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1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

Microsoft Word - 28概況(所得・貯蓄)(170929)(全体版・正)

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

表紙

目次 第 1 章調査概要 調査の目的 調査の方法... 1 第 2 章分析内容 世帯主年齢階級別の世帯数割合 世帯主年齢階級別の等価可処分所得 世帯主年齢階級別の等価所得 拠出金の内訳 世帯主年齢階級別

01 公的年金の受給状況

平成25年 国民生活基礎調査【所得票】 結果表一覧(案)

平成29年版高齢社会白書(全体版)

平成27年版高齢社会白書(全体版)


02世帯

相対的貧困率等に関する調査分析結果について

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ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

人口動態から見た2025年問題

相対的貧困率の動向: 2006, 2009, 2012年

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

Microsoft Word 結果の概要(1世帯)

資料 7 1 人口動態と子どもの世帯 流山市人口統計資料 (1) 総人口と年少人口の推移流山市の人口は 平成 24 年 4 月 1 日現在 166,924 人で平成 19 年から増加傾向で推移しています 人口増加に伴い 年尐人口 (15 歳未満 ) 及び年尐人口割合も上昇傾向となっています ( 人

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

長期失業者の求職活動と就業意識

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

USA1_米国Report

生活福祉研レポートの雛形

季刊家計経済研究 2003 SPRING No 万円 1世帯当たり平均可処分所得金額は 187.4万円 世帯人員1人当たり平均所得金額は 図表-9 高齢者世帯の平均収入の伸びに対する稼働所得 及び公的年金 恩給等の寄与率 212.3万円である 平均世帯人員は3.23人 平 均有業人員

私的な資産形成に関する将来予測・政策シミュレーション分析

平成27年国勢調査世帯構造等基本集計結果の概要

税・社会保障等を通じた受益と負担について

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

高齢者世帯の経済的余力を検証―社会保障と税の一体改革を進めるに当たって―

公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

Ⅰ 調査の概要 1. 調査の目的 本調査は 今後の公的年金制度について議論を行うにあたって 自営業者 被用者 非就業者を通じた横断的な所得に関する実態を総合的に把握し その議論に資する基礎資料を得ることを目的とする なお 本調査は 平成 22 年公的年金加入状況等調査 の特別調査として 当該調査の調

シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

長野県の少子化の現状と課題

NIRA 日本経済の中期展望に関する研究会 家計に眠る過剰貯蓄国民生活の質の向上には 貯蓄から消費へ という発想が不可欠 エグゼクティブサマリー 貯蓄から消費へ これが本報告書のキーワードである 政府がこれまで主導してきた 貯蓄から投資へ と両立しうるコンセプトであるが 着眼点がやや異なる すなわち

Microsoft Word - 概要.doc

冷え込む韓国のシニア消費

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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スライド 1

平成28年版高齢社会白書(概要版)

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社会保障改革に関するこれまでの主な議論


別紙2

スライド 1

Microsoft Word - 杉山 年金

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2015年度結果-

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平成13年8月29日

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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( ウ ) 年齢別 年齢が高くなるほど 十分に反映されている まあまあ反映されている の割合が高くなる傾向があり 2 0 歳代 では 十分に反映されている まあまあ反映されている の合計が17.3% ですが 70 歳以上 では40.6% となっています

 第1節 国における子育て環境の現状と今後の課題         

表 1 年齢別持ち家率 平成 25 年平成 20 年 25 歳未満 ~29 歳 ~34 歳 ~39 歳 ~44 歳 ~49 歳 ~54 歳

Microsoft Word - rp1410b(水野).docx

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

本章のまとめ 第 4 章当市の人口推移 本章のまとめ 現在までの人口推移は以下のとおりである 1. 人口の減少当市の人口は平成 23 年 7 月 (153,558 人 ) を頂点に減少へ転じた 平成 27 年 1 月 1 日時点の人口は 151,412 人である 2. 人口増減の傾向年齢 3 区分で

