3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

Similar documents
<4D F736F F D208FE18A B8982CC8C8892E882C982C282A282C45F967B95B65F2E646F63>

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

足関節

P26 3. 肩関節複合体の関節運動肩複合体の関節運動 P27 図 15 P28 4. 肩関節複合体の運動に関与する筋肩複合体の運動に関与する筋 P28 (2) 下制 3 行目 鎖骨下神経 鎖骨下筋神経 P28 下から 1 行目長筋神経長胸神経 P29 図 17 ( 誤 ) 2

足部について

短縮転位 尺側転位が軽度であるが改善され た ( 写真 5) 2 週後短縮転位が確認された [ 症例 3 左橈骨遠位端骨折 ] 14 歳女性負傷日 H Pm01:00 初検日 H Pm05:20 原因 : 柔道大会で相手を投げた際 道着に巻き込み 相手に乗られ負傷 腫脹中

スライド 1

施術料金表 (1 割負担額 ) 相談支援料算定あり 初検日 + 冷罨法料 初検日 ( 冷罨法料加算なし ) 冷罨法料 初検料 1,460 円 初検料 1,460 円 相談支援料 50 円 相談支援料 50 円 1 部位 760 円 85 円 2,355 円 240 円 1 部位 760 円 2,27

靭帯付 関節モデル ( 全 PVC 製 ) AS-6~AS-12 骨格の靭帯部分を 個別関節モデルとしてお買い求め頂けます 弊社カタログでは多くの選択肢の提案に努めています ご希望に合わせてお選び下さい ( 経済型関節モデル靭帯付 AJ-1~7 も良品です )

PowerPoint プレゼンテーション

保発第 号

会員アンケート調査による検討 岩手県会員へのアンケート調査 ( スクリーニング ) 及び聞き取り調査を行った アンケート調査は会員 145 名中 臨研メンバーを除く1 38 名を対象に行った その結果回答 7 名 回答率 5.07% であった 残念な結果ではあるが 回答いただいた会員には敬意を表する

第3回 筋系

両手 X 線のオーダー スクリーニング 両手正面 + 両手斜位

PowerPoint プレゼンテーション

行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

問題 5 55 歳の女性.5 年前に右肩関節周囲炎の既往がある. 約 1か月前に階段を踏みはずし右肩を強打した. 以来, 運動痛, 夜間痛が持続している. 肩関節は他動的に挙上可能であるが, 自動的には外側挙上は45 度までにとどまる 最も考えられる疾患名はどれか. 1. 五十肩 2. 上腕骨骨頭骨

原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

2015 年度手術のうちわけ ( 実績 ) セキツイ脊椎 ナンブソシキ軟部組織 椎間板摘出術 35 アキレス腱断裂手術 40 内視鏡下椎間板摘出 4 腱鞘切開術 ( 関節鏡下によるものを含む ) 0 シュコンカン 脊椎固定術 椎弓切除術 椎弓形成術 ( 多椎間又は多椎弓の場合を含む )( 椎弓形成

Microsoft Word - _30_装具_h24sougu_

untitled

浅井正孝先生お別れの会に出席して

358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcu

原著論文 肩関節屈曲による交互滑車運動器使用時における肩甲骨の動きからみた肩甲上腕リズムの検討 寒川貴雄 (RPT) 1) 成末友祐 (RPT) 2) 新枝誠人 (RPT) 1) 原田貴志 (RPT) 1) 澤近知代 (RPT) 3) Key Word 交互滑車運動器 肩関節屈曲 肩甲骨の動き 肩甲

退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 看護師のための 緊張が強いこどものポジショニング 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法科 脇口恭生 1

整形外科プライマリケアの対象 * 痛みプライマリケアの痛みを知れば誤診が防げる * しびれ * 小児整形外科 * 骨粗鬆症 * 外傷 など手術を必要としない疾患で整形外科の患者の 90% 以上を扱う

< F2D BEF8AEE967B8D5C91A2>

00 p01 ...W.g.r..

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

KST(気兼ねなく,しゃべる,ところ) ~第1回 運動器疾患編~

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅰ 医療扶助実施方式

症状へのアプローチ

Template

δ

PowerPoint プレゼンテーション

学術教養特集2 間橋 淑宏

写真 1. 骨格モデル ( 標準型 筋表示 スタンド付 ) AS-6.1 \ 166,428 ( 本体価格 \ 154,100) MQ/ 標準型 AS-6 の機能に加え 半側に筋の表示 ( 赤 - 起始 青 - 停止 ) と各筋の番号を付け 名称表を付属したモデルです ( 脊柱非可動 ) AS-6.

