研究の中間報告

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

医学部医学科 2 年免疫学講義 10/27/2016 第 9 章 -1: 体液性免疫応答 久留米大学医学部免疫学准教授 溝口恵美子

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

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目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

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免疫リンパ球療法とは はじめに あなたは免疫細胞 ( 以下免疫と言います ) の役割を知っていますか 免疫という言葉はよく耳にしますね では 身体で免疫は何をしているのでしょう? 免疫の大きな役割は 外から身体に侵入してくる病原菌や異物からあなたの身体を守る ことです あなたの身体には自分を守る 病

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

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2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

免疫本試29本試験模範解答_YM

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報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

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ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

第5章 体液

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70,71 図 2.32, 図 2.33, 図 2.34 C3b,Bb C3bBb 70,71 図 2.32, 図 2.33, 図 2.34 C3b2,Bb C3b2Bb 72 7 行目 C3 転換酵素 (C4b2b) C3 転換酵素 (C4b2a) 91 図 2.50 キャプション 12 行目 リ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

免疫学過去問まとめ

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第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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< 研究の背景と経緯 > 私たちの消化管は 食物や腸内細菌などの外来抗原に常にさらされています 消化管粘膜の免疫系は 有害な病原体の侵入を防ぐと同時に 生体に有益な抗原に対しては過剰に反応しないよう巧妙に調節されています 消化管に常在するマクロファージはCX3CR1を発現し インターロイキン-10(

メディカルスタッフのための白血病診療ハンドブック

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5. T 細胞 TCR( 抗原受容体 ) を発現 抗原断片と MHC の複合体を認識 機能的に以下の 3 つに分類できる ヘルパー T 細胞免疫の応答の調節 免疫機構の制御 (Th1 細胞,Th2 細胞,Th17 細胞など ) 細胞傷害性 ( キラー )T 細胞標的細胞を傷害制御性 T 細胞 T 細

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

感覚細胞 網膜 retina の模式図 光 脳へ 神経節細胞 介在神経 光受容体細胞 人の網膜 薄明では 109個 網膜周辺部に分布 形だけ 6 錐体細胞 色の識別 3x10 個 色は認識 Cone cell 感度は低い 網膜中心部に分布 できない 桿体細胞 明暗のみ Rod cell 感度は高い

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32 章皮膚の構造と機能 a b 暗帯 (dark zone) 胚中心 (germinal center) 明帯 (light zone) c 辺縁帯 (marginal zone) マントル帯 子として Th0 から誘導され,IL-23 刺激により生存維持される. 上皮細胞や線維芽細胞を介して好中

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平成24年7月x日

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

< 背景 > HMGB1 は 真核生物に存在する分子量 30 kda の非ヒストン DNA 結合タンパク質であり クロマチン構造変換因子として機能し 転写制御および DNA の修復に関与します 一方 HMGB1 は 組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合 炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強

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研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

リンパ組織における抗原特異的なナイーブ T 細胞の捕捉と活性化 捕捉 活性化 ナイーブT 細胞末梢循環中移動所属リンパ節でAgを提示した樹状細胞に出会う TCR を介して活性化される 5 日以内 エフェクター T 細胞 Ag 認識後 5 日以内に増加 リンパ節を出て局所へ移動

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

報道関係者各位

図 Mincle シグナルのマクロファージでの働き

図アレルギーぜんそくの初期反応の分子メカニズム

研究の中間報告

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研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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VENTANA PD-L1 SP142 Rabbit Monoclonal Antibody OptiView PD-L1 SP142

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

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本研究成果は 2015 年 7 月 21 日正午 ( 米国東部時間 ) 米国科学雑誌 Immunity で 公開されます 4. 発表内容 : < 研究の背景 > 現在世界で 3 億人以上いるとされる気管支喘息患者は年々増加の一途を辿っています ステロイドやβ-アドレナリン受容体選択的刺激薬の吸入によ

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核内受容体遺伝子の分子生物学

度に比しあまりにも小さい2 階建てのその建物に驚いた これは分子生物学のパイオニアであり ノーベル医学生理学賞受賞者でもあったスタンフォード大学の教授である Arthur Kornberg と Paul Berg そして Charley Yanofsky らが 分子生物学を応用科学に役立てたいと考え

無顆粒球症

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

第6号-2/8)最前線(大矢)


ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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動物と免疫 ー病気を防ぐ生体機構 久米新一 京都大学大学院農学研究科