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

2016 年家計調査年報 家計収支編 家計消費傾向と品目別支出金額調査報告書 2017 年 9 月 東松島市商工会

親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

PowerPoint プレゼンテーション

平成26年全国消費実態調査 所得分布等に関する結果 結果の概要

要 旨 2009 年の年金財政検証によると 標準的な厚生年金世帯 であれば 世代間格差はあるものの 将来世代においても 平均寿命 (60 歳時点の平均余命 ) まで生存すれば 負担した保険料の 2.3 倍の給付が受けられる見通しであることが明らかにされた これはこの倍率の分母である負担に事業主負担が

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

厚生年金の適用拡大を進めよ|第一生命経済研究所|星野卓也

Microsoft Word 寄付アンケート記者報告.docx

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

親と同居の壮年未婚者 2014 年

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word 「100年人生を考えようLAB」アンケート調査 ニュースレター.docx

参考資料

図表目次 ([ ] 内は詳細結果表の番号 ) 表 1 貯蓄現在高の推移... 4 [8-4 表,8-3 表 ] 図 1 貯蓄現在高階級別世帯分布... 5 [8-1 表,8-3 表 ] 表 2 貯蓄の種類別貯蓄現在高の推移... 6 [8-4 表 ] 図 2 貯蓄の種類別貯蓄現在高及び構成比...

平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(概要版)2/4

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2. 特例水準解消後の年金額以下では 特例水準の段階的な解消による年金額の変化を確認する なお 特例水準の解消により実際に引き下げられる額については 法律で定められた計算方法により年金額を計算することに加え 端数処理等の理由により203 年 9 月の年金額に所定の減額率を乗じた額と完全に一致するもの

Microsoft PowerPoint - 老後の年金格差(前半)HP用

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共働き・子育て世帯の消費実態(1)-少子化でも世帯数は増加、収入減で消費抑制、貯蓄増と保険離れ

高齢期の所得格差をどう考えるか がちな特徴を併せ持つ世帯の存在には注意が必要である これらの特徴に該当する可能性が高い世帯は 高齢単身世帯 とりわけ女性の単身世帯である 実際 高齢単身女性の所得は他の世帯と比較して低所得に偏る傾向がある しかし 高齢の女性が就業しようにも現実には困難な場合が多く 就

( 人口のピークは 225 年に ) 平成 27(215) 年国勢調査による東京の人口は 1,352 万人となり 前回の平成 22(21) 年国勢調査 (1,316 万人 ) と比べ 約 36 万人増加した 一方 全国の人口は1 億 2,79 万人となり 前回の1 億 2,86 万人から約 96 万

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その 1 の財政状況は? 平成 28 年度一般会計決算からの財政状況を説明します 1 平成 28 年度の主なお金の使い道は? その他の経費 212 億 93 万円 扶助費 82 億 3,606 万円 16.7% 43.0% 義務的経費 219 億 7,332 万円 人件費 44.5% 79 億 8,

スライド 1

PDF化【公表】290606報告書(横計入)

ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

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平成 22 年国勢調査産業等基本集計結果 ( 神奈川県の概要 ) 平成 22 年 10 月 1 日現在で実施された 平成 22 年国勢調査 ( 以下 22 年調査 という ) の産業等基本集計結果が平成 24 年 4 月 24 日に総務省統計局から公表されました 産業等基本集計は 人口の労働力状態

平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

78 成蹊大学経済学部論集第 44 巻第 1 号 (2013 年 7 月 ) % % 40%

Transcription:

