症例報告 ( 医師 ) ASV 療法による慢性心不全の予後改善効果 Beneficial effects of adaptive servo ventilation therapy on the prognosis in patients with chronic heart failure 小山崇

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あまめやなぎしま
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1 症例報告 ( 医師 ) ASV 療法による慢性心不全の予後改善効果 Beneficial effects of adaptive servo ventilation therapy on the prognosis in patients with chronic heart failure 小山崇渡邊博之五十嵐厳寺田茂則真壁伸伊藤宏 Abstract 睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing;sdb) が, 心不全患者の治療ターゲットとして注目されている. これまで, 心不全に伴う SDBに対する治療デバイスとして持続性陽圧 (continuous positive airway pressure;cpap), 2 相性気道陽圧 (Bi-level PAP) が用いられてきたが, 胸腔内圧の上昇, 忍容性の低さが問題点であった. 最近, 患者の呼吸に同調して陽圧を与え, 患者の換気量を確保しながら, 自動的にサポート圧を調節する順応性自動制御換気装置 (adaptive servo ventilation;asv) が慢性心不全患者に使用され, 低心機能を改善し, 患者のコンプライアンスを向上させることが明らかとなり, 本邦で多くの患者に使用されている. さらに,ASVはSDBを合併した慢性心不全患者の予後を改善させることはもちろんのこと,SDBが少ない患者にも効果を発揮する可能性があることが理解され始めている. 言い換えると,ASVはSDBの重症度によらず慢性心不全患者の予後を改善する可能性がある. ASVが有する直接的血行動態改善作用や異常呼吸抑制効果が, 慢性心不全患者に有益な結果をもたらすことが予想されている. 今後, 慢性心不全に対する ASVの有効性や予後改善効果に関して多くの研究が待ち望まれている. ASV 療法は中等度以上の睡眠呼吸障害を有する慢性心不全患者に有効である 1) 順応性自動制御換気装置 (adaptive servo ventilation; ASV) は中等症以上の睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing;sdb) を合併する慢性心不全患者に多く使用され, 心機能を改善させることが報告されている. 慢性心不全患者では, 肺うっ血によって肺胞コンプライアンスが低下し, 1 回換気量が減少する. そのため生体は延髄のCO2 化学受容体の感受性を亢進させることによって分時換気量を維持する. 一方, 低下した左室収縮能によって,CO2の末梢から中枢への情報遅延が生じ, 無呼吸と過呼吸が繰り返される. 呼吸が停止すると血中の酸素濃度は急速に低下し, 過換気に伴い酸素濃度は速やかに回復していく. このような低酸素ストレスは, 交感神経活性や全身の炎症反応を容易に上昇させる. 交感神経活性の上昇は, 心筋のリモデリング, 心筋細胞のシグナル伝達, 致死的不整脈の誘発などといった原因によって心不全患者の予後を悪化させる. 一方, 心不全では炎症により活性化されるサイトカインも重要な病態促進因子といわれている. 炎症性サイトカインは心筋細胞の機能異常をもたらすのみならず, 心肥大やリモデリングを誘導し心機能を悪化させる. 以上のように,SDBは心不全の病態に強く影響している.ASVはこのような SDB( 特に中枢性無呼吸 ) の治療機器として開発された経緯をもち, 最近慢性心不全患者のSDB 治療に多く使われている. われわれはASV が抗炎症作用を通じて, 慢性心不全患者の心機能を改善するかを検討した. 登録された慢性心不全患者 (17 名 ) において,SDBの重症度と高感度 CRPの間には正の相関が認められた ( 図 1A). これらの患者に ASVを導入し, 忍容性のあった患者 (10 名 ) となかった患者 (7 名 ) の 2 群に分割し 4 週間後の心機能と高感度 CRP の値を検討した. 忍容性のあった患者群では左室駆出率は上昇し, 高感度 CRPは有意に減少した ( 図 1 C). 一方 ASVを装着できなかった心不全患者ではこれらの値は不変であった ( 図 1 C). 高感度 CRPの変化と左室駆出率の変化の間には負の相関が認められ, 心機能の上昇には炎症反応の軽減が関与する可能性があることが示された ( 図 1 B). この報告から, 慢性心不全患者の心機能を改善させるために,SDBに介入することは治療ターゲット秋田大学大学院医学系研究科循環器内科呼吸器内科 Akita University Graduate School of Medicine, Department of Cardiovascular and Respiratory Medicine Takashi Koyama, Hiroyuki Watanabe, Gen Igarashi, Shigenori Terada, Shin Makabe, Hiroshi Ito Key words;adaptive servo ventilation(asv), 慢性心不全, 睡眠呼吸障害, 異常呼吸, 血行動態第 6 回心不全陽圧治療研究会 1593

