Microsoft PowerPoint - 5(防火_萩原)140307講演発表PPT萩原rev3

Similar documents
CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

としてまとめました 準備実験では 試験体の内外に 518 カ所の温度センサー ( 熱電対 ) と 41 カ所の熱流センサー ( 熱流束計 ) を設置して計測を行ったほか ビデオカメラを試験体内に 13 台 試験体外に 9 台設置して火災の様子を観察しました 2.2 準備実験より得られたこと木造 3

資料 5-1 防耐火に係る基準 資料の素案 第 1 章総則 ( 設計基準 ) 1.2 用語の定義 主要構造部 : 建築基準法第 2 条第 5 号による 耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 号による 準耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 の 2 号による 防火構造 不燃材料 : 建築基準法

資料 1-6 認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要 1 消防法令の概要 主な消防用設備等の設置基準消防用設備等の種別消火器屋内消火栓設備スプリンクラー設備自動火災報知設備消防機関へ通報する設備誘導灯 設置基準規模 構造にかかわらずすべて延べ面積 700 m2以上延べ面積 275 m2以

表 1 木材 製材 集成材 1) CLT の特徴 木材製材集成材 C L T 利点欠点 美観に優れる 異方性がある 触れた際に暖かみがある 繊維直交方向への力に対し 加工が容易ては著しく弱い 生産時に要するエネルギー 含水率の変化による膨張 が少ない収縮も異方性があり 繊維に 生育時に二酸化炭素を吸

消防用設備・機械器具等に係る最近の検討状況等

番号

さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

<4D F736F F D D FC897DF8F8091CF89CE8D5C91A294BB95CA8E9197BF81698AC888D594C5816A2E646F63>

Microsoft PowerPoint - 02.防火の概念と法令

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

平成25年中には、放火自殺者を除き火災による死者は1,278人

国土技術政策総合研究所 研究資料

東京都建築安全条例の見直しの考え方

湿式外断熱工法外壁の 防火性能評価に関する 基礎的研究

スライド 1

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

資料 2-3 障害者施設等の火災対策のあり方 ( 案 ) 1 認知症高齢者グループホーム火災を踏まえた課題 ⑴ 消防機関への通報について長崎市認知症高齢者グループホーム火災 ( 以下 本件火災 という ) では 自動火災報知設備の鳴動後に 火災通報装置の操作が行えず 施設からの通報がなされなかった

目次 ( )

都市防火研究と災害調査

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

スライド 1

東京都建築安全条例(昭和二十五年東京都条例第八十九号)新旧対照表(抄)

認知症高齢者グループホーム等火災対策に係る主な論点

< F31312D D D C9A927A95A889CE8DD >

< F31312D D D C9A927A95A889CE8DD >

第18期火災予防審議会地震対策部会

< F31312D D D C9A927A95A889CE8DD >

壁柱床はり屋根間仕切壁外壁耐力壁非耐力壁延焼のおそれのある部分延焼のおそれのある部分以外の部分最上階及び最上階から数えた階数が 2 以上で 4 以下の階1時間1時間1時間1時間1時間1時間1時間30 分 最上階から数えた階数が 5 以上で 14 以下の階2時間2時間1時間1時間2時間

第 3 倉庫に係る防火安全対策 1 目的この基準は 近年 倉庫が大規模化し また 作業所的要素が出てくるなど特殊化する傾向が見られることから 倉庫に係る出火防止 延焼拡大防止 避難の安全確保等に係る具体的基準を定めたものである 2 指導対象この基準に基づき指導する防火対象物の範囲は次に掲げるものとす

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

Microsoft PowerPoint - 【参考資料】参考資料集.pptx

第 3 章 1. の既往調査研究 1で紹介した 小規模多機能サービスに関する調査報告書 にも指摘されていたように 小規模多機能サービス事業所の整備にあたっては 建築基準法 消防法上の取り扱いの点で検討の余地を残している これに関して 2006 年 1 月に長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで発