経済トレンド 高齢者世帯の収入と貯蓄 ~ 平均像では経済的余裕はあるが格差は大 ~ 経済調査部 ( 現政策研究部 ) 近江澤猛 ( 要旨 ) 65 歳以上の高齢者がいる世帯の割合は 1980 年には 24.0% だったが 少子高齢化の進展により 2009 年には 41.9% まで上昇している さらに かつては高齢者のいる世帯といえば 三世代世帯 だったが 現在では 高齢夫婦のみ世帯 また 高齢単身世帯 が 三世代世帯 を上回る 各世帯の可処分所得を世帯人数で調整した等価可処分所得で世帯員一人当たりの効用水準をみていくと 三世代世帯の可処分所得が最も高く 316.5 万円である 逆に最も低いのが 女性単身世帯の 152.3 万円 世帯人数が多いほど有職者数も多く 稼働所得が等価可処分所得の押上げ要因となっている 高齢無職世帯では夫婦のみ世帯 単身世帯とも毎月の収支は赤字である 夫婦のみ無職世帯では収入が大きいほど消費支出も大きく 結果赤字額も大きくなっている 一方 夫婦のみ無職世帯の約 4 割が年間収入 350 万円以上だが この層は有職世帯と同水準の消費をしている 等価消費支出で2 人以上の現役勤労世帯と比較しても 夫婦のみ無職世帯は実質的に 50 歳代世帯並の消費水準にあると言え 平均的には比較的高い生活水準にあることがわかる 貯蓄を取り崩しながら生活する無職の高齢世帯が多いが 平均的には世帯主の平均余命を大きく超える期間分の毎月の赤字額をまかなうのに十分な貯えがある もっとも高齢世帯では格差が大きく 特に単身世帯で生活保護を受ける世帯は1 割を超えている 夫婦のみ世帯でも貯蓄残高の分布には大きな格差があり 貯蓄額 300 万円未満が 11.4% であるなど 貯蓄を取り崩して生活するには心許ない世帯も少なくない 世帯規模の縮小や高齢化の進展によって 経済的なリスクを抱えた世帯は増加することが予想され セーフティーネットとしての社会保障制度は一層重要になると考えられる 高齢者を支える現役世代の負担は重くなっている一方 比較的余裕のある高齢者が多いことも事実だ 各世代の経済状況を考慮しつつ 世代内 世代間で存在する格差へ配慮していくことが必要だろう 1. 高齢者のいる世帯は全世帯の 40% 超急速な高齢化で高齢者数は増加し 人口に占める高齢者の割合も上昇している さらに 未婚率の上昇や親と同居する子ども夫婦の減少などにより 生活の基本単位である世帯の構成も大きく変化している こうした変化の中 高齢者の置かれる状況も変化している 2012 年には団塊の世代が 65 歳を迎え 今後ますますウェイトが大きくなる高齢者について 本レポートでは 収入 支出 貯蓄の面からみていきたい まず 生活の基本単位となる世帯について 高齢者がどのような世帯に属し生活をしているかをみてみる 09 年の国民生活基礎調査によるとわが国の世帯数は約 4,800 万世帯である 人口が減少する中 世帯数は増加を続けている 総世帯に占める 65 歳以上の者のいる世帯の割合は約 30 年前の 1980 年には 24.0% で約 4 世帯に1 世帯の割合だっ

