙げた神経節が支配する標的器官はどれか.(a-d は何回使用しても良い.)(4 点 ) ⅰ. 上頚神経節 ⅱ. 毛様体神経節 ⅲ. 腹腔神経節 ⅳ. 下腸間膜動脈神経節 a. 眼瞼挙筋 ( 平滑筋成分 ) b. 瞳孔括約筋 c. 下行結腸 d. 上記のどれでもない. 7. 動眼神経が損傷を受けても起こりえないのはどれか.(2 点 ) a. 眼瞼下垂 b. 眼球の外転 c. 瞳孔の散大 d. 涙腺の分泌障害 e. 毛様体筋の麻痺 8. 第 Ⅵ 脳神経核の損傷で障害される眼球の運動はどれか.(1 点 ) a. 同側の眼球の上転 b. 反対側の眼球の上転 c. 反対側の眼球の下転 d. 同側の眼球の下転 9. 内包の血管障害による顔面神経麻痺で起こりうるのはどれか.(2 点 ) a. すべての同側の表情筋の麻痺 b. すべての反対側の表情筋の麻痺 c. 頬筋を除く同側の表情筋の麻痺 d. 頬筋を除く反対側の表情筋の麻痺 e. 前頭筋を除く反対側の表情筋の麻痺 10. 音の受容に関わる構造はどれか.(1 点 ) a. 下丘 b. 内側毛帯 c. 三叉神経毛帯 d. 下側頭回 e. 外側膝状体 11. 大脳皮質が必要な視覚反射は以下のどれか.(2 点 ) a. 角膜反射 b. 調節反射 c. 共感性対光反射 d. 対光反射 12. 右目の鼻側の視野はどこに投射するか.(1 点 ) a. 左外側膝状体 b. 左の鳥距溝 c. 左の視索 d. 右目の網膜の外側 e. 左の視放線 13. 左眼に光刺激が加わったとき右目の瞳孔が収縮する反射に関わる構造はどれか.(2 点 ) a. 右の視放線 b. 左の視神経 c. 左のエディンガー ウェストファール核 d. 左の動眼神経 e. 右の視神経 14. 舌下神経について正しいものはどれか.(1 点 ) 50

51 a. 舌下神経は舌の後ろ半分 1/3 の味覚を伝える. b. 舌下神経の損傷は舌を前方に突出させたとき, 損傷側に偏る. c. 舌下神経は脳幹部のオリーブと下小脳脚の間から出る. d. 舌下神経は第 Ⅲ, 第 Ⅳ 脳神経の成分を含む. e. 副神経の線維は第四脳室の底の舌下神経運動核の周りを回って走行する. 15. 三叉神経核について正しいものはどれか.(1 点 ) a. 三叉神経主知覚核は主に延髄に存在する. b. 三叉神経脊髄路核は第 5 頚髄の高さにまで及ぶ. c. 痛覚, 温度核は三叉神経主知覚核へ伝えられる. d. 咀嚼筋の固有感覚は三叉神経中脳路核へ伝えられる. e. 主として同側の視床後腹側内側核へ投射する. 16. 正しいものはどれか.(2 点 ) a. 副神経脊髄根は肩の挙上に関わる. b. 動眼神経は目を閉じる動作に関わる. c. 三叉神経は嚥下に関わる. d. 顔面神経は舌の後ろ 1/3 の味覚を受容する. e. 舌咽神経は舌の前 1/3 の触覚を受容する. 17. 迷走神経に含まれないのはどれか.(2 点 ) a. 一般内臓求心性線維 b. 一般内臓遠心性線維 c. 特殊内臓遠心性線維 d. 一般体性遠心性線維 < 解答 > 1.c a. 個体の生存が脅かされたとき に機能するのは交感神経で 副交感はリラックスするときにはたらく b. 白交通枝は節前ニューロン ( 有髄 ) が通るから 交感神経幹のすべての交感神経節に存在する d. 大内臓神経は節前神経なので有髄 e. 胸髄下部 (T5-T12) に発する自律神経は交感神経幹を素通りして大内臓神経 小内臓神経となり 腹腔動脈付近に腹腔神経節をつくる 小内臓神経は T9-T12 が合流した構造 2.c. a. 脊髄後角ではなく脊髄側角 b. 脊髄後根ではなく脊髄前根 d. 自律神経系の最高中枢は視床下部だが 明確な伝導路は存在しない 脊髄後索は上行性の感覚神経が通る e. 脊髄神経節は後根にある感覚神経の 1 次ニューロンの細胞体があるところ 節前線維は交感神経節を通るが そこでシナプスを形成するのは一部の線維のみ 3.a. 副交感神経の節前 節後ニューロンと交感神経の節前ニューロンはどれもシナプスでアセチルコリンを分泌し ノルアドレナリンを分泌するのは交感神経の節後ニューロンのみ なお副腎髄質のクロム親和性細胞は交感神経の節後ニューロンに由来する内分泌細胞で ノルアドレナリンやアドレナリンを分泌する 4.b a. 副交感神経の節前線維は脳幹および仙髄に細胞体を持つ b. 正しい 理由は 5-1 の 2 で説明した c. 末梢神経は効果器に近いところで神経節をつくる = 節前線維が長い d. 副交感神経は感情が落ち着いたときにはたらく e. 副交感神経は各機能を抑制することが多いが 消化吸収は促進する 肝臓に作用してグリコーゲン合成を促進 し 血糖を低下させる 51

52 5.ⅰ. b ⅱ. c ⅲ. c ⅳ. a ⅴ. b 脳神経による内臓や腺の副交感支配は CN5 を除く ややこしい脳神経たち が担う 以下を復習しておこう CN7( 顔面 ): 上唾液核 翼口蓋神経節 ( 涙腺と鼻腺 ) CN7( 顔面 ): 上唾液核 顎下神経節 ( 顎下腺と舌下腺 ) CN9( 舌咽 ): 下唾液核 耳神経節 ( 耳下腺 ) CN10( 迷走 ): 背側運動神経核 ( 胸腹部内臓 ) 6.ⅰ. a ⅱ. b ⅲ. d ⅳ. c 頭部の交感神経はほぼ上頚神経節のみが担う 中頚神経節は心臓や肺にいく 毛様体神経節は内眼筋 ( 毛様体筋 瞳孔括約筋 ) の副交感支配 なお瞳孔散大筋は交感神経支配. 腹腔 上腸間膜 下腸間膜 の各神経節の分布域は 同名の動脈の分布域とほぼ重なると考えると 分かりやすい ( さらにいえば これらの分布域は発生時の 前腸 中腸 後腸 に由来している ) 各動脈の分布を復習しておこう : 腹腔動脈 : 胃 肝 脾 膵 十二指腸前半 ( 前腸由来 ) に分布 上腸間膜動脈 : 十二指腸後半 ~ 横行結腸に ( 中腸由来 ) に分布 下腸間膜動脈 : 下行結腸 ~ 直腸上部 ( 後腸由来 ) に分布 7.b. と d. CN3( 動眼 ) の障害では 上斜筋 外側直筋以外の外眼筋と上眼瞼挙筋の麻痺 毛様体筋と瞳孔括約筋の麻痺が起こる 瞳孔散大が起こるのは 交感神経支配の瞳孔散大筋に対向できなくなるから 眼球の外転は CN6( 外転 ) が担う 涙腺は CN7( 顔面 ) 支配 8.?? CN6( 外転 ) の障害により 同側の眼球の 外転 ができなくなるのだが 選択肢に存在しない 可能性として考えられるのは 出題者が Ⅵ と Ⅳ を間違えたということ CN4( 滑車 ) の障害は 同側の眼 球の下方外側への回転ができなくなる 9.e. 内包を通る上位運動ニューロンの片側性の障害なので CN7( 顔面 ) 支配の表情筋については 反対側の顔面下部のみ運動麻痺がでる 運動性の脳神経核の支配パターンについて復習しておこう : 純運動性の脳神経核 反対側支配 ややこしい脳神経たち の運動性の脳神経核 原則として両側支配 ただし顔面下部のみ反対側支配 両側支配の場合 上位運動ニューロンの片側の障害では 機能低下のみで運動麻痺は起こらない 10.b. 聴覚系の経路が不安なら 4-3 を復習する 11.b. なぜか配点が 2 点あるが正解は 1 つだけだと思う 対光反射と角膜反射は大脳に入らない単純な反射 調節反射は近づいてくる物体にピントを合わせ続ける反射だから 1 次視覚野に入る 共感性対光反射の場合は後交連を通るが これは大脳ではあるけど大脳皮質ではない 12.d 視覚系の経路図を書くことができればあとは単純作業 13.b と c 52