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

<8FE18A5192F B892E786C73>

外傷性肩関節前方脱臼に対する理学療法の一例 外旋位固定による保存療法 松平兼一 1) 風間裕孝 1) 1) 富永草野クリニックリハビリテーション科 キーワード : 外傷性肩関節前方脱臼 外旋位固定 肩関節後上方組織 はじめに 外傷性肩関節脱臼では前方脱臼が 95% を占めており 受傷時に前下関節上腕

EDP

(Microsoft Word - 00_\225\\\216\206.doc)

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響

80 武凪沙, 他 態で腰椎のわずかな右側屈により 骨盤を右挙上させ下肢を後方へと振り出す これに対し本症例は 立位姿勢から上位胸椎部屈曲位 胸腰椎移行部屈曲 左非麻痺側 ( 以下 左 ) 側屈位を呈し体幹直立位保持が困難となっていた また右股関節 膝関節が左側と比べてより屈曲していることで骨盤右下

...S.....\1_4.ai

003_ネット定期しおり_ indd

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

Ⅰはじめに が膝関節を強く内旋したときに 近位脛骨の前外側部に剥離骨折が常在すること 年 P S またこの部位に真珠のような光沢を持つ線維束が付着していることを報告したそれ以来 この線維束は m m m m と様々な名称でよばれてきた しかしながら この線維束が恒常的な構造であるかどうかについて長い

【股関節の機能解剖】

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

症例報告 関西理学 12: 87 93, 2012 右膝関節の疼痛により防御性収縮が強く歩行の実用性を低下させていた右人工膝関節全置換術後の一症例 吉田拓真 1) 山下貴之 1) 石濱崇史 2) Physical Therapy for a Patient who Had Difficulty Wa

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

Chapter1 Anatomic Definitions 解剖学的定義 本章の目的 以下の用語の定義を確認する 解剖学 生理学 病態生理学 ホメオスタシス 解剖学的姿勢 ( 矢状面 正中矢状面 水平面 前頭面 ) 救急隊員同士が 身体部位について互いに共通の言葉で表現できるように 適切な専門用語を

のモチベーションを上げ またボールを使用することによって 指導者の理解も得られやすいのではないかと考えています 実施中は必ず 2 人 1 組になって パートナーがジャンプ着地のアライメントをチェックし 不良な場合は 膝が内側に入っているよ! と指摘し うまくいっている場合は よくできているよ! とフ

等級割合第660% 第7級50% 第8級障害の状態 耳の聴力を全く失い 他耳の聴力が 40 センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの級4せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 51 上肢の3 大関節中の2 関節の用を廃したもの 61 下肢の3 大関節

要旨 [ 目的 ] 歩行中の足部の機能は 正常歩行において重要な役割を担っている プラスチック短下肢装具 (AFO) 装着により足関節の運動が制限されてしまう 本研究は AFO 装着により歩行立脚期における下肢関節運動への衝撃吸収作用や前方への推進作用に対しどのような影響を及ぼすかを検討した [ 対

GM アフ タ クター & アタ クター どの年代でも目的に合わせたトレーニングができる機器です 油圧式で負荷を安全に調節できます 中殿筋と内転筋を正確に鍛えることで 骨盤が安定し 立位や歩行時のバランス筋力を向上させます 強化される動き 骨盤 膝の安定性 トリフ ル エクステンサー ニー エクステ

神経叢 ) と ( 鎖骨下動脈 ) が通過する 4 鎖骨下動脈 subclavian artery は 右は( 腕頭動脈 ) から起こり 左は ( 大動脈弓 ) から起こる 5 甲状頸動脈の枝として 不適切なものを選べ 肩甲背動脈 肩甲上動脈 下甲状腺動脈 上行頸動脈 頸横動脈 6 鎖骨下動脈の枝を

姿勢

次に 車いす シーティングの適合評価をすすめるにあたって 評価の目的 対象をどのように考えるべきかといったとらえ方を基本概念として4つの要素に分けて認識しておくことが大切です その上で どのような内容について どのような方法で評価を行えばよいかといった適合技術を具体的に習得し 実施できるようにしてお