工場立地法の概要

ポリカーボネート板に関する建築物の屋根への適用状況

Data RC 環境の時代

第2章 事務処理に関する審査指針

「(仮称)泉区高森2丁目プロジェクト」着工

強化 LVL 接合板および接合ピンを用いた木質構造フレームの開発 奈良県森林技術センター中田欣作 1. はじめに集成材を用いた木質構造で一般的に用いられている金物の代わりに スギ材単板を積層熱圧した強化 LVL を接合部材として用いる接合方法を開発した この接合方法では 集成材と接合板である強化 L

<4D F736F F F696E74202D F8AF991B B8A EA8EAE816A816990E096BE89EF8E5189C18ED C5816A>

Microsoft Word - kennsannzaikatuyousuisinnH24

スプリンクラー設備の設置を要しない有床診療所 病院の考え方 ( 案 ) 資料 入院の常態化の有無 免除される対象 常態的に患者が入院していないと判断 一日平均入院患者数が 1 人未満 常態的に患者が入院していない施設 (1) 入院患者数が一日平均 1 人未満となる 1~ 床の施設 ()

<4D F736F F D CF89CE90AB945C955D89BF8BC696B195FB96408F91>

Microsoft Word - 防団協Q&A最終案(完成版) docx

スライド 1

H30第1åłžå–‹å°”äº‰æ¥Ł_è¬łè©Łï¼‹å‹¥ç´Ž1㕆勥紎2ï¼›.xls

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 構造研究グループ荒木康弘 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~

消防法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について ( 参考資料 ) 別紙 1 1 改正理由 (1) 背景住宅宿泊事業法 ( 平成 9 年法律第 65 号 ) が平成 30 年 6 月 15 日に施行され 住宅宿泊事業に係る事前の届出が同年 3 月 15 日に開始された ( 住宅宿泊事業法の施行期

<4D F736F F D2081A196A78F578E738A58926E8DC490B695FB906A B95D2816A2E646F63>

Microsoft Word - 04 Ⅳ法基準等(修正Ⅱ)H28.4修正.docx

番号 特定共同住宅等の種類と必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等 二方向避難型特定共同住宅等である (1) 初期拡大抑制性能 ( その 2) 図面番 ア地階を除く階数が 5 以下のもの 消火器具屋外消火栓設備動力消防ポンプ設備 又は住戸用及び共同住宅用非常警報設備 イ地階を除く階数

<4D F736F F D208A4F D82C98AD682B782E990AB945C8AEE8F8089FC92E DC58F498CB495B6816A2E646F6378>

資料2 保育所における屋外階段設置要件について


<4D F736F F F696E74202D FC897DF8F8091CF89CE82C D E707074>

1 ソファモデル単体に対する消火抑制効果確認実験 4 面ともたれ壁 45cm 4 面ともたれ壁 45cm 右の実験区画で 放水量 12~18 リットル / 分 / ヘッド 1 個 放水圧力 0.13~0.022Mpa の要件の下 1 回の自由燃焼 7 回の消火実験を実施 実験結果概要 全てのケースに

保育所の設備及び運営に関する基準 保育室等 屋外 遊戯場 設備 ( 必置 ) 面積設備 ( 必置 ) 面積 調理室 便所 0 1 歳児 乳児室及びほふく室 医務室 2 歳以上児 保育室又は遊戯室 乳児室 ほふく室 3.3m2 / 人 保育室 遊戯室 1.98m2 / 人屋外遊戯場 近隣の都市公園を代

第 3 号様式 ( 第 3 条関係 ) 不燃化推進特定整備地区整備プログラム 品川区 豊町 丁目 二葉 3 4 丁目及び西大井 6 丁目地区 平成 25 年 11 月第 1 回変更認定平成 27 年 10 月第 2 回変更認定平成 29 年 3 月 品川区

目次に記述する項目を以下に示す なお目次にはページ番号を記載すること 1. 建築物の概要 1.1 建築物概要 1.2 付近案内図 1.3 建築計画概要 1.4 設備計画概要 2. 防災計画基本方針 2.1 防災計画上の特徴 2.2 敷地と道路 2.3 避難階の位置 2.4 防火区画 防煙区画 2.5

