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さゆりたかにし
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1 天然物化学 Natural Products Chemistry 金曜日 3 時限 2 年前期担当 : 宮本智文 1

2 シラバス 2014 年修学のてびき本講義の教育目標創薬化学研究者に必須な天然物由来の医薬品等に関する化学構造薬理作用生物活性などの知識を修得する授業の概要薬学の重要な役割の中に病気の治療予防を目的とする医薬品の創製がある従ってその一環をなす天然物化学の使命は重要な薬理活性を有する天然有機化合物を医薬品素材として探索する役割である天然物化学を支える知識や技術には天然有機化合物の抽出分離物理化学的性質の解明構造決定生合成化学変換や全合成化学分類学化学生態学などが含まれるがその目的は優れた創造性豊かな医薬品の創製である本講義で取り扱う天然有機化合物は生体成分微生物植物海洋生物代謝産物にまで及んでおり広く天然有機化合物に関する知識を修得させる試験成績評価など中間試験 (50%) 期末試験 (50%) +α 2

3 教科書 5,600 6,000 4,000 3

4 中公新書 800 中央公論新書 2,600

5 4 月 17 日総論講義日程天然物化学とは薬学における天然物化学 4 月 24 日天然物の分離精製と構造決定抽出分離構造決定バイオアッセイ法について 5 月 1 日天然物化学を理解するための立体化学異性体立体化学表示法相対配置と絶対配置など 5 月 8 日 ~7 月 31 日各論計 12 回 ( 中間試験 1 回 ) 糖質脂質アミノ酸 (1 次代謝産物 ) フェニルプロパノイドリグナンフラボノイドタンニンキノン ( 前半 ) 中間試験 6 月 12 日テルペノイドステロイド配糖体 ( サポニン ) アルカロイドその他( 後半 ) 5

6 天然物化学とは? 天然物化学 ( てんねんぶつかがく ) とは生物が産生する物質 ( 天然物と呼ばれる ) を扱う有機化学の一分野である主に天然物の単離構造決定 ( 生 ) 合成を扱う天然物の抽出単離薬学基礎実習 I-3 有用な物質を発見するためにすでに有用な作用が知られている動植物からその作用をもたらしている物質を単離する古くは蒸留や再結晶などにより目的物質を単離していたが現在ではクロマトグラフィーによる分画が多用される分画された各フラクションについて作用の有無を調べ目的とする天然物がどこのフラクションに含まれているかを確認するそのフラクションがまだ混合物であるならさらに分画を行ない単一化合物となるまで繰り返す天然物の構造決定同定薬学基礎実習 I-3 構造化学演習目的とする作用を持つ天然物を単離したならば次に構造決定あるいは同定を行なう古くは元素分析と分解反応など化学的手法による構造決定が行なわれていたが現在ではこれはほとんど機器分析的手法によってとって代わられている天然物の合成, 生合成有機薬化学, 生薬学各種の機器分析のデータから導かれた構造が実際に合成を行なったところ導かれた構造が間違っていた例も多く存在する特に天然物の立体化学に関しては天然物の不斉全合成によりその構造を確認することもあるまた構造が確認された物質についても作用についてより詳細な実験を行なうためにある程度の量を供給する必要があるそのためより簡便で収率の高い合成法の研究も行なわれる 6

7 天然物化学の目的薬学医薬シーズ探索農芸化学水産学食薬有用 ( 食用 ) 資源, 毒成分天然物化学構造生態合成未知生物現象の解明理学 7

8 今日の話題天然物由来の医薬品に関する最近のトピックガランタミンとエリブリンアスピリンとサリシン天然物から生まれた医薬品 ( 配付資料 ) 8

9 彼岸花 9

10 彼岸花 ( 曼珠沙華 ) ヒガンバナ科 Lycoris radiata 有毒! 10

11 ヒガンバナの有毒成分ガランタミン型クリニン型リコリン型スノードロップ ( 松雪草 ) ヒガンバナ科の Galanthus 属植物 11

12 2010 年 3 月 1 日 12

13 2011 年 2 月 19 日メマンチン塩酸塩商品名 : メマリー第一三共ガランタミン臭素酸塩商品名 : レミニールヤンセンファーマ 13

14 ガランタミンとメマンチンの作用機序 14

15 15

16 16

17 ハリコンドリン B とエリブリン Halichondrin B 1985 年上村等によりクロイソカイメンより単離構造決定 25 年 ER7389 (Eisai) Synthetic エリブリン Eribulin 商品名 : ハラヴェン 2010 年 11 月 16 日 ( 転移性乳がん治療薬米国で販売承認 ) Marine sponge (Halichondria okadai) クロイソカイメン