免疫 自然免疫( 食細胞 ) と獲得免疫 ( 液性免疫と細胞性免疫 ) による病原体の除去 リンパ球(T 細胞とB 細胞 ) には1 種類だけの抗原レセプター ( 受容体 ) がある 液性免疫は抗体が血液 体液などで細菌などを排除し 細胞性免疫は細菌に感染した細胞などをT 細胞が直接攻撃する

免疫器官ー 1 一次リンパ器官: リンパ球がつくられる器官 骨髄: 血球は骨髄の造血幹細胞から由来し B 細胞が骨髄で分化して形質細胞となる 胸腺: 未成熟のリンパ球がT 細胞に分化する 樹状細胞:T 細胞に病原体の情報を伝える食細胞で 抗原提示細胞である ( 病原体を貪食した樹状細胞がリンパ節でヘルパー T 細胞とキラー T 細胞に抗原を提示する )

免疫器官ー 2 二次リンパ器官: リンパ球が機能する器官 リンパ節: リンパ管系に沿って分布 リンパ液の濾過 外来抗原の補足による免疫応答の開始とB 細胞の増殖を行う 脾臓: 血液に流入した異物の補足 微生物に対する免疫応答などを行う リンパ管系: 組織内の細胞外液がリンパ管に入ってリンパ液となり 静脈に合流する ( リンパ球なども ) パイエル板: 腸で外来抗原を補足する

免疫器官ー 3 リンパ系: 体液の循環系で リンパ球も循環する リンパ節: リンパ液は輸入リンパ管 (B 細胞の多い B 細胞領域があり 濾胞とも呼ぶ ) から入り 輸出リンパ管 (T 細胞の多いT 細胞領域がある ) からでる 胚中心: 活性化されたB 細胞はB 細胞領域の胚中心に行き クラススイッチ 成熟が行われ 形質細胞 ( 抗体産生細胞 ) になる これらの働きには濾胞 T 細胞 ( ヘルパー T 細胞の一つ ) が必要である 脾臓: リンパ節と同様の働きをする

モノクローナル抗体と CD モノクローナル抗体 : 単一の B 細胞に対応する抗体で 単一の抗原決定基を認識する高い特異性がある : 生物学研究の試薬として広範に利用されている CD: 白血球表面に存在する分子に対応した記号であり 200 以上知られている ( モノクローナル抗体で認識 ):CD4 と CD8(T 細胞表面の糖タンパク質で 胸腺細胞の分化を示す指標となる ) CD28(T 細胞の補助受容体 )

自然免疫系 細菌侵入によって TLR などが発現すると 食細胞 ( 好中球などの白血球 ) は病原体を感知して貪食する :IL-1 などの炎症性サイトカインを放出し 周囲の細胞を活性化させる 炎症性サイトカインは 免疫細胞の活性化 白血球の集合 肝臓の急性期タンパク質の産生などの炎症反応を促進する : 抗酸化作用による過度の炎症反応の抑制 自然免疫系の感知システムは自然免疫系だけでなく 獲得免疫系の活性化も行う

自然免疫系 病原体を認識して 結合 攻撃する分子 : リゾチーム 抗菌ペプチド 補体など 食細胞による異物の貧食 : 食細胞は補体レセプターを発現し 補体はオプソニン ( 病原体に結合して食作用を促進すること ) 作用を示す ナチュラルキラー細胞 : 細胞障害活性による病原菌への攻撃 免疫反応を増強するためのセンサー :TLR( トール様受容体 : 細菌の成分やウイルスの D NA 成分の認識 ) C 型レクチン ( 糖鎖認識 )

哺乳動物の免疫システム ( 細菌 病原体の排除 : 複雑なしくみ ) 獲得免疫の誘導 : リンパ球 (T 細胞と B 細胞 ) による抗原特異性 ( 病原菌に対する特異的な反応 ) と免疫記憶 ( 生体が一度感作された抗原に対する迅速な反応 ) 獲得免疫 : 特定の病原体に対して それを排除するだけでなく それを記憶し 再度侵入した際には即座に排除することであり 次に同じ抗原が侵入すると一層強力な抗体が産生される

B 細胞と T 細胞の抗原レセプター B 細胞 B 細胞レセプターの先端の可変領域で抗原と直接結合する : 定常領域 ( 下部の 3/4) と可変領域からなり 細胞外に放出されると抗体になる T 細胞 T 細胞レセプターは抗原提示細胞のペプチド抗原と MHC タンパク質と結合する