第2 令別表第1の取扱い

(100817)


Microsoft Word - 毛井首団地集会所設計における木造工法の検討

事前調査の方法参考資19 外壁リフォームの設計標準施工法標準施工法標準施工法リフォーム工法部分へのリフォーム工法外壁リフォームニチハMARCシステム11 適用条件 3) 適合地域 建築地域条件高さ (m) 13m 超料木胴縁工法RC造タイル外壁への施工高さ13mを超える1 外壁リフォームの設計 1)

都市計画変更素案に関する説明会 建築規制の変更に関する説明会 特定整備路線補助 29 号線 井 東 込区間 (JR 横須賀線 区界 ) 沿道 日時 : 平成 29 年 8 3 ( ) 場所 : 品川区 伊藤 学校 前方右側に手話通訳者を配置しております 必要な方はお近くの席にお移り願います 1 本日

横浜市のマンション 耐震化補助制度について

26-高知県自治会館.indd

民泊の安全措置の手引き ~ 住宅宿泊事業法における民泊の適正な事業実施のために ~ 平成 29 年 12 月 26 日 ( 平成 30 年 3 月 29 日改訂 ) 国土交通省住宅局建築指導課

松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例施行規則平成 26 年 10 月 27 日規則第 65 号 ( 趣旨 ) 第 1 条この規則は, 松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例 ( 平成 26 年条例第 52 号 以下 条例 という ) の施行に関し必要な事

2

<8CA9967B CE8D5C91A295578F80945B82DC82E8907D2E6D6364>

設 機能の見直しハード面の効率化財源確保1-3. 再配置パターン ( 手法 ) の考え方 再配置計画の検討に向けて 公共施設の再配置を う場合の基本的なパターン ( 手法 ) について整理し それらの効果についても確認していきます 施設の再配置にあたっては 厳しい財政状況の中 人口が減少傾向にあるこ

ホテル 旅館等における夜間の自衛消防訓練マニュアル 別添 1 目的このマニュアルは, ホテル 旅館等において夜間火災が発生した場合に, 宿泊者の安全確保を図るために, 自衛消防組織等が対応すべき事項を示し, 防火管理体制の充実を図ることを目的とする 2 対象このマニュアルの対象は, 新たな防火基準適

Microsoft Word - 【確定】(冊子)2701_省令準耐火構造Q&A

PowerPoint プレゼンテーション

第 7 章鹿児島県と連携した耐震改修促進法による指導及び助言等 国の基本方針では 所管行政庁はすべての特定建築物の所有者に対して法に基づく指導 助言を実施するよう努めるとともに 指導に従わない者に対しては必要な指示を行い その指示に従わなかったときは 公表すべきであるとしている なお 指示 公表や建

目次 方針策定の背景 1-1. 用途地域指定の基本的な考え方 1-2. 住居系 [ 第一種低層住居専用地域 ] [ 第二種低層住居専用地域 ] [ 第一種中高層住居専用地域 ] [ 第二種中高層住居専用地域 ] [ 第一種住居地域 ] [ 第二種住居地域 ] [ 準住居地域 ] [ 田園住居地域 ]

1600 mm 1200 mm 1200 mm 1600 mm 2200 mm 1200 mm 大阪市建築基準法取扱い要領 2-30 特別避難階段の付室の取扱い 令第 123 条第 3 項 (1) 付室の最小幅員下記のような特別避難階段の付室内の最小幅員は 法定の廊下幅及び階段幅以上とする 非常用

防ぐ目的で防火規制がつくられた 1666 年ロンドン大火 1871 年シカゴ大火 1906 年サンフランシスコ地震火災などを受け 米国の保険会社の協会が 建築物の火災安全性を確保するための技術基準として 建築基準を体系的に整備する活動が開始された このような防火基準の作成活動は ヨーロッパや日本にも