21 天然物ミミック天然物天然物由来合成品

22 天然由来薬物の発見年表 P モルヒネノスカピン 1885 エフェドリン 1817 エメチン 1888 G-ストロファンチン 1818 ストリキニーネ 1895 d-ツボクラリン 1819 カフェインキニーネコルヒチン 1918 エルゴタミン 1826 ベルベリン 1921 グリチルリチン 1830 サントニンジゴキシン 1929 ペニシリン 1831 アトロピン 1931 アジマリンルチン 1832 コデイン 1935 エルゴメトリン 1833 キニジン 1941 センノシドA,B 1848 パパベリン 1952 レセルピン 1855 コカイン 1953 カイニン酸 1864 フィソスチグミン 1958 ビンブラスチン 1869 ジギトキシン 1961 ビンクリスチン 1875 ピロカルピン 1966 カンプトテシン 1880 スコポラミン 1971 タキソール医療を指向する天然物医薬品化学廣川書店より 22

23 解熱鎮痛薬のアスピリン ASPIRIN REGIMEN BAYER 商品名 : アスピリン ( 他 35の名称 ) 一般名 : アセチルサリチル酸解熱鎮痛抗炎症抗リウマチ抗痛風脳梗塞心筋梗塞の予防 23

24 アラキドン酸カスケード 24

25 テキスト 43 ページ 1982 年 John Vane ノーベル生理学医学賞 NSAIDs Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs 非ステロイド系抗炎症薬 25

26 Acetylsalicilic acid

CH 2 OH 別名 : 石炭酸 Kolbe 1859 石炭 OH methyl salycilate (Polygala

27 サリシン ( 天然物 ) とアスピリン ( 医薬品 ) 1897 COOH OCOCH 3 acetyl salycilate ASPIRIN アセチル化メチル化 COCH 3 COO O O O CO 2, 200 酸化化学合成 OH phenol CH 2 OH 別名 : 石炭酸 Kolbe 1859 石炭 OH methyl salycilate (Polygala senega) 加水分解 OH saligenin 1819 salicin Edward Stone 27 セイヨウシロヤナギ

28 モルヒネ (morphine) HO H 3 CO HO O HO H N CH 3 morphine (Papaver somnif erum) ケシの樹液 1806 年鎮痛薬麻薬 O O OH N CH 3 oxycodone 非麻薬性鎮痛薬 ( 合成 ) H 3 C H H 3 C N CH 2 CH=C(CH 3 ) 2 pentazocine 非麻薬性鎮痛薬 ( 合成 ) H 3 CO H 3 COCO O O N CH 3 pethidine 非麻薬性鎮痛薬 ( 合成 ) O HO H codeine 鎮咳薬 N CH 3 O H 3 COCO H N CH 3 diacetylmorphine(heroine) 麻薬 28

29 29

30 アヘン薬用植物園のケシ (Papaver somuniferum) 30

31 アツミゲシケシ (Papaver setigerum) ヒナゲシ (Papaver rhoeas) 虞美人草 2011 年 5 月犬の散歩道で撮影 31

32 オニゲシ (Papaver orientale) 近縁種 : ハカマオニゲシ (P. bracteatum) 麻薬及び向精神薬取締法栽培禁止 2014 年 5 月遠賀川周辺 32

33 コカイン (cocaine) P7 Erythroxylon coca 商品名 : キシロカイン 33

34 アトロピン (atropine) トロパンアルカロイド H 3 C N O O CH 2 OH atropine (Hyoscyamus niger) ヒヨス (Scopolia japonica) ハシリドコロ (Atropa belladonna) の葉 N OH H 3 C O O scopolamine O 酔い止パーキンソン病 N H 3 C OH O homatropine O 副交感神経遮断薬散瞳薬 N OH H 3 C O (-)-hyoscyamine O アトロピンの光学活性体 Atropa belladonna 34