53 共感性の対光反射は 中脳の視蓋前域と EW 核のレベルで左右が連絡していることにより起こる 4-4 で経路を確認しておこう 14.c CN12( 舌下 ) は舌筋を支配する純運動性の脳神経である 純運動性ということは反対側支配で また下位運動ニューロンなので 障害されたときは反対側の弛緩性麻痺と筋萎縮が出る つまり左舌下神経の障害 右の舌筋の萎縮 舌を突き出したときに右にかたよる よって b. は間違いなので 消去法で c. を選ぶ.c. は唐突に聞かれると うん? という感じだけど CN12 は延髄上部の側面から出ているから 確かに腹側のオリーブと背側の下小脳脚の間から出ていることになる 15.d. a. 主知覚核は主に橋に存在 b. 脊髄路核はかなり上下に伸びて脊髄まで達するが さすがに C5 まではいかない C1-C5 のレベルに脳神 経核を持つのは CN11( 副 ) c. 温痛覚は脊髄路核 e. 基本パターンのとおり 反対側 の視床 VPM に投射する 16.a. a. CN11( 副 ) の脊髄根 (C1-C5 の前角細胞 ) は 肩の挙上を担う僧帽筋と頭部回旋を担う胸鎖乳突筋を支 配する b. 眼を閉じるのは CN7( 顔面 ) の眼輪筋 上眼瞼挙筋は瞼 ( まぶた ) を挙上する c. 嚥下にかかわるのは CN9( 舌咽 ) と CN10( 迷走 ) d. CN7( 顔面 ) は舌前 2/3 の味覚を担当 e. CN9( 舌咽 ) は舌後ろ 1/3 の味覚を担当 4-5 で整理したように ややこしい脳神経たち の 4 つの分布域を大まかにとらえておこう 復習すると CN5 と CN7 どちらも顔面と鼻腔 口腔 舌前 2/3 CN9 は咽頭上部 舌後ろ 1/3 CN10 は咽頭下部と喉頭 17.d. ややこしい脳神経たち のうち CN5 の顔面感覚のみ一般体性求心性 (GSA) で あとはすべて臓性 visceral である 次のように整理しておこう : CN5 支配の咀嚼筋や CN7 支配の表情筋は 鰓弓由来で特殊臓性に分類される 残りの多くは 最も広義の消化管にかかわる構造 ( 嚥下にはたらく筋や消化腺など ) の支配に関連する 53

54 6 脳幹の構造 神経内科の臨床問題 神経系の障害は 神経細胞じしんの内発的な問題よりも 外傷や血管の閉塞など外部要因によって神経が損傷される場合が多い だから多くの場合は 神経系の複数の構造が同時に障害されて 複合的な症状がでる もちろんかなり限定的な障害で この神経が障害されたから こういう症状が出た のような 1 対 1 対応が明確に出ることもある だが 症状として A B C D E が出ているから X Y Z の障害が考えられる というように 障害された構造と症状が多対多対応の場合は パズル的に障害部位を推定する必要がある 特定の神経細胞群のみが選択的に障害される有名な疾患としては ALS( 筋萎縮性側索硬化症 ) やパーキンソン病がある 前者は運動ニューロンのみ 後者は黒質のドーパミン分泌細胞だけ障害されるのだが どうしてそうなるかはまだはっきりと分かっておらず 治療も困難である 脳幹は 明確に機能が分かっている構造が密に集まっている だから脳幹の障害は こういう臨床にかんするパ ズル的な推定の練習問題としてうってつけで 過去問でも頻繁に問われている そこでこの章では 脳幹の断面 の問題と 臨床問題をセットで解いていこうと思う 6-1 延髄断 のグループ分け教科書には延髄や橋や中脳の断面にさまざまな構造物が書き込まれている図が載っている 当初これをみたとき こんなにいろいろあって覚えられない! という感じを ふつうは持つとおもう だが各構造物はてきとうに並んでいるわけではなく 多くの場合 発生上の都合や配置そのものの合理性が 各構造物の配置を規定している ここではまず 延髄断面を例として そこに現れる配置のルールを探ってみよう 基本パターンとしての脊髄 下図は 1-2 の続きで 脊髄と脳幹の発生途中を示す 将来の脊髄では 背側が感覚性ニューロンとなって神経堤由来の後根神経節のシナプスを受け 腹側は運動性ニューロンとなり末梢に軸索を伸ばす また腹側 - 背側の軸の中央に境界溝があり 境界溝を基準として内側には臓性 外側には体性のニューロンが分布する 結局 腹側から体性遠心 ( ふつうの運動神経 ) 臓性遠心 ( 副交感神経 ) 臓性求心 ( 内臓モニタ ) 体性求心 ( ふつうの感覚神経 ) の順に配置することになる # 脊髄と脳幹の発 ( 再掲 ) なぜこの配置になるか? 詳しくは発生学の内容になるが 発生途中 ( 下図 ) と発生後の脊髄 骨格筋 表皮 消化管の配置を考えれば だいたいそんなふうになりそう と予想できると思う (?) 54

55 延髄の構造は 脊髄の基本パターンの延長線上にある 上の右図に示すように脳幹では 脳室が肥大しつつ背側に押しやられることで 脊髄を < 背側で切って左右に開いた様な形 >となり 内側 ( 正中より ) が運動性 外側が感覚性という配置に変わる また 一般 核の間に 頭頚部に特有の 特殊 核があらわれる 表 表 感覚器 神経堤 末梢神経神経管 中枢神経 体節 格筋など 内胚葉 消化管など 以上の発生上の基本形を念頭におきながら 延髄断面 ( 下図 ) の構造を順に説明していく 第四脳室 下 脳脚 1 脳神経核の並び 第四脳室 jp/taikei/639/yougo/sa/sokuban.htmlを改変 4そのまま上 下 2 脳神経の 下 脳脚 3 帯交叉 疑核 内側 帯 疑核 内側 帯 3 錐体交叉 上オリーブ核 上オリーブ核 # 延髄上部に脳神経の経路を し また延髄下部の 帯交叉と錐体交叉を投影 ( 解剖学講義 2 版 P685 を改変 ) 錐体 # 延髄上部に脳神経の経路を し また延髄下部の 帯交叉と錐体交叉を投影 ( 解剖学講義 2 版 P685 を改変 ) 錐体 まず 1 脳神経の並びについて 延髄に脳神経核を持つ脳神経には CN8( 内耳 ) CN9( 舌咽 ) CN10( 迷走 ) CN12( 舌下 ) などがあった これらの脳神経核は背側にある第四脳室に沿って並んでおり 正中から外側へ向 かって 舌下神経核 ( 体性運動 ) 迷走神経背側運動核 ( 臓性運動 ) 前庭神経核 ( 体性感覚 ) の順に並ぶ ただし 特殊臓性 の次の神経核は 鰓弓の発達にともない核じたいが腹外側 ( 斜め前 ) に移動し ている 孤束核 ( 特殊臓性感覚 ) 疑核 ( 特殊臓性運動 ) また 2 脳神経の走行は 下小脳脚や錐体を避けるようにして腹外側 ( 斜め前 ) に走って 延髄側方から出る 次に上行 / 下行する神経路について 延髄では背側に第四脳室と脳神経核があり そこから斜め外側に線維を伸ばす そのとき 3 脊髄の後索を走る後索内側毛帯路や側索を走る錐体路は そのまま上行しては脳神経の核や線維とぶつかってしまう そこでこれらは 邪魔にならないよう 延髄の下部で交叉するときに内側 腹側よりに移動する また4 前索や側索の腹側よりの線維はそのまま上行し また三叉神経の温痛覚を伝える線維は 橋で脳幹に入ったあと下行して三叉神経脊髄路核をつくる これらは背側 - 腹側の軸では中央 外側よりに位置する 最後に延髄上部に特有の構造について 55