平成23年度事例集04



第 6 内装制限 防火材料 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律 ( 平成 11 年法律第 87 号 ) が平成 12 年 4 月 1 日に施行されたことに伴い これまでの建設省等の通達等の取扱いについては建築主事等 の執務上の取扱いによることとなった 1 防火材料 (1) 不燃材

PDF用.indd

報告書_表紙.indd

Microsoft Word - 【最終版】190313_Park wood 高森竣工 0312 FINAL


基本方針

YP_表紙cc_1804_4c

3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 計画修繕は 定期点検等で明らかになった建物の劣化の補修のため 調査 診断 修繕計画の作成 工事の実施へと 区分所有者の合意を形成しつつ 進められる 当勉強会で実施したヒアリングより 管理会社による点検 定期点検は 1 回 / 年の頻度で行っている 目視

PowerPoint プレゼンテーション

1 整備目標 方針 地区名大井五 七丁目 西大井二 三 四丁目地区位置東京都品川区大井五 七丁目 西大井二 三 四丁目の全域地区の現況 課題 現状 当地区は 品川区の南に位置しており 北側に滝王子通り 東側に補助 28 号線 ( 池上通り ) 西側にJR 東海道新幹線及びJR 横須賀線 南側に大田区

序章 計画改定の背景 足立区では 昭和 57 年 3 月に 大地震による火災から区民の生命と財産を守る た め 足立区防災まちづくり基本計画 を策定し この計画に基づき各種事業を展開し てきました その後 平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神 淡路大震災では 密集市街地に被害が 集中し 改め

2016年9月●日

H30:HP小中学校施設の耐震化の状況・学校別一覧表

83

認可保育所の整備について

建築基準法の一部を改正する法律 の概要 ( 平成 26 年法律第 54 号 ) より合理的かつ実効性の高い建築基準制度を構築するため 木造建築関連基準の見直し 構造計算適合性判定制度の見直し 容積率制限の合理化 建築物の事故等に対する調査体制の強化等の所要の措置を講ずる 法改正の必要性 建築物におい

<4D F736F F F696E74202D E518D6C8E9197BF A E8F5A91EE975C8E5A814590C E88AEE8F80>

<4D F736F F F696E74202D CC8A4F95C CF89CE8FA EA D322E >

Transcription:

防火研究グループ萩原一郎 1 目次 Ⅰ はじめに Ⅱ 研究の背景 Ⅲ 中層大規模木造建築の火災安全 Ⅳ 既存建築物の火災安全 Ⅴ 今後取り組むべき課題 Ⅵ おわりに 2

Ⅰ はじめに 大規模の火災被害 東日本大震災 2011.3.11 火災件数 371 件地震火災 212 件津波火災 159 件 火災による死者 7 人 日常的に発生する火災 ( 平成 24 年中 ) 出火件数 44,189 件内建物火災 25,583 件建物火災による死者 1,323 人内住宅火災 1,017 人 3 Ⅱ 研究の背景 1 具体的な火災被害の軽減 市街地大火 耐火建築物の火災 ビル火災 ( 煙 ) による死者 法令の整備 規制の強化 2 防火設計と性能規定化 経験則から工学へ 規制の合理化 3 新たな危険やニーズへの対応 防火研究の流れ 経験則 現象の理解 シミュレーション技術性能評価 性能設計火災リスク 4

性能検証の例避難安全性能の検証 煙にさらされずに避難できること 在館者人数 避難経路 避難開始時間 + 歩行時間 + 出口の通過時間 避難計画出口の数や配置など 設計火源発生する煙の予測 煙の降下時間 煙制御の計画排煙設備 防煙区画など 5 防火の目的 出火防止 避難安全 倒壊防止 市街地火災の防止消防活動支援 材料部材室 区画建築物地域 都市 着火性状燃焼性状ガス有害性 火災性状予測 難燃化技術 火災拡大 延焼防止技術 避難困難者の避難計画避難安全性能評価 倒壊防止技術 放火対策 広域避難対策 出火原因調査屋内延焼モデル市街地延焼モデル 消防活動の性能評価 煙性状予測 制御技術 都市レベルの防火対策 総合防火設計 試験方法 火災外力データベースリスクによる総合評価性能評価の試験技術 データの信頼性確保 防火研究分野と主な課題 国際標準化対応 6