2 (d) 15 r=753 p=16 =385 () 15 1 r =733 p =1 =396 sc 1 ΔV A sore(episodes per or) ASV rop p= () Baseline Ater 4 wees p=8 (d) V sc levels Baseline Ater 4 wees ΔsC (d) onasv rop p =9 () Baseline Ater 4 wees p =9 (d) V sc levels Baseline Ater 4 wees 図 1 ASV 療法による各種パラメータの変化 A: 慢性心不全患者における無呼吸低呼吸指数 (AHI) と高感度 CRP(hs-CRP) の関係慢性心不全患者 17 名において AHIとhs-CRPには正の相関関係が認められた. このことから心不全患者においても睡眠呼吸障害は炎症反応を誘発する可能性が示唆された. B: 慢性心不全患者における左室駆出率の変化率 (ΔLVEF) と高感度 CRPの変化率 (Δhs-CRP) の関係慢性心不全患者 17 名において ΔLVEF とΔhs-CRPの間には負の相関関係が認められた. C:ASV 導入群と非導入群におけるLVEFとhs-CRPの変化 ASVによって治療を行えた患者 (10 名 ) では, 炎症反応の減少に伴い左室駆出率が改善していた. 一方忍容性のなかった患者 ( 7 名 ) では炎症反応は改善せず, 結果として心機能の改善が認められなかった. ( 文献 1 より改変引用 ) として有効であると考えられた. ASV 療法は中等度未満の睡眠呼吸障害を有する慢性心不全患者にも有効である ASV 療法は, 中等度未満の睡眠呼吸障害を有する慢性心不全にも有効である可能性がある. 前述のように, 慢性心不全患者では肺のコンプライアンスが低下しているため, 中枢のCO2 化学受容体の感受性を亢進させることによって, 分時換気量を維持している. その結果, 呼吸回数は上昇し, 呼吸は浅く速くなる. また, 心不全による循環遅延と中枢性化学受容体反射の亢進は, 低呼吸や無呼吸と過呼吸を繰り返す, いわば周期性呼吸が発生しやすい素地を作る. 周期性呼吸の代表例は SDBであるが, 最近, このような周期性呼吸は日中の覚醒時にも存在することが明らかとなってきた. 原田らは慢性心不全患者において, 呼吸運動と筋交感神経活動を同時記録し, 呼吸運動が交感神経活動に及ぼす影響について報告している 2). その中で, 周期性呼吸 1594 心臓 V o l. 4 4 N o. 1 2 ( )

A B 図 2 胸部 X 線写真 ( 立位正面 ) A:ASV 療法開始前 B:ASV 療法開始 2 カ月後軽度の睡眠呼吸障害を有する心不全患者であったが,ASV 療法により 2 カ月後のCTRが低下している. や浅く速い呼吸は覚醒時にも出現し, その際に筋交感神経活動が上昇していることを明らかにしている.

ASVを使用することによって患者の呼吸は同調したpressure supportによって, 深く, ゆっくりとした呼吸へとシフトし, さらに筋交感神経活動は抑制された. この報告が示すように,ASV 療法は心不全患者の肺の伸展反射を促し, 交感神経活性を減少させることができるといった新たなメカニズムが明らかになりつつある.