56 延髄では小脳に関連する構造 ( 下小脳脚 オリーブ核 ) があらわれる 小脳は背側の左右にあり 下小脳脚はそれに連絡する位置におかれる オリーブ核は脊髄や中脳赤核からの運動情報 ( 原則的に腹側よりを走る ) の投射を核外側部で受けて 核内側部から反対側の小脳へ投射するから このような配置 形状になる 原始的な構造であり他の部分のいわば土台となる網様体は 脳幹の左半分 右半分のそれぞれの中央付近に広がる 内側縦束は 外眼筋を支配する脳神経核 (CN3,4,6) を連絡する 外眼筋 = 体性運動だから 内側 ( 正中より ) にあるのは原則どおり まとめると 延髄断面の諸構造は次の 4つに分類することができる : 1 脳神経核と脳神経 : 背側に核を持ち 腹外側に線維を伸ばす 2 錐体路と内側毛帯 : 全身の運動と感覚の幹線 腹側 内側に追いやられる 3 そのまま上行 下行する線維 : 温痛覚などのマイナー (?) 感覚路 外側中央付近 4 延髄特有の構造 : 小脳関連 網様体 内側縦束 以上のように 延髄断面にあらわれた構造は いくつかのグループに分けて整理することができ それらの配置 には発生的 構造的な理由がある この点を理解しておけば 丸暗記せずともだいたいの位置関係を推論で当て られると思う 問題と解答解説 2008 年度問 1 1. 延髄上部を水平断した図を示す. 1 A~E で示す構造の名称を漢字で書き入れよ.( 誤字は減点する.)(5 点 ) 2 A,C の構造が障害された場合に出現すると思われる症状について, 左右どちら側に起こるかも含めて ( それぞれ ) 説明せよ.(5 点 2) カッコ内の太字は著者が追記 < 解答 > 1A. 内側毛帯 medial lemniscus B. 第四脳室 the fourth ventricle C. 下小脳脚 inferior cerebellar peduncle D. オリーブ核 olivary nucleus E. 錐体 pyramis 2A が障害されたとき 頭部を除く左半身の精細な触圧覚が麻痺する C が障害されたとき 左半身に小脳症状 ( 運動失調 筋緊張の低下 平衡障害など ) がでる A の内側毛帯は 頭頚部を除く全身の精細触覚および意識できる固有感覚の伝導路 ( 後索内側毛帯路 ) の一部 延髄下部 ( 内側毛帯の少し下 ) で交叉が起こるから 障害されると反対側の半身の感覚麻痺が出る C の下小脳脚は 脊髄 前庭神経核 網様体などから小脳への入力線維の経路であり この部位が障害されると 56

57 同側に小脳性の運動失調 筋緊張の低下 平衡障害などがみられる 小脳がかかわる経路は非交叉性または 2 回 交叉するため 原則としてこれらの症状は同側にでる と覚えておこう 2007 年度問 1 1. 中脳を上丘の高さで水平断した図を示す 1 3 ヶ所以上の名称を漢字で書き入れよ.( 名称ごとに 1 点, 最高 7 点まで加点 ; ただし, 名称の誤り, 誤字や部位の著しい誤りは -1 点とする.) おそらく 中脳断面の輪郭のみが問題用紙に示され そこに構造と名称を書き込む方式だったと思われる 2 1 で名称を書いた部位の中から 3 つを選び, それらが障害された場合に出現すると思 われる症状, 病気について簡単に述べよ.(3 点 3) 下に中脳断面図を示すので 空欄を埋めてみよう < 解答 > 右図の構造名とその主要な機能を以下に示す 1. 上丘 superior colliculus: 視覚反射を中継路する EW 核が存在する 2. EW 核 ( 動眼神経副核 ):CN3( 動眼 ) がかかわる 対光反射や調節反射の中継路 3. 脊髄視床路 : 頭部を除く全身の粗大触覚 温痛覚の伝導路 交叉レベルは脊髄 4. 動眼神経核 ( 主核 ):4 つの外眼筋と上眼瞼挙筋の運動支配 毛様体筋や瞳孔括約筋の副交感支配 5. 内側毛帯 medial lemniscus: 後索内側毛帯路の一部で 頭部を除く全身の精細感覚 意識できる固有感覚を伝える 後索内側毛帯路の交叉レベルは延髄 6. 内側縦束 medial longitudinal fasciculus;mlf: 眼球運動にかかわる脳神経核 (CN3 4 6) を連絡し 協調運動にはたらく 57

58 7. 皮質橋路 : 大脳皮質 橋 中小脳脚 小脳という皮質橋小脳路の一部 現在の運動情報をリアルタイムに小脳にインプットし 運動調節に活用する 8. 錐体路 pyramidal tract: 全身の骨格筋の運動の情報を伝える 一般体性運動性の伝導路. 交叉レベルは延髄錐体 9. 黒質 substantia nigra: ドーパミン作動性の神経核をもち 尾状核と皮殻に抑制性の投射をしている パーキンソン病における変性部位 10. 赤核 red nucleus: 小脳からの入力を大脳皮質運動野や脊髄に投射する 11. 下丘 inferior colliculus: 聴覚の伝導路の中継点 障害については 同側か反対側かが分かりやすく 明瞭な症状が出るものを選んでかけばいい 3 脊髄視床路が障害されると 反対側の頭部を除く半身の粗大触覚 温痛覚の麻痺がでる 5 内側毛帯が障害されると 反対側の頭部を除く半身の精細感覚 意識できる固有感覚の麻痺がでる 8 錐体路が障害されると 反対側の頭部を含む全身の痙性麻痺がでる 6-1 で解説した延髄レベルの構造は 中脳レベルではどうなっているか? ここでも 基本パターンがかなり適用できる 全体として また中脳水道の形態からみて 脊髄の基本パターンに近い 背側には感覚性の神経核が新登場する : 上丘 ( 視覚反射中枢 ) と下丘 ( 聴覚の中継核 ) 腹側には運動性の神経核が新登場する : 赤核 ( 小脳とかかわりが深い ) CN3( 動眼 ) CN4( 滑車 ) に関連する運動性の脳神経核は 運動性だから正中より 脳室の腹側にある 上丘レベルに CN3 の主核と副核 (EW 核 ) があり 上丘と関係が深い EW 核は上丘の近くに配置する CN4 の滑車神経核は下丘レベルで ここまでは原則どおり 滑車神経は 交叉しつつ 背側から出る という 唯一の例外的な脳神経である 錐体路は大脳の左右の半球に 後索内側毛帯路は左右の視床に入る関係で 正中から外側よりに移動している 大脳脚には 錐体路と同じく運動野から下行する皮質橋小脳路も入る 2007 年度の問 3 より 1) 次の症例について, 神経学的所見を説明した問題文の空欄に当てはまる語句を記号で選びなさい.(6 点 ) 症例 25 歳男性, トラクターの荷台より転落して, 右手が荷台にひっかかったまま, ひきずられた. 外来受診したときの神経学的所見を示す. 意識は清明. 両側下腿の外傷, 出血. 右側の尺側手根屈筋, 深指屈筋, 掌側骨間筋, 背側骨間筋, 母指球筋, 小指球筋, の麻痺. 右上腕, 前腕, 手の内側領域の知覚麻痺. 右上腕二頭筋腱反射は保たれているが, 上腕三頭筋の腱反射は消失. 右の縮瞳, 右の眼瞼下垂, 右の眼球陥凹, 右の頬の温感, 紅潮, 乾燥. 患者は上肢を強く伸展, 牽引されたため, 腕神経叢の下神経幹が損傷されて運動及び知覚麻痺が起きたと思われる. また第一胸神経が強く牽引されたため,( 1 ) 神経節につながる ( 2 ) 交通枝が損傷を受け, 右側の頭頚部を支配する ( 3 ) 神経節前線維が損傷を受けたと思われる. その結果,( 4 ) 筋の麻痺による眼瞼下垂,( 5 ) 筋の麻痺による縮瞳,Mueller 筋の麻痺による眼球陥凹, 動脈収縮神経の障害による右の頬 58

59 の紅潮と温感,( 6 ) 腺の分泌障害による頬の皮膚の乾燥が見られたものと考えられる. a. 上頚 b. 中頚 c. 下頚 d. 白 e. 灰白 f. 交感 g. 副交感 h. 上眼瞼挙 i. 目輪 j. 上直筋 k. 瞳孔括約筋 l. 瞳孔散大筋 m. 毛様体筋 n. 脂 o. 汗 p. 唾液 < 解答 > 1f. 2d. 3a. 4h. 5l. 6o. 外傷に加えて 事故のときに上肢を強く引っ張られたことで 腕神経叢 ( 上肢に向かう運動神経と感覚神経の集まり ) の障害 頭部に向かう交感神経の障害が起こった というのがストーリーの要旨 交感神経の障害に関連するところが出題されている 問題文の前後から交感神経が問題になっていると判断し 交感神経節と解答する 白交通枝は有髄なので白く 灰白交通枝は無髄なので灰色なのだった すると灰白交通枝に入るのは 各レベルの交感神経節でシナプスし 全身の血管や皮膚に向かう神経のみ よって白交通枝を選ぶ 頭頚部を支配する交感神経はすべて上頚神経節から出ている 中頚神経節は心臓や肺にいく 眼瞼下垂 上眼瞼挙筋の麻痺 縮瞳 瞳孔散大筋の麻痺 交感神経優位では汗腺の分泌が 副交感神経優位では涙腺 鼻腺 唾液腺の分泌が優位になる 運動すると汗をかき ほっとすると涙 ( や鼻水?) がでてお腹がすく と考えよう 2006 年度問 延髄の外側が障害されると多彩な症状が出る. 以下に挙げる症状は延髄の何が障害されたために生じたと考えられるか.(2 点 5) 1 同側の運動失調 2 めまい 3 同側顔面の温痛覚脱失 4 反対側身体の温痛覚脱失 5 声帯麻痺 歳男性.1 舌の左半分の麻痺と萎縮,2 右上下肢の運動麻痺,3 顔面を除く右半身の精細触覚と意識性固有感覚の異常が認められた. この症状から見て, 障害部位は中枢神経系のどの部位にあると推定するのが妥当か.123 の各症状の原因となる患部 (= 障害された神経核 伝導路など ) の名称を具体的に挙げて, 推論の根拠を説明せよ.(10 点 ) < 解答 > 下小脳脚 inf. cerebellar peduncle 2 前庭神経核 3 三叉神経脊髄路 4 脊髄視床路 5 迷走神経背側核 は舌筋の下位運動ニューロン性の障害なので 左の舌下神経核または舌下神経の麻痺が疑われる 2は錐体路 ( 皮質脊髄路 ) の障害で 延髄以上の左錐体路 または脊髄以下の右錐体路の障害が疑われる 3は後索内側毛帯路の障害で 延髄下部以下の右後索内側毛帯路 または延髄上部以上の左後索内側毛帯路 ( 左内側毛帯 ) が疑われる ただし三叉神経主知覚核路は無事なので 橋より上が障害されている可能性は高くない 1より舌下神経核 舌下神経は延髄上部にある 延髄上部だと錐体路と後索内側毛帯路は交叉より上なので 2 3より左錐体路 左内側毛帯の障害の可能性が高い これらはすべて 延髄の左内側 ( 正中より ) にある構造である よって 延髄上部 左内側部の障害の可能性が高い 59