防火関連の主な研究課題 防火材料 材料の燃焼時の特性を把握する試験技術 試験方法の改善 新しい材料の燃焼特性を適切に評価できるか? 構造耐火 耐火性能を検証するための技術 火災性状や部材への入射熱の予測 防火区画の性能確保など 木造建築物の耐火性能の確保 市街地火災 市街地延焼シミュレーションモデル 火の粉の飛散性状の予測 火災安全設計 防火基準の性能規定化の促進 火災リスクの評価など 7 H25 実施の研究課題 構造耐火 多様な加熱強度を被る構造体の保有耐火時間の等価性評価に関する研究 (H25 26) 加熱条件や寸法の変化および吸発熱性に応じた耐火性能の推定手法に関する研究 (H25 26) 既存建築ストックの再生 活用を促進するための技術及び適用システムに関する研究 (PCM 補修 )(H23 25) 木造 木材の利用促進に資する中層 大規模木造建築物の設計 評価法の開発 ( サブテーマ : 防耐火上の基準見直しのための技術資料の整備 H23 25) 市街地火災 市街地防火を目指した火の粉の火持ち性状に関する研究 (H24 25) 火災安全設計 緊急性が高い既存不適格建築物の火災安全性向上技術の開発 (H23 25) グリーンビルディングの火災安全上の課題に関する調査 (H25) 8

Ⅲ 中層大規模木造建築物の火災安全 大規模木造建築物に対する防火規制 過去の市街地大火の経験 近年 欧米では中層木造が実現 木造利用 木造建築物への関心 公共建築物における木材利用の促進に関する法律 2010 新しい木造技術 & 規制の見直し 木材の利用促進に資する中層 大規模木造建築物の設計 評価法の開発 9 海外においても大規模木造は制限されてきたしかし 現在は中層木造が実現可能に 1) 木造建築物の防火基準 階数 : 概ね4 階程度 用途 : 共同住宅 ホテル 事務所 ( 病院などの階数は低く制限 ) 耐火性能 : 1 時間 < 日本の準耐火性能 > 消防 : スプリンクラーの評価 義務付け 内装 : 不燃化 ( 木部が見えない ) 木質外装 : 使用範囲の制限 ( 延焼防止 放水可能 ) 外壁開口部 : 面積制限 ( 隣棟への延焼防止 ) 10

2) 木質部材の耐火性能 メンブレン防火被覆 : せっこうボードなどで被覆 木が見えない 燃えしろ設計 : 炭化により遅い燃え進み 大きな断面 燃えしろ 必要断面 防火被覆 11 木質部材の炭化性状 CLT パネルと LVB LVL パネルの加熱試験 CLT パネル (Cross Laminated Timber Panel) 比較的厚い断面の板を繊維の直交方向に貼り合わせたもの 炭化速度などの基礎的なデータを収集 試験体のパラメータ壁厚 ラミナ厚 樹種 接着剤の種類 防火被覆の有無など 12