3 A B 図 2 胸部 X 線写真 ( 立位正面 ) A:ASV 療法開始前 B:ASV 療法開始 2 カ月後軽度の睡眠呼吸障害を有する心不全患者であったが,ASV 療法により 2 カ月後のCTRが低下している. や浅く速い呼吸は覚醒時にも出現し, その際に筋交感神経活動が上昇していることを明らかにしている. 肺が膨らむ際には, 肺伸展反射を介して交感神経活性は抑制されるが, 心機能が低下した慢性心不全患者では異常呼吸が出現しているため, 交感神経活性が有意な状態が続いていくこととなる. さらに原田らはそのような周期性呼吸を有する患者に対して ASVを導入し, 筋交感神経活動を同時記録した.ASVを使用することによって患者の呼吸は同調したpressure supportによって, 深く, ゆっくりとした呼吸へとシフトし, さらに筋交感神経活動は抑制された. この報告が示すように,ASV 療法は心不全患者の肺の伸展反射を促し, 交感神経活性を減少させることができるといった新たなメカニズムが明らかになりつつある. 交感神経活性の上昇は心不全の非常に強力な予後規定因子であるため, 心不全患者に伴う異常呼吸に対する介入は交感神経活性の抑制作用を通して重要な治療方法となる可能性を持つ. ASVが心機能を改善するもう 1 つの重要なメカニズムとして, 低い呼気終末陽圧 (positive endexpiratory pressure;peep) による前負荷軽減作用が考えられている. ASVでは, デフォルトで常に 5 cmh2oの低いeepを与える設定となっている. 近年, 急性心不全の肺水腫に対してCPAP やBi-level PAP,ASV といった非侵襲的陽圧換気 (non-invasive positive pressure ventilation;nippv) は標準的な治療オプションとなり始めている. 陽圧換気デバイスによる PEEPによって, 酸素化が改善されるのみならず, 前負荷が軽減される, 水分が肺胞から血中へシフトする, といった作用が期待でき, 心不全急性期において, 人工呼吸器の装着を回避することができる. この直接的な血行動態改善作用によって, 慢性心不全患者においても肺うっ血や前負荷が軽減されている可能性が推測されている. 軽症の SDB を有する慢性心不全患者に ASV 療法が有効であった症例症例 47 歳, 女性. 慢性心不全, 拡張型心筋症, 持続性心室頻拍, 慢性除脈性心房細動の診断で当科に通院中であった. 持続性心室頻拍に対して, すでに植込み型除細動器 (implantable cardioverter defibrillator;icd) が挿入されている. 主訴は労作時呼吸困難感およびICD 作動による胸部不快感.NYHA Ⅲ 度. 血圧 88/40mmHg, 心拍数 70/ 分,SpO2 95%( 酸素カヌラ 2 L 使用時 ). 血清 BNP 値 526pg/mL. 心電図は心室ペーシングリズム. 胸部 X 線 ( 図 2) 上,CTR 69%. 心臓超音波検査上, 左室駆出率 40%, 左室拡張末期容積 163.3mL. 自己脈 ( 心拍数 30 台の除脈性心房細動 ) としたときの左室同期不全はない. カルベジロール10mg, カンデサルタン 8 mg, スピロノラクトン 25mg, トラセミド 8 mg, アミオダロン 200mg が使用されている. 治療方針拡張型心筋症を基礎心疾患とした慢性心不全と診断した. 慢性心不全の増悪に伴い持続性心室頻拍が再出現し第 6 回心不全陽圧治療研究会 1595