60 結論からいうと 6-1 は 延髄外側症候群 ( ワレンベルグ症候群 ) 6-2 は 延髄内側症候群 という対になった症状である いずれも特定の動脈の閉塞により 延髄の特定部位が障害される そのことによって多数の神経路や神経核がダメージを受けて 複合的な症状が出る 重要なポイントは 内側 と 外側 の両方をあわせると 延髄の片側がほとんど全滅してしまう (!) という点にある だからこれらの問題を ( ゲンミツに ) 解くには この断面にあらわれる主要な神経路や神経核と 特に神経路についてはその上下のレベルの走行を把握しなければならない という意味で 神経解剖学の総決算みたいな問題である 延髄断面に 各症候群の予想される障害部位を書き加えた図を下に示そう 障害とその症状をひとつひとつ確認していくのは ( 大事だけど ) 面倒なので 最後に提示する一覧表をみて各自でやってほしい だがおおまかに捉えるには 6-1 で紹介した分類が威力を発揮する 12 脳神経と脳神経核について 舌下神経以外の脳神経は 外側症候群 で障害される ( 核が無事でも線維がアウトなので ) 舌下神経は他の脳神経とかなり異なる経路をとって オリーブ核と錐体のあたりで脳幹を出るので これだけ 内側症候群 で障害される 3 内側毛帯と錐体路は 腹内側にあるから 内側症候群 で障害される 4そのまま上行 下行する経路は 外側中央にあるから 外側症候群 で障害される 延髄特有の構造のうち 下小脳脚や網様体は 外側症候群 で障害される 延髄外側症候群 ( ワレンベルグ症候群 ) の障害部位とその症状 障害部位 神経支配の 症状 特記事項 パターン 三叉神経脊髄路 同側 頭部の温痛覚麻痺 精細触覚は正常 ( 感覚解離 ) 三叉神経脊髄路 同側 角膜反射の低下 角膜反射は 三叉神経脊髄路核と顔面神経核の連絡によりおこる 網様体 同側 ホルネル症候群 ( 眼瞼下垂 縮瞳 眼窩陥凹 ) 交感神経の障害 網様体脊髄路から脊髄側角の交感神経節前ニューロンに投射している 前庭神経核 同側 めまい 眼振 嘔吐 疑核 同側 発声困難 ( 嗄声 ) と嚥下困難 CN9( 舌咽 ) CN10( 迷走 ) 下小脳脚 同側 小脳性運動失調 筋緊張低下 60

61 脊髄視床路反対側頭部を除く半身の温痛覚麻痺精細触覚は正常 ( 感覚解離 ) 孤束核同側舌半分の味覚障害 延髄内側症候群の障害部位とその症状 障害部位 神経支配の 症状 特記事項 パターン 舌下神経 同側 舌半分の運動麻痺と筋萎縮 錐体 反対側 頭部を除く半身の運動麻痺 錐体路 ( 皮質脊髄路 ) の障害 内側毛帯 反対側 頭部を除く半身の精細触覚 意識でき後索内側毛帯路の障害 る固有感覚の麻痺 61

62 7 脳 この章では小脳の問題を解いていく 小脳の問題は毎年出題され 問われる内容も重複する よく問われる内容 について 最初に整理しておこう 7-1 脳の 出 に注 した整理小脳の構造と機能 小脳は橋の背側にあり 上 中 下の 3 つの小脳脚 CEREBELLAR PEDUNCLE という神経束でそれぞれ中脳 橋 延髄と接続する 小脳は大脳と同様に 外側に皮質 ( 灰白質 ) 内側に髄質 ( 白質 ) という構造を持ち 髄質内部にある灰白質塊 ( 細胞体の集まり ) を小脳核 CEREBELLAR NUCLEI という 小脳は みずから運動を起動しないし 意識される感覚を生み出すこともなく 運動機能の支援機構としてはたらく その処理は 1 運動にかかわる情報が入力され 2 小脳内でそれを処理して 3 運動制御情報を出力として返す という手順で行われ 制御情報は最終的に遠心性 ( 運動性 ) の神経核に入る 小脳にかかわる経路の基本パターン 運動にかかわる感覚情報は ( 中 下 ) 小脳脚から小脳の皮質に入る 皮質の唯一の出力細胞であるプルキンエ細胞は 処理された情報を小脳核へと伝える 小脳核の神経細胞の軸索は 上小脳脚を通って小脳を出て いくつかの経路を経て運動神経に情報を伝える 次の経路を基本パターンと考えておこう : ( 運動関連の感覚情報 ) ( 中 下 ) 小脳脚 小脳皮質 プルキンエ細胞 小脳核 上小脳脚 ( 運動神経 ) 小脳の分類 さて 小脳をいくつかの部分に大きく分ける 二つの分類方法がある 第一の分類では 小脳への入力と出力およびそれが担う機能に着目して 小脳を次の 3つに分ける 1 前庭小脳 vestibulocerebellum: 前庭神経系からの入力を受けて 身体平衡や眼球運動の制御を行う 2 脊髄小脳 spinocerebellum: 全身の固有感覚の入力を受けて 四肢の緊張や単純な運動制御を行う 3 橋小脳 pontocerebellum: 大脳小脳ともいう 大脳皮質運動野からの入力を 橋を経て受けて 複雑な随意運動の制御を行う 第二に系統発生的な分類方法がある はじめ小脳は 前庭神経系の前庭神経核に連なる 平衡覚の処理を行う構造として生じる 魚類の小脳はこの段階で これを 1 原小脳 archicerebellum と呼ぶ 両生類 爬虫類 鳥類ではさらに 運動器からの固有感覚を脊髄から受けて 脊髄へ出力して運動器の調節を行う 2 古小脳 paleocerebellum という部分が加わる 哺乳類ではさらに 大脳皮質運動野から入力を受けて 大脳皮質運動野から入力を受けて大脳皮質運動野に出力する 3 新小脳 neocerebellum という部分が発達する ヒト小脳では 新小脳が著しく発達している archi- と paleo- の訳語は文献により異なるが 本資料で紹介した訳がいいとおもう arhe- は 起源 や 原型 といった意味を持ち ( 例 :archeology 考古学 alchemy 錬金術 ) いっぽう paleo- は学問的 歴史学的な区分として 古い 古代の という意味 ( 例 :Paleozoic Era 古生代 paleobiology 古生物学 ) を持つからだ この訳語は 大脳皮質の区分の際にも同様に用いる ( 原皮質 archicortex 古皮質 paleocortex 新皮質 neocortex) 62