加熱試験の結果 炭化状況 135 75 ( スギ 27mm 5 層 API 接着剤 ) 135 96 135 84 135 79 パネル 1(LVB, スギ ) パネル 2(LVB, カラマツ ) ( カラマツ19.3mm 7 層 API 接着剤 ) 135 90 9 5 135 82 8 135 60 パネル 5(LVB, スギ ) パネル 6(LVB, カラマツ ) ( スギ 19.3mm 7 層 RF 接着剤 ) CLT 一般部炭化図 (90 分加熱 ) LVL LVB 一般部炭化図 (120 分加熱 ) 13 炭化速度 80 CLTパネルスギ 防火被覆なし : 70 60 炭化速度が約 0. 7mm/ 分 50 40 構造用集成材とほぼ同じ 30 20 CLTパネルスギ 防火被覆あり : 10 0 炭化速度が約 0.4mm/ 分に低下炭化開始は20 30 分遅い 100 90 LVBパネルスギ カラマツ 80 炭化速度は約 0.6mm/ 分 70 60 CLT の方が炭化層が脱落しやすい 50 40 CLTパネルは構造用集成材と 30 20 同じ炭化速度を適用可能 10 0 防火被覆の効果も考慮可能 加熱熱面からの深さ (mm) 加熱面からのの深さ (mm) 100 90 燃えしろ試験体 防火被覆試験体 炭化速度約 0.7mm/ 分 炭化速度約 0.4mm/ 分 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 260 到達時間 ( 分 ) スギ LVB 試験体 カラマツ LVB 試験体 炭化速度約 0.6mm/ 分 炭化速度約 0.55mm/ 分 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 260 到達時間 (min) 14

載荷加熱試験 崩壊荷重の 1/3,1/4,1/6 で試験 直交方向は荷重を支持しない 2 1.8 1.6 軸方向変位は 一定に増加する 1.4 のではなく増加しない時間がある 1.2 1 0.8 直交層は防火被覆の役割 0.6 0.4 0.2 直交層を燃えしろ設計に反映 0 ラミナが少ないものは 防火被覆が必要になる場合も 軸方向変位 (mm) CLT(W 1) CLT(W 2) CLT(W 3) CLT(W 4) 0 20 40 60 80 100 120 時間 ( 分 ) LVL 15 合わせ部材の炭化性状 合わせ部材の炭化性状 中断面の部材を組合せた場合について 燃えしろ設計の適用 実験から5mmを越えると 隙間の炭化が進む 部材の隙間が5mmより狭い場合 一体の部材として燃えしろ設計を適用することが可能 a 0mm b 3mm 部材ごとに燃えしろを設定 1 つの部材として燃えしろを設定 c 5mm d 20mm 合わせ部材の炭化性状 16

3) 木質内装空間の火災性状 同じ内装の仕上げでも 空間規模の違いが火災性状に及ぼす影響を把握 仕様 1 天井 : 不燃 壁 : 木材 仕様 2 天井 : 木材 壁 : 木材 小規模の空間仕様 1と2 どちらもFO 発生 教室規模の空間仕様 1 天井不燃はFOに至らず仕様 2でも火災成長が遅い 木質内装空間の性能評価ができると 安全に木材を利用できる範囲を拡大できる可能性 小規模空間 天井高さ 2.3m 面積約 7.2 m2 教室規模の空間 天井高さ 2.79m 面積約 58.4 m2 17 4) 木造 3 階建て学校の実大火災実験目的 : 実大火災実験 部材実験 教室規模実験等を実施し 木造 3 階建て学校に必要とされる火災安全性を把握する 18

予備実験 H24.2.22 準備実験 H24.11.25 本実験 H25.10.20 外観 構造 1 時間の準耐火構造 ( 現行は耐火構造を要求 ) 内装 壁 : 木質仕上げ 壁 : 不燃材料 壁 : 木質仕上げ 天井 : 木質仕上げ 天井 : 不燃材料 天井 : 準不燃材料 庇 ハ ルコニー なし あり なし 目的 基礎的な知見を得る 防火対策の効果確認 基準案の検証 19 予備実験 2012.2.22 実験結果 : 1 出火室は短時間にフラッシュオーバーが発生 2 噴出火炎による上階への延焼約 30 分後には3 層が同時に延焼 3 防火壁を越えた延焼 4 倒壊 96 分後には 防火壁が倒壊 122 分後には全て倒壊 課題 : 早期の上階延焼防止 防火壁を越えた延焼の防止など 噴出火炎による上階延焼 (6 分後 ) 3 層が同時に燃焼 (33 分後 ) 20