4 ICD が作動したと考えられた. 入院のうえ, 安静と薬物療法の強化を行った. 心室ペーシング率が多い患者であったが心室再同期療法の植え込み基準を満たさず,ASV 療法による非薬物療法を追加する方針となった. 終夜睡眠ポリグラフィ (polysomnography;psg) から得られた無呼吸低呼吸指数 (apnea hypopnea index;ahi) は12/ 時であった. 経過 ASVの装着に関して, 3 日間のフィッティングテスト期間を設けた.ASVはAutoset CS(ResMed Ltd,NSW, Australia) をデフォルトの設定 (EEP 5 cmh2o,ps 3 10cmH2O) で使用した. 装着時には血圧が低下しないこと, 血行動態が悪化しないことを確認したうえで, 装着時間は夜間就眠中とした. 導入時は装着時間を 1 時間とし段階的に装着時間を延長するように指導した. 2 カ月間の 1 日当たりの平均使用時間は 4.2 時間であった. 2 カ月後,New York Heart Association(NYHA) 心機能分類はⅡ 度まで改善. 血清 BNP 値は238pg/mLに減少. 胸部 X 線上,CTRは66% に低下. 心臓超音波検査上, 左室駆出率は44%, 左室拡張末期容積は129.5mLと改善した. ASV 療法による慢性心不全の予後改善効果は SDB の程度によらない 3) ASV 療法はSDBを改善すること以外に, 慢性心不全患者の不安定な呼吸, 前負荷を軽減させることによって慢性心不全患者の予後を改善させる可能性が考えられている. これまでの臨床データをふまえて, われわれはASV 療法がSDBの重症度によらず慢性心不全患者の予後を改善させるかどうかを後ろ向きに検討した. 方法 88 名の慢性心不全患者 (LVEF<55%,NYHA Ⅱ 度もしくはⅢ 度 ) にPSG 検査およびASV 療法を施行後, 以下に示す 4 群に振り分けた. Group A(28 名 ): 中等症以上のSDB あり,ASVに対する忍容性あり. Group B(19 名 ): 中等症以上のSDBあり,ASVに対する忍容性なし. Group C(23 名 ): 軽症 SDBもしくは SDBなし,ASVに対する忍容性あり. Group D(18 名 ): 軽症 SDBもしくは SDBなし,ASVに対する忍容性なし. これら 4 群を12カ月経過観察し, 心不全イベント ( 心不全入院もしくは心不全の増悪による死亡 ), 心機能 ( 左室駆出率,BNP) を評価した. 登録患者に PSG 検査を行い,AHI が20/ 時以上の患者を中等度以上のSDBを有する患者と定義し,20 未満の患者を軽症のSDBもしくは SDBのない患者と定義した.ASV 療法に対する忍容性は, 3 日間のフィッティング期間を設けて判定し, 忍容性が認められた患者に対しては, 夜間就眠中 4 時間以上装着することを条件とした. 使用状況は 1 カ月に 1 度,ASVデバイスからダウンロードし確認した.ASVはAutoset CSをデフォルトの設定で使用した. 心機能に強く作用する薬剤 (ACE 阻害薬, アンジオテンシン受容体拮抗薬,βブロッカー ) は変更せず経過観察した. 結果 4 群間で患者背景に有意差は認めなかった.AHIは Group A:37.8±6.7,Group B:34.3±7.6,Group C: 15.6±4.2,Group D:14.2±4.7であった.ASVの使用時間はGroup Aで5.5±1.4 時間,Group Cで5.1±1.1 時間であった.ASV 療法開始後 12カ月の時点で,Group AおよびCのイベント回避率は,Group Bおよび Cの患者よりも有意に高かった (p=0.032,p=0.037,log-rank 検定, 図 3).SDBの重症度によらず, 左室駆出率はGroup A とGroup Cで上昇した (Group A)45.5± ±7.1%, (Group C)43.7± ±1.1%.BNP も同様にGroup AとGroup Cで改善した (Group A)202.6± ± 87.1pg/mL(Group C)219.8± ±162.8pg/mL. Cox 比例ハザードモデルによる解析では,Group Aの患者において,NYHAの重症度が心不全イベントのリスクを高め ( ハザード比 =3.992,p=0.044),ASV 療法が有意にリスクを下げた ( ハザード比 =0.246,p=0.024).Group Cの患者では,ASV 療法 ( ハザード比 =0.151,p=0.048) と治療前の高い左室駆出率 ( ハザード比 =0.810,p=0.032) が心不全イベントのリスクを下げた. 考察本試験では,1ASV 療法が慢性心不全患者の予後, 心機能を改善する効果があること,2その効果はSDBの重症度によらないことが示唆された. 中等症以上のSDBを有する患者のみならず,SDBが比較的軽症な心不全患者においても効果が表れた理由として, 前負荷を軽減させたことや異常呼吸を軽減させたといったことが考えられ 1596 心臓 V o l. 4 4 N o. 1 2 ( )