たが 2009 年には 41.9% となり 全世帯の4 割を越えるところまで増加している ( 資料 1) 資料 1 高齢者 (65 歳以上 ) のいる世帯 ( 千世帯 ) 50,000 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 100% 80% 60% 40% 20% 0% 1975 1980 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 1975 1986 1992 1998 高齢者のいる世帯その他世帯 2002 高齢者のいる世帯割合 ( 右軸 ) 2004 2006 2008 その他の世帯 三世代世帯 一人親と未婚の子のみの世帯 夫婦と未婚の子のみの世帯 夫婦のみの世帯 単身世帯 (%) 45 ( 出所 ) 厚生労働省 国民生活基礎調査 国立社会保障 人口問題研究所 2. 高齢者のいる世帯多数派は 三世代世帯 から 夫婦のみ世帯 単身世帯 へ続いて 高齢者のいる世帯について国民生活基礎調査を用いて 世帯類型別に推移をみてみる 資料 2にあるように 1975 年時点で三世代世帯は高齢者のいる世帯全体の 54.4% を占め 高齢者のいる世帯 といえば三世代世帯がイメージされた その後 三世代世帯の割合は低下し 代わって増加してきたのが夫婦のみの世帯と単身世帯であった 2001 年には夫婦のみの世帯が 05 年には単身世帯が三世代世帯の数を上回り 09 年には夫婦のみ世帯が 29.8% 単身世 資料 2 高齢者 (65 歳以上 ) のいる世帯の世帯類型別内訳 ( 出所 ) 厚生労働省 国民生活基礎調査 40 35 30 25 20 帯が 23.0% と 三世代世帯の 17.5% を大幅に上回り多数派となっている その他には夫婦と未婚の子のみの世帯 ひとり親と未婚の子のみの世帯も徐々に割合が上昇している この変化の背景にあるのは 未婚 晩婚化 離婚の増加 親との別居など 価値観やライフスタイルの変化であり 少子高齢化とともに 高齢者の生活する環境も大きく変化してきたと言える 3. 有職者が多い世帯ほど収入面では余裕がある次に 高齢者のいる世帯の収入状況をみていきたい 国民生活基礎調査を用いて世帯類型ごとに世帯収入をみていくと 単身世帯の 189.2 万円から三世代世帯の 904.5 万円までその差は大きい そもそも世帯人数が三世代世帯では平均 5.09 人と差が大きいためで 世帯収入額では単純に比較できない そこで 世帯収入から税金や社会保険料の支払を差引き 社会保障給付を加えた可処分所得を 世帯人数で調整した等価可処分所得 ( 注 1) を用いて比較した 世帯類型別では三世代世帯の可処分所得が最も高く 316.5 万円である 夫婦と未婚の子のみの世帯が 276.1 万円 ひとり親と未婚の子のみの世帯が 245.4 万円 夫婦のみの世帯が 239.0 万円 男の単身世帯が 199.9 万円 女の単身世帯が 152.3 万円という結果となる ( 資料 3) 収入の内訳をみると 単身世帯では収入のほとんどが公的年金 恩給だが 有職人員が多い世帯では稼動所得の占める割合が大きい そのため 三世代世帯などのように子ども夫婦と同居し生計を一にするような世帯では 世帯内で扶養される形で比較的余裕のある生活を送ることのできる高齢者が多いと推察される さらに 高齢者のいる世帯の等価可処分所得の水準を現役世代との比較でみていく 現役世代では世帯主の年齢が上がるに連れて 世帯収入 可処分所得は上昇する 世帯人数は 40 歳代の 3.30 人をピークに 50 歳代では減少する その結果 等価可処分所得は世帯主の年齢とともに大きく上昇する 高齢者の等価可処分所得の水準を現役世代の世帯に対応させると 三世代