準備実験 2012.11.25 実験結果 : 1 内装不燃のため局所的な燃焼に留まる着火後 50 分に再着火 2 出火室は89 分後にフラッシュオーバー噴出火炎では上階延焼はせず 3 床の燃抜けで129 分後に2 階へ延焼 89 分後にフラッシュオーバー 3 噴出火炎により139 分後に3 階へ延焼 4 消火後も倒壊なし結果 : 内装の不燃化 バルコニー 庇による早期の上階延焼防止の効果あり 防火壁 階段区画には延焼なし 139 分後 3 階に延焼 基準化の検討 21 本実験 2013.10.20 実験結果 : 1 火災が局所的な燃焼に留まる着火 20 分後に再着火 2 出火室は66 分後にフラッシュオーバー 3 噴出火炎により82 分後に2 階へ延焼フラッシュオーバー 68 分後 4 噴出火炎により87 分後に3 階へ延焼散水を断続的に行い燃焼を制御 4155 分後実験終了 消火後も倒壊なし結果 : 天井不燃化による早期の延焼拡大抑制 階段区画 防火壁を越えた延焼なし 試験体の倒壊なし 2 階から噴出火炎 83 分後 基準としてとりまとめ 22

Ⅵ 既存建築物の火災安全 背景と目的 防火関連規定は規制強化を繰り返してきた結果 既存不適格の建築物が発生 竪穴区画の既存不適格の可能性あり約 10 万棟 火災安全上の問題があるが 防火改修が進まない 適切な防火改修が実施しやすい環境を整える例えば 高性能 高機能の対策付加 ソフトの対策など高機能の対策付加 目的 : 既存不適格建築物の火災安全性を向上させるため 適切な防火改修などを選択 実施するために必要な総合的な評価手法の開発 23 1) 研究開発の具体的計画 (1) 防火規定に関する既存不適格の実態調査 (2) 既存不適格建築物に特徴的な火災危険性の類型化 特に竪穴区画に注目し 改修パターンを示す (3) 既存不適格建築物の火災安全性能評価手法の開発 実態に基づく初期火災性状 煙性状の予測など 維持管理の状況 可燃物 在館者の管理など 24

火災安全上の問題があると思われるケース EV EV 階段が区画されていない EV 階段の踊り場が廊下の一部で階段が区画できない EV 階段の踊り場が廊下の一部で階段が区画できない テナント区画により 2 方向避難が確保されていない EV 25 高感度の煙感知器 早期の避難開始 避難誘導 遮煙スクリーン 竪穴区画吹抜け 可燃物の管理 < 改修パターンの例 > a) 高性能 高機能のハードの対策を付加 b) ハード対策の不備をソフト対策で補う c) その他 26

火災安全性能評価手法の開発 可燃物配置が異なる場合の火災性状予測 可燃物の量が同じでも配置により区画内の温度分布が異なる 可燃物配置を評価 アルコールパン (BxW:0.5x0.5m) 区画内寸 (BxWxH: WH 2.65x2.65x2.65m) 60 B a B a 50 B b B b B c B c 度40 B d B d B e B e 30 20 10 0 0 5 10 0 5 10 Time [min] Time [min] 27 Temperaetur re [K] 実験 1 実験 2 温昇 実験 1 実験 2 上Ⅴ 今後取り組む課題 1 中小規模建築物における火災被害の軽減大規模 高層の建築物は火災リスクを減らすために何重にも防火対策小規模の建築物は火災リスクが高い? 2 持続可能な社会に対応した防火対策内装や外装への安全な木材利用グリーンビルディングの火災安全 28

Ⅴ 今後取り組む課題 ( 続き ) 3 避難弱者への対応 自力での避難な困難な人の避難安全 避難安全のバリアフリー エレベータ利用避難など 4 防火基準の更なる性能規定化性能検証法の改善 拡充地震後の建築物の火災安全 防火対策の耐震化 市街地火災と広域避難など 29 Ⅵ おわりに 火災安全に関する研究成果が 新しい空間の実現に貢献 その陰でその恩恵を受けていない建築物も 災害は弱いところに集中 研究は先回りして備えておくことが重要 30