5 図 3 ASV 療法による心不全患者の予後改善効果 Srvival rate () ASVrop(n=8) onasvrop(n=19) oran test:p= onts o ollowp Srvival rate () ASVrop(n=3) onasvrop(n=18) oran test:p= onts o ollowp ASV に忍容性を認めた心不全患者群 (ASV-group) と認めなかった心不全患者群 (Non-ASV-group) の生存曲線. 観察期間は 12 カ月. A: 中等症以上の SDB を有する心不全患者の予後 (AHI 20) B: 軽症 SDB もしくは SDB のない心不全患者の予後 (AHI<20) 無呼吸低呼吸指数 (AHI) が 20 以上の患者を中等度以上の睡眠呼吸障害を有する患者,AHI が 20 未満の患者を軽症の睡眠呼吸障害を有する患者もしくは睡眠呼吸障害のない患者と定義した. この結果から睡眠呼吸障害の程度にかかわらず ASV は心不全患者の予後を改善する可能性があることが示唆された. ( 文献 3 より改変引用 ) る. しかしながら, それが直接証明されたわけではなく, 今度のデータの蓄積が待たれる. さらに, 本研究は単施設の後ろ向き研究であるため, 大規模な前向き研究が予後の評価に必要である. ASV 療法の課題と問題点これまで述べてきたように ASVはさまざまなメカニズム ( 特に睡眠呼吸障害の治療, 異常呼吸の治療, 自律神経調節, 直接的血行動態改善作用 ) を通して慢性心不全患者の予後や心機能を改善する可能性がある ( 図 4). しかし, 陽圧換気に対して忍容性の低い患者も比較的多く存在し, 継続率や装着率の低さに問題点が残る. また,ASV 療法によって, すべての心不全患者の心機能が改善するわけではなく, どのような患者に忍容性があるのか, どのような患者がresponderなのかを評価する有用な指標が求められる. ASVは心不全患者の呼吸に同調し, 適切な陽圧を与える機能を有するためにこれまでの陽圧換気デバイスに比し, 忍容性が高く, 継続率が高くなることが予想されている 4). また, 小型で持ち運びに便利であるため, 心不全患者の在宅医療に有用なデバイスとなるであろう. しかし, これまでの陽圧治療に比べて高額であり, 対費用効果を十分に考慮する必要がある. これまでの臨床研究の中でCPAP 治療でも十分, 心不睡眠呼吸障害異常呼吸治療血行動態心心不全図 4 ASV 療法が心不全患者の心機能および予後を改善するメカニズム全改善効果を期待できる可能性が指摘されている 5). また本邦では,2010 年に日本循環器学会から睡眠呼吸障害の診断治療に関するガイドラインが発表され 6), 中枢型無呼吸やチェーンストークス呼吸を合併した慢性心不全患者において CPAP に忍容性がない場合,ASV が class Ⅰ に位置づけられている. したがって, 患者背景にあわせて, どのような陽圧換気デバイスを使用していくかの基準や手順についてのエビデンスも必要となってくるであ第 6 回心不全陽圧治療研究会 1597

6 ろう. 上述のように,ASV 療法は慢性心不全患者の SDBの重症度によらず, 予後や心機能を改善する可能性がある. しかし, 本稿で紹介した研究は後ろ向き研究であり, 心不全患者の非薬物療法として ASV 療法を確立するために, 今後この点において大規模前向き研究の報告が待たれるところである. 結語 ASV 療法は, 多面的なメカニズムを通して,SDBの重症度によらず慢性心不全患者の予後を改善する可能性がある. 文献 1)Koyama T, Watanabe H, Kobukai Y, et al : Beneficial effects of adaptive servo ventilation in patients with chronic heart failure. Circ J 2010 ; 74 : )Harada D, Joho S, Oda Y, et al : Short term effect of adaptive servo-ventilation on muscle sympathetic nerve activity in patients with heart failure. Auton Neurosci 2011 ; 161 : )Koyama T, Watanabe H, Igarashi G, et al : Short-term prognosis of adaptive servo-ventilation therapy in patients with heart failure. Circ J 2011 ; 75 : )Teschler H, Döhring J, Wang YM, Berthon-Jones M : Adaptive pressure support servo-ventilation : a novel treatment for Cheyne-Stokes respiration in heart failure. Am J Respir Crit Care Med 2001 ; 164 : )Arzt M, Floras JS, Logan AG, et al : Suppression of central sleep apnea by continuous positive airway pressure and transplant-free survival in heart failure : a post hoc analysis of the Canadian Continuous Positive Airway Pressure for Patients with Central Sleep Apnea and Heart Failure Trial (CANPAP). Circulation 2007 ; 115 : ) 百村伸一, 赤柴恒人, 麻野井英次, ほか : 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断治療に関するガイドライン. Circ J 2010 ; 74(Suppl Ⅱ): 心臓 V o l. 4 4 N o. 1 2 ( )

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