資料 3 高齢者のいる世帯 世帯類型別収入の状況 1 世帯当たり世帯人員 1 人当たり平均可処平均可処平均所得分所得金分所得金金額額額 平均所得金額 等価可処分所得 平均世帯人員 平均有職人員 ( 万円 ) ( 万円 ) ( 万円 ) ( 万円 ) ( 万円 ) ( 人 ) ( 人 ) 総数 483.5 382.2 190.5 156.7 239.8 2.54 1.03 単身世帯 189.2 163.7 189.2 163.7 163.7 1.00 0.15 男の単身世帯 234.2 199.9 234.2 199.9 199.9 1.00 0.21 女の単身世帯 174.2 152.3 174.2 152.3 152.3 1.00 0.12 核家族世帯 453.8 372.7 199.6 165.2 247.4 2.27 0.81 夫婦のみの世帯 403.9 338.0 202.0 169.0 239.0 2.00 0.49 夫婦と未婚の子のみの世帯 607.8 490.8 192.5 155.8 276.1 3.16 1.56 ひとり親と未婚の子のみの世帯 445.0 360.6 205.9 169.3 245.4 2.16 1.12 三世代世帯 904.5 714.1 177.7 140.4 316.5 5.09 2.58 参考 : 世帯主の年齢階級別 29 歳以下 298.9 233.1 174.8 147.9 178.3 1.71 1.01 30~39 歳 562.4 452.7 183.1 148.1 258.4 3.07 1.42 40~49 歳 684.3 529.6 207.4 162.9 291.5 3.30 1.62 50~59 歳 765.5 572.9 254.7 195.9 330.2 3.01 2.01 ( 出所 ) 厚生労働省 平成 21 年国民生活基礎調査 から第一生命経済研究所作成 世帯が 50 歳代の世帯 夫婦のみ世帯など核家族世帯が 30 から 40 歳代の世帯 単身世帯が 20 歳代世帯に近い水準にある ( 注 1) 等価可処分所得とは世帯員一人当たりの効用水準を表すために世帯可処分所得を世帯人数で調整したもので 相対的貧困の計測にも用いられる概念 世帯可処分所得を世帯人数の平方根で割ったもの 4. 高齢者世帯の消費 (1) 高齢夫婦のみの世帯は収入が多いほど赤字額が大今度は 家計調査を用いて支出面から高齢者の生活水準をみてみたい ( 資料 4) まず 高齢者のいる世帯に占める割合が最も大きい夫婦のみ世帯の支出状況についてみていく ( 注 2) 高齢者世帯は公的年金を主な収入としている場合が多く 有職者のいる世帯とでは収入 支出とも大きな差があると予想される そこで 世帯主の職業の有無 また 無職世帯については年間収入が階層分類されたデータを用いた 構成比では世帯主が有職である世帯が 23.3% 無職世帯が 76.7%( 年間収入が 250 万円未満が 9.6% 250~349 万円が 25.2% 350 万円以上が 41.9%) である 先程同様に 世帯ごとの消費支出額を世帯人数で調整した等価消費支出でみていく 世帯主の職業の有無で比較すると 有職世帯のほうが 2 万円程度支出額が大きい もっとも 無職世帯でも収入によって 等価消費支出に差があり 年間収入 250 万円未満の世帯と 350 万円以上の世帯では 一月に8 万円弱もの差になる また 世帯主が無職で年間収入 350 万円以上の世帯では 世帯主が職業を持つ世帯とほぼ同水準の支出が行なわれており 無職世帯でも消費の水準が比較的高い世帯が多いとみられる 収支尻については 世帯主が有職の世帯については収入データが得られないため不明だが 無職世帯についてみていくと 毎月約 4 万 3 千円程度の赤字である また全ての年間収入階層において赤字となっており 収入が多いほど赤字額も大きくなっている (2) 高齢単身世帯は 86.8% が無職 夫婦のみ無職世帯より消費水準は低い続いて 高齢者のいる世帯の内 2 番目に世帯数が多い単身世帯についても同様にみていく 単身世帯の世帯構成比は有職世帯が 13.2% 無職世帯が 86.8% である 夫婦のみ世帯と比べると無職世帯の割合が高いことが特徴である 等価消費支出は平均で 149,608 円 無職世帯で 146,264 円と夫婦のみ無職世帯よりも2 万円程度低い水準にある 無職世帯の収支は毎月約 2 万 5 千円の赤字となっている