63 この第一の方法による分類と 第二の方法による分類は ほぼ重なる これを小脳の解剖学的な部位名に対応さ せると 下表のようになる : 主な機能 入出力による分類 系統発生的な分類 解剖学的な部位名 身体平衡と眼球運動の調節 前庭小脳 原小脳 片葉小節葉 四肢緊張と単純な運動の調節 脊髄小脳 古小脳 小脳虫部 虫部傍部 複雑な随意運動の調節 橋小脳 新小脳 小脳半球外側部 また右図 (# 小脳と小脳核の連絡 ) をみて 前庭小脳 脊髄小脳 橋小脳 が 解剖学的な小脳の区分ではど こに当たるかを確認しておこう. 以降では 入出力で分類 したこの名称を使っていくことにする 今度は これらの 3つの小脳に対する入出力をみていこう 右上図では皮質プルキンエ細胞から小脳核への投射を また右下図では主要な入力路を示す 入出力の経路については 前庭小脳と橋小脳は比較的簡単で 脊髄小脳は少し面倒なところがある 前庭小脳系 : 前庭小脳は 前庭神経系の前庭神経核から平衡覚の入力を受ける 小脳内皮質のプルキンエ細胞から小脳核を経ずに前庭神経核に出力して 脊髄前角の運動ニューロンや外眼筋支配の脳神経 (CN3 4 6) へ制御情報をおくる 脊髄小脳系 : 全身の意識されない固有感覚は 脊髄小脳路などを通り 脊髄小脳の皮質に送られる. ここから経路が分かれて 虫部のプルキンエ細胞 質橋 脳路はは室頂核に出力し そこからは脳幹網様体と前庭中 脳脚へ神経核にいたる 虫部傍部のプルキンエ細胞は栓状核と球状核に出力し そこから中脳赤核 視床 VL を経て皮質運動路にいたる 橋小脳系 : 大脳皮質運動野のリアルタイムの運動情報は 皮質橋小脳路を通って 橋小脳の皮質に送られる 橋小脳皮質のプルキンエ細胞から歯状橋核核に出力し 中脳赤核や視床 VL に投射する 後者前庭神経核はその後再び皮質運動野に戻る 延髄以上の 3 つの経路を下ページの図にまとめておく 交叉オリーブ核の様子は複雑なので細かく覚える必要はないと思う 小脳と末端の運動器の間は原則として交叉なしか 2 回交叉で 結局小脳の障害は同側に運動障害が出る という点だけおさえておけばいい # 脳への 路まとめ 脊髄 延髄から下 脳脚へ脊髄胸髄核 ( 改変 ) 小脳の障害 当然ながら 小脳の障害により出る症状は 小脳の正常機能の特徴と裏表の関係にある よって症状から逆に 小脳ってこんな機能なんだなということをつかむようにしたい まず小脳障害の一般的な特徴としては : 感覚麻痺や運動麻痺はなく 運動の機能にかかわる障害が出る 63

64 代償性が高い ( 障害されても 小脳の他の部分がかなりカバーするため 一定の回復がみられる ) 3 橋 脳系 2 脊髄 脳系 1 前庭 脳系 質運動野脊髄 脳路前庭神経系 橋 前庭神経核 交叉 中 脳脚 下 脳脚 下 脳脚 処理 脳半球 外側部 部 傍部 部 葉 節葉 出 状核 上 脳脚上 脳脚上 脳脚下 脳脚球状核室頂核栓状核 交叉視床 VL 交叉中脳 核 交叉視床 VL 交叉中脳 核 網様体 前庭神経核 交叉 交叉 質運動野 脊髄前 質運動野 脊髄前 脊髄前 脊髄前 CN3, 4, 6 交叉 交叉 脊髄前 # 出 からみた 脳の分類まとめ 脊髄前 前庭 脳 原 脳 ( 平衡調節 眼球調節 ) 脊髄 脳 古 脳 ( 単純な運動の制御 ) 橋 脳 新 脳 ( 複雑な随意運動の制御 ) 障害と症状は原則として同側に出る また 上記の 3つの小脳のうちのどれが障害されたかで 症状が変わってくる 前庭小脳の障害は 眼振 ( 意図に反して 眼球がリズミカルに動いてしまう ) がおき またまっすぐ立つことができなくなる 脊髄小脳の障害は 体幹と四肢の運動と平衡の障害が出る 歩行ができない 転びやすいなど 橋小脳の障害は ひとことでいうと 複数の筋を使って随意的に行う複雑な動作 ができなくなる たとえば コーヒーカップをとる 鼻先に指を持ってくる といった一見簡単そうにみえる動作の背景には 精妙な小脳による制御がかかわる ということが具体的に想像できるだろうか? 小脳は 身体の姿勢や固有感覚 腕を伸ばす運動感覚をモニターしつつ 眼球や腕や指など運動にかかわる多数の筋を協調した動員を可能にし また不必要な不随意運動を抑制する などなど こうしてはじめて コーヒーカップをとる という私たちのマクロな認識では単純と思われる動作が可能になっているのである こうした機能の破綻は臨床症状として整理されている 多数の筋の協調制御が破綻すると共同運動失調 ( ぎこちない動き ) になり また不要な不随運動を抑えられなくなることから企図振戦 ( 細かい動作のときに手が震える ) が起こる また構音障害 ( 話すことの障害 ) は 話すという動作に小脳が深くかかわることをうかがわせる この障害では話すとき単語や音節がバラバラになって こんにちは きょうはとてもさむいですね のようなぎこちない話し方になる 64

65 2008 年度問 4 小脳核にはどのようなものがあるか. 各小脳核の入出力線維の特徴を小脳の機能と関連させて説明せよ.(10 点 ) < 解答 > 小脳核には 正中から外側に向かって 室頂核 fastigialnucleus 中位核 ( 栓状核 emboliform nucleus と球状 核 globosenucleus) 歯状核 dentate nucleus がある 正中側の核ほど 系統発生的に古い構造である 小脳核 には 小脳皮質の唯一の出力細胞であるプルキンエ細胞がシナプスする それを受けた小脳核の神経細胞の軸索 は 上小脳脚から小脳の外にでて 脳幹の神経核や視床にシナプスし 運動の制御にかかわる 4つの小脳核は それぞれ異なる機能と入出力を持っており 前庭神経系からの平衡覚の経路も含めて これを下記にまとめる 入力する感覚 皮質の部位 小脳核 出力先 機能 前庭神経系からの 片葉小節葉 橋の前庭神経核 眼球調節を含む平衡制御 平衡覚 脊髄小脳路からの 小脳虫部 室頂核 橋の前庭神経核 運動制御 ( 四肢の筋緊張の調節 ) 固有感覚 脳幹の網様体 小脳虫部傍部 球状核 中脳の赤核 運動制御 ( 四肢の屈筋の緊張 ) 栓状核 皮質橋核小脳路からの入力 小脳半球外側部 歯状核 視床 VL 核 複雑な随意運動の制御 2007 年度問 4 小脳について, 次の問に答えよ. (A) 小脳に入力する小脳路について, 機能的意義も含めて説明しなさい.(8 点 ) (B) 小脳に関わる以下の言葉を簡単に説明しなさい.(2 点 3) 1 ) プルキンエ細胞 2 ) 小脳核 3 ) 片葉小節葉 < 解答 > (A) 平衡覚の情報は 前庭神経核から下小脳脚を通って前庭小脳へ伝えられる 平衡制御 ( 眼球運動の調節も 含む ) にはたらく 全身の固有感覚は 脊髄小脳路から下小脳脚を通って脊髄小脳に伝えられる 四肢の筋緊張の調節 運動 制御にはたらく 大脳皮質運動野のリアルタイムの運動情報は 皮質橋小脳路 ~ 中小脳脚を通って 橋小脳に伝えられる 複雑な随意運動の制御にはたらく 延髄のオリーブ核は 脊髄 中脳 大脳皮質からの線維を中継して 小脳に投射する ( オリーブ小脳路 ) (B) 1) 小脳皮質に存在する細胞で 皮質に入る情報や皮質で処理された情報を統合して出力する 皮質唯一の出力細胞 皮質表面を皮質に平行に走る平行線維や オリーブ核からきた登上線維からの興奮性の入力を受けて 小脳核へと投射する 2) 小脳髄質の内部に存在する神経核で 正中から外側に向けて室頂核 球状核 栓状核 歯状核の 4 種類からなる プルキンエ細胞からの入力を受けて 上小脳脚を通って小脳の外に出て 脳幹の赤核や網様体などに投射する 65