Microsoft Word - toukyuhyo

骨筋18-中1

目次 DAY1 P.1 インストラクターメソッド DAY2 P.2 ヨガの人体科学健康と病気の定義 DAY3 P.3 アーユルヴェーダ健康法 気 とは DAY4 P.4 ヨガで使うインナーマッスル バンダ DAY5 P.5 ヨガの教科書 ヴァガヴァッドギーターとヨガスートラを紐解く DAY6 P.6

PowerPoint プレゼンテーション

葛原 / 日本保健医療行動科学会雑誌 28(2), 焦点 3 筋の不均衡を改善するためのパートナーストレッチング 葛原憲治愛知東邦大学人間学部人間健康学科 Stretching with a Partner to Improve Muscle Imbalance Kenj

後遺障害別等級表・労働能力喪失率

要旨一般的に脚長差が3cm 以下であれば 著明な跛行は呈しにくいと考えられているが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない 本研究の目的は 脚長差が体幹加速度の変動性に与える影響を 加速度センサーを用いて定量化することである 対象者は 健常若年成人男性 12 名とした 腰部に加速度センサーを装着し

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

はじめに椅子からの立ち上がり動作 (sit-to-stand: 以下 STS) は, 土屋ら (2007) によると二足動物としての人間の移動に先立ち, 体得しなければならない動作であるとされている. また, これは歩行などの目的動作の一部として, 生活 活動範囲の拡大に関与し, 日常生活活動を送る

146 理学療法科学第 23 巻 1 号 I. はじめに 膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷は, スポーツ外傷の中で発生頻度が高く, スポーツ活動を続行するためには靭帯再建を余儀なくされることが多い 近年,ACL 損傷を予防することの重要性が認識され

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

< E682568FCD814090D291B9838A836E A2E707562>

第57回日本手外科学会学術集会_Pプログラム1_ indd

2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能


三角巾は 救急処置における包帯処置として 止血に必要な 圧迫 創傷部を空気に触れないようにする 被覆 打撲や骨折箇所を安静に保つための 固定 に使われます Ⅰ. 三角巾の名称 Ⅱ. 三角巾の形態三角巾の使用時の形態により主に3 種に区分されます 1. 全巾体表面を被覆 ( ガーゼ等の支持も含む )

01 表紙

<8CF092CA8E968CCC814095CA955C2E786C73>

膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella

特 2 立ち上がり動作を中心にアプローチした左大腿骨頚部骨折患者の症例報告所属社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわまち病院名前近藤淳 はじめに 今回 左大腿骨頚部骨折の症例を担当した 本症例は立ち上がり動作障害があり 段階を追った訓練を進めた 動作分析から新たにアプローチを考案施行し 良好な結果が

姿勢分析 姿勢分析 お名前 北原有希様 体重 45.0 kg 運動レベル 中 生年月日 1977 年 9 月 18 日 身長 cm オレンジ色の項目は 優先度の高い項目です 最適な状態にするための姿勢矯正プログラムが提供されます 頭が前に 18.3 出ています / 前に 2.9 cm 傾

微弱電流の通電

質疑回答 [ 肢体不自由 ] ( 肢体不自由全般 ) 1. 各関節の機能障害の認定について 関いずれか一方が該当すれば 認定可能で節可動域 (ROM) と 徒手筋力テスト (MMT) ある で具体例が示されているが 両方とも基準に該当する必要があるのか 2. 身体障害者診断書の 肢体不自由の状況 及

仰向け 三大指標の検査 ( 僧帽筋 C2 横突起 関節突起 後頭骨 ) 五十肩の指標検査 立位 バンザイ検査 DRT 的 五十肩とは? 肩関節が外旋 進展してぐっと行ってしまったのが 肩関節の捻挫 ( 五十肩 ) 肩関節の周辺の筋肉 筋膜に断裂 損傷が起きた状態 その断裂 損傷の度合いによって 症状

46 図 1 spinal manual therapy の分類 脊椎徒手治療法 spinal manual therapy は muscle, nerve, facet, disc technique に四大別するが 特に facet への手技が主体となる 内塗りは急性腰痛に適応 表 1 腰痛の保