35 フィソスチグミン (physostigmine) H 3 C N H O O CH 3 N H N CH 3 N + (CH 3 ) 3 O N(CH 3 ) 2 O H N O O N H N (H 3 C) 2 N O O N + (CH 3 ) 3 カラバル豆 physostigmine (=eserine) カラバル豆アセチルコリンエステラーゼ阻害縮瞳眼圧低下作用 neostigmine 合成抗コリンエステラーゼ阻害薬重傷筋無力症

36 エルゴタミン (ergotamine) インドール (indole) ライ麦に寄生する子嚢菌の麦角菌 (Claviceps purpurea) の産生するアルカロイド 36

37 植物起源の抗腫瘍物質 P25 アルキル化剤代謝拮抗剤抗腫瘍性抗生物質プラチナ化合物植物アルカロイド 37

カンプトテシン (camptothecin) P9,28 10 7 喜樹 ( 和名 : カンレンボク ) Camptotheca acuminata キノリン半化学合成代謝 SN-38

38 カンプトテシン (camptothecin) P9, 喜樹 ( 和名 : カンレンボク ) Camptotheca acuminata キノリン半化学合成代謝 SN-38 カンプトテシン中国原産の植物喜樹から抽出された植物アルカロイド (1966) イリノテカン ( 一般名 ) CPT-11 カンプトトポテシン ( 商品名ヤクルト第一 1994) Ⅰ 型トポイソメラーゼを阻害 38

39 ポドフィロトキシン (podophyllotoxin) P12,29 リグナン類 Podophyllim peltatum メギ科 39

40 タキソール (taxol) P10,27 パクリタキセル ( 一般名 ) Taxol タキソール ( 商品名ブリストル 1971) タキサン骨格 (C20) Taxus breviforia タイヘイヨウイチイ 40

ビンクリスチン (vincristine) P25 ビンカアルカロイド界 : 門 : 綱 : 目 : 科 : 属 : 種 : 植物界 Plantae 被子植物門 Magnoliophyta 双子葉植物綱 Magnoliopsida リンドウ目 Gentianales キョウチクトウ科 Apocynaceae ツルニチニチソウ属

41 ビンクリスチン (vincristine) P25 ビンカアルカロイド界 : 門 : 綱 : 目 : 科 : 属 : 種 : 植物界 Plantae 被子植物門 Magnoliophyta 双子葉植物綱 Magnoliopsida リンドウ目 Gentianales キョウチクトウ科 Apocynaceae ツルニチニチソウ属 ( ビンカ属 )Vinca ツルニチニチソウ Catharanthus roseus ( V. rosea) インドールビンクリスチン ( 一般名 ) VCR オンコビン ( 商品名日本化薬 1968) ツルニチニチソウビンクリスチン適応 : 白血病悪性リンパ腫小児腫瘍副作用 : 骨髄抑制腎毒性神経障害脱毛など 41

42 2012 年 4 月 12 日薬草園にて 42

毒性も強く下痢や嘔吐などの副作用を伴う現在は主に痛風に用いられるまた種なしスイカの作出にも用いられるイヌサフランは古代ギリシアローマの医者ディオスコリデスPedanios Dioscorides(40~90

43 痛風治療薬のコルヒチン P323 学名 Colchicum autumnale 和名イヌサフラントロポイドアルカロイド H 3 CO H 3 CO CH 3 O NHCOCH 3 O OCH 3 コルヒチン colchicine コルヒチン (colchicine) はユリ科のイヌサフラン Colchicum autumnale の種子や球根に含まれるアルカロイドであるリウマチや痛風の治療に用いられてきたが毒性も強く下痢や嘔吐などの副作用を伴う現在は主に痛風に用いられるまた種なしスイカの作出にも用いられるイヌサフランは古代ギリシアローマの医者ディオスコリデスPedanios Dioscorides(40~90 頃 ) の薬物誌において痛風に効くと記載されているその有効成分であるコルヒチンは1820 年にフランスの化学者 P.S. PeletierとJ. Caventonによって初めて分離されのちにアルカロイドの構造が明らかにされた 43