液性免疫 抗原がマクロファージに取り込まれ 断片化 サイトカインによってヘルパー T 細胞が活性化され T 細胞受容体がマクロファージの MHC ( 主要組織適合複合体 ) タンパク質と結合 ヘルパー T 細胞が増殖促進 ( サイトカインによる ) B 細胞の IgM 受容体に結合した抗原の取り込み T 細胞受容体が B 細胞の MHC タンパク質を認識 B 細胞が増殖 分化し プラズマ細胞 (IgG IgA など ) となって抗体を分泌

抗原提示 食細胞は T 細胞に認識されることを目的にして MHC( 主要組織適合遺伝子複合体 ) タンパク質にペプチド抗原をのせて提示する MHC のクラス Ⅰ 分子はほぼ全ての細胞に発現し 細胞質内に入り込んだ病原体由来のペプチド抗原をクラス Ⅰ 分子にのせて提示する MHC のクラス Ⅱ 分子はマクロファージ 樹状細胞の細胞で発現し 貪食によって取り込んだ抗原をヘルパー T 細胞に提示する

補体 補体 : 抗体の機能を補うもので 約 30 種類の血清タンパク質と膜タンパク質で形成される 補体の機能 : 貪食作用の促進 病原体の膜に穴を開けて傷害する 炎症反応 ( 白血球などによる免疫反応 ) の促進 免疫反応 : 抗原特異的な炎症反応

細胞性免疫 T 細胞受容体が抗原感染細胞表面の MHC クラス 1 タンパク質ー抗原複合体と結合 T 細胞が増殖促進 T 細胞受容体が抗原感染細胞の MHC クラス 1 タンパク質ー抗原複合体と結合 キラー T 細胞 NK 細胞などが抗原感染細胞膜に穴をあけるタンパク質 ( パーフォリン ) を分泌 感染細胞にグランザイムが入り アポトーシスを誘導して破壊する

ヘルパー T 細胞のサブユニット ヘルパー T 細胞には機能分化の進んだ細胞種が多い :Th1 細胞 Th2 細胞 Tfh 細胞など Th1 細胞 :IFNr IL-2 を産生して マクロファージ キラー T 細胞などを活性化し ウイルス 寄生細菌などに感染した細胞を処理する Th2 細胞 :IL-4 IL-5 IL-13 を産生して 好酸球 好塩基球などを活性化し 寄生虫に対する感染防御を行う

サイトカイン 細胞が産生して他の細胞の増殖 分化 活性化 細胞死などの機能発現を誘導する可溶性の分子の総称 インターロイキン : リンパ球 食細胞などが分泌し 免疫系の細胞の増殖 分化などを誘導 インターフェロン : マクロファージ T 細胞などが分泌し ウイルスの増殖阻止 免疫細胞の活性化などの働き ケモカイン : 免疫細胞の移動に関与する因子 造血因子 細胞増殖因子 細胞壊死因子など

免疫 ( 非自己 ) と自己免疫疾患 自己免疫疾患: 免疫細胞が自分の組織 成分 ( 自己抗原 ) を攻撃することで生じる病気 臓器特異的自己免疫疾患: 標的になった臓器には炎症が起こり 組織が破壊され 機能を失う ( バセドー病 重症筋無力症等 ) 全身性自己免疫疾患: 体中にある成分を攻撃して 発症する ( 関節リウマチ 多発性筋炎 ) 移植免疫: 臓器移植でみられる免疫反応で 移植臓器を他者として拒絶する ( 免疫抑制剤 )

小腸における防御 ウイルス 細菌などの侵入防ぐため多くのリンパ球が存在する ( 腸は主として IgA による防御 ) 腸内の大部分の IgA は分泌成分を結合させた 2 量体 ( 分泌型 IgA) で パイエル板でつくられる ( 消化酵素で分解されにくい ) IgA

パイエル板 パイエル板には輸入リンパ管がなく M 細胞が腸管内の抗原を取り込む 抗原は樹状細胞 マクロファージ B 細胞などに捕捉され ナイーブ細胞がリンパ節で活性化されてエフェクター細胞になる パイエル板のリンパ球は 輸出リンパ球 胸腺を通って腸にもどってくる ( ホーミング ) ケモカイン インテグリン ( 接着分子 ) などを産生して リンパ球を引き寄せる

小腸粘膜固有層 : 疎性結合組織 リーベルキューン陰窩をもつ 粘膜固有層の中にあるパイエル板 (Peyer s Patches) に接する上皮組織内の M 細胞 ( 抗原提示細胞 ) を通じて腸管内とアクセス 抗原刺激をうけたパイエル板濾胞の B 細胞が活発に増殖し 濾胞内に胚中心を形成する