66 3) 小脳下部の付け根のところにある 左右の片葉と中央の小節からなる小脳葉で 系統発生的は最も古い原小脳に含まれる その経路は 前庭神経核から平衡覚の情報が皮質に入力され プルキンエ細胞は小脳核に入らず前庭神経核に投射する 前庭神経核からは 脊髄前角の運動ニューロンや外眼筋支配の脳神経核へと投射しており 四肢の筋と外眼筋を制御して平衡の維持にはたらく (A) は 7-1 の一部を切り取ればいい 延髄のオリーブ核については説明していなかったが 解答の通り 各所 ( 大脳皮質 中脳 脊髄 ) からの線維を受けて 反対側の小脳に投射する中継核としてはたらく というのが第一 小脳皮質へ入力する線維は 苔状線維 と 登上線維 があるが 後者は出力細胞であるプルキンエ細胞に直接シナプスして プルキンエ細胞を強く興奮させる経路で 主にこのオリーブ核からの線維で構成されている 右図にオリーブ核を中心とする経路を示す 注目すべきはオリーブ核 小脳 赤核 オリーブ核のように オリーブ核と赤核を含む経路がループになっていることである 小脳の出力と入力を短絡するこのループが 小脳の出力に何らかの調節を行っていることは想像に難くない このループは Guillain-Mollaret triangle と呼び その障害では口蓋のミオクローヌス myoclonus( 発作的な不随運動で 急に倒れ込む 突然物を投げるような動作をするなど ) が出る これはややマイナーな知識で 神経内科学でもしかしたら出てくるかもしれない 神大医学部第一解剖講義ノート 神経解剖学篇 P87 より (B) の 1) について 小脳を構成する神経細胞は 5 種類しかなく 細胞体や軸索の配置もかなりの規則性がみられる そのため 小脳は大脳と比べ 形態学的 電気生理学的な研究が著しく進んでおり 神経回路レベルでどんなふうにふるまうかについても かなり理解が進んでいる とはいえ神経解剖学の範囲では 皮質にある 入力した情報を統合する 唯一の出力ニューロン というくらいの点をおさえておく 2006 年度問 4 (A) 脊髄小脳路について模式図を用いて説明しなさい.(4 点 ) (B) 小脳に関る以下の言葉を説明しなさい.(3 点 2) 1) 原小脳 2) プルキンエ細胞 < 解答 > (A)3-3. の45 を参照 (B) 1) 小脳のうち 系統発生的に最も古い部分で 解剖学的な構造としては片葉小節葉に当たる 前庭神経系とのかかわりが深く 前庭神経核からの入力を受けて 処理された情報は前庭神経核に出力される その後は 外眼筋を支配する脳神経核や脊髄の運動ニューロンに投射して 眼球運動や身体の平衡制御にはたらく 2) はすでに解説済み 66

67 8 間脳と 脳 この章では間脳と大脳をまとめて扱う 解説は問題ごとに行うが 最初に登場する主要な構造を概観しておこう 間脳 diencephalon, midbrain は中脳の上前方に連なる部分で 視床と視床下部からなる 視床 THALAMUS は 脳の各部と大脳皮質を連絡する 多数の中継核からなる 視床下部 HYPOTHALAMUS は 自律神経系 内分泌系 ホメオスタシス調節 ( 体温 PH など ) の最高中枢である やはり多数の核を持ち 周囲の大脳 視床 脳幹と線維連絡を持つ また下垂体を支配する 大脳 cerebrum は 外側に細胞体を含む灰白質 ( 皮質 ) 内側に線維中心の白質 ( 髄質 ) という基本構造を持つ 脳底部や間脳周辺では 大脳基底核 嗅脳系や大脳辺縁系などの特殊な構造がみられる 大脳基底核 CEREBRAL BASAL NUCLEI は視床の周囲の白質の間に埋まった灰白質で 大脳皮質運動野と協調的にはたらいて運動調節を担っている 嗅脳系 OLFACTORY SYSTEM と大脳辺縁系 LIMBIC SYSTEM は系統発生的に古い構造で 嗅覚や本能的な情動を担っている 以上の構造は互いに隣接して相互に線維連絡を持っている 右図の前頭断面と立体図では 主要な構造をほとんど含んでいる ( 間脳は青 大脳基底核は肌色 辺縁系は緑で示されている ) この章ではこれらの位置関係を把握することが極めて重要になる 立体図をどう切断したら前頭断図になるのか また水平断すると # 間脳 脳基底核 脳辺縁系の位置関係どんな断面になるかを考えてみよう 年度問 5 次の構造を簡単な図に描いて示し, 機能的意義について述べよ.(8 点 2) 1 ) 大脳辺縁系 2 ) 線条体 1 ) 2 ) とも 解説をもって解答にかえる ( この章では 以下も同様にする ) 大脳辺縁系 limbic system は 大脳半球の内側面に 間脳を取り囲むように存在する 系統発生的に古い皮質 およびいくつかの神経核からなる領域であり 情動や本能行動に深くかかわるとされる 大脳を構成する皮質について 大脳皮質は系統発生的に 3 つの種類に分けることができる 新皮質 neocortex は 最も新しく発達した皮質で 全体の 90% を占める より古い古皮質 paleocortex や最も古い原皮質 archcortex は ヒトでは脳底のごく一部に残っているにすぎない 大脳辺縁系と嗅脳系 (4-3 で述べた ) は 主に古い皮質 ( 古皮質と原皮質 ) からなる 67

68 組織学的には 新皮質は原則として 6 層構造を示すのに対し 古皮質や原皮質は 2~3 層の単純な構造を持 つ 哺乳類の中でもウサギなどは 新皮質があまり発達せず古い皮質が脳の多くの部分を占めている 帯状回中隔 側坐核 扁桃体 海 海 傍回 脳 乳頭体 # 脳の正中 状断で辺縁系の 部をみる 神経科学コミュニケーション障害理解のために 3 版 P319を改変 辺縁系の構造 上の左図では 脳の正中矢状断にみら brain03.index.html を改変 れる辺縁系の構造に色を付けて示してある ここでは 大脳の内側で 脳梁の外側部をぐるりと取り囲むループ状の脳回を見定めておこう このループには各部で名称があり 順に梁下野 subcallosal area( 脳梁の下にある皮質 ) 帯状回 cingulate gyrus 海馬傍回 parahippocampal gyrus 鉤 uncus( こう かぎづめの形の皮質 ) と呼ばれる このループの内側面にある灰白質層 ( 海馬傍回の上端部のギザギザ状の部分は歯状回 dentate gyrus と呼ばれる ) をもう一つのループと考える場合もある 上の右図は 辺縁系の構造を立体的に示した模式図である この図では 先のループの内側にあって視床をぐるりと取り囲む もう一つのループに注目しよう つまり 乳頭体 mamillary body 脳弓 fornix 海馬 hippocampus である 扁桃体は両方のループの下部末端にあるが これらのループとは区別される構造である 最後に 2つのループの確認を兼ねてパペッツの情動回路をみておこう これは海馬にはじまり 脳弓 乳頭体 視床前核 中核 帯状回 海馬傍回を経て ふたたび海馬へと戻る経路であり 情動を高めるといわれる 試験では 正中矢状断の模式図中に脳弓 ~ 乳頭体を書いて パーペツの情動回路の構成部品をすべて示せば 解答として十分だとおもう パペッツの情動回路は アメリカの神経解剖学者 Papez が 動物実験や臨床データをもとに 1937 年 (!) に発表した 情動にかかわる神経回路モデルの一部である このモデルでは (1) 私たちが情動を感じる中枢は視床であること (2) 上記の閉回路が持続的に興奮することで情動が生まれる などと考えられた 70 年以上も前のモデルが現在の研究水準で意味を持つのかは疑問で 歴史的なモデルとみなすべきだとおもう ただし このようなマクロな神経回路についての研究は現在にいたるまであまり進展していないから 過去のモデルがこうして引っ張りだされるのだろう 大脳辺縁系に含まれる構造の中で 海馬体や扁桃体は とくに機能的に重要だと考えられかつよく研究されている 海馬体 HIPPOCAMPUS( 海馬 海馬傍回 歯状回 ) は 大脳皮質の感覚連合野の広い領域からの入力を受けて 視床や大脳皮質連合野に出力している 海馬体は学習や記憶形成において重要な機能を提供すると考えら 68