安定性限界における指標と条件の影響 伊吹愛梨 < 要約 > 安定性限界は体重心 (COM) の可動範囲に基づいて定義づけられるが, 多くの研究では足圧中心 (COP) を測定している. 本研究は, 最大荷重移動時の COM 変位量を測定して COP 変位量と比較すること, 上肢 位置の違いが COP

身体平衡学レポート

m A, m w T w m m W w m m w K w m m Ⅰはじめに 中手指節関節 以下 MP関節屈曲位でギプス固定を行い その直後から固定下で積極的に手指遠位指 節間関節 以下 DI P関節 近位指節間関節 以下 PI P関節の自動屈伸運動を行う早期運動療法 以下 ナックルキャストは

○○大会・大会参加者補償規程

平成 16 年度 AL S 基金 研究奨励金 ALSによる姿勢 移動性の障害に対するアシスティブテクノロジーの調査 研究 ~ 車いす シーティング適合処方システムの開発 ~ Tota l Supp or t Syst em of M ob ilit y Devices for Th e Per so

年度修士論文 男子ラクロスにおける前十字靭帯損傷発生率とその発生要因の検討 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科スポーツ科学専攻スポーツ医科学研究領域 5012CA040-9 西川亜夢子 研究指導教員 : 金岡恒治教授

整形外科後期臨床研修プログラム

Microsoft PowerPoint - 全道研修会 金子翔拓 バナー用[読み取り専用]

Taro-16Chapter05_Osteology

経穴部位の国際標準化に向けて −6回の非公式会議の経緯−

<4D F736F F F696E74202D FE38E888D9C C83498AE18BBE C D9C B FC C834989F D E82562E >

Transcription:

毎回の審査会で 運動方向の表現が適当ではないという指摘があり ほけんぶだより等で何度か正確な記載を呼びかけておりましたが なかなか改善されていないのが現状です 単純に漢字の間違いもありますが 全ての関節に屈伸以外使っていない先生もおられます ( たとえば 手関節 肘関節屈伸や腰部 膝関節屈伸等 ) 今回は 運動方向の表現と題して特集を組んでみました レセプトに限らず カルテの記載 又 医科への紹介状等 漢字の間違いは意味が変わりますし 運動方向の表現が適切でないと 意思が正確に伝わらない事や 医科への信用の低下にもつながります 私たちは 施術者でありますが 医療の一端を担っていることも事実です ( 青字が主用語 ) 1. 肩甲帯屈曲 ( 外転 ): 基本軸は 両肩の肩峰を結ぶ線 移動軸は 頭頂と肩峰を結ぶ線で 肩甲骨が脊椎から外側に離れる動き 伸展 ( 内転 ): 基本軸 移動軸は屈曲 ( 外転 ) と同じ 肩甲骨が 脊椎に近づく動き 挙上 ( すくめ動作 ): 基本軸は 両側の肩峰を結ぶ線 移動軸は 肩峰と胸骨上縁を結ぶ線で 肩をすくめる動き 引き下げ ( 下制 ): 基本軸 移動軸は挙上と同じ 肩を引き下げる動き その他肩甲骨の動きには 上方回旋 下方回旋 前傾がありますが これは肩関節が外転した際 60 度を越えると上方回旋が始まり肩関節の伸展 ( 過伸展 ) で 下方回旋 内転前傾運動を行う 肩甲骨は単独で動くことはありません 鎖骨 上腕骨の動きと複合し 肩関節 肩鎖関節 胸鎖関節と合同で運動を行う [ 例 ] 右肩甲帯挙上時疼痛 肩甲帯すくめ動作時右肩甲間部に疼痛 ( 肩甲間部は 体表解剖学用語 ) 2. 肩関節挙上 ( 屈曲 前方挙上 ): 基本軸は 肩峰を通る床への垂直線 移動軸は上腕骨 伸展 ( 過伸展 後方挙上 ): 基本軸 移動軸は挙上と同じ 外転 ( 側方挙上 ): 基本軸は 肩峰を通る床への垂直線 移動軸は上腕骨 内転 : 基本軸 移動軸は外転と同じ 外旋 : 基本軸は 肘を通る前額面への垂直線 移動軸は尺骨 内旋 : 基本軸 移動軸は外旋と同じ 水平屈曲 : 基本軸は 肩峰を通る矢状面への垂直線 移動軸は 上腕骨 水平伸展 : 基本軸 移動軸は水平屈曲と同じ 挙上 伸展は 前腕中間位 外転は 90 度で前腕を回外する 水平屈曲 水平伸展は 外転 90 度で行う 内転は挙上 20 度で行う 外旋 内旋は 通常 挙上 0 度 肘関節屈曲 90 度で行うが 外転 90 度 肘関節屈曲 90 度で行う方法もある 挙上不能の場合 肘関節を屈曲すると可能になる場合や 介助運動後可能になる場合など損傷部位の判断に参考となるため正確に運動制限 運動痛の所在を把握しておくべきです この他 動作表現として 肩関節結滞動作 結髪動作 ぶん回し運動等も使用されます [ 例 ] 右肩関節挙上困難 外転制限 80 度 結滞 結髪動作不能 基礎運動学第 4 版医歯薬出版株式会社