パイエル板は IgA 前駆 B 細胞を産生する誘導組織 IgA 前駆 B 細胞を最終的に分化させるには IL-5 IL-6(IgA 誘導サイトカイン ) による活性シグナルが必要 Th2 型サイトカイン産生 CD4 +T 細胞の誘導が必要 指標となる誘導に関わる遺伝子を特定 定量的に測定する TNF( 腫瘍壊死因子 ) 受容体 -1 の活性を測定 活性化で炎症亢進 サイトカイン

クラススイッチ クラススイッチ:B 細胞が別のクラスの抗体を産生すること (IgMからIgGやIgA) で 抗体の定常領域 (C 領域 ) 遺伝子群の変化 ( 欠落 ) によって生じる B 細胞は初期にはIgMを産生し IgMは抗原決定基を認識するための受容体として機能するー IgMから定常領域の異なるIgG IgAなどにクラススイッチが起こる

クラススイッチ クラススイッチは二次リンパ器官の胚中心で行われるリンパ節 :IgMからIgG IgEへ腸のパイエル板 :IgMからIgAへ

腸管免疫 腸は栄養素を吸収するために絨毛を密生して表面積を増やしているが このことは病原菌による感染の危険性を高めている 腸管粘膜には常に多くのリンパ球が常在している ( 皮膚にはほとんどリンパ球はいない ) 腸管粘膜にはパイエル板が隣接し 腸管では IgA が常に大量に産生している 一方で 免疫を抑制する働きも発達している

腸上皮間リンパ球 腸管粘膜のリンパ球は腸上皮間リンパ球と称され リンパ節や脾臓のリンパ球とは異なった機能がある : 主に T 細胞で 循環しないで常在する 経口免疫寛容 : 食物に対して免疫反応が起こらないように 摂取したタンパク質に対しては免疫寛容を誘導する機構が働く ( 自然免疫系のセンサーを発動させない )

腸管免疫の誘導 腸管上皮細胞に M 細胞があり M 細胞は腸管の病原菌を積極的に取り込む :M 細胞には樹状細胞やリンパ球が密接し M 細胞が取り込んだ病原菌を樹状細胞に引き渡す 樹状細胞が病原菌で活性化されると免疫反応が始まり 樹状細胞は T 細胞領域でヘルパー T 細胞を活性化させ その後パイエル板で B 細胞が IgM から IgA にクラススイッチする IgA はリンパ管 胸腺等で成熟後 腸管粘膜固有層にホーミングし IgA を産生 分泌する

ホーミングについて ビタミン A 抗原 パイエル板 粘膜組織 樹状細胞 末梢血 成熟 CCL25 CCL28 CCR9 CCR10 α4β7 MAdCAM-1 VCAM-1 レチノイン酸 ホーミング IgA 産生細胞 RAR IgM B 細胞 抗原刺激 リンパ管 IgA クラススイッチ 小腸 :CCL25 CCR9 MAdCAM-1 α4β7 乳腺 :CCL28 CCR10 MAdCAM-1 α4β7

乳腺と免疫機能 動物の分娩前後は免疫能が低下する ー乳腺には栄養素が豊富に含まれていること 泌乳開始で乳頭口が開くことなどにより 有害病原菌が侵入しやすい 乳腺の自然免疫系と獲得免疫系の効果 ー子牛の受動免疫を高めるために免疫成分 (IgG IgA など ) を多量分泌 ー乳線の免疫機能を高めて 母体の細菌感染 ( 乳房炎 ) を予防する

乳腺と自然免疫 乳腺への有害微生物の侵入に対して 自然免疫系が初めに働く : 乳腺上皮細胞の TLR が有害微生物を認識し シグナルを伝達する 好中球とマクロファージが乳腺で貧食 殺菌作用を行うだけでなく サイトカイン 活性酸素種などを分泌して炎症反応を高める : 過度の炎症反応は乳腺の組織を損傷する 乳中のラクトフェリン ラクトパーオキシダーゼに殺菌作用があるが それ以外の微量成分にも同様の機能があると考えられる

乳腺と獲得免疫 乳牛の初乳と乳中には IgG が最も多いが ヒトでは IgA が最も多い免疫グロブリンである IgG は乳腺上皮細胞の IgG レセプターを介して乳中に分泌され IgA は乳腺上皮細胞の粘膜上皮の pigr を介して 2 量体で乳中に分泌される : レセプターの発現は 分娩前後の内分泌系の変化によって制御される 自然免疫と獲得免疫が共同して乳腺を保護する : 傍細胞輸送 ( タイト結合 ) による分泌もある