69 れており 左右の海馬の障害は前向性健忘 ( 昔のことは覚えているが 新しいことを覚えることができない ) を示す 扁桃体 AMYGDALOID BODY は各種の感覚系からの入力を受けて 視床下部や脳幹などに出力している 動物実験で扁桃体を電気刺激すると怒ったような素振りをみせ また破壊するとおとなしくなるという結果が出ており 情動の発現や本能行動にかかわりを持つらしい 情動 emotion とは 快 不快や恐れといった生物としての基本的な感情である 簡単にいえばそういうことなのだが もう少し詳しい ( しかしテクニカルではない ) 説明を与えてみよう 私たちの精神現象の側からみれば それは現在の気分を全体的に支配するような 意識的に操作しがたい精神の動きだと感得される たとえば ( ゲテモノ料理は ) 生理的に受け付けない! という表現は こうした情動のはたらきを正確に報告しているとおもわれる いっぽう 私たちの認知を低次から高次へと順に考えていく立場からすると 情動とはある物体や音が 単にみえている 単に聞こえている のではなく 快不快などの生理的な弁別を伴って ( 心地よいものとして また気持ち悪いものとして ) 感じられている ということである 扁桃体を後天的に障害された症例では ある人が A さんであることは分かるし 笑い の表情をしていることも分かるが 感情が理解できなくなったという (A さんが楽しんでいるのか 怒っているのかという観点からのありありとした感覚が存在しない ) また情動の変化は 身体の変調を伴うことも重要な特徴である 本番が近づいて緊張するとき 心臓の鼓動ははやくなり 手には汗がにじんでくる といったように 以上のように 情動は単にいろいろな感情の 1 つではなく 私たちが世界を体験する際の基調を構成するものである 辺縁系の線維連絡の特徴 ( 各種の感覚の入力を受けて 視床や大脳皮質に投射して意識のはたらきに影響を及ぼし また視床下部や脳幹に投射して自律神経による調節や本能行動を引き起こす ) は こうした情動の機能の一端を説明する こんなふうに日常的な経験と解剖学的構造が結びつくと 神経解剖はとても楽しくなるとおもう 線条体 striate corpus は 大脳基底核のひとつ 大脳基底核 cerebral basal nuclei は 大脳半球の基底部 視床の外側の白質の中にみられるいくつかの灰白質塊である 視床および大脳皮質運動野との間で回路をつくり 主に運動の抑制性の調節にはたらく 視床視床下核右図に 前頭断面における大脳基底核尾状核の主要な構造と 立体的な模式図を示す 狭義の大脳基底核は 主に尾状核淡蒼球 caudate nucleus 被核 putamen 淡蒼球 globus pallidus の3つからなる このうち発生上同じ構造に由来する尾状核と被核をあわせて線条体 striate corpus と呼び 位置的に隣接する被核と淡蒼球をその形状からまとめてレ 質ンズ核 lenticular nucleus と呼ぶ ま # 脳基底核 ( 前頭断 と模式図 ) 被核た線維連絡や機能的な関連性から 視 を改変床下部の視床下核 subthalamicnucleus や 中脳の黒質 substantia nigra も 広義の大脳基底核に含める 大脳の基底部にある神経核という解剖学的定義では 前障 claustrum や扁桃核も大脳基底核に含む 尾状核と被核の間のハシゴ状の部分には 後述の内包の線維が通っている 69

70 大脳基底核の機能については 右図で線維連絡をみながら確認していこう 大脳基底核が主にはたらく経路 ( 主経路 ) は 皮質運動野 線条体 淡蒼球 視床 VA +VL 皮質運動野という閉鎖回路をなす また線条体と黒質 淡蒼球と視床下核との間には双方向性の副経路がある 主経路についてみると 大脳基底核への入力を線条体が受け 線条体は淡蒼球に抑制 脳 質運動野視床 VA+VL 視床下核淡蒼球 脳基底核 ( 機能的分類 ) # 脳基底核と 脳による運動調節 脳 質運動野視床 VA+VL 線条体 質橋 脳 性の出力を送り 淡蒼球から視床へ抑制性の出力を送るという 抑制 - 抑制の回路になっている よって大脳基底核の作用は 大きく分けて 運動の抑制 と 運動の抑制の解除 の 2 通りである パーキンソン病は 黒質から線条体へのドーパミン作動性 ( 興奮性 ) の経路の障害で起こり 主に 運動の抑制 の症状がでる いっぽうハンチントン病は 線条体そのものの障害で起こり 主に 運動の抑制の解除 の症状がでる 右図には小脳による大脳皮質運動野を介した運動調節の経路も示した みてわかるように 視床 VA+VL 大脳皮質運動野という経路を共有しており また機能はどちらも皮質性の運動調節である 両者の役割分担は難しい問題だが 疾患についていえば 小脳の疾患は協調運動の破綻 大脳基底核の疾患は運動の亢進または減少 精神症状をともなう とおおまかに整理できるとおもう 2008 年度問 6 6. 間脳について以下の問に答えよ. 1 ) 視床を構成する核のうち 3つを挙げ, 入力 出力, 機能的意義について説明せよ.(6 点 ) 2 ) 視床下部の存在場所を分かりやすい図を描いて説明し, 機能的意義について述べよ.(8 点 ) 1 ) 下図左 ( 間脳周辺の正中矢状断 ) に 視床と視床下部のだいたいの位置を破線で示す 視床 脳基底核 核 視床下部 質 解剖学講義 2 版 P729 を改変 ( 改変 ) # 冠状断 で視床と周囲の位置関係を把握する 70

71 視床は神経核の集まりである 中脳のすぐ上部にあり 間には第三脳室 上面には側脳室がある また周囲 ( 横や上 ) は大脳に取り囲まれていて 外部からみえない という位置関係を 具体的に思い描くことができるようにしよう 視床の主な役割は周辺部と大脳皮質の間で神経路を中継することだから 位置関係さえ正確につかめば 視床が何をしているのかだいたい分かる 上図右には 冠状断面に視床を通る以下の経路を 奥行きを圧縮して示した 脳幹を上行してきた後索内側毛帯路 ( 青 ) 大脳基底核から運動野への経路 ( 赤 ) さて右図のように視床核は その位置や線維連絡によっ 髄板内核 ていくつかの核に分類される その名称は解剖学的な方 M 向を示す用語で表現され アルファベットの略称で呼ばれることが多い まずこれらの用語を復習しておこう A P 前 ANTERIOR - 後ろ POSTERIOR 内側 MEDIAL- 正中 MEDIAN- 外側 LATERAL 腹側 VENTRAL- 背側 DORSAL VA VL # 視床核の配置 VPL VPM 解剖学講義 2 版 P719 を改変 LGB MGB 主な視床核の位置について 視床はまず白質の板 ( 視床髄板 ) によって 前 anterior と後ろ posterior 内側 medial と外側 lateral の大きく 4つに区分される 髄板の内部には髄板内核 INTERLAMINAR NUCLEUS があり 後核のやや下部には二つの高まり すなわち内側膝状体 MEDIAL GENICULATE NUCLEUS; MGB 外側膝状体 LATERAL GENICULATE NUCLEUS; LGB がある 外側核のうち下部 ( 腹側 VENTRAL) にある腹側核は さらに前方から 前腹側核 VA 外側腹側核 VL 後外側腹側核 VPL 後内側腹側核 VPM に分けられる 腹側 核の位置に注意しよう 腹側核は 解剖学的正位では ( 腹側ではなく ) 下方外側にある 次に示す図では これらの核の入出力を一覧できる 入出力および機能の観点から視床核を分類すると 1 運動 や感覚情報の中継 ( 図の赤 青 ) 2 上行性網様体賦活系 ( ピンク ) 3 連合野に投射する連合核 ( 黄 ) の 3 つ に分けることができる 運動制御 情報 体性感覚 ( 頭部以外 ) ( 頭部 ) 特殊感覚 連合核から連合野へ # 視床の 出 まとめ 神 医学部第 解剖講義ノート 神経解剖学篇 P98 を改変 71

72 1 運動や感覚情報を中継する核 入出力と機能を答えよ という問いには このカテゴリーから解答するのが楽である 経路はすでに各伝導路でみたとおりで かつ機能は ( 運動制御情報や各感覚の ) 中継 でよい 小脳および大脳基底核からの運動制御情報は それぞれ VA 核 VL 核に入り 大脳皮質の一次運動野に入り 錐体路系の運動調節を行う 頭部以外の体性感覚 頭部の体性感覚はそれぞれ VPL 核 VPM 核に入り 一次感覚野に入る 視覚 聴覚はそれぞれ LGB MGB に入り 一次視覚野 一次聴覚野に入る 2 上行性網様体賦活系 脳幹の網様体は 多くの上行性 ( 感覚性 ) の神経線維の側枝から入力を受ける 網様体でその情報を収束し 視床の髄板内核を中継して 大脳皮質の各領域へと広く投射する この経路は覚醒度を高め意識を明晰に保つ役割があり 上行性網様体賦活系と呼ばれる 3 連合核から大脳皮質の連合野へ 大脳皮質の連合野 すなわち機能がおおまかにしか分かっていない領域に投射する視床核のグループ よって機能や入出力も明確でないので 細かくみる必要はないとおもう 最後に 視床核をより広範な神経伝導路の走行と関連付けておこう 右図 ( 左視床を外側からみている ) には 主要な視床核から大脳皮質への出力の経路を示した 帯状回 ( 辺縁系 ) 運動野 感覚野 まず赤と青で示した 1の経路は いずれも 腹側核 に属し 下方外側に位置する 運動情報と体性感覚と経路は 脳幹では腹側を走る そしてそのまま上行して視床に入り 外側上方に向かって視床を出て 内包を通って大脳皮質に向かう これらの核が下方外側にあるのは この経路からすると 適当な配置だろう 前後軸では 運動神経が前 感覚神経が後 という原則がずっと維持されていることに注目したい さらに VPM~VPL で体部位的局在が存在するのはすでに 3-4 で述べた 前頭前野聴覚野 # 視床核から 脳への投射解剖学講義 2 版 P719を改変 ca/injury/childhoodinjuryprevention/brainfs.html( 改変 ) 視覚野 聴覚経路は脳幹の背側を上行し 視床の外側部をまわって LGB に至り その後は側頭葉に向かう 特徴的なの は視覚経路で 脳の前後を貫いてほぼ水平に展開する 長い経路を走る このように 視床だけで核の配置をみるのではなく 大脳皮質 脳幹 大脳基底核などの周辺構造の線維連絡の 中継点としてみるならば 視床の核の配置や機能も体系的に捉えることができるとおもう 視床下部は 中脳の前方に連続するわずか 4g ほどの灰白質塊だが 身体の生理機能においては重要な役割を 果たしている 構造 機能の順で簡潔に説明しよう 72