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展 ) 抵抗運動時疼痛 4. 前腕 ( 橈尺関節 ) 回内 : 基本軸は上腕骨 移動軸は手指伸展位での手掌 橈骨が長軸を中心に尺骨をクロスオーバーする動き 回外 : 基本軸は上腕骨 移動軸は手指伸展位での手掌 橈骨が長軸を中心に外側へ回る動き 肘関節屈曲位 (90 度 ) で検査 伸展位では肩関節の回旋 ( 外旋 内旋 ) が伴う 前腕の運動痛は 回外 回内のほか肘関節 手関節 指関節の運動に伴う 5. 手関節掌屈 : 基本軸は橈骨 移動軸は第 2 中手骨 前腕中間位 背屈 : 基本軸は橈骨 移動軸は第 2 中手骨 前腕中間位 橈屈 : 基本軸は前腕の中央線 移動軸は第 3 中手骨 前腕回内位 尺屈 : 基本軸は前腕の中央線 移動軸は第 3 中手骨 前腕回内位 手関節は 橈骨手根関節 手根間関節 ( 手根中央関節 ) の複合運動 TFCC(triangular fibro cartilagenous complex) 尺骨と手根骨の間には三角線維軟骨 TFC と呼ばれる関節円板が存在する 尺骨茎状突起から橈骨遠位端尺側に張っており 橈骨手根関節と遠位橈尺関節とを区画している 三角線維軟骨は 手根骨から尺骨に加わる圧を分散する 三角繊維軟骨 手関節尺側側副靭帯および掌側と背側の投射区靭帯などを含む手関節の尺側支持機構は三角線維軟骨複合体 (TFCC) と呼ばれる 三角線維軟骨複合体には 手根骨と尺骨の間にかかる負荷を均等にするクッションとしての作用と遠位橈尺関節に安定性を与える作用がある 手をついて倒れるか 手を過度に回内され受傷する事が多い 手関節の尺側部痛を訴える 尺骨頭と手根骨の間に圧痛が有り 最大回内あるいは回外時に疼痛を訴える その際 手関節の尺屈を強制すると疼痛が増強する 関節造影や関節鏡により損傷が診断できる 装具などの保存療法により改善するものが多い 観血的療法は 三角線維軟骨複合体修復術 部分切除術 尺骨短縮術 橈骨矯正術などが行われる 基礎運動学第 4 版 医歯薬出版株式会社

6. 母指 MCP 関節屈曲 : 基本軸は第 1 中手骨 移動軸は第 1 基節骨 伸展 : 基本軸は第 1 中手骨 移動軸は第 1 基節骨 IP 関節屈曲 : 基本軸は第 1 基節骨 移動軸は第 1 末節骨 伸展 : 基本軸は第 1 基節骨 移動軸は第 1 末節骨 CM 関節橈側外転 : 基本軸は示指 ( 橈骨の延長上 ) 移動軸は母指 尺側内転 : 基本軸は示指 ( 橈骨の延長上 ) 移動軸は母指 掌側外転 : 基本軸は示指 ( 橈骨の延長上 ) 移動軸は母指 掌側内転 : 基本軸は示指 ( 橈骨の延長上 ) 移動軸は母指 橈側外転 尺側内転の運動面は手掌面 掌側外転掌側内転の運動面は手掌面に直角な面 7. 指関節第 2 4 5 指外転 : 基本軸は第 3 中手骨延長線 移動軸は第 2 4 5 指軸 第 3 指から離れる動き 内転 : 基本軸は第 3 中手骨延長線 移動軸は第 2 4 5 指軸 第 3 指に近づく動き 第 3 指橈側外転 : 基本軸は第 3 中手骨延長線 移動軸は第 3 指軸 尺側外転 : 基本軸は第 3 中手骨延長線 移動軸は第 3 指軸 第 2 3 4 5 指 MCP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中手骨 移動軸は 第 2~ 第 5 基節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中手骨 移動軸は 第 2~ 第 5 基節骨 第 2 3 4 5 指 PIP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 基節骨 移動軸は 第 2~ 第 5 中節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 基節骨 移動軸は 第 2~ 第 5 中節骨 第 2 3 4 5 指 DIP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中節骨 移動軸は 第 2~ 第 5 末節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中節骨 移動軸は 第 2~ 第 5 末節骨 10 度の過伸展をとりうる MCP は中手指節関節 PIP は 近位指節間関節 DIP は遠位指節間関節 IP は指節間関 節 CM は手根中手関節 この他 対立運動 復位運動 つまみ動作 握り動作がある 基礎運動学第 4 版医歯薬出版株式会社手の診療マニュアル南江堂