乳腺における IgA 産生 Van Der Feltz et al. (2001) 泌乳期における乳中 IgA 量の増加は乳腺における IgA 産生細胞数の増加に起因し そこには MAdCAM-1 発現が関与している Eric Wilson and Eugene C. Butcher (2004) CCL28 は泌乳期の乳腺における IgA 産生細胞の集積を調節し 新生仔への母乳を介した IgA の移行に必須である

乳腺における IgA 産生 Van Der Feltz et al. (2001) 泌乳期における乳中 IgA 量の増加は乳腺における IgA 産生細胞数の増加に起因し そこには MAdCAM-1 発現が関与している Eric Wilson and Eugene C. Butcher (2004) CCL28 は泌乳期の乳腺における IgA 産生細胞の集積を調節し 新生仔への母乳を介した IgA の移行に必須である

リンパ球 ナイーブ細胞 : 血液 リンパ節 リンパ管などを循環し 血管内皮細胞のケモカイン インテグリンなどで活性化され 血管内皮から血管外に移動する ( 病原体がいると亢進する ) エフェクター細胞 : 抗原提示細胞で活性化されたリンパ球でインテグリンなどを発現して 炎症部位などに到達する メモリー細胞 : 免疫記憶する細胞

カロテノイドによる疾病予防 乳牛では免疫能改善 繁殖成績向上などの健康維持に微量ミネラルや脂溶性ビタミンが欠かせないため 微量ミネラルと脂溶性ビタミンの重要性は移行期に高まっている カロテノイドによる腸管免疫改善効果は レチノイン酸を介した効果と抗酸化作用による効果が考えられる

β ーカロテン 植物に含まれる黄色色素で化学式 C 40 H 56 肝臓や小腸の粘膜中で 2 分子に分かれビタミン A となる

体重 親 (g) 体重 子 (g) 飼料摂取量 (g/ 日 ) 親マウスと新生仔マウスの体重 飼料摂取量 ( 対照区 ( ) と β ーカロテン区 ( ) ) 20 15 10 5 0-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 70 60 50 40 8 6 4 2 30-14 -7 0 分娩前 ( 日 ) 0 0 7 14 分娩後 ( 日 )

IgA 産生細胞数 IgA mrna 対照区 βカロテン区 ( 母体乳腺 ) 泌乳期 対照区 β カロテン P value IgA ASC 8.80±1.74 11.99±2.53 0.018 IgA mrna 0.63±0.11 0.71±0.09 0.150

IgA 産生細胞数 IgA mrna 対照区 β カロテン区 泌乳期母体回腸 対照区 β カロテン P value IgA ASC 7.02±0.92 9.60±1.19 0.0007 IgA mrna 0.83±0.22 1.29±0.46 0.034

IgA concentration (μg/g) IgA 濃度 ( 新生仔マウス胃内容物 ) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 stomach contents * * * * 1wk 2wk 対照区 β カロテン区 **:P<0.01

図 1 β ーカロテンによる IgA 産生の効果 β ーカロテン パイエル板 抗原 小腸乳腺 粘膜組織 樹状細胞 レチノイン酸 末梢血 成熟 ホーミング IgA mrna IgA 産生細胞 RAR IgM B 細胞 抗原刺激 リンパ管 IgA クラススイッチ IgA

発表論文 Nishiyama Y et al. (2011) Supplemental β- carotene increases IgA secreting cells in mammary gland and IgA transfer from milk to neonatal mice. British Journal of Nutrition 105:24-30. Nishiyama Y et al. (2011) Effects of supplemental β-carotene with whey on IgA transfer from maternal milk and mucosal IgA induction in neonatal mice and calves. Livestock Science 137:95-100.

ビタミン A 視覚や生殖 上皮細胞の分化などに必要不可欠な栄養素であるだけでなく 免疫機能にもまた必要不可欠である Schottstedt et al. (2005) 新生子牛に与える代用乳にビタミン A を添加すると対照区と比較して回腸絨毛高が高くなりパイエル板濾胞が大きくなる

ビタミン A Faruk et al. (1991) マウスにおいてビタミン A 欠乏が経口免疫に対する抗体産生能の低下を導く Mora et al. (2006) ビタミン A の代謝産物であるレチノイン酸は IgA 産生細胞上の腸管へのホーミング特異的なレセプター (α4β7,ccr9) 発現に必須である

An Indispensable Role for the Chemokine Receptor CCR10 in IgA Antibody-Secreting Cell Accumulation Morteau et al. (2008) CCR10 ノックアウトマウスを用い IgA 産生細胞の集積に関する CCR10 の役割を調べた CCR10 は泌乳期の乳腺における IgA 産生細胞の集積 新生仔への母乳を介した IgA の移行に必須である