資料 4 高齢者世帯の収支 夫婦のみ世帯 ( 注 ) 世帯主が有職無職世帯 内 年間収入 ( 万円 ) ~250 250~349 350~ 65 歳以上単身世帯 内 無職世帯 世帯人員 ( 人 ) 2.04 2.06 2.03 2.02 2.02 2.05 1.0 1.0 世帯主の年齢 ( 歳 ) 72.8 70.6 73.5 73.7 73.3 73.5 75.0 75.5 可処分所得 ( 円 ) - - 194,717 130,095 172,563 222,800-121,684 消費支出 ( 円 ) 244,394 267,099 237,432 159,911 210,003 271,647 149,608 146,264 等価消費支出 ( 円 ) 171,110 186,097 166,645 112,513 147,758 189,726 149,608 146,264 収支尻 ( 円 ) - - 42,714 29,816 37,439 48,847-24,580 ( 注 ) 夫婦のみ世帯は 男 65 歳以上, 女 60 歳以上の者のみからなる世帯で少なくとも一人は 65 歳以上の世帯のデータを代用 ( 出所 ) 総務省 家計調査 (3) 高齢夫婦のみ世帯の消費水準は 50 歳代並こうした 高齢者の消費支出は現役世代と比較してどのような水準にあるのだろうか ( 資料 5) 比較対象となる現役世代は 二人以上の勤労世帯で夫婦のみの世帯または夫婦と未婚の子のいる世帯 である 現役勤労世帯では世帯主の年齢とともに収入が増加し 支出の水準も上昇していく 一方 無職で年間収入 350 万円以上の高齢夫婦のみ世帯は 50 歳代には及ばないものの 40 歳代よりも消費支出の水準が高い 高齢者世帯は何れも毎月の収支が赤字で 貯蓄を取り崩して生活しているが 平均でみると高齢者夫婦のみ世帯では公的年金収入を主な収入としながら 40 歳代と同程度の消費支出をしている 特に 50 歳代の消費の内訳では 子どもの教育関係費が 48,460 円 仕送りが 22,673 円と 高齢者の世帯にはない義務的支出が大きく その分自由裁量の支出は制限されるため 均して資料 5 世帯分類ごとの等価消費支出 ( 円 / 月 ) 高齢夫婦のみ無職世帯現役世代 世帯主年齢 50 ~ 59 40 ~ 49 30 ~ 39 ~ 29 歳 高齢無職単身世帯年間収入 350~ 250~350 ~250 万円 平均 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 ( 出所 ) 総務省 家計調査 より第一生命経済研究所作成 みると実質的に高齢者夫婦のみ世帯の消費水準は 50 歳代並であると考えられる 一方 高齢単身世帯の典型である無職単身世帯は 30 歳代とほぼ同水準である ( 注 2) ここで用いた対象データは 二人以上世帯の内 男が 65 歳以上 女が 60 歳以上の者からなる世帯で少なくとも一人は 65 歳以上 である 厳密には夫婦のみの世帯とは一致しないが 世帯人数が 2.04 名と夫婦のみの世帯より僅かに多い程度であり 大部分は夫婦のみの世帯と考えられる 5. 純貯蓄は毎月の赤字を十分賄う収支の状況からは高齢者世帯が年金収入と貯蓄の取り崩しで 50 歳代の勤労世帯並みの消費をしていることがわかった そこで 貯蓄を取り崩しつつ生活する高齢世帯が十分な貯蓄を備えているのかみていく 09 年の家計調査で 二人以上世帯の内 男が 65 歳以上 女が 60 歳以上の者のみからなる世帯で少なくとも一人は 65 歳以上である世帯 を高齢夫婦世帯として貯蓄額から負債額を差引いた純貯蓄額をみていく 無職世帯の純貯蓄は 2,276 万円 無職世帯の内 年間収入が 250 万円未満の世帯は 884 万円 250~349 万円の世帯では 1,581 万円 350 万円以上の世帯で 3,005 万円となっている ( 資料 6) どの程度貯蓄があれば十分かという判断は難しいが ここでは単純に各世帯の月々の収支が今後も続くと仮定すると 無職世帯平均で 44 年 年間収入 250 万円未満の世帯で 27 年 250~349 万円の世帯で 35 年 350 万円以上の世帯では 51 年で貯蓄が底をつくことになる 世帯主の平均年齢 73.5 歳における平均