8. 股関節屈曲 : 基本軸は 体幹と平行な線 移動軸は大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線 伸展 : 基本軸は 体幹と平行な線 移動軸は大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線 外転 : 基本軸は 両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線 移動軸は 上前腸骨棘内転 : より膝蓋骨中心を結ぶ線 外旋 : 基本軸は膝蓋骨より下ろした垂直線 移動軸は膝蓋骨中心より足関節内外内旋 : 果中央を結ぶ線 屈曲伸展は 骨盤 脊柱を固定する 屈曲は背臥位膝屈曲位で 伸展は腹臥位膝伸展位で行う 外転内転は 背臥位で骨盤を固定し下肢は外旋しないようにする 内転は反対側の下肢を屈曲挙上しその下を通して内転させる 外旋内旋は 背臥位で股関節膝関節を90 度屈曲位で行う 骨盤の代償に注意 この他 開排制限も使われる 9. 膝関節屈曲 : 基本軸は 大腿骨 移動軸は 腓骨頭外果を結ぶ線 伸展 : 基本軸は 大腿骨 移動軸は 腓骨頭外果を結ぶ線 膝関節は 屈曲伸展のみである 実際の運動では僅かに外旋内旋を行う 運動学の分野では外旋 20 度 内旋 10 度が可能である 臨床上は 外旋ストレス 内旋ストレス 外反ストレス 内反ストレス時の疼痛 ~ストレステスト (+) 等 外旋内旋は膝屈曲位 外反内反は膝伸展位で大腿を固定して行う 主に下腿の運動に対する表現である 10. 足関節底屈 : 基本軸は 腓骨への垂直線 移動軸は第 5 中足骨 背屈 : 基本軸は 腓骨への垂直線 移動軸は第 5 中足骨 外がえし : 基本軸は 下腿軸への垂直線 移動軸は足底面 内がえし : 基本軸は 下腿軸への垂直線 移動軸は足底面 外転 : 基本軸は 第 1 第 2 中足骨間の中央線 移動軸も同じ 内転 : 基本軸は 第 1 第 2 中足骨間の中央線 移動軸も同じ 膝関節を屈曲位で行う 足関節の純粋な動きは底屈背屈である 外がえし うちがえし 外転内転は足部の複合的な動きである 基礎運動学第 4 版 医歯薬出版株式会社