44 コルヒチン, ビンクリスチン, タキソールの作用メカニズム α チューブリン β チューブリン微少管の模式図 α,β チューブリン ( プロトフィラメント ) 重合脱重合微小管を安定化コルヒチンビンクリスチンタキソール紡錘体を形成する微小管は外径 25nm の中空の真直ぐな管であるこの管はチューブリン α と β の二量体が縦に連なったプロトフイラメントが 13 本横に並んで 1 本の管をつくったものである

45 45

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エフェドリン (ephedrine) P62 &358 H OH H H N CH3 CH 3 H H N CH3 CH 3 O H H N CH3 CH 3 (-)-ephedrine (Ephedra vulgaris) 麻黄 1885-1887

47 エフェドリン (ephedrine) P62 &358 H OH H H N CH3 CH 3 H H N CH3 CH 3 O H H N CH3 CH 3 (-)-ephedrine (Ephedra vulgaris) 麻黄年鎮咳薬気管支喘息 methanphetamine 覚醒薬 NDMA エクスタシー違法ドラッグフェネチルアミンアルカロイド H OH H N CH3 2 HO OH adrenaline(epinephrine) マオウ Ephedora sinica 47

48 キニーネ (quinine) P328 キノリン (quinoline) キヌクリジン (quinuclidine) P54 48

49 合成マラリア薬クロロキンプリマキン 49

50 レセルピン (reserpine) P50 インドジャボク Rauwolfia serpentina キョウチクトウ科根および根茎をラウオルフィアといいインドの民間薬で蛇の咬傷, 虫刺され, 子宮収縮, 老化防止等に用いる今日では, 血圧降下薬レセルピン, および不整脈治療薬アジマリンの原料である 50

51 強心配糖体のジギトキシンとジゴキシン P51 CH 3 O HO OH D-digitoxose (D-Dig) 心臓病のくすり OH CH 3 O O OH CH 3 O O CH 3 O O OH H H R H OH O R=H digitoxin R=OH digoxin ジギタリスの強心配糖体ゴマノハグサ科 O HO OH 矢毒学名 Digitalis purpurea

52 強心配糖体の心収縮力増強作用の機序 cardenolide ジギタリスストロファンツス bufadienolide 心筋ヒキガエルの毒漢薬センソ

53 テキスト 50 ページ 53

54 葉酸 Folic acid 補酵素 DNA 合成に必須 p- アミノ安息香酸メトトレキサート P12 Methotrexate 抗悪性腫瘍薬リウマチ治療グルタミン酸プテリジンボグリボース Voglibose P14 α- グルコシダーゼ阻害薬糖尿病治療薬糖類 54

55 Khellin ケリン Visnagin ビスナジン P13 & 253 クロモン類 (P253) Ammi majus の果実 ( セリ科 )

56 Dicoumarol ジクマロール P12 & 227 ムラサキウマゴヤシ ( アルファルファ ) ビタミン K に拮抗プロトロンビンセイヨウエビラハギ O OH OH OK CH 3 O O O O クマリン類 (P225) O O walfarin potassium ワルファリンカリウム抗凝固剤医薬品

57 Baicalein バイカレイン P13 & 232 フラボン類 (P232) H 3 C O N NH 2 COO H CH 3 O CH 3 アンレキサノクス amlexanox アレルギー性疾患治療薬医薬品 Scutellaria baicalensis コガネバナ ( シソ科 ) オウゴン ( 黄苓 ) Scutellaria Root

58 Genistein ゲニステイン P14 & 239 イソフラボン類 (P239) Glycin max ( マメ科 ) ダイズ

59 パスワード : 59

S_alka1.cdx

S_alka1.cdx 第 7 章アルカロイド Alkaloids P315 * 含窒素化合物で一般に生理作用が顕著なアミン性植物成分 ( 伝統的定義 ) * 植物成分中塩基性を有し酸と結合して塩をつくる性質のあるものを alkaloid (alkali + oides アルカリに似たもの ) と称する 1818 年マイスネル ( 薬剤師 ) Pyridine Alkaloids P330 P341