資料 6 高齢者世帯の純貯蓄額 ( 万円 ) 夫婦のみの高齢者世帯 ( 注 ) 世帯主 が有業 無職世帯 年間収入 250 万円 250~349 350 万円 未満 万円 以上 65 歳以上無職単身世帯 2,304 2,385 2,276 884 1,581 3,005 1,506 ( 注 ) 男 65 歳以上 女 60 歳以上の者のみから成る世帯で少なくとも一人は 65 歳以上の世帯のデータで代用 ( 出所 ) 総務省 家計調査 全国消費実態調査 余命は男性が 12.97 年 女性が 17.09 年であり 44 年という期間は現状の支出超過を賄う限りにおいては十分な期間といえよう 高齢単身無職世帯についても同様にみていくと 65 歳以上の単身無職世帯 ( 平均年齢が 75.5 歳 ) の純貯蓄額は 1,506 万円である 毎月 24,580 円の赤字が継続すると仮定すると 貯蓄が底をつくまでには 51 年かかることになる 6. 高齢者世帯では格差が大きく 高齢単身世帯における生活保護世帯は1 割超このように高齢者世帯における収支 貯蓄の平均的状況を見ると 貯蓄を取り崩しつつも 現役世代並みの消費はできているといえる しかし 高齢世帯では著しい格差があることも事実である 生活保護を受けている 65 歳以上の高齢者の数 は年々増加し 保護率も上昇している これを世帯類型別でみると 単身世帯では 70 歳代男性で 17.3% 女性が 8.5% と単身高齢者の保護率が圧倒的に高い ( 資料 7) この要因についてみてみると 世帯主の年齢階層別での無職世帯の割合は 単身世帯では 50 歳代から全世帯平均を大きく上回っている これは 病気などにより非就業状態になった場合 単身世帯は無職世帯となってしまうためだと考えられる 実際 単身世帯の非就業理由をみると 60 歳代前半までは 病気 ケガのため が大部分を占めている 公的年金の支給開始年齢前に非就業状態となれば 公的年金額の算定基礎となる加入期間 標準報酬の面で将来受け取る年金額に影響することや 老後に備えた貯蓄も進まないため 生 活保護を受けざるを得ない状況に陥ってしまうということが考えられる 一方 高齢夫婦のみ世帯では被保護世帯は単身世帯ほど多くないものの 貯蓄残高の分布をみると 4,000 万円以上の世帯が 15.1% ある一方 150 万円未満が 5.3% 300 万円未満が 11.4% と心許ない貯蓄額の世帯が少なからず存在することも確かである これまでみてきたように 均してみると高齢者は年金収入と現役時代に蓄えた貯蓄により比較的余裕のある生活をしているといえる しかしこれはあくまで平均像であり 内訳を詳細にみると 貧困リスクの高い単身者や心許ない貯蓄を取り崩し生活する高齢者夫婦が一定割合存在し 対照的に十分な年金収入と貯蓄のある世帯が多いことがわかる 未婚率の上昇 離婚の増加 親との同居率の低下傾向などを踏まえれば 今後世帯規模は縮小傾向が続くと予想される 世帯規模の縮小により 高齢単身世帯で顕著なように 世帯内で 資料 7 年齢階層別生活保護率 (08 年 %) 20 15 10 5 0 20 歳代 単身世帯 ( 男 ) 単身世帯 ( 女 ) その他世帯 ( 男 ) その他世帯 ( 女 ) 30 歳代 40 歳代 ( 出所 ) 厚生労働省 被保護者世帯全国一斉調査 国立社会保障 人口問題研究所より第一生命経済研所作成 50 歳代 60 歳代 70 歳代 80 歳以上

の就業不能リスクなどの分散が難しく 十分な貯蓄額に達しない状況で老齢期を迎えるリスクが高まる 世帯動態や高齢化の進展によって このようなリスクを抱えた世帯は増加することが予想され セーフティーネットとしての社会保障制度は一層重要になるであろう その一方で これまでみてきたように比較的余裕のある高齢者が多いことも事実だが これは世代間扶養を基本とする社会保障制度のもとで現役世代の支えによるところが大きい しかし高齢化の進展により現役世代の負担は重くなっている 平成 21 年の年金財政検証で示された年代別の負担に対する年金給付の比率は 厚生年金で 2010 年に生まれた世代が 2.3 倍 一方 70 歳の世代では 6.5 倍と格差は大きい 各世代の経済状況を考慮しつつ 世代内 世代間で存在する格差へ配慮していくことが必要だろう おおみさわたけし ( 副主任エコノミスト ) ( 現政策研究部 )