11. 母趾 MTP 関節屈曲 : 基本軸は 第 1 中足骨 移動軸は第 1 基節骨 伸展 : 基本軸は 第 1 中足骨 移動軸は第 1 基節骨 IP 関節屈曲 : 基本軸は 第 1 基節骨 移動軸は第 1 末節骨 伸展 : 基本軸は 第 1 基節骨 移動軸は第 1 末節骨 12. 趾関節 ( 第 2 趾 ~ 第 5 趾 ) MTP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中足骨 移動軸は第 2~ 第 5 基節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中足骨 移動軸は第 2~ 第 5 基節骨 PIP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 基節骨 移動軸は第 2~ 第 5 中節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 基節骨 移動軸は第 2~ 第 5 中節骨 DIP 関節屈曲 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中節骨 移動軸は第 2~ 第 5 末節骨 伸展 : 基本軸は 第 2~ 第 5 中節骨 移動軸は第 2~ 第 5 末節骨 13. 頚部前屈 : 基本軸は 肩峰を通り床への垂直線 移動軸は外耳孔と頭頂を結ぶ線 後屈 : 基本軸は 肩峰を通り床への垂直線 移動軸は外耳孔と頭頂を結ぶ線 回旋 : 基本軸は 両側の肩峰を結ぶ線への垂直線 移動軸は 鼻梁と後頭結節を結ぶ線 側屈 : 基本軸は 第 7 頸椎棘突起と第 1 仙椎の棘突起を結ぶ線 移動軸は 頭頂と第 7 頸椎棘突起を結ぶ線 腰掛座位で行う 回旋 側屈は それぞれ右回旋 左回旋 右側屈 左側屈とする 臨床上頚部捻転 ( 右捻転 左捻転 ) も使われる 14. 胸腰部前屈 : 基本軸は 仙骨後面 移動軸は第 1 胸椎棘突起と第 5 腰椎棘突起を結ぶ線 後屈 : 基本軸は 仙骨後面 移動軸は第 1 胸椎棘突起と第 5 腰椎棘突起を結ぶ線 回旋 : 側屈 : 基本軸は Jacoby 線の中点に立てた垂直線 移動軸は 第 1 胸椎棘突起と第 5 腰椎棘突起を結ぶ線 回旋 側屈には それぞれ右回旋 左回旋 右側屈 左側屈がある また回旋は 座位で骨盤を固定して行う 実際胸腰椎椎間関節には 回旋の構造はなく 僅かづつの動きが連動して体幹の回旋となる 臨床上は 腰部捻転と言うように回旋は使われない 基礎運動学第 4 版医歯薬出版株式会社

全 6 回 7 ヶ月にわたり連載してきた運動方向の表現シリーズは今回の顎関節をもちまして最終話となります 参考としてカルテ記載時の凡例を掲載しました 今後特集してほしいことがあれば学術部員までご連絡ください ただし 申し出に答えられない場合もありますのでご了解ください 15. 顎関節 開口 咀嚼運動 開口位 開口時疼痛 咀嚼時痛 下顎の左右偏位がある 約 1cm この他 歩行時 走行時 着地時 蹲踞位 ( 背 腹 側 ) 臥位時 体向変換時 立位 座位 腰掛座位 正座位 立ち上がり動作 ~ 荷重時 ~ 負荷時 ~ 抵抗時 ~ 抵抗運動時疼痛 圧痛 軸圧痛 介達痛 ( 深 ) 呼吸痛 自発痛 など * 腰部前後屈 捻転 右側屈痛 臥位時体向変換にて疼痛憎悪し 立位時右下肢への体重負荷で腰部の疼痛が憎悪する 下肢伸展位での座位困難 * 右足関節底背屈痛 跛行 自発痛 (+) 軸圧痛(-) 腫脹(++) 圧痛(++) 立位時右足着地困難 * 体幹 ( 躯幹 ) 前後屈痛 捻転困難 腹臥位不能 吸気時疼痛 Malgaigne の圧痛 右側胸部からの介達痛 腫脹 (+) * 右足関節背屈強制時疼痛 蹲踞位 階段昇降時疼痛残存 * 右手関節掌背屈時の疼痛減退するが 抵抗運動時疼痛憎悪する * 右足関節底背屈痛消退 歩行痛消退 圧痛僅か残存するが治癒 * 頚部前後屈 捻転 左右回旋 左右側屈時疼痛 右回旋 ( 右旋 ) 右側屈( 右屈 ) 時疼痛著明 * 頚部前屈 右回旋 右側屈痛 * 右足関節底背屈痛 うちがえし困難 正座不能 歩行痛 腫脹 (++) 圧痛(++) 跛行 * 右足関節底背屈痛減退するが 歩行時軽度の疼痛残存 背屈強制で疼痛憎悪する 蹲踞位 立ち上がり動作に於いて疼痛残存 * 右膝関節屈伸痛 屈曲時著明 正座不能 外反ストレス 右下肢への体重負荷時 立ち上がり動作で疼痛憎悪する 腫脹 (+) 圧痛(++) 歩行痛 跛行 などなどほんの一例ですが 参考になりましたでしょうか? ではまた新たな学術特集でお会いしましょう 基礎運動学第 4 版 医歯薬出版株式会社