73 視床下部も視床と同様に基本は神経核の集まりであり 第三脳室の側壁部に多数の神経核がある また中枢神経系の他の部位にはない特徴として 下方に突出する下垂体 hypophysis; pituitary gland を介して内分泌を行うという点がある その配置と線維連絡についてみると 視床下部は大脳辺縁系 脳幹 視床に取り囲まれた位置にあり 上記の神経核はこれらの周辺構造との間に密な線維連絡を持つ 視床下部の機能を それが身体全体の生理機能に果たす役割という点からまとめるならば ホメオスタシスと 本能行動の調節 となるだろう 具体的には体温調節 水分摂取や摂食行動の調節 性行動や情緒反応の調節な どである もう少し構造よりに説明するなら 視床下部は大きく分けて 2 つのシステムの制御を行う中枢としての機能を持つ 自律神経系の中枢 上位中枢として 末梢の交感神経 副交感神経をコントロールする 内分泌系の中枢 下垂体を通した神経分泌により 各内分泌器官をコントロールする 主要な神経核の名称と機能をまとめた図を右に示しておく 下垂体での分泌に関連して 次の点を復習しておこう 室傍核と視索上核は 下垂体後葉 ( 神経下垂体 ) に軸索を伸ばして神経分泌を行う ( バソプレシン オキシトシンなど ) 弓状核 ( 漏斗核 ) は正中隆起でホルモン ( 放出促進 / 抑制ホルモン ) を分泌し 血流に乗って下垂体前葉 ( 腺性下垂体 ) に向かう # 視床下部の神経核とその主要な機能標準 理学 7 版 P415 より 各神経核の機能は 視床下部に含まれる神経核の電気刺激や 神経核を破壊する動物実験を行うことを通して明らかにされた たとえば神経核のひとつ腹内側核 ( 摂食中枢 ) を破壊すると 摂食意欲の低下がおこる といったように これは生理学の守備範囲だから 神経解剖学の範囲ではこれらの名称 位置 機能などを詳しく覚える必要はないとおもう ざっと眺めておいて たとえば生理学で 視交叉上核に概日リズム調整の中枢がある といった議論が出たときに 視床下部にそんな名前の神経核があったな くらいのことを思い出すことができれば十分だろう 2007 年度問 5 次の構造を簡単な図に書いて示し, 機能的意義について述べよ.(7 点 2) 1 視床髄板内核 2 内包 1 は視床の問題で解説済み 2 内包 internal capsule は 大脳皮質から脳幹へ ( あるいは脳幹から大脳皮質へ ) 向かう投射線維の束のうち 視床や大脳基底核の周辺を通る部分を指す 狭い領域に重要な神経線維が密集していること 周囲の血管が障害されやすいことから 比較的小さな損傷でも大きな障害が起こる 73

74 内包の障害は 障害される場所により 反対側の運動麻痺や反対側の感覚麻痺がおこる 右に 脳の水平断面における内包を示す は内包は視床と大脳基底核にはさまれて く の次になっている 前掲の前頭断や大脳基底核の模式図でも 内包の走行を確認しておこう 内包は前方から 前脚 膝 後脚 の 3 つの部分に分けられる 重要な線維束としては 内包膝には皮質核路が 内包後脚には皮質脊髄路や視床皮質路 ( 体性感覚野へ向かう伝導路 ) が通る 視床 質路 皮質核路 皮質脊髄路が通るところは 中大脳動脈の分枝のレンズ核線条体動脈により栄養される この動脈は 太い動脈から急に細い動脈となることもあり とくに脳出血の好発部位となっている ( シャルコーの脳出血動脈とも呼ばれる ) # 脳の 平断 における内包 神 医学部第 解剖講義ノート 神経解剖学篇 P108 より 2007 年度問 6 大脳について, 以下の問に答えよ. 1 ) 大脳を正中矢状断した断面図を描き, 視床下部, 海馬傍回を含む 6 ヶ所以上の構造を示せ.(6 点 ) 2 ) 大脳半球を側面から見た図を描き, 機能局在について説明せよ.(8 点 ) 1) は教科書やアトラスの適当な図をみてほしい 2)( 大脳皮質の ) 機能局在 functional localization とは ある範囲の脳領域が特定の機能を担うとする考え方である 組織学的には 大脳新皮質は原則としてどこでも同じ 6 層の細胞層を持つ しかし細胞層の厚さ 神経細胞の形状や密度 配列には部位ごとに違いがある 神経線維の連絡の解剖学的な解明に加えて ウェルニッケやブローカの言語野に関する疾患研究やペンフィールドの臨床実践 ( 脳外科手術中に大脳皮質に電気刺激を与えて反応をみる ) の成果などを受けて 機能局在の考え方は徐々に影響力を増してきた ドイツの神経科医ブロードマンは 20 世紀のはじめ 大脳新皮質の各部分を光学顕微鏡で観察して 組織学的特徴から新皮質を約 52 の領域に区分した脳地図を作成した しかし各領域の組織学的構造が その機能とどういう関連性を持つのかは よく分かっていない その後の大脳新皮質の機能を調べる研究では この脳地図を参照して ブロードマンの第 X 野はこういう機能を持つ というような言い方が定着した 現在では 新皮質の各部に付与された単なる番号として脳地図が言及されることも多いが それがもともとは組織学的構造による分類であることは注意しておきたい 以上の前置きはともかく 答案では大脳の模式図を書いて 脳機能局在の主要な領域を示すことができればいいだろう まずプレーンな脳の図を示す 目印として次の構造を指摘できるか 確認しておこう 中心溝 中心前回 中心後回 外側溝 74

75 側面にぐるりとまわる構造が側頭葉 側頭葉の上端に外側溝があるのはすぐにわかるだろう 中心溝は 慣れると容易に見分けられる 側頭葉より上の部分で 上下に 2 本の長い山脈をつくる中心前回と中心後回を見定めることができれば その間の溝が中心溝である 中心溝より前方が前頭葉 後方が頭頂葉になる 後頭葉の境界は明瞭でない 解答では 脳機能局在の主要な領域として次に挙げる名称とその位置を指摘したい ( 下図を参照 ) 一次運動野 体性感覚野 視覚野 聴覚野 ブローカ野 ( 運動性言語野 ) ウェルニッケ野 ( 感覚性言語 野 ) これらの領域の配置は 脊髄 ~ 脳幹断面での伝導路の配置の延長として捉えると かなり体系的に整理することができる 順に説明していこう 右下図では 脳および脳室系を背景として 主要な伝導路をごく模式的に示している まず発生上 神経管の背側に感覚性の 神経核 腹側に運動性の神経核が分化するのだった この配置は中枢神経系の全体で基本的に維持され 大脳皮質でも腹側 ( 前方 ) に運動性の領域 背側に感覚性の領域が配置する # 脳 質外側 における機能局在 錐体路聴覚伝導路 聴覚伝導路 つぎに聴覚と体性感覚の伝導路 ( 後索内側毛帯路など ) を比べてみる 聴覚路はより外側から延髄に入り 視床でもより外側から側 視覚伝導路後索内側 帯路 ( 改変 ) ( 改変 ) # 神経路と機能局在 # 脳室と機能局在 頭葉に向かう いっぽう後索内側毛帯路は 延髄以上ではずっと内側を走行し そのまま上行して頭頂葉に向かう また視覚野と聴覚野は それぞれ側脳室の後角 下角にあることに注目しよう 脳の発達は脳室系の発達と軌を 一にするから 頭頂葉と後頭葉が側脳室とともに伸長するときに 視覚系や聴覚系の線維も伸びていったのだと 考えられる 運動性言語野と感覚性言語野は 周辺の皮質との位置関係をみると理解しやすい 運動性言語野 ( ブローカ野 ) は 前頭葉の運動野の前方にある そのさらに前方には前頭葉の連合野がある 感覚性言語野 ( ウェルニッケ野 ) は 体性感覚野の後下方の側頭葉にある 周辺には聴覚野や視覚野があり れらの領域との機能的な関連性が予想される 多くの場合 これらの言語中枢は左の大脳半球にあるとされる 機能を担う方の半球を ( 言語中枢に関する ) 優位半球と呼ぶ 75

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